2009年5月アーカイブ

B001CLG24O.jpg『トレマーズ4』(2004) TREMORS 4: THE LEGEND BEGINS 101分 アメリカ

監督:S・S・ウィルソン 製作:ブレント・マドック、ナンシー・ロバーツ キャラクター創造:S・S・ウィルソン、ブレント・マドック、ロン・アンダーウッド 原案:S・S・ウィルソン、ブレント・マドック、ナンシー・ロバーツ 脚本:スコット・バック 撮影:ヴァージル・L・ハーパー、ノーマン・キャッテル 音楽:ジェイ・ファーガソン
出演:マイケル・グロス、サラ・ボッツフォード、ビリー・ドラゴ、ブレント・ローム、オーガスト・シェレンバーグ、J・E・フリーマン、リディア・ルック

 舞台は1889年のいつもの街。ちょうど1作目から100年前になる。ネバダ州だし西部劇の世界。この頃からちゃんとチャンの店がある。
 街の名は“REJECTION”という。あれ“PERFECTION”じゃなかったっけ?
 グラボイズの発生から始め、そういったことまで明らかになるいわば『トレマーズ ビギンズ』。

 街は銀鉱山で賑わっていた。しかしある日17人の死者を出す謎の事故が発生。生き残りによると何か奇妙な物が作業員たちを襲ったという。
 そして鉱山は閉鎖状態。街からはどんどん人が出ていった。まるで街の名前“REJECTION”=拒絶が示すように人はいなくなり、ごく一部のこの街以外に行き先がない人ばかりが残っていた。
 そこへ本社から電報が入る。「銀山の件認めがたし。オーナー自ら現地を訪れる」とのこと。オーナーが来れば何とかしてくれるにちがいないと期待する街の住民の前に駅馬車から降り立ったのはハイラム・ガンマー(マイケル・グロス)。1?3で活躍したバートのご先祖様である。100年前の話しだから曾お祖父さんぐらいであろうか。
 バートのご先祖様だから常に銃を持ち歩いて何かにつけて撃ちまくるかと思いきや、ごく都会的な人物で銃など使ったことがない。
 このハイラムの人間的成長がこの作品の目玉である。

 モンスター退治映画だった1?3と比べ、4はハイラムの変化・成長に焦点を当てている。
 最初は子供を騙すような嫌な都会人だったのが、グラボイズとの戦いで銃を持つことを覚える。ホテルの女主人には銀行が閉鎖しているから現金がない。ツケで泊まらせろと言っていたのも実は嘘で、自分の財産はあの銀山しかなくこのまま閉山となれば破産だと打ち明けるようになる。そのような過程を描いているので最初の1時間は退屈に感じる部分もあるかも知れない。
 面白くなるのは、一度街から逃げ出したハイラムが大量の武器を抱えて戻ってきてからだ。やはりこの男には武器が似合う。でも射撃の腕は下手なのが笑える。
 途中で腕利きのガンマンをグラボイズ退治にやとうがその黒手のケリーというガンマンがビリー・ドラゴ。やはり渋いし目つきが異常。個人的にファンなので登場は嬉しかったが、コルト・シングル・アクション・アーミーでグラボイズを相手にするのはさすがに苦しかったのか途中で食われて退場。グラボイズを見て「何故もっと敵の情報をよこさなかったんだ。そうすれば威力のあるショットガンやパント・ガンなどを持ってきたのに」と怒るシーンは過去の作品でそのまんまバートがやっている。

 ラストの30分はお待たせのグラボイズ退治。
 三匹のうち一匹はあり得ないだろと思ったら本当にあったらしい2メートルはありそうな巨大な銃パント・ガンで仕留めるが、残りの二匹は安易に銃や火薬でやっつけてしまわずに、とっさの工夫で倒してくれるのが嬉しい。ドカンバーンは派手で良いけど、この作品の魅力はそれじゃない。
 インディアンの男が食われたかなと思ったらグラボイズが等身大のインディアン人形を吐き出す。「これは俺をモデルにして作られた人形だ」と言い張っていた奴だ。で、インディアンは無事。この等身大のインディアン人形、『クリープショー2』のジョージ・ケネディのエピソードでも登場したが、この作品での登場人物のセリフ曰くタバコの看板なんだそうな。なるほど、インディアンはタバコを吸うな。
 あー、ネイティブアメリカンって言ってないけどわざとだからね。今の人はネイティブアメリカンって呼ぶけどインディアンって呼ばれてた頃の人のことはインディアンって呼ぶよ。

 バートが働いている様子もないのになんであんな堅固な家や高価な銃器を揃えたり高そうな車に乗れるのか不思議だったが、一族が銀山のオーナーとして稼いでいた時期があったのか。その遺産があるので好きなことが出来るんだな。あるいは投資や運用で今でも稼いでいるのかも知れない。

 ここでグラボイズと派手な戦いを繰り広げたのに、1では何で誰も知らないんだとかそこら辺の矛盾点もちゃんと回収している。
 こうしてグラボイズをやっつけて再び銀山は再開し街に人が戻ってきた。街の名前も“PERFECTION”=完璧に改められた。
 だがいつグラボイズが復活するか分からない。そこで今日も今日とてピースメーカーで射撃の練習をするハイラム。しかし、相変わらずさっぱり的に当たらない。そこで今では恋仲となったホテルの女主人が用意した物はガトリンガン……バババババババッ。ここからガンナー一族の銃への異様な思い入れが始まったと思わせる

これが噂のグラボイズBOX
DSCN0220.jpg

B001CLG24E.jpg『トレマーズ3』(2001) TREMORS 3: BACK TO PERFECTION 104分 アメリカ

監督:ブレント・マドック 製作:ナンシー・ロバーツ、S・S・ウィルソン 原案:S・S・ウィルソン、ナンシー・ロバーツ、ブレント・マドック 脚本:ジョン・フェルプレイ 撮影:ヴァージル・L・ハーパー 音楽:ケヴィン・カイナー
出演:マイケル・グロス、シャーロット・スチュワート、ショーン・クリスチャン、スーザン・チャン、アリアナ・リチャーズ、トニー・ジェナロ、バリー・リヴィングストン、ジョン・パパス

「パート3ですがビデオ用映画ということになりましたよ」「うーん、するとさらに予算が少なくなるな。モンスターをちゃちくしたら駄目だろうし、他になにかコストを削る算段はないものか」「あっ、こんどはフレッド・ウォードも出さないで行きましょう。なんだかんだで名前の売れた俳優ですから出演料もバカになりませんし」「よし、それで行こう!」
 という経過だったのかは知らないが、ついにケヴィン・ベーコンがいなくなりフレッド・ウォードもいなくなり、初代の主役はいなくなってしまった。
 そこで主役に格上げされたのがサバイバルオタクでガンオタクのバート。冒頭からアルゼンチンで機銃に乗って地上を二本足で走るグラボイズ、その名もシュリーカーを撃ち殺しまくる。
 そして懐かしの故郷に帰ってきた。街も人が減って今では人口5人。この街はなんの産業で成り立っているのか。そして他所からやって来た青年がグラボイズ冒険ツアーなる物をやっている。野原を走って相棒が消火器などでグラボイズの出現を演出する一種のテーマパークだ。今のは本物か、それともインチキで騙されているだけなのか、観客の反応は様々。

 作品の製作年度と劇中の時間はリンクしていて、1作目(1989)から11年経過したことになっている。街にいるのはバートと、チャンの店を継いだ中国人女性、売れてなさそうな陶芸家のおばさんとその娘。おばさんと娘はちゃんと同じ俳優が引き継いでやっている。
 1でホッピングをやっていた女の子もすっかりお年頃。冒険ツアーの青年にちょっとお熱?
 もう一人オジさんがいたが名前を忘れた。バスケットボールを食われた悪ガキもすっかり嫌な奴になって2シーンだけ出演している。

 11年ぶりにグラボイズが復活し冒険ツアーの相棒が食われる。グラボイズ狩りに出ようとしたバートたちを役人がやってきて「世界で最も古い生き物を殺すとはなんたることか」と猟を禁じられてしまう。しかし、グラボイズはシュリーカーに進化し役人たちはあっけなく全滅。
 そして12時間が過ぎたシュリーカーはさらに進化する。羽を広げて尻からガスを噴出して(人はそれを屁と呼ぶ)空を飛ぶアスブラスターになったのだ。無理ありすぎ。よくぞこれを考えついた、やろうと思った。
 これで地中、地上、大空の三種目制覇である。この次はどこへ行くのかグラボイズ。
 ならばバートの家にある様々な銃器で撃ち殺せばいいじゃないかとなるが、ある事情でバートの家は吹き飛んでしまう。
 そこからいかにしてアスブラスターを倒すかという工夫に満ちた作戦が始まる。金はかかっていないが頭を捻りまくった脚本で、これが『トレマーズ』シリーズの魅力。
 2では熱で察知されないためドアを抱えて歩いたが、3では上空から熱で察知されないため大きなマットレスを担いで歩く。野原をマットレスを担いで歩く姿がマヌケで良い。

 チャンの店を継いだ女性は店でTシャツやフィギアなどの各種グラボイズグッズを売っている。なかなか商魂たくましい女性だ。
『ジョーズ』もシリーズが続いた作品だが後の作品で『サメ』グッズを売っていたシーンってあったか記憶にない。やっぱ不謹慎ってことかな。

B001CLG244.jpg『トレマーズ2』(1995) TOREMORS II: AFTERSHOCKS 99分 アメリカ

監督:S・S・ウィルソン 製作:クリストファー・デファリア、ナンシー・ロバーツ 製作総指揮:ロン・アンダーウッド、ブレント・マドック 脚本:S・S・ウィルソン、ブレント・マドック 撮影:ヴァージル・L・ハーパー 音楽:ジェイ・ファーガソン
出演:フレッド・ウォード、クリストファー・ガーティン、ヘレン・シェイヴァー、マイケル・グロス、マルセロ・テュバート、マルコ・ヘルナンデス、ホセ・ロザリオ

