:これは小説ではなく1988年に制作された8mmフィルム映画『ダイヤモンド・ゲーム』の脚本である。
:この作品はわたしの第一回監督・脚本作品である。

 

シーン1:神宮寺探偵事務所

神宮寺が拳銃のマガジンに弾丸を詰めている。
モノローグ
 神宮寺「子供の頃、大人になったら飛行機乗りになりたいと思っていた。
     大空を自由に飛び回る飛行機乗りにだ。
     そして俺は今、汚れた街の裏角を這いずり回る私立探偵になっている。
     だが俺はこの街でも指折りの強面のする探偵なのだ」

マガジンを拳銃に入れるとスライドを引いて初弾をチェンバーに送り込む。
SE(効果音)−「ジャキッ」

神宮寺は事務所を出て行く。

タイトル

『DIAMOND GAME』

SE−「ドーン」と鈍い音

 

シーン2:とある建物内

神宮寺とギャングがにらみ合っている。

ギャング「書類はどこに隠したんだ?とっとと教えろ」

神宮寺「こう見えても俺は探偵だ。銀行の金庫ぐらいには口が堅いぜ」

ギャング、拳銃を抜き神宮寺に突きつける。

ギャング「金庫ってのはなぁ、ギャングがハジキで開けるんだよ」

ギャングは神宮寺を壁に押しつける

ギャング「命はもったいないだろ。さぁ、吐けよ」

神宮寺はまるで動じる様子を見せず、右手を挙げるとパチンと指を鳴らす。

ライフル、ショットガン、拳銃で武装した私服警官が一斉に現れ、ギャングを取り囲み銃を突きつける。(1)

ギャングは呆気にとられ、その手に手錠がかけられる。

「こうして、無事犯人も捕まり」と書かれたプラカードを持った男がカメラの前を横切っていく。


シーン3:オープンカフェ

神宮寺が紙パックに入ったコーヒーを飲んでいる。
そこに大林警部が現れる。

大林「いやー、君のおかげで無事事件も解決したよ。本当にありがとう!」

大林、神宮寺の手を握りしめる。紙パックのストローからコーヒーが水鉄砲のように飛び出し、神宮寺の顔面はコーヒーまみれになる。

大林「それにしても今回の依頼人はいったい誰だったんだい?教えてくれないか?」

神宮寺、ハンカチで顔を拭きながら、

神宮寺「残念ながらそれはお答え出来ませんね。依頼人の秘密は守る。探偵の第一条ですから」

大林、警察手帳にメモを取る。

大林「なるほど、探偵の第一条、依頼人の秘密を守ると・・・さすが神宮寺君だ、君ならば必ずやこの難問を解決してくれるに違いない。うんうん」

一人で納得している大林に神宮寺は首をかしげる。

大林「実はね、ある事件に関して、君に是非ともあって欲しい人がいるんだよ。一緒に来てくれないか?」

神宮寺「ふーん、で相手は誰なんですか?」

大林「それは・・・会ってからということで」

神宮寺「困りましたね。怪しげな依頼には気を付けろ。探偵の第二条ですから」

大林、また警察手帳にメモを取る。

大林「怪しげな依頼には気を付けろ・・・探偵の第二条と。そこを何とか頼めないかね」

神宮寺、ちょっと悩んで

神宮寺「他ならぬ警部の頼みですからね、いいですよ」

大林「そうか、じゃあさっそく行こうか」

二人はイスから立ち上がり遠ざかっていく。
10メートルほど歩いたところで、神宮寺は立ち止まると、険しい表情で戻ってくる。
何事かと大林も後を追う。
BGM−ダンダンダンダンといった緊迫感のある音楽

神宮寺、テーブルの上の紙パックを手に取ると、ゴミ箱に捨てる。
なるほどと大林はゴミ箱をのぞき込む。

「ゴミはゴミ箱へ!」と書かれたプラカードを持った男が、カメラの前を横切っていく。


シーン4:公園のベンチ

神宮寺と大林の二人が登場。
ベンチの横には大きな木箱が置いてある。

大林「あれ、まだ来てないな?」

神宮寺「4時の約束でしょう。あと5分ありますよ」

大林「でも、時間には異様なぐらい厳しい人だから・・・」

神宮寺が腕時計を見ながら、

神宮寺「あと5秒、4、3、2、1」

木箱を突き破って男が飛び出してくる

男「ジャジャ〜ン、どうだ時間ピッタリだろう」

スタスタスタとベンチから遠ざかる神宮寺
BGM−チャララ〜といった哀愁のある音楽

神宮寺の腕にすがりつく大林

大林「君の気持ちは分かるが、話だけでも聞いてくれないか」

神宮寺「しょうがないですね、話だけですよ」

ベンチのところに戻った神宮寺に男が話しかける

男「やあ始めてお目にかかる。わたしは名城警察署の署長だ」

神宮寺「どうも、私立探偵の神宮司照彦です」

握手する神宮寺と署長

署長「わたしは署長だが、君の噂は“しょっちょう”聞いていたよ。ワハハハハ」(2)

