『エスター』(2009) ORPHAN 123分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES、DARK CASTLE
監督:ハウメ・コジェ=セラ 製作:ジョエル・シルヴァー、スーザン・ダウニー、ジェニファー・デイヴィソン・キローラン、レオナルド・ディカプリオ 製作総指揮:スティーヴ・リチャーズ、ドン・カーモディ、マイケル・アイルランド 原案:アレックス・メイス 脚本:デヴィッド・レスリー・ジョンソン 撮影:ジェフ・カッター プロダクションデザイン:トム・マイヤー 衣装デザイン:アントワネット・メッサン 編集:ティム・アルヴァーソン 音楽:ジョン・オットマン
出演: ヴェラ・ファーミガ、ピーター・サースガード、イザベル・ファーマン、CCH・パウンダー、ジミー・ベネット、アリアーナ・エンジニア、マーゴ・マーティンデイル、カレル・ローデン、ローズマリー・ダンスモア
めでたく3人目の赤ちゃんを身ごもったケイト・コールマン(ヴェラ・ファーミガ)だったが、運悪く流産という悲劇に見舞われてしまう。それは、アルコール中毒患者だった経験のあるケイトの精神に耐え難い苦痛をもたらし、コールマン家の安定を脅かしかねない事態となる。
そこで夫婦は養子を迎えることを決意、地元の孤児院を訪れる。するとケイトは、聡明で大人びた一人の少女、エスター(イザベル・ファーマン)に惹きつけられる。彼女を養子として引き取ることにしたケイトだったが、やがてエスターの恐るべき本性に気づいてしまい......
マコーレー・カルキン君&イライジャ・ウッドの『危険な遊び』などの悪魔の子供系のサスペンス・ホラー映画に思える。それが終盤のどんでん返しでそうでないことが分かるのだが。
監督は『蝋人形の館』のハウメ・コジェ=セラ。その間に『GOAL2!』を撮っているのがよく分からない人だが、『蝋人形の館』と同じく恐怖を描いてくれている。恐怖という面ではこの作品の方が強いだろう。
一見、純粋無垢な女の子が実は非情な殺人鬼で、これまでも放火で一家皆殺しにしてきたり、この作品中では彼女の素性に疑問を持った孤児院のシスターをハンマーで殴り殺す。最初は良い子のエスターが本性を現していく過程が怖ろしい。
自分をいじめた子を滑り台の上から突き落とすぐらいはまだ可愛いのが怖ろしい。
エスターはケイトの実の子である兄と妹を巻き込んで一家を身動き取れないようにする。
特に妹マックス(アリアーナ・エンジニア)はエスターにシスター・アビゲイル(CCH・パウンダー)殺しの共犯者の汚名を着せられて、ただでさえ聾唖者で他人とのコミュニケーションが取れないのを利用されてひどい目にあわされる。
兄のダニエル(ジミー・ベネット)はツリーハウスに火を着けられて出入り口に鍵をかけられ、決死の思いで飛び降りるが病院のICU行きになりそこでエスターに息の根を止められそうになる。
夫のジョン(ピーター・サースガード)がエスターに誘惑されそうになる時に、どんでん返しのはしっこが見えるがあの時点でオチが分かる人はそうはいないだろう。単に大人びた子供としかとらえられないはずだ。オチが分かってしまえば、ダニエルを脅すのもジョンをたらし込むのも、ましてやマックスを支配下に置いてしまうのも納得出来る。
大人は殺すが子供は殺さないのがハリウッド映画の限界か。でも、実際に殺されたら後味が悪いったらないからこれでいいのだ。
伏線の張り方が徹底していて、ケイトのアルコール依存症やジョンの浮気、などなど全て上手く機能している。ケイトのアルコール依存症の過去は流産した子の想い出である白いバラをエスターがケイトに摘んできてカッとなったケイトがエスターの腕を掴むシーンに活かされている。その後、エスターは自ら捕まれた腕を万力で骨折させて、ケイトを追い込むのだ。この万力のシーンは見ていて痛い。
憎らしいくらいにエスターの頭がよいと思ったシーンは、ツリーハウスの火事で瀕死の重傷を負ったダニエルの口を封じるためにエスターが彼を殺そうとするシーン。ICUでは患者の脈拍が常時、記録されているので、彼女はバレないようにと自分の脈拍をその代わりにする。
カウンセラーにかかった後に、カウンセラーの前では良い子を演じたストレスからかトイレの中で暴れるシーンは怖かった。狂ったように壁を蹴ってトイレットベーパーもまき散らしながら暴れるのだ。
ケイトがエスターの出身地ロシアの孤児院に連絡を取ったところ、精神病院に繋がってしまうところがこの映画の肝だ。そこでエスターが首と両腕首のリボンを決して撮らなかった理由が分かる。しかし、こんな孤児を悪人に描く映画を撮って実際に孤児を引き取る人が少なくなったらどうするんだろう。
エスターの部屋には、彼女の描いた数多くの絵が貼ってある。それが水槽のブルーランプで照らされた時、彼女の歪んだ欲望が浮かび上がる。彼女は自分の欲求を解消するかのように殺人を繰り返してコールマン家にやって来た。怖ろしい。子供は殺さないが大人は殺すので自分の誘惑に乗ってこなかったジョンもナイフで刺し殺す。恥をかかされた女は怖ろしい。
もしも彼女がコールマン家での活動も成功していたら次の家庭に行ったのだろうか。そしてそこも破綻に追い詰めたのだろうか。
『ロスト・チルドレン』
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