『サスペクト・ゼロ』(2004) SUSPECT ZERO 99分 アメリカ
監督:E・エリアス・マーヒッジ 製作:ゲイ・ヒルシュ、E・エリアス・マーヒッジ、ポーラ・ワグナー 製作総指揮:モリッツ・ボーマン、ガイ・イースト、ゲイリー・ルチェッシ、トム・ローゼンバーグ、ジョナサン・サンガー、ナイジェル・シンクレア 原案:ザック・ペン 脚本:ザック・ペン、ビリー・レイ 撮影:マイケル・チャップマン 音楽:クリント・マンセル
出演:アーロン・エッカート、ベン・キングズレー、キャリー=アン・モス、ハリー・レニックス、ケヴィン・チャンバーリン、ウィリアム・メイポーザー、フランク・コリソン、ニコール・デハッフ
"サスペクト・ゼロ"とは特定の犯行手口やパターンがなく、捜査線上に決して浮かび上がらない、犯罪者。殺意だけで無差別殺人を繰り返す、プロファイリング不可能な殺人犯を意味する。んだそうである。
捜査上でヘマをしたためにダラスからアルバカーキへ左遷されたFBI捜査官マッケルウェイ(アーロン・エッカート)の元に謎のFAXが送られてくる。多数の行方不明者のリストと謎のメッセージに導かれるように、マッケルウェイは行方不明者の捜索に当たるようになる。ダラスから応援で駆けつけたかつての恋人フラン(キャリー=アン・モス)と共に捜査に挑むマッケイウェイの前に、謎の人物ベンジャミン・オライアン(ベン・キングズレー)の影が浮かび上がる。
とりあえずアーロン・エッカートのアゴはいつものごとく割れている。アゴの割れているいないは獲得形質であって遺伝形質ではないというのは本当だろうか。つまりアゴの割れている親から生まれたからアゴが割れているというわけではなく食生活で固い物をたくさん噛むなどしてアゴの筋肉が発達して結果として割れるというわけだ。あなたにも幼いお子さんがいたらクルミとか麦など固い物を存分に食べさせてLet'sアーロン・エッカートだ。
無意味に映像が凝っていて、天地が逆になったカットとか、微妙に斜めになったカット、役者の顔のアップなどが印象に残る。撮影は『タクシードライバー』(1976)などのマイケル・チャップマン。
とにかく遠隔透視とか言って千里眼+テレパシーのような能力を持った登場人物が登場するのはサスペンス映画として犯則であろう。それができたら犯人なんか思うがままに見つけられてしまう。
しかし、その能力者がFBIを追われて、自らの能力にも悩まされながら生きているというところに面白みがある。
最初にその人物は2人の人物を殺すが、実は二人とも連続殺人鬼。その人物は連続殺人鬼を殺す事で殺人を止めたのだ。だが、司法の場ではそれは通用せず単なる殺人鬼扱いされてしまう。当然と言えば当然だが、超能力者の悲哀である。
もしも人類を滅ぼす核戦争を引き起こす人物をプレコグニション(予知能力)で当てたとしてその人物を殺したら殺人鬼かというのがスティーヴン・キングの『デッド・ゾーン』(1983)だが、それに近い物を感じるのはオレだけだろうか。
その人物を演じるのはオスカー俳優のベン・キングスレー。この人も老けない人だ。深く入り込んだ芝居をしていて熱演である。自らの能力に振り回されて、行方不明者の顔が夢に浮かび夜も眠れず、アーロン・エッカートに「頼むから殺してくれ」と哀願するもの悲しさ。
ソ連のKGBが超能力の研究をしていたのは周知の事実だし、CIAもそれに影響されて行っていたという。だったらFBIで超能力による犯罪捜査の研究をしていてもおかしくないという理屈なのだろう。まるで『X-FILES』だな。フォックス・モルダーが知ったら喜びそうだ。「君はそう言うがねスカリー、これはFBIで実際に行われた実験なんだ」とか。
アーロン・エッカート自身もベン・キングスレーに似た資質を持っていて、だからこそ彼に事件を託したのだろう。
犯人はバファロービルなどと比べるとはるかにしょぼいが、犯人当て映画じゃないのでそれは大きな問題にはならないだろう。もちろん、真犯人が魅力的で、最後の対決が盛り上がれば言う事なしではあるのだけれど。演出がしょぼいというのはあるな確かに。
オープニングで牛乳パックに行方不明者の広告じゃないか、広報が掲載されているのが映るが、アメリカでは実際にそういう商品が売られているらしい。朝食でシリアルに牛乳をかけようと思ったら行方不明者の広報......アメリカ人の朝食は重すぎる。
そのぐらい行方不明者が身近ということでもある。そんなもの身近であってはこまるのだが、それがかの国の現状。子供からティーンエイジャーを始めとして大人まで幅広い年齢の人が行方不明になっている。その中には、家出人で都会に出て暮らしているとか、世捨て人になってしまったとか、単に今の生活が嫌で失踪してしまった人もいるだろう。だが、大部分が犯罪に、例えば児童ポルノなどに巻き込まれてしまって命を落としているのだろう。そんな国だからこのような物語もリアリティを持つ。
日本も年間10万人以上の行方不明者が警察が受理した分だけでもいて、その8割が女性で内4割近くが13歳未満だという。警察が事件性がないとして受理しない分を含めるといくらになるか想像も付かない。日本の牛乳パックに行方不明者の広報が載るのもそう先の話ではないのかも知れない。
キャリー=アン・モス"トリニティ"が『マトリックス リローデッド』から1年で一気に老けて(それまでもやばかったが)オバさんになっていたのには驚いた。でもこの人1967年生まれなのね。そりゃオバサンだわ。