スタスタスタとベンチから遠ざかる神宮寺
BGM−チャララ〜といった哀愁のある音楽

神宮寺の前に立ちふさがる大林

大林「どうしても行くというのなら、このわたしを倒してから行け」

バキッと神宮寺のパンチであっけなく吹き飛ばされる大林
スタスタスタと遠ざかる神宮寺。その後ろには倒れている大林の姿がある。
BGM−チャララ〜といった哀愁のある音楽

再び神宮寺の立ちふさがる大林
神宮寺がおや?と振り向くと倒れていた大林の姿はない
神宮寺は激しい連打を繰り出す
何度も何度も宙を舞う大林
しかし、すっくと神宮寺の前に立つ
ゼイゼイと息を切らしている神宮寺

神宮寺「わかりました降参、降参です」

署長のところに戻る二人

署長が神宮寺に封筒を渡す

神宮寺「きゃぁ、恥ずかしいわっ!」

大林「違うわっ!」

バシッと大林が神宮寺の頭をはたく

神宮寺「なんだ、ラブレターじゃないのか」

神宮寺、中の手紙を読む

神宮寺「なになに・・・○月×日、世界一のダイヤ『スパローの涙』を頂戴に参上します。アルセーヌ・ルパン・・・ふーん、まるで予告状みたいですね」

署長「予告状なんだよ」

神宮寺「で、わたしにどうしろと?」

署長「君にダイヤを守って欲しいんだ」

神宮寺「ええっ、アルセーヌ・ルパンといえば天下の大怪盗じゃないですか。とてもじゃないがわたしの手に負える相手じゃありませんよ」

署長「いや、君だって街を歩けばおしゃれなあのコそのコも、ついでに犬のポチまで振り返るという天下の名探偵じゃないか。大丈夫、このわたしが保証する」

神宮寺「で、ですが・・・」

署長「頼む、君しかいないんだ」

署長の顔のアップ
(署長役のチャク氏はそれは独特の顔つきをしている。『アニマルハウス』のジョン・ベルーシのような感じだ)

ぽつんといった感じでベンチに座っている神宮寺と大林

大林「結局引き受けさせられてしまったな」

神宮寺「ああ」(力無く)

大林「まあ仕方ない。うちの署長にかなう者はいないんだ」

署長の顔のアップ

神宮寺、なるほどとうなる

大林「もちろん我が署としても全面的に君をバックアップする。まずはほら」

大林は神宮寺に大きな紙袋を手渡す

大林「ルパンについての最新かつ詳細な極秘資料だ。苦労して集めたんだからな、しっかり目を通しておいてくれよ」

神宮寺「分かってますよ。資料は入念にチェックしろ、探偵の第三条ですから」

大林は警察手帳にメモする

大林「探偵の第三条と・・・じゃあまた連絡するから」

大林が立ち去る
神宮寺、紙袋から資料を取り出す
中から出てきたのはポプラ社の本『ルパンの冒険』(3)

『ルパンの冒険』を読みながら神宮寺は歩き出す
神宮寺は長髪の男とぶつかってしまう
宙を舞う本

神宮寺「こらっ!ちょっと待て」

長髪の男振り返る

長髪の男「んんっ」

胸、腕など長髪男の筋肉のアップをドンドンドンとランボー風につなげる

ランボー男は飛び出しナイフを取り出す
びびる神宮寺
実はナイフ型のクシで、それで髪をとかしながら

ランボー男「で、俺に何の用なんだい」

神宮寺はおろおろしながら

神宮寺「いや、あの、その、ぶつかってすみませんでした、どうもごめんなさい」

ランボー男「そんなことは気にしなくていいぜ。じゃあな」

立ち去っていくランボー男、その後ろから神宮寺が本を振りかざして襲いかかる

神宮寺「おらおらおら〜!」

本でボコボコに殴り、さらに倒れたところにストンピングの嵐

神宮寺「口ほどにもない奴」

神宮寺が立ち去ると、ゆっくりと立ち上がるランボー男
BGM−ターミネーターのテーマ(ダダンダダンダッダン、ダダンダダンダッダン、チャララ〜チャラララ〜)

