東森時音: 2012年2月アーカイブ

B006QJS7TU.jpg『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(2006) THE FAST AND THE FURIOUS: TOKYO DRIFT 104分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:ジャスティン・リン 製作:ニール・H・モリッツ 製作総指揮:クレイトン・タウンゼント 脚本:クリス・モーガン 撮影:スティーヴン・F・ウィンドン プロダクションデザイン:アイダ・ランダム 衣装デザイン:サーニャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ 編集:フレッド・ラスキン、ケリー・マツモト 音楽:ブライアン・タイラー
出演:ルーカス・ブラック、バウ・ワウ、千葉真一、サン・カン、ナタリー・ケリー、ブライアン・ティー、北川景子、妻夫木聡、柴田理恵、KONISHIKI、中川翔子、ヴィン・ディーゼル

 アメリカで三度の無謀運転で逮捕されたショーンは、少年院行きを逃れるために母親と離婚した父親が住む東京にやって来る。ショーンの父親は軍人で彼が三歳の時に離婚しているので関係は微妙である。
 詰め襟を着て都立高校に通い始めたショーンは慣れない環境の中で、黒人のトウィンキーと知り合い、彼の紹介でドリフトレースの見学に来る。立体駐車場の中で行われるそのレースはなんといっても狭く急カーブが連続したコースでのドリフトが見物。ショーンはハンから車を借りて出場するが、あちこちぶつけた挙げ句廃車にしてしまう。
 ハンに借りが出来たショーンは、借金の取り立てを手伝うことになる。取立の親玉はカマタ(千葉真一)でショーンを負かしたDKはその甥だった。ハンが上がりの一部をかすめ取っていることに気付いたカマタは、DKに命じてハンを見せしめにすることにする。
 渋谷でのカーチェイスの後、ハンは事故って車が爆発してしまう。ショーンはハンの仇をとるためカマタに直談判に行き、DKとの峠でのレースをすることになる。
 日本語も喋れないショーンがアメリカンスクールではなく都立高校に転入するのはなぜなのだろうか。そして早速、教師に土足を怒られ"上履き"に履き替える。ショーンの父親も在日軍人なのだからそれ用の住宅に住んでいそうなものだが、古びた木造の平屋建てに住んでいる。
 外国映画ならではの勘違いした日本描写を期待していたのだが、意外としっかりしていた。英語と日本語がチャンポンだったりするが、文化を描いた作品ではなく娯楽映画なのでこれは構わないだろう。
 ポール・ウォーカーが出ていないので番外編扱いだと思うが、ラストにはヴィン・ディーゼルがカメオ出演している。他にも日本の芸能人がカメオ出演しているのだが、アメリカ人には分からないだろうから果たしてカメオ出演と言っていいのだろうか。妻夫木聡なんて「ゴー」とスタートの合図をするだけだからな。柴田理恵の方がまだ出番が長い。KONISHIKIは銭湯で湯船に浸かっている借金男として登場。中川翔子はどこに出ているか分からなかった。
 別格扱いなのは千葉真一。ヤクザの親分でかなり渋い。組織内の規律には厳しいが、ラストはショーンを自由にしてくれる。
 ぶっ飛ばすだけのアメリカのストリートレーサーだったショーンが、日本でドリフトというテクニックに出会いそれに魅了されていく。最初はタイミングなどが全然合っていないのだが、特訓によって段々上達していく。ちょっと上達しすぎじゃないかとも思うが、天才的ドライバーだったのだろう。
 日本でのロケも多いが、大半のシーンはハリウッドで撮影されたのだろう。特にレースやカーチェイスのシーンは日本での撮影は難しい。渋谷でのカーチェイスはロサンゼルスで撮影した映像に渋谷の光景を背景として合成したものだそうだ。渋谷のスクランブル交差点に通行人がたくさんいる中にドリフトで突っ込んでいくシーンはかなり爽快。でも一歩間違えば犠牲者が大勢出る大事故になっていたはず。エンドロールにも出てくるが「プロのドライバーが演じているので、真似しちゃ駄目」だぞ。
 ラストの決着がレースで決まるというのがやはりいい。しかもハンが残した廃車のエンジンを父親のフォード・ムスタングに乗せ替えて日米合わせ技にしてしまう。それにしてもショーンは高校生なんだが、アメリカでは16歳で免許が取れるけど、日本じゃ駄目だろ。無免許運転なのか?
 日本が舞台なのに重要な日本人役が韓国人と思われる俳優に演じられているのは残念。やはり言葉の壁は大きいか。日本でももっと英語が喋れる俳優が出てくることを期待する。
 それにしてもスポーツカーなのにナンバーが4ナンバーだったりする。

B006QJS7S6.jpg『ワイルド・スピードX2』(2003) 2 FAST 2 FURIOUS 108分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:ジョン・シングルトン 製作:ニール・H・モリッツ 製作総指揮:マイケル・フォトレル、リー・R・メイズ キャラクター:ゲイリー・スコット・トンプソン 原案:ゲイリー・スコット・トンプソン、マイケル・ブラント、デレク・ハース 脚本:マイケル・ブラント、デレク・ハース 撮影:マシュー・F・レオネッティ 編集:ブルース・キャノン、ダラス・プエット 音楽:デヴィッド・アーノルド
出演:ポール・ウォーカー、タイリース、コール・ハウザー、エヴァ・メンデス、リュダクリス、デヴォン青木、マイケル・イーリー、アマウリー・ノラスコ、トム・バリー、ジェームズ・レマー

 前作で潜入捜査官を演じたブライアンは強奪団のボスを逃がしたことで、公務執行妨害と逃亡幇助の罪に問われ今では警察から追われる身となっていた。ストリート・レースで金を稼ぐ彼は警察に捕まり、今度は麻薬王のところに潜入捜査するように命令される。そうすれば罪は帳消しにするというのだ。
 麻薬王は麻薬を売って稼いだ金をあるところに隠していた。それを運ぶのが仕事である。
 レースシーンが前作ではゼロヨンレースだったのに対し、今作では街を一周してくるなどより工夫されたものとなっている。跳ね上げ式の橋をジャンプで越えるなど迫力がある。他にはドラム缶を目印に折り返してくるなど、単にアクセルベタ踏みで最後はニトロとは違っていて面白くなっている。
 ただし、レースのシーンは前作より減っている。それよりも警察とのカーチェイスなどがメインの扱いだ。それにしてもブライアンはそれほど運転が上手いという設定ではなかったはずだが、いつの間に腕利きドライバーになっていたんだ。カーアクションは「とりあえずぶっ飛ばせばいいんだろう」と言った感じでもっと工夫出来るのではないだろうかと考えてしまう。
 ブライアンが最初に乗っていたのはスカイラインGT-R。その後はランサーエボリューションに乗り換える。この車は警察から支給されたもので、GPSが搭載されており、車がどこにあっても警察には筒抜けである。最後はアメ車に乗り、麻薬王が逃走に使っているクルーザーに向かって大ジャンプ!
 カーアクションは前作を越えている。ストーリー的にもシンプルだった前作に比べ、逃亡中のブライアンが再び潜入捜査をすることになり、麻薬王のところにも女性潜入捜査官がいるという設定でより面白くなっている。潜入捜査に頼りすぎている気もするが、軽くなっているので気楽に観ることが出来る。ただしヴィン・ディーゼルの不在は寂しいかな。
 麻薬王が意外にしょぼいので最後にやっつけても爽快感に欠けるのは残念だ。もっと憎たらしいヤツだったらよかったのに。
 女性潜入捜査官のエヴァ・メンデスは美人だが、出番はそれほど多くないもののデヴォン青木が印象に残った。決して美人なわけじゃないんだけどね。
 それにしても日本車はそんなに速いのか。車好きにはたまらないシリーズなんだろうね。オレは車は日常の足としてしか考えていないんでよく分からないけどね。実際、乗っているのは軽自動車だし。

B006QJS7TK.jpg『ワイルド・スピード』(2001) THE FAST AND THE FURIOUS 107分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:ロブ・コーエン 製作:ニール・H・モリッツ 製作総指揮:ダグ・クレイボーン、ジョン・ポーグ 原案:ゲイリー・スコット・トンプソン 脚本:ゲイリー・スコット・トンプソン、エリック・バーグクィスト、デヴィッド・エアー 撮影:エリクソン・コア 音楽:BT
出演:ヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・ブリュースター、リック・ユーン、チャド・リンドバーグ、ジョニー・ストロング、マット・シュルツ、テッド・レヴィン、ジャ・ルール、マイク・ホワイト、ボー・ホールデン、デヴィッド・ダグラス、レジー・リー、ヴィト・ルギニス、トム・バリー

 トラックを三台のシビックが襲い、積荷を奪いさる強奪事件が連続して起きる。
 ストリート・レーサーが怪しいと睨んだ警察は一人の警官を潜入捜査官として送り込む。ストリート・レーサーのあるグループのボスに気に入られた警官は次第に彼らの中に溶け込んでいく。彼らは本当に強奪犯なのだろうか。上司からタイムリミットを告げられ焦り始める警官は、ボスに自分も強奪犯の仲間に入れてくれと頼み込む。
 改造車が大挙して登場する。車については詳しくないのだが、三菱や日産の車も登場している。ランサーエボリューションやスカイラインなのだろうか。ストリート・レーサーたちが興じるのはゼロヨンと呼ばれるレース。400メートルの距離をどれだけ速く走れるかという物だ。単純で分かりやすいが映画にはちょっと栄えない。
 あまり頭のよくない映画である。警官はストリート・レーサーの一人に化けるのだからドライビングテクニックがあるのかと思ったらあまり大したことはない。ボスはそんな警官を割りと簡単に信じてしまって強奪犯のことは教えないものの仲間にしてしまう。警察に追われているところを助けられた恩義があるのだろうが、警戒心がなさすぎではないだろうか。
 レースはアクセルベタ踏みで最後はニトロ噴射で蹴りが付く単純なものだが、トラックを襲うシーンのカーアクションはそれなりだった。対向車を避けるためトラックの下に入り込むシビックなんてのは面白い。
 警官がボスに借りを返して警察の追っ手から逃がすラストが意外に渋い。でも、この警官は後で首になったろうな。
 警官とボスとの友情、警官とボスの妹との恋など人間ドラマもあるが付け足しのようなもの。メインはレースとカーチェイス。逆にそれらに興味がないと面白くないだろう。
 車には日本車が多く登場するし、盗まれるのもパナソニックのDVDプレーヤーやテレビデオ。日本製品がアメリカで元気があった頃の話なんだ。
 で窃盗団は盗んだ商品を売りさばいて車をチューンナップする資金にする。ボスのセリフじゃないが「ゼロヨンレースだけがすべて」なんだ。

B005UJSH0Q.jpg『コンテイジョン』(2011) CONTAGION 106分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:スティーヴン・ソダーバーグ 製作:マイケル・シャンバーグ、ステイシー・シェア、グレゴリー・ジェイコブズ 製作総指揮:ジェフ・スコール、マイケル・ポレール、ジョナサン・キング 脚本:スコット・Z・バーンズ 撮影:ピーター・アンドリュース プロダクションデザイン:ハワード・カミングス 衣装デザイン:ルイーズ・フログリー 編集:スティーヴン・ミリオン 音楽:クリフ・マルティネス
出演:マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー、ケイト・ウィンスレット、ブライアン・クランストン、ジェニファー・イーリー、サナ・レイサン、ジョシー・ホー、チョイ・ティンヤウ、モニーク・ガブリエラ・カーネン、ダリア・ストロコウス、ジョン・ホークス、アルミン・ローデ、ラリー・クラーク、アナ・ジャコービー=ヘロン、ディミトリ・マーティン、エリオット・グールド、エンリコ・コラントーニ、ジム・オルトリーブ、カーラ・ゼディカー

 原題の『CONTAGION』とは『接触伝染』のこと。『空気伝染』は『INFECTION』。
 接触感染によって広まる殺人ウイルスが人類を襲う。ウイルスに感染すると数日で発病し、風邪のような症状の後一気に悪化し死亡してしまう。映画は「Day 2」から始まる。
 ウイルス映画だと『アウトブレイク』(1995)が思い出されるが、そちらは見所満点でアクションもあった娯楽作だったのに対し、この『コンテイジョン』は極力ドラマチックな展開を避け、淡々とした描写がなされている。それが逆に怖さを強調している。
 殺人ウイルスの猛威よりも、それに関わった人間たちを群像劇という形で多方面から描いている。香港の出張から帰った妻が発病し、義理の息子共々死んでしまった夫のマット・デイモン。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)で勤務する博士のローレンス・フィッシュバーン。いち早くウイルスの存在に気付き、ブログやツイッターで世間を恐怖であおったジュード・ロウなど様々な立場の人物が登場する。
 マット・デイモンは免疫があって妻からウイルス感染しなかったが、実の娘にも免疫があるか分からず、自宅に立て籠もり他人との接触を断つ小市民である。暴動騒ぎになっているスーパーから慌てて帰ってきたり、向かいの家に武装強盗が入ったのでショットガンを用意したりする。アメリカは銃社会だから、パニックになって暴動が起きたら大変だ。日本も東日本大震災でパニックは人ごとではなくなっている。隣の人が銃を持っているような社会じゃなくてよかった。
 ローレンス・フィッシュバーンはCDCの中でも上層部の人間である。ウイルスの研究に没頭したいところだろうに、マスコミに引っ張り出されて大衆に対して説明をしなければならない。恋人に「シカゴを離れろ」と伝えたのがフェイスブックでばれて問題になってしまう。
 面白かったのがジュード・ロウの役柄で、ブログやツイッターでレンギョウが特効薬だと嘘の宣伝して大金を手にする。風刺なんだろうが、今やブログやツイッターが力を持っていることが分かる。家に閉じこもった人々はインターネットで情報を集めて、生き残るすべを探したのだろう。
 顔ぶれが豪華な割りには地味目な作りだが、パンデミックからワクチンの発見とその量産化までが描かれている。まるで事実を映画化したようなしっかりとした脚本と演出で、無理矢理にドラマチックにすることなくリアルに感じられる。
 ワクチンを発見した医師が自らを治験体としてワクチンの効き目を確かめるのだが、かなり無茶と言えば無茶だろう。幸いなことにそのワクチンが効いてくれたおかげで多くの人々が助かったわけだ。それでも必要な量のワクチンを作るには1年ほどかかるので、誕生日でその日ごとのワクチン接種者を選ぶ。ここでこそ暴動が起こりそうなものだが、軍隊が武力で抑えたのだろうか。
 パニック映画を期待して観るべきではない。最後の最後になって「Day 1」が分かるという憎い構成である。とりあえず手を洗おうって事だな。
 それにしてもローレンス・フィッシュバーンは太ったし老けた。

