洋画 ハ行の最近のブログ記事

B001OF640K.jpg『僕らのミライへ逆回転』(2008) BE KIND REWIND 101分 アメリカ FOCUS FEATURES INTERNATIONAL

監督:ミシェル・ゴンドリー 製作:ジョルジュ・ベルマン 製作総指揮:トビー・エメリッヒ、ガイ・ストーデル 脚本:ミシェル・ゴンドリー 撮影:エレン・クラス プロダクションデザイン:ダン・リー 衣装デザイン:ラエル・エイフィリー、キシュー・チャンド 編集:ジェフ・ブキャナン 音楽:ジャン=ミシェル・ベルナール 音楽監修:リンダ・コーエン
出演:ジャック・ブラック、モス・デフ、ダニー・グローヴァー、ミア・ファロー、メロニー・ディアス、シガーニー・ウィーヴァー、アージェイ・スミス、マーカス・カール・フランクリン、キシュー・チャンド、P・J・バーン、チャンドラー・パーカー、クィントン・アーロン

 まじめな青年マイク(モス・デフ)が働くニュージャージー州のパセーイクという小さな町のおんぼろレンタルビデオ店"ビー・カインド・リワインド"。時代に取り残された同店にも再開発の波が押し寄せ、いよいよ取り壊しの危機に。
 そんなある日、店を空けるフレッチャー店長(ダニー・グローヴァー)に留守を任されたマイクだったが、友人のトラブルメイカー、ジェリー(ジャック・ブラック)が発電所破壊テロをやろうとして感電しどういう理屈か身体に磁力を浴びてしまう。その手で店内のビデオテープをベタベタと触りまくったせいで、商品のVHSビデオが全てダメになってしまう。
 あわてた2人は、ビデオカメラ片手にダンボールや廃材を使って客が借りたがっている『ゴーストバスターズ』や『ラッシュアワー2』をリメイクし急場をしのぐ。オリジナルとは似ても似つかないチープな手作りビデオだったが、いつしかそれが評判を呼び、2人は『ロボコップ』や『2001年宇宙の旅』、『ドライビング Miss デイジー』、『キャリー』、『キング・コング』といったハリウッドの名作、ヒット作を次々と勝手にリメイクし始めた。ちなみに『キャリー』でぶっかけられるのはブタの血ではなくてトマトケチャップ。女優が「トマトジュースだって言ったじゃないの」と怒っている。
 売り上げは伸び、建物を改築する費用も稼ぎ出すことが夢ではなくなってきた。これでもう立ち退かなくて良いのだ。
 しかしそんな虫の良い商売を見逃すハリウッドではなかった。海賊版取締官(シガーニー・ウィーヴァー)がやってきて1作品辺り25万ドルの損害賠償計31億5000万ドルと懲役6万3000年を要求され、ビデオは全てローラー車で粉砕されてしまった。
 一度は全てを諦めてしまった彼らだが、店のある建物で生まれたとされる伝説のジャズ・エンタテイナーのファッツ・ウォーラーの伝記映画を作り、そこで寄付を集めようと考える。彼らは町の住人を巻き込んで伝記映画を撮り始める。

 人気作、名作を勝手にリメイクしてしまう様子が面白い。これが本当にチープで予算数千円、制作期間数時間で、ほとんど廃物利用の小道具・大道具を使って裏の空き地などで撮影している。オレも学生時代にシネマ研究会で自主映画作りをしたものだが、あの時の楽しさを思い出してしまった。
 ただその程度の手作りの駄作でしかも20分ほどの作品を(あの作品内容で120分あったら逆に困ると思うが)客が面白がって人気になり店の前に行列が出来るまでになるというのがちょっと理解出来なかった。
 手作りの作品でも本当に出来が良いか、あるいは本当にバカバカしいかのどちらかでないとこの展開は無理だと思うのだが、2人の作った作品はバカバカしいが人気を呼ぶほどでもないと思うのだが。でもそれを気にしなければお客が2人のリメイク作品を求めてどしどし来店してくるというのは面白かった。
 だが手作りリメイクといっても要は海賊版。これで商売しちゃハリウッドが黙っていないのは当然だろう。だというのにシガーニー・ウィーヴァーがちょっと申し訳なさそうにしているのが気になった。もっと堂々と強制執行すればいいのに。31億5000万ドルや懲役6万3000年はどうなったんだろう。ビデオの廃棄処分でおとがめなしになったのかな。
 伝記映画を製作するのに町の人間が大勢関わってきて協力してくれるというのも嬉しい展開だった。手作り映画をみんなの手で作るという観客であり作り手でもある存在に彼らはなったのだ。
 伝記映画を上映するのに、ライバル大型レンタルDVD店の主人がプロジェクターを持ってきてくれたところはちょっと感動したし、映画の終わりに外に出てみると、窓に白い布をスクリーンとして張ったので映画が外から丸見えで警官や町の人たちが大勢集まってその映画を観ていたところにはさらに感動してしまった。
 でも建物の改築に必要な金額の6万ドルにはとうてい寄付金は届かないし、店長も店を取り壊して公営住宅に移り住むことを決めている。建物が取り壊されることはまず間違いない。それでも、その映画を観た人の心にはその建物の記憶が残る。余韻のある終わり方である。
 ジャック・ブラックが磁石人間になるというのでバカ映画かと思ったら単にそれだけではない。映画への愛がたっぷりつまった良作である。
 ミア・ファローやシガーニー・ウィーヴァーが出ているのには驚いてしまった。シガーニー・ウィーヴァーの出番は短いが。
 原題でもあり店の店名でもある『BE KIND REWIND』は「返却時には巻き戻して下さい」といった意味。店内に注意書きで書かれている分にはかまわないが、それを店名にしてしまうというのはどうだろうか。たしかにレンタルビデオ屋にとっては重要なことであるのだが。DVDの時代になって観終わってからの巻き戻しがなくなって久しいが、学生時代にレンタルビデオ屋でバイトをしていた時は、絶対に巻き戻しをしない客がいて往生したものだ。
 それに対して『僕らのミライへ逆回転』という邦題はどうだろうか。タイムトラベル物のようで作品の内容に合っていないと思うのだが。それにどちらかというと伝記映画の製作で過去に逆回転するし。

B002UMAISA.jpg『BATS 蝙蝠地獄』(1999) BATS 91分 アメリカ DESTINATION FILMS

監督:ルイス・モーノウ 製作:ブラッドリー・ジェンケル、ジョン・ローガン、ルイーズ・ロズナー 製作総指揮:ブレント・ボーム、デイル・ポロック、スティーヴン・ステイブラー 脚本:ジョン・ローガン 撮影:ジョージ・ムーラディアン 特撮:エリック・アラード 音楽:グレーム・レヴェル
出演:ルー・ダイアモンド・フィリップス、ディナ・メイヤー、ボブ・ガントン、レオン、カルロス・ジャコット

『レッド・ウォーター/サメ地獄』(2003)と(こっちも地獄かよ)、人喰い映画俳優と成りつつあるルー・ダイアモンド・フィリップス主演の人喰いコウモリ映画。

 ある科学者がウイルスによって知能と攻撃性を高め、しかも果実と果汁しか食わないオオコウモリを雑食性にしてしまった。後に軍が兵器として開発したと分かるのだが、こんな平気どうやって使うつもりだったのだろうか? 軍の考えることは分からん。
 まずはお約束通りに若い男女が襲われ、コウモリの大群に食い殺される。このコウモリは模型とCGを両用していてなかなかの迫力だ。
 ルー・ダイアモンド・フィリップスはテキサスの田舎町の保安官キムジー。この事件の解決にコウモリの専門家キャスパー博士(ディナ・メイヤー)、マッケイブ博士(ボブ・ガントン)と乗り出す。しかしマッケイブ博士はコウモリを改良した張本人で、実は自体を解決する気などさらさらない。ボブ・ガントンが演じているだけにふてぶてしさに腹が立つが自業自得で死ぬのでいい気味だ。しかもケイブ博士の元から逃げ出したと言っているが、実は自分で逃がしたらしい。コウモリの支配者になるつもりだったようだが何を考えていたのだろうか。理解に苦しむ。コウモリを操って世界の支配者にでも収まる気だったのか?
 町では町長が夜間外出禁止令を出すのだが、なんといってもテキサスのこと、自分の身は自分で守るからと外出禁止令など気にせず呑気に夜の町で遊んでいるのが笑える。
 だが笑ってばかりもいられない。そこにコウモリの大群が襲来。町は阿鼻叫喚の地獄と化す。まさに蝙蝠地獄である。このシーンはかなりの迫力で低予算映画にしてはかなりがんばっている。
 車が爆発し、電信柱が倒れ、建物のガラスが割れる。そして人々は蝙蝠に襲われ食われていく。オオコウモリと言っても翼を広げて30センチぐらいの大きさだから、食われると言ってもガブリと一口ではなく、チビリチビリを肉を食らい削り取られていく。嫌な死に方だ。
 コウモリの知能は非常に高く、ちょっとした隙間から入り込んでくる。立てこもったつもりが、そこが墓場になってしまう場合もある。
 主人公たちが学校に立て籠もるシーンも格好いい。窓という窓をフェンスで囲って「これでアラモ砦みたく頑丈だ」と相応しくない例えをする奴もいるし。全滅しただろアラモ砦は。
 軍はコウモリの巣を特定し爆撃するつもりだが、それでは巣が飛び散って分散してしまうだけでかえって被害を拡大してしまう。キャスパー博士の提案で冷凍装置でコウモリを凍死させようとなるが、猶予時間は62分。それを過ぎると軍がコウモリの巣の坑道を爆破してしまう。まったく軍の融通の利かなさときたら呆れたものである。
 田舎町、理解のない上層部(この場合は軍で町長さんは事態を理解して行動してくれる)、孤軍奮闘する主人公たちと人喰い映画のお約束をきっちりと抑えている。
 カントリーソングのお国柄テキサスで無骨な保安官をやっているルー・ダイアモンド・フィリップスがオペラファンという意外な設定もある。
 キャスパー博士は女性ながら頼りになるし、その相棒の黒人ジミー(レオン)も良い味を出したキャラクターだ。
 コウモリが一斉に襲って来るシーンでは5.1chサウンドが有効に行かされていて、実際に回りをコウモリに囲まれてしまったかのようである。
 ラストにはきちんと決着がついて、ホラーにありがちな一匹だけ生き残ってたオチと思わせて笑えるオチになっているのが楽しい。
 DVDのパッケージでBATSが逆さまになっているのにご注目。コウモリをイメージしてるんだね。
 91分という上映時間もちょうど良い感じ。

B002U18K9A.jpg『パラサイト・バイティング 食人草』(2008) THE RUINS 90分 アメリカ DREAMWORKS PICTURES、SPYGLASS ENTERTAINMENT

監督:カーター・スミス 製作:クリス・ベンダー、スチュアート・コーンフェルド、ジェレミー・クレイマー 製作総指揮:ゲイリー・バーバー、ロジャー・バーンバウム、トリッシュ・ホフマン、ベン・スティラー 原作:スコット・スミス『ルインズ 廃墟の奥へ』(扶桑社刊) 脚本:スコット・スミス 撮影:ダリウス・コンジ プロダクションデザイン:グラント・メイジャー 衣装デザイン:リジー・ガーディナー 編集:ジェフ・ベタンコート 音楽:グレーム・レヴェル
出演:ジョナサン・タッカー、ジェナ・マローン、ローラ・ラムジー、ショーン・アシュモア、ジョー・アンダーソン

 サム・ライミ監督作『シンプル・プラン』で原作・脚本を務めたスコット・スミス(スコット・B・スミスとも言う)の同じく原作・脚本作品である。
 メキシコに観光に来ていたアメリカの青年男女がマヤ神殿を訪れることで、食人植物に襲われると言った、まぁストーリーから言えば単純かつありがちな話である。
 しかし、この作品はホラー・キングであるスティーヴン・キングの2008年映画の第8位を飾っている。キングの映画の趣味はいまいち分からんところがあるし同じ作家仲間の作品というのもあるのだろうが、個人的には「おいおいキング、これで8位はないだろ」といったのが正直な感想だ。まぁキングの映画の趣味は一般人にはよく分からんところがあるからな。自分の初監督映画は『地獄のデビル・トラック』だし、脚本を書いたどれかの作品では『デッド・ゾーン』を主人公が観ているシーンで脚本が最低だとか言わせてたし。
 ストーリーは最初に言ったようにいたってシンプル。アメリカの学生男女がドイツ人男性に誘われてマヤ神殿を観光しに行く。ところがマヤ人に辺りを取り囲まれドイツ人男性はあっさり射殺されてしまう。
 そのマヤ神殿を調査中だったはずのピラミッドの頭頂部に張られたテントはみんな無人で、彼らはズルズルと伝い寄ってくる蔓状の謎の食人植物に襲われていくのであった。若者たちの中に医学生がいるのはもはやお約束。ちなみに原題の"THE RUINS"は"廃墟、遺跡"といった意味だそうだ。"食人草"といった意味ではなくて残念である。
 それほど食人植物による残酷描写はない。それよりも食人植物に下肢を侵されてしまった青年の下肢を医学生が切断したり、自分の中に食人植物が入り込んだと思い込んだ女性が自らの身体をナイフで切り刻む方がショッキングだ。
 食人植物はズルズルと這い寄ってきてそのスローさが怖ろしい。人体に潜り込んではその下で繁殖する様だ。ピラミッドの地下では赤い花が携帯の着信音を真似して人をおびき寄せたりと知能もあるようだ。まるでちいさな『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』のオードリー2の様だ。
 マヤ神殿の回りを食人植物が表に出ることを警戒した原住民が取り囲んでいて、逃げるに逃げられないというのは面白い設定だ。おかげでいるにいられず逃げるに逃げられずと言うサバイバル状況に陥られてしまう。原住民は食人植物をかなり警戒していて、青年の一人が投げた植物の蔓に当たった少年を族長らしき人物自ら射殺してしまうほどだ。
 ジェナ・マローン、ローラ・ラムジーといった美女二人をキャスティングしたのも気が利いている。なかでもローラ・ラムジーが自分の中に食人植物がいると思い込んでナイフで身体を切り刻み、弾みで仲間の青年を刺し殺してしまうシーンはかなり重い。
 閉じこめられた青年たちの絶望が描かれていて悪くない。
 コメディ関係で有名なベン・スティラーが製作総指揮を務めているのはかなり以外だ。 結局、この食人植物の謎は解けないがこの作品の場合それでいいのだろう。
 ヒロインを逃がすため、囮になって弓矢で撃たれる医学生の青年が無茶苦茶痛そうだった。銃で一発ならともかく弓矢はキツいよな弓矢は。
 結論から言えば変に冒険心など起こさずに、素直にホテルのプールで泳いでいれば良かったのだ。そうすれば危険にも合わず万事解決。変なドイツ人の誘いになんか乗っちゃいけない。

 邦題のせいで損をしそうだが、若者系ホラーとしてはかなり楽しめる作品であった。ラストにはオチもちゃんとあるし。ギリシャ人可哀想だなー。

B001P3POZW.jpg『バーン・アフター・リーディング』(2008) BURN AFTER READING 93分 アメリカ FOCUS FEATURES、WORKING TITLE

監督:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン 製作:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン 製作総指揮:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ロバート・グラフ 脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 撮影:エマニュエル・ルベツキ プロダクションデザイン:ジェス・ゴンコール 衣装デザイン:メアリー・ゾフレス 編集:イーサン・コーエン(ロデリック・ジェインズ名義)、ジョエル・コーエン(ロデリック・ジェインズ名義) 音楽:カーター・バーウェル 
出演:ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、エリザベス・マーヴェル、リチャード・ジェンキンス、J・K・シモンズ、デヴィッド・ラッシュ、オレク・クルパ、マイケル・カントリーマン、ブライアン・オニール、アーマンド・シュルツ

『ノーカントリー』でアカデミー賞を取った後の次作がこの『バーン・アフター・リーディング』だ。『読んだら焼却せよ』だから重要書類のことだろうか。
 ガラッと芸風を変えてコメディ作品となっている。それもコーエン兄弟らしいひねくれた笑いのコメディだ。ブラッド・ピットを始めとして豪華キャストはみんな的確で、ハマっている。自己愛が強く傲慢な連中ばかりだ。変な連中ばかりで、腹の中で何を考えているか分からない。精神が壊れかけの者もいる。
 人間の欲望には限りがないという映画で、美容整形の費用を稼ぐために、機密文書を持ち主やロシア大使館に売ろうとする女性(フランシス・マクドーマンド)とブラッド・ピット。二組の夫婦は離婚騒動中だしジョージ・クルーニーはその離婚騒動の間にも別の恋人を作って女遊びに余念がない。ジョン・マルコビッチは飲酒問題のためCIAを辞め、自伝を書き出している。この自伝が騒動を引き起こす鍵となる。
 ブラッド・ピットのあっけない死はいかにもコーエン兄弟らしい皮肉さを感じさせる。 テンポがあまりよくないのが玉に瑕だが、充分に笑える映画になっている。
 コーエン兄弟らしく入り組んだ脚本で、話が細部に分かれていく。些細な判断ミスで人生がとんでもない方向に行ってしまうのだが、こぢんまりとまとまりすぎている気がする。
 バカげた目的にバカげた手法。思いつきで突っ走ってついには死人が何人も出てしまう。徹底して底意地が悪い。男性陣は散々な目に合い、女性陣だけが得をする。その皮肉さ。これが本来のコーエン兄弟だ。
 スポーツジムの支配人を演じたリチャード・ジェンキンスはフランシス・マクドーマンドに惚れていて、彼女のためにジョン・マルコビッチの家に忍び込んでマルコビッチに斧で惨殺されてしまう。哀愁漂う役柄である。
 退職、離婚、浮気、自伝の執筆といったそれぞれは大したことのない事柄が複雑に絡み合って大きな事件に発展する。そして日常はいとも容易く崩壊する。それら全てをなかったことにしてしまうCIAという存在。この作品はCIAへの皮肉がたっぷり詰まっている。
 それにしてもipodバカであっさり殺されてしまうブラッド・ピットには笑ってしまった。クローゼットに潜んでいるところをパン!と拳銃の一発であっけなく死んでしまうんだもの。
 しかし女は怖ろしい。結局はフランシス・マクドーマンドが美容整形の手術費用を稼ぐためにこの騒ぎが起きたのだ。彼女が欲深でなければ人も死なず、みんなそれなりに平和に生きていけたはずなのに。
 それにしても、機密情報の入ったCD-Rをスポーツジムの更衣室に落としていったのは誰なんだ。これについては明らかにされていないが、偶然なのかわざとなのか。わざとだとしたらいったいどんな目的があったのか。コーエン兄弟にとってはそれは重要ではないらしい。ストーリーを追うよりも、登場人物のドタバタ振りを楽しむ映画。
 コーエン兄弟作品としては並みか。

B002TUEW80.jpg『F.R.A.T./戦慄の武装警察』(2005) EDISON 99分 アメリカ MILLENNIUM FILMS

監督:デヴィッド・J・バーク 製作:ボアズ・デヴィッドソン、ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ、ジョン・トンプソン 製作総指揮:ダニー・ディムボート、アンドレアス・グロッシュ、アヴィ・ラーナー、アンドレアス・シュミット、トレヴァー・ショート 脚本:デヴィッド・J・バーク 撮影:フランシス・ケニー
出演:モーガン・フリーマン、ケヴィン・スペイシー、ジャスティン・ティンバーレイク、LL・クール・J、ディラン・マクダーモット、ジョン・ハード、ケイリー・エルウィズ、ロゼリン・サンチェス、マルコ・サンチェス、アンドリュー・ジャクソン、パイパー・ペラーボ

 F.R.A.T.(フラット)とはエジソン市警察の緊急突撃チームのことである。
 てっきりアクション映画かと思ったら、オープニングとエンディングに派手だが安っぽい銃撃戦が2回あるだけで、あとはF.R.A.T.の汚職を暴く社会派映画だった。
 なによりキャストが豪華だ。このキャストを揃えるのに力を使い果たしてしまってあとは息切れしている感じがある。

 15年前、エジソンシティは犯罪の巣窟だった。そこで強行に悪に対抗するF.R.A.T.が設立された。そのおかげで犯罪率は激減したが、F.R.A.T.も警察内の悪に変質してしまった。
 F.R.A.T.は犯罪現場から現金や麻薬、武器などを持ち去り不正に資金源にしていた。そのためには犯人の殺害も辞さなかった。
 そのことに気がついた若手新聞記者とF.R.A.T.で唯一まともな警官が手を組んで不正を暴いていく。
 ところが新聞記者と恋人が警告で襲われ重傷を負う。復帰した新聞記者はさらにしつこく事件を追い続ける。ところが証人となるはずの囚人が刑務所内で刺し殺されてしまう。
 果たして、F.R.A.T.の悪事は暴かれるのだろうか。

 モーガン・フリーマンが相変わらずの渋い演技を見せてくれる。浅い映画に深みを持たせてくれている。
 新聞記者の上司なのだが、若くて突っ走る彼を抑え本物の記者魂を教える。今でこそ地方新聞で働いているが(それとも社長?)元はピューリッツァー賞を取った名記者だった。
 新聞記者が正確な情報もなく憶測で記事を書いたことに腹を立てる。記事には裏付けとなる証拠が必要なのだ。
 ケヴィン・スペイシーは調査官。正直、なんかいるなぁといった印象で影が薄い。出番はそれなりにあるのに演出が下手なのだ。もったいないにもほどがある。
 そもそもこの映画、キャラクターの掘り下げが浅く、個性が発揮されていない。役者陣のメンツが揃っているのにもったいないことである。
 ストーリー自体は単純な勧善懲悪物で、悪のF.R.A.T.が滅ぼされて終わり。サスペンスとしては深みがなく面白味に欠ける。警察署内で銃を抜いたF.R.A.T.隊員をすかさず射殺して口封じしてしまうシーンなどはいいのだが、全体的に安易で凡庸である。

B000PJZYSO.jpg『ピッチブラック』(2000) PITCH BLACK 108分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:デヴィッド・トゥーヒー 製作:トム・エンゲルマン 製作総指揮:テッド・フィールド、スコット・クルーフ、アンソニー・ウィンリー 原案:ジム・ウィート、ケン・ウィート 脚本:ジム・ウィート、ケン・ウィート、デヴィッド・トゥーヒー 撮影:デヴィッド・エグビー 音楽:グレーム・レヴェル
出演:ヴィン・ディーゼル、ラダ・ミッチェル、コール・ハウザー、キース・デヴィッド、ルイス・フィッツジェラルド、クローディア・ブラック、リアンナ・グリフィス、ジョン・ムーア、サイモン・バーク

 宇宙船が定期航路を外れ未知の惑星に墜落した。40人の乗員乗客のうち生き残ったのは10名程度。
 その星には3つの太陽があり常に日が沈むことはなかった。しかし22年に一度皆既日食が起こり、星に夜が訪れた。そして、その夜に光を苦手とする肉食獣が飛来して彼らを襲い始めた。
 頼りになるのはただ一人、刑務所の脱獄囚で刑務所内で暗所でも目が見えるように改造されたリディック(ヴィン・ディーゼル)だけだった。

『アライバル 侵略者』など低予算で撮られたSF作品では実力を存分に発揮するデヴィッド・トゥーヒー作品。SFマインドの持ち主だ。
 ちなみにこの作品の続編が『リディック』となるがこちらは変に予算を使えたのとヴィン・ディーゼルが勘違いをしているのでひどい作品だった。やはりデヴィッド・トゥーヒーは低予算に限る。
 2000年の作品なのに宇宙を飛ぶ宇宙船をCGではなく模型で作るなどこだわりが感じられる。まぁ予算の関係かも知れないが。
 暗所でも物が見えるように手術されたため、普段はゴーグル型サングラスをかけているリディックが渋くて格好いい。彼に憧れて坊主頭にしてサングラスをかける少年、実は少女の存在もイカしている。
 ラストでは助かるであろう人物があっさりとモンスターに殺されてしまう非情さにこの作品のテイストが現れている。本来ならばラストで死ぬのはリディックのはずだ。
 時代もあるのだろうが、メッカ巡礼に息子3人を連れて旅行中のイスラム教徒が息子3人があっさりと無残に殺されてしまう哀れさよ。キリスト教徒だったらこうは描かないだろう。
 一人また一人と殺されていって、大体次に殺される人間は分かってしまうのだが、やはりスリリングだ。
 疑問なのが、モンスターの骨格。それによると真っ正面が死角なのだ。肉食獣としてそれはどうよ。リディックと正面に向かい合ってモンスターの振る首の方向へリディックが身をそらすシーンには思わず笑ってしまった。
 そもそも、この星には分かる範囲では生き物はおらず、すべてモンスターに食い尽くされてしまったようである。だったら、こいつら普段は何を食べて生きていんだ。
 共食いをしているシーンもあるが、それで22年は持たんだろう。謎である。まあ、ハードSFではなくスペースオペラが入っているからそれでも良いんだろうが。
 そのモンスターに対抗できるのは唯一光。発光ダイオードから酒での松明まで使って身を守る。次第に乏しくなっていく明かりが人類側の無力さを感じさせる。
 極限状態で、恐怖に駆られて勝手な行動を取り自分が食われるばかりか、他人にも迷惑をかけるキャラが出てくるのはお約束。
 リディックは殺人犯で脱獄犯の凶悪犯のはずなのだがそれを感じさせないのはマイナス。悪のカリスマをもっと感じさせて欲しかった。それとも全て冤罪か正当防衛なのだろうか。
 太陽電池で動くバギーにはなんで充電バッテリーを搭載していなかったんだろうと思ったが、22年に一度以外は常に太陽が出ている星だから良いのか。
 青い太陽の設定なので青のフィルターをかけただけの映像はちょっと安っぽく見えてしまう。終盤は暗闇のシーンばかりなので今度は見にくい。
 それにしてもこの頃のヴィン・ディーゼルは良かった。

B000ENUYUE.jpg『ブレイキング・ニュース』(2004) 大事件/BREAKING NEWS 91分 香港/中国 銀河映像有限公司

監督:ジョニー・トー 脚本:チャン・ヒンカイ、イップ・ティンシン 撮影:チェン・チュウキョン 音楽:ベン・チャン、チュン・チーウィン
出演:ケリー・チャン、、リッチー・レン、ニック・チョン、ラム・シュー、ユウ・ヨン、マギー・シュー、サイモン・ヤム、チョン・シウファイ

 銀行強盗団とチョン警部補(ニック・チョン)指揮する刑事捜査課との間で銃撃戦が発生。その時、居合わせた警官が犯人に向かって両手を挙げて降伏してしまい、その映像がニュースに流れて警察の威信は地に落ちてしまう。
 そこで組織犯罪課のレベッカ警視(ケリー・チャン)は大胆なアイディアを思いつく。PTU(機動部隊)の班長に無線カメラを持たせ、犯人逮捕の映像を捕らえ、それをメディアに流すことで警察への信用を取り戻そうというのだ。
 チョン警部補とその部下は組織犯罪課の仕事だというのに暴走して犯人を追い、ついに高層集合住宅に犯人が潜んでいるのを嗅ぎつける。
 組織犯罪課も現場に急行し、メディアへの仕掛けを始めるが、犯人側もカメラ付き携帯やパソコンで情報戦を応戦しはじめる。
 そして人質解放に伴って刑事・PTUと犯人との激しい銃撃戦が始まる。

 まずオープニングの約7分間の1カットによる銃撃戦に驚く。カメラは流れるように動き、時に激しく動く。臨場感溢れる映像となっている。作中の所々では画面分割が効果的に使われており、ブライアン・デ・パルマを思い出してしまった。
 残念だなと思ったのが、無線カメラの映像が効果的に使われておらず、ほんのちょっと登場するだけで、物語の肝であるはずのアイディアが機能していないことだ。ひと思いに、リアルタイムで生中継ぐらいにしても良かったのではないだろうか。それでは警察の好きなように編集できず警察への好感度を上げる役目を果たせなくなってしまうが、緊張感は増しただろう。人質を取った犯人の要求というのではどうだろうか。
 香港映画といえば派手な銃撃戦だが、この作品での銃撃戦はジョン・ウーのような派手でダンスを踊るようなものではなくひたすら地味である。かなりの至近距離で撃ってもなかなか敵にも味方にも弾が当たらない。ハンドガンの実際の命中率はそんなものなのかも知れない。
 途中、殺し屋と銀行強盗が並んで料理をして、人質家族と一緒に飯を食うシーンがあって、妙にほのぼのとしてしまう。もっともこれもパソコンのwebカメラを使って配信されていて、犯人側のメディア戦略ではあるのだが。
 警察側、犯人側ともにメディアに情報を流してくるのだが、それは自分たちの都合の良い物に加工されてしまっていて、視聴者であるオレたちはそれを真実だと信じてしまう。鵜呑みにせずに疑問を持つことが必要だ。
 警察側は警察のイメージキャラクターであるジャッキー(チェン)まで撮影を中断させて現場での取材に引っ張り出す。ちらっと映るその人物はどう見ても偽物だが、まさか本物じゃないよな。
 集合住宅の中でたまたま殺し屋2人組と銀行強盗団が出くわしてしまい、結果として悪党同士仲良くなってしまう。そこがラストの銀行強盗団のボス・ユアン(リッチー・レン)の最後に繋がってくる。
 人質となるタクシー運転手(ラム・シュー)が良い味出している。この人は同じジョニー・トーの『PTU』(2003)にも出ていたが、情けなさが実に良い。
 チョンの部下でもうすぐ定年を迎える刑事も味があって良い。医長が弱いとのことでなにかにつけて屁をこいてるの。
 舞台を迷宮のような高層集合住宅にしたのは正解だった。狭い廊下での銃撃戦はリアルで迫力があった。
 これがハリウッドや日本映画ならばレベッカに恋愛話を絡めてストーリーを冗長なものにしてしまうのだろうが、そこら辺をばっさりと切り捨て、かなり詰まったストーリーを91分という短時間に収めてしまった手腕は見事である。

B001E7TRX4.jpg『パーマーの危機脱出』(1966) FUNERAL IN BERLIN 102分 アメリカ PARAMOUNT PICTURES

監督:ガイ・ハミルトン 製作:ハリー・サルツマン 製作総指揮:クリフォード・パークス 原作 レン・デイトン 脚本:エヴァン・ジョーンズ 撮影:オットー・ヘラー 0音楽:コンラッド・エルファース
出演:マイケル・ケイン、オスカー・ホモルカ、エヴァ・レンツィ、ポール・ハシミッド、ガイ・ドールマン、マルト・ケラー

 セルロイド枠の黒い眼鏡をかけて外さず、常にビジネス・スーツ。そして多くのシーンでベージュのコートを着ている。
 一見、普通の公務員に見えるこの男だが、いや確かに公務員なのだが所属が変わっている。イギリスの諜報部MI6勤務なのだ。
 そもそも常時眼鏡をかけているスパイというのが珍しい。『オースティンパワーズ』で主人公が眼鏡なのはこの作品のオマージュという説がある。2作目で主人公の父親役で眼鏡姿のマイケル・ケインが出てきたからまず間違いないであろう。
 あるソビエト将校の西側への脱出計画から始まって、物語は複雑に交差していく。
 イスラエルの情報機関モサドがポール・ルイ・ブルームなるドイツ人が第二次戦争中にユダヤ人から巻き上げた財宝を狙っている。またMI6の中からも裏切り者が出てくる。物語は虚々実々で主人公のパーマー(マイケル・ケイン)は誰を信頼して良いやら、いや誰も信頼してはいけない状態の中二転三転で話は進む。
 MI6は007シリーズを観るとずいぶんいい加減な組織だが、このMI6は違っていて、身分証明の書類を持ち出すのにもパーマーのサイン。必要経費を持ち出すにもパーマーのサインが必要なのだ。だが一般的な会社を考えればそれが当たり前という気もする。
 監督は『007 黄金銃を持つ男』などのガイ・ハミルトンだが、こちらには過剰なお色気や派手なアクションなど無く実に地味な仕上がりになっている。その地味さがたまらない。
 マイケル・ケインは常につまらなそうな表情で、下らないジョークをいってみせ、それでいて一流のスパイというギャップがたまらない。英国紳士ここにありといった感じである。
 ソビエト将校を西側に脱出させるための作戦が、死体に扮して棺桶に入れて東西の境界線を越えるというもの。だから原題が『FUNERAL IN BERLIN(ベルリンでの葬儀)』。泣き女が登場して棺桶が西側に渡り無事を確認すると報酬をもらってルンルンで帰って行くのが笑えます。
 しかし、棺桶の中に入っていたのはソビエト将校ではなく脱走の手引き屋だったことからことは複雑になっていきます。
 結局、みんなが狙っているのはポール・ルイ・ブルームが残した200万ドルと20年間の利子で、その中で唯一冷静なのがパーマー。
 事件が解決後、上司から前々から依頼していた車の融資800ポンドを支給しようではないかと言われて、「いや、歩いた方が健康に良いですから」と言ってロンドンの雑踏へと歩いて行くパーマー。組織の一員だけど、その組織には根っからは組み込まれない。常に自由人なのだ。格好いいー。
 DVDにはTV放送時の日本語吹き替えが収録されていて、時折英語音声日本語字幕になるのは性質上仕方ないのだが、パーマーを羽佐間道夫氏が吹き替えていて、シリアスなのにユーモラスという独特の雰囲気を醸し出すことに成功している。羽佐間道夫氏と言えば『俺はハマーだ!』か『ロッキー』のイメージが強いが、どちらとも違う演技を披露してくれる。調べてみると、羽佐間道夫氏はマイケル・ケインの吹替を割とやっているようだ。
『パーマーの危機脱出』を洋画劇場でやることはもうないだろうが、誰が吹き替えているかでまったく印象が変わってしまう。とりあえずマイケル・ケイン=羽佐間道夫氏は正解である。

B002AQTCWY.jpg『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(2008) HARRY POTTER AND THE HALF-BLOOD PRINCE 154分 イギリス/アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:デヴィッド・イェーツ 製作:デヴィッド・ハイマン、デヴィッド・バロン 製作総指揮:ライオネル・ウィグラム 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴ・クローヴス 撮影:ブリュノ・デルボネル クリーチャーデザイン:ニック・ダドマン 視覚効果監修:ティム・バーク 特殊メイク:ニック・ダドマン プロダクションデザイン:スチュアート・クレイグ 衣装デザイン:ジェイニー・ティーマイム 編集:マーク・デイ 音楽:ニコラス・フーパー
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ジム・ブロードベント、ヘレナ・ボナム=カーター、ロビー・コルトレーン、ワーウィック・デイヴィス、マイケル・ガンボン、アラン・リックマン、マギー・スミス、ティモシー・スポール、デヴィッド・シューリス、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、マーク・ウィリアムズ、ジェシー・ケイヴ、フランク・ディレイン、ヒーロー・ファインズ=ティフィン、トム・フェルトン、イヴァナ・リンチ、ヘレン・マックロリー、フレディ・ストローマ、デヴィッド・ブラッドリー、マシュー・ルイス、ナタリア・テナ、ジェマ・ジョーンズ、ケイティ・ルング、デイヴ・レジーノ

 シリーズ最新作。前半は思春期の恋愛話が多くを占める。ロンには彼女が出来ているが、実は内心ハーマイオニーが好き。前作で東洋系の女の子と別れたハリーはロンの妹ジニーとどうやら怪しい仲になっている。男女七人ホグワーツ物語なんである。恋愛パートはストーリー上あまり意味はないのにかなり時間を取って描いている。青少年ハリーたちを描きたかったのだろう。でも時間を取りすぎ。女の子は男の子のことしか考えていないのか?
 今回のキーワードは"謎のプリンス"(THE HALF-BLOOD PRINCE)、意訳もはなはだしいと思うのだが劇中ではこの"THE HALF-BLOOD PRINCE"が"半純血の王子"と訳されるから更にややこしい。半純血ってなによ。半100%オレンジジュースみたいなものか。
 半純血の王子の正体は観てのお楽しみ。シリーズ1作目から登場していたあの人だ。いかにも悪人って面構えの人が実際に悪人だったなんてそのまんま過ぎると思うのだが。ここは一発ハグリッドだったりすると面白いのだが。
 で、半純血の王子っていったい何が説明されないまま次回作へ。もうちょっと説明してよ。意味分かんないよ。
 クィディッチにロンがキーパーとして出場しているのに驚いた。ロンはロンでがんばっていたのか。ハーマイオニーは勉強に頑張っているし、ある意味ハリーは血筋だけで手を抜いてないか?
 とはいえハリーの実力も上がっているようで、今回はダンブルドア校長の手伝いで駆け回ることになる。ただ手伝いと言えば聞こえは良いが手駒にされている気がしないでもない。
 ドラコ・マルフォイはドラコ・マルフォイで何かよく分からないことやってるし。こんなシーン、カットしちまえ。
 全体的にダークな雰囲気でラストの魔法対決ではついにダンブルドアが半純血の王子の手にかかって死亡してしまう。でも本当に死んだかは分からない。あのダンブルドアのことだから次回作では元気に登場してくるのかも知れない。「いや、こんなこともあろうかと思ってな......」
 ヴォルデモートは分霊箱と術で命をいくつかに分けて、別々の場所に保管している。その全てを打ち壊さない限りヴォルデモートは不死身である。
 いくつかはダンブルドアが見つけて破壊したが、まだ分霊箱はいくつあるか、どこにあるか分からない。
 ラストではハリーたち3人が、分霊箱を探すために学校を旅立つというシーンで終わる。非常に消化不良な終わり方だ。この中途半端な終わり方は『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のラストを思わせる。
 その割りにあまりワクワクしないのは困りもの。
 154分と今回も長い。この手の映画は2時間以内に収めろといっているのに。実際、すでに原作からかなりカットされているのだから、もう30分ぐらいカットするのもそれほど無茶な話じゃないと思うのだが。消化不良になるよりはずっといい。
 監督は前作に引き続いてデヴィッド・イェーツが担当。前作でも感じたが、少々野暮ったいところがあり、スマートさに欠けている。そして非常に鬱である。観客を楽しませる気がないのか。
 映像的にはハリーとダンブルドアが分霊箱を取りに行くシーンでの謎の怪物の襲撃とそれを追い払うダンブルドアの炎の魔法とロンの家襲撃事件、オープニングの橋の倒壊シーンぐらいで、後は全体的に地味である。

