必殺技開発極秘会議議事録

 

日時:皐月吉日

場所:音流布城第一会議室

議題:必殺技の開発およびその特訓方法

 

議長:碇アスカ姫

出席者:冬月シンジの助

書記:勘定奉行会計方 伊吹マヤ

 

第一案

 提案者:碇アスカ姫

 名称:電光唐竹割り

 必殺技詳細
  藩医赤木リツコ博士(うふっ)の診療所より、実験用エレキテルを借り出し(無断で)、
  シンジが背負った上で、刀に通電する。
  対戦相手は、刀がかすっただけで感電のため戦闘不能となり、シンジが勝つ。

 問題点
  エレキテルは重量があり、シンジの体力では背負ったままの戦闘は不可能と思われる。
  さらに、シンジ自身が感電する危険性が高く、リスクが大きすぎる。
  そもそも、あのリツコ博士(はーと)の目を盗んでエレキテルを借りる(無断で)のが、
  非常に困難であろう。

 結論
  上記の問題点から却下となる。

       

第弐案

 提案者:碇アスカ姫

 名称:爆裂烈火剣

 必殺技詳細
  刀に爆薬を仕込み、相手に当たった瞬間に爆発させる。
  その衝撃で、どんなに屈強な相手でもイチコロである。

 問題点
  アスカ、シンジ両名とも、危険物取り扱い免許は持っておらず、火薬の取り扱いが出来ない。
  これから資格を取る時間はない。
  対戦相手が、本当にイチコロになりかねず、シャレにならない。

 結論
  上記の問題点から、当然のごとく却下となる。

 

第参案

 提案者:碇アスカ姫

 名称:木の葉隠れ

 必殺技詳細
  音流布藩技術開発所による大型扇風機を使い、木の葉を舞い飛ばす。
  木の葉によって対戦相手の視界が奪われ、そこで対戦相手に生じた隙をついて倒す。

 問題点
  古来より忍者も使う由緒正しい技だが、武道場の床には木の葉が落ちていないのが、
  唯一の問題点である。
  集めておいた木の葉を、あらかじめ武道場にばら撒いておくことも検討されたが、
  枯れ葉の落ちている季節ではなく、不自然さから見破られる恐れがある。
  また、シンジの視界も奪われるので、逆に隙を突かれる危険性もある。

 結論
  上記の問題点より、またまた却下となる。 

 

第四案

 提案者:碇アスカ姫

 名称:変移抜刀ミジン斬り

 必殺技詳細
  名前しか思いついていない

 問題点
  名前しか思いついていないため、どんな技かわからない。

 結論
  上記の問題点より、これまた却下となる。         

 

「だぁーっっ!!もう、ぜんぜん決まらないじゃない」

 たび重なる却下に、ついにアスカが切れた。

 その叫び声は、城内に響き渡った。

 音流布は今日も五月晴れである。 



第六話

  ”姫さま そりゃあ無茶です”



「あれも反対、これも反対って、さっきから、人の意見に文句を言ってるだけじゃない。
ケチをつける暇があったら、あんたたちも一つぐらい技を提案しなさいよ」

『そんなこと言われてもなぁ』

『ねぇ、シンジ君』

 まいったなという表情で、視線を交わすシンジとマヤであった。

『奥方様にいわれて、二人を呼びにきただけなのよ、わたし。』

 そうなのである。
 二人に用があるらしいユイの言い付けで、二人を探しにきたところを、
 ちょうどいいから書記をやんなさい、とアスカから紙と筆を押し付けられてしまったのだ。
 そもそもの経過が分からないのだから、必殺技を考えろといわれても思いつくはずもない。
 だが、それでアスカが納得するはずもなかった。 

『ごめんなさい、マヤさん。変なことに巻き込んじゃって』

『シンジ君が謝ることないわよ。あなたが悪いわけじゃないんだから』

 マヤは、ニコッと微笑んでみせた。
 人柄を感じさせる、暖かい笑顔であった。なかなかに魅力的な女性である。
 多少潔癖症のきらいはあるものの、事実彼女は清純派として城内でも人気が高い。
 城内で密かに行われた、『お嫁さんにしたい相手投票』でも、堂々の二位に輝いたという。
 ちなみに、マヤをおさえて一位になったのはユイである。
 ゲンドウが権力を利用して、大量の票を投じたのと黒い噂もあるが、事実は闇の中である。

 そんなマヤの笑顔に、思わずポッと顔を赤らめるシンジであった。
 当然、面白くないのはアスカである。

――なによシンジったら、マヤなんかと仲良さそうにしちゃってさ。
 わたしを見て、あんな風に顔を赤くすることなんてないじゃない。
 はっ、もしかしてマヤったら、どさくさ紛れにシンジにちょっかいだす気じゃないでしょうね。
 考えてみれば、これまでもシンジに対して妙に優しかったりして、怪しさ20倍だわ。
 そうよ、あの手の顔は少年好きと相場が決まってるわ。
 大変、シンジを魔の手から救わなくっちゃ!