B004X4ZFD6.jpg『沈黙の神拳 TRUE JUSTICE PART6』(2010) 90分 TRUE JUSTICE BROTHERHOOD アメリカ VOLTAGE PICTURES

監督:キオニ・ワックスマン 脚本:スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン
出演:スティーヴン・セガール、ミーガン・オリー、ウォーレン・クリスティー、ウィリアム・"ビッグ・スリープス"・スチュワート、サラ・リンド、レイチェル・ラトレル

『TRUE JUSTICE』シリーズもついにラストエピソードである。
 これまでに日本人の妻がいたとか、イラク戦争で戦っていたとか、日本人の祖父に武士道を叩き込まれただとか少しずつ明らかになってきたセガールの過去だが、今作でも明らかになったことがある。それはアフガン紛争時代、セガールはCIAの諜報員だった! ・・・・・・全然"!"じゃねーよな。セガールが元特殊部隊とか元CIAという設定はこれで何作目だ。
 45分のテレビ番組を2話くっつけて1作にしているのがはっきりと分かるのがこの『沈黙の神拳』。SIUが取り扱う事件が前半後半で全く違う。どうにか繋がっているのはセガールを狙う謎の男たちの存在だが、これはセガール本人の問題でSIUの事件ではない。
 前半は連続レイプ魔事件。5件のレイプ事件が発生し、その内2件では被害者が殺されてしまった。性犯罪課から事件を引き継ぐSIUだが、性犯罪課の女性上司は面白いはずがない。その辺りの確執が描かれるのかなと思ったら、トントン拍子に話は進んであっと言う間に犯人にたどり着く。推理物じゃないとはいえもうちょっと犯人をミステリアスに出来なかったのだろうか。
 結局、犯人は犠牲者と同じ職場で働いていた性犯罪の前科のある男。これってSIUが出てこなくても性犯罪課で充分解決出来た事件じゃないのか。
 セガールは冒頭で自分を襲った謎の男たちについて調べてばかりで事件にはほとんど関わらないくせに、犯人逮捕の現場には颯爽と現れて、おとり捜査をしたジュリエットと犯人が殴ったことに腹を立て「女性を殴るとは感心しないな」と鉄パイプでボコボコに。そのくせジュリエットが犯人を力任せに蹴り始めると「その辺で止めておけ」となだめる。お前が止めとけよ。
 レイプ魔ではなかったけど、私立学校の校長が児童ポルノ所持の容疑で逮捕されてしまうのがアメリカらしい。
 後半はロシアンマフィアがコンドームに詰め込んだダイヤモンドを女性モデルに飲み込ませて密輸するという事件。ところが女性がラテックスアレルギーだったものだから、コンドームでアレルギーを起こしてショック死してしまい、ロシアンマフィアはモーテルで女性の腹をかっさばいてダイヤモンドを取り出し、死体を街角に捨てておく。死体の中ならコンドームの切れ端が見つかったことで密輸絡みだとわかってくる。
 ロシアンマフィアといっても数人のグループで規模は小さい。コカインや覚醒剤を詰め込んだコンドームを飲み込んで密輸するというのは聞いたことがあるがダイヤというケースもあるのか。でもダイヤだったらコンドームに詰めなくてもそのまま飲み込んで排泄された大便の中から取り出して綺麗に洗えばそれでいいんじゃないかと。飛行機の中でゲリしたら大変か。
 腹部が切り裂かれた女性の死体が発見され、猟奇殺人かと思っていたら実は密輸が浮かび上がってくるという風にした方がストーリー的には面白かったんじゃないだろうか。結局、怪しそうなのを片っ端から調べていって犯人にたどり着くといういつものSIUパターンに収まっている。この大雑把さが『TRUE JUSTICE』シリーズの味と言えば味なんだが。
 後半の事件にはセガールはほとんど関わらず、無事に事件が解決して上司に「よくやったな」と褒められると「みんな部下のおかげですよ」と答えているがその通りだ。
 セガールをつけ狙っていたのは賞金目当ての連中だった。何故ならばアフガニスタンでアルカイダの上層部の人間を何人かセガールがぶち殺して賞金をかけられているから。一番執拗にセガールのことを追い回していたのは元CIAの同僚で、アルカイダに殺されかけたところをセガールに救われた男。音を感じこそすれなんで恨むのかというと、その時に恐怖を覚えてしまいそこから抜け出せないからだとか。困ったもんですな。
 結果としてセガールが事件にあまり関わってこないことでSIUがチームで捜査にあたる普通の刑事ドラマっぽくなっている。それを良しと見るかセガールらしさがないと見るかで感想は大きく変わってくるだろう。個人的には破綻してても『沈黙の挽歌』の方が好きだな。
 シアトルから撤退していった麻薬王の存在や、メイソンの肺気腫や奥さんの妊娠と別居、一話だけメンバーに加わったゲイツなど伏線っぽい物はあったがどれも回収されずそのままに。続編を作る気でもあるのかな。

B004X4ZFCC.jpg『沈黙の挽歌 TRUE JUSTICE PART5』(2010) 90分 TRUE JUSTICE BROTHERHOOD アメリカ VOLTAGE PICTURES

監督:ウェイン・ローズ 脚本:スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン
出演:スティーヴン・セガール、ミーガン・オリー、ウォーレン・クリスティー、ウィリアム・"ビッグ・スリープス"・スチュワート、サラ・リンド

 中国マフィアと組んだ日本ヤクザが今回の敵。組んだ割りには中国マフィアはほとんど登場しない。武器弾薬を密輸出しようとしているヤクザを摘発しようとするSIUはタマブチ兄弟との争いになる。
 ヤクザを演じているのは日系人か在米日本人のようだが、日本語よりも英語が達者。「馬鹿野郎」「分かったか」など日本語は単語を片言でしゃべるだけで、長文は英語になる。ヤクザ同士の会話でも何故か英語。名前はイチロウだのカツオだのケンジロウだのどこかで聞いたようなものばかり。
 セガールの意外な出生も明らかになる。父親は在日米軍の軍人で、母親は日本で出会った日本人。彼女は古くから続く武家の出で、セガールは母方の祖父に溺愛され武士として育てられたのだという。日本人とのハーフだったのか、セガール。しかも武士。だからこれまでの話で精神集中をするときには日本刀の手入れをしていたのか。おまけに日本語も喋るぞ。もっともかつては日本で生活していたのだから喋れて当たり前。昔に比べるとセガールの日本語力も落ちているな。普段使っていないと錆び付いてしまうのだろう。『暴走特急』(1995)の公開時に来日して淀川長治さんにインタビューを受けていたけど、ちゃんとした日本語を話していた。個人的にはあの頃のセガールがピークだったな。
 ヤクザとの戦いと平行して描かれる銀行での籠城犯逮捕劇はあまりパッとしなかった。息子をイラク戦争で失い、本人も妻の看護のため欠勤を繰り返して解雇されてしまい、さらに妻も死んでしまう。そして抵当流れで家まで取り上げられるというのに怒った中年の犯人が銀行の偉いさんを人質にして立て籠もるのだが、アクションがあるわけでもなく現場に乗り込んでいったセガールが説得して解決してしまう。セガール拳でやっつけてしまうわけにはいかないのだろうが。いつも武力で解決しているわけじゃないんだよと言うところだろうか。あとはイラク戦争の正当化か。
 銃撃戦はこれまでの中で一番派手かな。格闘アクションも多い。ただし、戦っているのはセガールではなく賭け闘技場でのファイターたち。アクションも他人任せか。
 ヤクザの描写はそれほど間違っている感じはしなかった。どれだけ笑えるかなと期待していたのだが、そこら辺はちゃんとした脚本だ。
 ラストには素手のセガール対日本刀を持ったヤクザの戦いが登場するが、もちろんセガール拳で瞬殺だ!

B004X4ZFCW.jpg『沈黙の弾痕 TRUE JUSTICE PART4』(2010) 90分 TRUE JUSTICE LETHAL JUSTICE アメリカ VOLTAGE PICTURES

監督:ウェイン・ローズ 脚本:スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン
出演:スティーヴン・セガール、ミーガン・オリー、ウォーレン・クリスティー、ウィリアム・"ビッグ・スリープス"・スチュワート、サラ・リンド

 面白かったー! でもセガール主演なのに刑事アクションとしてではなく刑事ドラマとして面白かったんだけど。
 前半はアーリア人による世界支配(そこまで大げさでない)を目論む保安官が選挙に立候補していて、対立候補を暗殺しようとする。ラドナーはセガールの指示で保安官の治める地域ニューソサイエティに潜入捜査を試みる。潜入捜査のためとはいえニューソサイエティの住民に勧められてドラッグまでやってしまうラドナー。このままヤク中になってしまうのか? しかも仕事のためとはいえタトゥーまで入れてしまってそれでいいのかラドナー。
 この騒動は前半でキッパリと終わってしまって後半は謎の狙撃手による教会前狙撃事件になる。やはり45分のTV番組なんだね。レンタルDVD冒頭に入っている予告編だと対立候補が狙撃されたようなことを言っているが全くの嘘だ。
 セガールが助力を求めたのはイラク戦争で部下だった狙撃兵だった。ってセガールイラク戦争行ってるんかい。イラク戦争の回想シーンでの口ひげとあごひげは変装にしか見えないぞ。しかし、この狙撃兵が戦争におけるPTSDに冒されていて、戦場での経験で特に犬の吠え声に敏感であるという設定だ。単に腕利きの狙撃兵ではなくPTSDというのはなかなかいい。
 その合間に、女性SIU捜査官のジュリエットがレイプ犯に異常な執念を燃やしたり、ラドナーとサラがいい感じになったりもする。メイソンの妊娠した妻には触れずじまい。相変わらず吸入器で肺気腫の薬を吸引している。
 冒頭、女性を襲っていた2人組をセガールが叩きのめすのだが、これは単にセガールファンへのサービスかと思ったら保安官の部下としてちゃんとストーリーに繋がっていた。
 ラストは敵の狙撃兵対味方の狙撃兵のスナイパー合戦になってくれると面白かったんだが、そんな地味な展開をセガールが許すわけがない。狙撃兵は銃を取ったらただの人、セガールにボコボコにやられてしまう。
 それにしても前作でラドナーの代わりを務めたゲイツはものの見事に忘れ去られているな。元気に制服警官をやっているんだろう。
 思ったんだけど、セガールとその上司はいい関係を築いているのだが、これが全く正反対の性格だったらどうなっていたのだろうか。お役所仕事の上司に対して、我を貫いて捜査を進めるセガール。そこで起こる対立なんてのも面白そうだ。

B004X4ZFDG.jpg『沈黙の背信 TRUE JUSTICE PART3』(2010) 90分 TRUE JUSTICE STREET WARS アメリカ VOLTAGE PICTURES

監督:ウェイン・ローズ 脚本:スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン
出演:スティーヴン・セガール、ミーガン・オリー、ウィリアム・"ビッグ・スリープス"・スチュワート、サラ・リンド、バイロン・マン

 クラブで密売人から麻薬のエクスタシーを飲んで服用した女性が死んだ。同じような事件が立て続けに起きる。これはシアトルに進出してきた新しい麻薬組織が、エクスタシーに劇薬を混ぜた物を売人にばらまくことで既存の売人の信用を落とし、自分たちの新しい売人に勢力を取らせるためだった。
 麻薬製造工場に自分の建物を貸している老人が誘拐され、その現場ビデオから新入りのゲイツが麻薬取締局DEAの知人に頼んで車の特定をする。だが、その帰り道にゲイツは襲われ重傷を負いDEAの知人も殺されてしまう。
 もう許せねぇとばかりにセガール拳が爆発する。
 このシリーズについてそれなりに情報が集まってきたのだが、どうやら全12話構成のTVミニシリーズらしい。1話45分を2話まとめて90分の作品にしているのだ。そう考えてみていると、45分の段階でフェードアウトになって一旦きりがつく。
 序盤ではパラクールを使う悪党が逃走しセガールの部下との追いかけあいになる。もちろんパラクールには追いつけない。その前に先回りして待ち構えていたセガールが立ちふさがる。セガール拳対パラクールか。これはなかなか見物かもと思っていたら、建物によじ登ろうとするパラクール男の足をセガールが取り押さえるだけで終わってしまった。残念である。それにしてもセガールの先回りに技術はすごい。目の前を全力疾走していく容疑者を相手に、ノッタリと動きながらもいつの間にか行く手を遮っている。テレポートか?
 前作のラストで父親に会いに帰郷したラドナーが不在のため、代わりに1作目からSIUに入れてくれと頼んでいた制服警官のゲイツが入ってくる。ゲイツは市長の甥のためセガールの上司は断り切れなかったのだ。このゲイツは単独行動を禁じるセガールの命令を無視して重傷を負ってしまう。セクハラ発言も連発するし正直嫌われ者なのだが、終盤ではある事実に気付いて犯人を特定する。このまま次作でもSIUに残っているのかどうか微妙なところだが、個人的には案外嫌いになれない。
 黒人警官のメイソンが肺気腫に冒されていることも判明する。吸入器を携帯していて時々薬を吸引しているのだが、走ったりアクションも多く身体を酷使するSIUに所属させたままにしていいのだろうか。さらに妻が妊娠し、家を出て実家に帰ると言い出す。落ち着いた環境で子供を育てたいというのだ。このまま離婚コースまっしぐらか?
 ストーリーとしてはこれまでの3作の中で一番面白かった。とはいえ大した出来ではないのだが。1作目とは違い麻薬王がちゃんと麻薬王に見え、強敵だと感じられるのもいい。麻薬王は結局シアトルから手を引くのだがこのまま逮捕出来ずに終了か。それとも続編で再登場するのか気になる。
 今回のゲスト出演は『山猫は眠らない3』でトム・ベレンジャーの相棒のベトナム人警官を演じたバイロン・マンだろう。過去にセガールとの共演経験もあるし。キャンプ・ハーモニーを取材しに来るマスコミとして登場。口は回るがあまり活躍はしない。
 終盤の銃撃戦はそれなりに派手。格闘技の達人とセガールの対決もあるが、編集で誤魔化している様子。

B004WINBWU.jpg『沈黙の啓示 TRUE JUSTICE PART2』(2010) 90分 TRUE JUSTICE DARK VENGEANCE アメリカ VOLTAGE PICTURES

監督:キオニ・ワックスマン 脚本:スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン
出演:スティーヴン・セガール、ミーガン・オリー、ウォーレン・クリスティー、ウィリアム・"ビッグ・スリープス"・スチュワート、サラ・リンド、ジョージ・タケイ、ツィ・マー

 クラブのストリップダンサーが殺されるという連続事件が立て続けに起きる。被害者はキツネの面を被せられて金網に赤いスカーフで縛り付けられ、口には東洋で死の象徴である白いカーネーションを咥えさせられていた。
 セガールは中国の黒魔術を模倣した殺人事件だと考え、部下のサラをストリップダンサーとして潜入捜査させる。サラが誘拐されるなどの不手際はあったものの無事に事件は解決。しかし、同様の手口の殺人が発生する。模倣犯だと考えたセガールは再び捜査に乗り出す。
 セガールにはサイコサスペンスは似合わないと思う。『雷神-RAIJIN-』(2008)の時にもそう書いたが、シリアルキラーは手口は巧妙な物の武術とかガンファイトが得意なわけではないのでセガールが相手にするには物足りないのだ。それに後半の犯人はあからさまに怪しいので誰がそうだか簡単に分かってしまうのも残念だ。せめてもう一捻り欲しかった。中国の黒魔術を模倣していた理由もよく分からないし。
 PART1と比べるとアクションシーンは少ないが、ちゃんとセガールの顔が映っているので本人がやっていることが分かる。しかも途中のブルースバーではギターの腕前も披露する。なんでも歌手としてCDも出してるらしいな。
 サラは意外とポールダンスが上手い。ただし残念なことに衣服は着けたままで下着にすらならない。ビデオ用映画じゃなくてテレビ用映画なのか?
『スター・トレック』のミスター・カトー(ヒカル・スールー)役のジョージ・タケイや『ラッシュアワー』の中国領事役のツィ・マーがゲスト出演している。ツィ・マーはあまり出番はないが、鑑識官役のジョージ・タケイは結構出ている。
 それにしても相変わらず邦題の意味が分からないな。啓示なんていつ受けた?