走って逃げる神宮寺を追うランボー男

ランボー男「待たんかいっ!」


シーン5:大林警部の事務室

ボロボロの薄汚い部屋
大林が事務机に向かっている
神宮寺が部屋に入ってくる

神宮寺「ずいぶんとひどい部屋ですね」

大林「我が署も予算がないからな、仕方ないんだよ。ま、かけたまえ」

神宮寺がイスに座ると、イスの脚がぽっきり折れてひっくり返ってしまう。

そのまま前回り受け身の要領で前転をし、すっくとポーズをつけて立ち上がる神宮寺

3人の審査員がそれぞれ「9.8」「9.6」「9.9」の札を上げる
SE−拍手の音

神宮寺「資料を見ていて気がついたんですがね、ルパンに天敵と呼ばれる男がいるんですよ」

大林の後頭部に電球を持った手が伸びてきて、電球がパッと点灯する(4)

大林「あっ、知ってるぞ。確か・・・ガニマタ警部」

神宮寺「ガ・ニ・マ・ー・ル・警・部・ですよ」

大林「ああ、そうとも言うな。で、そのガニマール警部はどこにいるんだね?」

神宮寺は窓を開けると夜空を見上げて

神宮寺「彼は今でもわたしの心の中にいる・・・」

大林「本当かね?」

神宮寺振り返る

神宮寺「嘘です」

大林「本当はどこにいるんだね?」

神宮寺は再び夜空を見上げ

神宮寺「フランスは、パリ」


シーン6:パリ(名古屋は栄の噴水広場)

  エッフェル塔のアップ(名古屋のテレビ塔)