 勝手に決め付けて盛り上げるアスカだった。
 失礼な奴である。 

「ちょっと、なに二人してコソコソやってるのよ、イヤらしい。
あんたも、ニヤけた顔してるんじゃないの」

 アスカは、シンジの左頬をギリリッとつねり上げた。
 泣きそうになりながら、シンジは必死で弁解を試みた。

「いひゃいよあふぅきゃ。べふゅににゃーけたきゃおにゃんきゃ・・・
(痛いよアスカ。べつににやけた顔なんか・・・)」

「してるわよ。なにさデレデレしちゃって」

――よく聞き取れるわね。さすが幼なじみ。

 マヤはちょとばかり感心した。
 横で聞いている自分にはさっぱりわからないが、二人の間では会話が成立しているのである。
 単に幼なじみというだけでは、説明がつかないかな、とも思う。

――シンジ君も災難ねぇ、あんなに怒ることないのに。
 ひょっとしてひょっとすると、姫さま焼きもちを焼いているかしら。
 クスッ、けっこう可愛らしいわね。

 強気で強情な上に身勝手と思っていた(おいおい・・・)アスカの、意外な一面に気付いたマヤである。

「マヤもマヤよ。なによこの議事録は、真面目に書いてないでしょ。どこの世界に、重要な会議の議事録に、
(うふっ)とか(はーと)とか(あはん)とか書く人がいるのよ」

 シンジをマヤから引き離すのに、とりあえず成功したアスカは、今度は矛先をマヤに向けた。

「いえ、(あはん)は書いてないんですけど」

「うるさいわね。どのみち、今どき(うふっ)はないわよ。恥ずかしいったらないわ」

「そんなの、わたしの自由じゃないですか。無理矢理に書記を押し付けたくせに」

「まあまあ、アスカ。それにマヤさんも落ち着いて」

 止めに入るシンジであったが、頭に血の上った二人からはあっさり無視される。

「なによ丸文字世代が。若ぶっていても、字を見れば年がばれるってもんよ。
しょせんは、ミサトたちのお仲間ね」

「ひっどーい!!いくら姫さまでも、言って良いことと悪いことがありますよ。
そりゃ、姫さまよりは年は上ですけど、葛城先生と一緒にするなんてひどすぎます。
わたしはまだぴっちぴちですぅ〜」

「誰も僕を見てくれない。
いーんだいーんだ、どーせ僕はいらない子なんだ・・・いじいじ」

「えーいっ、鬱陶しい!!あんた、男でしょうがっっ!!」

 イライラして、シンジの右頬をつねり上げるアスカであった。
 先ほどとは違う側をつねっているところに、シンジへの思いやりが感じられた。
 やられているシンジからしてみれば、あまり違いはなかったろうが。

――やっぱり、強気で強情な上に身勝手だわ。可愛くないっっっ!

 先ほどの感想を、あっさり取り下げるマヤであった。

 

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 「はっくしょーん!!ちくしょう」

 ミサトが、大きなくしゃみをした。
 学校から帰ってきて、さっそく一杯やっていたところである。
 くしゃみの大きさはまだいいとして、さすがに「ちくしょう」はないだろうとも思うが・・・

「だれか噂でもしてたのかしら。まあ、この美しさだもんね、噂したくなるのも無理ないわ。
もしかして、この間リツコと行った飲み屋で隣のテーブルにいた、メガネの子かな?
あたしのことを、ずーっと見てたもんね」

 どんな噂をされていたのか知らないミサトは、お気楽なことを言った。
 ちなみに、飲み屋の彼は、ミサトの飲みっぷりに感心していただけである。
 とりあえず、今のところは。

「さーて、二本目二本目っと(うふっ)」

 アスカが聞いたら、すかさず突っ込むであろう発言をしながら、ミサトは徳利を手に取った。
 徳利には福々しい恵比寿様の絵が描かれている。
 恵比寿麦酒である。 
 トウジの家である鈴原屋で売り出している、南蛮酒だ。
 発泡性であるため小売りができず、これまでは飲食店のみで提供されていた。
 それを、特別に開発した密封徳利にいれてあるところが、鈴原屋ならではの工夫である。
 そのおかげもあってか、現在人気商品となって、生産が追いつかないとも聞く。
 もっとも、そのうちの何割かは、特に名を伏せるとある女性の胃袋に入っているらしいが・・・