B004WINBXY.jpg『沈黙の宿命 TRUE JUSTICE PART1』(2010) 90分 TRUE JUSTICE DEADLY CROSSING アメリカ VOLTAGE PICTURES

監督:キオニ・ワックスマン 製作:スティーヴン・セガール、ニコラス・シャルティエ、デボラ・ガブラー 脚本:スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン
出演:スティーヴン・セガール、ミーガン・オリー、ウォーレン・クリスティー、ウィリアム・"ビッグ・スリープス"・スチュワート、サラ・リンド、ギル・ベローズ

 セガールが特別捜査班SIUを率いて事件解決に挑む刑事アクション。『TRUE JUSTICE PART1』から『6』まであるので多分シリーズ物なのだろう。どうやら劇場用映画ではなくビデオ用映画のようだ。日本で言うVシネマである。セガールは一時は本格的格闘技を使うアクションスターの代名詞だったのだが、太りだしてからがいけない。アクションもセガールが手を振り回すと悪党が勝手に吹っ飛んでいくような感じで、往年の迫力はどこかへ行ってしまった。この人はデビューが遅すぎたんだよな。
 それでも新作が出れば観続けるのがセガールファンである。惰性とか義務感とは違い、そこにセガールがいるからだ。そして相変わらず無敵のセガールを観続けるのだ。いつもストーリーが変わらないとかセガールばかり目立っているとかは気にしない。
 舞台はシアトル。中国人移民の食料店に賊が押し入り店主夫婦二人を殺害し逃亡する。単なる現金目当ての強盗かと思われたが、捜査を進めるうちにロシアンマフィアによる麻薬密売が浮かび上がる。
 店主夫婦殺害でSIUが出張ってくるのが謎と言えば謎。深い陰謀とか複雑な事件には思えないので所轄の警察が担当する程度の事件なのでは。
 その近辺は第二次世界大戦中に日系人が収容されていたキャンプとなっており、セガールの亡くなった妻も日系人だったようだ。DVDの冒頭にはシリーズ6作の予告編が収録されており、中には中国マフィアと日本マフィアが悪党のエピソードもあるようで、親日派セガールが絡んでいるとは言えどんな日本人像が見られるか楽しみである。
 ロシアンマフィアも麻薬王というほど大きな規模ではなく、最後の銃撃戦でもせいぜい10人ぐらいの規模。セガールの部下のほとんどはグロックを使っているが、セガールは例によってコルト45オートだ。
 低予算なのだろう、派手なアクションはほとんどなし。どちらかというとSIUのチームが組んで一つの任務をこなしていくという集団物なのだが、それにしてはセガールが一人だけあまりに強すぎる。『太陽にほえろ!』でボス(石原裕次郎)が最前線で悪党をバッタバッタとなぎ倒している感じだ。
 今回は新しくチームに加わった女性警官がチームに馴染むまでが描かれている。最初は使い物になるのか怪しんでいた仲間から受け入れられるようになっていく描写はそれなりに丁寧だ。
 ラストの突入シーンでセガールたちは"POLICE"ではなく"SHERIFF"と書かれた防弾チョッキを着ているのだが、では警官ではなくて保安官なのか? アメリカの警察組織はややこしくていけない。
 セガールはダイエットをする気はないのかな。身体を絞ればまだまだいけると思うんだが。それにしても相変わらず邦題が意味不明。どこが宿命なんだろうか。

B0009A48F4.jpg『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』(1970) 84分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸、田中文雄 脚本:小川英 撮影:完倉泰一 美術:北猛夫 編集:永見正久 音楽:伊福部昭 アクション:中島春雄 特技・合成:向山宏 特技・撮影:真野田陽一、富岡素敬 特技・操演:中代文雄 特技・美術:井上泰幸 特技監督:有川貞昌
出演:久保明、高橋厚子、土屋嘉男、佐原健二、斉藤宜文、小林夕岐子、中村哲、当銀長太郎、大前亘、藤木悠、杉原優子、堺左千夫

 無人木星探査ロケットのヘリオス7号が消息を絶つ。実は宇宙アメーバによって乗っ取られ、地球に帰ってきていたのだ。ブラジルから日本へ向かう飛行機上で偶然ヘリオス7号のカプセルが着水するのを見たカメラマンの久保明は特ダネを求めてアジア開拓がレジャーランドを建設しようとしているセルジオ島の取材を引き受ける。偶然にもヘリオス7号が着水したのがセルジオ島と同じ座標だったのだ。
 ヒロインの高橋厚子、生物学博士の土屋嘉男、そして民俗学者を名乗る佐原健二の四人が島に上陸すると、二人いたはずの駐在員は一人しかおらず、残った一人も怪獣にひどく怯えていた。島民から禁じられている浜で魚釣りをしていたところイカの怪獣ゲゾラに襲われ一人は殺されてしまったというのだ。
 最初は話を信じない四人だったが、その目の前にゲゾラが現れ、彼らを襲う。
 この作品は初めて観る。見逃してきたのはやはりゴジラが出ていないからだろうか。しかし、怪獣映画ブームも下火になっていた頃にスター怪獣ゴジラに頼らない作品を作ったことは評価出来る。ゴジラ映画ではどうしてもゴジラが主役になってしまい、他の怪獣は引き立て役になるが、この作品では登場するイカの怪獣ゲゾラ、カニの怪獣ガニメ、亀の怪獣カメーバのそれぞれに見せ場があり、その騒動に巻き込まれる人間の姿も描かれている。
 タイトルを見ると三匹の怪獣が南の島で戦うようなイメージを受けるが、怪獣は宇宙から地球を侵略しにやって来た宇宙アメーバによって操られており、基本的にそれぞれが戦うことはない。宇宙アメーバによって普通のイカやカニが怪獣になったのかはちょっと不確かで、原住民の間ではゲゾラなどが存在することになっているので、すでに怪獣はいてそれを操っただけなのかも知れない。
 怪獣の弱点はコウモリやイルカが発する超音波で、それを知った人間たちはコウモリを利用して身を守ろうとするが、実は産業スパイだった佐原健二が宇宙アメーバに乗っ取られてしまい、コウモリを燃やし尽くそうとする。宇宙アメーバは進化の結果手も足もなくなり、他の動物に寄生することでしか生きられなくなってしまった種族なのだ。
 ラストはコウモリの超音波で宇宙アメーバの支配から逃れたガニメとカメーバが本能のままに対決し、火山の噴火口に落ちて大噴火が起きて死んでしまう。残った宇宙アメーバは佐原健二の体内にいる物のみ。それにしても、怪獣が暴れたぐらいで大噴火を起こすような火山がある島にレジャーランドを作っちゃ駄目だろ。
 怪獣の名前は非常にそのまんまだが、造形はそれぞれ凝っている。軟体動物のゲゾラが立って地上を歩くのには驚いた。二本の足以外は作り物だが、意外に全部の足で歩いているように見える。外殻が堅くて機関銃も通用しないガニメが一番の出来だろう。怖さよりもむしろ食欲をそそる。カメーバは大きい亀とはこんな物だろうなという想像の外を出ないが、首が伸びるギミックが面白い。
 佐原健二の悪役振りが中途半端なのが残念だが、逃げ場のない南の島という舞台設定は燃える。もっとも日本にしか見えないけどね。ポリネシア系のはずの原住民も日本人がドーランを塗っているだけだし。原住民のリコを演ずる斉藤宜文はどことなくケイン・コスギに似ていた。
『ゴジラ』(1954)から集中的に観ていた本多猪四郎監督作品もこれで終了。この後本多猪四郎は『帰ってきたウルトラマン』や『ミラーマン』などTVの仕事を中心にするようになる。"ほんだいのしろう"だとずっと思い込んでいたのだが"ほんだいしろう"と読むんだね。特撮映画専門のように思われているが、人間描写もしっかり出来る腕のいい職人監督であった様に思う。仕事として怪獣映画を作ってきたのであってオタクじゃないんだよな。

B000Z7W7TA.jpg『ゴジラ ミニラ ガバラ オール怪獣大進撃』(1969) 70分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 脚本:関沢新一 撮影:富岡素敬 美術:北猛夫 編集:永見正久 音楽:宮内国郎 アクション:覚幸泰彦、中島春雄、小人のマーチャン 特技監修:円谷英二 特殊技術:東宝特殊技術部
出演:矢崎知紀、佐原健二、中真知子、天本英世、石田茂樹、沢村いき雄、堺左千夫、鈴木和夫、伊東潤一、森徹、伊東ひでみ、毛利幸子、田島義文、当銀長太郎、佐田豊、中山豊、
声の出演: 内山みどり(ミニラの声)

 小学生の一郎は内気で両親は共働きの鍵っ子。ガバラといういじめっ子とその取り巻きにいじめられている。今夜も親が帰ってこれず一人で過ごすことになる。そんな一郎の面倒を見ているのはおなじ団地に住んでいるおもちゃコンサルタントの天本英世。悪役ではない善人の天本英世というのも珍しい。あれこれおもちゃを作っているが、実は悪の秘密道具じゃないかと疑ってしまう。
 一郎は怪獣が大好きでそれこそ夢にまで見るほど。夢の中には怪獣島があり、羽田空港からパンナムのジェット機で飛んでいく。そこでミニラと出会い、一郎はゴジラの活躍を楽しむ。ミニラは身体のサイズを変えることが出来、人間サイズになるとちゃんと喋ることが出来る。
 ミニラは怪獣ガバラにいじめられており、ゴジラのスパルタ教育で何でも自分一人で出来なければならないと教えられているのだが、吐く放射能は丸形でなかなかガバラに敵わない。そこでゴジラがミニラの尻尾を踏んだところ、驚いた拍子にちゃんとした放射能を吐くことが出来た。そして一郎との連係プレーでガバラをやっつける。
 一方その頃、世間を5000万円強奪犯が騒がせていた。犯人が逃走用に使った車が一郎の家の近くで見つかり、犯人はその近辺に潜んでいるものと考えられていた。一郎が廃墟と化したビルに忍び込んだところ、一冊の運転免許証を見つけるが、それは犯人の一人が落とした物だった。2人組の犯人は天本英世の車を盗むと同時に一郎を人質として誘拐し、ビルに連れ込む。一郎はミニラが頑張ったことを思いだし、知恵を駆使して犯人を撃退。犯人は警察に逮捕されるのだった。
 そして翌日、仲間にしてやろうかというガバラの申し出を断り二人は喧嘩になる。見事、ガバラをやっつけた一郎にかつての内気さはなかった。
 現実の世界には怪獣はおらず、少年の空想の中にだけ怪獣がいるという怪獣ファンタジー映画である。ゴジラ版『ネバーエンディング・ストーリー』と言っても良い。オール怪獣大進撃となっているが、かなりの怪獣は過去の作品のフィルムを引用しており、新規に撮影された部分は意外と少ない。怪獣映画ブームも過去の物となっており、予算が削られていたのだろう。だが一郎がゴジラの活躍を夢で見ているという形をとっているのでさほど違和感は感じられない。
 これまでの怪獣は現実であるというフィクションを怪獣は実在していないというファンタジーに転換してしまった脚本は見事。そしてその怪獣島の夢の中で少年が成長していくというスタイルになっている。一種のメタ映画である。
 ゴジラ映画としては異色作だし、明らかに低予算なので評判は悪いかも知れないが、本多猪四郎の演出力が感じられ個人的には好きな作品である。
 人間大のミニラは喋るが、怪獣大になったミニラは喋らないなどちゃんと区別がついている。それにしてもミニラは親であるゴジラのことを「ゴジラが」とか呼んでいるのだが、ゴジラは父親なのだろうか母親なのだろうか。自分の親のことを名前で呼ぶのは教育的にちょっとどんなもんだろうと思ってしまう。それをいったら『クレヨンしんちゃん』なんか観れないけどさ。
 ラスト、強奪犯を退治した一郎をマスコミが取材に押しかける。「坊や、一人で怖くなかったのかい?」という記者に一郎や「だってミニラが一緒だもん」と応える。意味が分からない記者に天本英世が「ミニラは怪獣です。大人の世界に神様があるように、子供の世界にミニラ大明神があってもおかしくないでしょう。」とフォローする。しかしミニラ大明神とはミニラ神様かよ。
 堺左千夫と鈴木和夫の強奪犯人が実に間抜け。そもそも免許証を取り返す必要なんて危険なばかりであまりないし、大の大人が『トムとジェリー』のトムのように一郎にコテンパンにやられてしまう。最後はミニラの放射能に見立てた消火器の噴射でノックアウトだ。

B000E8JO7S.jpg『緯度0大作戦』(1969) 89分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸、ドン・シャープ 脚本:関沢新一、テッド・シャードマン 撮影:完倉泰一 美術:北猛夫 編集:武田うめ 音楽:伊福部昭 アクション:関田裕、中島春雄 特技監督:円谷英二
出演:ジョセフ・コットン、宝田明、岡田真澄、リチャード・ジャッケル、大前鈞、リンダ・ヘインズ、中村哲、中山麻理、平田昭彦、シーザー・ロメロ、パトリシア・メディナ、黒木ひかる、黒部進
声の出演:納谷悟朗、冨田耕生