 前作から数年後、ケヴィン・ベーコンは結婚して腰を落ち着けコンビは解消。フレッド・ウォードも何でも屋を辞めて一時期は羽振りも良かったが今は落ち目でダチョウ農場を営んでいた。
 ところがメキシコの油田でグラボイズが発生し社員が6人食われるという事件が起きた。石油会社がフレッド・ウォードに退治を依頼してくる。ケヴィン・ベーコンにも頼んだのだが妻がいるからと断られたとのこと。というわけで今作ではケヴィン・ベーコンの出番はない。ファンの方は残念だろうが、ケヴィン・ベーコンは前作で人気が再燃し『フラットライナーズ』(1990)や『JFK』(1991)に出演するようになり1995年のケヴィン・ベーコンといえば『アポロ13』などの大作に出ていてまさかこんな低予算映画に出演するはずがない。しかも、これは劇場用映画ではなくテレビ用映画。

 ラジコンに火薬をくくり付けて、グラボイズに食わせたところで爆発させるというアイディアを思いつき、1匹5万ドルの賞金でどんどん退治していく。ところが、一頭のグラボイズが地中から頭を出した格好のままの状況になってしまう。生きたまま捕らえれば10万ドルのボーナスというのでクレーン車で持ち帰ろうとするが、グラボイズが静かになったので様子を見に行くと腹が割けて中味が空っぽになっていた。
 なんとグラボイズが進化して地上生物になったのだ。地中グラボイズの腹を割って出てきた今度のグラボイズは二本の足で地上を走り回る。そして音ではなく熱で敵を察知しする。プレデターのような(予算を削って作った)サーモグラフィ映像が所々に登場する。味方とのコミュニケーションも熱で行う。
 しかも単性生殖で物を食べればどんどん増えていく。車はエンジンの熱を狙って全て壊されてしまい、砂漠の中の石油会社に取り残されてしまう。

 熱を察知されないために外した扉を持ってグラボイズとのバリアにしてヒョコヒョコと荒野を渡ったり、体温を隠すために布でグルグル巻きにした身体に消火器をかけて温度を下げたりと前作ほどではないが様々な工夫がこらされている。

 サバイバルマニアのバートも再登場し対戦車ライフルでグラボイズをぶっ飛ばす。ついでに唯一無事に残っていた車のエンジンまで……
 奥さんは実家に帰ってしまい、どうやら離婚しそうな様子。奥さんの俳優がメジャーになってしまったという話しは聞かないが、ケヴィン・ベーコンとは違う理由で出演できなかったのか、それとも登場人物の人数を最小限まで削りたかったからなのか。今回は10人以下しか出てないものな。

 今回も女性の地質学者が出てくるが恋に落ちるのは今度はフレッド・ウォードの番。二人が互いにお互いのヒップを見つめるシーンには笑った。

 予算をかけずに知恵を使っていかに面白い作品を作ろうという想いが伝わってくる。たしかに1億ドルを超えるような予算で作った作品には見応えがあるが、金はかかっていなくても面白い物は作れるという証拠。特に今作は前作よりさらに低予算のはず。

B001CLG23U.jpg『トレマーズ』(1989) TREMORS 96分 アメリカ

監督:ロン・アンダーウッド 製作:ブレント・マドック、S・S・ウィルソン 製作総指揮:ゲイル・アン・ハード 原作:S・S・ウィルソン、ブレント・マドック、ロン・アンダーウッド 脚本:S・S・ウィルソン、ブレント・マドック 撮影:アレクサンダー・グラジンスキー 編集:O・ニコラス・ブラウン 音楽:アーネスト・トルースト
出演:ケヴィン・ベーコン、フレッド・ウォード、フィン・カーター、マイケル・グロス、レバ・マッケンタイア、ボビー・ジャコビー、ヴィクター・ウォン、ビビ・ベッシュ、アリアナ・リチャーズ、シャーロット・スチュワート、トニー・ジェナロ、リチャード・マーカス

 ネバダ州にある人口十数人の小さな街。乾いた大地が広がるその街をグラボイズという怪物たちが襲ってきた。そいつらは地中に生息し、目はなく振動で物を感じ取る。歩いたりするとその足音を聞きつけて猛スピードで地中を這って襲ってくる。逆に言えばじっとしていれば居所がバレないので襲ってこない。
 電話線は切れ、隣町への道路は岩が崩れて通行できない。街を襲うグラボイズたちからいかにして身を守ればいいのだろうか。

 低予算B級映画ながらスマッシュヒットを飛ばしファンも多い。
 小さな街という舞台設定は登場人物の個性を強く出せるし、何より予算がかからない。
 主人公はケヴィン・ベーコンとフレッド・ウォードのコンビ。二人で組んで何でも屋をやっている。今でこそ復活したケヴィン・ベーコンだがこのころは消えた俳優のような存在だった。この作品で復活したのかも知れない。
 フレッド・ウォードはご存じ『レモ/第1の挑戦』でレモを演じた男。地味だが渋い。
 頭の切れるケヴィン・ベーコンとタフなフレッド・ウォードの組み合わせが面白い。

 最初は鉄塔に登ったまま数日間そこに居続けて脱水状態で死亡した男が見つかるところから話しは始まる。
 そして道路工事現場での怪奇な事件。地質学の研究に来ている女子大生は地震計に謎の揺れを感知する。次第に始まっていく事件が実にホラーしていてうれしい。

 岩から岩へと棒を使って飛んで渡ったり、突撃したグラボイズがコンクリートに衝突して死んだりとやりたい放題。
 なかでもサバイバルマニアのバート夫妻が地下室で音を立てていて、そこへ無線連絡が入ってきて「やばいぞすぐに屋根の上に逃げろ。怪物がそっちに向かってるぞ」といわれてのぞき窓から外を見て「何にもいないぞ」と無視する。これはすっかり死亡フラグだなと思ったら地下室に突入してきたグラボイズに銃を乱射する。そしてカメラが移動していくと彼らの背後の壁には銃がいっぱい掛けられていた……。大爆笑。しかも最終的にグラボイズを象撃ち用ライフルで撃ち殺してしまう。

 グラボイズが地中を走ると柵の棒がポンポンッと跳ね上がったり、床の板が波打ったりといった見えないけどいるという表現に工夫がある。グラボイズが車を地中に引きずり込むシーンでは夜空に伸びるヘッドライトの光で表現したのも面白かった。
 人が何人か食い殺されているが、そんなに悲惨さはなく明るく楽しく観られるモンスターホラーに仕上がっている。
 グラボイズを単なる人食いモンスターではなく人間と駆け引きもするだけの知恵を持った存在にしたのは正解。だからハラハラして盛り上がるし、ラストの爽快感にも繋がってくる。

B001F4C670.jpg『2010年』(1984) 2010 113分 アメリカ

監督:ピーター・ハイアムズ 製作:ピーター・ハイアムズ 原作:アーサー・C・クラーク 脚本:ピーター・ハイアムズ 撮影:ピーター・ハイアムズ 特撮:リチャード・エドランド デザイン:シド・ミード 音楽:デヴィッド・シャイア
出演:ロイ・シャイダー、ジョン・リスゴー、ヘレン・ミレン、ボブ・バラバン、ケア・デュリア、ダナ・エルカー、マドリン・スミス、ジェームズ・マクイーチン、メアリー・ジョー・デシャネル、エリヤ・バスキン、ウラジミール・スコマロフスキー、ハータ・ウェア、アーサー・C・クラーク(ノンクレジット)、声の出演: ダグラス・レイン、オルガ・マルスネード

 少年期にSF好きだったオレだが映画の『2001年宇宙の旅』は好きではなかった。後に、これは監督のスタンリー・キューブリックが嫌いだったんだというので納得がいった。キューブリックは嫌いだしSFを分かってないし『シャイニング』ではホラーを分かってないし『突撃』では戦争映画を分かっていない。『博士の異常な愛情』ではコメディを分かっていない。何も分かっていないそれっぽい画を撮るのが得意なだけの男だったのだ。
 だが、その続編である『2010年』は好きである。SFしてるよねぇ。監督はピーター・ハイアムズ。ほんとなんでも撮る人だ。

 映画が製作された1984年当時はソ連がまだ存在し、米ソ間の争いが実際の物としてあったのだ。だから2010年が舞台でも米ソ冷戦が登場するが、これは予想出来ない者だったから仕方ない。フロイドとソ連の女性上官が話しをして「自分達の息子と娘を結婚させよう」という話しになり、「そんな世の中になればいいですね」と締めくくる。そんな時代だったのだ。

 珍しく知的な役のロイ・シャイダーはフロイド博士役。映画の前半部分ではビーチでAppleIICに液晶ディスプレイを乗せてポータブルに使っている。今では当たり前の光景だが、当時としては画期的で「Appleすげぇ」って感じだった。でもまだAppleIIでMacじゃないんだよな。もう数年後ならMacbookになっていたのだろうか。
 なんといっても見せ場は設計者のチャンドラ博士とHAL9000との会話。木星が特殊な状況に陥ってそれから逃れるためにディスカバリー号を捨て石のブースターとして使わねばならない。それを論理的かつ人間的にHALに説明し説得する。「お前は新しい宇宙ステーションに行くんだよ」とかごまかしていたのに最後にはついに真実を告げてしまう。それに対するHALの答えは「真実をありがとう」。コンピューターと人間の会話。SFだねぇ、泣けるねぇ。
 ちなみに地球でのチャンドラ博士はHALの次世代機を作っていてそいつの名はSAL9000。HALの人工知能よりさらに進んで人間に近くなっているのだが、まだあと少し足りない。どのぐらい足りないかというと髪の毛3本分。SAL(サル)は人間より毛が三本少ないなんてことを申しまして……すみません。
 もはや人間ではなくなったボーマン船長が妻と母に別れを告げに行くところも泣ける。特に母親の所は個人的に涙だだ漏れだ。
 最終的には木星が第二の太陽となり、木星の衛星エウロパに新たなる生命が生まれる。
 木星が太陽に?それはちょっと無理がないかという人もいるだろうが、天文学的には木星は太陽になり損なった星だと言われている。“木星太陽化計画”がテーマだった『さよならジュピター』だって設定は無理ではなかったのだ。いや、ジュピターゴーストとかは無理だが。あと無重力セックスも。