B000WGUSTA.jpg『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007) HARRY POTTER AND THE ORDER OF THE PHOENIX 138分 イギリス/アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:デヴィッド・イェーツ 製作:デヴィッド・バロン、デヴィッド・ハイマン 製作総指揮:ライオネル・ウィグラム 原作:J・K・ローリング 脚本:マイケル・ゴールデンバーグ 撮影:スワヴォミール・イジャック 視覚効果スーパーバイザー:ティム・バーク プロダクションデザイン:スチュアート・クレイグ 衣装デザイン:ジェイニー・ティーマイム 編集:マーク・デイ 音楽:ニコラス・フーパー
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、ロビー・コルトレーン、ワーウィック・デイヴィス、レイフ・ファインズ、マイケル・ガンボン、ブレンダン・グリーソン、リチャード・グリフィス、ジェイソン・アイザックス、ゲイリー・オールドマン、アラン・リックマン、フィオナ・ショウ、マギー・スミス、イメルダ・スタウントン、デヴィッド・シューリス、エマ・トンプソン、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、マーク・ウィリアムズ、ロバート・ハーディ、デヴィッド・ブラッドリー、トム・フェルトン、マシュー・ルイス、イヴァナ・リンチ、ケイティ・ルング、ハリー・メリング、ロバート・パティンソン、ナタリア・テナ

 すっかりダークな雰囲気でハードな物語が展開される。シリーズ初期のライトファンタジー風味からはえらく変わってしまった。
 ハリーもお年頃と言うことで東洋人のガールフレンドが出来る。ただし、途中で裏切りがあって別れてしまうが。キスシーンもあってハリーも大人になったものである。でも設定では14歳なんだよな。子役はもう14歳には見えないが。
 この作品でのハリーはかなり情緒不安定。怒りっぽいし激しい怒りを胸の中で燃やしている。ちょっと嫌な奴に見えてしまうシーンもある。
 不死鳥の騎士団とはシリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン)らヴォルデモートに対抗しようとする勢力が作り出した団体。現在ではハリー・ポッターを守るのを主眼に置いている。
 そして生徒たちが作り上げるのはダンブルドア軍団。命名の仕方が子供じみているが、こちらもヴォルデモートに対抗するのが目的で、ハリーを先生として呪文の訓練に励む。
 魔法世界も一つにまとまってはいなくて、特に魔法省の大臣が自分の地位に固執してダンブルドアが大臣の座を狙っていると思い込んでいて、ヴォルデモートの復活を信じようとはしない。
 そして嫌味な女教師をホグワーツに送り込んでくる。このオバサンが本当に質が悪くて授業はまともな物を行わないわ、ハリーたちに目を付けてことあるごとに虐めてくる。ケンタウロスに捕まって森の奥に連れ去られる消え去り方には拍手喝采であった。
 終盤は派手な魔法対決。杖をふるって魔法が飛び交う。あれだな、魔法使いに重要なのは早口言葉だな。相手より先に呪文を唱えきった方が勝ち。
 シリウス・ブラックの思いがけぬ死を糧にハリーは成長を遂げる。
 ハリーにあってヴォルデモートにないもの。それは守るものの存在だ。
 原作からかなりストーリーが割愛されているようで、ロンの父親が怪我をしているシーンの意味が分からなかったり、不思議ちゃんの存在意義があまりはっきりしないなど原作未読者にはつらい部分がある。
 前作のラストでヴォルデモート側の人間だったはずのマッドアイ・ムーディーが不死鳥の騎士団の一員であるのは何故なんだろうか。さっぱり分からない。
 世界観が重くなってきたので子供受けはどうなんだろうと思うが、CGなどの派手な画面だけでも楽しめるといえば楽しめる。
 個人的には嫌味な女教師による虐めが度を超していて、観ていて不快感があった。
 監督はこれが劇場映画デビュー作になるデヴィッド・イェーツ。全体的にもっさりした演出。もう少し軽快でも良かったと思うのだが。

B000AR94DW.jpg『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005) HARRY POTTER AND THE GOBLET OF FIRE 157分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:マイク・ニューウェル 製作:デヴィッド・ハイマン 製作総指揮:クリス・コロンバス、デヴィッド・バロン、マーク・ラドクリフ、ターニャ・セガッチアン 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴ・クローヴス 撮影:ロジャー・プラット 美術:スチュアート・クレイグ 衣装:ジェイニー・ティーマイム 編集:ミック・オーズリー 音楽:パトリック・ドイル
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント。エマ・ワトソン。トム・フェルトン、スターニスラフ・イワネフスキー、ケイティ・ルング、マシュー・ルイス、ロバート・パティンソン、クレマンス・ポエジー、ロビー・コルトレーン、レイフ・ファインズ、マイケル・ガンボン、ブレンダン・グリーソン、ジェイソン・アイザックス、ゲイリー・オールドマン、アラン・リックマン、マギー・スミス、ティモシー・スポール、プレドラグ・ビエラク、フランシス・デ・ラ・トゥーア、ロジャー・ロイド=パック、ミランダ・リチャードソン、デヴィッド・テナント、マーク・ウィリアムズ、ボニー・ライト、ワーウィック・デイヴィス、ロバート・ハーディ
 
 本格的に殺される人物が出てきて、これまでとカラーが変わってきた第4作目。
 監督は『フェイク』(1997)やジョン・キューザックとビリー・ボブ・ソーントンの『狂っちゃいないぜ』(1999)などを撮ってきたマイク・ニューウェル。お子様ファンタジー映画を撮る人じゃないだろうと思っていたが、出来た作品はお子様ファンタジーではなかった。
 ドラゴンとの空中戦や湖に潜っての水中人との戦いなど派手な画面はあるが基本的にダークな雰囲気だ。原作自体もこの頃からダークな面が増えていたのかも知れない。なんといってもイギリスだしな。その点では監督交代は理にかなっていたのだろうか。
 ついに悪の魔法使いヴォルデモートとハリー・ポッターの一対一の対決も用意されている。ただし、決着を付けるのはまだ早いのではなはだ消化不良な結末にはなっている。幼い頃のハリーをヴォルデモートが殺せなかったのはハリーの能力ではなく母親が命がけで守る呪文をかけていたという設定が良い。
 このシリーズで気に入らなかったのはあからさまな"ハリーびいき"なところで努力もしないで才能だけの奴がすごかったら面白くも何ともない。何かに付けハリーを贔屓するダンブルドア校長も「あんた小児同性愛者でハリーが好きなだけちゃうんかい」だ。そういえばダンブルドア校長はゲイだという噂も聞いたことがある。真偽は知らんがな。
 話の展開は更に早くなって着いていくのが精一杯。取りあえず、三校対決の魔法合戦が行われ、代表者は三人のはずがなぜかハリー・ポッターが四人目の代表者として選ばれてしまい、あれやこれやと苦労して難関を乗り越えていく映画だ。しかし、その難関を乗り越えていくヒントはある人物が目的を持って教えていたという内容。
 主人公グループのハリー、ロン、ハーマイオニーを演じている子役もだいぶと成長してきたがそのなかでもハーマイオニー役のエマ・ワトソンの成長が著しい。十代中頃の子は男の子よりも圧倒的に女の子の方が早いのだ。自分の中学時代を今になって考えると、女の子に対して自分はなんてガキだったんだろうと思い出す。
 途中で正装してのダンスのシーンがあるが、タキシード姿のハリーの似合わなさにくらべてハーマイオニーのドレス姿のしゃんとしていたこと。すっかり女性の顔である。お母さんから贈られた古くさいドレス衣装のロンは論外である。
 このダンスのシーンではその前に誰を誘うだのなんだのと青春時代を感じさせるエピソードになっている。そうかハリーたちも思春期か。で、ハーマイオニーが「なんでもっと早く私を誘ってくれなかったの」と怒っている相手はハリーなのかロンなのか。前作のフラグだとロンに立っていると思うんですがどうでしょうかね。
 個人的お気に入り人物は魔法教師のマッドアイ・ムーディ。演ずるのはブレンダン・グリーソン。ルトガー・ハウアーを思いっきり横に伸ばしたような外見で(今のルトガー・ハウアーがすでに全盛期と比べると横にかなり伸びているが)、ハリーの味方と思いきや意外な展開を見せてくれる。自分の悪事をハリーの前で全てしゃべってしまい観客に謎解きをさせてくれた後に警察ならぬダンブルドア校長らに押し込まれて捕らえられるという火曜サスペンス劇場のような展開を味合わせてくれる。
 言うのを忘れていたがスネイプ先生のアラン・リックマンは一作目からのファン。もったいない使い方をするもんだと毎回思っている。「トカゲヘッドにかけて!」
 出演者の中にゲイリー・オールドマンを入れておいたが、暖炉の中の火として顔が登場するだけで、ひょっとしたらモーションキャプチャーぐらいやっているのかもしれないが、本来は声の出演になるのではないだろうか。
 父親の骨やらハリーの血やらなんやらでヴォルデモートも本格復活したし、次回からはさらにハードな展開になるのであろうか。ハードといってもJ・K・ローリングではたかが知れてると思うが(1作目しか読んでないクセにこんなことを言ってますこの男は)、お子様向け映画でどこまでやってくれるかいい加減楽しみになってきた。
 取りあえず今回は157分という長さを感じなかったので出来は悪くないと思う。

B00008MSTU.jpg『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004) HARRY POTTER AND THE PRISONER OF AZKABAN 142分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:アルフォンソ・キュアロン 製作:デヴィッド・ハイマン、クリス・コロンバス、マーク・ラドクリフ 製作総指揮:マイケル・バーナサン、カラム・マクドゥガル、ターニャ・セガッチアン 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴ・クローヴス 撮影:マイケル・セレシン プロダクションデザイン:スチュアート・クレイグ 編集:スティーヴン・ワイズバーグ 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ゲイリー・オールドマン、ロビー・コルトレーン、マイケル・ガンボン、リチャード・グリフィス、アラン・リックマン、フィオナ・ショウ、マギー・スミス、ティモシー・スポール、デヴィッド・シューリス、エマ・トンプソン、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、マーク・ウィリアムズ、トム・フェルトン、マシュー・ルイス、ワーウィック・デイヴィス、デヴィッド・ブラッドリー、ロバート・ハーディ、ジム・タヴァレ、パム・フェリス、ハリー・メリング

 前2作の監督クリス・コロンバスが製作に移り、新たに監督を後に『トゥモロー・ワールド』(2006)を撮るメキシコ出身のアルフォンソ・キュアロンにして再スタートした『ハリー・ポッター』3作目。
 子供たちも大部成長してきて、DVDのパッケージを見れば分かるが私服はユニクロで買ったような現代風の服装を着崩している。制服姿ばかりだった全2作と比べるとこのあたりの描写も大きな変化である。
 オオカミ男が好きなオレであるが、この作品にも人狼が登場する。これが映画史上もっとも格好悪い人狼である。筋肉が無く手足がひょろりと長くてこれを見てとっさに人狼だと当てられる人は少ないに違いない。人間から人狼への変身シーンがあったのがせめてもの救いだ。
 今回の豪華ゲストはゲイリー・オールドマン。アズカバンの牢獄から脱獄した脱獄囚シリウス・ブラックでハリー・ポッターの命を狙っているとされるが実は......中盤以降からしか出てこず出番は少ないがさすがに存在感があり印象に残る演技を見せてくれる。イギリスにこだわったこのシリーズは出演者もイギリス出身者が多く、ゲイリー・オールドマンもイギリス出身。『シド・アンド・ナンシー』(1986)のシドだしな。
 個人的にはもっと出番が欲しかったし、ハリーの命を狙う狂人として登場して欲しかった。
 ヒッポグリフに乗っての飛行シーンや、雨の中でのクィディッチの試合などイマジネーション豊かなシーンが豊富で、個人的に好きなのはロンドンでの魔法バスのシーンである。
 ラストは時間を遡って事件を解決するという、ドラえもんのタイムマシン的解決法で、タイムパラドックスを起こさないかと心配なんだが科学じゃなくて魔法だから良いのだろう。
 前作はバジリスクとの戦いという見せ場はあったが、今回は過去に戻って過ちを影から修正していくパターンなのでカタルシスのあるシーンは少ない。ハリーが魔法を唱える所ぐらいか。
 原作は未読だがかなり省略されているようで、ある先生が人狼と分かるシーンでハーマイオニーが「あの先生は人狼よ。だから授業を休んでいたんだわ」というシーンがある。原作では満月の日に授業を休講にしていたというエピソードでもあったのであろう。
 だからかなりストーリーは駆け足で進む。これまでより20分は短い142分だからなおさらだ。原作未読者お断りなんだろうか。原作が世界的大ヒットをしているから、原作ファンを相手にしているだけでも人が入るのだろう。でも、1作目しか読んでないけど、あの原作さして面白いとは思えないんだが。
 てっきりハリーとハーマイオニーがくっつくものだとばかり思っていたら、ハリーの友人ロンとハーマイオニーの手がくっついたり、ショッキングなシーンで左右に立っていたハリーではなくロンにハーマイオニーが抱きついたりとフラグ立ちまくり。そう言う展開になっていくのか。なにしろ言ったように原作は読んでいないし、映画も1作目以外は今回初めて観るのでファンの間では当たり前かも知れないことが分からないのだ。
 正直、ダンブルドア校長のリチャード・ハリス目当てで見ていたので、この作品からリチャード・ハリスの死によってマイケル・ガンボンに役者が変わっているため、個人的にテンションが落ちているのは否めない。でも、大きく長い白いヒゲのせいもあるが割と似た役者さんだ。リチャード・ハリスファンでなければ気に留めないだろう。

B000063UPK.jpg『ハリー・ポッターと秘密の部屋』 (2002) HARRY POTTER AND THE CHAMBER OF SECRETS 161分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:クリス・コロンバス 製作:デヴィッド・ハイマン 製作総指揮:マイケル・バーナサン、デヴィッド・バロン、クリス・コロンバス、マーク・ラドクリフ 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴ・クローヴス 撮影:ロジャー・プラット プロダクションデザイン: スチュアート・クレイグ 編集:ピーター・ホーネス 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、リチャード・ハリス、マギー・スミス、アラン・リックマン、ロビー・コルトレーン、フィオナ・ショウ、ジョン・クリーズ、トム・フェルトン、マシュー・ルイス、ケネス・ブラナー、ジェイソン・アイザックス、ミリアム・マーゴリーズ、マーク・ウィリアムズ、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、シャーリー・ヘンダーソン、ジェマ・ジョーンズ、サリー・モーテモア、ワーウィック・デイヴィス、ショーン・ビガースタッフ、アルフレッド・バーク、デヴィッド・ブラッドリー、ロバート・ハーディ

 2年生になって魔法学園ホグワーツに戻ってきたハリー・ポッターが今度は秘密の部屋についての事件を解決する!
 と言ってみたところでタイトルと観れば分かる内容に"!"を付けただけだ。安易な"!"の使用には気をつけねばならない。
 VFX映像のイマジネーションは前作より更にパワーアップしていて、巨大グモ軍団からの逃亡劇や、ラストのバジリスクとハリー・ポッターの戦いなどはかなりの迫力だ。
 空飛ぶ車や動く柳の木などファンタジーな映像も面白い。空飛ぶ車は最新型のスポーツカーなどではなくオンボロのファミリーカーなところが笑える。
 今回は豪華なことにケネス・ブラナーがまぬけな笑わせ役ロックハートで登場する。格好を付けた学校の先生でベストセラーを何冊も出しているのだが、実際に魔法を使わせるとてんでダメ。それには理由があったのだ。エンドロール後のオチにもうまく使われている。やはり上手い役者だ。これで格好いい役をやれば様になるのだから大したモノだ。『フランケンシュタイン』(1994)のフランケンシュタインと同一人物とは思えない。
 子供たちの演技も上手くて、ハーマイオニー役のエマ・ワトソンは特に上手い。薬の調合間違いで猫娘になってしまったハーマイオニーが可愛かった。
 物語の展開は早く、この巻から原作を読んでいないオレには話しについて行くので精一杯なところがあったが、そもそも原作ファンのための映画という位置づけなのだろう。それが良いか悪いかはどうとも言えない。
 最後の敵がハリー・ポッターの額に稲妻形の傷を付けたヴォルデモート。現世の姿としてではなく過去の存在として立ちはだかるのが興味深い。
 屋敷奴隷のドビーはうっとおしいやつだが憎めない。ハリーをホグワーツに行かせようとしなかったのは主人に命令されたからなのか、主人の計画を知ってハリーの命を助けようとしたのかがちょっとわからなかった。命令だと計画と矛盾してしまうので、主人に内緒でハリーを助けようとしたのだと判断している。
 学園にはジョン・クリーズ演じる"ほとんど首なしニック"のような亡霊がうろついているが、女子トイレに現れる"嘆きのマートル"は西洋版"トイレの花子さん"か。
 それにしてもやはり161分は長すぎ。この手の娯楽映画は2時間以内にまとめて欲しい。ストーリー収まらないけど。

B000063TJA.jpg『ハリー・ポッターと賢者の石』  (2001) HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONE 152分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:クリス・コロンバス 製作総指揮:マイケル・バーナサン 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴン・クローヴス 撮影:ジョン・シール プロダクションデザイン:スチュアート・クレイグ 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、リチャード・ハリス、マギー・スミス、アラン・リックマン、イアン・ハート、ロビー・コルトレーン、リチャード・グリフィス、フィオナ・ショウ、ジョン・クリーズ、トム・フェルトン、ハリー・メリング、ワーウィック・デイヴィス、ジョン・ハート、マシュー・ルイス、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、デヴィッド・ブラッドリー

 J・K・ローリングの世界的ベストセラーの映画化。もちろん映画も大ヒット。
 それにしてもこのクィディッチというゲームのルールがイマイチよく分からない。基本的にはサッカーなのだが、ゴールを決めて点を稼いでもシーカーが金の玉を捕まえたらそこで勝ちというのがよく分からない。地道に点を入れてきた連中が馬鹿みたいではないか。
 お子様向けの小説が原作なので映画もお子様向け。驚くような楽しい映像が次々に繰り広げられる。先ほどのクィディッチや大型チェス盤の上で繰り広げられる魔法チェスなど観る者の目を楽しませてくれる。
 監督が『ホーム・アローン』のクリス・コロンバスなので取りあえず退屈はさせない。
 "賢者の石"がキーワードとして登場するが、その扱い方などはあまり上手くストーリーに活かされているとは思えなかった。"賢者の石"を巡る人々の動きの描写が下手くそで「だからなに」「どうなってるの」と思うシーンが多かった。話を複雑にするのと混乱させるのを勘違いしているからだろう。
 1作目だけは原作を読んでいるが、かなり忠実な映像化だったので、その辺りは原作の罪だろう。
 かなり厚めの本を忠実に映像化しているのでかなり無理をしている部分もある。強引にカットしたり、逆にここはカットすべきではないかというシーンが残っていたりする。考えてみれば一年間を描いているのだ、この作品は。
 あくまでもお子様向け映画なので大人の目で観ると粗も目立つが子供は楽しめるだろう。
 それにしては子供向け映画に152分は長すぎではないか。
 個人的に気に入った映画ではないしさして面白いと思わないが、ダンブルドア校長のリチャード・ハリス目当てで観て満足。ジョン・クリーズもゲスト出演しているのがうれしい。他にはジョン・ハートなど意外にキャストが豪華。子役たちの演技も達者なものである。
 ゲロ味や耳クソ味がある百味ビーンズは実際に商品化されて売っているらしいが一度食べてみたい物である。一度で充分そうだが。

B0017XB4YA.jpg『ペナルティ・パパ』(2005) KICKING & SCREAMING 95分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:ジェシー・ディラン 製作:ジミー・ミラー 製作総指揮:ジャド・アパトー、チャールズ・ローヴェン、ダニエル・ルピ 脚本:レオ・ベンヴェヌーティ、スティーヴ・ルドニック 撮影:ロイド・エイハーン二世 音楽:マーク・アイシャム
出演:ウィル・フェレル、ロバート・デュヴァル、ケイト・ウォルシュ、マイク・ディッカ、ディラン・マクラフリン、ジョシュ・ハッチャーソン、ミュゼッタ・ヴァンダー、ティミー・ディータース、レイチェル・ハリス、ジム・ターナー

 (フィル)ウィル・フェレルはスポーツが苦手な軟弱な少年だった。そんな彼も恋をして結婚し一人の息子に恵まれた。その男の子はフィルの父親バック(ロバート・デュヴァル)が監督をやっているグラディエーターズに入っていたが、ずーっとベンチの補欠要員。そしてついにリーグ最下位のタイガースにトレードに出されてしまう。
 ひょんなことからタイガースの監督になったフィルは天才的ストライカーのイタリア人二人組を得た事で勝てるようになる。勝つ事に目標を見出したフィルはすっかり厳しい鬼監督となってチームを鍛え罵声を浴びせるようになる。

 歌手ボブ・ディランの息子というジェシー・ディランが監督をやっている。監督の腕前としては並み。特に冴えた感じはしない。
 すっかり負け犬根性が染みついていたウィル・フェレルが、チームが勝った事で調子に乗り子供たちが楽しくサッカーをやる事を忘れて父親のように勝つ事だけに熱中していく。そのためには反則もかまわないという考えだ。チームの子供たちからも助監督からも見捨てられたウィル・フェレルだが最後の最後になって考えを改め、サッカーを楽しむ事の価値を思い出す。
 これだけ書くとウィル・フェレルが嫌な奴みたいだが、実際途中の試合は回りが引くほどの悪態振りだ。だが、それもこれもコンプレックスがあったため。
 そのコンプレックスを与えたのが父親のロバート・デュヴァル。サッカーの神様ペレが外したシュートをウィル・フェレルが取っていたのにそれを横取りする形で取って今に飾ってある。息子を軟弱だと馬鹿にして一人前の男だと認めていない。
 リーグの最終戦はタイガースとグラディエーターズの試合。途中で選手に自由にやらせたウィル・フェレルは見事に勝ち、ロバート・デュヴァルはウィル・フェレルを立派な男だと認める事になる。『がんばれ!ベアーズ』のサッカー版かと思ったが、主役は子供ではなくあくまでウィル・フェレルとロバート・デュヴァルなのだ。
 ダメ選手だったはずの子供たちが自由にやらせてもらった途端、有能なプレイヤーになるのは予定調和。敵のキーパーの気をそらすためにミミズを食うシーンは良かった。前半で伏線を張ってるんだよね。
 ウィル・フェレルの悪徳監督振りがちょっと見ていて気恥ずかしく感情移入できなかったのが残念。一人だけテンションが高すぎてイライラしてくる。
 子供が大勢出てくるので対象年齢は低いのだろう。ファミリームービーともいいきれない気がするが。いつものジャド・アパトー関連作に登場する下ネタは一切登場しないし、ギャグの過激さも低い。狼の真似をしてチーム全員で吠えていたら犬が大群で襲ってくるシーンは笑った。
 助監督の元アメフトコーチは実際にNFLのシカゴベアーズのヘッドコーチとして、優勝に導いたマイク・ディッカが本人役で出演しているそうだ。意外に演技が上手い。
 ロバート・デュヴァルにはウィル・フェレルの息子と同い年の息子がいて、グラディエーターズの花形プレーヤーなのだが、この子がほとんど活かされていなかったのはもったいない。強引な父親ロバート・デュヴァルに反抗するなど上手くストーリーに絡められそうなのだが。

B002HXO6PI.jpg『ファイナル・カウントダウン』(1980) THE FINAL COUNTDOWN 104分 アメリカ

監督:ドン・テイラー 製作:ピーター・ヴィンセント・ダグラス 製作補:ロイド・カウフマン 製作総指揮:リチャード・R・セント・ジョンズ 脚本:デヴィッド・アンブローズ、ジェリー・デイヴィス、トーマス・ハンター、ピーター・パウエル 撮影:ヴィクター・J・ケンパー 編集:ロバート・K・ランバート 音楽:ジョン・スコット、 アラン・ハワース
出演:カーク・ダグラス、マーティン・シーン、ジェームズ・ファレンティノ、キャサリン・ロス、ロン・オニール、チャールズ・ダーニング、スーン=テック・オー、ヴィクター・モヒカ、ロイド・カウフマン、ピーター・ダグラス、リチャード・リバティー、ゲイリー・モーガン、ダン・フィッツジェラルド

 戦争映画に思われがちだが、なかなかハードなSF映画である。

 原子力空母ニミッツがハワイ沖で謎の嵐に遭遇。その嵐を通り抜けるとなんとそこは1941年12月。真珠湾攻撃間近の頃であった。最初はそこがどこか分からないのだが、無線も通じず、手探りで調べていく内に真珠湾の写真が真珠湾攻撃直前の物であることが分かり、今自分たちがどの時代にいるのかに気づく辺り緊迫感がある。
 そこで艦長(カーク・ダグラス)やマーティン・シーンらは歴史に介入して真珠湾攻撃を防ぐべきか、歴史のままにまかせるべきかで悩む。ハードSFである。

 アクションシーンはF-14とゼロ戦のドッグファイトがあるぐらいで意外と地味な作品ではある。派手な戦闘シーンを期待して観ると肩すかしを食らうかも知れない。しかし、このドッグファイトは性能差を考えるとほとんど弱い者イジメみたいなものである。
 そうして捕虜にした日本兵とのやり取りや、ゼロ戦にヨットを撃沈された上院議員とその女性秘書との物語があったあげく、艦長はついに決断を下す。
「日本軍を返り討ちにしろ」
 だが、その時艦の後ろにはまた時空を越える嵐が迫っていた。
 そして、オープニングに繋がる円環が閉じて物語は終わる。

 これが一時流行った架空戦記物のアメリカ版だったらニミッツが何も考えずに真珠湾攻撃部隊をボコボコにやっつけて終わってしまうのだろう。安易である。この映画の終わり方はさぁこれからというところで終わってしまい大人である。あの架空戦記物のブームというのは何だったのだろうか。

 本物の空母での撮影や、本物の軍用航空機を使っての撮影で、F-14の発艦、着艦シーンなどは臨場感のある迫力な映像となっている。かなり色々な軍用機が登場するのでマニアにはたまらないのかも。

B002IWF23I.jpg『ハワード・ザ・ダック 暗黒魔王の陰謀』(1986) HOWARD THE DUCK 111分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:ウィラード・ハイク 製作:グロリア・カッツ 製作総指揮:ジョージ・ルーカス 原案:スティーヴ・ガーバー 脚本:グロリア・カッツ、ウィラード・ハイク 撮影:リチャード・H・クライン 特撮:ILM、フィル・ティペット 音楽:ジョン・バリー
出演:リー・トンプソン、ジェフリー・ジョーンズ、ティム・ロビンス、ポール・ギルフォイル、リチャード・エドソン、リズ・セイガル、チッップ・ジーン

 冒頭からインディ・ダック(BREEDERS of the LOST STORK)やらRolling Egg(元ネタRolling Stones誌)PLAYDUCK(元ネタPLAYBOY)などなどジョージ・ルーカルらしい泥臭いギャグが連発する。
 地球の科学実験の偶然ににょってアヒル惑星のハワードは地球に無理矢理送られたのだ。ハワードは偶然ビヴァリー(リー・トンプソン)という女性と知り合い、フィル(ティム・ロビンス)という科学館の青年と共になんとか故郷に帰る道を探そうとするが......・

 まずは小人に着ぐるみを着せたハワードが絶望的に可愛くない。この作品はハワードの可愛さにかかっていると思うのだがその出発点で失敗している。
 でも、観ている内にそのハワードが可愛く見えてくるから不思議だ。ジョージ・ルーカスの罠にはまっているのか。
 ラストの暗黒魔王の姿もそれほど悪くない。さすがフィル・ティペット。いや、このシーンまでフィル・ティペットが担当したかは知らないが。
 そして「ハワード・ザ・ダックー」のコーラスで物語は締めくくられる。うん、いいよ。
 ジョージ・ルーカスの『イォーク』や『ウィロー』などの小人趣味などの集大成でもある。ハワードを演じるのはもちろん小人の役者さん。
 脇役時代のティム・ロビンスが脇役を務めていて、ハワード以上に愛らしいのは今のティム・ロビンスを知っているからだろうか。
 終盤のライトプレーンスタントはハワード役の小人役者が実際にやっているそうで見事である。
 当時としては最先端のSFX技術の結晶だったのだ。
 とりあえずリートンプソンが可愛いから良いんじゃないかと思う。
 日本語吹替版としてTV放映版が収録されている。ハワード役は所ジョージ。上手くはないが合っている。

B002MVOFII.jpg『バッド・バイオロジー 狂った性器ども』(2008) BAD BIOLOGY 85分 アメリカ

監督:フランク・ヘネンロッター 製作:R・A・ソーバーン 脚本:フランク・ヘネンロッター、R・A・ソーバーン 撮影:ニック・ディーグ 視覚効果:アル・マグリオシェッティ 音楽:ジョシュ・グレイザー、プリンス・ポール
出演:チャーリー・ダニエルソン、アンソニー・スニード

 フランク・ヘネンロッターが『バスケットケース3』(1982)以来、16年の沈黙を破って撮った珍作。
 それにしてもこのDVDのパッケージは何とかならなかったのだろうか。勇気を出さんと買えんぞ。一応リバーシブルになっていて自宅では割と普通なパッケージにできるが店頭にこれが並んでいて手を出すのは難しかろう。

 写真家のジェニファーは7つのクリトリスと異常な性欲を持つ女性である。その性欲を満たすために男を引っかけてはセックスにふける毎日。時折、勢いにまかせて相手を殺してしまう事もある。
 バッツは出産時にヘソの緒と間違えてペニスを切断されてしまった。縫合はされた物のそれは形だけ。勃起もせずに寂しい少年時代を送り、ステロイドなどの薬品を自ら注射してペニスを育て上げた。おかげでペニスは60センチもの大きさになったばかりか自らの意思を持つ生命体になってしまった。
 その二人が出合う事によって起きる事件とは。

 よくもこんなことを考えついたものである。下らないことこの上ないしなにより下品だ。ヘネンロッターはイカれているとしか思えない。
 二人が巡り会うまでが長くて、それまではひたすら"やってる"感の強い作品になっている。AVかよって感じだ。
 意志を持ったペニスはついにバッツが寝ている間に勝手に身体から離れると、ペニスだけになって夜逃げをしてしまう。そして床や壁を破って女性宅に侵入しては何人も犯しまくるのだ。ペニス視点の映像というのはおそらくこの作品が初めてであろう。しかしどうやって呼吸とか循環器系をまかなっているんだろうね。60センチのペニスがモデルアニメーションで身をくねらせながら床の上を這ってくるシーンは可笑しかった。そして怖い。あれが夜、部屋に侵入してきたら悲鳴を上げちゃうね。
 このペニスの造形が実に不気味である。このペニスとジェニファーはラストにセックスをする。ジェニファーはセックスをしてから2時間で妊娠・陣痛・出産してしまうこれまた特異体質なのだが、ペニスとのセックスでは即出産してしまう。生まれたのはペニスと赤ん坊がくっついたような奇形児だった。ほんと奇形が好きな人である。そしてどうやらジェニファーはその出産で死亡したようだ。バッツは口から泡を吹いて倒れているがこちらも無事ではなさそうだ。
 ジェニファーもバッツも自分の性器に振り回されて悲劇的結末を迎えるのがもの悲しい。ヘネンロッター作品の多くはラストがもの悲しい物が多いがこれもその一本である。

B0015SZ37Q.jpg『フランケンフッカー』(1990) FRANKENHOOKER 85分 アメリカ SHAPIRO GLICKENHAUS ENTERTAINMENT

監督:フランク・ヘネンロッター 製作:エドガー・レヴィンズ 製作総指揮:ジェームズ・グリッケンハウス 脚本:フランク・ヘネンロッター、ロバート・マーティン 撮影:ロバート・ボールドウィン 音楽:ジョー・レンゼッティ
出演:ジェームズ・ロリンズ、パティ・マレン、シャーリー・ストーラー、シャーロット・ヘルムカンプ、ルイーズ・ラサー

『エクスタミネーター』(1980)や『ソルジャー』(1982)などで一部のファンの間で有名なジェームズ・グリッケンハウスが映画製作プロダクションを作り『バスケットケース』(1982)を監督したフランク・ヘネンロッターに「第二作を作ってみん?」と持ちかけた。それに対するヘネンロッターの答えは「撮っても良いけど、ここ何年か企画として暖めていた作品も撮って良い?ってゆーか撮らせろ」といういきさつで出来たのがこの『フランケンフッカー』。そこまでして撮りたかったかヘネンロッター。

 主人公はジェフリー・フランケンという電気技師。フランケンシュタイン家との関係は不明だが、行動をみるに子孫ではないだろうか。医学生だった過去もあるようだが、色々複雑らしい。そんな彼にもちゃんと彼女エリザベスがいたのだが、父親の誕生パーティーでジェフリーがリモコン仕様に改造した芝刈り機に巻き込まれてバラバラになって死んでしまう。この芝刈り機が大したスピードでもないのに避けられないのに思わず笑ってしまう。
 このどさくさにエリザベスの頭部を確保して培養液に漬けておいたジェフリーは、失われた彼女の肉体を補うべく肉体を売る職業、娼婦に目を付ける。ゾロという名の胴元に依頼して何人かの娼婦を集めてもらうが、それぞれに優れた部分が違って一人に決める事が出来ない。そうしている内に、娼婦たちがジェフリーが隠し持っていたスーパー麻薬"スーパー・クラック"を見つけてしまい吸い始める。そしてあまりの強烈さに身体が爆発するのだ。
 こうして、必要なパーツを手に入れたジェフリーはエリザベスの頭部に娼婦の肉体を手術でくくり付ける。そして今日は嵐の日。雷の中に手術台を上げるジェフリーは、激しい雷雨の中、ついにエリザベスの生命を取り戻した。

 エリザベスは肥満で悩んでいた娘だが、手術によって完璧な肉体を手に入れた。登場当時は非常に垢抜けないイメージだが、完璧な肉体を手に入れてからは非常に魅力的である。
 ジェフリーがエリザベスの新しい身体を設計図として書いている最中にE=MC2とか言ってる。相対性理論は関係ないだろう、さすがに。
 ジェフリーの登場シーンから人間の脳みそに瞳が付いた謎の生命体をいじくっているのだが、それを見ても他の人は驚かない。どうやらお馴染みらしい。その後のシーンでもこの脳みそはバックで水槽の中でプカプカしているのだがあれは何なんだろう。ジェフリーは医学部に行きながら電子工学に惹かれてしまったという設定だから電子生命体なんだろうか。
 スーパー・クラックを吸うと身体が爆発してしまうというのはやはり麻薬が嫌いなのだろうと思ってしまう。『ブレインダメージ』と基本は同じである。身体が爆発しても血が飛び散らないのはレイティングの問題だろう。エリザベスがバラバラになるシーンも飛び散る血しか映らないし、その血も赤ではなく黒いのだ。
 オチは強烈。ホラーとして驚くのではなく強烈なギャグとして終わっている。これは一応ハッピーエンドなのか?
 悩んだり興奮したりすると脳の部位を調べて頭に電気ドリルを刺して精神を落ち着かせるというジェフリーというのもメチャクチャである。
 エロいシーンはあるが全然エロくない。そこが笑える。日本映画に例えるならば石井輝男作品だろうか。うん、石井輝男だ。
 そしてついに娼婦たちのスーパー・クラックによる爆発シーンが始まる。ここ最高。どんどん娼婦たちが爆発していく。怖くない。大爆笑である。
 彼女らの肉体を犠牲にして"雷"を受けて甦ったフランケンフッカーことエリザベス。オリジナルの『フランケンシュタイン』の映画をオマージュして底厚の靴をドタドタと履いている。10年ぐらい前に流行ったなぁ女の子の底厚靴。その頃は女の子がドタドタと歩き回っていたのだ。
 日本人がフランケンフッカーの写真を撮るシーンではバックが富士フイルムのネオン。これは狙っていたのかな。
 分類はホラー映画になるのだろうが、どう観てもホラー映画ではない。コメディ映画である。ギャグ映画である。わはははと笑ってみるのが正解なのかも知れない。