 宝田明と岡田眞澄の研究者、そしてリチャード・ジャッケルの新聞記者を乗せた潜水球が海流調査のために海に潜っていたところ、海底火山の噴火が起きて船と繋いでいたロープが切れ海底に落下してしまう。このままでは死を待つのみであった。しかし、一隻の潜水艦が現れ三人を救助する。潜水艦は外観からして未来的で、どこの国にも所属していないという。
 潜水艦の名前はα号。赤道と日付変更線が交わる緯度0に基地があるのだという。だがそこには陸地はない。実は緯度0は人工太陽を持つ海底都市であった。そこには行方不明になったり死亡されたはずの高名な学者らが暮らし、研究を続けていた。そしてその結果を少しずつ一般社会に教えているのだった。
 放射能に免疫を持たせる薬品を開発した岡田博士も緯度0に来るはずだったが、途中の船が悪のマッドサイエンティスト・マリクの手によって誘拐されてしまう。マリクの基地があるブラッドロック島に救助に向かうα号艦長のジョセフ・コットンと三人はそこで危機また危機の大冒険を繰り広げることになる。
 まずタイトルがいい。『緯度0大作戦』である。なにか不思議な物を感じさせてくれる。実はこの作品、長らく幻の映画だった。東宝とアメリカのドン・シャーププロとの合作映画だったのだが、ドン・シャーププロが倒産してしまい権利関係が不明確になりソフト化が出来なかったのだ。東京の名画座辺りではかかったりしていたのかも知れないが、田舎の少年には無理な話であった。
 見所はメカ描写である。α号も格好いいが、マリクの潜水艦黒鮫号も悪らしいデザインで魅力的である。α号は水中だけではなく空も飛ぶという高性能。空を飛ぶ潜水艦なら『海底軍艦』(1963)ですでにやっているのが残念だ。轟天号の場合、水中、空中だけではなく先端のドリルで地中まで行くからな。
 残念なのは怪獣である。コウモリ人間と大ネズミ、そしてグリホンが登場するが、どの着ぐるみも出来が良いとは言えず、モタモタとした動きである。しかし、コウモリ人間やグリホンはマリクが作り出したという悪趣味ぶり。特にグリホンは部下の女性である黒い蛾の肉体から脳を取り出し、ライオンの身体に移植してハゲタカの翼をくっつけたというもの。それを大きさを3倍にする薬を与えて兵器として使おうというのだ。そのグリホンに裏切られ、マリクは最期を遂げてしまうのだからやはり女の恨みは怖ろしい。
 ラストはリチャード・ラッセルだけが一般社会に戻ってくるが、撮影したはずのフィルムには何も写っておらず、タバコ入れに入れて持って帰ってきたダイヤもなくなっている。そして宝田明やジョセフ・コットンなどが船員として乗船している。これは一体どういうことだ、緯度0は本当だったのか幻だったのかという不条理なオチになっている。どうやら緯度0は一種のパラレルワールドだったらしい。

B000Z6XQH8.jpg『怪獣総進撃』(1968) 89分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 脚本:本多猪四郎、馬渕薫 撮影:完倉泰一 美術:北猛夫 編集:藤井良平 音楽:伊福部昭 音響効果:西本定正 アクション:中島春雄、新垣輝雄、内海進、小人のマーチャン、関田裕 特技・合成:向山宏 特技・撮影:富岡素敬、真野田陽一 特技・操演:中代文雄 特技・美術:井上泰幸 特技監修:円谷英二 特技監督:有川貞昌
出演:久保明、田崎潤、アンドリュウ・ヒューズ、小林夕岐子、愛京子、土屋嘉男、当銀長太郎、佐原健二、田島義文、伊藤久哉、丸山謙一郎、沢村いき雄、関田裕、西条康彦、久野征四郎、桐野洋雄、坪野鎌之、緒方燐作、坂本晴哉、黒部進、草川直也、大前亘、鈴木和夫、佐田豊、伊吹徹、越後憲、伊藤実、渋谷英男、勝部義夫、岡部正、権藤幸彦、岡豊、宮田芳子、森今日子、佐川亜梨、宮内恵子、高橋厚子、池谷三郎、ヘンリー大川

 二十世紀も終わりに近い頃、国連によって月面基地が作られ、また小笠原諸島にはゴジラを始めとする怪獣たちが集められ管理されている怪獣ランドがあった。怪獣ランドという軽めな名前だが、動物園のような行楽施設ではなく学術研究のためにある。管理区域から怪獣が出ようとするとブイなどから怪獣それぞれが苦手とするガスなどを放出することで逃がさないようになっている。そこは海底牧場でもあり、養殖された生物などの食べ物が豊富なので怪獣たちも不満はないようだ。ラドンが海からイルカを捕まえて食ってしまうシーンがあるが、これはシー・シェパードやグリーン・ピースには見せられないな。
 だが何者かによって怪獣ランドが襲撃され、職員は行方不明になり、怪獣がニューヨークや北京、パリなどで暴れ始める。これはアステロイド・ベルトからやって来た宇宙人キラアク星人の仕業であった。
 怪獣を操っている電波は月面から発信されており、久保明を艇長とするSY-3号は信号を食い止めるため月面へと飛び立つ。キラアク星人を倒した後、操縦電波発信装置を奪い基地を破壊するとSY-3号は地球へと戻ってきた。
 そして、装置を利用して怪獣たちを操り、キラアク星人が本拠地を構えた富士山麓へと向かわせる。キラアク星人は宇宙からキングギドラを呼び寄せてこれに対抗する。
 ヒロインの小林夕岐子の髪型がなんとなくサザエさんに似ている。そして久保明の役名が克男(カツオ)なので狙っていたのかと思ってしまう。益男だったら完璧なんだが。
 人類に対する脅威だった怪獣たちが人間に飼育されているシーンはショックだった。サファリパークのような場所で安穏と暮らしているゴジラはすでにゴジラではない。ラドンやモスラだけではなく、ゴロザウルスやマンダ、バランなどのゴジラシリーズ以外からもゲスト出演で東宝怪獣がほぼ勢揃いである。
 キラアク星人に操られることで怪獣たちは再び人間に牙を剥く。進んだ科学力で手なずけたと思ったら、結局は人間の手に負えるものではないというのはゴジラの原点である核への脅威を思わせる。深読みしすぎか。
 終盤はキングギドラ対怪獣軍団。キングギドラがいかに強いとはいえ、ゴジラ、ラドン、モスラ、アンギラス、バラゴン、ゴロザウルス、クモンガ、マンダ、バラン、ミニラえーとこれだけだったかな? この怪獣軍団を相手にして敵うはずがない。これまではゴジラ、モスラ、ラドンの三匹がかりでも宇宙へ追い返すのがやっとだったキングギドラを、全員でタコ殴りにしてついに倒してしまう。ゴジラが執拗にキングギドラの首を踏みつぶし続けるのが怖ろしい。さすが怪獣王。ミニラはいるだけかと思ったら円形放射能でとどめを刺すし。ちなみにミニラに入っているのは小人のマーチャン。その名の通り小人症の人なのだろう。小人は差別用語なのだろうが、芸名だから仕方ない。それと巨人症というのもあるのだから小人が差別用語ならば巨人も差別用語にならないのは何故だろうか。ジャイアンツが困ってしまうからか。『進撃の巨人』なんかも困るな。
 キラアク星人は女性ばかりで、銀ピカの尼さんのような格好をしている。宇宙人の衣装としてはX星人の方が斬新だな。キラアク星人はいかにも昔のSF映画に出てくる宇宙人だ。ただ、体質はかなり変わっていて、金属組織によって成り立っている。そのため高熱下でしか活動することが出来ず、常温になると金属の固まりになってしまう。うむ、SF。そこで高熱を求めて富士山地下に本拠地を構えたのだ。
 それにしても大して数はいないようだしX星人と同じく素直に援助を求めてくればいいのに、なんで宇宙人ってヤツはこうも物わかりが悪いのだろう。もっとも、同じ人類間でも人種や宗教によって争いが絶えないから、先制パンチを狙ってくるのかも知れない。
 怪獣はたくさん登場するが、基本的に着ぐるみは使い回し。バランに至っては着ぐるみが残っていないようでポーズ固定の模型でしか登場しない。この頃のゴジラの着ぐるみの造形はどうも好きになれない。代わりにSY-3号が格好いいデザインで宇宙を大気圏をと飛び回り活躍してくれる。艇長たちのヘルメットが消防士の防火用ヘルメットみたいなのは残念だが、外観はウルトラマン系列の流線美である。SY-3号ということはSY-1号やSY-2号もあるのだろうか。
 怪獣ランドはサファリパークから連想されたのかなと思うが、『ジェラシック・パーク』の元祖的存在である。
 向こうから起き上がってくるようなタイトルの出し方が印象に残る。だが一番印象に残っているのはキラアク星人に両耳のピアスで操られている小林夕岐子のそのピアスを久保明が引きちぎるところだ。結構血が出てるし痛そー。

B0000ZP46K.jpg『キングコングの逆襲』(1967) 104分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 脚本:馬淵薫 撮影:小泉一 美術:北猛夫 編集:藤井良平 音楽:伊福部昭 アクション:中島春雄 特技・合成:向山宏 特技・撮影:富岡素敬、真野田陽一 特技・美術:井上泰幸 特技監督:円谷英二
出演:ローズ・リーズン、宝田明、リンダ・ミラー、浜美枝、天本英世、沢村いき雄、堺左千夫、田島義文、草川直也、桐野洋雄、黒部進、伊吹徹、鈴木和夫、アンドリュウ・ヒューズ、北竜二、アル・クレーマー
声の出演:田口計、山東昭子

 北極で悪の天才科学者ドクター・フー(天本英世)が某国女スパイ浜美枝の要請で放射性物質エレメントXを採掘しようとしていた。エレメントXを使えばこれまでのどんな物質よりも簡単かつ大量に核兵器を作り出すことが出来るのだ。
 ドクター・フーはキングコングをモデルにしたロボットのメカニコングを使おうとしていたが、エレメントXの近くには強力な磁場があるためメカニコングが動作不能になってしまい失敗。そこでローズ・リーダンと宝田明が南海の島で発見したキングコングを使うことを思いつく。
 麻酔ガスでキングコングを眠らせ、船で北極へと運んできたドクター・フーは催眠装置でキングコングに催眠術をかけてエレメントXの採掘に当たらせるが、途中で催眠術が解けてキングコングが暴れ出してしまう。
 ローズ・リーダンらと一緒にいた看護婦のリンダ・ミラーの言うことをキングコングがきくということを知ったドクター・フーは三人を誘拐。北極基地に監禁し、キングコングに命令させようと迫る。リンダ・ミラーの危機を知ったキングコングが暴れ出し、逃げ出してしまう。
 東京まで泳いでいって上陸したキングコングを捕まえるためにメカニコング2号を出動させたドクター・フー。メカニコングはリンダ・ミラーを捕まえると東京タワーに登っていった。その後を追うキングコング。二大怪獣の決戦は東京タワーで行われる。
 東宝が35周年記念作品として作り出した作品。黒澤明でもなくゴジラでもなくなぜキングコングだったのかはちょっと謎だ。『クレージー黄金作戦』(1967)も35周年記念作品だったそうだ。ちなみにこのキングコングはパチモノではなくちゃんとRKOから許可を得た正式なもの。それ以前に『キングコング対ゴジラ』(1962)が作られている。
 キングコングは伝説の生き物と考えられているのでオリジナル版や『キングコング対ゴジラ』とは話は繋がっていない。ローズ・リーダンを司令とする国連の調査用潜水艦が水中落石にあって点検のため浮上した近くの島で発見される。都合の良いことにローズ・リーダンと宝田明は個人的にキングコングを研究していたと言うことになっている。
 キングコングやメカニコングの大きさは20メートルとのことなので、ミニチュアのスケールの縮尺が大きい。35周年ということで作り込んでくれるかなと思ったら、島や北極の鉱山のシーンが多いのが残念だった。ただ、終盤の東京タワーは良くできている。しかし、20メートルの怪獣が二匹も登っても東京タワーは大丈夫な作りなんだろうか。
 キングコングが基地から泳いで東京まで行くというストーリーなので、舞台は北極になったのだろうが場所はどこになるのだろう。北極には大陸はないからロシアかアラスカ辺りになるのだろうか。本当なら南極がしっくりくる。
 メカニコングのデザインが悪役怪獣にしては妙に可愛らしい。その代わりにドクター・フーを演ずる天本英世がガリガリに痩せた容姿と黒いマント姿で憎らしさを引き受けている。どことなく後年の『仮面ライダー』に登場する死神博士を連想させるスタイルだ。リンダ・ミラーに言うことをきかせるために、宝田明と共に零下30℃の拷問室に入れてみたり、最後には浜美枝を撃ち殺したりとかなりの悪党振りである。そのくせラストは手下と共に乗っている船がキングコングに襲われて、部下が戦っている中一人だけさっさと逃げ出そうとし、机に挟まれてあっけなく死んでしまう。
 善側と悪側がしっかりと描かれていて、両方にそれぞれヒロインがいるなど魅力的なストーリーだ。浜美枝は悪女を貫いて最後まで改心なんかしなければもっと良かったんだがな。でも登場する度に衣装を変えていてオシャレである。
 東京タワーをジャングルジム状に使った終盤の戦いは立体的で面白い。東京タワーの巨大さもちゃんと表現されている。リンダ・ミラーを助けるために立ち向かっていくキングコングが格好いい。
 宝田明は「野村三佐だ」とか言って自衛隊に命令しているから自衛官なのか? それとリンダ・ミラーの恋人は宝田明かローズ・リーダンなのかどっちなんだ? 劇中のセリフや拷問室での様子を見ると宝田明のようだが、最後のシーンでリンダの肩を抱いているのはローズなんだよな。微妙な三角関係なのか?