神宮寺「あっ、警部。あれがエッフェル塔ですよ」

大林「おー、写真写真」

大林はコンパクトカメラを取り出してパチパチと写真を撮る

神宮寺「おっ、こっちにあるのはトレビの泉じゃないですか」

噴水広場の噴水

大林「おー、写真写真」

「トレビの泉はローマです」と書かれたプラカードを持った男がカメラの前を横切っていく

神宮寺「で、ガニマール警部はどこにいるんですか、早く教えてくれませんか」

大林「えっ、ガニマール警部の顔ならわたしは知らないよ」

神宮寺「あれま、そうなんですか」

大林「これは困ったなぁ」

神宮寺「でも大丈夫です。赤いバラを胸に挿してきてくれるように頼んでおきましたから、それを目印に探せばいいんですよ」

大林「さすが神宮寺君、頼りになるなぁ」

二人が辺りを見回すと、周りにいる人は全員胸に赤いバラを挿している
赤いバラを篭に入れて売っている花売り少女がいる
おおっと驚く二人
BGM−百万本のバラ

神宮寺「まいったな、これでは分かりませんね」

神宮寺の肩に手が置かれる

神宮寺「おや?」

キザっぽい男が立っている

ガニマール「もしかしてあなたがたはジャポンからいらっしゃったムッシュー神宮寺とムッシュー大林じゃないですか?」

神宮寺「ええっ、それじゃああなたは」

ガニマール「そうです、わたしがフランス警察の星、ルパンの天敵と呼ばれる男!」

ガニマール、ここでクルッとターンする

ガニマール「ガニマールです」
BGM−「セ・シボ〜ン、甘い夜の〜」とシャンソンのフレーズが鳴る

神宮寺「お子様からお年寄りまで大人気、お酒のつまみやおやつにピッタリの神宮司照彦です」

大林「女子高生の友、名城警察署の大林です」

三人は握手を交わす

神宮寺「よく私たちがそうだと分かりましたね」

ガニマール「簡単ですよ。私たちパリジェンヌやパリジャンの中に、あなた方のようなアジア人がいれば目立ちますからね」

広場のカット。もちろん、周りの人は全員日本人である

ガニマール「ジャポンはとても良いところだと聞きますから、今から楽しみですね」

神宮寺「それでは一緒に日本に?」

ガニマール「もちろんです。わたしはルパンを追うためならば」

ガニマールは地面を指さし

ガニマール「たとえ地球の裏側にだって」

今度は天を指さし

ガニマール「たとえ宇宙にだって行きますよ」

大林「よかったな、神宮寺君」

神宮寺「ええ、これで百人力ですよ」

ガニマールはフッと笑うと、右手を差し出す

その上に神宮寺、そして大林が手を重ねる

三人の格好はそのままでパッとカットが変わる


シーン7:日本

神宮寺が辺りを見回しながら

神宮寺「あれっ?いつの間に日本に」

ガニマール「ほ〜う、ここがジャポンですか」

三人の後ろを女性が横切っていく

ガニマールはその女性を目で追いながら

ガニマール「なるほど、噂通り良い国ですなぁ」

大林「では、さっそくダイヤのところへ」

歩き出そうとするが、ガニマールの姿がない

神宮寺「あれっ、ガニマール警部は?」

辺りを見回す二人越しに、先ほどの女性に話しかけて口説いているガニマール警部が見える

神宮寺「さすがフランス人は手が早い」

う〜む、とうなる二人
BGM−「セ・シボ〜ン、甘い夜の〜」とシャンソンのフレーズが鳴る


シーン8:ダイヤ保管室

ガランとした部屋の中央に台がおかれ、その上に宝石箱がある

三人が部屋に入ってくる

大林「ではご覧に入れよう」

大林が宝石箱を開ける。中には何も入っていない

ガニマール「何だこれは!何もないじゃないか」

神宮寺「もしかして、もはやルパンに?」

ガニマール「いやそれはありません。ルパンは予告状の期日は必ず守ります」

大林「何を言ってるんだ二人とも。ダイヤはちゃんとここにあるじゃないか」

神宮寺・大林「ええっ?」

大林は顕微鏡と虫眼鏡を二人に渡す

大林「これぞ世界“最小”のダイヤ、『スパローの涙』です」

「Sparrowとは雀のことです」と書かれたプラカードの男がカメラの前を横切っていく(5)

顕微鏡と虫眼鏡で宝石箱をのぞき込む神宮寺とガニマール

疲れ切った感じで座り込んでいる神宮寺とガニマール

ガニマールが立ち上がる

ガニマール「まずは聞き込みから始めますか」

神宮寺「そうですね、聞き込みは捜査の基本、探偵の第四条ですから」

大林、警察手帳にメモする

大林「探偵の第四条と・・・」

ガニマール「出かけましょう」

 

ここからシーン15までBGM−軽快でコミカルな音楽

シーン9:広場
カメラの前を右側から左側へと走り抜ける三人


シーン10:曲がり角
角を曲がってきた男を三人が取り囲み質問攻めにする
三人「ルパンについて何か知りませんか?」
男はただあたふたとうろたえるだけ


シーン11:広場
カメラの前を左側から右側へと走り抜ける三人


シーン12:ベンチ
アベックがいちゃついている
そこへ三人が登場、またもや質問攻めにする

神宮寺「ルパンについて何か知りませんか」

大林「なんでも良いんですよ」

ガニマールは女性の肩に手を回して

ガニマール「ねぇ、電話番号は?」

男が持っていた鞄を振り回し、三人は逃げる。その後を追っかける男


シーン13:広場
カメラに向かって走ってくる三人

シーン14:建物前
三人は誰かに頼み込んでいる

神宮寺「ルパンについて何か」

大林「どんなことでもいいですから」

ガニマール「お願いしますよ」

カメラがパンアップすると、相手は孔子の銅像

神宮寺「教えてくれないな、このっ」

神宮寺、銅像を蹴り

神宮寺「あいててて」

足を抱えて飛び跳ねる


シーン15:広場
カメラの後ろから走り抜けてくる三人
ガニマールが大林を引き留める
一人でどんどん遠くまで走っていく神宮寺
腹を抱えて笑っているガニマールと大林


シーン16:刑事部屋

ぐったりと疲れ切った三人

ガニマール「結局、何も分かりませんでしたね」

大林「いったいどこがいけなかったんだろう」

神宮寺「何か良い方法はないだろうか」

ドアを開けて風呂敷包みを持った署長が入ってくる

署長「やあみんな、陣中見舞いにやってきたよ」

大林「わざわざありがとうございます」

署長「差し入れの鰻重だ、食べてくれたまえ」

神宮寺「おおっ、それは元気が出ますね」

ガニマール「ジャポン名物の鰻重ですか、一度食べてみたかったんですよ」

署長のアップ
(くどいようだが、ほんと独特な顔つきなのである)