B0015SZ37G.jpg『ブレインダメージ』(1987) BRAIN DAMAGE 88分 アメリカ

監督:フランク・ヘネンロッター 製作:エドガー・レヴィンズ 脚本:フランク・ヘネンロッター 音楽:ガス・ルッソ、クラッチレーザー
出演:リック・ハーブスト、ゴードン・マクドナルド、ジェニファー・ロウリー、セオ・バーンズ、ルシール・セイントピーター

『バスケットケース』のフランク・ヘネンロッターがまた妙な映画を撮った。

 老夫婦が飼っていたエルマーという謎の生物が逃げ出してしまう。そのエルマーに取り憑かれてしまったのが主人公のブライアン。ブライアンは恋人や弟と平凡な生活をしていたのだが、この一件以来それらは破綻してしまう。
 エルマーはブライアンの首の後ろに穴を開け、青い液体を注入する。それは強烈な麻薬であって、ブライアンはすっかりそれの虜になってしまう。そしてラリっている間にエルマーは人を襲って脳みそを食ってしまうのだ。老夫婦のところを逃げ出した理由は動物の脳しか食べさせてくれなかったからなのである。

 モンスター映画のふりをしたジャンキー映画。
 ラリったブライアンが廃車置き場で車が輝きに満ちあふれるのを見たり、部屋の天井が一面の星空になったりとジャンキーの幻覚シーンが描かれる。
 それと同時に、自分とエルマーが人を殺していたと知ったブライアンが、エルマーの麻薬を断って断薬すべく安ホテルの一室で苦しむシーンもある。耳から脳みそが引っ張り出されたり、耳が落ちたり血が大量に噴き出したりと禁断症状の中で見る幻覚は真に迫っていて怖ろしい。これを見ると麻薬をやりたくなくなる事間違いなし。
 仕事も辞め、自室に閉じこもり麻薬にのめり込む。家族や恋人も遠ざかっていく。麻薬中毒患者の実態を描いているかのようだ。フランク・ヘネンロッターは麻薬に関しては否定的なようだ。逮捕された元アイドルも『ブレインダメージ』を観ておけば覚醒剤なんかに手を出さなかっただろうに。一度はまると抜け出せない様子がしっかりと描かれている。
 結局、ブライアンはエルマーの麻薬への依存から抜け出せずに、今度は意図して人を殺す行為に手を貸す事になる。ブライアンとエルマーの絆が深まったのだ。
 エルマーは棒状の生命体で、ペニスのイメージ。女性にフェラされる状態で脳みそを食ってしまうシーンもある。気楽な口調でペラペラしゃべるし、変な歌を歌ったりもする。人の脳みそさえ食わなければ良い奴なのかもしれない。脳みそを食う時点で失格だが。イメージ的には『リトルショップ・オブ・ホラーズ』のオードリー2をなんとなく思い出した。太古から生きてきたという割には、ジジイに簡単に握りつぶされて死んでしまう弱さ。よく生きて来られたな。続編があったらあそこから復活するのか?
 エルマーの食欲は留まるところを知らず、主人公の恋人さえディープキスに見せかけて食ってしまう。こんな悲惨な死に方をするヒロインも珍しい。
 ラストは大量の麻薬を脳に注入されたブライアンが頭をピストルで吹き飛ばす。すると割れた頭から大量の光があふれ出す。どんな終わり方だ。
 低予算映画なので映像的に安っぽいのはしょうがない。その安っぽさが逆に麻薬の恐怖をかき立てている部分もある。異物と青年という組み合わせは『バスケットケース』と同じだ。
 地下鉄の車内でそのバスケットケースを抱えた男が登場するのにご注目。

B002MTS3YM.jpg『パーフェクト・ストレンジャー』(2007) PERFECT STRANGER 110分 アメリカ

監督:ジェームズ・フォーリー 製作:エレイン・ゴールドスミス=トーマス 製作総指揮:ロナルド・M・ボズマン、チャールズ・ニューワース、デボラ・シンドラー 原案:ジョン・ボーケンキャンプ 脚本:トッド・コマーニキ 撮影:アナスタス・N・ミコス プロダクションデザイン:ビル・グルーム 衣装デザイン:レネー・アーリック・カルファス 編集:クリストファー・テレフセン 音楽:アントニオ・ピント
出演:ハル・ベリー、ブルース・ウィリス、ジョヴァンニ・リビシ、ゲイリー・ドゥーダン、クレア・ルイス、リチャード・ポートナウ、ニッキー・エイコックス、フロレンシア・ロザーノ、ハイジ・クラム、ポーラ・ミランダ、タマラ・フェルドマン、ジェイソン・アントゥーン、キャスリーン・チャルファント

『ラスト7分11秒まで、真犯人は絶対わからない──。』
 これが公開時のコピーなのだが......あのぉ犯人分かっちゃったんですけど。
 もちろん、コピーは日本の配給会社が勝手に付けているので、それと映画の内容が必ずしも合致している可能性はないわけだが。
 ラストのどんでん返し系の映画だが、コピーでどんでん返しが来ると分かっているわけで、そうなると逆に怪しくない奴から絞っていくと一人の人物に行き着く。まさかそのまんまこいつじゃないよなと思っていたらこいつだったからちょっとがっくりしてしまった。

 子供の頃からの友人が何者かに殺された。主人公の女性記者ロウィーナ(ハル・ベリー)は大手広告代理店の社長ハリソン・ヒル(ブルース・ウィリス)が怪しいと目星を付け、パソコンの専門家マイルズ(ジョヴァンニ・リビシ)の協力の下、広告代理店にスタッフとして潜り込み捜査を始める。だが、物語は意外な方向へと進んでいくのだった。

 アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』を読んだ人はそれを想像してもらえばいい。最初の1回は画期的だが、2度目からは通用しない手段だ。その手段を堂々と使っている辺り、どんでん返しさえすれば良いと思っているのではないだろうか。個人的にはどんでん返し系にはそろそろ飽きた。それこそ最初の数作は驚くが、何作も続くとまたかとなってしまう。
 展開自体は火曜サスペンス劇場のよう。リアリティが致命的に欠けている。マイルズが広告代理店のサーバに細工をしたとはいえいきなり簡単に大手広告代理店に契約社員とはいえ就職できるか?そもそも広告代理店に一台だけファイヤーウォールの甘いサーバがあるというご都合主義はどんなものだろうか。辻褄が合わないところも多いし伏線の張り方が甘くて物語に深みがない。子供時代の回想シーンはもっと上手く使えたはずだ。これでもっときっちりと作り込んであれば感想も違った事であろう。
 犯人の動機は理解できるが、何故その様にしたのかという理由が不明確だ。完全犯罪を目論んだのだろうが、そうしなくても捕まる事はなかったろうに。
 そして最後にはまた余分なオチを付けて終わる。素直に終わっても良かったと思うのだが。それか真犯人が警察に捕まって終わるでも良かっただろう。とにかく脚本の練りが足りない。
 結局エロオヤジだったブルース・ウィリス。やはりこの人は目つきがいやらしい。こき使われたあげく悲惨な目に合うジョヴァンニ・リビシは作品の中で一番光っていた。純情そうで実は異常なところもあるという複雑な役柄を演じきっていた。
 ハル・ベリーはかなりきれいで『キャットウーマン』の悪夢を忘れさせてくれた。でもあの作品もけっこう好きなんだけど。
 それにしてもタイトルの『パーフェクト・ストレンジャー』の意味が分からない。

B0002CHNCE.jpg『フェノミナ』(1984) PHENOMENA 111分/115分 イタリア

監督:ダリオ・アルジェント 製作:ダリオ・アルジェント 脚本:ダリオ・アルジェント、フランコ・フェリーニ 撮影:ロマノ・アルバーニ 特殊効果:セルジオ・スティヴァレッティ 音楽:ゴブリン、サイモン・ボスウェル
出演:ジェニファー・コネリー、ドナルド・プレザンス、ダリア・ニコロディ、ダリラ・ディ・ラッツァーロ、パトリック・ボーショー、フィオーレ・アルジェント、フェデリカ・マストロヤンニ、フィオレンツァ・テッサリ、ミケーレ・ソアヴィ、ファウスタ・アヴェリ

 可憐な美少女時代のジェニファー・コネリー。単に可愛いだけではなく気品があった。今では気品のある美女となった彼女がいじめていじめぬかれる映画だ。誰がいじめるって?監督のダリオ・アルジェントだ。

 アメリカからスイスの寄宿女子校に有名俳優の娘が転校してくる。その彼女は虫と共感するテレパシー能力を持っていた。その能力を使って連続少女殺人事件を解決するのがこの映画だ。
 だが、そんな話の筋道はどうでもいい。例によってダリオ・アルジェントらしい理屈は通っているが支離滅裂だから。それよりもジェニファーのいたぶられ具合を楽しむ映画である。美少女がいたぶられるのを観て楽しむのだからずいぶんと倒錯的な映画だと言える。
 気違い扱いされるわ、謎の薬を飲まされてゲロを吐くわ、腐った死体とウジ虫で一杯の小さなプールに落とされるわ、湖で水面で炎が燃えさかる中を泳ぐわと散々な目に合うジェニファー。これだけ悲惨な目に合わされる美少女女優というのも珍しい。というか多分他にいない。ジェニファーは今では「何であの仕事受けちゃったんだろう?」と反省しているに違いない。汚れ役で役者として一枚抜けるとは言うが、これ本当に汚れちゃってますから。
 よく見るとウジ虫のプールは作り物で、ウジ虫のアップだけ別撮りして上手く組み合わせてあるのだが、それでもあの現場での生理的反感は強かったに違いない。それを見事にこなしてしまう女優根性。嫌がって騒いでいるのが演技に見えない。というか演技じゃなかったりして。
 こういった物理的なイジメに加えて、虫と心が通じると書いた手紙を読まれた女子寮で寮生たちから「わたしはクモよ」「わたしは蝿よ」とよってたかっていじめられる精神的イジメが実は一番怖かった。女って容赦ねーなー。ダリオ・アルジェントは美少女の神性を信じると同時に、ぶさいくな普通の少女の残酷さも合わせて描く。これまた倒錯的である。その寮生たちをジェニファーが蝿の大群を呼び寄せて脅かすシーンは痛快である。その割りには終盤近くで手に付いたウジ虫を洗い流していたがあれはいいのか?

 昆虫学の権威としてドナルド・プレザンスが登場。ダリオ・アルジェント作品の登場人物がしばしばそうであるようにドナルド・プレザンスも両足が不自由で車椅子の生活。そのため、身の回りの世話をチンパンジーにさせている。このチンパンジーがラストで重要。ドナルド・プレザンスは思うように動けないものだから逃げようとしても逃げられずに簡単に犯人に殺されてしまう。残酷である。障害者をいたぶる事にかけても一流なのだ、ダリオ・アルジェントは。

 オープニングで一人の少女が道に迷い、助けを求めた田舎の一軒家で殺人鬼に出くわし殺されてしまうが、この少女を演じているのがダリオ・アルジェントの実の娘フィオーレ・アルジェント。『サスペリア・テルザ 最後の魔女』の主人公アーシア・アルジェントの姉である。ただ単に殺されるだけではなく惨殺。左手をハサミで刺され、腹も刺され、ガラスに顔面を突っこみ、ついには首を切断される。散々である。自分の娘をそこまでするかと思うがそこはそれダリオ・アルジェント。娘への歪んだ愛情の表れなのかも知れない。案外現場での撮影は事務的だったかも知れないが。

 音楽は例によってゴブリンが担当。他には元ストーンズのビル・ワイマンやアイアン・メイデンなど錚々たる顔ぶれが楽曲を提供。迫力のあるサウンドを聴かせてくれる。ちょっとうるさすぎるぐらい。この人らもダリオ・アルジェントのファンなんだろう。好きそうだもんな。

 ストーリーはケチを付けるだけ野暮という物だが、ラスト数分の展開は読めなかった。というか読めるかあんなの。チンパンジーについては登場シーンから一応伏線が張ってあったが覚えてないよそんな伏線。というか伏線だったのか。

 細かい事を考えずにジェニファーの虐められ具合を楽しむ作品である。美少女が虐められるのを楽しむ、最初にも言ったが倒錯的映画である。それにしてもジェニファーは可憐だ。例え眉毛が太くて微妙につながっているとしても。

B002BRK9Q0.jpg『ブライアン・シンガーのトリック・オア・トリート』(2008) Trick 'r Treat 82分 アメリカ/カナダ WARNER PREMIUM

監督:マイケル・ドハティ 製作:ブライアン・シンガー 製作総指揮:トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、ウィリアム・フェイ、アレックス・ガルシア、アショク・アムリトラジ、マイケル・ドハティ、ダン・ハリス 脚本:マイケル・ドハティ 撮影:グレン・マクファーソン プロダクションデザイン:マーク・フリーボーン 編集:ロバート・アイヴィソン 音楽:ダグラス・パイプス
出演:ディラン・ベイカー、ロシェル・エイツ、レスリー・ビブ、ローレン・リー・スミス、ターモー・ペニケット、ブリット・マッキリップ、ジャン=リュック・ビロドー、ブレット・ケリー、コナー・クリストファー・レヴィン、リチャード・ハーモン、クイン・ロード、アンナ・パキン、ブライアン・コックス

 ある田舎町のハロウィンの夜の恐怖を描いたホラー映画。
 大きく4つのパートに分かれているが、オムニバス映画ではない。それぞれが微妙に絡み合いながら一つの流れを作っている群像劇だ。

 校長先生による児童の殺人、30年前のスクールバスの惨劇の現場を見に来た子供たちが亡霊に襲われる、女性の狼男......という言い方は変だから人狼による殺人、トリック・オア・トリートを守らない偏屈男へのハロウィンの精によるお仕置きがメインの4つのお話。それにいくつかの細かいエピソードも含めて最後には亡霊による復讐劇で終わる。

 これが82分の中に詰め込まれている。吸血鬼だと思っていた男が実は偽物だったり、偽物だと思っていた物が本物だったりとハロウィンの仮装ならではの楽しみがある。
 お話は上手くリンクしていて次の展開がどうなるか楽しみに観ることが出来る。その繋がり方が見事で個々のエピソードの雰囲気やテンポを受け継ぎ、時に拡大してホラーとしての流れを作っている。

 一つ一つのネタの完成度は高いが、ちょっと短すぎて物足りなさを感じる。そういった点もあってアメリカでも劇場公開されずにビデオダイレクトになったのではないだろうか。もったいない気がする。作品そのものの完成度も高く、なかなかのお薦め作品である。

 赤ずきんちゃんの仮装をした女性が実は人狼というのも皮肉が効いていて良い。
 校長先生による児童の殺人は正直、あまり訳が分からなかった。殺す理由もはっきりしないしブラックユーモアとしてもあまり笑えない。息子との関係もイマイチぴんとこないし単に異常者だったって事か。だったらハロウィンは直接関係ないよな。これだけスーパーナチュラルが関係ない点でもストーリーから浮いている。なんでもこのエピソードがこの映画の発想の発端だったそうだが、発展していくうちでカットしてしまっても良かったのではないだろうか。
 この町では一晩で何人の人が殺されたことか。これはこの年が特殊だったんだろうか。それとも毎年こんな調子なんだろうか。とにかく怖ろしい。

 あと数日の10月31日はハロウィンだが、日本では最近になって少し定着してきた物の、遊園地などのイベント会場などで仮装をする日という扱いで、子供たちがお化けなどの仮装をして「トリック・オア・トリート」をする日とは認識されていない。まぁ来られても正直ちょっとうっとおしいが。カボチャ提灯のジャック・オー・ランタンを飾ろうにもあれはオレンジ色で大きさが大きなアメリカのカボチャだから良いんで、日本のカボチャではどうにも収まりが悪い。冬至にカボチャを食うと風邪をひかないとか実用的なんだがぱっとしない方面になってしまう。
 映画では一般家庭でもいくつものジャック・オー・ランタンを飾っていたが、あのくり抜いた中味はどうしているのだろう。パンプキンパイなどにして食うにしても量が多すぎる。まさか捨てているのでは?MOTTAINAI!
 日本ではハロウィンは縁遠いままであろう。思えば、オレがハロウィンをいうものを認識したのは『E.T.』(1982)でだった。

 残虐描写は少ないが、だからこそホラー映画が苦手な人にもお勧めできる。それでいて恐怖はきっちり描いているので怖さを存分に味あわせてくれるはずだ。ホラー映画ファンには裏に隠された毒にツボを突かれることだろう。
 タイトルにはブライアン・シンガーとあるが、彼は製作で監督は『X-MEN2』(2003)や『スーパーマン リターンズ』(2006)で脚本を担当したマイケル・ドハティの初監督作。今作でも脚本を担当している。名前を覚えておく価値がある人だろ思う。

B0026R9HN6.jpg『フライトナイト』(1985) FRIGHT NIGHT 107分 アメリカ COLUMBIA PICTURES

監督:トム・ホランド 製作:ハーブ・ジャッフェ 脚本:トム・ホランド 撮影:ジャン・キーサー 特撮:リチャード・エドランド 音楽:ブラッド・フィーデル
出演:ウィリアム・ラグズデール、ロディ・マクドウォール、アマンダ・ビアース、クリス・サランドン、スティーヴン・ジェフリーズ、ジョナサン・スターク、ドロシー・フィールディング

 主人公のチャーリー(ウィリアム・ラグズデール)はごく普通の少年だ。もっかのところガールフレンドエイミー(アマンダ・ビアース)がやらせてくれないのが悩みだ。エイミーに宿題を見てもらうというのを口実に彼の部屋で過ごしていた晩のこと、チャーリーは隣の空き家に棺が運び込まれるのを見た。
 母の話では家が売れ、新しい住人が引っ越してきたとのこと。次の日のこと、チャーリーは家の前で若い女性から住所を尋ねられる。そこは空き家だった隣家だった。
 その晩、隣家を覗いていたチャーリーは家の主ジェリー(クリス・サランドン)が女性の首に噛みついているのを見た。ジェリーはヴァンパイアだ。そう考えたチャーリーだが警察には相手にしてもらえず、逆にジェリーに目をつけられてしまう。こうなったらヴァンパイアにはヴァンパイアの専門家をと深夜テレビの怪奇映画劇場でホストをやっているヴァンパイア・ハンター役で有名なピ?ター・ビンセント(ロディ・マクドウォール)に助けを求める。ジェリーがヴァンパイアかどうか確かめるために聖水を飲んでもらうが、本当にヴァンパイアなどだとは思っていないので実際には水道水を使っているのでジェリーはごくごく飲んでしまう。
 だが、帰り際にジェリーが鏡に映っていないのに気付いたビンセントはジェリーが本物のヴァンパイアだと理解する。

 最近ではスティーヴン・キングの『ランゴリアーズ』『痩せゆく男』を撮ったトム・ホランドの脚本・監督作。
 十字架に弱い、木の杭で胸を刺されると死ぬ、日光に弱い、聖水に弱い、招かれないとその家には入れないなど古典的吸血鬼を現代のティーンエイジャー映画に仕上げた手腕は見事。
 特にピーター・ビンセントの設定は秀逸で、テレビや映画の中では格好つけていてもしょせん演じていただけの今では落ちぶれたただの役者が本物のヴァンパイア・ハンターになっていく様がたのもしい。『猿の惑星』でチンパンジーのコーネリアスを不自由な特殊メイクで演じきっただけあってロディ・マクドウォールの演技は折り紙付きである。しかし『わが谷は緑なりき』の少年が白髪の老人になっているとは時の流れを感じる。

 特撮はリチャード・エドランドが担当していて、『レイダース 失われた聖櫃』の人体破壊の技術はこちらでも存分に使われている。ジェリーの手下が胸を木の杭で貫かれてどろどろに溶けていくところや、ジェリーに噛まれたチャーリーの友人がこれまた木の杭で胸を貫かれて狼男から人間に戻っていくところの丁寧な仕事には感心してしまう。細かなパーツごとの撮影を上手く組み合わせて人間に戻しているのだ。今ならCGで処理してしまうのだろうが、根気の要る手作業だったことだろう。『アンダーワールド』でライカン(狼男)の変身をCGで見ているのでどうしてもそう思ってしまう。CGだって作るのは大変なんだろうが。
 ラストの日光を浴びてのジェリーの大爆発は燃えさかる緑の炎の光学合成がいかにもリチャード・エドランドだ。ジェリーに噛まれてヴァンパイアになったエイミーの口裂け女メイクも怖い。

 ジェリーがいかにも気障ったらしい二枚目で、「ナタリー」とか歌い出しそうな雰囲気で成功している。チャーリーも今一つ野暮ったい少年でヴァンパイアという妄想を持ちそうな感じで良い。ロディ・マクドウォールは先ほど述べた通り。この作品の面白さはかなり彼にかかっている。
 残念だったのがヒロインのエイミーがオバサン顔であまり可愛くなかったこと。でも1985年の野暮ったさともいえるか。

B001WBXLTI.jpg『暴走機関車』(1985) RUNAWAY TRAIN 111分 アメリカ The CANNON GROUP,INC.,

監督:アンドレイ・コンチャロフスキー 製作:ヨーラン・グローバス、メナハム・ゴーラン 製作総指揮:ロバート・A・ゴールドストン、ヘンリー・ウェインスタイン、ロバート・ホイットモア 原案:黒澤明、菊島隆三、小国英雄 脚本:ジョルジェ・ミリチェヴィク、ポール・ジンデル、エドワード・バンカー 撮影:アラン・ヒューム プロダクションデザイン:スティーヴン・マーシュ 美術:ジョセフ・T・ギャリティ 衣装デザイン:キャシー・ドーヴァー 編集:ヘンリー・リチャードソン 音楽:トレヴァー・ジョーンズ
出演:ジョン・ヴォイト、エリック・ロバーツ、レベッカ・デモーネイ、カイル・T・ヘフナー、ジョン・P・ライアン、T・K・カーター、ケネス・マクミラン、ステイシー・ピックレン、ウォルター・ワイアット、エドワード・バンカー、ダニー・トレホ、ハンク・ウォーデン、タイニー・リスター・Jr

 本日10月14日は『鉄道の日』らしいので列車の映画。『鉄道の日』に対峙するのは8月5日の『タクシーの日』だそうだが、それはそれとしてその名も『暴走機関車』。

 元は黒澤明らが脚本を書いた物がベースになっている。ベースと言っても機関車が暴走して、それを止めようと必死になる鉄道会社の人間というところが同じぐらいで、ほとんどオリジナルと言って良いだろう。取りあえず、黒澤明との比較は無意味なのでやらない。

 アラスカの刑務所の収監されているマニー(ジョン・ヴォイト)は札付きの悪党で、3年間も独房暮らし。裁判で勝って独房から一般房へと移されるとさっそく脱獄を企む。
 ボクシングの腕っ節は強いがオツムはちょっと弱いバック(エリック・ロバーツ)を利用して二人で脱獄に成功すると、鉄道の駅にたどり着き一台の4連機関車に乗り込む。ところがこの列車の機関士が心臓発作で列車から落ちてしまい、機関室は無人のまま機関車は暴走を始める。
 鉄道会社の管制室では管制官たちが列車を他の列車に衝突させないように必死にポイントを切り替えるが、一台の貨物列車の後部に衝突してしまう。このままでは大惨事はまぬがれられないと列車を転覆させることにして使っていない支線へと送り込むことにしたが、列車から汽笛が聞こえてきた。脱獄囚の二人の他に女性の機関助士サラ(レベッカ・デモーネイ)が乗っていたのだ。慌てて列車を本線に戻すことになる。
 そのころ、刑務所長のランケン(ジョン・P・ライアン)はマニーを抹殺すべく追跡を開始していた。

 前半の刑務所のシーンは実際の刑務所で撮影され、本物の囚人が多数出演している。出演料はもらったのだろうか?それともボランティアか?紙くずが散らばっていて、騒ぎが起こると火のついた紙が上の階から降ってくる様子はリアルだ。
 アラスカの刑務所という設定だけあって寒そうで、観ているだけで凍えてくる。こんな地にいたら一刻も早く外へ出たい、自由になりたいと思うだろう。刑務所というとやはり『網走番外地』にしろ寒いところが似合う。リゾート地の刑務所では処罰にならないだろう。
 ようやく自由になれたと思ったら、乗る列車を間違えただけで地獄の恐怖を味わうことになる。
 一旦機関車が暴走し始めたらもう止まらない。先頭車両への扉は他の列車に衝突した時のショックで壊れてしまい先頭車両へ行くことが出来ない。先頭車両で緊急停止のボタン一つを押すだけで停めることが出来るのにそれが出来ない。真っ白い雪の中を走っていく機関車は迫力がある。特に先頭車両の前部が壊れてからは異常な様相で悪魔のような化け物を感じさせる。
 機関車という閉鎖空間の中で、手を取り助け合い、時に憎しみあう様子は人間の根源を味合わせてくれる。美しいところも醜いところも合わせて人間だ。「あなたは動物よ」「動物よりもっと悪い。人間だよ」というやり取りには考えさせられる。
 ラストのバックとサラを助けながらも、自分はランケン共々先頭車両だけで衝突の道を選んだマニーは動物ではなく人間だ。
 ジョン・ヴォイトが悪役メイクでマニーを演じてアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされた。
 出演者にダニー・トレホがいるが、どの役かはっきりしないがバックのボクシング試合の相手ではないかと思う。
 昔、劇場公開時に観た時はサラの髪型はショートカットだと思ったが、ショートのおさげだった。意外と可愛い。
 キャノン・グループはこんな映画も作ってたんだ。チャック・ノリスが暴れる映画ばかりだと思ったよ。

B002HW5LSU.jpg『ファンハウス/惨劇の館』(1981) THE FUNHOUSE 97分 アメリカ UNIVERSAL AN MCA COMPANY

監督:トビー・フーパー 製作:デレク・パワー、スティーヴン・バーンハード 製作総指揮:メイス・ニューフェルド 脚本:ラリー・ブロック 撮影:アンドリュー・ラズロ 特殊メイク:リック・ベイカー 音楽:ジョン・ビール
出演:エリザベス・ベリッジ、クーパー・ハッカビー、マイルズ・チャピン、ラルゴ・ウッドラフ、シルヴィア・マイルズ、ウィリアム・フィンレイ、ケヴィン・コンウェイ、ショーン・カーソン

 いきなり『サイコ』のシャワーシーンのパロディから始まる。あれ?こんなに軽めだったっけ。いやいや、怪物男にジワジワと追い詰められる結構怖いホラーだった。監督は『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパー。怖いのも納得だ。

 主人公のエイミー(エリザベス・ベリッジ)はボーイ・フレンドのバズ(クーパー・ハッカビー)、友人のリズとリッチーとのダブルデートでカーニバルに来ていた。存分に楽しんだ彼らはそれで満足しておけばいいのに、お化け屋敷のファンハウスに潜り込んで一夜を明かそうという計画を立てる。こういう馬鹿なことをする若者はホラー映画では格好の餌食だ。そしてファンハウスの従業員でフランケンシュタインの怪物のマスクを被った男による殺人を目撃してしまった彼らは、その従業員と父親であるオーナーに追われ一人一人殺されていくことになる。

 ファンハウスに忍び込んだ四人はカップルに分かれてネッキング(古いね)。その最中に、床の隙間から階下でフランケンシュタインの怪物が女占い師を買おうとして失敗し殺してしまうのを目撃する。
 フランケンシュタインの怪物のマスクの下にある素顔はグッチャグチャの奇形顔。ツナギを着ているので身体は見えないが、手も奇形なので全身奇形なのだろう。その怪物男が彼らを追ってくる。ファンハウスの中は迷路のように入り組んでいて、どういうわけかどの入り口も頑丈に施錠されている。カーニバルの敷地内だしそんなに戸締まりに気を使う必要があるとは思えないのだが、逃げだそうとしても逃げ出せないのはホラーのお約束。
 一人目のリッチーは上から首吊りにされた上、カート車に乗せられてきたのを敵と勘違いしたバズによって斧で頭をかち割られる。首吊りの状態で死んでいたとは思うが不憫な奴である。
 二人目のリズはナイフを背に隠し色仕掛けで怪物男に言い寄るが、背中をナイフで刺したところで怒った怪物男に惨殺。
 三人目のバズはオーナーと格闘した後なんとか倒すも、その後に現れた怪物男によって殺されてしまう。
 四人目のエイミーは必死になって逃げ回り、ファンハウスの駆動部へと逃げ込む。そこへ追ってきた怪物男との戦いになり......
 殺される人数は少ないし殺され方もはっきりとは見せなかったりと他のスラッシャー映画と比べると地味ではあるが、迷宮のようなファンハウスの中での絶望的な逃走劇が見応えある。こちらの扉に行けば鍵がかかっている、こちらの扉は鎖がかかっていると行き止まりの連続だ。お化け屋敷という設定を上手く活かしている。
 この怪物男はこれまでにも何人もの若い女性客を手にかけていたようだ。連続殺人鬼だったんである。リック・ベイカーによる特殊メイクで怖ろしいモンスターとなっている。そんな奇形の息子でも父親のオーナーは捨てるに捨てられずにこれまで犯した殺人の痕跡を消したりと色々面倒をみているようだ。面倒をみる方向がちょっと間違ってないかとは思うが劇中にあったセリフ「血は水よりも濃い」で父息子にしか分からない親子の愛情があったのだろう。
 それにしてもエイミーの弟が家を抜け出してカーニバルにやってくるのだが、これといって活用されないまま退場。迎えに着た父親を大きなファン越しにエイミーが見つけて助けを呼ぶが風切り音が邪魔になって届かずそのまま帰られてしまう絶望的なシーンのためだけに存在していたに違いない。

B002JPC9A8.jpg『フィースト3/最終決戦』(2009) FEAST 3: THE HAPPY FINISH 80分 アメリカ DIMENSION EXTREME FILMS

監督:ジョン・ギャラガー 製作:マイケル・リーヒイ 脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン 撮影:ケヴィン・アトキンソン 音楽:スティーヴン・エドワーズ
出演:ジェニー・ウェイド、クルー・ギャラガー、ダイアン・ゴールドナー、カール・アンソニー・ペイン、トム・ギャラガー、ハンナ・パットナム、フアン・ロンゴリア・ガルシア、ジョン・アレン・ネルソン、ジョシュ・ブルー、ウィリアム・プラエル、クレイグ・ヘニングセン

 色々な映画を観てきたつもりなオレだが、さすがにこの映画のラストには「さすがにそれはどうよ?」と言いたい。いきなり巨大ロボットが出現して主要キャラを踏みつぶして終わりってどうよ?でもそんなところも合わせて好き。バカだから。
 1と2は続けて観なくてもそれほど支障がなかったが、2と3はストーリーや登場人物が直結しているので両方観ないとダメ。2作で1作の形態を取っているとも言える。
 1の頃からの伝統では意味ありげに登場してきた登場人物があっと言う間に死んでしまうのがあげられるだろう。今回は『カウボーイ』という男が救世主的に現れておきながら、白人女性のシークレットの銃の暴発であっと言う間に退場。哀れなもんである。
 数日前は平凡な男だった。2日前はただの犠牲者で、昨日生まれ変わった。そして今日、戦士になった。というジャン=クロード・セガールと言う名の男も登場する。名前からして無敵だが、どう考えても無敵だが、あっと言う間に左腕をモンスターにもぎ取られてしまう。ジャン=クロード・セガールなのにっ。名前のモデルとなった二人ならば確実にモンスターの親玉の息の根を止めていたのに違いないのにっ!
 前作で死んだはずの小人の片方がいけしゃあしゃあと生きていたり、監督のオヤジであるクルー・ギャラガーは実はどのキャラよりも無敵だったりとツッコミどころは多い。前作のラストでしぶとく生き残ったかに見えたハニーパイはいきなりあれだし......そのくせ前作の終盤で鉄パイプが頭を貫いたトム・ギャラガーは割と元気にレギュラーしてるし。監督の弟だからって甘やかしすぎだぞ。
 監督自らがツコッミ待ちをしているに違いないシリーズだけに、こちらとしてはツッコンだら負け。ツッコンだら負けと思わざるを得ないのだが。でもツッコみたい!
 板金工場の屋上がメインの舞台だった2に対して3はかなりの部分が地下下水道。やっぱ下水道は良い。実際には入りたくないけど、あの閉鎖空間は映画的にはかなり良い。どこから敵が襲ってくるか分からない。行く先も行った先も不明なあの息苦しさが良い。
 その上でやはり、カウボーイやらジャン=クロード・セガールを捨てキャラとして使い果たしてしまうジョン・ギャラガーにはちょっと疑問が残る。ジャン=クロード・セガールは多少活躍していたけれどさぁ。それとジョン・ギャラガーってっちょっとナムコの往年のシューティングゲームっぽいよね。
 ラストはいきなり巨大ロボットが主要キャラを踏みつぶしたあげく、どこからともなくエル・マリアッチが出てきて、「この物語はね1はね、で2はね、そしてこの3はね......」と高らかに歌い上げる。だからお前誰やねん。「4もあるかもしれないよ......」ない。巨大ロボ対モンスターの話になってしまうだろうからこのシリーズの枠を超えてしまっている。ぜったいにない。というか止めておけ。よく見るとエル・マリアッチの遙か彼方に人型ロボットがすっくと立ってるのな。気付くかそんなの。

B002JPC99Y.jpg『フィースト2/怪物復活』(2008) FEAST II: SLOPPY SECONDS 97分 アメリカ DIMENSION EXTREME FILMS

監督:ジョン・ギャラガー 製作:マイケル・リーヒイ 脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン 撮影:ケヴィン・アトキンソン 音楽:スティーヴン・エドワーズ
出演:ジェニー・ウェイド、クルー・ギャラガー、ダイアン・ゴールドナー、カール・アンソニー・ペイン、マーティン・クレバ、トム・ギャラガー、ハンナ・パットナム、ジュダ・フリードランダー、ウィリアム・プラエル、フアン・ロンゴリア・ガルシア

 第一作目の『フィースト』の後日談。モンスターに襲われた酒場で人間爆弾にされて死んだハーレイ・ママの妹バイカー・クイーンが酒場を訪れるところから物語は始まる。いきなり手首をくわえた犬が通りかかるという、お前黒澤明の用心棒かよ的シーンが登場するが、バイカー・クイーンは無慈悲にもその犬をショットガンで惨殺。この辺りからこの映画の色が見えてくる。そして犬がくわえていた焼けただれていた手首が自分の姉ハーレイ・ママのものであることをタトゥーから分かったバイカー・クイーンは近くに隠れていた酒場のバーテンから姉を人間爆弾にした犯人を聞き出すと、バーテンを連れてその町に向かうのであった。ってバーテンは1作目で死んでなかったか。いい加減だなぁ。
 ところがその町はモンスターの大群に襲われてほぼ壊滅状態。一握りの人だけが辛うじて生き延びている状態だった。バイカー・クイーンとその仲間たちは元ミゼットプロレスの選手で今は鍵屋を経営している小人の連絡を受けて板金屋の屋上に避難する。しかし、そこもモンスターに襲われる場所であることには変わりない。町で一番安全な場所である保安官事務所の留置所はヤク中が陣取っており他の者を受け付けようとしない。一体、彼らに生き残るすべはあるのか。

