天気のいい日は、ふと歩いてみたくなる
友達もいっしょだと、とてもうれしい
一人で歩くのは「ただ歩く」だけど
みんなで歩くと「楽しい歩く」だ
同じ歩くなのに不思議だな
ぼくはぼくで一人の自分だ
アライグマくんもシマリスくんもそれぞれの一人の自分だ
一人が集まってみんなになると、どうして楽しくなるんだろう
一人とみんなってどこが違うのかな
どこが違うのかなったら
とてとてとて
昼下がりの森をぼのぼのたちが歩いていました。
目指すはスナドリネコさんのすむほら穴です。
この時間ならば、スナドリネコさんはそこで昼寝をしているはずです。
もっとも、この時間に限らずスナドリネコさんは、たいてい昼寝や朝寝や夜寝をしていますが。
3匹は分かれ道に差し掛かりました。右に行けばほら穴です。
おや?よく見ると2匹しかいません。
「あれ、シマリスはどうしたのよ?」
ふと後ろを振り返ったアライグマが、ぼのぼのに尋ねました。
「えっ?あれっ?あれっ?」
ぼのぼのがキョロキョロと振り返りました。
さっきまで横を歩いていたシマリスの姿がありません。
「ほんとだ、どこいっちゃったんだろうね?」
「知らないわよ。案外、面倒くさくなって帰っちゃったんじゃないの?」
内心、シメシメと思いながらアライグマは素知らぬ顔で言いました。
これで邪魔者なしでぼのぼのと二人っきり。楽しくお散歩と洒落込めそうです。
「シマリスくんはそんなことしないよ。ちょっと待ってて、ぼくが探してくる」
ぼのぼのはいま来た道を引き返そうとします。
アライグマの気も知らないで、誰にでも優しくはっきりとしない困ったやつです。
もっともそこがぼのぼのの良いところで、そしてアライグマが好きなところだったりもします。
しかし、アライグマは怒りました。
なぜって?そりゃアライグマだからです。
「ちょっとぼのぼの!!あんた、このあたしをほったらかしてシマリスのやつを探しに行くつもりなの?
いったい、あたしとシマリスのどっちが大事なのよ!?」
「どっちが大事って・・・別にそんな問題じゃぁ・・・」
ぼのぼのは言葉に詰まってしまいました。
あたふたと助けを求めるように周りを見渡しますが、もちろん誰もいません。
ぼのぼのピーンチ。
トトトトッと冷や汗をかいています。
「シマリスが勝手にいなくなったんだから、わざわざ探しに行く必要なんかないわよ。
それに、スナドリネコさんのとこで話を聞くだけなんだから二人で充分でしょ。
それともわたしと二人っきりはイヤなの?どうなの?」
「イヤじゃなよ、もちろん。アライグマくんといっしょだと楽しいよ。
アライグマくんって元気だし、いろんなことを知ってるし、それに・・・」
「それに・・・なによ?どうせ、『それに乱暴者だし』って思ってるんでしょ」
「違うよ。それに・・・アライグマくんって時々すごく可愛いし」
「ばっ、バカねぇ、何いってんのよ」
思いがけないぼのぼのの言葉にうれしかったアライグマは、照れ隠しにぼのぼのの頭をバシバシと叩きました。
「さっ、現れる前にさっさと行くわよ」
アライグマはぼのぼのの手を引っ張って歩き出そうとしました。
「誰が現れる前なの・・・?」
「そりゃ、シマリスに決まってるじゃない・・・きゃぁぁっ」
「あっ、シマリスくん」
いつの間に現れたのか、シマリスが2匹の横に立っていました。
一見ぼんやりとした様子ですが、アライグマに向ける視線は何か言いたげです。
「一人で勝手な行動してどこ行ってたのよ、シマリス?