 宇宙船の内部はシド・ミードのプロダクションがデザインを手がけているだけあって今でも古びていない。モニターがブラウン管だったりするがこれは仕方ないだろう。CGによる変形する木星も当時劇場で観たオレは感動したものだ。
 それに対して、冒頭の地球のシーンはどうしても野暮ったさを感じずにはいられない。アンテナ群やホワイトハウス前などでなるべく近未来的、時代を感じさせない場所をロケ地に使っているのだが、実際の場所をロケ地にしている以上仕方ないのだろうか。

 前作と合わせて2本観ても黒い石版モノリスの正体は分からない。小説はさらに続編があるのでそちらを読めばもっと詳しく分かるのだが、アーサー・C・クラークの小説なので本格SFで誰にでも読みやすいとは言えないのが欠点。

B001WBXL2A.jpg『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008) HELLBOY II: THE GOLDEN ARMY 119分 アメリカ

監督:ギレルモ・デル・トロ 製作:ローレンス・ゴードン、マイク・リチャードソン、ロイド・レヴィン 製作総指揮:クリス・シムズ、マイク・ミニョーラ 原作:マイク・ミニョーラ 原案:マイク・ミニョーラ、ギレルモ・デル・トロ 脚本:ギレルモ・デル・トロ 撮影:ギレルモ・ナヴァロ クリーチャーデザイン:マイク・エリザルド プロダクションデザイン:スティーヴン・スコット 衣装デザイン:サミー・シェルドン 編集:ベルナ・ビラプラーナ 音楽:ダニー・エルフマン 特殊メイクデザイン:マイク・エリザルド
出演:ロン・パールマン、セルマ・ブレア、ダグ・ジョーンズ、ルーク・ゴス、アンナ・ウォルトン、ジョン・アレクサンダー、ジェームズ・ドッド、ブライアン・スティール、ロイ・ドートリス、モンツェ・リーベ、ジェフリー・タンバー、ジョン・ハート、声の出演:セス・マクファーレン

 とにかく魅力的なクリーチャーたちに大満足。考えてみると背景キャラはともかく主要登場人物に人間が少ないこと少ないこと。
 マンハッタン橋下のトロール市場は人間などどこを見渡してもいない、まさにファンタジーの世界。異形の姿をしたヘルボーイたちもここではすっかり背景に溶け込んでごく普通のキャラになってしまう。
 秘密の地下都市への入口を捜していると、そこら辺の巨石がゴゴゴゴゴォと動き出して、実は石の巨人で入り口を隠していたなんてちょっとしたところにも細かいアイディアが入っている。画面の隅々まで宝探しのような映画だ。

 ストーリーはちょっと『ロード・オブ・ザ・リング』が入っていて、その昔、人間が森を荒らし始めエルフたちファンタジー一族と戦いが始まった。このシーンはリアルな人物ではなくいかにも昔のおとぎ話というようにパペットを使って語られる。好戦的な人間に押されたエルフはあるゴブリン職人の提案に乗って黄金の軍隊を作った。70体が70隊いるというから合計4900体の黄金兵士は人間を蹴散らしたが、そのあまりの威力の凄さに怖れたエルフ王は人間と和解して黄金の軍隊を指揮する黄金の冠を三分割して、二つをエルフが、一つを人間が持つことで封印したという。
 現在になって、森を潰してショッピングセンターを作っている人間の放漫さに怒ったエルフの王子が黄金の軍隊を復活させるべく冠を集め始める。それをいかにヘルボーイたちが防ぐかという話し。どうでもいいけどエルフの王子は『デトロイト・メタル・シティ』のクラウザーさんに似ている。
 森林破壊に腹を立てているだけあって、王子の手先には『もののけ姫』の巨大化したシシ神さまのダイダラボッチの様な緑の巨人も出てくる。大都会の中での戦いで、ヘルボーイの銃弾に倒れた緑の巨人は辺りに草木を生やしながら死んでいく。頭部が花になって白い物をまき散らすがあれは種だろうか。
 最初の見せ場はトンボぐらいの大きさの"歯の妖精"との戦い。なんだ可愛いもんじゃないかと思っていると、ガブリと噛まれる。それが大群でやって来るからたまったもんじゃない。"歯の妖精"という意味も歯を最初に食べてしまうからだとか。担当官の一人が食われて骸骨になってしまったりで直接的なグロテスク描写が登場するのでこれからどうなるのだろうかとちょっと不安になったが、そういうのはここだけだった。

 VFXばりばりのアクションシーンも良いが、ヘルボーイとエルフのお姫様に惚れてしまった半魚人のエイブがCDのラブソング集を聴きながらビールを飲んで歌うシーンなんか好きだなぁ。
 ギレルモ・デル・トロならではの『パンズ・ラビリンス』でも見せたダークファンタジーな映像美は健在で、美術が好きな人はそれを観るだけでも楽しめるだろう。クリーチャーはちょっとグロテスクだけど不思議と魅力的で、目のない死の天使など彫刻にして(フィギアじゃ駄目)持っていたい。
 ラストは黄金軍団の保管庫でのヘルボーイとエルフの王子との戦い。エルフの王子はついに完成した冠を被り「私が黄金軍団を指揮するのに意義のある者はいるか?」と言う。
 そしていくつもの金色の歯車の上で戦いを始める。「意義のある者は」に歯車って『ルパン三世カリオストロの城』みたいで実に楽しい。男の子や男の子だったことのある人はこれを観るとワクワクしてしまうだろう。
 ついに動き出した黄金の兵士は確かに金色。でもデザインがロボダッチ(古すぎ)みたいで胴体が丸すぎ。もうちょっとシャープで格好良くしても良かったと思うんだけど。黄金の戦士というぐらいだから黄金戦士ゴールドライタンぐらいに直線オンリーとかさ。ギレルモ・デル・トロ的にはあれがベストなんだろう。ヘルボーイの拳銃で壊れるんで「なんだ昔はすごかったかも知れないけど、今の武器相手なら大したことないじゃん」と思っていたら自動修復機能が付いていた。歯車が勝手に組み合わさって部品を運んだりして勝手に修理してしまう。これは無敵だ。この無敵の黄金の軍団相手に勝つ方法はあるのか?

 お姫様の死に途中で「僕には涙腺がありませんからね」と言っていたエイブが一筋の涙を流しているのが記憶に残る。

 相変わらず悪ガキのヘルボーイだけど、パパになるって大丈夫?しかも双子。(この双子は同じく双子で悲劇的な死を遂げたエルフの王子とお姫様の生まれ変わりだったりして、なんて想像してみたり)

B00007KKUO.jpg『ワックス・ワーク』(1988) WAXWORK 97分 アメリカ

監督:アンソニー・ヒコックス 製作:スタファン・アーレンベルグ 脚本:アンソニー・ヒコックス 撮影:ジェリー・リヴリー 音楽:ロジャー・ベロン
出演:デボラ・フォアマン、ザック・ギャリガン、ダナ・アッシュブルック、エリック・ブラウン、J・ケネス・キャンベル、クレア・ケリー、ミシェル・ジョンソン、パトリック・マクニー、チャールズ・マッコーハン、マイルズ・オキーフ、ジョン・リス=デイヴィス、デヴィッド・ワーナー、クレア・ケアリー

 街に突然蝋人形館がオープンした。この蝋人形館は普通の蝋人形館とちょっと違う。蝋人形の作りがとてもリアルで、まるで人間がその場にいるよう。いや、これは蝋人形を作るコストを抑えて実際の俳優がそこに立ってたりするだけなんだが。微妙に身体が揺れていて笑える。呼吸するなってば胸が上下に動いているぞ。

 例えば狼男のコーナーがある。コーナーを仕切っている一本のロープをまたいで中に入り込むと本当に狼男が生きている世界に連れ込まれてしまう。最初は幻覚と思っている物の小ドラマに巻き込まれてついには狼男に殺されてしまう。そうすると狼男のコーナーに死体の蝋人形が出来上がる。コーナーの中で死ぬと本当に死んでしまうのだ。
 こんな具合に6人の犠牲者を出すと館全体の蝋人形館が甦り、ついには世界は地獄と化してしまう。蝋人形の中には吸血鬼やフランケンシュタインの怪物もいてお前ら怪物君の召使いかって感じ。
 よく見ると『リトルショップ・オブ・ホラーズ』のオードリーJr(リメイク版だとオードリー2)もいたりして「FEED Me!」とか言っている。
 ゾンビの世界へ行くと『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のイメージなのだろうかちゃんと画面がモノクロになる辺り、「ああ、怪奇映画が好きなんだろうなぁ」作り手が楽しんで作っているのが感じ取れる。
 モンスターではないがサド侯爵の蝋人形もあって、それにヒロインが魅せられて自分からその世界に入って行ってしまい、サド侯爵に死にそうになるまで鞭で打たれて恍惚の表情を浮かべる。ヒロイン、マゾだったのか。主人公が助けに来てもそっちのけでサド侯爵にすがりつく様が妙に色っぽい。しかしそのサド侯爵の世界も、これは幻だと気づいた主人公の青年によって打ち砕かれる。