 前作のバーテンが何で生き残っていることになっているかと思ったら監督ジョン・ギャラガーの実父クルー・ギャラガーが演じているのであった。オヤジうれしいか、息子の撮ったバカ映画に出演できて。さらに中古車販売店のオーナーの妻の浮気相手が登場するがこれを演じるのは監督の弟トム・ギャラガー。トム・ギャラガーの息子もモンスターに荒らされた町に取り残された自動車の中の赤ん坊役として登場していて、板金屋の屋上から命がけでトム・ギャラガーが助けに行くのだが、モンスターに追われて結局撒き餌として放り出されるという散々な役での登場である。お前の父ちゃんひどい奴だよな。いや、ひどいのは叔父さんか。親子三代に渡っての登場である。
 トム・ギャラガーが板金工場の中で小人二人組がやっつけたモンスターを解剖するシーンがあるが、これがひどいひどい。この時点で女性キャラの方が多いのだがゲロ吐きまくり。これでもかってぐらいにゲロを吐く。しかも膀胱をつついたのか、ペニスから小便をまき散らして女性陣にまき散らすまき散らす。あんたら最低だ。
 前作では薄暗い酒場がほぼ唯一の舞台だったので着ぐるみのモンスターもそれほど安っぽく感じられなかったが、今回は町が舞台ということでさすがにちょっときつい。仮面ライダーの怪人を観ているかのようだ。その分、前作ではほとんど使われていなかったCGも使われていて血しぶきなどの表現はそれに負っている部分がかなり多そうだ。上半身だけになっても生きている小人などもCGによる表現だろう。
 小人2人がかなり大活躍するが、これが日本だったら製作段階で「ヤバイよ」ということになってしまうのだろう。小人であるということも俳優としての長所の一つだと思うのだが、日本では単純に差別で片付けられてしまいそうだ。これは逆差別だと常々思っている。海外の映画だと身体障害者や知的障害者、ダウン病患者などが時折スクリーンに登場するが、この方がよっぽど健全ではないだろうか。
 とにかく人が死ぬ。無意味に死ぬ。そもそも人の死には意味なんてないんじゃないかってぐらいに死ぬ。その無意味っぷりがこのシリーズの特徴で、ホラーコメディとしての特色ではないかと思う。真面目なホラーファンは怒るかも知れないが、こちとらコメディファンでもあるのでこの手のバカバカしい作品は好みである。
 前作で酒場のみんなを見捨てて逃げたハニーパイが再登場して、「お前だけは許さん」とバーテンにトイレの便器に頭をガッツンガッツンぶつけられる悲惨な扱いを受けていますが、まぁ無理もない。でも前作の状況で自分だけ逃げてしまうのも無理もない。最後でついにこの無垢なる悪女の命運も尽きたかと思われたが......
 酒場という閉鎖空間から町という開けた場所にで出来た分だけテンポや勢いと言った物は落ちているのは確か。全編を通してのモンスターとの戦いではなく、立て籠もっているシーンがかなり多く、カタルシスに欠けるのも確か。その分をモンスターたちの活躍に期待したかったんだけど、1作目とあまり変わっていない。

B0009H9ZU0.jpg『ブルース・オールマイティ』(2003) BRUCE ALMIGHTY 101分 アメリカ SPYGLASS ENTERTAINMENT/UNIVERSAL PICTURES

監督:トム・シャドヤック 製作:マイケル・ボスティック、ジェームズ・D・ブルベイカー、ジム・キャリー、スティーヴ・コーレン、マーク・オキーフ、トム・シャドヤック 製作総指揮: ゲイリー・バーバー、ロジャー・バーンバウム、スティーヴ・オーデカーク 原案:スティーヴ・コーレン、マーク・オキーフ 脚本:スティーヴ・コーレン、マーク・オキーフ、スティーヴ・オーデカーク 撮影:ディーン・セムラー 編集:スコット・ヒル 音楽:ジョン・デブニー
出演:ジム・キャリー、モーガン・フリーマン、ジェニファー・アニストン、フィリップ・ベイカー・ホール、キャサリン・ベル、リサ・アン・ウォルター、スティーヴン・カレル、ノーラ・ダン、エディ・ジェイミソン、ポール・サターフィールド、マーク・キーリー、サリー・カークランド、トニー・ベネット、ティモシー・ディプリ、ロバート・カーティス・ブラウン

 TVレポーターのブルース(ジム・キャリー)はついてない男である。新しいアンカーマンの選抜にも落ち自棄になったブルースは現場でメチャクチャなレポートをやってTV局を首になってしまう。だが捨てる神あれば拾う神ありとのことわざ通り、本物の神様(モーガン・フリーマン)が彼の前に現れ、神の力をブルースに授ける。その力を利用してTV局に返り咲き、隕石落下など特ダネを次々物にするブルース。しかし、調子に乗ったブルースに恋人のグレース(ジェニファー・アニストン)は以前の彼と変わってしまったと違和感を感じる。
 神様宛の祈りと願いをALL YESでお手軽にクリアしてしまったブルースだが、それは株価の異常な動きからTOTOクジの大量当選者など問題を引き起こす結果となった。

 ブルースが神様の力を得てからが面白い。ちょっと口にしただけでクリント・イーストウッドになってしまったシーンは笑った。あれは許可を取っているんだろうか。ちなみにジム・キャリーは『ダーティハリー5』のロックミュージシャン役で出演しているのでまんざら縁がないわけではない。
 軽食堂ではトマトスープを紅海に見立ててモーセの紅海割りをやるし。
 その後、ジミー・ホッファの死体を見つけるというスクープでTV界に返り咲く。ジミー・ホッファは全米トラック運転組合の会長でマフィアとのトラブルに巻き込まれたかなにかで1975年に行方不明になってる人物だ。もしも死体が見つかったら大事件である。
 チリソースの品評会の会場では近くに隕石を落とすしともうやりたい放題。
 だが、人々の願いを叶えているかと現れた神に問われて、人々の祈りと整理し始めるが、ファイルキャビネットに入れると部屋中がキャビネットだらけ、付箋にすると家中が付箋まみれになる。結局パソコンにメール方式でダウンロードするが一晩経ってようやく落とし終わる。これが全世界ではなくバッファローという街だけのことだから神様も大変だ。
 ジム・キャリーにしては顔芸とかが控えめで演技に集中している。もちろん最低限やることはやっているが。
 モーガン・フリーマンの神様はなるほどと言った感じで違和感がない。白人にとって神様が黒人というのはすんなり受け入れられたのだろうか。そこがちょっと気になる。

 まず思うのが神の力なんか持つもんじゃないなということ。人知を超えた力を操るには我々人間は未熟すぎる。オレが神の力を持ったとしたら自分だけのために好き放題使ってしまうだろう。
 人事を尽くして天命を待つというが、人間やるだけのことをやってそして後は神に祈る。上手く行く時もあるだろう、上手く行かない時もあるだろう。だがそれは神の責任ではなく自分の責任だ。奇跡は自分で起こす。
 モーガン・フリーマンの神様が本気で人々の祈りを聞き入れるシーンが欲しかったところ。
 なんでブルースが神様に選ばれたのかと思ったら、看板を持ったホームレスを助けたからなんだね。そのホームレスの正体こそが......
 犬のトイレのしつけを神の力ではなく自分の力でやり遂げたシーンは笑うと共に共感した。結構大変なんだよねトイレのしつけ。

B002FKTD9C.jpg『フォーエヴァー・ヤング/時を越えた告白』(1992) FOREVER YOUNG 102分 アメリカ 

監督:スティーヴ・マイナー 製作:ブルース・デイヴィ 製作総指揮:ジェフリー・エイブラムス、エドワード・S・フェルドマン 脚本:ジェフリー・エイブラムス 撮影:ラッセル・ボイド 音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:メル・ギブソン、ジェイミー・リー・カーティス、イライジャ・ウッド、イザベル・グラッサー、ジョージ・ウェント、ジョー・モートン、ニコラス・サロヴィ、デヴィッド・マーシャル・グラント、ロバート・ハイ・ゴーマン、ミリー・スレイヴィン、エリック・ピアポイント、アート・ラフルー、アマンダ・フォアマン

 メル・ギブソン主演のSFラブファンタジー。
 1939年、恋人が交通事故で昏睡状態に陥ってしまった空軍のテスト・パイロットがやけになって友人の科学者の1年間の人口冬眠実験の被験者となる。
 それから時は過ぎ1992年、彼は53年ぶりに目覚めたのだ。なぜ1年で目覚めなかったのか。恋人はどうなったのか。彼は困惑する。そして彼の身体に異常が起き始めた。

 メル・ギブソンと友達になる少年とイライジャ・ウッドが演じている。まだ幼いのに大人顔負けの演技だ。はしゃぐところはちゃんとはしゃぎ、物思いにふけるところはちゃんと物思いにふけっている。ラストではメル・ギブソンに習った飛行機の操縦方法で見事にB-25を野原に着陸させてみせる。操縦方法を習うシーンは木の上の家であり合わせの物で作った計器や操縦桿でやるのだが、これが本当に飛んでいるように見えるから不思議。
 メル・ギブソンは色気のあるセクシーな演技で、登場する女性を片っ端から虜にしていく。モテモテなんである。人口冬眠装置から解凍されるシーンでは尻も映る。どうやらアメリカの女性にとってメル・ギブソンのヒップというのはセクシーさの象徴らしい。予告編しか見ていないが、メル・ギブソンが女性の心の声を聞けるようになってしまう映画で横に立った女性が「うわぁセクシーなヒップ」と言っているのを観たことがある。『バード・オン・ワイヤー』でもメル・ギブソンは尻を撃たれるし。
 父親が自分が1歳の時に蒸発してしまったイライジャ・ウッドにとってメル・ギブソンはケンカも強いし屋根の修理もやってしまう理想的な父親に感じられたのだろう。だからあんなに慕い助けたのだ。
 母親のジェイミー・リー・カーティスはボーイフレンドの医師がいるものの、メル・ギブソンにちょっと心惹かれてしまう。メル・ギブソンとイライジャ・ウッドを乗せた車でカーチェイスをやってFBIから逃げる勇気の持ち主だ。シングル・マザーとして看護婦をやりながらイライジャ・ウッドを育ててきたのだろう。男運が悪かったようだが医師は良い人物なので上手く行って欲しいものである。
 昏睡状態に陥ってしまった恋人はとっくに死んでいるだろうと思ったが、回復して今でも生きていると知ったメル・ギブソンはB-25で恋人の元へと向かう。人口冬眠装置の設計ミスで老化は止まっておらず急速に老人になっていくメル・ギブソン。そして恋人に出合って、交通事故の日に言えなかった告白をする。
 この手の話だと空軍が悪者になる場合が多いが、この作品ではそれほどでもないのもロマンス風味を壊さないので正解だろう。カーチェイスといっても派手なものではないし、全体のバランスが崩れていない。
 メル・ギブソンが徐々に老けていく特殊メイクがなかなか出来が良い。最後には白髪頭が薄くなっているがあれはカツラだろうか。
 監督のスティーヴ・マイナーは『13日の金曜日』シリーズのいくつかと『U.M.A. レイク・プラシッド』などの印象が強いので個人的には異色作に感じる。ジェリー・ゴールドスミスの音楽は例によって軽快に聴かせてくれる。

B000S6LI1G.jpg『墓石と決闘』(1967) HOUR OF THE GUN 102分 アメリカ UNITED ARTISTS

監督:ジョン・スタージェス 製作:ジョン・スタージェス 脚本:エドワード・アンハルト 撮影:ルシアン・バラード 音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:ジェームズ・ガーナー、ジェイソン・ロバーズ、ロバート・ライアン、フランク・コンヴァース、サム・メルヴィル、チャールズ・エイドマン、オースティン・ウィリス、リチャード・ブル、ラリー・ゲイツ、ウィリアム・シャラート、アルバート・サルミ、ジョン・ヴォイト、スティーヴ・イーナット、マイケル・トーラン、ウィリアム・ウィンダム、ロニー・チャップマン

『OK牧場の決斗』(1967)の後日談を同じジョン・スタージェスが撮ったのがこの作品。
 復讐に次ぐ復讐の重苦しい雰囲気の作品だけあって、前作ではワイアット・アープがバート・ランカスター、ドク・ホリディがカーク・ダグラスという陽気なタイプの俳優を使っていたが、今作ではそれぞれジェームズ・ガーナー、ジェイソン・ロバーズと渋めの重い俳優を使っている。特にジェイソン・ロバーズのドク・ホリディは結核を病んでいる様子を上手く表現している。
 映画はいきなりOK牧場での撃ち合いのシーンから始まる。そして殺人犯として告訴されたワイアット・アープらの裁判のシーンへと続く。西部劇で本格的な裁判のシーンは珍しい。無法のイメージが強い西部でも地方ならばともかく都市部では司法制度が確立されていたということだろう。これがなかなか正式な裁判で証人喚問や銃弾の軌道なども考慮されてワイアット・アープたちは無罪放免となる。
 これに頭に来たのが、生き残ったクラントン兄弟の長兄(ロバート・ライアン)。敵討ちとばかりにワイアット・アープの弟を闇討ちして足に重傷を負わせる。
 続いて、町の保安官に立候補して当選した弟を背後からショットガンで撃って殺してしまう。
 だが、あくまでも法は法という考えのワイアット・アープは友人たちを集めて犯人の逮捕へと向かう。しかしクラントンの手下を生きて捕まえることが出来ず何人も殺してしまう。いや、ワイアット・アープも敵討ちをしているのか。
 ラストは町を追われてメキシコで牛泥棒に身を落としたクラントンとの一騎打ち。一瞬の静寂の後銃声が響き渡る。

『OK牧場の決斗』にこんな後日談があるとは知らなかった。悪党をやっつけてハッピーだと思っていたら裁判だ敵討ちだと続いていたなんて。
 映画の冒頭に「これは史実に基づいている」と出る。ちょっと調べてみたら大まかな部分では事実らしい。もっともワイアット・アープ自身の生涯がかなり脚色されていて、どこまでが事実かはっきりしないが。
 復讐が復讐を生み、その復讐がまた別の復讐を生む。どちらかが滅びるまでこの負の連鎖は止まらないのだ。なんとおろかなことだろう。痛快娯楽西部劇だった前作とは作品のカラーが大きく変わっている。
 ワイアット・アープも最後には敵討ちに手を出してしまい、殺人の見張りを務めた嫌がる牧童相手に言葉で追い詰めていって最後には銃を抜かせるところなど爽快感とはほど遠い。
 カメラは西部の光景を余すところなく捉え、ジェリー・ゴールドスミスの音楽も雰囲気を盛り上げる。
 それにしてもメインキャストに女性が一人も入っていないところがまたジョン・スタージェスらしい。
 ラスト、馬車に乗って去っていくワイアット・アープと結核治療のサナトリウムからそれを見送るドク・ホリディのカットは素晴らしい。もうこれで二度と会うことがないことを二人とも分かっているのだろう。
 このカットからも象徴されるようにこの物語は復讐についての映画であると同時にワイアット・アープとドク・ホリディの友情についての映画でもある。
 ジェームズ・ガーナーの貫禄のある演技、特に馬に乗った姿が素晴らしく格好いい。対するドク・ホリディは酒浸りで肺結核からくる咳ばかりしているギャンブラーにして殺し屋。演ずるジェイソン・ロバーズの名演が光る。
 復讐にこだわりすぎたばかりに破滅していくロバート・ライアンも魅力的だ。

B000HKDEWE.jpg『ハートブルー』(1991) POINT BREAK 121分 アメリカ LARGO ENTERTAINMENT
 
監督:キャスリン・ビグロー 製作:ピーター・エイブラムス、ロバート・L・レヴィ 共同製作:リック・キング、マイケル・ローチ 製作総指揮:ジェームズ・キャメロン 原案:リック・キング、W・ピーター・イリフ 脚本:W・ピーター・イリフ 撮影:ドナルド・ピーターマン プロダクションデザイン:ピーター・ジェイミソン 美術:パメラ・マーコット 音楽:マーク・アイシャム 舞台装置:リンダ・スフィーリス
出演:キアヌ・リーヴス、パトリック・スウェイジ、ロリ・ペティ、ゲイリー・ビューシイ、ジョン・C・マッギンレー、ジェームズ・レグロス、ジョン・フィルビン、トム・サイズモア、マイク・ジェノヴィーズ

 その昔、ラルゴ・エンターテインメントという映画会社があった。『ダイハード』などのヒット作を作り出したローレンス・ゴードンに日本ビクターが出資して作られた会社だ。『ハートブルー』はその第一回作品である。

 ロサンゼルスは銀行強盗の街だと新人FBI捜査官ユタ(キアヌ・リーヴス)の上司は言う。そしてベテランFBI捜査官パパス(ゲイリー・ビューシイ)と組んだユタはサーファーが犯人だというパパスの推理に従ってサーフィンを始めサーファーに近づく。つまり潜入捜査をやったわけである。そんななか、ボディ(パトリック・スウェイジ)というサーファーのサーフィン道とでもいうべき精神論に入れ込んでいく。

 比較的外れが少ないのが潜入物だ。最近だと二重の潜入を描いた『ディパーテッド』(2006)が好評かを得たのが記憶に新しい。もちろんオリジナルの『インファナル・アフェア』シリーズも傑作である。
 この作品も潜入捜査物なのだが、主人公のユタが大学のアメリカンフットボールチームの名クォーターバックと有名でサーファーたちにも名前が知られているからちょっと緊張感に欠ける。サーファーのコミュニティにすんなり入り込めてしまう点もいまいち納得がいかない。ユタの名前が知られていたからだろうか。
 監督のキャスリン・ビグローは女性だが、骨太のアクションを撮れる人で、張り込みをしていた銀行が襲われ大統領強盗団(強盗たちはそれぞれレーガン、カーター、ニクソン、ジョンソン大統領のゴムマスクを被っている)が車で逃げ出してからのカーチェイス、そしてレーガンを走って追いかけるユタのマンチェイスが迫力のある物となっている。手持ちカメラで通りや他人の家の中を駆け抜ける様々な物を壊していくシーンは迫力満点だ。
 ただし、ユタが犯人の正体に気付いてからがどうにもいけない。恋人が人質に取られているとは言え、強盗団の一味になって銀行を襲ってみたり、警察に逮捕された後パパスに頼んで強盗団が飛び立つ飛行場に行ったはいいがそのせいでパパスが敵に射殺されてしまったりと自分勝手な行動が目立つ。
 ラストは一度捕まえた犯人を逃がしてサーファーとして海に帰してやる。これだけ好き放題やって最後にFBIのバッジを海に投げ捨てて終わりではパパスも銀行に居合わせて射殺された警官も浮かばれない。
 日本での実質的キアヌ・リーヴスのデビュー作的扱いを受けているが、その前に『ビルとテッドの大冒険』(1989)など何本も出演作がある。いや初主演だからという声もあるが、『ビルとテッドの大冒険』は主演作だろう。
 パトリック・スウェイジのボディという名前の由来は菩薩から。とにかくスリルに身を捧げてフリークライミングからスカイダイビングまでやることは幅広い。海風に吹かれた髪は荒れ無精ひげを生やしていて野性味溢れる風貌でお坊ちゃん然としたユタとは対照的。
 サーフィンとスカイダイビングが大きな位置を占める作品だが、個人的にはどちらにも興味なし。
 終盤のユタがパラシュートを背負わずに先に飛び降りたボディたちを追うシーンも『007ムーンレイカー』(1979)のパクリでしかないし。あれは服の下に小型のパラシュートが隠してあるんだ。

basketcase3.jpg『バスケットケース3』(1992) BASKET CASE 3 90分 アメリカ SHAPIRO GLICKENHAUS ENTERTAINMENT

監督:フランク・ヘネンロッター 製作:ジェームズ・グリッケンハウス 音楽:ジョー・レンゼッティ
出演:ケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック、アニー・ロス

『バスケット・ケース』シリーズもついに完結編。1作目の不気味なホラーっぷりはどこかへ行ってしまい、すでにコメディだ。

 前作で同じ体型の恋人が出来た兄貴だが、その恋人イブが妊娠した。フリークの館では出産できないとジョージア州のハル医師のところへ一行はスクールバスで行くことになる。その医師もフリークへの理解者だ。なにも全員で行くこともないと思うんだが、ルースが世話をしないとフリークたちは自分で食料を調達することも出来ないのだ。
 前作ラストで兄貴を再び自分の身体に縫い付けた主人公のドゥエインだが、兄はまた引きはがされ反省を求められて拘束衣を着せられ閉じこめられている。バスに乗っても「そうだ、兄さんは僕に嫉妬していたんだ。僕が格好良くてスタイルも良いから」と相変わらず勘違いしている始末。
 ハル医師の元にはルースの実の息子ちびハルがいた。彼もフリークで巨大な身体と何本もの腕を持っている。その腕で様々な発明品を作り出す天才児だ。
 さて、いよいよイブの出産が始まるが、白衣姿のハル医師をみた兄貴がハル医師に襲いかかる。昔、医師によって切り離された苦しい想い出があるとは言え、相変わらず兄貴昆虫脳。そして生まれた子供は一人、二人、三人、えっ十二人。兄弟で陪審員が出来る数が生まれてくるのである。しかも姿形は兄貴のミニチュア版。
 家を抜け出したドゥエインから100万ドルの賞金がかかった兄貴がハル医師邸にいることを知った保安官補二人が兄貴を連れ去りに屋敷に忍び込み、大量のフリークたちにビックリしてイブを射殺したあげくに十二人の赤ん坊たちを盗み出す。
 怒りに駆られた兄貴が警察署に乗り込み、保安官たちを惨殺しまくる。その中で赤ん坊の一人が地面に落ちて「ペチャッ」と潰れる。赤ん坊たちの救出は出来ずに逆に兄がショットガンで撃たれ怪我をする始末。しかし軽傷で済んだ兄貴は、反省して赤ん坊たちの叔父として兄貴に協力しようというドゥエインと一緒にチビハルに頼みある物を作ってもらう。
 保安官との約束で赤ん坊たちと兄貴を交換する夜の工場に現れた兄貴は、機械の足で立って鋼鉄の腕を持っていた。そうパワードスーツである。パワードスーツの圧倒的力で保安官を倒した兄貴。
 そしてルースはテレビショーに大量のフリークたちを連れて乱入するのだった。

 まず、どう考えても上半身しかないイブの体型に十二人の赤ん坊は収まらない。しかしなぜ十二人なんだ。十二使徒とか関係あるのか。単に1ダースで切りがよいからだけか。これだけ赤ん坊を出す意味がよく分からない。その後のシーンでも特に十二人が重要視されるシーンはないし。単なるギャグなんだろうか。
 兄貴が保安官たちを惨殺するシーンも特殊メイクは派手になっているのだが、首を絞めると風船のように膨れた頭部から目玉が飛び出す、噛みついて引っ張ると顔がギューッと伸びたり、頭が前後ろ逆になったりとこれもギャグにしか見えない。
 まともだと思っていた保安官の娘も両肩に「囚人はわたしの奴隷」とのタトゥーを入れ、拘置所内のドゥエインを鞭でひっぱたくSM娘。なんなんですかもう。
 終盤でルースがフリークたちを連れてバーガーショップに入って大量の注文をして、最後に店員が「お持ち帰りですか」というのは完全にギャグだ。どうせならルースには「いいえ食べていくわ」と返して欲しかった。
 そしてまさかのパワードスーツ。運転席がむき出しで危ないなと思っていたら、銃などで撃たれるととっさに装甲板が出てくる安全志向。ジョイスティックだけという昆虫脳の兄貴でも扱える簡単操作。1の段階ではパワードスーツまで出てくる騒ぎになるとは思わなかった。
 こうして奇形として生まれてしまった哀しみを描いた1作目から、フリークたちが大暴れするコメディまで変化してついに『バスケット・ケース』シリーズは完結したのであった。というか、これでは完結せざるを得まい。
 ちなみに『バスケット・ケース』には『常識的判断不能な病理』という意味があるそうな。まともな生活が出来ずに隔離病棟送りという奴です。そこまで深い意図があったのかは知りませんが、考えさせられます。

B00006JOXL.jpg『バスケットケース2』(1990) BASKET CASE 2 90分 アメリカ SHAPIRO GLICKENHAUS ENTERTAINMENT

監督:フランク・ヘネンロッター 製作:エドガー・レヴィンズ 製作総指揮:ジェームズ・グリッケンハウス 脚本:フランク・ヘネンロッター 撮影:ロバート・ボールドウィン 音楽:ジョー・レンゼッティ
出演:ケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック、アニー・ロス、テド・ソレル、キャスリン・メイズル

 設定としては前作の直後なのだが、製作期間は8年空いているのでシャム双生児の弟ドゥエイン(ケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック)は青年だったのが中年になってしまっている。

 前作のラストはホテルから飛び降りたところで終わっていたが、実は二人とも重傷を負ったものの無事に生きていた。見張りの警官を兄が始末して病院を抜け出したところを老婦人ルースと孫娘スーザンによって助けられる。
 ルースは兄弟の叔母の知り合いでフリークに理解を示しており、自宅にフリークを集めて隠れたコロニーを作っていた。そこで兄は自分と同じような奇形のフリーク女性と出会い恋に落ちる。一方、フリークだらけの館の中で自分だけがまともでそれが逆に異常なことだと悩む弟だった。

 フリークにとってはフリークだけが仲間である。『フリークス』(1932)にも似たこの思想の映画は、兄弟が館にいると気付いて取材を強行する新聞記者に攻撃としてぶつけられる。フリークは新聞記者たちを殺すことに何の躊躇も感じない。彼ら普通の人間は自分たちとは異質な存在だからだ。
 そして、兄と切り離されたことによってフリークから普通の人間になったドゥエインは悩む。自分は本当に普通の人間なのか、それともやっぱりフリークなのか。スーザンからは自分もあなたもここでしか生きられないと告げられ、愛したスーザンも実はフリークだったことを知る。最後は兄を身体に縫い付けて切断前の身体に戻る。やはり兄弟は二人で一人のシャム双生児のフリークだったのだ。

 製作総指揮に『エクスタミネーター』のジェームズ・グリッケンハウスが付いたことで前作より予算がアップしたようで、画質も向上しているし10人ほどのフリークたちが登場する。ものすごい出っ歯なフリークやカエル男、頭が縦に伸びた女性などなど個性豊かなフリークが画面を愉しませてくれる。ゴム人形のようだった兄貴の質感もましているが、特殊メイクとしてはあまり出来の良い物ではなく、ほとんど張りぼてみたいのもいる。ショッカーの怪人の様な連中だがこれもB級映画の楽しみの一つだろう。館はフリークたちの楽園となっていて、実に幸せそうに暮らしている。そんな彼らの生活をフリークだという理由だけで邪魔する方が悪い。

 そういえば兄貴は恋人とsexしてた。あんた下半身ないじゃん、チンチンあったのかよ。女性側も兄とほとんど同じ肉体構造だが足があるようなので女性器もあるのであろう。異形なものが絡み合うシーンは異常な光景ながらどこか官能的でもあった。

B002DGTAF0.jpg『パッセンジャーズ』(2008) PASSENGERS 93分 アメリカ TRISTAR

監督:ロドリゴ・ガルシア 製作:ケリー・セリグ、マシュー・ローズ、ジャド・ペイン 製作総指揮:ジョー・ドレイク、ネイサン・カヘイン 脚本:ロニー・クリステンセン 撮影:イゴール・ジャデュー=リロ プロダクションデザイン:デヴィッド・ブリスビン 衣装デザイン:カチア・スタノ 編集:トム・ノーブル 音楽:エド・シェアマー
出演:アン・ハサウェイ、パトリック・ウィルソン、デヴィッド・モース、アンドレ・ブラウアー、クレア・デュヴァル、ダイアン・ウィースト、ウィリアム・B・デイヴィス、ライアン・ロビンズ、ドン・トンプソン、アンドリュー・ホイーラー、カレン・オースティン、ステイシー・グラント、チェラー・ホースダル

 大規模な飛行機事故が発生し、生き残ったのは乗客5名だけだった。
 セラピストのクレア(アン・ハサウェイ)は集団セラピーで乗客たちの心の傷を癒やそうとするが、エリック(パトリック・ウィルソン)という男だけは個別のセラピーを希望する。
 セラピーを続けていく内に、航空会社が発表したパイロットのミスで事故が起きたのではなく、空中にいる段階で爆発や閃光があったとの意見が出てくる。そして謎の男がセラピーを監視しはじめ、患者たちが一人また一人と姿を消していく。
 そんな中、クレアとエリックは次第に引かれ会い、セラピストと患者の越えてはいけない一線を越え愛し合うようになってしまう。
 患者の失踪は真実が暴露されることを怖れた航空会社の陰謀なのか。謎は深まっていく。

 何を書いてもネタバレになってしまう書くのが難しい映画。航空会社に関わる社会派サスペンスを求める人は考え直して方が良い。まったく別種の映画だから。
 観終わってみると実に納得で、隣人が急に親しげになったこと、姉に全然連絡が付かないことなど細かな伏線が張り巡らされていたのに気付く。
 この作品は言ってみれば想いの物語。
 ある人を愛したこと、そしてある人から愛されたこと。その想いだけが真実に結びつく鍵なのだ。
 衝撃のラストのオチ系映画だが、途中でオチに気付いてしまう人もいるだろう。その程度の脚本。いろんな出来事が次々に起きるイベント系映画ではないので、展開はかなりゆっくり。中盤では退屈する人もいるかも知れない。患者が失踪し始めてからは何が起こっているんだと入れ込んでみることが出来るんだが。
 エリックを迎えに何度も何度もやってくる犬が可愛い。見た目は狼っぽくてちょっと怖いが、ご主人様のための健気さにグッとくる。
 頻繁に現れてはクレアに批判的なことを言う航空会社担当官(デヴィッド・モース)の役割も分かる。
 ギリギリ感動に持ち込むことに成功して映画は終わるが、細かいところを考えていくといくつか腑に落ちない点はあるが、そもそも精神世界の話だから。
 相変わらず世をすねた感じのクレア・デュヴァルが父母と対面するシーンは良かった。「ようやく会えたね」って感じで、これでクレア・デュヴァルの心の闇もほぐれるのではないかと思わせる。
 クレアを迎えに来たのが"叔母"と"子供時代の先生"と分かるシーンも良いな。

B000EOTJMW.jpg『バスケットケース』(1982) BASKET CASE 93分 アメリカ ANALYSIS FILM CORPORATION

監督:フランク・ヘネンロッター 製作:エドガー・レヴィンズ 製作総指揮:アーニー・ブルック、トム・ケイ 脚本:フランク・ヘネンロッター 撮影:ブルース・トーベット 音楽:ガス・ラッソウ
出演:ケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック、テリー・スーザン・スミス、ビヴァリー・ボナー

 二重胎児という言葉がある。あるいは、結合双生児やシャム双生児と言ってもいいのかもしれない。一卵性双生児が細胞分裂する際に、分かれきれずに一体のまま生まれてくる子供たちだ。

 有名なのはベトちゃんドクちゃん。彼らは下半身を一つに共有する二つの上半身を持った結合双生児だった。
 映画で言うならばティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』(2003)に登場する北朝鮮のシャム双生児(ややこしいな)だろうか。映画のラストで、彼女らは普通の双子だと明らかになるわけだけれど。後はブラックコメディだがファレリー兄弟の『ふたりにクギづけ』(2003)なんかがあったな。『ボーン・アイデンティティー』シリーズのマット・デイモンがシャム双生児になって馬鹿なことをしまくるという日本でやったらクレーム間違いなしの映画だ。
 日本で一番有名な二重胎児は『ブラック・ジャック』のピノコだろう。彼女はあるやんごとなきお方の畸形嚢腫の中に人間のパーツがほとんど揃った状態でブラック・ジャックに切断の依頼が来た。畸形嚢腫の中には双子の妹(姉?)が入っており、これまで執刀しようとした医師をテレパシーで活動不能にしていたのだ。それを「ちゃんとした人間にしてあげるから」という条件でブラック・ジャックは執刀を許される。そして、畸形嚢腫から取り出したパーツと人工物のパーツを組み合わせてピノコを作り上げたのだ。だから、ピノコは幼い外見に関わらず時に大人的な者の考え方をする。人工物のパーツが使われているため、比重が重くて真水には浮けないというエピソードもある。身障者への気遣いでピノコのエピソードでも削られているのがあるとかないとか、嫌な世の中である。民主党政権になって変わるかな。変わんねぇだろうなぁ。
 二重胎児なんて面白そうなネタをスティーヴン・キングが放っておくはずがないわけで『ダーク・ハーフ』でちゃんと扱っている。この場合は完全に一人の少年に吸収されている形で、脳腫瘍として二重胎児が発見され除去される。ここで除去された片方は完全に死んだはずだが、そこはそれ一流ホラー作家ならではの腕前で一人の凶暴な男として現実に復活させる。
 昔、シャム双生児が見せ物だったころ、腰で繋がったシャム双生児がメジャーだったらしく、単なる双子を腰の繋がった衣装を着せて偽シャム双生児として見せ物に出されていたこともあったらしい。まぁ昔から一尺の大イタチってなもんで見せ物ってのはそんなもんだ。

 この物語の主人公は意に染まずに切断されてしまったシャム双生児の話である。弟は普通の人間なのだがその右脇から腰にかけて上半身だけの兄がくっついている。
 それを父親が医師に頼んで無理矢理切除してもらったのだが、ゴミとして捨てられた兄は生き延び、二人して父親を殺した。そして唯一の理解者の叔母の庇護の元、長年人里離れた家で暮らしてきたのだ。
 しかし、2人を守ってくれた叔母が死んでしまった。兄は弟に自分たちを切り離した医師たちへの復讐を申し出る。そして弟は兄を大きなバスケットケースに入れて医師のいるニューヨークにやってきたのだ。
 順調に復讐は進むが、その中で弟に彼女が出来てしまう。「弟は女とやってる。俺もやりたい」と考えた兄は上半身だけの身体で行動に出始める。大体がこの兄貴は難しいことは何も考えていない昆虫脳なのだ。

 身体障害者や精神障害者の性の問題が話題になっているというのを耳にしたことがある。精神障害者はちょっとおいておこう。
 身体障害者の場合、頭は正常でも性欲が溜まっても発散する場がないというのは実際大きな問題だろう。たかが性欲というなかれ、性欲、食欲、睡眠欲、人間の三大欲求の一つなのだ。手が動いて自分で処理することが出来る人は良いだろうが、両手がない人はオナニーすることすら叶わない。そこでセックスボランティアだどうだという話にまでなっていたが、そこまではここでは触れない。
 バスケットケースの兄貴の場合は両腕はあるが男性器がないのだ。分かりやすく言えばチンチンがない。性欲だけあってもチンチンがなければ射精しないし、射精しなければ性欲は満たされないのではないだろうか。弟の恋人の死体の上でヒクヒクと腰を動かしている兄貴の哀れさと言ったらもう......殺されちゃった恋人の方が悲惨だが。
 事故で局部、まぁチンチンを無くしてしまった人はどうなっているのだろうか。睾丸までなくなっているから性欲もなくなっているのか、それともちゃんと性欲はあるのか。ひょっとしたら性欲を抑える薬なんてのもあるのかもしれない。オレは長年病を患っているが飲んでいる薬の副作用の一つにネットで調べてみると"性欲の減退""射精困難"なんていうのがあったりする。でもね、性欲ないと良いよ、いろいろと楽で。美人でセクシーなお姉ちゃんを見てもなんとも思わない。男としては終わってると思うけどね。

 兄貴はバスケットケースに入ったままなかなか全身を現さない。期待を持たせる上手い手法だ。もっとも兄貴のSFXがちゃちくてなるべく出したくなかったんだろうけど。それでも中盤以降は兄貴モデルアニメーションなどで大暴れ。
 今観ればちゃっちいSFXだと思うよ。いや当時でもちゃちかったと思うよ。でも、ここに込められた作り手の心意気はどうよ。
 一心同体だったはずの2人が切り離されたことでテレパシーが通じなくなり、次第に他者になっていく悲しさ。そして全てを突き放すようなラストが来る。死の瞬間、2人は仲の良い兄弟でいられたのかな。

B001V9KBQC.jpg『バビロン A.D.』(2008) BABYLON A.D. 101分 アメリカ/フランス/イギリス TWENTIETH CENTURY FOX

監督:マチュー・カソヴィッツ 製作:イーラン・ゴールドマン 製作総指揮:アヴラム・ブッチ・カプラン、デヴィッド・ヴァルデス 原作:モーリス・G・ダンテック 脚本:エリック・ベナール、マチュー・カソヴィッツ 撮影:ティエリー・アルボガスト プロダクションデザイン: ソーニャ・クラウス、ポール・クロス 編集:ベンジャミン・ヴァイル 音楽:アトリ・オーヴァーソン
出演:ヴィン・ディーゼル、ミシェル・ヨー、メラニー・ティエリー、ランベール・ウィルソン、マーク・ストロング、ジェラール・ドパルデュー、シャーロット・ランプリング、ジェロム・レ・バンナ、ジョエル・カービー、ダヴィッド・ベル

 最近パッとしなかったヴィン・ディーゼル主演の近未来SF映画。これがまたパッとしない。
 そもそもストーリーがよく分からない。ヴィン・ディーゼル演ずる傭兵がロシアからニューヨークまで一人の少女とお付きの女を運ぶことになるのだが、この少女の設定がイマイチ分かりづらい。

 30年前のロシアの原子力潜水艦を捜査したり、生まれて2歳で19カ国語を話していたという謎の経歴の持ち主。その正体はある教団が奇跡を示すために科学者に命じてスーパーコンピュータで胎教して生まれた時から全ての知識を持っているというのはまだ分かるのだが、なぜか突然双子を処女懐妊して、しかも超能力を発揮して目の前で爆発した小型ミサイルからバリヤーを張る。さらにウイルス保菌者でそのウイルスが金になるらしい。もうなんでかな。意味が分からない。彼女の出生の秘密も教団の陰謀もすべてごちゃごちゃのスパゲティ状態だ。
 近未来のロシアは荒廃して武器売買が道ばたで平気で行われている荒れた世界で好みだが、ニューヨークはブレード・ランナーの世界から雨を引いたようないかにも近未来な世界観だし、ゴーグルやモニターなど近未来ガジェットのデザインもイマイチ垢抜けない。
 SFをやるのはいいが、それっぽいことをやっているだけで細部を手抜きしているからSFモドキにしかなっていない。
 ヴィン・ディーゼルと中国人レスラーの戦いもあるが、ただ絡み合っているだけで格闘戦の醍醐味が感じられない。

 近未来世界を一人の少女を守って旅をするというプロットは良いのだが、それを活かし切れていない。なんでも監督曰く脚本状態から半分ほどに削らされたそうだから説明不足な点が多いのも仕方ないのかも知れない。
 銃撃戦がちょっと面白いが、目新しい点はない。爆破シーンなどは真に迫っている。大雪原でのスノーモービルに乗りながらの無人戦闘機との戦いはかなり燃える。三人が移動している最中のアクションシーンは悪くない。
 悪いのはそれがストーリーと結びついていないことだ。ストーリーは意味不明のままドッカンドッカンとアクションだけが弾けている。
 せっかくミシェル・ヨーを出演させておきながら、彼女のアクションがほとんどないというのも納得いかない。
 最後まで敵との決着は付かないが、これは続編があると言うことではなく、あいまい決着と言う奴だろう。教団は少女を諦め、双子を託されたヴィン・ディーゼルの戦いは続くのだ。ラストとしてはかなりひどい結末である。監督とFOXがもめたというから、これもそのせいなのだろうか。大風呂敷を広げるだけ広げてまとめられなかったといったところである。
 結局なにが"バビロン"で"A.D."だったのかよく分からないまま映画は終わる。キリスト教徒なら分かるのか?