B000ZZFZPK.jpg『怪獣大戦争』(1965) 94分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 脚本:関沢新一 撮影:小泉一 美術:北猛夫 編集:藤井良平 音楽:伊福部昭 アクション:中島春雄、広瀬正一、篠原正紀 特技・撮影:有川貞昌、富岡素敬 特技・操演:中代文雄 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二
出演:宝田明、ニック・アダムス、田崎潤、沢井桂子、水野久美、久保明、土屋嘉男、田武謙三、田島義文、堤康久、桐野洋雄、伊吹徹、宇野晃司、村上冬樹、塩沢とき、清水元、松本染升、佐々木孝丸、伊藤実、千石規子、津田光男、熊谷卓三
声の出演:納谷悟朗

 木星に新しい惑星X星が発見され、地球連合宇宙局が調査ロケットP1号を打ち上げる。パイロットは宝田明とニック・アダムス。二人はX星でX星人を名乗る異星人と出会う。
 キングギドラに襲われているX星人は地球にゴジラとラドンを貸してくれるように頼んでくる。見返りはガンの特効薬だ。X星人はゴジラとラドンの居場所を言い当てると、円盤で二匹を吸い上げX星に連れていきキングギドラと戦わせる。見事に二匹は勝った。
 宝田明たちが持ち帰ったガンの特効薬のデータが収められているというテープを再生すると、そこにはX星人の地球への宣戦布告が録音されていた。地球侵略に際して邪魔になるゴジラとラドンを連れ去り、さらに電磁波で二匹をコントロールすることで兵器として使おうというのだ。キングギドラも電磁波で操っており自作自演の芝居だったのだ。
 X星人はゴジラとラドン、そしてキングギドラを地球に送り込んでくる。こうして地球の命運を賭けた怪獣大戦争が始まった。希望は、電磁波をシャットアウトしてしまう装置とX星人を狂わせてしまう特殊音波の存在だった。
 ニック・アダムスがやけにテンションが高い。楽しく演じているのが感じられる。『サンダ対ガイラ』(1966)のラス・タンブリンがいかにも「こんな仕事やりたくないよ」といった感じだったのとは対照的だ。日本語は分からないものの撮影現場にも溶け込んでいたらしい。水野久美演ずるX星人と恋仲になるのだが、実際にも「妻とは離婚するから結婚しないか」と口説いていたらしい。あのね、馴染みすぎ。
 オープニングの『怪獣大戦争マーチ』の伊福部節が嬉しい。これを聴くとああ東宝特撮映画を観ているんだなという気にさせてくれる。
 ストーリー的には『三大怪獣 地球最大の決戦』から続いているようで、X星人はゴジラとラドンがキングギドラを追い払ったということを知っている。モスラの立場は?
 X星人に操られることで、人間の味方になったゴジラが再び敵として現れることになる。この脚本は良くできていると思う。怪獣よりも人間とX星人の物語が中心で特撮もここがという見せ場はないが破綻はしていない。ゴジラの顔つきは目玉が大きくかなり可愛らしくなっている。個人的には初代や『モスラ対ゴジラ』の時の顔が好きだ。
 怪獣を重点的に描かないのはマンネリ感を感じていたからだろうか。ニック・アダムスと水野久美の星の違いによる悲恋などもちゃんと描かれている。
『三大怪獣 地球最大の決戦』の後、行方不明になっていたゴジラとラドンの居場所をX星人が言い当てるのだが、あんな大きな図体なのだからどこに行ったかぐらい分かるだろうに。
 X星人を行動不能にしてしまう特殊音波は宝田明の妹の恋人が作り出したもの。彼は発明家で女性用の防犯ブザーとして特殊音波を発明した。それを買い取るという会社が現れたのだが、実はX星人が地球人に成りすまして経営している会社だった。なんだX星人、人間社会に適応出来てるじゃないか。X星にそれほど人数もいなかったようだから素直に移住を申し入れれば良かったんじゃないだろうか。それにしてもこの防犯ブザーはおもちゃ扱いされているのだが、現代では子供用も含めて立派な商品になっている。発明家は特許を取っていれば後々結構お金になったんじゃ。
 ミニチュアの破壊シーンは前作より増えた気がするが、ミニチュアの質が落ちているように思える。精巧さが欠けるというか今一つリアルではない。製作期間も短くなって手の込んだ仕事が出来なくなってきたのだろうか。その代わりにキングギドラの吐く引力光線などはもはや匠の技。バリバリバリバリとミニチュアを破壊していく。X星人の衣装も前衛的で現代でも通用しそうな出来である。女性のX星人が全員水野久美の顔をしているというのはなかなか怖ろしい。
 そしてシェーである。赤塚不二男の『おそ松くん』に登場するキャラクターのイヤミが驚いた時にするシェーのポーズは当時爆発的にヒットした。確か皇太子がシェーをしている写真もあったような。そのシェーをゴジラがやってしまうのである。X星でキングギドラを追い返した時に4回、地球で1回(これは上半身しか映っていないのでシェーではないのかも知れないが)、あああまつさえあまつさえ。物語は比較的シリアスに進んでいただけにこのシェーは浮いている。
 X星統制官役の土屋嘉男が最後に言い残す「我々は未来に向かって脱出する」は意味は分からないが名台詞だ。そのまま空飛ぶ円盤ごと爆発するだけなんだけどね。
 ラストは逃げて飛び去っていくキングギドラを見送るという構図は前作とほぼ一緒。ゴジラとラドンは海に落ちたまま生死不明。もちろん死んでいるはずがないわけだが。
 X星人のゴジラとラドン貸し出し依頼に関する会議で主婦代表として発言する塩沢ときがすでに髪型がでかいのには笑ってしまった。

B000Z6XPHY.jpg『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964) 93分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 脚本:関沢新一 撮影:小泉一 美術:北猛夫 編集:藤井良平 音楽:伊福部昭 アクション:中島春雄 特技・合成:向山宏 特技・撮影:有川貞昌、富岡素敬 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二
出演:夏木陽介、小泉博、星由里子、若林映子、ザ・ピーナッツ、志村喬、伊藤久哉、平田昭彦、佐原健二、野村浩三、三浦敏男、古谷敏、英百合子、高田稔、加藤春哉、天本英世、松本染升、大村千吉、沢村いき雄、黒部進、伊吹徹、田島義文

 ゴジラ、ラドン、モスラの三大怪獣が金星を滅ぼした凶悪な宇宙怪獣キングギドラを相手にタッグを組んだ。三大怪獣は地球を守ることが出来るのか。
 地球を異常気象が襲い、1月だというのに真夏並みの暑さである。そして空飛ぶ円盤が現れる。異常気象や空飛ぶ円盤がその後の話に絡んでくるかというとあまり関係ない。
 小美人がTVの『あの人は今』的な番組に出演するため日本にやって来る。なんでも『モスラ対ゴジラ』で二匹いたモスラは一匹が死んでしまったそうだ。可哀想だが、話の展開上仕方ない。
 そして小美人がインファント島に帰ろうとする船に金星人を名乗る女性が現れる。この所、上野公園などに現れて地球が危ないなどと予言をする予言者と呼ばれる女性である。この船は危険だ乗ってはいけないというのを放送記者の星由里子が連れて降りる。
 実は予言者の正体は行方不明になっているセルジナ王国王女であり、彼女の行方を星由里子の兄である刑事の夏木陽介が追っている。阿蘇山に現れ、ラドンが現れるので山を下りるように警告する予言者。風体からして金も持っていなそうなのに、自在にあちこちに現れる。金星人のパワーか。そして警告通りにラドンが現れ、大空へ飛び立っていく。
 一方、予言者の警告を受けた船はゴジラに襲われて沈没。ゴジラは日本に上陸し、ラドンと戦いを始める。各地で勃発する被害。
 山中に落下した巨大隕石から、ついにキングギドラが登場。アニメーションの炎がキングギドラの形になってそれが繰演のキングギドラになるという見事な登場シーン。キングギドラの破壊力は圧倒的で、防衛隊も歯が立たない。というか防衛隊の出動シーンはない。プログラムピクチャーになって予算が削られ、登場させることが出来なかったのだろうか。国会ではキングギドラに対する対策が論じられ、防衛大臣は叱咤されたことにキレて「キングギドラに核爆弾を使えとおっしゃるのか」と発言。後々問題になりそうだ。
 キングギドラを倒すにはゴジラとラドン、そしてモスラが力を合わせればなんとかなるのではないかと小美人が発言し、インファント島から幼虫形態のモスラを呼び寄せる。三大怪獣が地球を守るためにキングギドラを倒そうと話し合いになるのだが、それを小美人が通訳してみせるのが笑える。そうか小美人はモスラだけじゃなくて怪獣の言葉が分かるのか。ゴジラ曰く「人間は我々をいじめていたのにどうして助けなければならないのか」。そうか、ゴジラは人間にいじめられていたのか。イジメ、かっこ悪い。
 ついに意見の一致を見た三匹はキングギドラに対して戦いを始める。地上のゴジラ、空中のラドン、そこらを這い回っているモスラ。金星を滅ぼしたくせに意外と弱いキングギドラである。三匹のタッグが強いのか。最後にはやられたーとばかりに宇宙に逃げ帰っていくキングギドラ。
 キングギドラの造形は異色である。首が三本で腕はなく翼と二本の尻尾、それに足が金色の鱗で覆われている。空を飛んでいるシーンがほとんどだが、かなり重そうなので繰演は大変だったことだろう。
 この作品以降、ゴジラは正義の味方になり子供の人気は上がるが、初代にあったような強烈な恐怖は失われていく。戦後も遠くなり、核の恐怖も薄れていったのか。
 予算が少ないのではないかとはミニチュアからも感じられる。怪獣が暴れるシーンでは街中が少なく建物などのミニチュアがあまり登場しない。人家のない山間や広場で戦いが繰り広げられる。
 それにしても怪獣が来るというので逃げ戸惑う群衆のシーンは怪獣映画の魅力の一つである。人々の服装などから当時の風俗がうかがえる。
 夏木陽介と実は王女だった予言者の淡いロマンスも感じさせ、怪獣版『ローマの休日』といってもいいのかもしれない。
 最後は小美人を乗せたモスラがインファント島に帰っていくのをゴジラとラドンが見送って終わるのだが、あの後あの二匹はどうしたんだろうか。昨日の敵は今日の友とばかりに自分住処に帰っていったのか。
 時代が時代なので予言者に対して野次馬が「気違い、気違い」と連呼している。

B000XFZMC8.jpg『モスラ対ゴジラ』(1964) 89分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 脚本:関沢新一 撮影:小泉一 美術:北猛夫 編集:藤井良平 音楽:伊福部昭 音響効果:西本定正 アクション:中島春雄 特技・合成:向山宏 特技・撮影:有川貞昌、富岡素敬 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二
出演:宝田明、星由里子、小泉博、ザ・ピーナッツ、藤木悠、田島義文、佐原健二、谷晃、木村千吉、中山豊、田武謙三、藤田進、八代美紀、小杉義男、沢村いき雄、田崎潤、佐田豊、山本廉、野村浩三、堤康久、津田光男、大友伸、大村千吉、岩本弘司、丘照美、大前亘、土屋詩朗、熊谷卓三、宇野晃司、古田俊彦、澁谷英男、宇留木耕嗣、越後憲三、権藤幸彦、佐藤功一、安芸津広、岡部正、坂本晴哉、久野征四郎、高木弘、山田圭介、緒方燐作、鈴木治夫、手塚勝己

『ゴジラ対モスラ』だと思い込んでいたのだが『モスラ対ゴジラ』だったんだ。この作品ではモスラが善玉でゴジラが悪玉だからこの順番になったのだろうか。ちなみに英語タイトルは『GODZILLA VS THE THING』という。『THE THING』と言えば物体Xである。ゴジラが物体Xに吸収されたら無敵のモンスターになるだろうな。
 台風の後、浜の近くに巨大な卵が流れ着いた。漁師たちが引き上げ、それを興行主に売ってしまう。興行主は卵をメインにしてテーマパークを作ろうというのだ。だがそれはモスラの卵で、小美人が興行主に「お願いです、卵を返してください」と訴えてくるのだが、逆に興行主は小美人も捕まえようとする。
 それを救ったのが宝田明たちだった。興行主に卵を返すように迫るが、全く聞く耳を持たずそれどころか小美人まで売るように迫ってくる。
 卵騒動の最中、ゴジラが現れ四日市のコンビナートと名古屋市を破壊した。ある記者がモスラに助けてもらえばと案を出し、宝田明たちはインファント島にモスラを貸してもらえるように頼みに行く。
 しかし、核実験場にされたインファント島の原住民は他所の人間を信用しておらず拒否されてしまう。だが、小美人の取りなしによって寿命が近づいているモスラの助けを得ることに成功する。
 自衛隊は高圧電流作戦などでゴジラに対抗するが、電圧を上げすぎて自滅。そこへ飛んで来たモスラがゴジラに戦いを挑む。最後の武器である鱗粉まで使うがゴジラを倒すことは出来ず、モスラは息絶えてしまう。
 小美人の歌に応えるように卵が孵り始め、中なら双子のモスラの幼虫が現れた。幼虫は口から吐く糸でゴジラに戦いを挑む。勝ち残るのはモスラかゴジラか。
 この後、急速に子供向けになっていくゴジラだが、この作品は大人の鑑賞にも耐えるものとなっている。特にお金に汚い興行主とその黒幕のやり取りは腹黒くて子供には難しいかも知れない。「トイチの利子」という単語も出てくるし。
 名古屋人のオレには名古屋破壊が嬉しい。ゴジラに壊されると言うことはそこが観光名所だと証明されたことなのだ。テレビ塔と(それにしてもテレビ塔とは味も素っ気も無い名前だ。名古屋タワーとかいった案は出なかったのだろうか)と名古屋城が破壊される。両方とも力の入ったミニチュアだ。割りと日常的に見ているものが壊されるのは面白い。その寸前には四日市のコンビナートが破壊される。コンビナートは怪獣映画では破壊されるために出てくるようなものだ。
 ゴジラの造形も優れていて、悪役らしく凶悪な面構えだ。対するモスラの幼虫も昆虫らしさが出ていて、触るとプニプニしていそうだ。成虫モスラは戦うゴジラと比べることで巨大さが感じられ、繰演で羽根を羽ばたかせながら飛ぶシーンはケーブルこそ見える物の見事。
 巨大セットにザ・ピーナッツを入れて撮影したシーンや、合成で小美人を表現したシーンなど彼女たちの小ささを上手く表している。
 モスラに助けを求めたらと提案した記者が卵好きでいつも卵を食べているというのも可笑しい。脚本と監督の本多猪四郎の手柄である。
 ゴジラはモスラの吐く糸でグルグル巻きにされてしまい海へと落ちて負けてしまうのだが、とどめを刺すシーンはないので生きているのだろう。

B005SYO46E.jpg『アイ・アム・ナンバー4』(2011) I AM NUMBER FOUR 110分 アメリカ TOUCHSTONE PICTURES、DREAMWORKS PICTURES

監督:D・J・カルーソー 製作:マイケル・ベイ 製作総指揮:デヴィッド・ヴァルデス、クリス・ベンダー、J・C・スピンク 原作:ピタカス・ロア 脚本:アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー、マーティ・ノクソン 撮影:ギレルモ・ナヴァロ プロダクションデザイン:トム・サウスウェル 衣装デザイン:マリー=シルヴィー・ドゥヴォー 編集:ジム・ペイジ、ヴィンス・フィリッポーネ 特撮:ILM 音楽:トレヴァー・ラビン
出演:アレックス・ペティファー、ティモシー・オリファント、テリーサ・パーマー、ダイアナ・アグロン、カラン・マッコーリフ、ジェイク・アベル、ケヴィン・デュランド