「んかーっ!この一杯のために生きてるー」

 特に名を伏せるとある女性が、徳利を一気に飲み干した。
 とても幸せそうだった。
 女二十九歳、うれし楽しい独り酒であった。

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「だいたい、あんたたちやる気があるのっ?必殺技をなめるんじゃないわよ。
シンジっ、あんたのためにやってあげてるのよ。本人が真面目に考えなくてどうするのよ」

 アスカが、わめいた。

「だけどさぁ、アスカの考える必殺技って、いくらなんでも無茶だよ。
どれもこれも、反則ぎりぎりじゃないか」

「って言うより反則そのものよ、シンジ君」

 冷静さを取り戻したマヤが指摘する。

「うっさいわね。そんなこと黙ってれば誰も気付かないわよ」

「気付くってば」

「まあ、気付くでしょうね」

 うんうん、とマヤはシンジの言葉にうなずいた。

「やっぱり、剣術大会に必殺技なんて必要ないよ。
それよりちゃんと練習して、正々堂々と闘ったほうがいい。
たとえそれで負けても、ぼくはそっちのほうがいい」

 アスカを真っ正面から見据えて、シンジが力強く言った。

「って・・・・・・」

 怒りの声をあげようとしたアスカは、思いとどまって口を閉ざした。
 シンジの目を見て、自分が間違っていたことに気がついたのである。
 アスカは、ちょっとだけ反省した。
 もちろん、ちょっとだけ、だったが。 

「あんたがそうだって決めたんなら、まあいいわ。
会議はお開きにしましょ」

「・・・わかってくれてありがとう、アスカ」

 いつもの優しい目のシンジだった。

「べっ、別に。わたしだけ真面目に必殺技を考えるのがバカバカしくなっただけよ」

 ふんっ、と意地を張ってしまうアスカだった。
 そんなアスカを、シンジはニコニコと見つめている。

――やっぱ、ただの幼なじみって感じじゃないわよね。
 あーあ、あてられちゃうなぁ。いいわよねぇ

 すっかり忘れ去られているマヤであった。

「会議が終わったのなら、奥方様の部屋に行って欲しいんですけど。
なんでもお二人に用事があるとのことですよ」

 ようやく自分の役目を思い出したマヤが、アスカとシンジにそう告げた。

 

つづく       

 

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すみません。

はなっから謝ってしまいます。
いくらしょうもない小説でも、今回の導入部は反則だよな〜
すでに、小説じゃないよな〜
ごめんなさい

今回は、久々のミサトに加え、勘定奉行会計方のマヤと、名前だけですが藩医のリツコが
登場しました。リツコはこの皐月編のうちに実際に登場する予定です。
ちなみに、飲み屋にいたメガネとは、日向です。同僚に青葉もいるようです。
彼らはこの皐月編には登場・・・しないだろうな。

「なんですか、その皐月編って?」

「あっ、伊吹マヤさん。今回はお疲れさまでした」

「ほんと大変だったんですよ〜。姫さまったら怒りっぽいんだから」

「まあまあ、気が短くてこそのアスカ姫、そのくせ照れ屋でこそのアスカ姫なんですから」

「べつにいいですけどね。もうじきリツコ先輩(うふっ)も登場するのなら我慢します。
で、さっきの皐月編なんですけども」

「そうそう、その皐月編だけど、読んで字のごとく五月を舞台にしたお話です」

「すると、これから水無月編や文月編もあるんですか?」

「もちろん。卯月編までのぐるっと回って一年間を書くのが目標ですよ」

「そうだったんですか。でもそれっていつの事になるんですか。
今の様子じゃ、ずいぶん先のことになりそうですけど」

「ぐっ・・・それは聞いて欲しくなかった」

「第六話も、ドタバタしたわりに、話としては実質的に進んでいませんよね。
皐月編は全何話の予定なんですか?」

「たぶん拾弐話」

「最初の予定では?」

「伍話」

「ぜんっぜん予定が狂ってるじゃないですか。それで本当に一年間を書けるんですか?」

「・・・・・・善処します」

「そんな役人みたいなことを言っても、この勘定奉行会計方である伊吹マヤの目は、
ごまかせませんよ。駄目ですよ、予定期日は守らなきゃ」

「しょぼん」

「まあ、地道にやればなんとかなりますよ。がんばって下さい。
それじゃあ、失礼します」

「はい、さようなら。
でもほんと、いつの日になるやら・・・
地道にやろうっと」

 

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