署長「署長が見舞いにやってきて、これがほんとの“しょちょう(暑中)”お見舞い申し上げます。ワッハッハッハッ・・・・・・じゃぁ」(6)

署長は帰っていく

ガニマールが窓にもたれて意識を失っている
SE−「ドーン」

大林が机の上に仰向けになって倒れている
SE−「ドーン」

神宮寺が壁に貼り付いている
SE−「ドーン」
(7)

意識を取り戻したガニマールが頭を振りながら

ガニマール「いやぁすごい破壊力でしたね」

大林も起きあがり

大林「まったくだ。神宮寺君、いつまでやってるんだね」

神宮寺「ちょっと待ってください」

神宮寺は壁からベリベリと身体を引きはがす

壁にはくっきりと神宮寺の跡が残っている

鰻重を食べようとしている三人

大林「おっ、梅干しだ。(梅干しを食べ)う〜ん、酸っぱい。ではではウナギをと」

大林がウナギを箸でつまみ上げると

神宮寺「危ないっ!」

神宮寺がウナギをはたき落とす

大林「何をするんだ神宮寺君、せっかくのウナギが」

神宮寺、チッチッチッと人差し指を左右に振ると

神宮寺「ウナギと梅干しは食い合わせが悪い、探偵の第五条ですよ」

大林は警察手帳にメモする

大林「なるほど、探偵の第五条と・・・」

ガニマールはひたすら美味そうに鰻重を食べている


シーン17:対策本部室

天井から「ルパン対策本部」の横断幕が下がっている

カメラがパンすると、万国旗やクリスマスの飾り付け、くす玉などもぶら下がっている

台の上に宝石箱が置かれている

神宮寺「いよいよ予告状の当日ですね」

大林「我が名城警察が鉄壁の警備網を引いているからな。蟻一匹入る隙間もないよ」

床の上を蟻が這っている

神宮寺とガニマールがその蟻をじっと見つめる

大林はゴホンと咳払いをすると、その蟻を踏みつぶす

大林「いや、その、ゴキブリ一匹入る隙間もないよ」

床の上をゴキブリがササササッと這っていく

大林は殺虫剤のスプレーを手に、ゴキブリを追いかけ回す

大林「ま、まぁ、猫の子一匹入る隙間もないよ」

猫が通りすぎていく

それを見送る三人

大林「犬一匹入る隙間も・・・」

犬が通りすぎていく

大林「馬一頭入る・・・」

馬が通りすぎていく。馬上には渡り鳥の姿でギターを弾く小林旭が乗っている

小林旭「ダイナマイトがよぉぉぉ、ダイナマイトが150屯〜♪」(8)