 悪の黒幕はリンカーンという男。悪魔に魂を売り不死の命を得た代償として蝋人形館を完成させるのが目的。だがそれには長い時間がかかっていて、それに対抗すべく調査し戦いの準備をしている男たちもいた。
 ラストはついに蝋人形館中の蝋人形が暴れ始め、そこへ対抗組織が突入してくる。ところがこの組織、オヤジ率が異様に高い。というかオヤジばっか。モンスター対オヤジのドタバタの大乱闘が始まるのだ。海兵隊みたいのが突入してくるんじゃないのかよ。
 剣や銃でオヤジ大活躍。リーダーは戦闘用に改造した車椅子に乗ったオヤジ。
 主人公は影が薄くなりそうな所を、現実世界に出てきたサド侯爵との剣の一騎打ちでなんとか見せ場を作る。
 前半もコミカル風味なホラーだったが、なんでラストをここまでハチャメチャにしてしまったのだろう。個人的にはうれしいが。何気に『グレムリン』シリーズで主役を演じたザック・ギャリガンが出演しているのもポイント。

B0026OBVDI.jpg『クリッター4/ファイナル・ウォーズ』(1992) CRITTERS 4: THEY'RE INVADING YOUR SPACE 94分 アメリカ

監督:ルパート・ハーヴェイ 製作:バリー・オッパー 原案:ルパート・ハーヴェイ、バリー・オッパー 脚本:ジョセフ・ライル、デヴィッド・J・スコウ 撮影:トーマス・L・キャラウェイ 音楽:ピーター・マニング・ロビンソン
出演:ドン・オッパー、マルティーヌ・ベズウィック、ブラッド・ドゥーリフ、テレンス・マン、ポール・ウィットホーン、アンダース・ホーヴ、アンジェラ・バセット、エリック・ダレー、アン・ラムゼイ

 前作の舞台は1992年。ラストで銀河中で最後の2つとなったクリッターの卵を保護するため、チャーリーはカプセルに乗った。そして2045年、何故だかカプセルは未だ土星流星群付近を漂流中だった。どうして回収もされないまま何十年も経ってしまったんだと言われても困るが、『エイリアン2』のリプリーの様に行きすぎてしまうか何かしたんだろう。この手の作品に重箱の隅をつつくような設定のあら探しをしてもきりがないし意味がない。
 それにしても凶暴凶悪な生物クリッターを絶滅の危機から救わねばと言う決定がよく分からない。『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)で政府の役人・本田博太郎がギャオスの保護を時になずらえて主張するがあれと同じようなものなのだろう。凶暴な生物でも野生保護の観点から絶滅はまずいんだろうか。
 そしてカプセルは近くを航行中の船に拾われるが、卵の回収を指示した銀河系評議会はすでに過去の物となっていた。そこで現在の所有者を調べたところテレコー社という大会社だった。その会社のオンボロ宇宙ステーションで卵を引き渡すことになったのだが、卵が孵化してしまいこれまた大騒動に。

 ついにクリッターが宇宙に帰ってきた。宇宙ステーションを舞台に、奴らが大暴れ。ダクトやケーブル用通路がある狭く入り組んだ宇宙ステーションはクリッターにとって最適な場所。あちらから出てきたかと思えばこんどはこちらからと神出鬼没。おさかんなクリッターはどんどん卵を産んで増殖して人間側はどんどん追い込まれていく。
 それに対して人間側が持っている武器は骨董品のコルト・シングル・アクション・アーミーが一丁と弾が6発だけ。その弾も古いから発射できるか撃ってみないと分からない。
 一人また一人とやられていく内に、このステーションが生物兵器を作っていたことが明らかになる。ということはテラコー社はクリッターを生物兵器として利用しようというのだろうか?
 これまでのクリッターは簡単な会話をするぐらいだったが、この作品ではなんとコンピューターを使いこなし宇宙船の軌道を餌の豊富な地球にセットする。使い方を教わったわけではないのに大したものだ。たしかにこの知能と凶暴性、食欲などを考えると生物兵器向きなのかも知れない。
 オンボロ宇宙ステーションだけあってマザーコンピューターのアンジェラがバカで人間の指示にまるで従ってくれない。誤ってゴミ置き場に落ちて、そのゴミの宇宙への廃棄が始まるのだが、「アンジェラ、今すぐゴミの廃棄を止めろ」という指示に対して「ゴミの指示は受けられません」と無視されてしまう。その後もゴミ扱いされて、逆にそれを利用して逆の指示を出してアンジェラを思ったように操る方法も思いつく。

 これまでのシリーズとの大きな違いはギャグの少なさだろう。光線銃のビームがかすめてクリッターの一匹がハゲになってしまうとか、アンジェラ絡みのギャグしか思いつかない。おふざけが魅力だったので残念だ。
 ラストはかつてチャーリーの同僚だったハンターとの対決。彼も銀河系評議会の崩壊によって大企業テラコー社に身を寄せたのだろう。そして何十年も経つ内にすっかり人が変わり、企業優先の非情な男になっていた。保護目的だったクリッターの回収を生物兵器に利用するために変更してしまうぐらいに。シリーズを通してみているとこのシーンはつらい。あんな良い奴だったのに。

 エンドクレジットの最後には「今回もクリッターには一切の危害を加えておりません」との表示が。アメリカ映画のエンドクレジットでたまに観る「動物には一切の危害を加えておりません」のパロディだな。

B0026OBVD8.jpg『クリッター3』(1991) CRITTERS 3 90分 アメリカ

監督:クリスティン・ピーターソン 脚本:デヴィッド・スコウ 撮影:トーマス・L・キャラウェイ 音楽:デヴィッド・C・ウィリアムズ
出演:ドン・オッパー、エイミー・ブルックス、レオナルド・ディカプリオ、ジョン・カルヴィン、クリスチャン・カズンズ、ウィリアム・デニス・ハント、ニナ・アクセルロッド、ジェフリー・ブレイク、ホセ・ルイス・ヴァランスエラ、テレンス・マン

 二度のクリッター騒動があった街を通り抜けたキャンピングカーがパンクした。これ、実はクリッターを踏んづけて針でタイヤに穴が開いたせい。そして車の下にいくつもの卵を抱えたままキャンピングカーは都会の安アパートに帰った。いつの間に卵がくっついたのかって?そんなの知るか。この手の映画ではそういうもんだと思っておけばいい。
 この安アパート、悪徳地主が住民を追い出しにかかっているところで、跡地にショッピングセンターを建てる計画。このあくどい継父を毛嫌いしている息子がなんとレオナルド・ディカプリオ。あのレオナルド・ディカプリオですよ。タイタニックですよ、ディパーテッドですよ。ちなみにこれが劇場用映画デビュー作。レオは未だにこの作品に出演したことを後悔しているという噂もあるが、お茶目な経歴ってことでいいじゃないか。一作ぐらい「何で出たの?」というおポンチな経歴があった方が俳優として深みが出る。……出ないか。

 2作目は街全体を巻き込む大騒動になった。それはそれで面白いんだが、こういったホラー映画はやはり舞台や登場人物が限定されている方が面白い。
 この作品の場合、物語のほとんどが安アパートで進む。床を転がり回るクリッターから逃げ出して、天井裏を這いずり回るシーンがある。密閉空間からいかに逃げ出すかというシチュエーションは観ていてハラハラする。大袈裟に言えば『エイリアン2』のエイリアンから逃げながらダクトを這いずり回るシーンなどと本質的に同じ。規模は大部しょぼいけど同じ。
 登場人物の数も少ないので個性の強いキャラクターを出せる。おデブちゃんな女性とか、リプリーもどきの女性電話技師などだ。もちろんシリーズ皆勤賞のチャーリーも危機の時には武器を持って駆けつけてくれる。1作目から考えると強く格好良くなった。情けないけど。
 使う武器は宇宙人の武器を参考にして自作したらしいちょっと不格好。しかし、宇宙人と過ごしたのは2年間だから、その間に習得した技術としては大したものだ。そういえば1作目で「僕、銃の取り扱いとか得意なんですよ」って宇宙人に取り入っていた。
 主人公はアパートに住む一家。母親を数年前に病気でなくしていて父、娘、息子の三人暮らし。父親は鉄道会社で働いていて家を空けることが多い。そんな家族がクリッター騒動を生き延びることで一致団結することを覚え、再び一つにまとまるそんなお話。

 地下の洗濯室から活動を始めたクリッターたちの悪さぶりは相変わらず。人は食うわ、老夫婦の台所は荒らし回るわの大騒ぎ。パイ投げを始めたり、洗剤を飲んでラリって泡を吹いていたりとやりたい放題。モデルはやっぱり悪ガキなんだろうか。
 今回もクリッターに人は食われるが、主人公側の人間は無事でいかにも嫌な奴な悪人だけなのでその点は安心して観ていられる。本当はもっと食いまくって欲しかったけど。

 こうして無事にクリッターを退治し一安心。現場を確認しに戻ったチャーリーは洗濯室で二つの卵を見つけこれを壊してしまおうとしたら……なんと驚きの結末というわけでパート4へ続く!