 とある惑星が悪の異星人に襲われ、地球に逃げた九人の子供を残して絶滅してしまった。惑星の資源を食い尽くすと次の惑星を目指す悪の異星人は次のターゲットに地球を選ぶと、九人の子供たちをナンバー1から順に殺していった。目指すは障害となる特殊能力を持った子供たちの殺害と地球征服である。そんな話がとほぼとある高校の中だけで決着がつく。スケールが大きいんだか小さいんだか。
 原作の小説があるようなので、そのダイジェスト版といった感じなのだろうか。ナンバー1から3まではすでに殺されており、今回狙われているのはナンバー4である。なんで順番通りに殺していくのかがまず謎なのだが、小説には詳しい説明があるのかも知れない。ないのかもしれないが。どうもアメリカ版ライトノベルの様な気がする。作中に登場するのはナンバー4の少年とナンバー6の少女だけで、生き残っているはずの残りの4人は出てこない。続編があるとしたらそこで出てくる予定なのだろうか。
 悪の異星人うんぬんは序盤にセリフで説明されており、あまり程度の高い脚本とは言えない。そこをちゃんと映像で見せてくれるのが重要だろう。
 ナンバー4は悪の異星人に狙われているわりには不用心で、同じ高校の女生徒が撮ってウェブサイトにアップした自分の写真を喜んで眺めている。その写真で自分の居場所がばれるのかも知れないのにだ。ちなみに彼の仮の名前はジョン・スミス。日本で言えば山田太郎といったところで偽名バリバリの名前である。
 彼はフットボールチームのキャプテンと対立することになるのだが、終盤の悪い異星人との戦いではこのキャプテンが窓ガラスに叩き付けられてしまう。役柄が役柄だけにこのキャプテンはこのシーンで死んだなと思ったらラストには復活していて割りといいヤツになっている。ちょっと都合良すぎ。
 終盤の戦いはナンバー4が通っていた高校の中でほとんどケリが付いてしまう。もっとも小さな宇宙戦争かも知れない。アクションはSFXをILMが担当しているだけあってそれなりに派手だが、ナンバー4の持っている特殊能力が手の平が光って懐中電灯代わりに使えるというのはちょっとどうだろうか。他にはテレキネシス能力も持っているのだが。それに比べてナンバー6は少女なのにナンバー4よりも圧倒的に強い。ただし、途中でエネルギー切れになってしまってナンバー4の光で充電していたりする。
 ナンバー4の飼っていた犬が実はキマイラで変身して異星人の連れてきた獣と戦う。キマイラは劣勢なのだが、獣が水に濡れたタイルで足を滑らせたところに食いついて勝つ。うーむ、微妙だな。
 悪の異星人も三人しかいないみたいだし、それでどうやって地球を征服する気なのだろうか。続編ありきの一作目なのかな。箱の正体も分からないままだし。ただ、この出来で二作目が作られるとはちょっと思えないのだが。でも『トワイライト』シリーズとか大したことないのに完結編まで続いたしな。興行成績も悪くなかったようなので謎は次回作に持ち越しか。

B000JJR9CO.jpg『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン』(1965) 93分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 脚本:馬淵薫 撮影:小泉一 美術:北猛夫 編集:藤井良平 音楽:伊福部昭 アクション:古畑弘二、中尾純夫、中島春雄 ストーリー:ジェリー・ソウル 特技監督:円谷英二
出演:ニック・アダムス、高島忠夫、水野久美、ピーター・マン、土屋嘉男、志村喬、田島義文、沢井桂子、沢村いき雄、向井淳一郎、古田俊彦、佐田豊、渋谷英男、山本廉、加藤春哉、中山豊、大村千吉、西条康彦、石田茂樹、津田光男、広瀬正一、野村浩三、岡部正、橘正晃、桐野洋雄、田崎潤、大友伸、佐原健二、藤田進、伊藤久哉、中村伸郎、小杉義男、緒方燐作
声の出演:納谷悟朗

『ミスタア・ロバーツ』(1955)や『理由なき反抗』(1955)のニック・アダムスが出ているので驚いた。それなりに名前の知れた俳優じゃないか。ハリウッドからお呼びがかからなくなったので日本に出稼ぎに来たのか? この作品の数年後には亡くなっているので晩年の作品と言えなくもない。亡くなったのは37歳ぐらいなようだけど。
 日本映画に小遣い稼ぎで出演したのかと思ったら、意外と力の入った演技だった。残念ながらというか当然ながら声は吹替だが。
 第二次世界大戦も終わり間近。ドイツからフランケンシュタインの心臓が広島の軍事病院に運ばれてきた。この心臓は不死身で、日本はこの心臓を利用して不死身の兵隊を作ろうと考えている。しかし、原爆が落ちフランケンシュタインの心臓も実験結果も闇の葬り去られてしまう。
 それから15年後、広島の放射能実験センターで働くニック・アダムズや高島忠夫、そして水野久美の前に一人の浮浪児が現れる。その浮浪児を保護した彼らは、浮浪児が放射能を浴びていながら健康に害を及ぼしていないことに驚く。そしてどんどん大きくなっていく浮浪児。彼の正体こそ心臓から生まれたフランケンシュタインだったのだ。
 テレビ局のライトに怯えて檻の中に鎖で繋がれていたフランケンシュタインは逃げ出してしまう。しかも片手を残してだ。この片手が本体がないのに動き回る。
 犬やウサギを襲って食べながらフランケンシュタインは山中へ逃げ込む。その頃、白根山の山小屋が襲われ人々の姿が消えてしまう。これもフランケンシュタインの仕業だろうと警察などは考えるが、実は地底怪獣バラゴンの仕業だった。そしてついに出会った二匹は血まみれの戦いを繰り広げるのだった。
 終盤の「死んだ方が良い。所詮、彼は怪物だ」というセリフが印象的だ。異形の物は現代社会には受け入れられないのだ。これはオリジナルの『フランケンシュタイン』にも通じる。
 なんでも日米合作映画だそうで、ニック・アダムスの出演にも納得がいく。日本公開版はバラゴンに勝利したフランケンシュタインが地割れに落ちて終わるというものだったのに対し、海外版は湖から唐突に現れた大ダコとフランケンシュタインが取っ組み合いになって湖に落ちて終わるという形になっている。DVDで観られるのは海外版。どちらにしろ、かなり余韻に欠ける終わり方である。それにしてもなんで山の中にタコがいるのか。
 そもそも無理にバラゴンを出さなくてもフランケンシュタインの悲哀だけで一本の映画になったと思うのだが、やはり怪獣を出した方が受けが良いと考えたのだろう。
 フランケンシュタインもバラゴンも比較的小型の怪獣なのでミニチュアのサイズが大きく作り込みが細かい。特に山小屋の破壊のシーンは迫力がある。バラゴンの着ぐるみの出来も良い。フランケンシュタインはちょっと特殊メイクしただけのヘンな親父だが。

B000ANW0Z0.jpg『宇宙大怪獣ドゴラ』(1964) 81分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 原作:丘美丈二郎 脚本:田実泰良、関沢新一 撮影:小泉一 美術:北猛夫 編集:藤井良平 音楽:伊福部昭 特技・合成:向山宏 特技・撮影:有川貞昌、富岡素敬 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二
出演:夏木陽介、ダン・ユマ、中村伸郎、小泉博、藤山陽子、若林映子、藤田進、河津清三郎、田島義文、天本英世、加藤春哉、田崎潤、船戸順、桐野洋雄、若松明、坂本春哉、当銀長太郎

 パリやニューヨークの宝石店からダイヤが謎の怪獣によって奪われるという事件が頻発していた。そして同じように石炭も盗まれていた。
 ダイヤも石炭も炭素の固まりである。日本上空の放射能の吹きだまりに誕生した宇宙大怪獣ドゴラが犯人だった。
 それと平行して、ダイヤ強盗団とそれを追う刑事、そして謎の男ダン・ユマが争っていた。その争いとドラゴがほとんど関係ないというのは弱点である。だが、強盗団を巡るアクションは愉快なタッチで、特にダン・ユマが面白い。日本映画に出てくる外人は吹替の場合が多いが、彼は日本語が非常に達者で、アメリカンジョーク風の軽口をたたく。それに対する刑事役の夏木陽介も人を食ったような性格である。二人のやり取りは漫才のようだ。
 ダイヤ強盗団も切れ者なのか間抜けなのかよく分からない。その中の一人を天本英世がエキセントリックな演技で見せてくれる。
 ドゴラは透明なクラゲ状の怪獣なのだが、空に浮かんでいるので対象物がなくイマイチ大きさが分からない。重力を操るようで、石炭を空に吸い上げたり、橋を持ち上げて壊したりもする。この橋のシーンは良くできていた。ドゴラは今ならばCGで表現してしまうのだろうが、当時は透明のビニールなどを使うしかなかった。水槽の中で撮影したドゴラはフワリフワリしていて怪獣史上でも珍しい存在だ。ただしクラゲ状のドゴラの出演シーンは少なく、自衛隊の攻撃で細胞分裂を起こして小型のドゴラになってしまう。透明な提灯の様なこのドラゴは迫力に欠け、残念である。ドゴラの弱点が蜂の毒というのも迫力に欠ける。
 ダイヤ強盗団事件とドゴラが上手く絡めばもっと面白かったのかもしれないが、それぞれ全く別の映画のようである。ドゴラの特撮が難しかったので苦肉の策だったのかもしれない。
 DVDのパッケージのドゴラはほとんど詐欺だな。熱心な怪獣ファンには評判が悪いかもしれない。個人的には着ぐるみに頼らない新しい怪獣を生み出したという点で評価している。
 それにしても番茶と枝豆を乙だねとかいいながら食ってるなよダン・ユマ。
 ラストに博士とダン・ユマが乗る飛行機がパンナムというのも時代を感じる。

B0000TCKRM.jpg『マタンゴ』  (1963) 89分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 原作:ウィリアム・ホープ・ホジスン 原案:星新一、福島正実 脚本:木村武 撮影:小泉一 美術:育野重一 デザイン:小松崎茂 造型:利光貞三 編集:兼子玲子 音楽:別宮貞雄 音響効果:金山実 特技・合成:向山宏 特技・撮影:有川貞昌、富岡素敬 特技・助監督:中野昭慶 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二
出演:久保明、土屋嘉男、小泉博、太刀川寛、佐原健二、水野久美、八代美紀、天本英世、熊谷二良、草間璋夫、岡豊

 4000万円もする豪華なヨットで七人の若い男女が航海に出た。ところが嵐にあい遭難してしまう。流れ着いたのは謎の無人島。そこで難破した貨物船を見つけるが中はカビだらけ。航海日誌には漂着後、船員が少しずついなくなっていったこと、そしてキノコを食べてはいけないと記載されていた。
 しかし手持ちの食料は少なく、難破船で見つけた缶詰も七人の頭数で割ればそう何日も持たない。島には動物はおらず、海鳥も島に近づこうとしない。芋や海草、そしてウミガメの卵を採取して飢えをしのぐが、食糧不足と助けが来ない事に対する不安から次第に人間関係が破綻していく。
 キノコを食べると精神的に異常をきたしてしまい、さらには肉体が変質してマタンゴという怪物になってしまう。だがそのマタンゴよりも人間のエゴが怖ろしい作品である。
 食料を独り占めしようとしたり、ウミガメの卵を大金で買い取る会社社長など人間の醜さが描かれている。二人いる女性を巡っての争いも起きる。生きているだけで精一杯の状態なのに、それでもお金や名誉欲といった欲望がある。島では金なんて持っていても意味がないのに、「俺はこの金を持って帰って生き金とするんだ」と実に醜い。
 そしてついにキノコに手を出した者が出始める。このキノコ、とても美味いそうなのだ。水野久美がキノコをつまんで食べるシーンはなんとも色っぽい。
 修理したヨットで島を逃げ出した久保明は救助されるが精神病院に収容されてしまう。鉄格子の中でこの物語を語る久保明。そして画面に振り返った時には・・・衝撃的なラストである。
 巨大怪獣が出てくるわけではないので、それほどミニチュアは登場しない。マタンゴも終盤まではそれほど登場しないし特撮映画としては見応えが少ないが、極限状態での人間ドラマとして充分に面白い。

B0000D8RNB.jpg『モスラ』(1961) 101分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 原作:中村真一郎、福永武彦、堀田善衛 脚本:関沢新一 撮影:小泉一 美術:北猛夫、阿部輝明 編集:平一二 音楽:古関裕而 特技・撮影:有川貞昌 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二
出演:フランキー堺、小泉博、香川京子、田山雅充、ザ・ピーナッツ、上原謙、ジェリー・伊藤、志村喬、伊藤久哉、佐原健二、平田昭彦、河津清三郎、オーベル・ワイアット、小杉義男、ハロルド・コンウェイ、三島耕、オスマン・ユセフ、広瀬正一、田島義文、中島春雄

 東宝とコロンビア映画による日米合作だったんだ。初めて知ったよ。
 蛾(MOTH)の怪獣だからモスラ。シンプルなネーミングである。
 貨物船が台風のせいで沈没。生き残った四人が核実験場であるインファント島に流れ着く。放射能で汚染され原爆症になっていると思われた四人だが、これがなんと健康そのもの。原住民に赤いジュースを飲まされて、それが原爆症を防いでくれたのではないかとのこと。だが、インファント島は無人のはず。だから核実験場に選ばれたのだ。
 早速、核実験をおこなったロリシカ国と日本の合同チームが派遣される。その中には調査隊に潜り込んだ新聞記者の『スッポンの善ちゃん』との二つ名を持つフランキー堺が潜り込んでいた。
 海岸際は岩だらけのインファント島だが、島の奥地に入ると緑豊かな島だった。そこで全長30センチぐらいの二人の小美人(ザ・ピーナッツ)を見つける。ジェリー・伊藤は彼女たちを捕まえると日本へ持ち帰る。原住民がそれを防ごうとするが、平和主義の彼らは銃で撃ち殺されるだけだった。
 ジェリー・伊藤は小美人のショーを行う。フランキー堺たちは小美人を取り返そうとするが、なかなか上手く行かない。その頃、インファント島では巨大な卵が孵ろうとしていた。
 モスラが登場するまで結構かかる。それも幼虫形態がほとんどで蛾の成虫形態になる時間は意外と少ない。東京タワーに繭を作って成虫への変態を待つシーンは傑作である。
 原住民が銃殺されたり、ジェリー・伊藤に警官が撃ち殺されたりと物騒なシーンが多いのも特徴か。コロンビア側意向だったのかもしれない。
 ザ・ピーナッツは実に芸達者。芝居はちょっと落ちるが、本職が歌手だけに歌が上手い。双子だけ合ってハモり具合が絶妙だ。「モスラーヤ モスラ」
 フランキー堺も正義感に溢れる新聞記者をユーモラスに演じている。橋の破壊のシーンでは橋の中央に取り残された赤ん坊を助けに走るし、ジェリー・伊藤の手下相手に格闘で大活躍。強いって設定なんだ。
 モスラの幼虫形態は地味だが、その分成虫形態は色鮮やかで派手である。東宝怪獣の中では一番派手なんじゃないか。
 それにしてもロリシカ国のモデルは明らかにアメリカなんだが、名前はアメリカ+ロシアなのかね?