いいとこ、わたしがリーダーなのよ。断りなくいなくならないで欲しいわね」
話をごまかそうと、アライグマは威張った口調でシマリスを責めました。
シマリスはそれには答えずにさっさと歩き出します。
「ちょっと、あんたどこ行くのよ」
「スナドリネコさんのこと。違うの?」
「だぁかぁらぁ、それはわたしが決めるってば。わたしがリーダーだって言ったでしょ」
「誰があなたがリーダーだって決めたの?」
「もちろん、このわたしよ。文句あるっての」
「まぁまぁ、二人ともケンカは止めようよ」
さすがにヤバい雰囲気を感じたぼのぼのが2匹を止めに入りました。
「また会えてよかったよ、シマリスくん。ぼくたち、心配していたんだよ」
「わたしは心配してないわよ」
アライグマはわざわざ大声でいいます。
「いったいどこに行ってたの?ぼく、探しに行こうと思ってたんだよ」
「クルミ・・・」
「えっ?」
シマリスの言葉にぼのぼのは首をひねりました。
「クルミを落としてしまって、拾いに行っていたの」
ほらこれ、とばかりにシマリスはクルミを見せました。
形のいい、とてもおいしそうなクルミでした。
「そうか、見つかったんだね。良かったねシマリスくん」
「良かぁないわよ。そんなことでみんなに迷惑かけるんじゃないわよ」
アライグマはぼのぼのをグイッと押しのけました。
「前から気になってたんだけど、どうしていっつもクルミを持ち歩いてるのよ?
どう見たって、じゃまっけじゃない」
「絆だから・・・」
「絆?」
「そう、絆・・・」
ぼのぼのの言葉に、シマリスはコクッとうなずきました。
「ふぅぅん、そうなのぉ。絆なのぉ、じゃあしょうがないわねぇ」
アライグマのこめかみに、ヒクヒクッと血管が3筋浮かび上がりました。
手近にあった木の棒を拾うと、アライグマはスタスタと10メートルほど先まで歩いていき、そこの地面に小さな丸を描くと、また戻ってきました。
「いいかげんにしなさいっ」
木の棒を振り上げると、足元にいるシマリスをバシッと勢いよく引っ叩きました。
青空に舞い上がったシマリスは、いつものごとく美しい放物線を描きました。
ボスン
シマリスが落ちたのは、アライグマが描いた丸から20センチほどずれていました。
「ちっ、アゲインストの風を読み間違えたわね」
アライグマは、それはそれは悔しそうに言いました。
その後ろを、ぼのぼのがアタフタと右往左往していました。
うーん、役に立たないやつ。
「いないじゃない」
「いないね」
「・・・いないわ」
ようやくとほら穴にたどり着いた3匹ですが、そこにいるはずのスナドリネコの姿はどこにもありませんでした。
さして広くはないほら穴のすみずみまで探したのだから間違いはありません。
「ううっ、スナドリネコさんはぼくのことが嫌いなんだ、そうに決まってるんだ。
だから、ぼくがやってくることを知って、会いたくないからどっかに行っちゃたんだ。
ううっ、どうしよう。ぼくはスナドリネコさんに嫌われてるんだぁぁぁ」
よっぽどショックだったのか、ぼのぼのがメソメソと泣き出しました。
力なく地べたに座り込み、膝を抱えて丸まっています。
「ああっもう、うっとおしいわね。いちいち泣くんじゃないわよ。
そんな心配しなくても大丈夫よ、誰もあんたのことなんか嫌っちゃいないから」
アライグマは乱暴な口調とは裏腹に、ぼのぼのの頭をやさしく撫でました。
いつの間に近づいていたのか、シマリスはぼのぼのの膝に手をかけています。
その手の暖かさに、ぼのぼのはちょっとだけ落ち着きました。
「そうかなぁ、ほんとうにぼくは嫌われてないの」
「ないない。だから安心しなさいって」
「・・・・・・うん」
しばらくして、ぼのぼのはこっくりとうなずきました。
まだなにか悩んでいるようでしたが、とりあえず少し元気になったようです。
しかし、いつもほら穴で寝ているはずのスナドリネコは、いったいどこに行ったのでしょうか。
何やら秘密が見え隠れしています。
スナドリネコをたずねての3匹の冒険はまだまだ続きます。
つづく