B0026OBVCY.jpg『クリッター2』(1988) CRITTERS 2: THE MAIN COURSE 87分 アメリカ

監督:ミック・ギャリス 製作:パリー・オッパー 製作総指揮:ロバート・シェイ 脚本:ミック・ギャリス、デヴィッド・トゥーヒー 撮影:ラッセル・カーペンター 音楽:TBD
出演:スコット・グライムズ、テレンス・マン、ドン・オッパー、バリー・コービン、リアーヌ・カーティス、ハータ・ウェア、ロクサーヌ・カーノハン、リン・シェイ

 前作から2年。ブラウン一家はカンザスに引っ越していた。その売り家はずっと買い手がつかないまま放置されており、そこで悪ガキが前作でクリッターが残していった卵を見つけたからさあ大変。あれ卵は3つじゃなかったけ。数十個にも増えているぞとか何で2年の間孵化しなかったのかなんてことは気にしないきにしない。悪ガキはそれを骨董品屋にビール2ケースとプレイボーイの雑誌で売りつけ、骨董品屋はその卵を教会の団体に売りつけた。そう、明日は復活祭。イースターの卵探しにクリッターの卵を使おうって寸法だ。
 そこへたまたま、ブラウン家の長男ブラッドが祖母に会いに返ってくる。前作で大活躍した少年だ。2年経って悪ガキからちょっとたくましい顔立ちになっている。ちなみに演じているのは同じスコット・グライムズ。
 そしてクリッターの卵たちが一斉に孵化を始めたものだから、街は大混乱に陥る。

 前作では一件の農家が舞台だったが、今回は田舎町全体を巻き込んだ大騒動。クリッターが街中を転がる転がる。クリッターの転がるシーンはどうやって撮っているのだろうか?一匹ならなんとなく説明が付くのだが、この作品だと数十匹単位で転がっていく。
 前作のラストで宇宙人に取り入っていた酔っぱらいのチャーリーがなんとハンターの一員として宇宙船に乗ってやってくる。まだまだ頼りないからハンターではなくハンター見習いだ。
 ブラウン一家が引っ越していった理由は、途中の会話でなんとなく想像が付く。クリッター騒動がブラウン家の仕業と思われたり陰口をたたかれたりしたのだろう。狭い田舎町だ、居場所が無くなってしまったにちがいない。今回のクリッター騒動でもブラッドが帰ってきたのとたまたま同じタイミングだったから、彼のせいにされそうになる。

 監督・脚本はスティーヴン・キングのテレビ用映画をいくつか手がけているミック・ギャリス。これが劇場用映画のデビュー作となる。オレ、割と好きなんだこの人。すごく良いというんじゃないけれど、きっちりした作品を作ってくれる。
 2年前のクリッター騒動で世捨て人となった保安官が二丁拳銃で復活するシーンの格好良さ。つか拳銃弾一発で倒されるってクリッターってやっぱり弱いよね。繁殖能力となんでも食っちまうところが怖いんで、危険度ランクは宇宙静物としてはさほど高くないのでは。そういえばクリッターのパチモンみたいので“まんちぃず”ってのがいたなぁ。
 ハンターは顔が無いので他人の顔を模倣するんだけど、道ばたに落ちていたプレイボーイのプレイガールのグラビアを見て変身。顔だけじゃなくて体付きまで変わるんだ。これが後々への伏線になっている?ちなみにニューラインシネマ作品と言うことで『エルム街の悪夢』のフレディの立て看板を見て変身しようとしたりします。
 クリッターたちを上手く冷凍ハンバーガー工場に閉じこめてダイナマイトで大爆発。予算も増えてるねぇ。これで上手く言ったと思ったら、数百匹のクリッターがまとまって丸くなって巨大なボールとなって転がってくる。怖ええええ!!押しつぶされた人は後に骸骨が残るだけ。
 これにはもうもう手も足も出ないか……と思っていたところに、やばいところで逃げ出したチャーリーが宇宙船で特攻してくる。そしてクリッター軍団もろともドカーン!!
 そしてラストでチャーリーは良い奴だったよねって言ってるところへ、パラシュートが取れない?と情けなく登場するチャーリー。あんたなにやってんの。

B0026OBVCO.jpg『クリッター』(1986) CRITTERS 86分 アメリカ

監督:スティーヴン・ヘレク 製作:ルパート・ハーヴェイ、ロバート・シェイ 脚本:スティーヴン・ヘレク、ドミニク・ミュアー 撮影:ティム・サーステッド 音楽:デヴィッド・ニューマン
出演:ディー・ウォーレス=ストーン、M・エメット・ウォルシュ、テレンス・マン、スコット・グライムズ、ビリー・グリーン・ブッシュ、ビリー・ゼイン、ナディーン・ヴァン・ダー・ヴェルデ、ドン・キース・オッパー、イーサン・フィリップス、ジェレミー・ローレンス、リン・シェイ

 監督・脚本はロジャー・コーマン門下生のスティーヴン・ヘレク。なるほど言われてみるとこの低予算でそれなりに見せるところはそんな感じだ。
 銀河刑務所からある宇宙生物が八匹逃げ出した。宇宙船に乗ってその生物は地球の田舎町にやってくる。その宇宙生物こそクリッター。ハリネズミににた外観だが何でも食ってしまう怖ろしい宇宙生物。
 そのクリッターを追って二人のハンターがやって来る。顔がゴムマスク上になっていて、一人は地球の情報を集めていた時にテレビで見かけたロックシンガーに、もう一人は顔が決まらないままクリッターにやられて死んだ保安官助手や神父など出合う人間に化けて回る。
 銀河刑務所や宇宙船は低予算なりに頑張った特撮が使われている。ハンターがロックシンガーに変身するシーンは一度頭蓋骨まで溶けて、そこに肉付けされて顔になるという特撮が使われているがこれが見事。そして作中で一番グロいシーンとなっている。

 地球に着いたクリッターは郊外の一軒家に住むブラウン家に襲いかかる。
 映画の冒頭ではバラバラだった家族が、クリッターの襲撃によって結びついていく様が見所。クリッターに傷つけられながらがんばるお父さんも強ければ、ショットガンでクリッターを吹き飛ばすお母さん強い。お姉ちゃんも弟も強い。観客層を考えると弟が一番活躍するのは当然。どれだけ危機的状況になっても諦めずに力を合わせてぶつかっていく。そこに家族の絆を考えさせてくれる。
 クリッターは最初はバスケットボールぐらいの大きさ。歩かずにコロコロと転がって高速移動する。見た目は愛らしいと言えなくもないが、極悪非道。近づかないでも麻酔性の毒物がある針を飛ばしてくる。

 小さな動物が暴れ回るという意味では『グレムリン』(1984)のフォロアー映画になるだろう。だが意外にヒットし、続編も4まで作られることとなった。大成功である。
 ものすごく面白いわけではないが、気楽に力を抜いて観ると結構楽しめる。オレは『フレンチ・コネクション』シリーズが続いてちょっと疲れたので息抜きで観た。これでビールがあれば最高なのだが、医者から飲酒は止められているのだ。残念。

 ハンターの武器は黒い筒状のバズーカのような銃で、やたらと威力が強い。地球のショットガンで殺せるクリッター相手にするには強力すぎる気もするが。おかげで家の中メチャメチャ。
 ラスト、クリッターは全部やっつけたはずだが……はモンスター・ホラー映画のお約束。
 お姉ちゃんの恋人役でデビュー当時のビリー・ゼインが出ている。必見。
 保安官役のM・エメット・ウォルシュがまた味のある演技を見せてくれる。ハンターたちの乗ったパトカーのエンジンがかからず、自分のパトカーのエンジンがかかった時の「どうしよう」という表情が最高。もちろん、パトカーは乗っ取られてしまうのだ。
 この作品では情けない男のチャーリーが登場するが、次回作以降で重要なので覚えておくように。

B000ZFTNJ4.jpg『フレンチ・コネクション2』(1975) FRENCH CONNECTION II 119分 アメリカ

監督:ジョン・フランケンハイマー 製作:ロバート・L・ローゼン 原作:ロバート・ディロン、ローリー・ディロン 脚本:アレクサンダー・ジェイコブス、ロバート・ディロン、ローリー・ディロン 撮影:クロード・ルノワール 音楽:ドン・エリス
出演:ジーン・ハックマン、フェルナンド・レイ、ベルナール・フレッソン、ジャン=ピエール・カスタルディ、キャスリーン・ネスビット、フィリップ・レオタール、シャルル・ミロ、エド・ローター、アンドレ・ペンヴルン

 前作のラストで取り逃がしたフランス麻薬組織のボス・シャルニエを追ってジーン・ハックマンが敵の本拠地マルセイユを訪れる。しかしジーン・ハックマンには知らされていなかったが、上層部はシャルニエをあぶり出すためのおとりとして送り込んだのだ。
 執拗にシャルニエを探し出そうとするジーン・ハックマンに手を焼いたシャルニエは、彼を誘拐するとどこまで知っているかを聞き出すためにヘロイン中毒にしてしまう。

 敵組織から警察前に放り出され、麻薬中毒から立ち直ろうとするジーン・ハックマンの姿がなんともドラマチック。狭い独房でハックマンが苦しんでいるだけなのだが、それだけでドラマを構築するのはさすがジョン・フランケンハイマー。
 独房の中でマルセイユ警察のバルテルミーとあれこれ会話をして気を紛らわす。その中で、かつてヤンキースのテストを受けて受かったという異色の経歴が明らかになる。「左(利き)の男」をバルテルミーが「共産主義者」と勘違いするギャグは笑った。
 実際の禁断症状はもっと重いのだろうし、そう簡単にヘロイン中毒が治るとは思えないのだがそこら辺はハックマンの執念とフィクションと言うことで。後のシーンでヘロインの入ったビニールの小袋を見つけて、誰もいないからばれないのに、ちぎって捨てるところは凄みがある。
 そしてヤク中を抜けきると敵のアジトだったホテルに乗り込んでガソリンを撒いて火を付ける驚きの行動に。刑事の枠を越えている。一般住民も住んでたんで、さすがにやりすぎ。

