『○○人いる!』

 年に一度の宇宙大学の入学試験もいよいよ大詰めになった。
 この試験を受けるために銀河中から様々な種族が大勢集まってきている。しかし、その中で合格できるのはほんの一握りだ。すでに何人もがふるいにかけられて失意を胸に試験会場を去っていた。
 そしてついに最終課題が始まった。内容は孤立した宇宙船ビーックリ号にグループで乗り込み、只一人の脱落者も出さないで53日間を乗り切れば合格というものだ。
 リーダーは当然、ここまで全ての教科に置いてトップの成績を収めてきたわたしが選ばれた。

 試験開始から3日。これといった問題もなくすべて順調だ。これならば楽々合格間違いなしだろう。
「てーへんだー!てーへんだー!」
  副官のニリキが大声を出して艦橋に飛び込んできた。てーへんだーとはまったく、時代錯誤も甚だしい。
「てーへんだってお前はハチか?まったくどうしたんだ。 艦橋で大声は御法度だぞ」
「ハチ?それなんだ?って、それどころじゃないんだよシジミ、大変だよ!艦内の生命反応が一つ多いんだ。」
「生命反応って、まさかネズミにでも反応しているんじゃないだろうな?」
「その点はちゃんと確認してるよ。人間に間違いない」
「ふむ、すでに落第した奴がテストを妨害するために潜り込んだか、案外生命反応探知装置が故障しているか・・・ともかく全員をロビーに集めてくれ。30分以内にな」
 そうしてわたしは乗員名簿を持ってロビーに向かった。

 ロビーには全乗組員が集まっていた。
 わたしは壇上に上がると、マイクに向かって言った。
「諸君、こちらを注目してくれたまえ」
 ざわついた場内が一気に静まりかえった。
 このわたしを皆が見つめている。う〜む、快感である。
「ここで重大な発表がある。この宇宙船にテストには関係ない人物が一人紛れ込んでいることが発覚した。残念ながら船にある探知機では誰がそうかまでは特定できない。」
 ドヨドヨ・・・ロビーはどよめきに包まれた。疑心暗鬼の眼で隣の人を見つめる。
 このままでは魔女狩りなどの事態に陥りかれない。
「ここで、念のために前乗組員の人数を確認したいと思う。一人一人数えることになるので時間はかかるが、重要事態だけにみんなの協力をお願いする」
 ニリキがわたしの袖を引っ張った。
「でもこの船の受験者は162,843人もいるんだぞ。それを手で数えるのか」
「相手はどんな妨害装置を持っているかもしれん。ここはやはり一番確実なのは人間だろう。さぁ始めるぞ」
 こうして、われわれは受験生の数を数え始めた。

「238人、239人、240人、241人、24・・・あれっ、今何人だっけ。あー、野鳥の会が使っているカウンターが欲しいっ」

「3,485人、3,486人・・・これっそこ勝手に動くんじゃねぇ!」
「えー、でもトイレに行きたくて」
「んなもんは我慢だ我慢。で、えーと、何人までいったんだっけ?4億3,456万2千3百6十7だっけか?いや、絶対違うな」

「327人、328人、329人、330人、331人・・・?あれっ、331人目のあなた、さっきも数えなかったか?」
「あっ、わたし双子ですから」
「ちなみに俺たちは六つ子だ。名前はおそ松」
「続いて一松」
「カラ松」
「チョロ松」
「トド松」
「十四松」
「おらハタ坊だじょー」
「てやんでぃバーロイチキショイ。なんで宇宙食におでんがないんだ〜」

「1,245人、1,246人、1,247人・・・」
「ところで今何時だい?」
「銀河標準時で16時ちょうどだ。えーと16人、17人、18人・・・」

などなど、数々の敵の妨害工作にもひるまずにわたしたちはひたすらに乗組員を数え続けた。

 そんなことを繰り返しながらも、どうにか今日、総人数を数え終わることができた。
「やはり、一人多い」とニリキがデータを確認しながら言う。
「うむ、多いな。しかしもはや問題ではない」とわたしが答えた。
「何故だよ!こんな不祥事、大学衛星入学試験の歴史の中でもおそらく初めての出来事だぞ」
「だって、今日が期限日の53日目だぞ。密航者が誰だったのかは分からなかったが、それを捜し出すのは課題に関係ないからな。そういうわけで、わがグループは晴れて合格!」
「こんなんでいいのかぁ、ぼかぁ納得できないぞ」とニリキが頭を抱える。
「まっいいではないか、いいではないか」
 わたしはカラカラカラと笑った。

 追伸:ビーックリ号に乗った受験生は全員合格した。ちなみにトップ合格はわたしシジミである。これで宇宙も安心だ。

 


SFマンガの傑作、萩尾望都の『11人いる!』のパロディ・・・なのかなぁ。
アイディアを思いついてから、1時間程度で出来上がりました。
これが久々の新作か・・・うーむ、ダメダメ。

 
 


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