大林「ゴジラ一匹・・・」

神宮寺「うわーうわー」

神宮寺が慌てて大林の口をふさぐ

SE−「ドシーン」
足音とともに部屋が揺れる

慌てる三人

ドシーン、ドシーンと足音はだんだん遠ざかっていく

神宮寺「ふう、危なかった」

大林「とにかく警備網は完璧だ。ルパンは絶対に入ってこられない」

ガニマール「しかし、しかしですよ。ルパンがすでにこの部屋の中にいるとしたら、どうします」

大林「ははは、そんなバカな」

ガニマールは宝石箱を取り上げると、ポケットにしまう

ガニマール「果たして、そうですかな」

神宮寺「ガニマールさん、あなたはひょっとして!」

ガニマールはニヤリと笑い

ガニマール「そうです、ガニマール警部とは真っ赤な偽り。わたしの正体は」

ガニマールはクルッと回り

ガニマール「アルセーヌ・ルパンなのです」
SE−「パンパカパーン」とファンファーレが鳴る

神宮寺・大林「盲点だったな〜」

神宮寺「ルパンおとなしくしろ」

大林「ルパン、逮捕する」

神宮寺が拳銃を取り出しルパンに向ける

ルパンは二丁拳銃を取り出し二人に向ける

神宮寺はM−16を取り出しルパンに向ける

ルパンはバズーカを取り出し二人に向ける

神宮寺はシルクハットからウサギを取り出す

ルパンの背後の壁を突き破って戦車が現れる

神宮寺と大林はミサイルをかついでいる

ルパン「ちっ」

ルパンはきびすを返すと逃げ出す

神宮寺「待てっ!」

二人はルパンを追う

ルパンは壁に身を寄せると

ルパン「だるまさんが転んだ」

ルパン振り返る

二人はピタッと動きを止める

神宮寺は片足立ちのままで、ゆらゆらして終いには倒れる


シーン18:廊下

廊下を走る神宮寺と大林

神宮寺「まだ遠くへは行っていないはずです」

大林「どうしてこっちに逃げたと思うんだね?」

神宮寺「勘です。直感を大切にしろ、探偵の第六条ですから」

大林は立ち止まり、警察手帳にメモし始める

大林「直感は大切にと・・・」

神宮寺「そんなことしてる場合ですか」

神宮寺は大林を背負うと走り出す

「廊下は走るな」と書かれたプラカードを持った男がカメラの前を横切っていく


シーン19:上映会場の外

『ダイヤモンド・ゲーム』の上映会を行っている部家のドア
(シネマ研究会は年に二度上映会を行っており、いつも同じ教室を使っていた)

神宮寺「ひょっとしてこの中かっ?」

大林「入ってみよう」


シーン20:上映会場の中

ここで映写機を止める。会場の明かりをつける。

ドアから神宮寺と大林が入ってくる

会場を見渡して

神宮寺「ここにルパンは来ませんでしたか?」

大林「ダイヤを盗んで逃げたんです」

観客の反応に合わせてアドリブ

神宮寺「どうもおじゃましました」

大林「引き続き映画をお楽しみください」

部屋を出て行く二人

映写再開


シーン21:上映会場の外

走っていく二人


シーン22:階段の踊り場
窓から走って逃げるルパンの姿が見える
神宮寺「あっ、あそこにルパンがっ!」


シーン23:屋外
ルパン「へっ、バカな奴らだ」


シーン24:階段の踊り場
神宮寺「行きましょう」
大林「おうっ!」
二人はジャンプする


シーン25:屋外

走るルパンの前に、神宮寺が飛び降りてくる

後ろに逃げようとしたルパンだが、そこには大林が立ちふさがる

神宮寺「もう逃げられないぞ」

ルパン「わたしも大怪盗と呼ばれた男、もう逃げはせん」

ルパンはファイティングポーズを取る

神宮寺「いい度胸だ」

神宮寺はジャケットを脱いで放り投げると、カンフーのポーズを取る

神宮寺「アチョー、ハチョー」

そこへ、ジャケットが投げ返され、頭にかぶさる(9)

神宮寺「くそっ!」

神宮寺はジャケットを地面に叩きつけると、木製のハンガーを取り出しヌンチャクの様に振り回す
SE−「ヒュンヒュン」と風切り音

そして神宮寺はジャケットを拾いハンガーに掛けると、

神宮寺「ちょっと待ってろ」

とハンガーを掛けに行く(10)

再びファイティングポーズを取る二人

お互いに距離を保ったまま、牽制しつつ円を描くように動く

神宮寺のカット

ルパンのカット

神宮寺のカット、頭がグラグラしている

ルパンのカット、めまいがして目元を押さえる

二人とも目を回して倒れてしまう

起きあがる二人

にらみ合ったまま平行に走る

カメラがパンすると、大林が缶ビールとホットドックを手にのん気そうに観戦している

神宮寺がパンチを連続で繰り出す

ルパンはダッキングなどでそれをかわす

今度はルパンの攻撃

パンチと思いきやあっち向いてホイを連続で繰り出す

ルパン「あっち向いてホイ、あっち向いてホイ、あっち向いてホイ」

最初の2発は防いだが、3発目で同じ方を向いてしまい、神宮寺は吹っ飛ぶ

神宮寺「うわっ!」

どうにか神宮寺が立ち上がる

神宮寺「こうなったらあれしかないっ」

ここからスローモーション
(スローモーションといっても、単にゆっくり動いているだけなんですが)