 シャルニエを走って追いかけるハックマンは、前作のカーチェイス以上に疾走感がある。シャルニエは路面バスに乗ってしまうが、それを走って追いかける。やはり刑事物は走るに限る。
 ラストの麻薬組織との銃撃戦も、当時としては派手な仕上がりだ。エンターテインメント度は格段にアップしている。
 映画にはやはりドラマチックが向いているというのをジョン・フランケンハイマーは理解している。そしてウィリアム・フリードキンが理解していなかったことだ。
 よく「続編は駄目だ」というが『フレンチ・コネクション』の場合、続編の方が遙かに良い。

B001G9EC8A.jpg『フレンチ・コネクション』(1971) THE FRENCH CONNECTION 105分 アメリカ

監督:ウィリアム・フリードキン 製作:フィリップ・ダントニ 原作:ロビン・ムーア 脚本:アーネスト・タイディマン 撮影:オーウェン・ロイズマン 編集:ジェリー・グリーンバーグ 音楽:ドン・エリス
出演:ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ、トニー・ロー・ビアンコ、マルセル・ボズフィ、フレデリック・ド・パスカル、エディ・イーガン、ソニー・グロッソ、ビル・ヒックマン、アン・レボット、ハロルド・ゲイリー

 映像、演技、ストーリーなどなど徹底してリアル指向に作られている。実際に麻薬担当刑事二人と一緒にニューヨークをうろついているかのよう。で、リアルならば面白いかと言えばそうでもない。
 街並みがどれだけリアルに捉えられていても、役者の芝居がリアルでも、麻薬を追う刑事二人とそれを取り巻く人々の物語がどれだけリアルでも面白くない。緊張感があるように見せかけているだけで、実は緊張感がない。演出力の欠如がありありと感じられる。
 高架鉄道の下を走るカーチェイスのシーンはさすがに迫力があるが、全体のリアルさからは浮いている。リアルがやりたいのかアクションがやりたいのか。
 つまるところ繊細さに欠けていて単なる凡庸な作品にしかなっていない。そこから引き出される物が感じられない。どこを観てもありきたりで観るべき所がない。映画として重要な物がこの作品には欠けている。映画の皮をかぶった単なる繋がったフィルムに過ぎない。だからウィリアム・フリードキンは大嫌いなのだ。

B001E7TRY8.jpg『マラソン マン』(1976) MARATHON MAN 125分 アメリカ

監督:ジョン・シュレシンジャー 製作:ロバート・エヴァンス、シドニー・ベッカーマン 原作:ウィリアム・ゴールドマン 脚本:ウィリアム・ゴールドマン 撮影:コンラッド・L・ホール 音楽:マイケル・スモール
出演:ダスティン・ホフマン、ローレンス・オリヴィエ、ロイ・シャイダー、ウィリアム・ディヴェイン、マルト・ケラー、フリッツ・ウィーヴァー、リチャード・ブライト、マーク・ローレンス、アレン・ジョセフ

『マラソンマン』ではなく正式には『マラソン マン』。
 人間関係が複雑で、役割分担もイマイチよく分からない上に、ニューヨークとパリに行ったり来たりで場面転換するものだからストーリーがすっきりと頭に入ってこない。ある男の裏切りも唐突すぎ。
 ダスティン・ホフマンの兄であるロイ・シャイダー(似てない兄弟だ)が刺された後に必死になってダスティン・ホフマンのアパートまでやって来て死んだのも意味が分からない。ストーリー上の鍵なのか単に最後に弟に会いたかっただけなのか。
 ナチの残党はそれになにか意味があるのだと思い込んで、ダスティン・ホフマンを拷問にかける。有名な歯科医拷問だ。元強制収容所の関係者であるローレンス・オリヴィエは元歯科医ということで、歯科医の道具を使って虫歯の根を攻めたり、電気ドリルで健康な歯の歯根を削ったりする。もっとねちっこい描写だったと記憶していたが意外とシーンとしては短い。だが、歯医者に行くのが改めて怖くなった。子供に観せたらトラウマ物だぞこれ。
「安全かね」「安全かね」とひたすら答えを迫ってくるオリヴィエも怖い。
 ジョギングが趣味の大学生ダスティン・ホフマンはさすがにもう大学生に見える年ではない。1937年生まれだぞ。もう40歳に近い。どれだけ留年しているのだろうか。親泣くぞ。ああ、親は赤狩りで起訴されて自殺しているか。この父のエピソードもそれほど上手く映画の中で機能していたとは思えない。
 図書館で知り合った女性が偶然にも敵の手先だったりといい加減なところもある。映画では省略されていただけで、原作ではロイ・シャイダーの弟と言うことで監視を付けていたのだろうか。しかし、知り合った時点では監視を付ける必要が感じられない。
 ローレンス・オリヴィエがダイヤの価値を知ろうとダイヤ市場を訪れたシーンで、ダイヤ市場はユダヤ人が多いものだから通行人の老婦人や店の男に正体がばれてしまうシーンは秀逸。しかし、ユダヤ人を虐殺した“白い天使”の正体も都会の雑踏の中に消えてしまう。
 ラストの浄水場でのダスティン・ホフマンとローレンス・オリヴィエの対決は見応えがある。殴り合うわけでも銃を撃ち合うわけでもない。ダスティン・ホフマンは執着しているダイヤモンドを食えとオリヴィエに放り投げる。受け損ねるとそこは金属製ネットの上でポロポロと水の中に落ちていく。ついに一粒を思い切って飲み込む。この飲み込む演技がすごい。ダスティン・ホフマンへの憎しみやダイヤへの執着、屈辱などを見事に表現している。さすが名優。
 作品としてはしょせんジョン・シュレシンジャーではこんなところ。

B001HQLV90.jpg『ゴッド・アーミー/悪の天使』(1994) GOD'S ARMY THE PROPHECY 98分 アメリカ

監督:グレゴリー・ワイデン 製作:ジョエル・ソワソン 製作総指揮:W・K・ボーダー、ドン・フィリップス 脚本:グレゴリー・ワイデン 撮影:ブルース・ダグラス・ジョンソン、リチャード・クレイボウ
出演:イライアス・コティーズ、クリストファー・ウォーケン、エリック・ストルツ、ヴァージニア・マドセン、ヴィゴ・モーテンセン、アマンダ・プラマー

 司祭の資格を受けている最中に信仰に揺らぎが生じて聖職を辞し、今ではロサンゼルスの刑事になった男が主人公。ずいぶん思い切った転職だ。とある殺人事件が発生し、その死体は目が存在せずその上、半陰陽(両性具有)だったのだ。男の遺品からは主人公が聖職者だった頃に書いた論文の他に手描きの聖書があった。2世紀の物と推測されるそれには、存在しないはずのヨハネの黙示録第23章があり、第二次天国戦争について書かれていた。(最初の戦争はルシファーが反乱を起こして堕天使として地獄へ落とされたもの)
 その頃、アリゾナの寂れた街に天使シモン(エリック・ストルツ)が現れ、ホーソン大佐の死体から魂を奪っていった。ホーソン大佐は朝鮮戦争で大虐殺を行った男で、その魂は「最もずる賢くて卑劣で残虐」なのだ。自らの死を悟ったシモンはその魂をナバホ族の少女マリアの身体の中に隠す。その魂を狙っているのは大天使ガブリエルなのだ。ガブリエルはそんな邪悪な魂でいったい何をしようというのか。

 これ、キリスト教について詳しかったらもっと面白いんだろうなと思わせる一本。
 ロスで見つかった死体も胎児の体組織、半陰陽、目がないなどから天使だと推測できるのだろう。というか天使って目がないのか。これは初耳なんだが、シモンも登場シーンでは目が黒かったしガブリエルの退場のシーンでも目がないのでそういうことになっているのかもしれない。でも宗教画に描かれている天使に目はあるよね。
 天使ガブリエルを演ずるのはクリストファー・ウォーケン。もっとも邪悪なガブリエルを魅力満々であの独特の目つきで魅了する。でも座り方はちょこんと膝を揃えて足だけで立つ天使座り。オレ、中学の時に足首を骨折して足首堅いからこれ出来ないんだ。キリスト教圏の人にとって、天使とかを演ずるのはどんな気持ちなのだろうか。しかも天使なのに悪役。
 神が人間に魂を与えたことによって、人間は天使よりも上の存在となった。それによって天使は神から人間の次にしか愛されなくなってしまった。それを不満とするガブリエルはホーソン大佐の魂を戦士として戦争を始めようとしていたのだ。
 それを最終的に防ぐのが堕天使ルシファーだというのが面白い。天使と悪魔の戦いを描いているのだが、今回の場合人間にとってルシファーが勝った方が都合がよい。
 ルシファーを演じているのがヴィゴ・モーテンセン。登場するなり、黄色い薔薇の花びらをちぎっていったと思ったら最後はパクッと食っちゃったりこちらも魅力的。一発OKだったらいいけどNG連発や監督が今のカット気に入らないとかでテイク20ぐらいになっていないことを祈る。とにかく悪の色気がゾクゾクと伝わってくる。ただ、出番は終盤の20分ぐらいなのでファンにはちょっと残念だろう。
 特撮もほとんど使っておらず、天使と悪魔、あるいは天使と人間の戦いというイメージで観てしまうと物足りないかも知れないが、CGを駆使した戦いだったらこの作品の味は出ないと思う。『コンスタンティン』になってしまうよな。

 天使と来れば美形キャラが一般常識かと思うが、ロスで発見された天使はブ男。最初から死体ではなくシモンと戦った後に建物から突き落とされ道路に落ちたところを車に轢かれて死ぬというご丁寧な死に方なのだがエリック・ストルツやクリストファー・ウォーケンが美形だったり色気があったりするのに対しこいつはブ男。天使にも色々いるんだ。