B0002TT0QO.jpg『宇宙大戦争』(1959) 93分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 原作:丘美丈二郎 脚色:関沢新一 メカデザイン:小松崎茂 撮影:小泉一 美術:阿部輝明 編集:平一二 音楽:伊福部昭 特技・合成:向山宏 特技・撮影:有川貞昌 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二
出演:池部良、安西郷子、千田是也、土屋嘉男、村上冬樹、伊藤久哉、桐野洋雄、野村浩三、堤康久、加藤茂雄、沢村いき雄、旗持貴佐夫、上村幸之、高田稔、熊谷二良、手塚勝己、津田光男、岡部正、緒方燐作、マルコン・ビアース、レオナルド・ウェルチ、佐藤功一、岡豊、荒木保夫、オスマン・ユスフ、ハインズ・ボトメル、レオナルド・スタンフォード、ハロルド・コンウェイ、ジョージ・ワイマン、エリス・リクター、エド・キーン

 1959年作品だが舞台は1965年と近未来となっている。
 まずは宇宙ステーションが空飛ぶ円盤によって破壊されてしまう。空飛ぶ円盤を操っていたのは宇宙人のナタール人。ナタール人は地球を植民地にしようと企んでいる。
 絶対零度にすることで重力を奪ってしまい、鉄橋や船、街などを破壊するナタール人は前線基地として月に潜んでいた。それを知った人類は二隻の宇宙船で月へと向かう。
 まだ人類が月へと行っていなかった時代の映画である。月面のシーンはそのわりにリアルだ。重力をコントロールする装置が発明されているようで普通に歩いているが、装置をセットし忘れた男が空高く舞い上がってしまうシーンがある。
 主演は「ルピナスも持って池部良」「残念だがそのシーンは尾張名古屋」の池部良。彼が月に行くのは分かるのだが、コンピューターオペレーターの安西郷子までどうして月に行くのだろうか。
 ラストは空飛ぶ円盤対ジェット機の空中戦。人類が開発した熱線砲が火を噴く。意外と簡単に決着がついてしまい、人類は勝利する。ここはもっと盛り上げて欲しかった。

B0006GB02A.jpg『大怪獣バラン』(1958) 87分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 原作:黒沼健 脚本:関沢新一 撮影:小泉一 美術:清水喜代志 編集:平一二 音楽:伊福部昭 アクション:中島春雄 特技・合成:向山宏 特技・撮影:有川貞昌、荒木秀三郎 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二
出演:野村浩三、園田あゆみ、松尾文人、伊藤久哉、桐野洋雄、千田是也、村上冬樹、平田昭彦、山田巳之助、草間璋夫、土屋嘉男、田島義文、瀬良明、山田彰、川又吉一、重信安宏、伊原徳、伊東隆、菅井きん、本間文子、生方壯児、熊谷二良、手塚勝巳

 東宝パンスコープで撮影されている。東宝スコープは聞いたことがあるが、パンスコープってなんじゃ? 『ラドン』(1956)などはカラーで撮影されているのだが、何故かモノクロである。予算の関係かなぁ。でも、特撮映画という時点で予算がかかっているのだから、カラーにしても大差ないんじゃないかと。それとも当時はかなりの金額差だったのか。
 シベリアにしか生息していないはずのアカボシウスバシロチョウが東北地方で発見された。その蝶の調査に生物学者の野村浩三と新聞記者の園田あゆみ、カメラマンの松尾文人が向かう。蝶が発見された近くの部落では婆羅陀魏山神(バラダギサンジン)という神をあがめ祀っていた。
 この野村浩三と園田あゆみが一応は主人公なのだが、あまり活躍せず傍観者的立場である。まぁ、大怪獣を相手に生物学者と新聞記者が何をするんだって気もするが。それにしてもこの二人ともおそらく初めて見た俳優である。スターを連れてこなかった辺り、期待されていなかったのかな。
 調査を続ける三人は山間の湖で怪獣を発見する。中生代に生息していたバラノポーダーの生き残りで、野村浩三は勝手にバランと名付けてしまう。お寿司なんかに入っている緑色のヤツだな。それはバラン。このバランこそ婆羅陀魏山神の正体であった。部落の人々はバランを怖れて湖に近づこうとはしなかったのに、東京から来た三人が湖にやって来たことで怒ったバランは部落を襲撃。壊滅状態にしてしまう。
 そこで自衛隊が出動しバランにロケット砲などで攻撃を加えるものの、弾力に富んだバランの皮膚はそれらを弾き返してしまう。そして前足と後ろ足の間にモモンガのように張られた膜を使って飛び去ってしまうバラン。
 次に発見された時はバランは太平洋にいた。この怪獣、水には潜るし空は飛ぶし、もちろん地上も大丈夫とかなり万能である。そして東京を目指すバランを自衛隊のジェット機や駆逐艦が攻撃するが大したダメージを与えられない。そして羽田空港に上陸するバラン。夜のシーンなので鮮明な画像ではないが、なかなか作り込まれたミニチュアである。『サンダ対ガイラ』には負けるけど。
 そこへ平田昭彦演ずる火薬学者が登場し、開発中の特殊火薬の説明をする。ダイナマイトの20倍の威力を持つその特殊火薬ならばバランを倒せるのではないかというのだ。それにしてもやはり平田昭彦は学者役が似合うな。
 特殊火薬を満載したトラックをバランの近くで爆発させるが(このシーンで野村浩三がトラックを運転し、唯一と言ってもいい活躍をする)、バランはそれを耐えきり致命傷にはならなかった。
 もう駄目なのか・・・ そんなとき生物学者がバランの奇妙な行動に目を留める。それは照明弾を飲み込むというものだった。これを利用すれば、バランの体内で特殊火薬を爆発させることが出来るのではないか!
 バランは初めて観た。中高生の頃に怪獣映画はかなり観たのだがマイナーなのか? ラドンやモスラは単体でデビューした後、ゴジラ映画にも出演したがバランは出ていない。と思ったら『怪獣総進撃』に出演しているらしい。その内確認しよう。四つん這いのスタイルがアンギラスなんかに似てるので独自性が少ないのかもしれない。
 ストーリー的にも、最初は田舎に登場し、後に東京に上陸してくる辺り『ゴジラ』(1954)と大きな違いを感じられず地味である。
 調べてみると元々はアメリカからテレビ用映画として依頼を受けて製作に取りかかったのだが、それがキャンセルになって劇場用映画として作り直したそうだ。モノクロなのはそのせいか。当時はモノクロテレビだからわざわざカラーで取る必要はないものな。
 バランが部落で神としてあがめられているなど面白いところもあるのだが、全体に単調な作りで脚本に問題がある。バランの神秘性をもっと追求しても良かったのではないだろうか。
 映像的にはテレビ用とは言えさすが円谷特撮で、バランの造形やミニチュアの出来とその壊され具合はなんだかんだいって燃える。
 それにしてもアカボシウスバシロチョウは話には何の関係もないんだが、あれは何だったんだ?

B00074C5YI.jpg『美女と液体人間』(1958) 87分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 原作:海上日出男 脚本:木村武 撮影:小泉一 美術:北猛夫 編集:平一二 音楽:佐藤勝 特技・合成:向山宏 特技・撮影:荒木秀三郎、有川貞昌 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二 助監督:梶田興治、中村哮夫
出演:佐原健二、白川由美、平田昭彦、土屋嘉男、千田是也、田島義文、夏木陽介、佐藤允、小沢栄太郎、坪野鎌之、山田巳之助、中丸忠雄、山田彰、藤尾純、園田あゆみ、中野トシ子、瀬良明、重信安広、林幹、津田光男、草間璋夫、白石奈緒美、桐野洋雄、三島耕、伊藤久哉、大友伸、北川町子、中村哲、中山豊、大村千吉、加藤茂雄、加藤春哉、中島春雄

 東宝というよりは新東宝のようなタイトルである。
 大人向け特撮映画として作られた作品でである。『ラドン』(1956)はカラーではあったがスタンダードサイズだったのに対し、東宝スコープいわゆるシネマスコープサイズで製作されている。
 今の日本においてはかなりヤバイ設定である。液体人間というからには液状の人間が出てくるのだが、そうなってしまった理由が水爆実験で死の灰を浴びその放射能によって細胞が変化してしまったから。佐原健二は今となっては小学生でも知っているセシウムという単語を口にする。放射能に対して日本国民が過敏になっている現在ではTV放映は無理だろう。
 放射能で巨大化したりミュータントになったりというのは観たことがあるが、液体人間になってしまうというのはこの作品ぐらい。放射能を理由にすればなんでもありだな。
 物語は麻薬強奪事件から始まる。まんまと売りつけた相手から麻薬を盗み出した男が何かに襲われ、衣服や腕時計などだけを残して消えてしまう。まさか裸で逃げたのか? などといった具合に最初は刑事ドラマ風である。刑事のリーダーを演じているのが平田昭彦。刑事役というのは案外珍しいのか? 生物化学助教授の佐原健二と友達なので大卒だろう。年下の刑事を部下として使っているしキャリアなのかも。
 佐原健二は男が消えた当日は雨だったので、その雨に含まれていた死の灰の放射能で肉体が消えてしまったのではないかといきなり言い出す。もちろん刑事にそんな理屈が通用するはずもない。というか生物化学の学者として人間が消えたと聞いて放射能のせいではとすぐに思いつくのがどうかしている。
 トンチンカンなことを言う奴だなと思ったら、それには根拠があった。漁船の船員が太平洋で漂流している船を見つけ乗り込んだところ、仲間が液体に襲われて溶けてしまいしかも生き残った船員は原爆症になっていたのだ。人体が溶ける・放射能、これらが一本の糸で繋がった。
 そこを指摘しても証拠としては不十分だと言われてしまう。警察は消えた男の女白川由美に目をつけ、彼女を取り調べるが彼女は何も知らないので当然のごとく手がかりは得られない。
 そうこうしているうちに白川由美が歌手として働いているキャバレーに液体人間が出現し、ボーイや踊り子、そして刑事まで液体人間にしてしまう。これでようやく液体人間の存在を信じた警察は佐原健二の言うことをまともに受け入れるようになる。
 築地一帯にしか液体人間は出現しないので住民を避難させ、下水にガソリンを流し込んで液体人間を焼却してしまうという強引な手段がとられる。だが、白川由美が麻薬密売組織のボス佐藤允に誘拐されこともあろうにその下水道にいた。下水から流れ出た衣服でそれに気付いた佐原健二は助けに向かう。すでにガソリンに点火されており、炎が到達するまで残り15分! 果たして白川由美を助けることが出来るのか。
 タイトルほどお色気シーンはない。特撮映画ということで子供が観に来ることを考慮したのか、本多猪四郎がそういった演出が苦手だったのか。これが東映や日活作品だったとしたらもっと違った印象になっていたことだろう。もっともこれだけの特撮が撮れたとは思わないが。
 液体人間は液体が人間の形をとっているシーンもあるが、ほとんどは本当に粘りけのある液体である。それがドロドロと動きながら迫ってくる。上下逆さまにしたり90度横にしたセットなどで天井へ這い上がっていったり、横へ這ってくる液体人間の描写をおこなっている。スライムなどとは違ってかなり透明度が高く、何を使っているのかと思ったら有機ガラスだそうだ。多分、そこに行き着くまでに色んな材料で試したんだろうな。人間が溶けていく特撮も時代を考えれば良くできている。
 液体人間は人間を襲っては溶かして同化してしまうのだが、人間状の時には複数登場する場合もあって、全体で一つなのか個々の概念があるのかはよく分からない。理性などはなくなっているようだが、人間としての思考能力はあることになっている。太平洋から東京の築地に戻ってきたのは最初の船がマグロ漁船だったからだろうか。キャバレーに現れたのはそこに白川由美がいるからだろうか。だとしたら人間だった時の記憶も多少は残っているものと考えられる。大脅威みたいな扱われ方をされているが、それほど人を溶かしてないんだよな。出番も意外と少ないし。
 キャバレーのレビューのシーンがなかなか力が入っている。キャバレーって行ったことがないんだが実際にはどんな感じなんだろうか。この作品のキャバレーはハリウッド映画の中のキャバレーだな。白川由美が英語の歌を披露するが、あまりにも上手いのでこれは吹替だろう。
 佐藤允が憎たらしくてナイス。液体人間に襲われた時にはやったと思ってしまった。登場シーンではニカッと笑っており、日本人離れした風貌だ。後の作品より頬がこけている。和製リチャード・ウィドマークと呼ばれていたそうだが、決して誇大広告ではない。彼が大金を意味して使う「トランク一杯の5000円札」という言葉に時代を感じてしまう。1万円札はまだでていなかったんだ。数年前の作品に出ているし亡くなったという話も聞かないので健在なのであろう。息子の映画監督佐藤闘介はどうしようもないが。
 映画は例によって科学者のそれっぽい言葉で締めくくられる。
「地球が死の灰に覆われて人類が全滅した時、この地球を支配するのは液体人間かもしれない」

B000JJR9CE.jpg『空の大怪獣ラドン』(1956) 82分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 原作:黒沼健 脚本:村田武雄、木村武 撮影:芦田勇 美術:北辰雄 編集:岩下広一 音楽:伊福部昭 音響効果:三繩一郎 アクション:手塚勝巳、中島春雄 特技:渡辺明、城田正雄、向山宏、坂本泰明 特技監督:円谷英二 監督助手:福田純
出演:佐原健二、平田昭彦、田島義文、松尾文人、草間璋夫、山田巳之助、小掘明男、村上冬樹、高木清、三原秀夫、津田光男、千葉一郎、熊谷二良、今泉廉、門脇三郎、白川由美、河崎堅男、如月寛多、中谷一郎、榊田敬二、緒方燐作、鈴川二郎、黒岩小枝子、大仲清治、中田康子、宇野晃司、水の也清美、岡豊、大川時生

