開幕
教室のセット
浩之、あかり、マルチ、雅史が集まって、何やら話をして盛り上がっている。
浩之「まったく、その時のあかりの顔ときたら見せてやりたかったぜ」
あかり「でも、あれは浩之ちゃんがどーしてもって・・・」
マルチ「そうなんですか?」
雅史「まっ、浩之だからね」
浩之(いかにも心外そうに)
「何だよ、その俺だからってのは」
一同声をあげて笑う。
上手より志保登場。
志保「なによ、なになに〜?この志保ちゃんを抜きにして盛り上がってるなんて珍しいわね」
浩之「お前のは『盛り上がってる』じゃなくて単に『騒がしい』だけだろ」
志保(浩之の机に腰掛けながら)
「あっ、そーゆーこと言うわけ。ひ・ろ・ゆ・きのくせに」
浩之「偉そうに人の机に座るなよ。せっかく持ってきたのに、あれ貸してやんねーぞ」
志保「あれってなによ・・・ひょっとしてあれ」
志保、浩之の顔を覗き込む
浩之「そうQ'Zのニューアルバム」
浩之、カバンからCDを取り出し、観客席に向かって掲げる。
浩之「『Factory of King's』!しかも初回限定版だぜ」
志保「ありがとう〜」
志保がCDをもらおうとするが浩之が手を遠ざける。
志保、ポテッっとズッコける。
志保「あ〜ん、貸してよ貸してよ〜」
浩之「貸してほしいーか?」
志保「うん!貸して貸して」
あかり、雅史のそでを引っ張る
あかり「ねぇ、雅史ちゃん。あのCDってそんなに珍しいの」
雅史「うん、どのCD屋にいっても売り切れらしいよ。次回入荷は1週間ぐらいかかるんだって」
あかり「そうなんだ。手に入らないとなると余計と聴きたくなっちゃうよね」
マルチ「ふーん、そういうものなんですかぁ」
あかりたちをよそに志保は浩之に必死に頼み込んでいる
志保「ねぇ、この志保ちゃん一生のお願い、貸してよ〜」
浩之「そこまで言われちゃしょうがねぇなぁ。ほら貸してやるよ」
浩之、CDを志保に渡す
志保「やった〜、うれしい〜!ありがたく思ってあげるから感謝しなさいよね」
浩之「なんだそりゃ」
浩之、肩をすくめる
志保「1曲目の『真夜中のドライバー』がいいのよね。
『ヘッドライトが〜ただ〜路面だけを〜照らす〜』」
浩之「いや、そこは違うだろ。
『ヘッドライ〜トが〜ただ路面だけを照らす〜』じゃないか」
志保「なにいってんのよ。『ヘッドライトが〜ただ〜路面だけを〜照らす〜』よっ!」
浩之「『ヘッドライ〜トが〜ただ路面だけを照らす〜』だっ!」
志保「違うってば!この志保ちゃんが歌のことで間違うはずないでしょっ!!」
あかりが、間に割ってはいる。
あかり「まぁまぁ、二人とも。家に帰って聴いてみればわかるでしょ」
志保「それまで待ってられないわよ。誰かCDプレイヤー持ってないの?」
浩之「そんなの持ってるわけないだろ」
雅史「あっ、僕MDプレイヤーなら持ってるけど」
浩之「だからCDだっての」
マルチが、トテトテッと志保に近づく。
マルチ「ちょっと貸していただけますか?」
マルチ、志保に尋ねる。
志保「えっ、このCD?いいわよ」
志保、マルチにCDを渡す。
マルチ「え〜と、これをこうして・・・」
マルチ、CDのディスクを取り出すと、ディスクの穴に右手の人差し指を通す。
そして、ディスクをグルグルと回し始める。だんだんと速度が上がっていく。
浩之「おいマルチ、なにやってんだ?」
マルチ「えへっ、ちょっと待ってくださいね」
マルチ、ディスクをじっと見つめる。
その眼から赤いレーザー光線が出てディクスに当たる。
マルチ「『ヘッドライトが〜ただ〜路面だけを〜照らす〜』」
マルチがQ’Zのボーカルの声で歌いだす。
志保「ほら、わたしの言った通りじゃない・・・って、うわっ〜すっごい、マルチどうやってるの?」
マルチ、ディスクを回すのをやめる。
マルチ「てへっ、データをレーザーで読み取って人工声帯をスピーカー代わりにしてるんですよ。
自分でほんとうに歌うと下手くそなんですけどね」
マルチ、頬を赤らめて照れる。
志保「なるほどね〜。これがほんとの『マルチ』メディアってわけね。キャハハハハ」
10秒ほど沈黙が続く。
浩之「・・・さーて、あかり、そろそろ帰るか。おい、マルチも行くぞ」
あかり「・・・うん、そうだね・・・」
マルチ「あっ、はい。では志保さん、これお返ししますね」
マルチが志保にディスクを返す。
そして、浩之、あかり、マルチの三人、下手より退場
志保「なんだってのよ、みんなして。ふんっだ!」
プイッとむくれる志保
雅史、ポンッと手を打つ。
雅史「そうか、マルチちゃんの『マルチ』とマルチメディアの『マルチ』をかけてるシャレなのか。
なるほどなるほど、あっはははは、こりゃ可笑しいや〜」
一人笑い転げる雅史
またもや、10秒ほどの沈黙
志保「・・・さて、わたしも帰ろっと」
志保、カバンにCDを入れると下手より退場
雅史「あれ?みんな〜どこいっちゃったんだい?」
一人、舞台の上に取り残される雅史
閉幕
終わり
何故にTo Heartか?
それはわたしにも不明です。
最初に、雅史が舞台に取り残されるラストシーンを思いついてから一気に書き上げました。
雅史って、わたしの中だとなんかボケキャラのイメージなんですよね。
『マルチのマルチメディア』というネタは100万回ぐらい使われているかもしれないけど気にしない。
ネタに凝る代わりに普通の小説ではなく舞台の脚本風にしてみました。
いわゆる戯曲ですね。とかいって。
おおっ、なんか三島っぽい。
しかし、うちはエヴァ系のサイトじゃないのか・・・