『妖星ゴラス』 君子危うきからとっとと逃げる
『妖星ゴラス』(1962) 監督:本多猪四郎 出演:池部良、上原謙、志村喬
「狭い地球にゃ未練はないさ、未知の世界に夢がある夢がある。(中略)オイら宇宙の、オイら宇宙の、オイら宇宙のパイロットっ!」
10数年前にテレビで1回、ビデオで1回観ただけなのに、劇中で歌われた宇宙飛行士の歌が空で歌えてしまうのはどういうわけだろう?
地球に強大な隕石衝突の危機が迫る。最近の『ディープ・インパクト』(1998)や『アルマゲドン』(1998)などでお馴染みのシチュエーションだ。ちょっと古いところだと『メテオ』(1979)を含めたそれらの映画だと核兵器で隕石を破壊することで衝突を防ごうとする。自分(地球)と相手(隕石)がいて、相手を攻撃することによって危機を避けようとする考え方である。
しかし、日本で制作された『妖星ゴラス』は全く違ったアプローチをする。ゴラスと名付けられた小惑星が地球の公転軌道と交差するというのなら、地球を動かして逃げればいいではないか。こうして、人類存亡の危機を賭け南極の大地に巨大ロケットの建設が始まる。自分(地球)と相手(ゴラス)がいて、トラブルが起きないように相手との距離を取ろうというのだ。『アルマゲドン』などが西洋思想だとしたら、『妖星ゴラス』は東洋思想に基づく作品とだといえるのである。
おそらくは同様の危機に際し一部の人間だけがロケットで地球を脱出した『地球最後の日』(1951)の拡大解釈なのであろう。『ディープ・インパクト』でも選ばれた人だけがシェルターに入れることになっていたが、日本人のメンタリティには合致しなさそうだ。生き延びる権利がある人とない人にきっぱり分けることが出来ず「わたしと家族と、それからお隣さんと会社の同僚と」とどんどん増えてしまいそう。そこで、人類全員が乗れるロケットとして地球を動かそうということになる。
重箱をつつけば些末なことはいくらでも出てくるが、南極から炎を吹きながら画面を横切っていく地球をその目で見れば「やられたぁ」と思うはずだ。しかも、ラストのセリフが「さぁ地球を元の軌道に戻さなきゃ。今度は北極だから陸地がないんで大変だぞ」と環境へのアフターケアも充分である。
退屈してるお子様には、唐突に現れる全長数十メートルの巨大セイウチ怪獣のおまけ付きだ。