神宮寺「必〜殺〜の〜、コ〜ク〜ス〜ク〜リューパ〜ン〜チ〜」

神宮寺の右パンチがグルグルと回転しながら伸びていく

そこにルパンの左パンチがクロスする

神宮寺の右頬にルパンのパンチがくい込んでいる
SE−ギュギュギュギュ

ルパンの左頬の寸前で神宮寺のパンチは止まっている
わずかにリーチが足りなかったのだ

神宮寺はゆっくりと倒れていく
SE−ヒュー

神宮寺の身体は地面で二、三度バウンドする
SE−ドーン

スローモーション終わり

大林が神宮寺の頬を軽くたたき、そしてまぶたを開けて目をのぞき込む

大林「ドクターストップだな」

大林はさっと手を挙げると

大林「チャンピオンはルパーン!・・・あれっ?」

カメラがパンすると、そこには誰もいない

大林「神宮寺君、大変だ起きてくれたまえ」

神宮寺が頭を振りながら立ち上がる

大林「ルパンが逃げてしまった。早く追わなければ」

神宮寺「いや、無駄でしょう。ルパンのことです、とっくに我々の手の届かないところに行ってますよ」

二人のすぐ後ろにある物陰からルパンが顔を出す
BGM−「セ・シボーン、甘い夜の〜」
ルパン、顔を引っ込める

大林「やられたな、我々の負けだ」

神宮寺「いえ、負けてはいませんよ。引き分けです」

大林「引き分け?それはどういうことだい」

神宮寺「ふふっ、ダイヤはちゃんと・・・」

神宮寺、宝石箱を取り出す

神宮寺「偽物とすり替えておいたんです」

大林「おおっ、それは気づかなかった」

神宮寺「敵をだますにはまず味方から、探偵の第七条ですよ」

大林、警察手帳にメモする

大林「敵をだますにはまず味方から、探偵の第七条・・・」

そして顔を見合わせると

神宮寺・大林「やったね」

二人はパンとハイファイブで手を打ち鳴らす
そのままフリーズフレーム(静止画)になる
(フリーズフレームといっても、ただじっとして動きを止めてるだけですが)(11)

5秒ほどしてから
「The End」と書かれたプラカードを持った男がその前を横切っていく
そしてフェードアウト

〜クレジット〜

−CAST−

神宮司照彦 : S山

アルセーヌ・ルパン(ガニマール警部) : K本

大林警部 : TRO

署長 : チャク

通りすがりの女性 : E藤

ランボー男 : W辺

聞き込みされる人々 : 名城大学シネマ研究会の人々

私服警官 : 名城大学シネマ研究会の人々

ギャング:東森時音

 

−STAFF−(12)

制作総指揮:東森時音

制作:東森時音

原作:東森時音

脚本:東森時音

撮影:東森時音

編集:東森時音

音楽:東森時音

美術:東森時音

音響:東森時音

照明:東森時音

大道具:東森時音

小道具:東森時音

衣装:東森時音

メイク:東森時音

ヘヤーメイク:東森時音

スタイリスト:東森時音

特機:東森時音

特殊撮影:東森時音

特殊メイク:東森時音

パイロテクニシャン:東森時音

ミニチュア作成:東森時音

コンピューターグラフィックス:東森時音

アニメーション:東森時音

擬闘:東森時音

殺陣:東森時音

ガンスーパーバイザー:東森時音

カースタント:東森時音

フランスロケコーディネート:東森時音

フランス語指導:東森時音

時代考証:東森時音

スクリプター:東森時音

スチール:東森時音

助監督:東森時音

監督:東森時音

下働き:東森時音

協力:名城大学シネマ研究会

〜クレジット終了〜

シーン26:屋外
すでに夜になった中、二人がまだフリーズフレームしている
神宮寺「ハックション!」

フェードアウト


シーン27:広場

テロップ「特報!!」

カメラが地面を這うような視点でルパンに近づいていく

テロップ「ルパン再び!果たして神宮寺は勝てるのか?」

カメラがルパンの回りをグルグル回る

テロップ「『帰ってきたルパン 学食殺人事件』」

ルパンの顔のアップ
ルパン「I'll be back!」

テロップ「近日公開」

ルパンのロングショット
その前を
「嘘」と書かれたプラカードを持った男が横切っていく(13)

 

〜終わり〜     


 

 これは1988年に制作された8mm映画『ダイヤモンド・ゲーム』の脚本である。
 とにかく「くだらないギャグ映画を作りたいっ!」という一心であーでもないこーでもないとギャグを絞り出して脚本を書き上げ、撮影に挑んだ。
 先輩の映画にスタッフやキャストで参加して多少は映画作りを見てはいたものの、実際はほとんど何も分からない状態。作りながら勉強していた。おかげで出来上がった作品は、演出がかなりヘナチョコでそれにギャグも少ないし面白くない、今見ると顔が真っ赤になって「勘弁してくれ〜」だった。
 しかし、自主映画というとウダウダと理屈を語っていたり、自分の中のぐずぐずした感情を表現するための道具となっていたりするものが多い中、娯楽に徹してひたすら人を笑わせる作品を目指すという方向性は間違っていなかったと思う。十分にくだらない作品になっているし。
 作品作りで目標とした映画作家はジョン・ランディス、ザッカー兄弟とジム・エイブラハム、メル・ブルックスなど。
 これらの監督の作品の中から、オマージュでいくつかギャグを引用させてもらっている。えっ、パクりじゃないかって?ちっ、違いますよ〜オマージュだってば。(汗)
 これはあくまでも脚本でして、実際の映像化に際してはいくつかのシーンが都合により撮影されていない。そりゃ、馬や戦車は用意できませんわな。小林旭氏も頼んでも多分出演してくれないだろうしなぁ。いや、ひょっとすると?