『ゴジラ』から二年。今度の怪獣は空を飛ぶ! それにしても怪獣っていつ頃から使われている言葉なんだろうね。正体の分からない怪しい獣という意味では古くから使われていた気もする。
 この作品はカラーで撮られている。50年以上前の作品なのにフィルムの保存状態はよいようで、色彩鮮やかにラドンが暴れ回る様が映し出されている。
 物語は阿蘇山近くの炭鉱から始まる。実際には阿蘇山近くには炭鉱はないそうだ。そりゃそうだ、火山の近くを掘っていたら何が起こるか分かったもんじゃない。そして炭坑夫が行方不明になり、鋭い刃物で切られたような傷を負って死体で見つかる。調査に行った警官と炭坑夫もやられてしまう。犯人は誰で何が目的なのか? そんなサスペンススタイルだ。
 犯人は人間ではなく、太古の大トンボ・メガヌロンの幼虫だった。そしてその幼虫を餌にしていたのがプテラノドンが巨大化したラドンである。長い時を地下で眠っていたラドンが目覚めたのは「確証はないが」水爆実験のせいではないかというのが平田昭彦演ずる古生物学者の説である。それにしても平田昭彦は学者などのインテリな役がよく似合う。実際に東大出だそうで、それも納得である。
 ラドンもなかなか姿を現さず、地上に映る影や翼の先端だけが写された写真としてまずは登場する。その写真が平田昭彦の持っているプテラノドンのイラストとピッタリ合致するシーンは笑ってしまった。
 上空を超音速で飛び回るラドンに自衛隊のジェット機はかなり手こずる。ミサイルを何発撃ってもなかなか当たらないし、図体はラドンの方が大きすぎて接触すると墜落してしまう。
 この作品一番の見所は福岡襲撃のシーンだろう。精巧に作られた福岡の街がラドンの巻き起こす強風によって壊れていく。ミニチュアの出来が実によく、日本家屋などは屋根の瓦が一枚一枚剥がれて飛んでいくという芸の細かさ。職人芸である。ミニチュアを一度壊してしまったらまたやり直すというわけにはいかず、一発勝負の撮影現場である。さぞかし緊張感があったことだろう。当時の福岡の人は、自分たちが暮らしている場所が壊れていくのを観て非常に楽しんだそうだ。オレも自分の住んでいる街が怪獣に壊されるという映像は観てみたい。でも田舎なんで舞台にはならないだろうな。
 ゴジラと違うのは、人間側が頑張ればなんとかなってしまうところ。自衛隊機のミサイルもある程度効果はあったようだし、ラストは帰巣本能で阿蘇山に戻ってきたラドンを砲撃で生き埋めにしようと試みる。阿蘇山に向かって撃ち込まれるミサイルが地盤を破壊してラドンは危機に陥る。しかもその攻撃によって阿蘇山の噴火が引き起こさる。なんとか飛び上がったものの爆発に巻き込まれて溶岩の流れに落ちていくラドン。そしてもう一匹も。
 そう、ラドンは二匹いたのであった。観たのがずいぶんと久しぶりなのですっかり忘れていたよ。ちゃんと二匹が同時に映っているショットもあって、あれは雄と雌という設定なのだろうか。
 かなり余韻を残す終わり方で、同じ火山に落ちるでも『ゴジラ』(1984)とは出来が違う。それにしても行方不明になったままの炭坑夫五郎はどうなったんだろうなといったことが気になってしまうオレであった。

B000XFZMBE.jpg『ゴジラ』(1954) 97分 日本 東宝

監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 原作:香山滋 脚本:村田武雄、本多猪四郎 撮影:玉井正夫 美術:中古智 美術監督:北猛夫 編集:平泰陳 音楽:伊福部昭 音響効果:三繩一郎 アクション:手塚勝己、中島春雄 特技・合成:向山宏 特技・美術:渡辺明 特殊技術:円谷英二
出演:志村喬、河内桃子、宝田明、平田昭彦、堺左千夫、村上冬樹、山本廉、鈴木豊明、馬野都留子、岡部正、小川虎之助、手塚勝己、中島春雄、林幹、恩田清二郎、菅井きん、榊田敬二、高堂國典、東静子、鴨田清、笈川武夫、川合玉江、今泉廉、橘正晃、帯一郎、堤康久、鈴川二郎、池谷三郎

 日本映画が生み出した最大のスターである。なんといっても一作目で体長50メートル。後の作品ではビルの高層化に対応して100メートルを超える大きさだ。って、そっちかよ。いやいや、アメリカでも公開されておりローランド・エメリッヒによってハリウッドリメイクもされている。近いうちに二度目のハリウッドリメイクが予定されているとか。知名度の高さは折り紙付きである。
 この一作目は1954年3月1日にビキニ島の核実験による第五福竜丸事件をきっかけに製作されたもので、11月3日には公開されている。日本特撮界の総力を結集した割りには意外と短期間で作られている。だがその特撮は製作期間の短さを感じさせない出来となっている。特撮の責任者は神様円谷英二。モノクロの画面に助けられているがミニチュアなどの出来は良さそうだ。
 ゴジラの登場シーンが海か夜の陸上がほとんどというのも特撮にリアリティを出すための工夫だろう。でも当時のゴジラスーツはかなり重かったそうで、海のシーンの撮影では中の人は大変だったことだろう。
 最初のうちのゴジラは海の中の光や、台風に紛れてやって来て足跡だけを残していくなどなかなか姿を見せないが、山の向こうから頭が見えてくる登場シーンは秀逸である。すぐに姿を見せるのではなくじらすだけじらして引っ張る。モンスター映画の基本である。やはり最初からモンスターが登場したんじゃ情緒がないと思うのだ。
 ゴジラは水爆実験の放射能により突然変異を起こしたと思っていたのだが、志村喬演ずる古生物学者によると太古の棲爬虫類から陸上獣類に進化しようとする中間型の生物が度重なる水爆実験で住処を追い出され東京に向かってきたと説明している。一作目では放射能は直接関係ないんだ。でも口から熱線を吹くのは何で? そんな生物いないだろ。
 それにしてもモンスターは何故東京を、あるいは日本を目指すのか。そんな疑問に答えてくれたのが金子修介版『ゴジラ』。太平洋戦争で亡くなった日本兵の意志がゴジラを生み出したというのだ。無理はある物の説明にはなっている。一作目のゴジラが東京を目指したのは色々理由が考えられるが、一番有力なのはどうせゴジラが壊すのならば東京が画になっていいだろうということだ。銀座一帯で暴れ回るのに、皇居には決して足を向けないのはモンスターなりに大人の事情を分かっている。
 東京の破壊シーンにはまだ年月が経っていない東京大空襲のイメージもあるのだろう。序盤のシーンでネオンサインや看板などすっかり復興した日本がこんどは水爆の象徴であるゴジラによってたたき壊される。ゴジラは災害ではなく戦争なのだ。
 水爆にも耐えたゴジラには大砲も高圧電流も効果を示さない。それどころか怒らせるだけだ。クワッと見開いた眼で睨みつけてくるゴジラは怖ろしい。
 ゴジラを倒すことが出来るのは芹沢博士(平田昭彦)が開発した水中水素破壊剤オキシジェン・デストロイヤーだけだ。オキシジェン・デストロイヤーは水中の酸素を破壊することで水棲の生物を窒息死させてしまい、さらに肉体を液状に溶かしてしまうという原理は分からないが強力な兵器だ。水素を破壊するってどうやるんだとか謎は多いが、頼みの綱はこのオキシジェン・デストロイヤーしかない。だが芹沢博士はオキシジェン・デストロイヤーが軍事兵器に利用されることを怖れて、その存在をひた隠しにしている。そんな博士に使用を迫る宝田明と河内桃子。と突然、テレビから流れてくる女学生たちの祈りの歌。前々から疑問だったんだが、その前のシーンではテレビはついていなかったんだが、いつ誰が点けたんだ?
 オキシジェン・デストロイヤーの軍事兵器としての利用を怖れている芹沢博士だが、水中の酸素を破壊しても魚が死ぬぐらいでそれほど有効な兵器じゃないと思う。研究が進んで空中の酸素を破壊するようになるのを危惧していたのか?
 ラストシーンで志村喬が「あれが最後のゴジラとは思えない。水爆実験が続く限り第二、第三のゴジラが出てくる」といったようなことを言って終わるが、水爆実験が終わったとしても映画が大ヒットしたのでゴジラはまだまだ出てくるのであった。なんといっても時事ネタはほとんど扱わない原作の『サザエさん』に登場するぐらいだ。カツオとワカメがゴジラに連れてってとサザエさんにやかましく迫り、怒ったサザエさんが「アジラへいってー!」と怒鳴るネタである。

B003N1L5NY.jpg『デイ・アフター・トゥモロー』(2004) THE DAY AFTER TOMORROW 124分 アメリカ 20th CENTURY FOX

監督:ローランド・エメリッヒ 製作:ローランド・エメリッヒ、マーク・ゴードン 製作総指揮:ウテ・エメリッヒ、ステファニー・ジャーメイン 原作:ローランド・エメリッヒ 脚本:ローランド・エメリッヒ、ジェフリー・ナックマノフ 撮影:ウエリ・スタイガー 編集:デヴィッド・ブレナー 音楽:ハラルド・クローサー
出演:デニス・クエイド、ジェイク・ギレンホール、イアン・ホルム、エミー・ロッサム、ジェイ・O・サンダース、セーラ・ウォード、アージェイ・スミス、タムリン・トミタ、オースティン・ニコルズ、ダッシュ・ミホク、カール・アラッキ、ケネス・ウェルシュ、ペリー・キング

 昨日の『サンクタム』に引き続き極限状態での父息子物。温暖化現象によって地球の気温が上昇し、そのせいで南極の氷が溶け暖流の流れを変えてしまう。そのせいで水温が冷え新たなる氷河期がやって来るという、風が吹けば桶屋が儲かる的理論で地球が大寒波に襲われる。なんかよく聞いても分からない理屈なのだが、どうやら実際に起こりうるらしい。エルニーニョ現象で南アメリカの水温が上がると日本は冷夏になるが、それと似たような物なのか? 違うか。
 主人公のジャック(デニス・クエイド)は南極まで氷を調べに行ったりする活動的な気象学者。そして南極の地下に眠っていた昔の氷を調べたところ、氷河期の前に二酸化炭素が多く含まれていることを見つけ出す。そして地球温暖化会議で「このままでは100年先か1000年先には氷河期が来る」と述べるのだが、京都議定書に批准していないアメリカは「君は気象の専門家かも知れんが、経済のことは分かっていないようだね」とアメリカ副大統領に軽くあしらわれてしまう。
 そんな頃、息子のサム(ジェイク・ギレンホール)は高校生クイズ大会に出場するためニューヨークへ向かおうとしていた。研究研究で飛び回ってばかりのジャックはサムと過ごす時間が少なく、そのため親子関係は微妙になっていた。
 ジャックの100年という数字は楽観的すぎて、氷河期はいきなり訪れた。ニューヨークは凍り付き、サムと仲間たちは公立図書館の中に取り残されてしまう。上空は低気圧の厚い雲が覆い、表に出れば凍死してしまう。しかし、そんなサムの言葉に耳を貸さずに図書館にいた大半の人は南を目指して旅立っていった。
 サムたちは本を燃やして暖を取った。サムは父親と最後に通じた電話で聞いた「必ず助けに行く」という言葉を信じていた。
 いやー、寒い時に観る映画じゃないね。省エネのため部屋の暖房は最低限にしているので、余計と寒く感じられる。といっても北海道の人に言わせれば、こんなの寒いうちに入らんかも知れんが。でも北海道だってグリーンランドの人に言わせれば、こんなの寒いうちに入らないかも知れないしな。寒いところを探せばきりがない。とりあえず映画には関係ないけど冬は南の島で過ごしたいよ。
 ジャックはサムのことを気にかけてはいるのだが、学者らしくイマイチ口べたでコミュニケーションが上手く取れていない。温暖化会議で意見を述べるのだから学者としては有能なのだろうが、そこでも副大統領に睨まれてしまう。後半のサムを助けに行くシーンでは雪と寒さの中をスノーシューズを履いて歩いて行くぐらいだからひょっとしたら山男なのだろう。日本でもアメリカでも山男は口べたなのか。
 サムも日常のシーンでは父親に対して軽く反抗的な態度を取っていたが、頭のいい少年なので本心では父親のことを尊敬していたのだろう。みんなが図書館から出て行ってしまっても数少ない仲間と共に父親を信じて寒さに耐え抜く。
 舞台が図書館となっているのは燃料となる本が大量にあるからだろう。個人的には本を燃やすのには抵抗があるが、命がかかっているとなれば仕方ない。そんな中、グーテンベルグ聖書を最後まで大事そうに抱え込んで「私は神は信じていない。この本は人類が初めて作り出した活版印刷の本なんだ。その時から理性の時代は始まった。なんとしてもこの本は守り抜くよ」という中年男性の存在が活きてくる。大都市を何回も破壊したローランド・エメリッヒも本を燃やすことに若干の抵抗はあったようだ。
 ホームレスの黒人男性は本を破いて衣服の間に入れて断熱材代わりにして「ホームレスの知恵だよ」と言う。日本のホームレスには新聞を使うという話は聞いたことがあるが、万国共通の知恵なのか。
 一番焦点を当てているのはジャックとサムの父息子だが、イギリスの気象観測所のイアン・ホルム、ジャックの妻で病院に取り残された少年の患者に最後まで付き添っている女医、宇宙ステーションから地球の異変を眺める宇宙飛行士など視点が幾つも変わるので、世界的規模のこの災害を立体的に見ることが出来る。それにしてもジャックは唯一この事態を予測していた気象学者なのに、現場をほっぽり出して息子を助けに行くのはどうかと思うけど。
 アメリカの北部はほぼ全滅で、南部の人間もメキシコなど南アメリカへと逃げた。アメリカはメキシコなどにこれまでの債務を帳消しにすることで入国を許可させる。ラストには寒波は一応収まったが、まだこれからどうなるか分からず、ヨーロッパ、アジアも多大な被害を受けている。食糧問題、経済問題などでこれからが大変だ。大統領が全世界に向けてメッセージを送るが、本当になんとかなるのかね。
 冒頭の各地で異変が起き始めているシーンでは日本の千代田区も登場。例によってヘンテコなニッポンを見せてくれる。居酒屋のカウンターが道路側に飛び出しているのは何で? 多分、屋台とゴッチャになってるんだろうな。漢字などはちゃんと意味が通るし、パトカーはちゃんと日本のパトカーカラーなのだが、どうもどこかが変。
 後、狼のシーンはいらなかったな。エメリッヒとしては何か出さないと盛り上がらないと思っちゃうんだろうけど。そのノリで意味もなく大統領まで殺しちゃうんだろうな。

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