 守られる少女役のメラニー・ティエリーはどことなく『フィフス・エレメント』のミラ・ジョボビッチを思わせる。浮世離れした天使めいた印象だ。
 ヴィン・ディーゼルは例によって筋肉モリモリの男臭さを匂わせている。ややこしい映画に出ないで素直なアクション映画が似合う人なんだと思う。
 教団の女性ボスがシャーロット・ランプリング。この人が一番迫力があった。

B001NABQ2C.jpg『パニッシャー:ウォー・ゾーン』(2008) PUNISHER: WAR ZONE 103分 アメリカ LIONSGATE

監督:レクシー・アレクサンダー 製作:ゲイル・アン・ハード 製作総指揮:オリヴァー・ヘングスト、エルンスト=アウグスト・シュナイダー、アリ・アラッド、オグデン・ギャヴァンスキー、マイケル・パセオネック、ジョン・サッキ 脚本:ニック・サントーラ、アート・マーカム、マット・ハロウェイ 撮影:スティーヴ・ゲイナー 視覚効果監修:ロバート・ショート プロダクションデザイン:アンドリュー・ネスコロムニー 衣装デザイン:オデット・ガドーリー 編集:ウィリアム・イェー 音楽:マイケル・ワンドマッチャー 音楽監修:ダン・ハバート
出演:レイ・スティーヴンソン、ドミニク・ウェスト、ジュリー・ベンツ、コリン・サーモン、ダグ・ハッチソン、ダッシュ・ミホク、ウェイン・ナイト、マーク・カマチョ、ロマーノ・オルザリ、ケラム・マレッキ=サンチェス、ラリー・デイ、ロン・レア、トニー・カラブレッタ、T・J・ストーム、デヴィッド・ヴァディム

 ドルフ・ラングレン主演の1989年版、トム・ジェーン主演の2004年版に続く3度目の映画化である。それぞれ前作は「なかったこと」になっているのでマーベルコミック上はこれが最初の映画化である。

 とにかくバイオレンス描写がハンパではない。ナイフで首を斬る、足で首をへし折る、顔面パンチで顔を粉砕、もちろん銃も使いまくり。アサルトライフルからサブマシンガン、ハンドガンと状況に応じて使い分け、相手の足をブチ折ったり、顔面破壊なんてのはザラ。グロ描写満載でこれは暴力描写が苦手な人にはお勧めできませんな。

 ストーリーは過去にマフィアによって家族を皆殺しにされたパニッシャーことフランク・キャッスル(レイ・スティーヴンソン)がマフィア狩りをする話。顔が自慢のビリーというマフィアを空きビンを潰して割る機械にかけ命は取り留める物の顔面がズタズタに。その後、ビリーはジグソウと名乗るようになる。この際に、パニッシャーはビリーのところに潜入捜査していたFBI捜査官を撃ち殺してしまう。深く悩むパニシャーはもうパニッシャー稼業は辞めてどこか田舎に引っ込もうとするが、パニッシャーに恨みを持つジグソウがFBI捜査官の家族とパニッシャーの武器担当の相棒マイクロを人質に取り、ストリートギャングに金をばらまいてパニッシャー討伐隊を作り上げる。
 敵の待ち受けるビルに、人質を助けるために突入するパニッシャーは無事に事件を解決することが出来るのだろうか。

 悪を倒すためならば暴力は許されるのかが一つのテーマだ。この作品としては「それはあり」ということらしい。地元のニューヨーク警察もあまり真面目にパニッシャー捜査をやっていないし、それどころか事実上黙認状態だ。
『狼よさらば』で同じニューヨークを舞台にポール・カージーが街のダニ退治をやった時とは大きな待遇の差だ。これは街のダニかマフィア退治かによるものだろうか。それとも時代の差だろうか。オレは時代の差だと見る。世の中は確実に暴力的になっているのだ。 ジグソウがストリートギャング相手に演説をかまして討伐隊を募るシーンではバックに巨大な星条旗が波打っているのが笑える。ストリートギャングをやるのも自由、人を殺すのも自由、アメリカは自由の国なのだ。
 ラストの戦いがしょせんストリートギャング相手なのであまり強くなく盛り上がりに欠けるのが残念。ジグソウの弟のルーニー・ビン・ジムも精神病院で拘束されていたぐらいなのに大した活躍をしない。ものすごい身体能力を持っているのかと思わせておきながらちょっと強いぐらい。拍子抜けである。ルーニー・ビン・ジムとパニッシャーは肉体による格闘戦を行うが、これが力技ばかりの美しさに欠けるもの。昨日紹介した『トム・ヤム・クン!』を見習って欲しいものである。その分、銃器描写で補っているとは言えるのだが。
 FBI捜査官を殺してしまったことに気づいた時のパニッシャーが相変わらずの無表情で、本当に苦しんでいるのか反省しているのかがよく分からない。これは大きなマイナスだと思う。アメコミ物は主人公の苦悩が付き物だが、パニッシャーの苦悩が伝わってこない。そのせいで、FBI捜査官の家族が人質に取られてもどれだけ心配しているかが分からない。
 終盤、パニッシャーに弾が一発だけ入った銃を渡して、FBI捜査官の娘とマイクロにそれぞれ別の者に銃を向けさせてジグソウが「さあ、お前に一人だけ助けるチャンスをやろう」のシーンであんな処理の仕方をするとは思わなかった。普通ならばなんとかして......のところなのに。ここは感心。
『パニッシャー』の本筋である家族の復讐がほとんど描かれていないのがマイナスか。

 監督のレクシー・アレクサンダーは実際に空手の元世界チャンピオンだったという経歴を持つドイツ人女性だそうだ。製作を同じく女性のゲイル・アン・ハードが務めているのもなんとなく納得。

B002DRBWDW.jpg『バンコック・デンジャラス』(2009) BANGKOK DANGEROUS 100分 アメリカ IEG VIRTUAL STUDIOS

監督:オキサイド・パン、ダニー・パン(ザ・パン・ブラザーズ) 製作:ジェイソン・シューマン、ウィリアム・シェラック、ニコラス・ケイジ、ノーム・ゴライトリー 製作総指揮:アンドリュー・フェッファー、デレク・ドーチー、デニス・オサリヴァン、ベン・ウェイスブレン 脚本:ジェイソン・リッチマン オリジナル脚本:オキサイド・パン、ダニー・パン 撮影:デーチャー・スリマントラ 編集:マイク・ジャクソン、カーレン・パン 音楽:ブライアン・タイラー
出演:ニコラス・ケイジ、シャクリット・ヤムナーム、チャーリー・ヤン、ペンワード・ハーマニー

 ニコラス・ケイジのバンコック観光案内映画とも言われている。とりあえず額は広いのに微妙な長髪という妙な髪型のニコラス・ケイジがトム・ヤク・クン食って「辛いー」と悶えている。「I LOVE Thailand。バンコックへようこそ」とナレーションが入らないのが不思議なくらいだ。

 ニコラス・ケイジは殺し屋。長年殺し屋稼業をやってきてそろそろ限界を感じている。そこで次のバンコックでの4件の殺しを最後に引退しようと考えている。
 彼には4つの掟がある。「質問はするな」「堅気とはかかわるな」「痕跡を残すな」「引き際を知れ」その掟を自ら破ってしまったために破滅への道を歩み始めたのだった。

 香港出身でタイで映画活動を始めたザ・パン・ブラザーズの作品である。元はタイ映画の『レイン』(2000)という作品がオリジナルだそうだ。ただし設定は大きく変わっていて、聾唖障害者の主人公がタイの暗黒社会で殺し屋をしているオリジナルに対して、リメイク版ではアメリカ人(?)の殺し屋ニコラス・ケイジで聾唖障害者はニコラス・ケイジと恋に落ちる薬局店員になっている。
 2000年の『レイン』が劇場用映画二作目で、すでにハリウッドで活躍しているのだからザ・パン・ブラザーズは売り込みが上手いかかなりの実力の持ち主なのだろう。

 ニコラス・ケイジは仕事が終わったら麻薬中毒に見せかけて殺して使い捨てにする助手をやとう。その助手とは仕事以外ではいっさい関わらないはずだったのが、いつのまにか情にほだされて殺し屋の手ほどきを始める。最後の仕事と言うことで感傷的になっていたのか。このことが結果的にニコラス・ケイジを追い詰めることになる。

 ラストは敵の手に捕らえられたコンとその恋人を救うために敵陣への殴り込み。ハンドガンを撃ちまくるがそれほど派手ではない。的に最初に撃たせて位置を確認して撃ち抜くなどリアルだ。ただし、ニコラス・ケイジの銃は撃っても撃っても弾切れをおこさない無限弾倉。気にする人は気にするだろうが、その方が格好いいので問題なし。
 コンに殺し屋の手ほどきをしていた時の、街中のガラスや鏡を使って後ろにも眼がある状態にしろを上手く使っている。手榴弾では男の腹と扉を吹き飛ばす。ロンブーの片方似の悪党は上下半身ぶっちぎれ。嫌な死に方だ。川の上でのボートによるチェイスやバイクの使い方も面白い。アクションはそれほど悪くない。ただしアクションシーンは少なくて、アクション満載を期待して観ない方が良い。

 悪いのは話の展開である。
 先ほども言ったようにコンを弟子にして殺し屋の手ほどきを始めるが、これまでの助手は冷酷に殺してきたのになぜコンだけは特別だったのかが意味不明。
 雨というなの薬局店員との恋も唐突すぎる。仕事、それも殺しの仕事の最中にプロの殺し屋が恋愛沙汰に走るものだろうか。彼女と知り合ったことで人間性を取り戻したと言うことなんだろうか。
 雨の態度もニコラス・ケイジに惚れたというよりも本人曰く「銀行関係の仕事をしている」アメリカ人をゲットしてラッキーといった感じなのが気になる。普通、薬局で仕事中に外国人が食事に誘ってきたら警戒してOKしないよな。それとも白人だから良いのか?オレたち日本人が申し込んだら断られるんだろうか。いいよなニコラス・ケイジはけっこう美人のタイ人お姉ちゃんとラブラブできて。

 クラブや川の上でのボートによる市場などバンコックらしい光景が映画のあちこちで観られる。香港映画を観た時はなんて猥雑な街なんだと思ったが、バンコックはそれ以上に猥雑でエネルギーに溢れている。ニコラス・ケイジに「いっぺんおいでよ」と言われたらついつい遊びに行ってしまいそうだ。

 最後の標的は「弱い者を守り、悪を倒す」人民に愛される政治家。日本で生活しているとそんなものがいるのかなと思ってしまう。そこで殺せなかった時点でニコラス・ケイジは殺し屋ではなく一人の男となった。その男が選んだ道は破滅への道だった。最後にニコラス・ケイジが引き金を引くまでが長いこと長いこと。

B002AD9EM0.jpg『ブラッディ・バレンタイン 3D』(2009) MY BLOODY VALENTINE 3-D 95分 アメリカ ザナドゥー

監督:パトリック・ルシエ 製作:ジャック・マーリー 製作総指揮:ジョン・ダニング、アンドレ・リンク、マイケル・パセオネック、ジョン・サッキ 脚本:トッド・ファーマー、ゼイン・スミス オリジナル脚本:ジョン・ベアード 撮影:ブライアン・ピアソン 特殊メイク:ゲイリー・J・タニクリフ プロダクションデザイン:ザック・グロブラー 衣装デザイン:リーアン・ラデガ 編集:パトリック・ルシエ、シンシア・ルドウィグ 音楽:マイケル・ワンドマッチャー
出演:ジェンセン・アクレス、ジェイミー・キング、カー・スミス、ケヴィン・タイ、トム・アトキンス、エディ・ガテギ、ベッツィ・リュー、メーガン・ブーン、トッド・ファーマー、リチャード・ジョン・ウォルターズ

 1981年の『血のバレンタイン』のリメイク。タイトルの通りに立体3D映画なのである。だが、家で観たので家庭用の赤青メガネだ。あー、眼が疲れた。

 ストーリーは単純。10年前に二十数名を殺して行方不明になったハリー・ウォーデンが再びツルハシを持って帰ってきた。毒ガス避けのガスマスクを被っているので正体は分からない。ハリー・ウォーデンが生きていたのか、それともそれに成りすました人物がいるのか。とにかくそいつがツルハシで人を殺しまくるだけの映画。
 立体なので人体を貫いたツルハシの先が飛び出たりするが、オレはあまり立体感を感じない方なのでそれほど驚かない。血がブシャーと飛び出たりするので、立体好きにはたまらない映画だろうが、立体に見えないんだからしょうがない。『ジョーズ3-D』もそうだったもんなぁ。

 立体を無視して2Dのホラー映画として観るとスーパーでヒロインが襲われるシーンなどが特に怖い。逃げ道を逃げ出したと思ったらその先には......
 Blu-rayだと真っ裸のお姉ちゃんが殺人鬼から延々逃げ回るシーンがあるのだが、劇場公開版ではカットされていたらしい。確かにアンダーヘア丸出しだったが、あれをカットすると見せ場が一つ減る事になる。なくてもストーリーの展開には関係ないシーンだが、素直にぼかしを入れるかしてカットしないで上映できなかったものだろうか。公開側が一般レイティングを希望してそれで映倫ともめたのか?

 ただ、真犯人捜しは意外性を出そうとして素直にそのまんまになってしまっている。ストーリーから言うとこいつが犯人かな、まさかそんな単純じゃないよな。こいつが犯人かい!

 炭坑夫というよりもゴム状の衣服で潜水夫のような殺人鬼が不気味ではある。
 ゴア描写はツルハシで突き刺す一本槍でちょっと退屈かと。眼を突き刺したり、後頭部から刺して眼が飛び出たり、脳天から貫いたりと工夫はあるがしょせんツルハシ攻撃だけ。珍しいのは回転する乾燥機から死体が転がり出てくるぐらいか。スラッシャー映画としてはもっと色々な殺し方を見せて欲しかった。

 とにかく眼が疲れるし色つきセロハン越しなので画面が暗い。しかたないので二枚組のもう一枚2D版で観直した。なにやってんだか。2Dで観ると普通のスラッシャー映画。スラッシャー映画も3D映画も見せ物感が強いので、二つ合わさると強力なんだが、別々にしてしまってちょっと残念。

 バレンタインに女性がチョコを配るのは日本だけの習慣と聞いていたが、この映画の中では本命チョコだけでなく義理チョコまで登場していた。オレの知識が間違っていたのか?それともチョコ習慣が日本から逆輸入された?

B002FKTD5G.jpg『バルジ大作戦』(1965) BATTLE OF THE BULGE 175分 アメリカ WB

監督:ケン・アナキン 製作:ミルトン・スパーリング、フィリップ・ヨーダン 製作総指揮:シドニー・ハーモン 脚本:フィリップ・ヨーダン、ミルトン・スパーリング、ジョン・メルソン 撮影:ジャック・ヒルデヤード 音楽:ベンジャミン・フランケル
出演:ヘンリー・フォンダ、ロバート・ショウ、ロバート・ライアン、チャールズ・ブロンソン、テリー・サヴァラス、ダナ・アンドリュース、ピア・アンジェリ、ジョージ・モンゴメリー、タイ・ハーディン、ウェルナー・ピータース、ジェームズ・マッカーサー、ロバート・ウッズ

 OVERTURE(序曲)付きの作品は久々に観た。もちろんINTERMISSIONもあるしEXIT MUSICまで付いている。
 しかし考えてみれば昔の長い映画にはOVERTUREはなんのために付いていたのだろうか。INTERMISSIONはトイレ休憩?EXIT MUSICはとっとと出てけ?

 第二次大戦末期のヨーロッパ戦線におけるバルジの戦いを史実に基づいて映画化したのがこの作品。とにかく戦車がいっぱい出る。飛行機が飛べない天候の悪い時期を狙って、タイガー戦車隊を進ませ連合軍を寸断するという計画をドイツ軍が思いついた。
 責任者のヘスラー大佐はまだ若き戦車将校を率いて戦車隊に乗り込む。それと同時に英語に堪能でアメリカに住んでいたことのあるドイツ軍人ばかりを集めてアメリカ兵に変装させて後方へパラシュート降下させ攪乱作戦を行う。
 破竹の勢いで進行するタイガー戦車隊と攪乱作戦にすっかりやられっぱなしの連合軍だが、相手の弱点が燃料の乏しさだと知って反撃に出る。

 連合軍の情報将校ヘンリー・フォンダが主役となっているが、実質的主役はヘスラー大佐役のロバート・ショウだ。若い戦車将校ばかりなのを見て肩を落としていると、一人の将校が「戦車隊の歌(パンツァー・リート)」を歌い出し、その歌が広がっていってついにはヘスラーも歌い出すシーンは前半の目玉である。
 ヘスラーは根っからの職業軍人で、この戦争が勝ちもせず負けもせず永遠に続いて自分がドイツ軍服を着続け戦い続けることを望んでいる。それを聞かされたお付きの軍人が、ヘスラーの考えに反感を持ち戦争が早く終わって欲しいことを告げ、他部門への配置換えを申し出る。ラストにその軍人が晴れ晴れとした顔で歩いているのが印象的だ。

 チャールズ・ブロンソンは前線の指揮官の少佐。頼りになりそうな上官だ。ちなみにヒゲなし。
 敵襲の際には炊事班にも銃を持たせて戦わせる柔軟性の持ち主。中盤後辺りでドイツ軍に捕まり捕虜になってしまうのでその後は登場しない。ヘスラーとの二人芝居があって出番の少なさを補っている。

 ヘンリー・フォンダは主役のクセしてあまり目立っていない。情報将校という役目柄、銃を持って戦う役回りではないせいもあるだろう。連合軍の戦車隊の隊長でも良かったのではないだろうか。そして、最後はヘスラーの乗るタイガー戦車と一騎打ち。
 ドイツ軍の燃料が不足しているのを確かめるために偵察機のパイロットに無理矢理飛行機を出させるが、その時の「戦争にルールはない。勝つだけだ」が数少ない目立ったセリフだ。

 終盤はドイツのタイガー戦車隊VSアメリカのM4中戦車の戦い。双方とも本物ではなくM47パットン戦車とM24軽戦車が代役を務めているがそれは仕方ないだろう。タイガー戦車を十数台揃えろって方が無理だ。軍事マニアならばこだわる人もいるだろうが、それはこだわる部分を間違っていると思う。
 双方合わせて数十台の戦車が撃ち合うシーンは圧巻である。ずっしりしたタイガー戦車に対し、ちょこまかと走り回るM4中戦車。この戦車はスペイン陸軍の物を借りたそうだ。よってロケもスペインで行われた。

 監督のケン・アナキンは『史上最大の作戦』(1962)で連合軍のパートを監督した人。さすがにスケールの大きな戦闘シーンも見事にこなしている。それでいてヘスラーなどの心理描写もちゃんとやっていて単なる大味な監督ではない。

 所々でミニチュアが使われているが、その出来があまり良くないのが残念だ。

B0026OBVK6.jpg『バラキ』(1972) COSA NOSTRA/THE VALACHI PAPERS 129分 イタリア/アメリカ

監督:テレンス・ヤング 製作:ディノ・デ・ラウレンティス 原作:ピーター・マーズ 脚本:スティーヴン・ゲラー 撮影:アルド・トンティ メイクアップ:ジャンネット・デ・ロッシ 音楽:リズ・オルトラーニ
出演:チャールズ・ブロンソン、リノ・ヴァンチュラ、ジル・アイアランド、アンジェロ・インファンティ、ジョセフ・ワイズマン、ワルテル・キアーリ

『ゴッドファーザー』(1972)の大ヒットにあやかって早撮りのテレンス・ヤングが作り上げたマフィア映画。
 マフィアとは外部の人間がイタリア系犯罪組織を呼ぶ呼び方で、彼ら自身は自分たちの事を"コーザ・ノストラ"と呼ぶ。

 刑務所に入れられたバラキ(ブロンソン)はコーザ・ノストラの大物ジェノベーゼ(リノ・ヴァンチュラ)に死の接吻をされる。
 このままでは殺されるのを待つのみと知ったバラキはFBI捜査官相手にこれまでの顛末を話はじめるのだった。

 実際に起きたバラキ事件を題材にした映画。ブロンソンがシンボルマークであった口ひげを剃ってまでして演じた。実際のマフィアの名前などが実名で多数出てくる。
『ゴッドファーザー』と比べると重み、完成度などで明らかに劣るが、同時期に発表されたマフィア映画の大半がすでに消え去っている事を考えると、今観ても充分に耐える作品に仕上がっているだけでも充分だろう。

 一人のチンピラが運転手としてコーザ・ノストラに入り、そこでのし上がっていく様子が克明に描かれている。
 そして中途半端に出世しすぎたばかりにFBIに目を付けられ破滅していく様が哀れである。
 若いチンピラ時代もブロンソン本人が演じているが50歳過ぎでは多少無理があったか。代わりに、白髪混じりに刑務所での告発のシーンは重みがある物となっていて、ブロンソンの演技の中でも一二を争うものとなっている。
 『ゴッドファーザー』が上からの目線で撮られていたのに対し、『バラキ』は下からの目線で撮られている。
 ファミリーは一団だ、ファミリーに入れば手を出す者から守ってやる、といっておきながら結局は上の者が下の者を好きなように金を吸い上げて使い捨てて終わりなのだ。
 犯罪組織に義理も人情もない。あるのは金と欲だけだ。

 自分の親友がボスがイタリアに飛ばされている間にボスの女に手を出してしまい、制裁として急所をナイフで切り取られるシーンは男にしか分からない怖ろしさ。
 床屋でひげ剃りをしていた男が撃ち殺されるというギャング映画ではお馴染みのシーンがある。銃撃の後、部屋の隅でビクビク震えている店員がリアルだった。
 ブロンソンは例によって大塚周夫吹替、リノ・ヴァンチュラが森山周一郎という二大ブロンソン吹替俳優が吹替に参加しているのも貴重。

B0002IJOIO.jpg『ホワイト・バッファロー』(1977) THE WHITE BUFFALO 97分 アメリカ

監督:J・リー・トンプソン 製作:パンチョ・コーナー 製作総指揮:ディノ・デ・ラウレンティス 原作:リチャード・セイル 脚本:リチャード・セイル 撮影:ポール・ローマン 特殊効果:カルロ・ランバルディ 音楽:ジョン・バリー
出演:チャールズ・ブロンソン、ジャック・ウォーデン、キム・ノヴァク、スリム・ピケンズ、カーラ・ウィリアムズ、ジョン・キャラダイン、ウィル・サンプソン、スチュアート・ホイットマン、クリント・ウォーカー、エド・ローター

 ワイルド・ビル・ヒコック、インディアンのスー族の戦士クレイジー・ホース、名前だけだがリトルビッグホーンの戦いのカスター将軍など実在の人物が登場する異色のモンスター西部劇。

 インディアン討伐や保安官、バッファローハンターとして活躍してきた実在の西部のガンマン、ビル・ヒコック(ブロンソン)。バッファローハンター時代にはI・Oデータの回し者かと言われるぐらいに"BUFFALO"を殺しまくったそうである。ビル・ヒコックが殺したわけではないが汽車から見えるバッファローの骨の山には驚かされる。一時は絶滅の危機にさらされたはずである。
 そのビル・ヒコックは悪夢に悩まされていた。それは雪山でホワイトバッファローに襲われるという夢だった。
 そこで北部に旅立ったビル・ヒコックはブラックヒルズにたどり着く。そこはゴールドラッシュに湧いていて、白人が多数集まっていた。そのため先住民のスー族との争いが絶えず、後に軍との衝突が起こりリトルビックホーンの戦いへと繋がる事になるがそれはまだ先の話。
 昔の相棒のジイさんと巡り会った二人は雪山へと馬を進めた。途中でインディアン同士の争いを目にする。片方は15人、もう片方は一人だけだった。「15対1じゃ勝ち目はないな」というジイさんに「15対1じゃねぇ。15対3だ」と返すビル・ヒコックのセリフがしびれる。
 ビル・ヒコックに恨みを持つ男に襲われるが、そこを助けてくれたのが先ほど助けたインディアンのクレイジー・ホース(ウィル・サンプソン)だった。クレイジー・ホースはホワイトバッファローに殺された娘をその毛皮で包むためホワイトバッファローを狙っていた。親交を深め合うビル・ヒコックとクレイジー・ホースだが、そこへホワイトバッファローが襲いかかってきた。
 その場では逃げられる物の、光景はビル・ヒコックが夢で観たものそのものとなっていた。対決の時は刻一刻と迫っていた。

 製作する物がなぜかどれも大味になる製作総指揮のディノ・デ・ラウレンティスだけあってこれまた大味な作品ではある。
 なんといってもホワイトバファローのその造形。J・リー・トンプソン自身はホワイトバッファローの姿をほとんど見せずに影や足音、鳴き声などを中心に表現しようとしていたそうだが、『キングコング』(1976)のディノ・デ・ラウレンティスが「客は怪物ホワイトバッファローを観にくるんじゃい」とクレームをつけたらしく、SFXテクニシャンのカルロ・ランバルディのラージスケール・メカニカルによる張りぼてのホワイトバッファローが全編を通して登場する事になった。
 実物大のホワイトバッファローが雪原を疾走するダイナミックなシーンもあるのだが、これは下にレールが轢いてあってホワイトバッファローの身体を内部に組み込んだメカニズムで上下させる物。よって足が地面についていないのだ。そこら辺はさすがJ・リー・トンプソンだけあって細かいカット割りや蹴散らされる雪などでごまかしてはいるが限界がある。
 だが、1977年という時代を考えるとこの程度の出来でも仕方ないとは思う。哺乳類しかも巨大なホワイトバッファローはどうしても作り物じみてしまうだろう。カルロ・ランバルディは好きな人ではないが、与えられた条件の中で出来うる限りの仕事をしている。
 今ならばCGによる表現も取り入れられるだろうが、実際のホワイトバッファローは使えずにラージスケール・メカニカル一本でやるにはこれで限界だったのだろう。カルロ・ランバルディじゃなきゃもっと良い物が......いや言うまい。

 物語はシンプルだが、その割りにビル・ヒコックと軍隊の戦いや古い馴染みの女との再会、酒場での対決など余分なシーンが含まれている。それがストーリーには直接関わってこず単なるエピソードで終わっているのはもったいないところ。
 馴染みの女で今では未亡人となって宿屋を経営しているキム・ノヴァクとの再会のシーンなど盛り上げようはいくらでもありそうだが、ただ過ぎ去っていくだけ。キム・ノヴァクがもったいない。
 エド・ローターは軍の指揮官なのだが、その軍(といっても4,5人)とビル・ヒコックの対決が一瞬で終わってしまうので出番は数分しかない。これまたもったいない。
 葬儀屋役のジョン・キャラダインも出番は数分だけ。もったいない。

 見所はビル・ヒコックとワイルド・ホースの友情。最後には二人で協力してホワイトバッファローをやっつける。ビル・ヒコックにはスー族の人間を殺した過去があるので、もう会わないことを誓いながらも兄弟のちぎりを交わす。雪山での白人とインディアンの人種の差を超えたちぎりだ。男である。

 前回も書いたが、ブロンソンのDVDは旧作なのに吹替収録版が多い。大半は大塚周夫だが、これは珍しく森山周一郎吹替版である。資料として貴重であろう。渋い声が大塚周夫とは違う形でブロンソンによく似合う。

B000KGGC38.jpg『必殺マグナム』(1986) MURPHY'S LAW 102分 アメリカ

監督:J・リー・トンプソン 製作:パンチョ・コーナー 製作総指揮:ヨーラン・グローバス、メナハム・ゴーラン 脚本:ゲイル・モーガン・ヒックマン 撮影:アレックス・フィリップス・Jr 音楽:マーク・ドナヒュー、ヴァレンタン・マッカラム
出演:チャールズ・ブロンソン、キャスリーン・ウィルホイト、キャリー・スノッドグレス、エンジェル・トンプキンス、ロバート・F・ライオンズ、リチャード・ロマナス、ビル・ヘンダーソン、ジェームズ・ルイジ、ローレンス・ティアニー、ジャネット・マクラクラン、フランク・アネス、ジャネット・ロトブラット

 キャノン・フィルム作品になってからのブロンソン映画は正直ちょっと......なのが増えてくる。しかも『必殺マグナム』をいうやる気のないやっつけ仕事で付けたような邦題。これに期待しろって方が難しい。
 ところが意外と面白いんだな、これが。

 主人公の刑事マーフィーは妻からは離婚を申し立てられ落ち込んで酒に溺れる毎日。それもそのはず、妻はストリップバーでトップダンサーを務めるような若い美女だったのだ。この時、リアルなブロンソンの年齢は65歳。さすがに無理があるような気もするが、そんなうらやましい結婚生活が破綻したのでは酒浸りになるのも無理がないのかも知れない。
 そして今日も今日とて酒屋で食料品とウイスキーのボトルを買い込むマーフィー。その隙を突いて、女自動車泥棒アラベラが金属製の物差しを使ってマーフィーの車のドアを開けエンジンをかけて盗んでいる最中だった。しかし、映画でよく物差しで車のドアロックを解除しているシーンが出てくるが、あれって本当に開くのかね。仮に昔は開いたとしても、とっくに改善されていると思うんだが。
 そして走り出そうとする車に、「それは俺の車だ」とマーフィーは買い物袋を投げつける。しかし、ウイスキーだけはちゃっかり抜いてから投げつけているところに深いアル中の根を感じさせる。
 そして一度はアラベラを逮捕するが股間を蹴られて取り逃がしてしまう。情けない......だが猛烈に痛いんだよ、あれ。
 女性の殺人遺体が発見され、容疑者は買春の元締めで麻薬組織のボスの弟だと目星がつく。容疑者を逮捕に向かうが反抗に遭い、マーフィーはやもなく射殺する。このことで麻薬組織のボスから命を狙われる事になる。
 その頃、離婚が成立したマーフィーの妻とその愛人が何者かによって射殺され、容疑者の疑いをかけられたマーフィーは逮捕されてしまう。誰も自分の無実を信じてくれなくて、このままでは刑務所送りは間違いない。そこで取調室で隣に座った容疑者と手錠をかけられた隙をついて警官から銃を奪い脱出に成功。で、自分と手錠で繋がった容疑者を見たら自動車泥棒のアラベラだった。戦争時代に飛ばした事があると屋上の警察ヘリで飛び立ったマーフィーとアラベラだが、操縦するのは20年ぶりとのこと。ベトナム戦争以来か。
 しばらく飛んだ時点で、ヘリは燃料切れを起こし、納屋の屋根に着陸。ところが納屋が崩れ落ちる。それもそうだ、普通の納屋はヘリを乗せるように出来てはいない。
 そこへ3人の男がショットガンやアサルトライフルを持って物々しく登場。「お前ら、何者だ」と必要以上に威圧感を与える。納屋を壊されたにしては怒り方も武器も尋常ではない。それもそのはず、この納屋は大麻を栽培していた大麻農場だったのだ。日本でも大学生などの若者が自宅の押し入れで赤外線ランプを使って大麻を栽培して捕まったりするがそれの大規模な奴と考えればいい。
 だが、そこはアルコールも抜けてきたマーフィーがうまく連中をやっつけて車を奪って旧友の家を訪ねる事にする。
 旧友は元刑事で16歳の少年に後ろから撃たれたため両足が不自由で左右に松葉杖をついている。棚にウイスキーがあるのを見つけたマーフィーは早速飲み始め、アラベラに彼のために焼いた黒こげのオムレツを投げつけられて怒られる。
 二人が立ち去った後、何者かが旧友も射殺する。この殺しもマーフィーのせいにされてしまうのだが、犯人はマーフィーと旧友が組んでいた頃に逮捕して最近出所してきた人間に違いないとマーフィーは当たりを付ける。友人の刑事に頼んで警察のコンピューターで調べてもらったところ、その人物とは措置入院になっていたサイコ女だった。このサイコ女は当時の事件関係者を片っ端から殺していく。最後の目標はもちろんマーフィーだ。
 一方からはサイコ女から狙われ、もう一方からは麻薬組織から狙われる。もちろん警察だって追ってくる。マーフィーとアラベラは生き残る事が出来るのだろうか。

 最初は女房に逃げられて女々しく酒に逃げていた情けないブロンソンが、サイコ女のクモの糸に絡め取られてしまったところからもがきながら這い上がるのが頼もしい。
 マーフィーとアラベラのコンビも絶妙で、ケンカが絶えないのだがそのケンカが楽しく、ケンカをする度に親しくなっていくのが感じられる。重苦しい雰囲気で始まったが、作品が進むにつれ軽めのギャグも登場するようになりバランスの取れた映画となっている。
 終盤は無人のビルの中での三者乱れての戦いとなるが、マーフィーと組織側が銃を使っているのに対して、サイコ女は音を立てないボウガンを使っている。ここで音もせずに矢を発射し肉を貫くボウガンを選ばせる事で彼女の異常性をより際立たせている。
 それにしても『必殺マグナム』というタイトルはどこから来たんだろ。DVDのパッケージにあるような大型拳銃をマーフィーが持つシーンは存在しない。単なる勢いだな。

B0026ZLD5S.jpg『バトルガンM-16』(1989) DEATH WISH 4: THE CRACKDOWN 100分 アメリカ

監督:J・リー・トンプソン 製作:パンチョ・コーナー 製作総指揮:メナハム・ゴーラン、ヨーラン・グローバス 脚本:ゲイル・モーガン・ヒックマン 撮影:ギデオン・ポラス 音楽:ポール・マッカラム、ヴァレンタン・マッカラム、ジョン・ビシャラット
出演:チャールズ・ブロンソン、ケイ・レンツ、ジョン・P・ライアン、ペリー・ロペス、ジョージ・ディッカーソン、ダニー・トレホ、スーン=テック・オー、ダナ・バロン、ジェシー・ダブソン

『DEATH WISH』シリーズもついに4作目。今回の標的は街のダニではない麻薬密売組織だ。ポール・カージーの敵はそこらのチンピラというのが良かったのだが、1980年代後半には麻薬組織を敵に回して戦うというのが多かった。『リーサル・ウェポン』(1987)のような刑事物はもちろんの事、スパイの007だって『007/消されたライセンス』(1989)で麻薬組織と戦ったぐらいだ。我らがカージーも時流に乗ったのだ。

 ロスの建築事務所で設計士として働くポール・カージー。彼の設計した建物は頑丈そうだ。彼には新聞記者の恋人がいる。またもやモテてるこのヒゲオヤジ。『ロサンゼルス』の恋人は雑誌記者だったが、あの野性味溢れる顔がインテリジェンスを持った女心をくすぐるのだろうか。それとも『カメラマン・コバック』で同じ報道畑だった血がそうさせるのかもしれない。
 ところか彼女の一人娘がコカインの急性中毒で死んでしまう。そしてカージーが自警団だと知っている新聞王ネイサン・ホワイトが接近してくる。ホワイトの娘も麻薬中毒で死んだのだ。麻薬密売組織退治をホワイトに依頼されたカージーは、ロサンゼルスを牛耳る二つの麻薬密売組織を互いに争わせる事で共倒れにさせる計画を練る。彼の計画は上手くいったに見えたが、ホワイトの意外な正体が判明し恋人を人質に取られたカージーはアサルトライフルM-16を手に戦場へと向かうのであった。