 主人公の神宮寺照彦は横田順弥氏の迷探偵金大事包助や早乙女ボンド之介を目指して、わたしが中学時代に生み出したキャラクターだ。
 映画化はされていませんが他にも、さる貴族が依頼人と思ったら実は猿の貴族だったという『猿神家の一族』事件や、殺人現場から逃げた方言をしゃべる男を捕まえてみたら伊奈かっぺいだったという『そして誰も伊奈かっぺい』事件、掃除が行き届いておらずカビが生えてしまったお風呂に居座った犬を追い払う『バス、カビる家の犬』事件、関西人が殺されてしまう『わいの悲劇』事件、丸太から削り出された鷹の像を奪い合う『丸太の鷹』事件などなどがある。
 設定では名探偵の兄神宮寺吉彦とハードボイルド探偵の兄神宮寺昭彦がいて探偵三兄弟となっている。実は「さくらと名無しのオプと『レオン』」の探偵は神宮寺昭彦だ。途中でほったらかしになっている、「名探偵登場」(続き書かないとなぁ、って何年経っとんじゃ)ではアスカが私立探偵になっているが、その師匠も神宮寺昭彦という設定だ。



(1)『ブルース・ブラザーズ』のラスト、ブルース・ブラザーズがSWATに取り囲まれるシーンのオマージュです。
   ハードボイルド物かと思わせる始まり方をして、ここから一気にギャグ物に突入します。

(2)「署長」と「しょちゅう」の地口ギャグ 。って、こんなもの説明するなっての。

(3)小学校の図書館に児童図書のルパンやホームズのシリーズがありませんでしたか?あれです。

(4)『サイレントムービー』にアイディアを思いついたメル・ブルックスの後ろにある電気スタンドが
    点灯するというギャグがあり、そのオマージュです。

(5)要するに『雀の涙』というギャグである。 最初はおもちゃの大きなダイヤでも使おうかと思っていたのだが、
    それもつまらないので世界一“小さい”ダイヤということにした。
    しかし、ダイヤとは炭素の固まりだから、世界最小のダイヤとは炭素分子一個ということになるのだろうか?

(6)「署長」と「暑中」の地口ギャグ。だから説明しなくっていいつーの。

(7)『ア・ホーマンス』のラストで、松田優作に倒された悪人達の死体のカットが続くシーンがあり、それのオマージュ。

(8)本当は『ギターを持った渡り鳥』を歌わせたいのだが、歌のメジャー度から『ダイナマイトが150屯』にした。

(9)『フライングハイ』で使われていた『サタデーナイトフィーバー』のパロディギャグへのオマージュ。

(10)ハンガーをヌンチャクのように振り回すのは武田鉄矢の『刑事物語』シリーズのマネ。
    ヌンチャクと思ったらハンガーというのは、『レイダース失われたアーク』へのオマージュ。

(11)フリーズフレームと思わせて実は単に登場人物がじっとしているだけというのはTVシリーズ『POLICE SQUAD』の
    ラストで毎回使われていたギャグへのオマージュ。このシリーズはその後『裸の銃を持つ男』として映画化された。

(12)このスタッフ欄の大半はもちろん嘘です。特殊メイクなんてありませんしカースタントもないです。
    ただ、スタッフがわたし一人というのは事実。別にわたしに人望がないというわけではなく(あったとも言い切りにくいですが)、
    うちのシネマ研究会の映画制作システムが独立制だったからで、みんなそれぞれ勝手に企画を立てて勝手に撮ってました。
    一般的なイメージとしてある、研究会としてみんなで一本の作品を作るといったことは一切行われていませんでした。

(13)ラストに続編についての嘘の予告編が付いているというのは『メル・ブルックスの珍説世界史Part1』へのオマージュです。
    この映画、Part1とありますが、Part2はもちろん存在しません。

 

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