 天使の死体が人間の物ではない、そして持っていた聖書もまともな品ではないとしりつつも主人公に協力する検死官がなかなか味があって良かった。首吊り自殺をしたはいいが(?)、ガブリエルにゾンビ状態で生き返させられてしまってこき使われる青年や、病院の患者(アマンダ・プラマー)も良かった。ガブリエルは天国では偉いさんだから自分の手を汚す仕事や肉体労働はしたくないんだろうなと思っていたら、「車の運転ができないんだ」だって。そりゃまぁ天国に自動車学校はないんだろうが……

B001EI5MIC.jpg『スクワーム』(1976) SQUIRM 93分 アメリカ

監督:ジェフ・リーバーマン 製作:ジョージ・マナス 製作総指揮:エドガー・ランズベリー 原作:リチャード・カーティス 脚本:ジェフ・リーバーマン 撮影:ジョセフ・マンジーン 特殊メイク:リック・ベイカー 音楽:ロバート・プリンス
出演:ドン・スカーディノ、パトリシア・ピアシー、R・A・ダウ、ジーン・サリヴァン、フラン・ヒギンズ、ピーター・マクリーン

 雷雨で送電線が切れ、地中に数十万ボルトの電気が流れ養殖場のゴカイが凶暴化して人を食い来るという動物パニック映画。特色としてはそのゴカイの数の多さ。最初は数匹、数十匹単位なのだが、最後はもう家の中や店の中がゴカイだらけ。一階が埋め尽くされて階段の途中までゴカイが昇ってくるというシーンがある。この辺りの大量のゴカイはさすがにゴムかビニールの模型だが、アップになっているのは本物のゴカイ。極端なクローズアップのゴカイはもはや怪獣だ。環形動物マニアにはたまらんでしょうなぁ。オレには分からんが。素直にきしょい。

 舞台は田舎町。都会からやって来た青年がヒロインの家に泊まることになる。その隣の家は釣り餌用にゴカイ養殖業を営んでいる父と息子が住んでいる。
 青年を迎えに行くのに、ヒロインがゴカイ養殖場のトラックを借りるという描写があるのに、その後のシーンでは自宅のステーションワゴンを乗り回していたりと脚本はかなりいい加減。キャストも見たことない人ばかりで演技も正直下手。監督は脚本も兼ねているし、かなり自主映画に近い低予算映画と見た。
 まぁ正直ストーリーはどうでもいいんだ。ゴカイさえ見られれば。シャワーを捻るとシャワーの穴からポトリポトリと落ちてくるゴカイ。釣り餌として針に掛けようとしているのに腕に食らいついてくるゴカイ。根元を掘って大木すら倒してしまうゴカイ。死体のシャツを開いてみたらゴカイがウジャウジャいて肉を食っている。とにかくゴカイゴカイゴカイ。模型も合わせて合計で8000万匹のゴカイを使ったとか。

 なかでも養殖業者の息子の顔に食い込んでいくゴカイのシーンが見所がある。この特殊メイクをやったのは若き日のリック・ベイカー。若き日といっても同じ年に『キングコング』(1976)をやっているんでメジャー売り出し寸前だったことだが。正直、なんでこの映画にリック・ベイカーが参加しているのかちょっと不思議。もうそろそろ多少は仕事を選べていたと思うんだが。ゴカイの顔食いシーンがやりたかったのかな。

 ラストで意味のないカメラワークがあったと思ったらヒロインの妹が箱に隠れて無事に生き延びていたりして、実は無意味にこの箱に入ることの伏線があったりするが、そんなことに気を遣うんだったらもうちょっと別の所に気を遣えと言いたくなる脚本だが、それでも最初に異常に気付いた人が街の権力者(この作品の場合は保安官)に訴え出てもまったく信用されないというパターンは守っている。この保安官が本当に嫌な奴で、最後はゴカイに食われてしまうのだが喝采である。事件が起きてるってのに呑気にスパゲティなんか食ってるからだ。
 ラストのゴカイ大暴走のシーンはほとんど一軒の家にのみ焦点を当てているが、ちょっとだけ映る街の様子だとそちらも大騒動の食われまくり。ラストの電気工事人のセリフを聞くにどうやら街は全滅した様子。何気にひどいラスト。

 動物パニック物はやたら大きくするかやたら数を出すのがパターンだが、その後者の見本的一本。度胸がある人はスパゲティかマカロニを食べながら観てみませんか。

B0009H9ZVO.jpg『アナコンダ』(1997) ANACONDA 89分 アメリカ

監督:ルイス・ロッサ 製作:ヴァーナ・ハラー、レナード・ラビノウィッツ、キャロル・リトル 製作総指揮:スーザン・ラスキン 脚本:ハンス・バウアー、ジム・キャッシュ、ジャック・エップス・Jr 撮影:ビル・バトラー 特殊効果:ジョン・ネルソン 音楽:ランディ・エデルマン
出演:ジェニファー・ロペス、アイス・キューブ、ジョン・ヴォイト、エリック・ストルツ、ジョナサン・ハイド、オーウェン・ウィルソン、カリ・ウーラー、ヴィンセント・カステラノス、ダニー・トレホ

 ジェニファー・ロペスを始めとする豪華キャストを出演させながらも、ラジー賞でワースト作品賞、ワースト監督賞、ワースト・スクリーン・カップル賞(ジョン・ヴォイトと機械仕掛けの大蛇)などのノミネートされたという意味ではちょっとトホホな映画。

 アマゾンの奥地に住む伝説の現住民族を取材するためにテレビクルーが船に乗って上流へと昇っていた。途中で座礁した船を見つけ、船長のジョン・ヴォイトを助け出す。
 ロープがスクリューに絡まるという事故があり、学術博士のエリック・ストルツがほどこうとするがスズメバチに気管を刺されて呼吸不能の重傷を負ってしまう。一刻も早く病院に連れて行くために、ジョン・ヴォイトは本流ではなく支流を使うことで近道を通ることを提案するが、実は彼には隠された狙いがあったのである。

 アナコンダが登場するのは中盤頃からと意外と遅くてそれまでは、ジョン・ヴォイトが巧妙な罠を張り巡らせていくシーンが中心となっている。『オデッサ・ファイル』から23年。ジョン・ヴォイトはすっかり悪役顔になっていた。
 実はジョン・ヴォイトの狙いは巨大アナコンダを生きたまま捕らえようというもので、100万ドルは下さない仕事らしい。その100万ドルのためにジョン・ヴォイトは船の乗員たちを平気で犠牲にし殺すことも厭わない。考えようによっては蛇よりもたちが悪い。怖ろしいのは動物ではなく人間だなと思わせてくれる。
 2以降はすっかりCGになってしまったアナコンダだが、1では機械仕掛けのアニマトロニクスが中心で補助的にCGを使っている。大蛇をアニマトロニクスで撮った最後の作品になるのかも知れない。大蛇のアニマトロニクスといえばシュワルツェネッガーの『コナン・ザ・グレート』(1982)を思い出す。あの大蛇は迫力はあったが動きが固くいかにも機械仕掛けだった。それに比べるとこのアナコンダはかなり自在に動いていて、技術の進歩を感じさせる。
 中盤以降の展開はテンポが速く、蛇が襲ってきてはまた襲ってくる。そんな中でジョン・ヴォイトが悪巧みをしているといった具合で登場人物も観客も息つく暇もない。こんな一匹と一人を相手にするんじゃそりゃジェニファー・ロペスの美貌でも大変だ。アイス・キューブの文句あっか顔でも苦戦する。というか密林の中なのにノースリーブって格好はどうよジェニファー・ロペス。と思ったら船の出航シーンで「虫除けを忘れてないか」と伏線が張ってあるのね。どんな伏線だ。
 一匹と一人はさすがワースト・スクリーン・カップル賞を取っただけのことはある。最後にはアナコンダがジョン・ヴォイトをきつーく抱きしめて愛(?)の抱擁の後に飲み込む。食べたいぐらい愛してたのね。後で吐くけど。
 アナコンダが人間を襲って食べてしまう方法もバラエティに富んでいて、2?4とは出来が違う。
 ものすごく面白いとは思わないが、退屈することなく最後まで観ることが出来た。ジョン・ヴォイトの悪人ぶりが堪能できただけで満足。
 残念なのはせっかくのダニー・トレホがオープニングにちょっと出てきただけですぐに消えてしまうこと。マチェットを手にアナコンダに斬りかかって欲しかった。

B000R8XA5W.jpg『オデッサ・ファイル』(1974) THE ODESSA FILE 129分 イギリス/西ドイツ

監督:ロナルド・ニーム 原作:フレデリック・フォーサイス 脚本:ケネス・ロス、ジョージ・マークスタイン 撮影:オズワルド・モリス 音楽:アンドリュー・L・ウェーバー
出演:ジョン・ヴォイト、マクシミリアン・シェル、マリア・シェル、ノエル・ウィルマン、シビル・ダニング

 西ドイツはハンブルグ。フリーのジャーナリスト(ジョン・ヴォイト)の車をパトカーと救急車が追い越していった。事件の臭いをかぎつけた彼はその後を追った。事件は老人がガス自殺したという単純な物に思われた。しかし、友人の警察官から老人の遺品である日記を借り受けた時に彼の人生は変わった。そこには老人が第二次大戦中に強制収容所で暮らしていたこと、そしてそこの所長ロシュマンの残虐非道な振る舞いが書かれていた。そして、戦後行方不明になっているロシュマンをこのハンブルグの街で見かけたこと。それを警察に話したが証拠がないと言うことで無視され、それで死を選んだことが書かれていた。
 彼は事件について本格的に調べ始めた。すると、恋人と地下鉄を待っているホームで列車に突き落とされるてしまう。かろうじて無事に助かったが、彼は数人組の男たちに誘拐されてしまう。あわやと思いきや、男たちはロシュマンを始めとする未だ行方知れずの元SS隊員を追いかけている組織の連中だった。彼らはユダヤ人だが、彼はドイツ人。これならば敵陣に潜入しても違和感をもたれることがない。そこで変装術、動作や言葉遣い、拳銃の扱い方などの訓練を受けた彼は、元SS隊員たちが身分を隠し戦争裁判を逃れるための組織“オデッサ”に近づいていくのだった。

