『デイ・ウォッチ』 運命のリセットボタン

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B001TIKGKG.jpg『デイ・ウォッチ』(2006) DAY WATCH/DNEVNOY DOZOR 131分(ディレクターズカット:146分) ロシア

監督:ティムール・ベクマンベトフ 製作:コンスタンティン・エルンスト、アナトリー・マキシモフ 原作:セルゲイ・ルキヤネンコ、ウラジーミル・ワシーリエフ 脚本:ティムール・ベクマンベトフ、アレクサンダー・タラル、セルゲイ・ルキヤネンコ 撮影:セルゲイ・トロフィモフ 編集:ドミトリー・キセレフ 音楽:ユーリ・ポテイェンコ
出演:コンスタンチン・ハベンスキー、マリア・ポロシナ、ウラジミール・メニショフ、ガリーナ・チューニナ、ヴィクトル・ヴェルズビツキー、ジャンナ・フリスケ、ディマ・マルティノフ、ワレーリー・ゾルツキン、アレクセイ・チャドフ

 闇の異種の女性が殺された。犯人とされた主人公アントンを闇の異種の“デイ・ウォッチ(昼の番人)が昼の異種側に引き渡せと要求してくる。しかし、アントンはその女性を殺しておらず、それは闇の異種による陰謀だった。
 アントンの息子イゴールは闇の異種になり、頭抜けた才能を発揮していた。前作の呪い女スヴェトラーナは光の異種となりアントンと組んで“ナイト・ウォッチ(夜の番人)の研修中であり、彼女も優れた才能を示していた。
 太古から伝わり失われてしまった“運命のチョーク”という物があった。それで過ちを犯した場所で過ちを正す事を書けばそれが現実となる物である。この運命のチョークをめぐって光と闇の戦いが始まった。

 ストーリーがかなりさっぱり。とりあえず前作の『ナイト・ウォッチ』を観ている事が前提となっている。それは連続シリーズ物だから当たり前か。
 前作はダークファンタジーだったのに今作ではサスペンスミステリーとなっている。殺人犯捜しが行われ査問委員会が出てくるとかどんなファンタジーだ。まぁサスペンスミステリーと言ってもそれほど本格的なものではない。
 光と闇が対立した存在なのに、光の異種が闇の異種を殺したら大問題になって、裁判だの罰則だのとかなり秩序だった関係にある。だからこそ我々平凡な人間が生きていく事が出来るのだろう。
 もしも光と闇が本気で戦い始めたら世界は混乱の渦に包まれるに違いない。そして、表面上は調和を保っている光と闇だが、相手をなんとかして出し抜こうと常に考えている。殺人事件も光を打ち負かそうという闇の陰謀だ。

 フィルムの色彩がかなり変わった。彩度が明るくなって前作の重苦しい空気は少なくなった。前作のヒットで予算が増えたのかVFXもより派手になった。ホテルの壁面をスポーツカーが走り抜け、ガラスをぶち破ってホテル内に入り廊下を疾走するシーンはCMでも使われていたので有名だろう。
 ラストのモスクワ大崩壊は見応えがある。イゴールの使う小さなボールのおもちゃが増殖して人から建物からあらゆる物をぶち抜いていくのだ。タワーが崩壊したり、観覧車が台から外れて道路を転がり自動車や人を踏みつぶしていく。最後には廃墟と化したモスクワが残るのみ。

 ロシアの俳優なので顔に馴染みが無いせいもあって女優が前作の誰だったかなと最初にちょっと迷った。前作では意味ありげに出てきた割にはあまり活躍しなかったフクロウ女オリガは、今作ではアントンの所在を隠すために二人の精神を入れかえられてしまい、アントン役として大活躍。男臭い仕草で煙草をプカプカ吹かす始末で演じてて楽しそう。じゃあアントンが女性風演技をするのかというとそれはなかった。内股で歩くアントンとか見てみたかったのに。
 スヴェトラーナはきっちりヒロインの役目を果たしている。ロシアの若い女性はきれいだ。これが年を取るとでっぷり太ったタイプが多くなるんだろうけど。磨りガラス状のシャワーカーテン越しのシャワーシーンもあってサービス満点。終盤にはエネルギーを吸い取られてしまい、老婆になるシーンもある。
 ラスト近く、スヴェトラーナとイゴールがアントンの右腕と左腕をそれぞれ引っ張って奪い合うシーンがある。「僕のパパを返せ」「アントン、行っちゃイヤ」。二人とも並外れた能力者だからアントンはたまったものではない。シャツの袖が破れて取れてしまうのは当たり前。骨までミシミシきしんでくる。このままでは腕が抜けかけない。しかも、上空からスイカも真っ二つにする巨大なガラス片が落ちてくる。ここで大岡越前がいたら「先に腕を放した方の物」と大岡裁きを見せてくれるのだろうが。

 光の異種の父親アントンと闇の異種の息子イゴール。これは『スター・ウォーズ』エピソード4?6のダースベーダーとルーク・スカイウォーカーの反対である。そして父親が恋しいイゴールはアントンを闇へと誘う。バックにいるのは皇帝ならぬ闇の王。ますます『スター・ウォーズ』だ。光と闇の対立というのは普遍的テーマなのだろう。父親と息子の関係もしかり。

 所々面白いのだが、全体を通してみるとゴチャゴチャしていて整理が付いてないし、やはり中盤がだれる。これはディレクターズカットを観たので146分という長尺物のせいもあるかもしれない。不必要に思われる部分がいくつか見受けられたので、そこらをカットすればもっとテンポの良い作品になった可能性はある。
 しかし、“リセットボタン”的なあのラストはどんなもんだろうか。かなりな強引さに笑ったけど。でも三部作じゃなかった?

 エンドクレジットでの主要スタッフの表示の仕方が、夜の町をナイト・ウォッチの一人がトラックを走らせていて、そこで見かけるネオンサインや看板という形をとっていてこれには笑った。

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このページは、東森時音が2009年6月21日 18:26に書いたブログ記事です。

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