『タイタンの戦い』(1981) CLASH OF THE TITANS 118分 アメリカ METRO GOLDEN MAYER
監督:デズモンド・デイヴィス 製作:チャールズ・H・シニア、レイ・ハリーハウゼン 脚本:ビヴァリー・クロス 撮影:テッド・ムーア 特撮:レイ・ハリーハウゼン 音楽:ローレンス・ローゼンタール
出演:ハリー・ハムリン、ジュディ・バウカー、ローレンス・オリヴィエ、バージェス・メレディス、クレア・ブルーム、マギー・スミス、ウルスラ・アンドレス、シアン・フィリップス、フローラ・ロブソン
長年にわたってストップモーション・アニメーション界で大きな働きをしてきた巨匠レイ・ハリーハウゼンの事実上の引退作品である。
これまでレイ・ハリーハウゼンが大半の映画を作ってきたコロンビア映画ではなく何故かMGM作品となっている。時代が特撮からSFXに変わってきたことでコロンビアが製作に難色を示したのだろうか。その辺りは憶測するしかないが何らかの理由があるのだろう。製作はハマープロで製作した『恐竜100万年』の場合と違い、いつもと同じ朋友のチャールズ・H・シニアでチームごと移転した感じ。
主神ゼウスの息子であるペルセウスは王女である母親の罪で母と一緒に海に流されてしまう。そのことに怒ったゼウスはその国に海の怪物クラーケンを放って建物の一つ、生き物の一つも残さずに滅ぼしてしまう。
自分がゼウスの息子だと知らぬまま逞しく育ったペルセウスは女神テティスの呪いをかけられたアンドロメダ姫に心を奪われる。しかし姫への求婚者には謎が出されそれが解けないと火あぶりにされてしまう。姫の魂が夜ごと大ハゲタカに連れ去られていることを知ったペルセウスは一匹だけ生き残ったペガサスに乗ってハゲタカを追跡。たどり着いた沼地にはテティスの息子カリボスが住んでいた。もともとはアンドロメダ姫の婚約者だったカリボスは勝手な振る舞いをしたためにゼウスの罰を受けて醜い姿にされ、沼地にこもっていたのだ。
ペルセウスはカリボスの左手を切り落とし、そこに付けていた指輪が謎の答えであることを解き明かし、見事アンドロメダ姫の呪いを解いた。
そこで2人の婚約発表が行われたが、その際にあろうことかアンドロメダ姫の母親カシオペアはアンドロメダ姫の美しさを女神テティス以上と比較してしまう。怒ったテティスは30日後に海岸の生け贄の岩にアンドロメダ姫を縛り付け、クラーケンに食わせると難題を要求する。
難題に悩むペルセウスはクラーケンを倒す手段を模索する。倒す手段は一つ。
「魔女・メドゥーサの首しかない」と言う事を知る。
ペルセウス一行はメドゥーサの住む「死の島」へ赴くのであった。
刻々と迫る30日の期限・・・・・・果たしてアンドロメダ姫を救う事は出来るか?
『アルゴ探検隊の大冒険』以来、18年ぶりにギリシャ神話に挑戦した大作である。
クリーチャーは金属製のフクロウであるブーボーから40メートルを超えるクラーケン、ペガサス、カリボス、地獄の番犬ケルベロスをモデルにした双頭の犬ディオスキロス、大サソリそしてメデューサまでバラエティに富んでおり、レイ・ハリーハウゼン映画の集大成である。
中でも最も怖ろしいメデューサは下半身を人間のそれからガラガラヘビのようにジージー鳴る尾を持つ蛇に変えられた。しかも弓矢を装備している。頭には12匹の蛇がいてこれもストップモーションアニメーションで自在に動き回る。非常に複雑な動きをするクリーチャーだ。
ペガサスは本物の馬を使ったシーンもあるが基本はストップモーション・アニメーションだ。レイ・ハリーハウゼンは本物の馬の動きをよくよく観察してそれを再現するべく撮影に当たったという。
ペルセウスの味方であるブーボーの機械じみたユニークな動きもおかしい。
この作品、最大の見せ場はペルセウス対メデューサであろう。見た者を石に変える力を持っているメドゥーサに盾の裏面に映るメデューサの姿を見ながら、石の柱に隠れつつ、戦うペルセウスのシーンは、観ているこちら側も思わず息を止めてしまう人も多いはず。ゆらめくかがり火の光。固唾を呑んで観ていると、メドゥーサの息遣いが聞こえるようだ。
二人の部下がやられながらも、見事、メデューサの首を切り落としたペルセウスには喝采を浴びせてしまった。首を切り取られてもしばらくの間のたうちまわるメデューサが怖い怖い。
クラーケンは巨大なのにメデューサの首であっと言う間に石にされてしまって見せ場がなかった。デザインも半魚人的で今一つ独創性がなかった。それでもペルセウスがペガサスに乗って間に合うか? 間に合うか? とハラハラさせるシーンはさすがだが。腕が4本あるのはさすがストップモーション・アニメーション・モデルだけのことはあったが。
ゼウスが女神たちに命じてペルセウスに贈る大理石を切っても刃こぼれしない剣、被ると透明になる兜、メデューサ戦で大いに役に立つ楯など男の子なら憧れてしまうアイテムである。それにしてもゼウスは親バカだな。
それにしてもこの大騒動の原因は神々の嫉妬や一方的な怒りであるというところがギリシャ神話である。特にゼウスは主神のクセして色んな物に変身して乙女のところに行っては子供を産ませてしまうろくでもない奴である。それに妻のヘラが嫉妬して、またややこしい話になる。神様のちょっとした嫉妬で国が滅ぼされてはたまったものではない。ちなみにゼウスをあの大物俳優ローレンス・オリヴィエがやっているのには驚き。
すでにSFX全盛の時代において、単にこの作品一つだけ置かれたら評価に困るがレイ・ハリーハウゼンがそのキャリアで培った職人芸と芸術家のストップモーション・アニメーションの全てを注ぎ込んだ意味において不朽の名作である。
レイ・ハリーハウゼン作品にしては長いエンドクレジットが流れる。そのなかに"THEMSELVES"としてクリーチャーたちの名前が出てくる。長年のクリーチャーへの恩返しだろうね。
アンドロメダ姫役のジュディ・バウカーは綺麗だったけど、ペルセウス役のハリー・ハムリンにもう一つ魅力がなかったのが残念。
この2010年に3D映画としてリメイクされる『タイタンの戦い』。まさかストップモーション・アニメーションは使っていなくてCGだろうが、1カットぐらい遊びでやってくれると嬉しい。そのオリジナルがこの作品。