 恋人の娘が自分でコカインをやって死んでしまったのに、それで麻薬密売組織をぶっ潰そうというのはちょっとだけ逆恨み入ってないかとも思うが連中が悪なのは間違いない。
 今回のカージーの愛銃はワルサーPPK。いやアメリカ輸出モデルだからワルサーPPK/Sか。たしかPPKだと銃の全長が短すぎるとかで輸入できないんだよな。あー、でも刑事が9ミリ弾とか言ってたな。ワルサーの小型ピストルで9ミリってなんだ?
 ともあれ、ポケットにそっと忍ばせておける小型ピストルは自警団に相応しい。『スーパー・マグナム』のオートマグナムでは目立ってしょうがない。
 終盤では、二つの麻薬密売組織が共倒れした後で一気に市場を乗っ取ろうとしたホワイトの偽物にグレネードランチャー付きのM-16で立ち向かう。ネイサン・ホワイトはちゃんと本人がいて、その旅行中にホワイト宅を利用してカージーを信用させたのだ。それぐらいでころっと信用してしまうカージーもカージーだ。
 もちろんラストは至近距離からのグレネードランチャーで偽ホワイトは木っ端微塵。この辺りは『スーパー・マグナム』のラストと似てる。
 どうやら恋人の娘の死も偽ホワイトが仕組んだ罠だったようで、こんな奴は殺されて当然。しかし、カージーに深く関わると不幸になる。恋人も最後は偽ホワイトに撃たれて死んでしまうしな。
 対立する二つの組織を裏から操って戦わせ共倒れにさせようという作戦は黒澤明の『用心棒』かダシール・ハメットの『血の収穫』を思わせる。カージーにも作戦を考えて行動するなんてことが出来たんだ。ただ単に銃をぶっ放すだけのオヤジかと思った。

 ハードボイルドな雰囲気があった初期2作と比べると『スーパー・マグナム』『バトルガンM-16』は本当にバカ映画。とにかくバンバン撃って悪党をバンバン殺して、最後は背中を見せてポール・カージーが去っていく。そればっか。それもそのはず製作総指揮がメナハム・ゴーランとヨーラン・グローバスでキャノン・フィルム作品。キャノン・フィルム作品に深い事を求めちゃいけない。観てスカッとすればそれで良し。
 オープニングで地下駐車場で襲われた女性をカージーが自警団として助けるが、最後に射殺したチンピラの顔を見るとなんとカージー自身。はっ!!夢でした。
 この夢が作中で何の意味も持っていないゲイル・モーガン・ヒックマンの脚本とJ・リー・トンプソンの演出には逆に感心してしまう。いや、J・リー・トンプソン好きだけどね。

 この度、単品で1000円程度で買える廉価版が発売されたが、こいつはスタンダードサイズでがっかり。今時、誰が4:3画面で喜ぶんだ。
 音楽のポール・マッカラムとヴァレンタン・マッカラムは名前から分かる通りデヴィッド・マッカラムとジル・アイアランドの間に産まれた子供たち。ブロンソンとジルの結婚に際して、ブロンソンが自分の養子にした。音楽がジミー・ペイジからブロンソンの養子とはえらい落差である。あまり才能はなかったようで、これ以降アメリカのサイトで調べてみてもほとんど音楽の仕事はしていない。じゃあ何をやっているかというとそれも不明。意外と普通に社会人をやってるんじゃない。

B0009J8E32.jpg『ブレイクアウト』(1975) BREAKOUT 96分 アメリカ

監督:トム・グライス 製作:ロバート・チャートフ、アーウィン・ウィンクラー 製作総指揮:ロン・バック 脚本:ハワード・クライツェク、マーク・ノーマン、エリオット・ベイカー 撮影:ルシアン・バラード 音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:チャールズ・ブロンソン、ロバート・デュヴァル、ジル・アイアランド、ランディ・クエイド、シェリー・ノース、ジョン・ヒューストン、エミリオ・フェルナンデス

 メキシコ在留中のアメリカ人(ロバート・デュヴァル)が陰謀によって無実の罪で刑務所に投獄される。
 妻(ジル・アイアランド)は夫を刑務所から出すべく奔走するが、再審要求を出しても受理されるのがいつになるか分からない。
 そこで、刑務所外での作業現場を狙って飛行機で脱獄させる計画を練り、腕利きのパイロット(チャールズ・ブロンソン)を雇うことにする。

 このパイロットつまりチャールズ・ブロンソンが登場するのが上映開始から20分ほどたってから。主人公が登場するまで長い長い。
 おそらくブロンソン目当ての観客が大半だったろうから、その点では異色作である。
 飛行機での脱獄に失敗し、相棒(ランディ・クエイドが若い)を女装させて刑務所の面会日に紛れ込ませるがばれて失敗。そりゃ、ばれるわ。
 ついにメキシコ警察のヘリコプターに似せてロイヤルブルーで塗装したヘリコプターで白昼堂々刑務所の庭に降りて脱獄させる、奇想天外大胆不敵な計画を思いつく。
 すごいのは、これが実話ベースであることだ。アメリカ人は無茶するなぁ。

 全体的にもたついた印象で、96分という上映時間が長く感じる。
 陰謀を持ってロバート・デュバルを逮捕させた連中があまり活用されていないのも気になる。
 メキシコ人刑務所長や看守たちがひどく悪し様に描かれている点も気になる。
 だが、失敗続きでジル・アイアランドから「もうあなたには頼みません」と言われたブロンソンが、金のためではなく、かといってプライドともちょっと違う、そう意地のために最後の計画にとりかかる辺りはやはり格好いい。

 メキシコまでセスナ機で無補給にて往復出来るということは、舞台はアメリカ南西部だろう。風が吹くと砂埃の舞う、ざらついた風景がブロンソンにはよく似合う。

B00005V1CN.jpg『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996) FROM DUSK TILL DAWN 109分 アメリカ

監督:ロバート・ロドリゲス 製作:ジャンニ・ヌナリ、メール・テパー 製作総指揮:ローレンス・ベンダー、ロバート・ロドリゲス、クエンティン・タランティーノ 原案:ロバート・カーツマン 脚本:クエンティン・タランティーノ 撮影:ギレルモ・ナヴァロ 編集:ロバート・ロドリゲス 音楽:グレーム・レヴェル
出演:ハーヴェイ・カイテル、ジョージ・クルーニー、クエンティン・タランティーノ、ジュリエット・ルイス、サルマ・ハエック、フレッド・ウィリアムソン、トム・サヴィーニ、チーチ・マリン、アーネスト・リュー、ケリー・プレストン、ジョン・サクソン、ジョン・ホークス、ダニー・トレホ

 1996年、営業車で外回りをしていた頃。ラジオの『つボイノリオの聞けば聞くほど』で(名古屋では驚く事につボイノリオが月-金午前中の帯番組を持っているのである)、「おかしな映画を観たー」と騒いでいるので、つボイノリオがおかしな映画というからにはそれはそれはおかしな映画なんだろうと観に行った。
 結論:おかしな映画だった。

 109分の内、1時間はクライム・ロード・ムービーとして物語は進む。酒場での警官が尋ねてくるところの緊張感なんかスゴイ。
 銀行強盗をして逃走中の兄弟がメキシコとの国境を越えるためにハーヴェイ・カイテル一家が乗ったキャンピングカーをジャックする。兄のジョージ・クルーニーはクールな犯罪者だが、弟のクエンティン・タランティーノは頭の少し足りないバカ野郎で日本語吹き替えが広川太一郎ときている。
 ハーヴェイ・カイテルは元牧師だが妻を交通事故で亡くした事で信仰心をなくしてしまったという設定。
 娘のジュリエット・ルイス(『ブロンコ・ビリー』や『ダーティファイター』などクリント・イーストウッド作品でもお馴染みのジェフリー・ルイスの娘。あの父親からこの娘が生まれるとは神秘である。)の機転で無事に国境を越えて、メキシコの悪党との待ち合わせ場所の酒場"ティティツイスター(おっぱいぐるぐる)"へ行った。店の営業時間は日没から夜明けまで(フロム・ダスク・ティル・ドーン)
 そこで主人公たちを待ち構えていたのはなっなんとバンパイアたちだった。

 バンパイアかよ!これは読めなかった。というか読めるかっ!
 半裸で踊る踊り子が蛇状のモンスターに変身するとクエンティン・タランティーノにかぶりつく。噛まれたタランティーノはバンパイアになり、店中の踊り子や店員はみんなバンパイアになって客を襲い始め店内は大混乱。首が飛ぶ腕が飛ぶ、もう阿鼻叫喚。
 陽気にギターを弾いていたマリアッチの楽器も実は死体を改造した物だった。
 こんな展開、誰が予想する。オレはしなかった。
 こんなトンデモな脚本を書いたのはクエンティン・タランティーノ。バカだ。二本の映画として独立できそうな作品を半ば強引に一本に仕上げてしまっている。前半の緊張感はどこへ行ってしまったんだ。よくこの脚本でOKが出たなと思ったら、製作総指揮も自分たちでやっているのだ。これは遊んで撮ってるとしか思えない。
 前半と後半の落差を楽しめない人には駄作にしか思えないだろう。普通の一本道のストーリー映画ばかりを観てきた人にはこの超展開にはついていけないはず。どこまでノレるかが勝負。一度ノレてしまえばかなり楽しい。もちろん、前半の雰囲気のまま最後まで進んだ作品も観てみたいが。
 キャストは上に書いたように豪華。今だったらジョージ・クルーニーは出てくれないだろう。タランティーノも『デスペラード』のおしゃべりな売人とは違った感じで芸達者ぶりを見せてくれる。
 他には特殊メーキャップアーティストのトム・サビーニがセックスマシーンという役名で股間にリボルバーを付けた役で登場している。『ゾンビ』や『クリープショー』などにも出演していたが、裏方なのに出たがりな人だ。でもってかなり演技が上手い。今回は途中でバンパイアに噛まれてしまうのだが、それを仲間に隠していて次第にバンパイアに目覚めていくという演技をやっていて説得力があった。それにしても、バンパイア物でもゾンビ物でもそうなのだが、噛まれたのに仲間に隠すヤツが絶対いるのはなんでだろうか。もう助からないのは分かっているのに、それで結局仲間に迷惑をかける結果になる。宣言しておくが、オレはゾンビに噛まれたら素直に打ち明ける。
 噛まれてからバンパイアになるまでの時間も結構謎。セックスマシーンは10数分はかかっていたようだが、セックスマシーンに噛まれた黒人は次のシーンではバンパイアになっていた。
 ハーヴェイ・カイテルにいたってはかなり長時間人間としての意識を保っていた。これは噛まれた場所が関係しているのか、信仰心の問題なのか。単に脚本の都合という答えはつまらないので却下。
 信仰心と言えば、この物語の真の主役はハーヴェイ・カイテルである。失った信仰を極限状態に追い込まれ二人の子供たちを守るためにも取り戻す。『エクソシスト・ビギニング』や『サイン』と同じテーマなのだ。

B000EQIQDS.jpg『パラサイト』(1998) THE FACULTY 104分 アメリカ

監督:ロバート・ロドリゲス 製作:エリザベス・アヴェラン 製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン 原案:デヴィッド・ウェクター、ブルース・キンメル 脚本:ケヴィン・ウィリアムソン 撮影:エンリケ・シャディアック 特撮:ブライアン・ジェニングス 編集:ロバート・ロドリゲス 音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:イライジャ・ウッド、ジョシュ・ハートネット、ジョーダナ・ブリュースター、ショーン・ハトシー、クレア・デュヴァル、ローラ・ハリス、アッシャー・レイモンド、ロバート・パトリック、ファムケ・ヤンセン、パイパー・ローリー、サルマ・ハエック、ジョン・スチュワート、ビービー・ニューワース、クリストファー・マクドナルド、ダニエル・フォン・バーゲン、サマー・フェニックス

 主人公のいじめられっ子ケイシー(イライジャ・ウッド)は学校のフットボール場で親指ほどの奇妙な生物を見つける。そいつは生物室の水槽に入れると復活して泳ぎだし、二つに分裂した。水槽に手を入れた生物教師の指に噛みつくほどの凶暴性を持つその生物は新種ではないかと思われた。
 その翌日、まずは先生たちの様子がおかしくなった。次いで、成績優秀やスポーツ万能などで目立つ生徒がおかしくなった。どこがこうと指摘できるおかしさではないのだが、これまでの彼らとは絶対に違う。最初はカルト宗教の仕業か何かと思っていたが、これはエイリアンに寄生(パラサイト)されたと気付いたケイシーと臨時で手を組んだその仲間たちは、エイリアンの親玉捜しを始めた。SF小説オタク少女のストークリー(クレア・デュヴァル。ちなみにロバート・デュヴァルとは縁もゆかりもないそうである)曰く「親玉を殺せば複製はみんな死ぬ。取り付かれた人間も助かる」という言葉に賭けたのである。
 そして金曜日の夜。ライバル校とのアメフトの試合で町中の人間がフットボール場に集まった。このままでは今晩にも町中の人間が寄生され、あっと言う間にアメリカ中、いや世界中の人間が寄生されてしまう。
 いじめられっ子ケイシーとその仲間たちは世界を救う事が出来るのか。

 原題の『FACULTY』には"才能"という意味と"教職員"という意味があるそうだ。画面上に一度"FACULTY LOUNGE(職員用ラウンジ)"という文字が登場するが、まさか『教職員』というタイトルで青春SFホラーは作らないだろうからダブルミーニングになっているのだろう。言葉の成り立ちから言うと教職員になるような人間には才能があるというのが語源なのだろうか。個人的経験から言うと「それはない」。
 ロバート・ロドリゲス監督作としては珍しく脚本を書いていない。他には朋友クエンティン・タランティーノが脚本を書いた『フロム・ダスク・ティル・ドーン』があるぐらいで、残りは自分で脚本を書く人なのでこの作品では雇われ監督的側面が大きかったのではないだろうか。

 内容にはロドリゲス色も感じられるものの、それ以上に脚本のケヴィン・ウィリアムソン(『スクリーム』などの青春ホラーを得意とする)のカラーが強く出ているのではないだろうか。主人公たちがティーンエイジャーという点からしてすでにそうだ。
 面白いのがエイリアンに寄生されたかどうかを判断する手段。仲間の劣等生(ただし知能はすごく高い。不良という意味での劣等生である)ジークのお手製ドラッグ"スキャット"を鼻から吸わせる事でエイリアンは正体を現すのだ。実は"スキャット"の主成分はカフェインでその利尿作用によりエイリアンにとって貴重な水分を放出してしまい苦しむのだ。どんだけ利尿作用の強いカフェインやねん、そんなんじゃコーヒー飲めないよと思ったが、そう言えば職員用ラウンジで先生たちが給水器の水をがぶ飲みしているシーンでコーヒーメーカーが空のままほったらかしになっていた。やっぱコーヒーは駄目なのか。
 仲間の中にエイリアンに寄生された者がいないか"スキャット"を吸ってケイシーとスタンがラリってしまうシーンから一転して寄生者が現れるシーンのテンポの変化は見事。一気に画面が緊張する。
 ストークリーが「これじゃまるで『ボディスナッチャー』よ。異星人が人間の身体を乗っ取るの」というと、ケイシーが「それだよストークリー。本当に異星人が襲ってきたんだ」。ストークリーが「待って、これは小説よ。図書館の本に書かれてるの」と返すとケイシーは「『シンドラーのリスト』だってそうだよ。本は本当の出来事を元に書かれているんだ」と食い下がる。「スピルバーグは宇宙人にあったのかも。いや、彼自身が宇宙人かも」そうか、スピルバーグは宇宙人だったか。なんとなく納得。いじめられっ子で周囲から疎外感を感じていたケイシーが最初にエイリアンという真相にたどり着くのは興味深い。
 ロバート・A・ハインラインの『人形使い』の名前も出てきて元SFオタクにはにんまりなシーンであった。
『ボディスナッチャー』やその原作の『盗まれた街』、『人形使い』などでは寄生された人間は悩みや苦しみから解放され、人と争う事もなく平和に暮らすことが出来るという。
 両作とも原作は共産主義批判の側面もあるのだが、実際に人間の精神がコントロールされて平和な世の中になったとして、人はそれで幸せなのだろうか。そういえば今日自宅の近くを"幸福がどうのこうの"党の街宣車が走り回っていたが皆が同じ宗教を信じて教祖の教えに従って平和になったとしてそれって幸せなのかとも思う。オレは幸せとは思わないけど。

 当時17歳のイライジャ・ウッドが小さい小さい。女の子と並んでも頭半分ぐらい小さい。さすが後に小人族のホビット族を演ずる事だけはある(あれは撮影に工夫をして小さく見せてるんだが)。
 いじめられっ子な上にいつも一眼レフを持ち歩いているちょっとオタクが入っている。家ではMacでインターネットも使っている。でも青春期だけあってベッドの下にポルノ雑誌も隠し持っている。世の東西でも少年のエロ雑誌の隠し場所は同じなのか。その隠し場所が母親にはきっちりばれてるところも同じ。

 アメフトコーチ役でロバート・パトリックが不気味な演技を見せてくれる。『ターミネーター2』で一躍有名になったはいいがその後低迷していたロバート・パトリックはこの作品で復帰したのではないだろうか。

 ティーンエイジ向けのSFホラーでかなり軽めの作り。自称大人な人には軽すぎるかもしれないが、意外な親玉の正体や、仲間内での自分たちの中ですでに誰かが寄生されているのではないかという疑心暗鬼、ちょっと目を話した隙に取り付かれているなどスリリングな展開で楽しませてくれる。仲が良いわけではなく、仕方なく手を組んだ仲間たちの個性的な顔ぶれも面白い。ホラーで大騒ぎになっているのにラストにはちゃんと恋人が出来たりして青春している。

B001P3POX4.jpg『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008) THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON 167分 アメリカ

監督:デヴィッド・フィンチャー 製作:キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル、セアン・チャフィン 原作:F・スコット・フィッツジェラルド 原案:エリック・ロス、ロビン・スウィコード 脚本:エリック・ロス 撮影:クラウディオ・ミランダ プロダクションデザイン:ドナルド・グレアム・バート 衣装デザイン:ジャクリーン・ウェスト 編集:カーク・バクスター、アンガス・ウォール 音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・フレミング、イライアス・コティーズ、ジュリア・オーモンド、エル・ファニング、タラジ・P・ヘンソン、フォーン・A・チェンバーズ、ジョーアンナ・セイラー、マハーシャラルハズバズ・アリ、ジャレッド・ハリス

 一人の男の生涯についての物語。ただ一つ普通と違うのは、その男が老人として生まれ時と共に若返っていったことだった。

 オレは長い時間を扱った映画は苦手である。ある人物の生涯を描いた映画なんてのは苦手だし、親子三代に渡って描かれた映画なんてのはもう聞くだけでうんざりだ。もちろん大河ドラマも苦手である。いや嫌いである。
 映画で描かれる時間は上映時間に近い方が良い。『真昼の決闘』のようなリアルタイム映画となるとさすがにちょっと極端だが、短時間がピシッと収まったのが好みだ。
 そんなだから『ベンジャミン・バトン』はほとんど興味がなかったのだが、一応デヴィッド・フィンチャーだし観ておくかと再生ボタンを押した。

 ブラッド・ピットは最初に書いたように老人として生まれ時と共に若返っていくという数奇な人生をたどった人物だが、これは別に普通に生まれて年を取っていく人間でも良かったのではないだろうか。
若返っていくという設定がそれほど上手く活用されているとは思えないのだが。
 外見は若くなっても内面は老人という点をもっと上手く使えなかったものか。
 人と知り合っても長くは続かずすぐに別れが来るという無常感を活かせなかったのか。
 結局、単に奇抜な設定にしかなっていない。

 ケイト・ブランシェットは途中で少し増長する点も含めて魅力的である。彼女は二十歳そこそこの若い時から老いた時まで特殊メイクの力を借りたとはいえ見事に演じきっている。魅力的だがベンジャミン・バトンがそこまで入れ込むほどの女とはちょっと思えない。ロシアでスパイをやっていた男の妻の方により魅力を感じる。
 逆にブラッド・ピットはどのシーンではブラッド・ピットに見えてしょうがない。この人は演技力はあるのだろうが、それ以上にブラッド・ピットであることが重要なのだろう。
 年を取った時の特殊メイクはあまり上出来ではない。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』レベルとあまり変わらないのではないだろうか。特殊メイクは手作業の芸術だからメイクアップアーティスト次第で出来が大きく変わる。

 お気に入りのキャラクターは船長。やはり海の男はイカすぜ。自分の身体をキャンバスにしたタトゥーアーティストって設定も良い。そんな海の男が海に死ぬ。
 第一次対戦終了の日からのアメリカの歴史についての映画でもある。オープニングにはセオドア・ルーズベルト大統領も出てくる。昨日の『ナイト ミュージアム』とはルーズベルト繋がりなのだ。
 娘が自分宛の手紙を読み始めるシーンは良かった。ベンジャミンと娘が初めて会うシーンも。でも会いに行っちゃ駄目だよな。認知症には驚いたが読めてしまうラストも感動的だ、ちょっと『タイタニック』入ってるけど。
 鬼才と言われたデヴィッド・フィンチャーとしてはしごくまともなヒューマンドラマ。彼らしかった「"もし"の偶然が重なってケイト・ブランシェットがタクシーにはねられてしまうシーンは面白かったが、作品のカラーから言えば浮いていた。個人的にはこの手の作品は苦手な方。167分はちょっと長い。

B000ZIZO80.jpg『ホステル2』(2007) HOSTEL: PART II 94分 アメリカ

監督:イーライ・ロス 製作:イーライ・ロス、マイク・フレイス、クリストファー・ブリッグス 製作総指揮:スコット・スピーゲル、ボアズ・イェーキン、クエンティン・タランティーノ 脚本:イーライ・ロス 撮影:ミラン・チャディマ 特殊メイク:グレゴリー・ニコテロ、ハワード・バーガー プロダクションデザイン:ロブ・ウィルソン・キング 衣装デザイン:スザンナ・プイスト 編集:ジョージ・フォルシー・Jr、ブラッド・E・ウィルハイト 音楽:ネイサン・バー
出演:ローレン・ジャーマン、ビジュー・フィリップス、ロジャー・バート、リチャード・バージ、ヴェラ・ヨルダノーヴァ、ヘザー・マタラッツォ、スターニスラフ・イワネフスキー、ジェイ・ヘルナンデス、ジョーダン・ラッド、エドウィジュ・フェネシュ、モニカ・マラコーワ

 自分の命が知らないところで売られてしまい、捕らえられて虐殺される『ホステル』シリーズ第二弾。

 ヨーロッパに留学中のアメリカ人女子大生3人組が、休暇でプラハに向かう。途中の列車で授業に来ていたモデルと出会いスロバキアのスパへと誘われる。列車の中で質の悪いイタリア人に絡まれてうんざりしていた彼女たちはその案に乗る事にした。
 こうしてモデルの甘言に乗せられてスロバキアにやってきた彼女たちを待っていたのは楽しい休暇ではなく、命の危機だった。

 前作では男の三人組が主役とむさ苦しかったが、今回は女子大生に変更されている。これは妥当な案だと思う。恐怖に怯えるのはやはり男よりも女の方が似合っている。うーむ、ちょっと変質者?
 今回は主人公側だけではなく、オークションで彼女たちを競り落とし、殺す権利を買った側の男たちについてもストーリーが裂かれている。
 二人組の男で、一方は乗り気だがもう片方はそちらに強引に誘われた形だ。しかし、実際に殺しの現場になるとあれだけ乗り気だった方は女の顔を回転ノコで削った事でびびってしまい殺しを投げ出してしまう。一方、消極的だった方は次第に興奮してきてついに殺しを決意する。人間の本性や多面性を象徴しているとも言える。
 この構成が、前作では被害者側一辺倒だったのに比べて二方向の視点からのマルチアングル的な物となっていて面白い。殺す側も金は持っていても普通の人間なのだ。回転ノコや包丁が人を殺すのではない。人間が人間を殺す。何の恨みも持っていない相手を、ただ楽しみのためだけに殺す。だから怖ろしい。
 残虐シーンは前作よりも抑えめ。それでもグロいので耐性のない人は注意。もっともそんな人はこの映画を観ないだろうが。

 冒頭の前作の主人公の末路は余分かと。あれだけ必死になって逃げ出したのに、あっけなく殺されては可哀想というものだ。だがあの組織の秘密を守るためにはこう描くしかないのか。
 前作の主人公に逃げられた反省か、今回の殺人ゲーム会場は厳重な壁とゲートに囲まれ、各部屋のドアも外からリモートコントロールでないと開けられないようにセキュリティがアップしている。どうやら街の人はここで何が行われているか知っているようだが、自分たちの利益にもなるのだろうか黙っているようだ。主人公を助けようと声をかけてくる青年がいるが、組織に見つかっても軽いリンチを受けたぐらいで殺されもせずにまた出てくる。その時にはもう彼女を助けるには手遅れだった。

 最後に一人生き残ったヒロインは意外な解決法で命が助かる。世の中、度胸と金だ。
 ラストは自分たちを悪夢に引きずり込んだモデルへの復讐。切り落とされたモデルの首でスロバキアのストリートチルドレンたちが無邪気にサッカーをするシーンが笑える。こういうグロさは好き。

 こういう殺人願望を映画で観ているうちはいいが、本当に人を殺したいと思っている人がいるとしたらヤバイヤバイ。映画で発散して現実の行動には移さないように。
 でも、スプラッター映画好きでそんな願望を持っている人というのは世間が思ってるよりはるかに少ないと思う。逆に実際に血を見たらビビってしまう人の方が多いんじゃないだろうか。そういうのが怖いからスプラッター映画を観るんであって、残虐描写が平気だったら観てもつまらないだろう。

B0026R9HR2.jpg『ホステル』(2005) HOSTEL 93分 アメリカ

監督:イーライ・ロス 製作:イーライ・ロス、クリス・ブリッグス、マイク・フレイス 製作総指揮:クエンティン・タランティーノ、スコット・スピーゲル、ボアズ・イェーキン 脚本:イーライ・ロス 撮影:ミラン・チャディマ 特殊メイク:グレゴリー・ニコテロ、ハワード・バーガー プロダクションデザイン:フランコ=ジャコモ・カルボーネ 衣装デザイン:フランコ=ジャコモ・カルボーネ 編集:ジョージ・フォルシー・Jr 音楽:ネイサン・バー
出演:ジェイ・ヘルナンデス、デレク・リチャードソン、エイゾール・グジョンソン、バルバラ・ネデルヤコーヴァ、ヤナ・カデラブコーヴァ、ヤン・ヴラサーク、リック・ホフマン、三池崇史、ジェニファー・リム

 バカな若者たちが遊びに行って女といちゃついたり酒や麻薬をやっているうちに殺人鬼に殺されるというのは田舎や森でのキャンプが多かった。『13日の金曜日』シリーズや『悪魔のいけにえ』などである。
 イーライ・ロス監督の『キャビン・フィーバー』(2002)も森の中のキャビンを舞台にしている。この『キャビン・フィーバー』を気に入ったクエンティン・タランティーノが製作総指揮を買って出て作られたのがこの『ホステル』だ。
『ホステル』がこれまでの作品と違うのは、東欧のスロバキアとはいえ都会で若者たちが事件に巻き込まれるという事。そして殺人鬼が怪物のような連中ではなくて、実社会で成功している普通の人々だという事。

 バックパッカーの若者三人がオランダのアムステルダムで女とマリファナを楽しんでいた。そこで知り合った青年からスロバキアでは良い女が抱き放題だと聞きさっそくやって来る。一軒のホステルに泊まった三人はルームメイトの女性たちと仲良くなりさっそくイチャイチャ。ところが翌日、一人が帰ってこない。さらに翌日にはもう一人も帰ってこない。
 これはどういうことかと主人公は女性を問い詰めて、“芸術家の展覧会”と彼女が呼ぶアジトへと連れて行かせる。しかし、そこは行ってはいけない場所だった。

 とにかく“痛い”残酷描写のオンパレード。足の指を切ったり、両足のアキレス腱を切ったり。主人公はチェーンソーで左手の小指と薬指を切断されてしまう。
 それらをやるのが、金で彼らの命を買った金持ちの連中。人間、金と余分な時間を持つとろくなことをしない見本である。
『ハードターゲット』(1993)での金持ちによる人間狩りは理解できるが、生体人体解剖は理解できん。というかしたくない。こいつらは何でこんなことをしたがるんだ?
 ジェイソンがナタで斬りつけてきたり、レザーフェイスがチェーンソーで襲いかかってくるのは良いんだ。あれは芸だから。ホラー映画は好きだ。でもこの作品でのスプラッター描写は趣味じゃないね。
 日本人女性が登場して、拷問されたあげくにお岩さんメイクで右目がビョーンと飛び出してしまう。彼女は主人公に助け出されるが、駅でガラスに映った自分の素顔を見て絶望のあまり走ってきた列車に飛び込んでしまう。飛び散る血、血、血。いやだよオレもう。でもその特殊メイクの下手さには笑ってしまったが。
 全体的に閉鎖的で東欧のどんよりとした空の下スカッとしたところがない。主人公の脱出劇と復讐が唯一の救いだ。主人公たちを組織に売った女性が主人公が運転する車とそれを追ってくる組織の車にはねられてベチョっとつぶれるシーンはスカッとしたかも。
 貧しいスロバキアの女性が豊かなアメリカの青年の命を売ってしまうというのは皮肉が効いている。
 言葉の通じない異国の街で自分の命が売られ殺されてしまう。都市伝説で本当にありそうな話ではある。田舎への一人旅は気をつけなくてはいけないが、都会での旅も気をつけなくてはいけないということか。
 唐突に出てきて、意味があるんだかないんだかなことを言って車で去る東洋人が三池崇史。タランティーノとの縁で出たんだろう。

B000NN766A.jpg『プラン9・フロム・アウター・スペース』(1959) PLAN 9 FROM OUTER SPACE 78分 アメリカ

監督:エドワード・D・ウッド・Jr(エド・ウッド) 製作:エドワード・D・ウッド・Jr 原案:エドワード・D・ウッド・Jr 脚本:エドワード・D・ウッド・Jr 撮影:ウィリアム・C・トンプソン 音楽:ゴードン・ザーラー
出演:グレゴリー・ウォルコット、トム・キーン、デューク・ムーア、モナ・マッキノン、ダドリー・マンラヴ、ジョアンナ・リー、トー・ジョンソン、ライル・タルボット、ベラ・ルゴシ、ヴァンパイラ、クリスウェル、ジョン・ブリッケンリッジ、トム・メイソン、トム・ニー

 体調が悪かったせいもあるが、何度も強い眠気に襲われた。いや、体調のせいではなく映画のせいかもしれない。
 ストーリーはいたって単純。地球人がこのまま科学を進めていってついには宇宙を破壊する太陽爆弾を作ってしまうのではないかと危惧した宇宙人が、墓場の死体を甦らせゾンビにして地球を侵略してしまおうという物語。
 この単純なストーリーがまったく統合性が取れておらず、理解に苦しむ出来となっている。無駄な登場人物が多く、ころころと舞台が変わるためそれらを把握するのに一苦労。しかも把握してもあまり意味がない。
 生き返らせるゾンビも3体だけで迫力に欠ける。低予算映画だからしょうがないんだろうが。
 最低映画監督として有名なエド・ウッドことエドワード・D・ウッド・Jrだけなことはある最低SF映画である。糸で吊っただけのUFO、金のかかっていないセット、なんといっても宇宙人のUFO内の仕切りがカーテン。カーテンってこたぁないだろ。
 俳優も素人に近い人ばかりで、セリフ回しは棒読みでただ突っ立ってるだけ。

 でも、この作品より遙かに大きな予算を注ぎ込み作られたクズ映画もあるわけだ。
 とりあえず、割とへっぽこ映画は好きな方なんだが、こいつはきつかった。ここでは映画の良いところをなるべく探すようにしているんだけど、こいつは見つからなかった!ある意味貴重。

B0019CEE5U.jpg『フィースト』(2005) FEAST 86分 アメリカ

監督:ジョン・ギャラガー 製作総指揮:ベン・アフレック、マット・デイモン、クリス・ムーア、ウェス・クレイヴン 脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン 撮影:トーマス・L・キャラウェイ 音楽:スティーヴン・エドワーズ
出演:バルサザール・ゲティ、ヘンリー・ロリンズ、ナヴィ・ラワット、ジュダ・フリードランダー、ジョシュ・ザッカーマン、ジェイソン・ミューズ、ジェニー・ウェイド、クリスタ・アレン、クルー・ギャラガー、エリック・デイン、デュエイン・ウィテカー、タイラー・パトリック・ジョーンズ

 テキサスのバーにショットガンを持った血まみれの一人の男が飛び込んでくる。怪物の頭を抱えて何かが襲ってくると皆に警告し、バーの封鎖を指示する。電話は壊され携帯電話は都合良く谷間なため通じず、数匹のモンスターに囲まれて一人また一人とそのモンスターの餌食になっていく。
 果たして生き残るのは誰か。命を賭けたサバイバルゲームが始まった。

 マット・デイモンとベン・アフレックが設立したライブ・プラネット社がプロデュースする人気リアリティショー「プロジェクト・ブリーンライト」。一般公募から選ばれた脚本が、映画として完成するまでをドキュメンタリーとして放送するこの人気番組から飛び出したのが本作「フィースト」だそうだ。TVの企画として作られたわけである。
 だから製作総指揮に二人の名前がある。ついでにウェス・クレイヴンの名もあるから豪華ではないか。
 とにかくこの作品は観ている人を裏切る。最初に乗り込んできた男は、「俺はお前達の救世主だ」と主人公的発言をしておきながら次の瞬間にあっけなくモンスターに食われてしまうし、少年が出てくるが子供は無事というホラー映画の法則を破ってこの子もあっけなく食われてしまう。他には車椅子の身障者がいるが、身障者も助かるというのがホラー映画の法則だがこれも分からなくなってきた。
 なにしろオレの知らない役者ばかりなので誰が生き残るのかさっぱり分からない。バーテン、ボス、ボスの愛人、愛人の子、ビジネスマン、ウェイトレス、ビール運び屋、車椅子の男、遊び人、酒場強盗の女などなど特徴のあるキャラクターがいっぱいだ。誰がいつ襲われるかさっぱり分からない。だから酒場の二階や地下室でドアを開ける度にも「襲われるんじゃないかな」とドキドキする。ただ、定番を無視してメチャメチャをやっているだけという見方も出来る。どこまでが計算か、どこまでが単なる天然なのかが気になるところだ。
 加えてやたら下品。モンスターが緑色のゲロを吐いて登場人物の一人が蛆の入ったそのゲロまみれになる。その男は後で左目を視神経ごとモンスターにくりぬかれて左目があった穴に蛆が繁殖する。子供を殺されたモンスターがすかさず表で交尾をして新しい子供を産んでしまったり、モンスターのペニスを切り落としたあげくに踏みつぶしたりとグロ描写がてんこ盛り。
 死体を人間爆弾にしようとして、モンスターに食わせて爆発させる寸前にまだ生きていると気づいても「こいつは死体だ」とそのまま爆破してしまう。
 殺され方も胸を腕で貫かれる。寄ってたかって食われる。頭を押しつぶされる。とグロの次ぐグロ。グロ注意。
 酒場でのモンスターとの戦いとなると『フロム・ダスク・ティル・ドーン』が思い出されるが、下品だと思ったあれが上品に思えてくるほどに下品。
 低予算映画のせいか舞台はほとんど酒場内のみ(数分だけ他の場所の描写がある)と徹底している。モンスターはCGなどではなくとうぜんアナログ。つまりモンスタースーツ。出来はあまり良くなくてやたら粘液でネチャネチャしている。スーツの粗を見せないためかモンスターのアップはカットが短く手持ちカメラで振り回すのでよく見えない。
 所々にギャグが入っていて、ビジネスマンが襲われた時にズボンだけ持って行かれてしま。最後の対決の最中にいきなりバーテンが心臓マヒを起こす。みんなで逃げるためにトラックを取りに行った娘が自分だけで逃げて行ってしまうとか、かなりコテコテ。ポップコーンでも食べながら友達同士で観ていたら意外と笑えるネタかも知れないが、一人で見ている分にはちょっと微妙。
 途中でいつの間にかいなくなっていた人物は……

B000B56P1W.jpg『ブレイド3』(2004) BLADE: TRINITY 114分 アメリカ

監督:デヴィッド・S・ゴイヤー 製作:デヴィッド・S・ゴイヤー、リン・ハリス、ウェズリー・スナイプス 製作総指揮:アヴィ・アラッド、トビー・エメリッヒ、スタン・リー キャラクター創造:マーヴ・ウォルフマン、ジーン・コーラン 脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー 撮影:ガブリエル・ベリスタイン 美術:クリス・ゴラック 衣装:ローラ・ジーン・シャノン 音楽:ラミン・ジャヴァディ、RZA
出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、ドミニク・パーセル、ジェシカ・ビール、ライアン・レイノルズ、パーカー・ポージー、ジョン・マイケル・ヒギンズ、トリプル・H グリムウッド、ジェームズ・レマー、ナターシャ・リオン、マーク・ベリー、カラム・キース・レニー、ポール・アンソニー、フランソワーズ・イップ、マイケル・アンソニー・ローリンズ、エリック・ボゴシアン

 ブレイドはバンパイア達の陰謀にはめられ、バンパイアの僕である人間を殺したところをビデオで撮影され殺人犯として指名手配されてしまう。そしてFBIの手に落ち、警察から取り調べを受けているところを他のバンパイア・ハンター集団ナイト・ストーカーズによって助け出される。
 その頃、バンパイア達はシリア高原にある遺跡である発見をしていた。それは原初のバンパイア・ドラキュラの発見である。完全なるバンパイアDNAを持つドラキュラは日光も平気だ。そのDNAを利用してデイ・ウォーカーになろうというのである。
 それを防ぐべくナイト・ストーカーズはバンパイアを殺すウイルスを開発していた。ただし好き放題に進化してきたバンパイアには効果がまちまちで安定しない。そこでこちらも完全なるバンパイアDNAであるドラキュラのDNAを必要としていた。

 これまでの2作で脚本を担当していたデヴィッド・S・ゴイヤーが初監督を務める事となった。脚本出身の監督であるパターンが話を展開するのに夢中になってしまって、それ以外がおろそかになるというのがある。デヴィッド・S・ゴイヤーの場合もそうだった。
 ブレイドと言えばアクション。アクションと言えばブレイドなのだが、そのアクションシーンがどうにもぱっとしない。決して悪い訳じゃないんだけど前2作と比べると物足りない。終盤にアクションの連続があるのだが、とりたてて面白いアイディアがあるわけではなく、優れたカット割りがあるわけではなく、スピード感もない。はっきり言って平凡で眠気を覚えてしまった。
 突然死んでしまうウィスラーに代わって現れる仲間がナイト・ストーカーズ。5人組が中心で部外メンバーもいる様子だ。
 谷啓風の発明家が色々な武器を作っていて、紫外線弾などを発射する電子銃や紫外線の弦が張られた弓など色々なアイテムを作っている。ただし、そのほとんどは活躍しない。というか、ナイト・ストーカーズ自体がドラキュラに襲われてほぼ壊滅してしまいあまり役に立っていないのが実情。やられ役だな、つまるところは。
 それにしても他にバンパイア・ハンターがいたのならばもっとはやく手を組んで戦っていれば良かったのに。
『ブレイド4』とか出来たらまたもや平気な顔でウィスラーは甦ってるんじゃないだろうな。
 ドラキュラに魅力がないのも減点。発見され目覚めのシーンでは期待したのだが、人間形態の時はそこらの兄ちゃんって感じで全然迫力ないし、モンスター形態になってからは赤鬼の口がプレデターになっている感じでこれまた迫力がない。2作目のリーパーズの方が怖かったんじゃ。バンパイアショップの店員を男は叩きのめして女の血を吸う辺りではまだ良かったのだが。
 史上最初のバンパイアで史上最強のはずが中ボス程度って感じでこれで終わり?とあっけなくなってしまう。弱いのだ、弱すぎるのだ。他の映画のドラキュラの方がずっと怖かったり魅力的だったりするのはなんとかして欲しい。
 捕まえてきたホームレスを真空パック状態にして栄養を送り生かしておいて血を搾り取る血液工場のアイディアは面白かった。食事の度に人間一人を犠牲にしていたらあっと言う間に人間不足になってしまうし、世間にも怪しまれる。バンパイアは警察なども支配しているという設定だから社会的問題にはなかなかならないだろうが、マスコミ関係はどれぐらい抑えているのだろうか。
 最後の戦いでナイト・ストーカーズの生き残り二人と組むが、一人目のハンニバル・キングは一人のバンパイアとプロレスをやっているばかり。もう一人のアビゲイルは実はウィスラーの娘ときたから驚いた。ウィスラーは家族を殺された復讐でバンパイア・ハンターになったんじゃなかったっけ。実は後に別の女性との間に生まれた娘らしい。あんなヒゲ面のクセしてやるもんだねウィスラー。アビゲイルはアーチェリーでバンパイアをバンバン撃ち殺していく。打っても打っても矢が無くならない不思議。
 思うに、ブレイドは一人で戦うのが格好良かったんで、下手に仲間を付けたのがいけなかったんじゃないだろうか。人間でもバンパイアでもないブレイドの孤独さが感じられなくなってしまった。
 バンパイア・ハンターが世間からは単なる人殺しにしか見えず、バンパイアがと言ってもイカれた人間としか思われないという序盤は面白かったのだが、それは最初だけで後々まで活かされなかったのも残念。これまたブレイドの孤独感を増すのに一役買ったと思うのだが。

B00007FVY2.jpg『ブレイド2』(2002) BLADE II 118分 アメリカ

監督:ギレルモ・デル・トロ 製作:マイケル・デ・ルカ、ピーター・フランクフルト、ウェズリー・スナイプス 製作総指揮:アヴィ・アラッド、デヴィッド・S・ゴイヤー、リン・ハリス、スタン・リー、パトリック・J・パーマー キャラクター創造:マーヴ・ウォルフマン、ジーン・コーラン 脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー 撮影:ガブリエル・ベリスタイン 音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、レオノア・バレラ、ルーク・ゴス、ロン・パールマン、トーマス・クレッチマン、ノーマン・リーダス、マリット・ヴェラ・キール、ドニー・イェン、マット・シュルツ、ダニー・ジョン=ジュールズ、ダズ・クロウフォード

 突然変異で生まれた新種のバンパイアであるリーパーズが各地で暴れ回り始めた。
 人間だけではなくバンパイアの血も吸うこのリーパーズに噛まれた者はかならずリーパーズになりねずみ算式に数を増やしている。
 これを脅威と見たバンパイア王は、ブレイドに使いを出し今だけ共に手を取りリーパーズ撲滅に協力してくれと申し出てくる。ブレイドは本来はブレイド抹殺部隊として訓練された一団と共にリーパーズ退治を始める。しかし、リーパーズには銀の銃弾もニンニクエキスも効かず、効力があるのは紫外線だけだった。そのため彼らは苦戦する。
 戦いの中で次第に分かってくるリーパーズの真相。そしてバンパイア王の企みとは。

 シリーズ第二弾の今作は監督がギレルモ・デル・トロ。とはいえ彼の特色が一番薄い作品である。
 まず驚くのは前作の終盤でバンパイアに襲われて拳銃で自害したはずのウィスラーが生きていた事。バンパイアに捕らえられていてしかもバンパイアにされていたのだ。それをブレイドが2年がかりで見つけて助け出しレトロウイルスの注射を一本打ったところ、バンパイアウイルスを食い尽くして人間に戻ってしまう。ウィスラーすご!元のアメコミであった設定なのかね。脇役を殺してみたはいいものの、読者からの反響で苦情が多くて仕方なく次回から復活させたとか。アメコミは割と死んだ人が生き返るのが普通らしいからなぁ。
 出演も兼ねて香港のアクションスターであるドニー・イェンがアクションコーディネーターを務めている。二役は忙しかったのか、役者としてのドニーはほとんど活躍せずにリーパーズとなった仲間に血を吸われてしまう。アクションコーディネーターとしては存分に活躍している。
 前作ではアクションの一つ一つで間が開いてしまい間が悪かったが、今作ではアクションが上手く繋がっていて一つの連続した動きになっている。前作では武器を使うシーンが多かったが今回はリーパーズに武器はほとんど通用しないので肉体でのアクション中心になっている。ウェズリー・スナイプスのマーシャルアーツが燃えに燃える。今回はプロレス系の技まで繰り出す。さらに一々格好つける。手裏剣風カッターを投げて戻ってきたのを受け止めては格好つける。バンパイアに刺す銀の杭を両手に掲げては格好つける。お前はどれだけ格好つけたいんだと。
 こうしてみるとやはりドニー・イェンが三段蹴り以外ではほとんど活躍しなかったのが残念だ。最後まで生かしておいてブレイドとの一対一での対決などぜひとも見てみたかった。ともあれカットも上手く割られていて充実している。アクションに次ぐアクションで今回の目玉はアクションだ。ブレイドが空中を回転して着地したり、リーパーズが壁や天井を這ったり、剣でバンパイアを叩き斬る時などとCGもかなり活用されている。
 バンパイア王が完全なバンパイアを作ろうと遺伝子操作で作り出したバンパイア胎児が入った多数のカプセルのシーンは『デビルズ・バックボーン』を思わせる映像でギレルモ・デル・トロぽかった。そういえば下水道で大半のシーンが繰り広げられたりリーパーズの三つにわれる下あごもどこか『ミミック』の巨大化した昆虫の擬態シーンを思い出させる。細かいところまで美術が凝っている。なんだ、特色が薄いと言ってもやっぱりギレルモ・デル・トロしてるじゃないか。
 個性にあふれたバンパイアチームがあっけなく全滅状態になってしまったが、ストーリーの展開上仕方ないのだろう。その中でロン・パールマンは終盤まで残って手を組んでいたはずのブレイドを裏切る。いつ見ても個性的というか変な顔だ。
 ラストのリーパーズに噛まれたバンパイア王の娘が「リーパーズにはなりたくない。太陽が見たい」とブレイドに夜明けが見えるところに連れて行ってもらい、朝日が昇ってくると共に塵になっていくシーンはバンパイア映画史に残る美しさだろう。
 敵に捕らえられ血を抜き取られ弱りに弱ったブレイドが血の泉に飛び込む。ゴクゴクゴクと大量の血を飲み干すブレイド。そしてふっか?つ!前作でも血が足りなくてヒロインの血を飲んで復活していたがブレイドに血はポパイのホウレン草のようなものかね。前作では血を飲む事への怖れ・嫌悪みたいな物があったけど今作でのブレイドは躊躇せずに飲む。前作ではあったアメコミ主人公の悩んだり苦しんだりがなかったなそういえば。
 最後の戦いの前にウィスラーからサングラスを投げ渡してもらうところも良い。やっぱブレイドはサングラスをかけてなくちゃ。

B000066IP7.jpg『ブレイド』(1998) BLADE 121分 アメリカ

監督:スティーヴン・ノリントン 製作:ピーター・フランクフルト、ウェズリー・スナイプス、ロバート・エンゲルマン 製作総指揮:アヴィ・アラッド、ジョセフ・カラマリ、マイケル・デ・ルカ、リン・ハリス、スタン・リー 原作:マーヴ・ウォルフマン、ジーン・コーラン 脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー 撮影:テオ・ヴァン・デ・サンデ 編集:ポール・ルベル 音楽:マーク・アイシャム
出演:ウェズリー・スナイプス、スティーヴン・ドーフ、クリス・クリストファーソン、ウンブッシュ・ライト、ドナル・ローグ、ウド・キア、アーリー・ジョヴァー、トレイシー・ローズ、ケヴィン・パトリック・ウォールズ、ティム・ギニー、サナ・レイサン、ケニー・ジョンソン

 臨月の母体にいる時に母親がバンパイアに襲われ、病院で手当てを受けるが母親は死亡し赤ん坊は出産されて生き残った。しかし遺伝子が変化を起こしておりバンパイアと人間のハーフとなってしまった。能力はバンパイアだが日光もニンニクも平気で年の取り方は人間と同じなのだ。バンパイアなのに日差しの中を歩けるのでデイ・ウォーカーともバンパイア側からは呼ばれている。成長した彼はブレイドと名乗り、家族をバンパイアに惨殺された老人ウィスラーの手助けの元、バンパイア・ハンターとして活躍している。
 ある日、バンパイアが開いているパーティー会場に乗り込み片っ端からバンパイアをやっつけるが、とどめを刺し損ねてしまったバンパイアが病院に担ぎ込まれ血液学を専門とする女医カレンに噛みついてしまう。このままでは彼女もバンパイアになってしまう。ブレイドはカレンを助ける。
 バンパイアには生まれつきバンパイアの純血種とバンパイアに噛まれてバンパイアになった雑種がいる。このところ評議会では雑種のフロストというバンパイアが力を付けていた。フロストはバンパイアの神マグラを復活させようとしている。もしもそれが実現したら世界はバンパイアの物となってしまう。ブレイドはそれを防ぐ事が出来るのだろうか。

 派手なアクションとスタイリッシュな映像が特徴のバンパイア・ハンター物。昔はバンパイア・ハンターといえば木の杭と十字架を片手にウロウロしていたものだが、今の時代それではやっていけない。
 この作品でのバンパイアには十字架は通用しない。ニンニクと日光と杭は通用する。それから銀も有効である。ニンニクエキスを仕込んだ銀の銃弾でブレイドがバンパイアを撃つと身体が一瞬で燃え上がって骸骨になり最後には塵になってしまう。杭で刺したりした場合もそう。このVFXがなかなか出来が良くタイミングも良いのでついつい見入ってしまう。
 格好つけすぎなウェズリー・スナイプスだが、この作品では本当に格好いい。得意のマーシャルアーツでバンパイアを次々と倒していくシーンはテンポが良い。ウェズリー・スナイプスのマーシャルアーツは映画の役作りのために学んだのではなくて、個人的な趣味として習得したのではないだろうかと思っている。
 ただしアクションのカット割としては単調で工夫に欠ける。この点では、1年後に公開された『マトリックス』(1999)の方が香港からアクション・コーディネーターを呼んできただけあって上ではないだろうか。
 『マトリックス』と言えば、この作品でも銃弾避けが登場する。『マトリックス』の銃弾避けは喝采を浴びたがこちらの方が先である。それを言ったら『レモ/第1の挑戦』(1985)の方がずっと先だが。色々やっているのだが今一つメジャーになれずどこかくすぶっている印象がある作品だ。
 製作総指揮にスタン・リーの名前がある事からも分かるように、これにはマーベル社のアメコミが原作としてある。ブレイドが人間でもありバンパイアでもある事に悩んでいたり、時折どうしても血を吸いたくなるのを血清で抑えていたりして、それに苦しんでいるのはアメコミ原作だからだろうか。アメコミのヒーローと来たらとにかく悩む、やたら悩む。
 ウィスラーは武器担当で、ブレイドの使う日本刀ぽい刀、フルオート乱射も出来る大型拳銃(サブマシンガンと言った方が正解?)、シンプルに紫外線ライトなどを作り出す。どの武器も使われるシーンは魅力的で、マーシャルアーツだけではなくブレイドの戦う大きな手段となっている。
 そしてブレイドと並ぶ主役とも言えるのがサングラス。ブレイドはサングラスをかけて初めてブレイドとして完成するのだ。サングラスを外すと微妙につぶらな瞳が妙に可愛い。終盤近くで敵からサングラスを取り返すシーンはスタイリッシュで実にクールだ。
 そういえば黒人の吸血鬼が登場する映画『吸血鬼ブラキュラ』ってのがあったよな。
 ところで、バンパイアのパーティーで卑猥な日本語の歌を歌っているミニスカートの女の子バンドって誰?流ちょうな日本語なので日本人なんだろうけど音楽関係はさっぱり分からん。
 日本語と言えば、エンディングの最中にも意味の分からない日本語が入るがありゃ何だ?多分雰囲気作りで深い意味はないんだろうけど。
 ついでにトレイシー・ローズがどこに出てきたのか気づかなかったので気になる。

B0023R2XX0.jpg『ヘルライド』(2008) HELL RIDE 84分 アメリカ

監督:ラリー・ビショップ 製作:ラリー・ビショップ、マイケル・スタインバーグ、シャナ・スタイン 製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン、クエンティン・タランティーノ 脚本:ラリー・ビショップ 撮影:スコット・キーヴァン プロダクションデザイン:ティム・グライムス 衣装デザイン:アリエラ・ウォルド=コーヘイン 編集:ウィリアム・イェー、ブレイク・ウェスト 音楽:ダニエル・ルッピ 音楽監修:メアリー・ラモス
出演:ラリー・ビショップ、マイケル・マドセン、エリック・バルフォー、ヴィニー・ジョーンズ、レオノア・バレラ、ローラ・カユーテ、ジュリア・ジョーンズ、デヴィッド・キャラダイン、デニス・ホッパー

 話しはあってなきがごとし。アメリカの暴走族ヴィクターズとSIX・SIX・SIXが互いにアメリカンバイクを乗り回しながら殺し合うという頭の悪い映画。この頭の悪さが多少面白い。
 突然36年前に回想シーンが飛んだと思ったら、あっというまに36年後に飛ぶ。ストーリーは支離滅裂。何十年も経ってからいきなり仇討ちを始めるのもわけ分からないし。
 監督・製作おまけに主演のラリー・ビショップはなにかにつけ格好つけている俺映画。
 そこに相変わらず渋決め演技のマイケル・マドセンやちょっと落ち着いたデニス・ホッパーやデヴィッド・キャラダインなどのゲストが絡む。

 何かというとダラダラとビールを飲んで、女を抱き、ヤクをやって、バイクを乗り回す。こいつらどうやって生計を立てているんだ?やはり犯罪か。SIX・SIX・SIXのアジトを襲撃した後にヤクを盗んでたもんな。言ってみれば反社会的存在だ。
 30どころか40も50も過ぎていそうなオヤジたちが定職にも就かずに好き勝手なことをしている映画と思ってもらえばいい。これに興味を持てるか持てないかで評価が決まる。オレは持てなかった。
 これといって派手だったり面白いアクションもない。役者にもオレには魅力がない。
 大昔にロジャー・コーマンらが作りまくったバイカー映画のオマージュとしてクエンティン・タランティーノがラリー・ビショップが手を組んだグラインドハウス映画なのだろうが、オリジナルを観ていないし興味がないのでどうしようもない。
 デニス・ホッパーが出ているからと言って『イージー・ライダー』になれるわけではない。デニス・ホッパーが乗っているのがサイドカーなのが少し寂しい。もう普通の二輪は無理か。

B001WBXL2A.jpg『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008) HELLBOY II: THE GOLDEN ARMY 119分 アメリカ

監督:ギレルモ・デル・トロ 製作:ローレンス・ゴードン、マイク・リチャードソン、ロイド・レヴィン 製作総指揮:クリス・シムズ、マイク・ミニョーラ 原作:マイク・ミニョーラ 原案:マイク・ミニョーラ、ギレルモ・デル・トロ 脚本:ギレルモ・デル・トロ 撮影:ギレルモ・ナヴァロ クリーチャーデザイン:マイク・エリザルド プロダクションデザイン:スティーヴン・スコット 衣装デザイン:サミー・シェルドン 編集:ベルナ・ビラプラーナ 音楽:ダニー・エルフマン 特殊メイクデザイン:マイク・エリザルド
出演:ロン・パールマン、セルマ・ブレア、ダグ・ジョーンズ、ルーク・ゴス、アンナ・ウォルトン、ジョン・アレクサンダー、ジェームズ・ドッド、ブライアン・スティール、ロイ・ドートリス、モンツェ・リーベ、ジェフリー・タンバー、ジョン・ハート、声の出演:セス・マクファーレン

 とにかく魅力的なクリーチャーたちに大満足。考えてみると背景キャラはともかく主要登場人物に人間が少ないこと少ないこと。
 マンハッタン橋下のトロール市場は人間などどこを見渡してもいない、まさにファンタジーの世界。異形の姿をしたヘルボーイたちもここではすっかり背景に溶け込んでごく普通のキャラになってしまう。
 秘密の地下都市への入口を捜していると、そこら辺の巨石がゴゴゴゴゴォと動き出して、実は石の巨人で入り口を隠していたなんてちょっとしたところにも細かいアイディアが入っている。画面の隅々まで宝探しのような映画だ。

 ストーリーはちょっと『ロード・オブ・ザ・リング』が入っていて、その昔、人間が森を荒らし始めエルフたちファンタジー一族と戦いが始まった。このシーンはリアルな人物ではなくいかにも昔のおとぎ話というようにパペットを使って語られる。好戦的な人間に押されたエルフはあるゴブリン職人の提案に乗って黄金の軍隊を作った。70体が70隊いるというから合計4900体の黄金兵士は人間を蹴散らしたが、そのあまりの威力の凄さに怖れたエルフ王は人間と和解して黄金の軍隊を指揮する黄金の冠を三分割して、二つをエルフが、一つを人間が持つことで封印したという。
 現在になって、森を潰してショッピングセンターを作っている人間の放漫さに怒ったエルフの王子が黄金の軍隊を復活させるべく冠を集め始める。それをいかにヘルボーイたちが防ぐかという話し。どうでもいいけどエルフの王子は『デトロイト・メタル・シティ』のクラウザーさんに似ている。
 森林破壊に腹を立てているだけあって、王子の手先には『もののけ姫』の巨大化したシシ神さまのダイダラボッチの様な緑の巨人も出てくる。大都会の中での戦いで、ヘルボーイの銃弾に倒れた緑の巨人は辺りに草木を生やしながら死んでいく。頭部が花になって白い物をまき散らすがあれは種だろうか。
 最初の見せ場はトンボぐらいの大きさの"歯の妖精"との戦い。なんだ可愛いもんじゃないかと思っていると、ガブリと噛まれる。それが大群でやって来るからたまったもんじゃない。"歯の妖精"という意味も歯を最初に食べてしまうからだとか。担当官の一人が食われて骸骨になってしまったりで直接的なグロテスク描写が登場するのでこれからどうなるのだろうかとちょっと不安になったが、そういうのはここだけだった。

 VFXばりばりのアクションシーンも良いが、ヘルボーイとエルフのお姫様に惚れてしまった半魚人のエイブがCDのラブソング集を聴きながらビールを飲んで歌うシーンなんか好きだなぁ。
 ギレルモ・デル・トロならではの『パンズ・ラビリンス』でも見せたダークファンタジーな映像美は健在で、美術が好きな人はそれを観るだけでも楽しめるだろう。クリーチャーはちょっとグロテスクだけど不思議と魅力的で、目のない死の天使など彫刻にして(フィギアじゃ駄目)持っていたい。
 ラストは黄金軍団の保管庫でのヘルボーイとエルフの王子との戦い。エルフの王子はついに完成した冠を被り「私が黄金軍団を指揮するのに意義のある者はいるか?」と言う。
 そしていくつもの金色の歯車の上で戦いを始める。「意義のある者は」に歯車って『ルパン三世カリオストロの城』みたいで実に楽しい。男の子や男の子だったことのある人はこれを観るとワクワクしてしまうだろう。
 ついに動き出した黄金の兵士は確かに金色。でもデザインがロボダッチ(古すぎ)みたいで胴体が丸すぎ。もうちょっとシャープで格好良くしても良かったと思うんだけど。黄金の戦士というぐらいだから黄金戦士ゴールドライタンぐらいに直線オンリーとかさ。ギレルモ・デル・トロ的にはあれがベストなんだろう。ヘルボーイの拳銃で壊れるんで「なんだ昔はすごかったかも知れないけど、今の武器相手なら大したことないじゃん」と思っていたら自動修復機能が付いていた。歯車が勝手に組み合わさって部品を運んだりして勝手に修理してしまう。これは無敵だ。この無敵の黄金の軍団相手に勝つ方法はあるのか?

 お姫様の死に途中で「僕には涙腺がありませんからね」と言っていたエイブが一筋の涙を流しているのが記憶に残る。

 相変わらず悪ガキのヘルボーイだけど、パパになるって大丈夫?しかも双子。(この双子は同じく双子で悲劇的な死を遂げたエルフの王子とお姫様の生まれ変わりだったりして、なんて想像してみたり)

B000ZFTNJ4.jpg『フレンチ・コネクション2』(1975) FRENCH CONNECTION II 119分 アメリカ

監督:ジョン・フランケンハイマー 製作:ロバート・L・ローゼン 原作:ロバート・ディロン、ローリー・ディロン 脚本:アレクサンダー・ジェイコブス、ロバート・ディロン、ローリー・ディロン 撮影:クロード・ルノワール 音楽:ドン・エリス
出演:ジーン・ハックマン、フェルナンド・レイ、ベルナール・フレッソン、ジャン=ピエール・カスタルディ、キャスリーン・ネスビット、フィリップ・レオタール、シャルル・ミロ、エド・ローター、アンドレ・ペンヴルン

 前作のラストで取り逃がしたフランス麻薬組織のボス・シャルニエを追ってジーン・ハックマンが敵の本拠地マルセイユを訪れる。しかしジーン・ハックマンには知らされていなかったが、上層部はシャルニエをあぶり出すためのおとりとして送り込んだのだ。
 執拗にシャルニエを探し出そうとするジーン・ハックマンに手を焼いたシャルニエは、彼を誘拐するとどこまで知っているかを聞き出すためにヘロイン中毒にしてしまう。

 敵組織から警察前に放り出され、麻薬中毒から立ち直ろうとするジーン・ハックマンの姿がなんともドラマチック。狭い独房でハックマンが苦しんでいるだけなのだが、それだけでドラマを構築するのはさすがジョン・フランケンハイマー。
 独房の中でマルセイユ警察のバルテルミーとあれこれ会話をして気を紛らわす。その中で、かつてヤンキースのテストを受けて受かったという異色の経歴が明らかになる。「左(利き)の男」をバルテルミーが「共産主義者」と勘違いするギャグは笑った。
 実際の禁断症状はもっと重いのだろうし、そう簡単にヘロイン中毒が治るとは思えないのだがそこら辺はハックマンの執念とフィクションと言うことで。後のシーンでヘロインの入ったビニールの小袋を見つけて、誰もいないからばれないのに、ちぎって捨てるところは凄みがある。
 そしてヤク中を抜けきると敵のアジトだったホテルに乗り込んでガソリンを撒いて火を付ける驚きの行動に。刑事の枠を越えている。一般住民も住んでたんで、さすがにやりすぎ。

 シャルニエを走って追いかけるハックマンは、前作のカーチェイス以上に疾走感がある。シャルニエは路面バスに乗ってしまうが、それを走って追いかける。やはり刑事物は走るに限る。
 ラストの麻薬組織との銃撃戦も、当時としては派手な仕上がりだ。エンターテインメント度は格段にアップしている。
 映画にはやはりドラマチックが向いているというのをジョン・フランケンハイマーは理解している。そしてウィリアム・フリードキンが理解していなかったことだ。
 よく「続編は駄目だ」というが『フレンチ・コネクション』の場合、続編の方が遙かに良い。

B001G9EC8A.jpg『フレンチ・コネクション』(1971) THE FRENCH CONNECTION 105分 アメリカ

監督:ウィリアム・フリードキン 製作:フィリップ・ダントニ 原作:ロビン・ムーア 脚本:アーネスト・タイディマン 撮影:オーウェン・ロイズマン 編集:ジェリー・グリーンバーグ 音楽:ドン・エリス
出演:ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ、トニー・ロー・ビアンコ、マルセル・ボズフィ、フレデリック・ド・パスカル、エディ・イーガン、ソニー・グロッソ、ビル・ヒックマン、アン・レボット、ハロルド・ゲイリー

 映像、演技、ストーリーなどなど徹底してリアル指向に作られている。実際に麻薬担当刑事二人と一緒にニューヨークをうろついているかのよう。で、リアルならば面白いかと言えばそうでもない。
 街並みがどれだけリアルに捉えられていても、役者の芝居がリアルでも、麻薬を追う刑事二人とそれを取り巻く人々の物語がどれだけリアルでも面白くない。緊張感があるように見せかけているだけで、実は緊張感がない。演出力の欠如がありありと感じられる。
 高架鉄道の下を走るカーチェイスのシーンはさすがに迫力があるが、全体のリアルさからは浮いている。リアルがやりたいのかアクションがやりたいのか。
 つまるところ繊細さに欠けていて単なる凡庸な作品にしかなっていない。そこから引き出される物が感じられない。どこを観てもありきたりで観るべき所がない。映画として重要な物がこの作品には欠けている。映画の皮をかぶった単なる繋がったフィルムに過ぎない。だからウィリアム・フリードキンは大嫌いなのだ。

B001LM18BQ.jpg『PLANET OF THE APES 猿の惑星』(2001) PLANET OF THE APES 119分 アメリカ

監督:ティム・バートン 製作:リチャード・D・ザナック 製作総指揮:ラルフ・ウィンター 原作: ピエール・ブール 脚本:ウィリアム・ブロイルズ・Jr、ローレンス・コナー、マーク・ローゼンタール 撮影:フィリップ・ルースロ SFX:ILM 特殊メイク:リック・ベイカー 音楽:ダニー・エルフマン
出演:マーク・ウォールバーグ、ティム・ロス、ヘレナ・ボナム=カーター、マイケル・クラーク・ダンカン、エステラ・ウォーレン、ポール・ジアマッティ、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、デヴィッド・ワーナー、リサ・マリー、エリック・エヴァリ、ルーク・エバール、エヴァン・デクスター・パーク、グレン・シャディックス、クリス・クリストファーソン、チャールトン・ヘストン、マイケル・ワイズマン

『猿の惑星』のリメイクではない。映像の鬼才ティム・バートン監督によるリ・イマジネーション(再創造)である。
 時は2029年。米軍宇宙基地でチンパンジーによる飛行訓練が行われていた。年代から考えて近くにある輪を持った惑星は土星だろう。そこへ謎の磁気嵐が襲ってくる。磁気嵐の正体を探るためチンパンジーが操縦するカプセルを打ち込みが行方不明になってしまう。そこで、チンパンジー教育係の大尉(マーク・ウォールバーグ)は独断で自分もカプセルで飛び立つ。磁気嵐に巻き込まれて船内時計がどんどん進んでいく。ようやく安定と取り戻したと一息入れるまもなくカプセルはとある惑星に着陸する。そこは猿類が人類を支配する『猿の惑星』だった。

 この作品では人間は普通に喋る。知能もそれなりに高い。1作目のオチが有名すぎるのでその辺りは変更されているのだ。
 未来なのは確かだが、ではいつかというと明らかではないこの猿社会。そこには人間の権利を守れと主張する人権擁護団体もあったりする。ありがたや、ありがたや。だが、基本的には人間は奴隷で金銭で売買され猿に尽くす存在である。それか野生で原始人のような暮らしをするかどちらかだ。
 猿社会は元老院性でチンパンジーとオランウータンが主に元老院議員を務めている。ゴリラは主に軍人なのはシリーズを通して変わらない。ただ実際の動物学の知識も持ち込まれているようで、ゴリラは温厚な動物、チンパンジーはすぐにキレる動物と書き分けられている。オランウータンは呑気。

 終盤では主人公を探しに来た母船が磁気嵐に巻き込まれて主人公よりも前の時代に不時着していたことが分かる。そして船内にいた猿が反乱を起こして『猿の惑星』は作り上げられたのだ。だから人類も迫害こそ受けたものの言葉を失っていない。
 猿が禁断の地として呼ぶ“カリマ”が“動物研究区画”だとわかるシーンはちょっと『スター・トレック』の1作目の“ビジャー”を思い出させてぞくり。

 猿が捕らえた人間に押す十字架に似た焼き印が母船のフォルムを思い出させるが偶然だろうか。
 敵役セード将軍(ティム・ロス)の父親が死ぬシーンで窓の飾りが同じ模様だがこれも偶然だろうか。ちなみにその父親役でチャールトン・ヘストンが猿メイクで出演している。1作目から三十数余年、ついにチャールトン・ヘストンも猿になったのだ。
 この三十年で特に進歩したのが猿の特殊メイク。これは時代の差というよりも一人の男の差と言うべきかも知れない。猿の特殊メイクが何より好きで、1976年のリメイク版『キングコング』では彼の特殊メイク以外見るところなしと言わしめた天才特殊メイクアーティストのリック・ベイカーが手がけているのだ。
 これまでは半口程度までしか開かなかった猿の口を大きく開けて叫ばせたり、旧シリーズでは塞がっていた鼻の穴をちゃんと開けて見せてくれる。細かな表情まであるのだ。
 ほかにも、これはティム・バートンの力もあるのだろうが、猿がちゃんと猿らしい動きをする。逆さまにぶら下がったり、足で字を書いたり、木から木へと飛び移ったりなどなどだ。旧シリーズでは身振りを猿っぽくしていただけだから大きな進化と言って良い。

 セード将軍は怖い。残忍な野心家でティム・ロスの演技も合わせて憎たらしいキャラクターとなっている。それにしても『レザボア・ドッグス』のオレンジで世に出たティム・ロスだが、意外と悪役が多くないか。
 オチはいらないな。蛇足蛇足。

B001EI5MC8.jpg『ファーゴ』(1996) FARGO 98分 アメリカ

監督:ジョエル・コーエン 製作:イーサン・コーエン 製作総指揮:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー 脚本:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン 撮影:ロジャー・ディーキンス 美術:リック・ハインリクス 音楽:カーター・バーウェル
出演:フランシス・マクドーマンド、スティーヴ・ブシェミ、ウィリアム・H・メイシー、ピーター・ストーメア、ハーヴ・プレスネル、ジョン・キャロル・リンチ、クリステン・ルドルード、トニー・デンマン

 アメリカは広い。広ければ都会もあるが田舎もある。この作品はそんな田舎の物語。
 ノースダコタ州ファーゴ。アメリカ人が聞けば“田舎”とすぐ分かる場所から物語は始まる。時は1987年の冬、外は雪化粧で真っ白に美しい。平和に見えたそんな田舎町で引き起こされた誘拐事件と殺人事件。素朴な風景の中、人はいとも簡単に人を殺す。

 コーエン兄弟がアカデミー賞を取った『ノーカントリー』(2007)に似ている。ただし、こちらで事件を追うのはトミー・リー・ジョーンズの様な老いたタフガイではなく、大きなお腹を抱えた妊娠8ヶ月の警察署長フランシス・マクドーマンド。女性の警察署長がいるというのはさすがアメリカだが、産休は取れるのだろうか。その彼女が男勝りでもなくかといって女性の武器を使うわけでもなく、ごく普通の人間として事件に挑む。
 妊娠しているからお腹が空くのかやたらと食べているシーンが多い。登場後すぐに旦那に作ってもらった卵焼きを食べているし、食堂ではセルフサービス式の食事を食べている。あのベチョとお玉で盛るポテトサラダなど不味そうだがどこか惹かれてしまう。もちろんデザートには原色のゼリーだ。捜査の途中でもドライブスルーでハンバーガーを買うことを忘れない。
 対する悪党側は最初はちんけな偽装誘拐を企んでいただけなのにどんどん大事になっていってしまう。だけどそんな状況を理解もせずに女と遊んだり愚痴をこぼしたりで正直頭が悪い。「変な顔。とりあえず全体的に変な顔」と何度も評されるスティーヴ・ブシェミはおそらく低層階級育ちの悪党。自分ではいっぱしのつもりだけど、その実大したことはできない。
 相棒のピーター・ストーメアは常に無口でそのことをブシェミにからかわれたり怒られたりしている。単に物静かな男ではなく、狂気をはらんだ危険な男でその場の判断でそく銃を撃つ。最後は相棒のブシェミさえ除雪機でガーッと……。この男がまともならばもう少し穏やかな結末を迎えたのだが、それではつまらない。ってんでガーッと。
 自分の妻の偽装誘拐を持ちかけるウィリアム・H・メイシーは義理の父親が経営する自動車販売店で営業部長をやっている。小心者のクセして車を買ったお客に卑劣な手段で塗装も売りつけたりと小金に汚い。いつかは一発当ててやろうと野心を持っているが、ローン詐欺で息詰まってしまいその金を義理の父から引き出すために彼の娘つまりメイシーの妻の偽装誘拐をブシェミとストーメアに依頼した。そんな彼のやることなす事ピントが外れていて、ジタバタすればするほど状況は悪化していき彼にそれを止める手段はない。

「この映画は実話に基づく」とオープニングに出る。
 これが事実なのかそうでないのかオレは知らないが、どちらでもいいことだと思う。実話だからすごくて、フィクションだからしょせん嘘というわけでもなかろう。映画になった時点で全て嘘ということだってできるのだ。

「なんでそんな簡単に人を殺すのか分からない」とフランシス・マクドーマンドはいう。
 そして大きなお腹をなでながら、朝食の卵を作ってくれた愛夫と共にベッドに横たわるのだ。

B001O094B6.jpg『ハロウィン アンレイテッド』(2007) HALLOWEEN 109分 アメリカ

監督:ロブ・ゾンビ 製作:マレク・アッカド、アンディ・グールド、ロブ・ゾンビ 製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン 脚本:ロブ・ゾンビ オリジナル脚本: ジョン・カーペンター、デブラ・ヒル 撮影:フィル・パーメット 編集:グレン・ガーランド 音楽:タイラー・ベイツ オリジナルテーマ:ジョン・カーペンター
出演:マルコム・マクダウェル、シェリ・ムーン・ゾンビ、タイラー・メイン、スカウト・テイラー=コンプトン、ブラッド・ドゥーリフ、ダニエル・ハリス、ウィリアム・フォーサイス、ウド・キア、ダニー・トレホ

 1978年にジョン・カーペンターが撮った『ハロウィン』のリメイク。
 監督のロブ・ゾンビは専業監督ではなくて本業はミュージシャン。ゾンビというのは芸名……だと思う。本当に姓がゾンビのゾンビ一族がいたら差別になってしまうがちょっとイヤだな。出演者にシェリ・ムーン・ゾンビという女性がいるが、これが殺人鬼マイケルの母親でストリップで一家の生計を立てている。ちゃんとストリップのシーンもあるのだがこのシーンを撮影することで夫婦間に溝は生じなかったのだろうか。「必然性があれば芸術のためなら私脱ぐわ」だったんだろうか。
 ジョン・カーペンター版のマイケルはすでに大人の殺人鬼として登場したが、今作では子供時代のマイケルから始まる。罵声が絶えない劣悪な環境で育つお面を好む以外は人畜意外そうに見えた少年が、実はペットのネズミを殺していたり犬や猫を殺していたことが発覚する。
 学校側はカウンセリングを受けることを提案するが、そんな間にマイケルはいじめっ子、母の恋人の駄目人間、セックスにふける姉とその恋人を次々と惨殺する。
 マイケルは第一級殺人罪の罪で施設に入れられ心理学者のマルコム・マクダウェルの治療を受けることになる。このマルコム・マクダウェルが老けている。白髪に白いヒゲ、体格もでっぷりして赤い服を着たらサンタクロースだ。
 母が赤ん坊を残して拳銃自殺して以来、マイケルはほとんど話さなくなり、仮面作りに熱中する。そしてそれから15年、悲劇は再び始まった。

 施設の係員としてダニー・トレホが登場。彼は係員の中では例外的に「お前の気持ちは分かるよ。俺も刑務所に入っていた」と語りかけるなどマイケルに親切にしていたのだが、脱走を図ったマイケルが係員を惨殺する中で、「俺はお前に親切にしてやったよな。親切にしてやったよな」と情に試みるのにあっさり殺されてしまう。マイケルは感情で動く人間ではなく殺人モンスターであるのがここからもうかがえる。
 そしてマイケルはちょうどハロウィンのある街にやってくる。そこは彼が生まれ育った街だった。そして少年時代に使ったマスクを隠してあった場所から取り出すと顔面に装着し殺人鬼マイケル=ブギーマンが帰ってくることとなった。
 そしてハロウィンのかこつけてセックスしている若い男女を殺しまくる。さすがマイケル容赦がない。映画の印象はセックスシーンと惨殺シーンの繰り返し。
 マイケルのいちゃつく若者に対する憎悪はどこから来るのだろうか。自分が施設に入れられ得られなかった物に対する復讐なのだろうか。
 そもそもマイケルは人間なのだろうか、モンスターなのだろうか。500kgもある墓石を軽々と持ち運んでいる辺り人間とは思えないが、彼が街に帰ってきた理由は肉親の情に関わることであって人間らしさを完全に忘れているとも思えない。そこがヒロインがつけ狙われる理由にもなっている。
「オリジナルのマイケルの殺人に理由がないところが良かった」という人もいるだろうが、マイケルの過去と殺人の理由が語られているリメイクはリメイクで悪くないと思う。求めて近づくのに怖がられて逃げられるマイケルに悲哀を感じながらも、あのね殺しすぎと思う。
 なんのために一般家庭にあるんだと尋ねたくなるやたらと刃が長い包丁が怖い。
 さて、続編は作られるのでしょうか?

B000223MQA.jpg『HELL ヘル』(2003) IN HELL 97分 2004/9/23鑑賞

監督:リンゴ・ラム 製作:ボアズ・デヴィッドソン/ダニー・ラーナー/ジョン・トンプソン 製作総指揮:アヴィ・ラーナー 脚本:エリック・ジェームズ・ヴァーゲッツ 撮影:ジョン・アロンソン 音楽:アレクサンダー・ブーベンハイム

出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ローレンス・テイラー/マーニー・アルトン/マイケル・ベイリー・スミス/ビリー・リーク

※2004年9月23日執筆分を特集に合わせて日付変更。4年半前の文章かー、なんだかんだで長いよなー、この映画バカ黙示録も。この時点で一応はヴァン・ダムの演技について注目しており『パピヨン』になる可能性はあったと思っていたようだ。だがそこからの詰めの甘さが実にオレである。

ジャン=クロード・ヴァン・ダムの刑務所映画というから『ブルージーン・コップ』(1990)のように刑務所の中で戦ってばかりの映画かと思ったら、これが意外に面白かった。
スティーヴン・キングの小説『不眠症』上巻297ページに「テレビの犯罪特集や、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが主演する映画と同じぐらい嘘っぽいものだ」と書かれており、『シンデレラ・ボーイ』(1985)の悪役イワンでヴァン・ダムを見て以来のファンであるわたしとしてはせめてもの反論をしたかったところだが、残念ながら「その通りだよなぁ」としかつぶやけなかった。キング原作の映画だってほとんどはあまり評価が高いとも思えないのだが。わたしは好きだけどね。
だからってキングがヴァン・ダムをどう評価しているかはまた別で、実在する商品名などの固有名詞を作中に数多く盛り込む人だから、リアリティに欠けるB級アクション映画的状況というイメージを伝えるためにヴァン・ダムが選ばれたわけで、ある程度メジャーと考えているのは確かだ。
そんな“嘘っぽさ”で満ちあふれているヴァン・ダム作品だが、この『ヘル』は割ときちっと刑務所映画になっている。
ロシアの油田基地で働くアメリカ人エンジニアのヴァン・ダム。その妻が強姦魔に襲われ殺されてしまう。ヴァン・ダムは追跡の末犯人を捕まえるが、その犯人が実力者の息子だったため裁判で無罪の判決が下る。怒ったヴァン・ダムは裁判所内で犯人を射殺。そして今度は自らが殺人犯として裁かれ、ロシア一過酷な刑務所に送られてしまう。
まるで収容所の様な劣悪な刑務所でヴァン・ダムは生き延びことが出来るのだろうか。

監督は『マキシマム・リスク』や『レプリカント』などで何度かヴァン・ダムと組んでいる香港出身のリンゴ・ラム。アクション映画主体の人だが、そういえばチョウ・ユンファ主演の刑務所映画『プリズン・オン・ファイアー』(1987)を撮っている。
刑務所に収容されたヴァン・ダムは観光旅行中に交通事故を起こして逮捕されたアメリカ人青年や、車いすの調達屋(刑務所映画や収容所映画には必ず出てくる役柄。『大脱走』のジェームズ・ガーナーや『ショーシャンクの空に』のモーガン・フリーマンなんかがそうだ)、偏執的キリスト教徒である黒人の大男などと知り合う。
もめ事を起こしたヴァン・ダムが狭苦しい独房に入れられ、絶望してシャツを千切って作ったヒモで首をつろうとして失敗したり、岩で出来た壁に何度も頭を打ち付けて額を割って血を流して倒れる。隣の独房では明らかに精神に異常をきたした男が常に意味のない叫びを上げ続けている。そんな悲惨な状況の中、独房に迷い込んできた一匹の蛾に気づき、その小さな命の存在から希望を見いだしていく様はなかなかに良い。
ひょっとしてこれはスティーヴ・マックィーンの『パピヨン』(1973)ぐらいにはなるか?と期待していたら、刑務所の中庭で看守公認の囚人同士の対決などが始まり、あとは基本的に従来のヴァン・ダム映画の通り。
今作のヴァン・ダムは警官などではなくエンジニアなのでそれほど格闘技が強いわけではなく、一対一ならともかく2、3人がかりで襲われると押し倒されて一方的に袋叩きにされてしまうなど、ヴァン・ダムの「俺が一番だ」的主張が抑えめでそういった点なども悪くなかっただけに残念。

B00006S25Y.jpg『ファイナル・レジェンド 呪われたソロモン』(2001) THE ORDER 89分 アメリカ

監督:シェルドン・レティック 製作:ボアズ・デヴィッドソン、ダニー・ラーナー、ジョン・トンプソン 共同製作:レス・ウェルドン 脚本:レス・ウェルドン、ジャン=クロード・ヴァン・ダム 撮影:デヴィッド・ガーフィンケル 音楽:ピノ・ドナッジオ
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム、チャールトン・ヘストン、ブライアン・トンプソン、ベン・クロス、ソフィア・ミロス、ヴァーノン・ドブチェフ

 これまでは毎年一本かあるいは二本ペースで作ってきたヴァン・ダムだが、前作から1年空いている。それだけ力を入れたプロジェクトだったのであろう。単に1年休暇を取っただけかも知れないが。

 今度のヴァン・ダムは古美術を専門にした怪盗。今日も今日とてロシアン・マフィアが所有している卵の美術品を盗みに入った。ところが警報装置がないはずがちゃっかりあって警備員に追われてすんでのところで逃げ切る。
 ところがこのオープニングは本編にはまったく関係なく、考古学者である父親の研究室を訪れたところから、物語は始まる。十字軍がエルサレム侵攻をしていた時に、殺戮に倦んだ十字軍兵士がキリスト教徒、ユダヤ教、イスラム教の三大宗教とは違う“オーダー”というまったく新しい宗教を作り出したというのだ。そして父親が持っていたのがオーダーの聖典“ファザー”の最後の一枚。それを持ってイスラエルへ向かう父親だが行方不明になってしまう。
 父を追ってイスラエルを訪れたヴァン・ダムを迎えるのが名優チャールトン・ヘストン。なんでこんな作品に出ているんだと思いきや、登場から10分ぐらいで死んでしまう。ゲスト出演だったのね。
 こうしてファザーを巡りオーダー急進派、そして警察を巻き込む大騒動が始まる。

 ヴァン・ダム版『インディ・ジョーンズ』と言えなくもないが、内容的にはイスラエルの街をヴァン・ダムが建物の屋根から屋根へと逃げ回ったりするジャッキー・チェン的映画。スタントマンの多用が目に付くが、ヴァン・ダムの仕事はアクションでスタントではないから良いのだ。
 大々的なイスラエルロケが魅力で、嘆きの壁を始めとしたイスラエルの名所を観ることの出来る観光映画ともなっている。ヴァン・ダムがユダヤ人に変装したりでイスラエル資本なんだろうか?
 オーダー自体は平和を愛する宗教なのだが、一部急進派がリーダーを爆死させ自分が新リーダーになる。そしてイスラム教とが集まる場所を地下から爆破しようとする。その場所がファザーに書かれていた“ソロモンの秘宝”が集められた秘密の地下室。だが、宝物に目もくれずオーダーの新リーダーの頭には爆破のことしかない。もったいない。
 この新リーダーを演ずるのがブライアン・トンプソン。どうやら『ターミネーター』の冒頭でターミネーターをナイフで刺そうとして腹を突き破られるパンク野郎でデビューしたようだ。ヴァン・ダム映画の『ライオンハート』にも出ていたようだが、覚えていない。DVDの特典によると合気道の黒帯だそうだが、ラストのヴァン・ダムとの戦いは肉弾戦ではなく剣での戦い。十字軍のイメージなのだろうが、せっかく肉体派を敵に持ってきたのにもったいない。
 監督は『ライオンハート』『ダブルインパクト』の監督や『レジョネア 戦場の狼たち』の脚本などでヴァン・ダムとは縁が深いシェルドン・レティック。特に冴えた演出は見せてくれないが、無難な映画を撮る。今回も無難。
 それにしても、さっきも書いたがチャールトン・ヘストンは何をしに出てきたのやら。せめて謎のヒントを残すとか印象的な死に方をして欲しかった。

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『ヴァン・ダム IN コヨーテ』 (1999) INFERNO 96分 アメリカ

監督:ジョン・G・アヴィルドセン 製作:イヴツェン・コラー、ジャン=クロード・ヴァン・ダム 脚本:トム・オルーク 撮影:ロス・A・ミール 音楽:ビル・コンティ
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム、パット・モリタ、ダニー・トレホ、ガブリエル・フィッツパトリック、ラリー・ドレイク

?オレはいつでも燃えている その26?
 砂漠の中にある小さな街。そこは悪党に支配されていた。軍隊時代の友人に会うため、たまたまその街にやってきたエディ(ヴァン・ダム)は友人と一緒に悪党退治に乗り出す。
 と、粗筋を書くといつものヴァン・ダム映画に思える。だが街の住民は悪におびえる善良な一般市民ではなく、風変わりでどこか常識外れの連中ばかり。それにエディは正義の味方ではなく、こいつこそが一番の悪党かも知れない。途中で事件は広がるが、そもそものきっかけは友人(ダニー・トレホ)に贈るはずだったバイクを悪玉の息子たちに奪われたから。それで悪党どもを皆殺しとは、やりすぎじゃないか?

 格闘や銃撃戦などのアクションはヴァン・ダム映画としては控えめ。それよりもエディと風変わりな街の人々との関わりが中心だ。
 中でもパット・モリタ演ずる便利屋と銃砲店のジイさん、そして酒場のパキスタン人店主のジジイ三人組が楽しい。どたばた騒いでるだけかと思ったら意外な活躍をしてくれる。ジジイファンにはぜひともお薦め。
 エディが倒した相手の死体は便利屋がビニールシートで包むと小型トラックで谷へと捨てに行く。最初は2体だが、最後の戦いが終わった後にはどさどさっと豪快に落としている。灼熱の砂漠、1ヶ月後にはまさにINFERNO(地獄)な光景になってそうだ。

 街の近辺でよくUFOが目撃されそれが乏しい観光資源であることや、空軍基地からのジェット戦闘機が時折轟音をまき散らしながら低空飛行で通過していくことなどが上手く活かされている。特にUFOの件はそれを上手く利用して街を活気を取り戻し、悪人たちの死も無駄じゃなかったか。

 休戦状態でにらみ合う犯罪組織同士を上手く対立させて相打ちにさせようというのは黒澤明の『用心棒』およびセルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』だ。これは憶測ではない。映画のラストでバスの運転手が食堂のウェイトレスを「サムライの映画を観に行かないか。日本人のやる西部劇で『用心棒』という映画なんだ」とデートに誘うシーンがあり、きちんとオリジナルへの敬意が示されている。

B0019K0X8Y.jpg『ハード・ターゲット』(1993) HARD TARGET 100分 アメリカ

監督:ジョン・ウー 製作:ジェームズ・ジャックス、ショーン・ダニエル 製作総指揮:サム・ライミ、ロバート・タパート 脚本:チャック・ファーラー 撮影:ラッセル・カーペンター 音楽:グレーム・レヴェル
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ランス・ヘンリクセン、アーノルド・ヴォスルー、ヤンシー・バトラー、ケイシー・レモンズ、ウィルフォード・ブリムリー、チャック・ファーラー

 今となってみると『ボディ・ターゲット』は『ハード・ターゲット』にあやかったパクリっぽいタイトルに見えるけど、アメリカ公開はそれぞれ1993年1月に1993年8月、日本公開は1993年9月に1994年1月と『ボディ・ターゲット』の方が半年ほど先なんだよね。
 ジョン・ウーが監督というのが当時それほど売りになったとも思えないし、まだ公開されていない海のものとも山のものともつかない作品からタイトルを持って来るとも思えないんだが『ハード・ターゲット』の原題がそのまま『HARD TARGET』なのに対し『ボディ・ターゲット』は『NOWHERE TO RUN』だから影響がないとも言い切れない。『ターゲット』シリーズで売ろうとしたのか?でもたしか配給会社は違うんだよな。ちょっと謎。

 製作総指揮にサム・ライミの名前がある。サム・ライミは『ダークマン』(1990)や『死霊のはらわた3 キャプテン・スーパーマーケット』(1993)を撮ってた頃で、『スパイダーマン』シリーズで有名となっている今とは違いまだまだ一部の人以外にはマイナーだった。ジョン・ウーのハリウッドデビューのはサム・ライミが大きく関わっているのだ。
 個人的想像だが「香港で面白い映画を撮っている奴がいるからこっちで一本撮らせてみねぇ」が企画の発端だったのではないだろうか。今でこそ香港や中国の映画監督がハリウッドで映画を撮ることも多くなったが、その第一弾とも言えるのがこの『ハード・ターゲット』。
 ジョン・ウーはその後ヒット作を飛ばし、『ウインドトーカーズ』(2002)のような歴史的興行失敗作も作るが最近では『レッドクリフ』シリーズで腕を振るっている。
 この映画はあくまでもジョン・ウー映画でヴァン・ダム映画ではないと思っている。まずなによりジョン・ウーに格闘アクションを真面目に撮る気がない。主人公のチャンス・ブドロー(ジャン=クロード・ヴァン・ダム)とヒロインが出合うシーンでヒロインのカバンを奪おうとしたチンピラを素手で叩きのめすのだが、これがひたすらスローの連打で工夫が感じられない。銃撃戦のシーンになると一転して輝き始めるのと対照的だ。
 格闘アクションと言えばヴァン・ダムの本領、銃撃戦と言えばジョン・ウーの本領。前編に散りばめられた銃撃戦がこれがジョン・ウー映画であることを明確に示している。

 ニューオリンズの街に一人の女性がやってくる。彼女は母親と離婚して長いこと行方不明だった父を捜しているのだ。
 だが、父はホームレスに身を落としていて、金持ちが人狩り業者に依頼して行っている人狩りの餌食となっていた。真実に近づくほど、二人の身にも危険が迫る。今回のヴァン・ダムは襟足が長目の髪型で、彼としてはちょっと珍しい。

 一度は依頼を断ったチャンスが、再び女性の前に現れるシーンはフォークリフトが運ぶ青いドラム缶が通り過ぎたらさっきまで誰もいなかったところにチャンスが立っているところを微妙なスローの繰り返しで見せる。格闘アクションのやる気のないスローと違っていわゆる“ジョン・ウースローモーション”。これだけで背筋がゾクゾクくる。
 悪役はランス・ヘンリクセン。痩せ形でギラギラした目つきが印象的だ。非情でイカれててピアノも上手い。傭兵として各地を戦い歩いてきた猛者で、よりよい稼ぎの道として人狩りの斡旋を始めたのだ。単発式の拳銃トンプソン・コンテンダー(『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』でも眼帯の敵役が使用)を愛用していてキャラクターを立たせている。部下のアーノルド・ヴォスルーとはちょっと同性愛っぽい雰囲気がある。
 ヴァン・ダムがバイクの手放しでしかも座席の上に中腰になっての拳銃乱射はさすがにちょっと無茶だが、後に『M:I-2』(2000)でトム君が「仮面ライダーかっ!」なバイクアクションの原形なのかも知れない。

 最大の見せ場はカーニバルの道具(ねぶた祭りのねぶたのような張りぼて)が山のように積まれた倉庫での一大銃撃戦。怪物じみた張りぼてが並んでいて、銃撃アクション物のラストで使われることの多い単なる工場などにはない華がある。チャンスの育ての親であるジジイが仲間に加わり、弓矢で参戦。意外な活躍ぶりを見せてくれる。手作りウィスキーを作っているこのジジイが良い味出してる。
 ヴァン・ダムが使うのは『男たちの挽歌』シリーズのチョウ・ユンファと同じくM92Fの二丁拳銃。もちろんハトも飛ぶ。
 敵はランス・ヘンリクセンがかき集めた人殺しに夢中な大金持ちたち。事情があって人を殺すのももちろんいけないが、こいつらはもっと悪い。楽しみのために人を殺す奴らだ。悪人面勢揃いっ!お前らに明日を迎える資格はないっ
 ここからはひたすらドンパチ。拳銃にサブマシンガン、ショットガンが炸裂する。あっちでドッカン、こっちでドッカンのやたらに派手な銃撃戦が実に過剰で嬉しい。チャンスのM92Fは撃っても撃っても弾切れにならないが、よく見ると倒した敵からマガジンを奪っているので、観客から見えないカットの変わり目にマガジンチェンジをしているのだ。きっと。
 他にチャンスが使うのは、モスバーグM500。こいつは『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』でテキーラ(チョウ・ユンファ)が使っていたショットガン。やはり着弾点が爆発する大袈裟な威力。
 散々M92Fを二丁拳銃で撃って撃って顔面に回し蹴り。そしてさらに撃って撃つ。チャンスは容赦しない男なのだ。そしてこれでもかの派手な銃撃戦の嵐。ランス・ヘンリクセンの情けない死に方も良い。手榴弾を分解せずとも投げ返せばいいじゃないか。
 チャンスとアーノルド・ヴォスルーが壁越しに背中合わせに会話をするところなどは、これまたジョン・ウーが前年に撮った『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』(1992)に似たシーンがある。ジョン・ウーの最高傑作である前作の影響は大きいようだ。『ハード・ボイルド』の銃撃戦はさらにスゴイ必見映画。

 ランス・ヘンリクセンがヘマをした部下の耳たぶをはさみで切り落とすところがあって、このシーンが残虐すぎると言うことでアメリカでは問題になったようだ。ジョン・ウーとしては「このぐらいは香港では当たり前」と不満だったとか。
 その他にも香港とアメリカの文化の違いでジョン・ウーはかなり苦労した様子。その苦労はしばらく続き、『ブロークン・アロー』(1996)の終盤には高い鉄橋のシーンがあるがその鉄橋から飛び降りようかとも思い悩んだそうである。

B001FYZO7O.jpg『ボディ・ターゲット』(1993) NOWHERE TO RUN 94分 アメリカ

監督:ロバート・ハーモン 製作:クレイグ・ボームガーテン、ゲイリー・アデルソン 原案:ジョー・エスターハス、リチャード・マーカンド 脚本:ジョー・エスターハス、レスリー・ボーエム、ランディ・フェルドマン 撮影:デヴィッド・グリブル 音楽:マーク・アイシャム
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ロザンナ・アークエット、キーラン・カルキン、テッド・レヴィン、ティファニー・トーブマン、エドワード・ブラッチフォード、アンソニー・スターク、ジョス・アックランド、ルアナ・アンダース

 まずはオープニング。荒野の丘を伸びている道の上を囚人護送バスが延々と走ってくる。遠くにポツンと見えるところからカメラの横を通り過ぎていくまでだからかなり長い。ヴァン・ダム映画にこのファーストショットを持ってくるセンスっていいね!これから何が起きるかゾクゾクさせるオープニングだ。さすが『ヒッチャー』の監督ロバート・ハーモンだけのことはある。
 他にもこの映画には妙に凝った映像が多くて、前に割り込んだ車にバスが衝突すると、その中の通路をカメラがダーッと前に向かって走ったり、ショットガンを持った悪人とヴァン・ダムが戦っているシーンでショットガンが発砲され壁に丸い穴が開く。その穴にカメラがグーッと寄っていくと、その壁越しに二人がもみ合っているなどなど「そういう撮り方にどんな意味があるんだ」と言いたくなってしまい嬉しい。
 バスから脱出した囚人のヴァン・ダムが池で行水をするなど例によって全裸シーンも満載。脱ぎたがりに関しては女優だとミラ・ジョヴォヴィッチ、男優だとジャン=クロード・ヴァン・ダムか?でも、幼女に下半身まで堂々と見せちゃ駄目だろ。ヴァン・ダム、アメリカではかなりな犯罪だぞそれは。警察に捕まるぞって逃走中か。
 基本ストーリーは『シェーン』(1953)だ。土地を買い占めている悪徳開発業者(ジョス・アックランド)が最後の一軒として狙いを付けているのが未亡人(ロザンナ・アークエット)が男の子と女の子の二人の子供を抱えながら女手一つで経営している牧場。そこへ現れた流れ者が未亡人を助けて悪人をやっつけるという王道パターン。
 だが、どこか外してくれるのがこの映画の嬉しいところで、ヴァン・ダムが未亡人一家と関わりを持つのが逃亡中にキャンプしてステーキを焼いている時に「あっ、塩が無い」というので家に忍び込んで塩を借りるのを男の子(マコーレー・カルキンの弟キーラン・カルキン)に目撃され“E.T.”と勘違いされてからだし、ちゃんと翌朝になると塩は食卓に戻されている。律儀だな、ヴァン・ダム。食堂でもステーキ食ってるし、どんだけ肉が好きなんだと。この食堂で出されているステーキがまたデカいし付け合わせもほとんど付いていない。肉だけじゃなくて野菜も食え。さもないと丈夫な身体に……なってるか。
 男の子は秘密の小箱に今は亡き父親の思い出としてグローブなどをしまっているが、実は幼い頃に死んでしまった父のことをほとんど覚えていない。おぼろげな父の姿をヴァン・ダムに重ねるのだが、ヴァン・ダムは未亡人から買い取ったバイクのトライアンフを修理したらそれに乗って旅立つつもりだ。そしてヴァン・ダムが敵に追い詰められた時に、箱の中にグローブと一緒に入っていた一丁の拳銃が意味を持ってくる。
 今回のヴァン・ダムは「カナダのケベックから来た」という設定。事実なのかごまかすための嘘なのかは分からないが、フランス語訛りがあるからだろう。肉体派アクションスターの多くがセリフ回しに難があるのは何故だろうか?シュワルツェネッガーはオーストリア生まれでドイツ語訛りがあるし、スタローンは出産時の事故で顔面にマヒがある。ジャッキー・チェンの英語は年を取ってから覚えたことを考えれば上々だが決して上手くはない。
 悪徳開発業者のジョス・アックランドは『ビルとテッドの地獄旅行』のデ・ノロモスを思わせるいかにもな悪人面。買い取りに応じない農家には火を付けるわ保安官は金で抱き込むわと水戸黄門に出てきそうな悪徳ぶり。土地の人を集めて説明会を開き「この開発計画は皆さんの利益にもなるのです」なんて言っているが、あれを聴いて信じる人がいるだろうかってぐらい見るからにずるそう。
 最後にヴァン・ダムと戦う敵役は『羊たちの沈黙』で“バッファロー・ビル”をやっていたテッド・レヴィン。トランプ手品で相手を幻惑するが、アクション俳優ではなく普通の俳優なので体格ではチビなヴァン・ダムより大きくてセリフ段階で向かい合っている間はさすがに役者が上だけども格闘アクションでは大きく見劣りがする。この点は『ブルージーン・コップ』でも感じたことで、演技を必要とする悪役の場合に肉体アクションまで要求することが難しい。西部劇や刑事物などの拳銃アクションならばかなり融通は利くんだが。その点を考慮してか、全体的にアクションは控えめな作りとなっている。燃焼不足を感じもするが、映画としてのバランスは取れている。
 未亡人役のロザンナ・アークエットは『グラン・ブルー』の人。アヒル顔は愛嬌があって良いのだが、細腕で頑張っているというか細腕すぎてちょいミスキャスト。何年もの間、再婚もせずに女手一つで牧場と子供たちを守ってきたのだからもうちょっとたくましい感じがあっても良かったのではないかと。ヴァン・ダムとも割と簡単に打ち解けてしまうが、もっと用心して反発するなどした方が物語も広がったのでは?

B000KGGC2E.jpg『ブルージーン・コップ』(1990) DEATH WARRANT 89分 アメリカ

監督:デラン・サラフィアン 製作:マーク・ディサール 脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー 撮影:ラッセル・カーペンター 音楽:ゲイリー・チャン
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム、シンシア・ギブ、ロバート・ギローム、パトリック・キルパトリック、ジョージ・ディッカーソン、アート・ラフルー、ジョシュア・ジョン・ミラー、ハンク・ストーン、ジョージ・ジェネスキー、ジャック・バノン、アーミン・シマーマン、アル・レオン、アブドル・サラーム・エル・ラザック

 予告編内で「ヴァン・ダム級」とか「機動戦士ヴァン・ダム」とのあおり文句が入ったのはこの作品じゃなかったかな。
 ヴァン・ダムはカナダはケベック警察の刑事。ケベック州といえばフランスの勢力が強いのでヴァン・ダムの英語に訛りがある説明にもなる。まずはロスへ出向いて自分の相棒を殺した犯罪者“サンドマン”を追い込まれながらも無事に逮捕する。そして、それから16ヶ月後、ヴァン・ダムは再びロスに帰ってくる。刑務所の中で囚人が連続で殺されているのだ。死体はどれも首の後ろを突き刺されて死んでいる。はっ、もしや犯人はかんざし屋の秀?三田村邦彦なのかっ?
 事件を捜査しようにも、なにぶん刑務所の中なので難しい。そこで囚人たちに面が割れていないカナダ警察のヴァン・ダムに囚人として潜入してもらい極秘捜査をしようというのだ。刑務所の中では所長や看守も含めて誰も彼の身分を知らず、妻として面会に来る女性検事局員のシンシア・ギブだけが窓口。
 黒人を中心にちょっと変わった友人も出来ていく。老黒人にヴァン・ダムが「あんたは無実なんだろ」「いや、わしに限っては有罪だ。この手で人を絞め殺した」なんてやり取りがある。どこかで聞いたなと思ったが、そうか『ショーシャンクの空に』か。ぱくったなダラボン。
 そして、ヴァン・ダムは殺害された囚人がどれも健康で麻薬など薬物をやっていないという共通点があることに気づく。
 そして時折、医療室から“特別廃棄物”として運び出される容器の中味は……

 ヴァン・ダム映画としては脚本は凝っているほう。ヴァン・ダムも戦っているシーンよりも捜査に重点が置かれている。
 いくつか格闘シーンがあるがどれも水準点以下。ランドリー室でアル・レオン(『ダイハード』でチョコバー食ってたり『リーサル・ウェポン』でリッグスを電気拷問していたりする中国系俳優。なんといっても代表作は『ビルとテッドの大冒険』のチンギス・ハン役。前頭部はハゲだが後頭部は長髪という独特の髪型。結べば弁髪になるんかいなあれは。)が登場した時は、おっこれは熱い戦いが見られるかと思いきや、割とあっさりやられてしまう。
 ラスボスのサンドマンもあまり大した戦いをやらない上にラストがあっけないからなぁ。サンドマン役のパトリック・キルパトリックは『レモ/第一の挑戦』で格闘面では一番の強敵だった男。シナンジュ使いのレモの前では毒ガスを使ってなんとか対抗できるぐらいで最後はあっけなく殺されてしまうのだが。フィルモグラフィーを見るとアクション映画が確かに多いようだが、武術はすこしかじったぐらい普通の俳優ではないだろうか。それがヴァン・ダム相手では物足りなくてしかたない。

 時折、無意味なヴァン・ダムの一人称視点を入れる監督のデラン・サラフィアンもあまりアクションには向いてない様子。カット割りとか下手だし、ドタバタして観ていられない。今ならばアクション監督は香港系の人が担当するんだろうけど、この頃はまだまだ。デラン・サラフィアンは最近ではTVシリーズの『SCI』シリーズを撮っているようだ。この作品も捜査物だしそちらの方が向いてそうだ。
 ちなみに父親は『バニシング・ポイント』のリチャード・C・サラフィアン。
 それにしてもどこいっちゃたんだろうね、シンシア・ギブ。TVムービーにはたまに出ているようだが、「あの人は今?」状態。
 そのシンシア・ギブが刑務所のコンピュータに侵入するためにハッカーを雇うが、これが絵に描いたようなオタクの少年。この頃にはすでにパターン化されていたのだ。
 終盤のヴァン・ダムが囚人が最も嫌う警官であることがバレてからの暴動シーンはそれなりにはくりょくなので、もっと実際に強いアクション俳優を悪役で出せばもっと盛り上がったろうに残念だ。

 タイトルの『ブルージーン・コップ』は囚人服のジーンズのことだろう。ジーンズは本来作業着で言って観りゃニッカボッカ。今でもちゃんとした人は格式張った場にジーンズで来ると怒るがそれにもちゃんと理由がある。
 原題の『DEATH WARRANT』は直訳で『死に値する』か。ヴァン・ダムしてるなぁ。

B0000APZPZ.jpg『ブラッド・スポーツ』(1987) BLOODSPORT 93分 アメリカ

監督:ニュート・アーノルド 製作:マーク・ディサール、ヨーラン・グローバス、メナハム・ゴーラン 脚本:シェルドン・レティック、クリストファ・コスビー、メル・フリードマン 撮影:デヴィッド・ワース 音楽:ポール・ハーツォグ、マイケル・ビショップ
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ドナルド・ギブ、リア・エヤーズ、ノーマン・バートン、ボロ・ヤン、ヴィクター・ウォン、フォレスト・ウィッテカー、ロイ・チャオ

 記念すべきヴァン・ダム初主演作。ただし日本未公開。
 2年の間にまだ訛りはあるもののかなり英語が上手くなり、身体もより絞り込まれた。
 今回のヴァン・ダムはアメリカ軍人。香港で極秘開催される“クミテ(組み手?)という異種格闘技戦に出場するために軍を脱走する。
 ヴァン・ダムは少年時代に、戦時中に広島で原爆にて家族を失いアメリカへとやって来た武道家(本業は魚の養殖。どうやら金魚や鯉などの観賞魚)田中に才能を見出され武道の道へと進むことになる。田中はアメリカで再婚しており新しい息子も生まれていて、ヴァン・ダムより少し年下のその少年は兄弟のような間柄になるが、息子が理由は明らかにされていないが死んでしまう。
「これで2000年間、父から子へと伝えられてきた田中流も終わりか」と嘆く田中にヴァン・ダムは「俺に教えて下さい」と頼み込む。
「お前は日本人じゃないし、田中でもない」と断る田中だが、ヴァン・ダムは「先生は広い視野を価値観を持てと教えてくれたではないですか」と返す。
 そして苦しい訓練が始まる。目隠しをして日常生活や組み手を行ったり、ツボが書かれた図を参考に的確に相手の急所を突く訓練。ただ、この図に「針灸の十四経穴の掛け図」と日本語で書かれているんだよな。針灸師用のツボ図なのだ。これでは相手にダメージを与えるどころか、健康にしてしまうのではないだろうか?あったら面白いだろうな、「酔えば酔うほど強くなる」ではなく「戦えば戦うほど強くなる(相手が)」な武道。

 “組み手”には世界中から武道家たちが集まってきている。開催地香港のクンフー、レスラー、イスラムの戦士、『あしたのジョー』に出てきたハリマオのように四つんばいになってピョンピョン跳び回り素早く攻撃してくる黒人戦士。そして、『燃えよドラゴン』や『Gメン’75』などで有名な香港のムキムキマンことボロ・ヤン。
 ボロ・ヤンは太極図の刺繍が入ったハチマキをしており、どうやら韓国選手らしい。使うのは空手+クンフー系の武術でテコンドーじゃないんだけどね。言動が乱暴で、対戦相手を惨殺しては楽しむといった非道ぶり。この映画は韓国の人からの評判は悪いだろう。

 異種格闘技といっても打撃系が中心で、関節技や寝技は登場しない。唯一、日本の相撲取りが見せる鯖折りが特殊なぐらいか。ただし、この相撲取りは香港映画でたまにみるあっちの俳優さんなんだよね。つまり偽物。まぁ、本家大相撲でも外人力士が優勝するのも当たり前になっているんで外人がやってもいいんだが、どうみてもただ単に体格が良くてちょっと太ってるだけの人。
 ヴァン・ダムが自ら監督を務めた同じく異種格闘技戦を扱った『クエスト』にも相撲取りが登場するが、こちらはなんと北尾。一度は大相撲の頂点に立った男だけ会ってさすがに『ブラッドスポーツ』のインチキ相撲取りとは格が大幅に違う。

 軍を脱走したヴァン・ダムを捕まえにアメリカから二人の捜査官がやってくるが、その一人がアメリカの釣瓶ことフォレスト・ウィッテカー。後にイーストウッドの『バード』で主演したり、ついには『ラストキング・オブ・スコットランド』(2006)でアカデミー主演男優賞を受賞することになるとは当時誰が思っただろうか。
 散々ヴァン・ダムに振り回されて捕まえることが出来なかったあげくに、ラストには組み手会場でヴァン・ダムを応援している。

 映画の終わり、ストップモーションになったヴァン・ダムの顔に、「この主人公は実在の人物フランク・W・デュークをモデルにしている。彼は格闘技大会で数多く勝利し、最短KO記録、KOキックの速度記録、連続KO記録などを持っている。」との表示が出てくる。
 おお、これはすごい人がいたものだと思っていたが、「そして引退後、彼はアメリカで忍術道道場を始めた」でカクン。忍術道ってなぁ、オチを付けるなよ。なんか怪しいが、実在するのか?

「クミテ、クミテ、クミテ、クミテ」の主題歌も楽しく、若きヴァン・ダムを堪能できるなかなか面白い作品だ。

B001FAYJZG.jpg『P2』(2007) P2 97分 アメリカ

監督:フランク・カルフン 製作:アレクサンドル・アジャ、エリック・フェイグ、グレゴリー・ルヴァスール、パトリック・ワックスバーガー、製作総指揮:ボブ・ヘイワード、デヴィッド・ギャレット、アリックス・テイラー 原案:アレクサンドル・アジャ、グレゴリー・ルヴァスール 脚本:アレクサンドル・アジ