『ジャッカルの日』(1973)で有名なフレデリック・フォーサイスのベストセラー小説の映画化。事実を小説に盛り込むことで有名なフォーサイスの原作だけあって、フィクションに思える“オデッサ”という組織もロシュマンという人物も実際に存在する。原作は大昔に読んだきりだが、正直オレはフレデリック・フォーサイスは苦手なので面白かったという記憶がないのだが、細かいところまで史実と付き合わせていくと意外なところまで合っているのであろう。
 最近だとすっかりごつくなってしまったジョン・ヴォイトの顔がスリムで驚いた。特にアゴのラインのシャープなこと。なるほど、さすがアンジェリーナ・ジョリーの父親だけのことはあるなどと妙な感心をしてしまった。感情を余り感じさせない冷たい目がクールだ。
 一介のジャーナリストが何故そこまで懸命になって事件を追うのか。圧力をかけられたり命を狙われたり、厳しい訓練を乗り越えて誰も助けてくれない孤立無援の状況に挑んでいくのかが謎だった。特ダネによって富と名声を得たいのだろうかと少々疑問に思っていたことがラスト近くに解明される。ここで今一つ感情移入できなかった主人公の気持ちが分かるシーンとなっている。あまり書きすぎるとネタバレになってしまうのでここまで。
 彼はあくまでもスパイではなくジャーナリストなのでプロではなく、手際もけっしていいわけではないがなにしろ食らいついたら離れない。映画全体としてはスパイ映画ではなく社会派サスペンスなので若干地味な印象がある。
 緊迫した中東情勢からはじまり、彼がラジオでケネディ大統領が死亡したニュースを聞いているところへと繋げ映画の背景となっている当時の社会情勢を語る手腕は見事。そしてそれはちゃんとラストへと収束して終わる。

B0019HHBHS.jpg『1941』(1979) 118分 アメリカ

監督:スティーヴン・スピルバーグ 製作:バズ・フェイトシャンズ 製作補:ジャネット・ヒーリー、マイケル・カーン 製作総指揮:ジョン・ミリアス 原案:ロバート・ゼメキス、ボブ・ゲイル、ジョン・ミリアス 脚本:ロバート・ゼメキス、ボブ・ゲイル 撮影:ウィリアム・A・フレイカー 美術:ウィリアム・F・オブライアン 編集:マイケル・カーン 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ダン・エイクロイド、ネッド・ビーティ、ジョン・ベルーシ、三船敏郎、クリストファー・リー、トリート・ウィリアムズ、ナンシー・アレン、ロバート・スタック、ティム・マシスン、ウォーレン・オーツ、ボビー・ディ・シッコ、マーレイ・ハミルトン、ロレイン・ゲイリー、ジョン・キャンディ、ミッキー・ローク、サミュエル・フラー

 ちょっと前の話になるが『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)を観た。面白かった。『レイダース/失われたアーク』(1981)と変わらない面白さだった。27年を経てスピルバーグは変わらずに面白かった。そう、相も変わらずの面白さでしかなかったのだ。

 普通、30年近い時を経れば作風は代わり、同じシリーズを撮っても別物になるのが普通である。それが変わらぬ面白さというのは一種の異常である。スピルバーグはスピルバーグのままなのだ。
『激突!』(1971)で鮮烈にデビューして(アメリカではテレビ用映画だが)、『ジョーズ』(1975)で大ヒットを当てたこのスピルバーグという監督は娯楽面においてどこかで成長を止めてしまったのではないだろうか。それがこの『1941』だ。
 思いつく限りのギャグを放り込み、物資と資金をかけ、人員を使い作り上げた破壊とドタバタに満ちあふれた自信満々の一大エンターテインメントになるはずだった自信作が、興行面でも評価面でも惨敗しこの才能溢れた監督は悩みに悩んだのだろう「どこが悪かったのだろう」かと。
 そして次に送り出すのが『レイダース/失われたアーク』(1981)である。こちらは興行面でも評価面でも大成功を収めた。普通ならばこれで満足する。だが「これでいいのだろうか」とスピルバーグの迷走が始まる。
 娯楽映画だけをやっていて良いのだろうか。これでは監督として深みが持てないのではないだろうか。そんな思いで撮られたと考えられる『カラーパープル』『太陽の帝国』『シンドラーのリスト』『アミスタッド』などの作品群。
 どれも優れた作品であると思う。しかし、これらをスピルバーグが撮る必要がどれだけあったのか。もしもこれら文芸作に目を向けずにひたすら娯楽作を撮り続けていたらいったいどうなっていたか。いったいどんな『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)を観ることが出来たのだろうか。とてつもない娯楽監督が登場するのを『1941』は阻止してしまったのではないだろうか。
 もし『1941』が成功していたらその後のスピルバーグがどんなスピルバーグになっていたかを考えると興味深い。年を重ね熟成し確実に別人になっていたはずだ。

B001TIKGGK.jpg『重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス』(1973) THE SEVEN-UPS 104分 アメリカ

監督:フィリップ・ダントニ 製作:フィリップ・ダントニ 製作補:ジェラルド・B・グリーンバーグ 製作総指揮:ケネス・ウット、バリー・J・ウェイツ 原案:ソニー・グロッソ 脚本:アルバート・ルーベン、アレクサンダー・ジェイコブス 撮影:アース・ファーラー 編集:ジェラルド・B・グリーンバーグ、スティーヴン・A・ロッター、ジョン・C・ホーガー 音楽:ドン・エリス
出演:ロイ・シャイダー、トニー・ロー・ビアンコ、ビル・ヒックマン、リチャード・リンチ、ラリー・ヘインズ、ケン・カーチェヴァル、ジョー・スピネル、ヴィクター・アーノルド、ジェリー・レオン、ルー・ポラン、マット・ルッソ、ロバート・バー、レックス・エヴァーハート

 ザ・セブン・アップスといっての緑色のパッケージをした炭酸清涼飲料水ではない。特殊犯罪のみを手がける非公式捜査班だ。強引なおとり捜査をするのが特徴で、奴らにパクられたら7年以上の重罪になるというのでその名が付いた。
 その頃、ニューヨークでは犯罪組織の幹部が偽警官によって誘拐される事件が相次いでいた。身代金を払うことで無事に身柄を取り戻せてはいるのだが、なにぶんみっともない話だし自分達の稼業が稼業なので警察にも言えない。そしてまた一件の誘拐が実行されたのだが、たまたまザ・セブン・アップスの一人がトランクに閉じこめられていて、犯人がそのトランクにお宝が入っていると勘違いして銃身を切り詰めたショットガンで撃って開けてしまった。そのため死んだ仲間の仇を取るために、ロイ・シャイダーが誘拐犯の車とカーチェイスを始める。

 監督のフィリップ・ダントニは『ブリット』(1968)や『フレンチ・コネクション』(1971)で制作を務めた人。「お前らばっかりカーチェイス撮ってんなよ。うらやましいじゃんかよ。俺にも撮らせろよ」と言ったかどうかは知らないが、初監督(というかこの作品しか監督していない)をして思いっきりカーチェイスを撮ったのがこの映画。

 物語中盤のこのアメ車同士のカーチェイスが燃える。やっぱ男ならば一度かカーチェイスをやってみたい物ではないだろうか。
 レーシングゲームは多々あるが、オレが好きだったのは20年ぐらい前にタイトーが出していた『CHASE H.Q.』というカーゲームだった。このゲームは主人公は刑事という設定で、逃げまくる犯罪者の車を追い詰めていく。ここまでは割と普通のカーレースゲームだがここからが違う。犯人の車に自分の車をガッシャンガッシャンぶつけて壊し走行不能にしたらクリアなのだ。「ナンシーから緊急連絡」とかいって講義にも出ないで燃えたなあ。
 それはともかく、ボンネビルとベンチュラの二台のポンティアックが車線無視、強引な割込、歩道を走る、赤信号無視、他の車に軽く接触しても無視無視。道路交通法?なんですかそれなカーチェイスが展開される。
 排気量の大きく馬力の強いアメ車だけにアクセルを踏み込むとドドドドドドドと加速する。最近のシャープでアクロバティックなカーチェイスにはない鈍く重いカーチェイスが楽しめる。
 まぁ、ロイ・シャイダーは最後には停車中のトレーラーの後ろに突っ込んでオープンカーになって脱落してしまい犯人に逃げられるんですけどね。でも、コラムシフトだしアメ車なので足元が広いのでとっさにそこに飛び込んで助かるんである。日本車だったら入れないな。
 実生活で乗る分には日本車だが、カーチェイスはやはりアメ車に限る。
 ちゃんとブリット跳びも出てくる。ブリット跳びとはオレが名付けたので誰も知らないだろうが、急な下り坂を猛スピードで下っていて直角道路との交差点で出来る段差で車がジャンプすることだ。名前の由来はさきほども登場した『ブリット』。『ブリット』はこのブリット跳びがやりたいがために坂の多いサンフランシスコを舞台にしたのではないだろうか。
『ザ・セブン・アップス』のブリット跳びは坂が緩やかなのでちょっと迫力に欠けるがちゃんとやってくれるところがうれしい。オレもやってみたいなブリット跳び。今の技術でリメイクしてくれんかな『CHASE H.Q.』。出来れば体感ゲームで。

 とにかくロイ・シャイダーがいい。常にストレス過剰で、ちょっとしたことで爆発してしまいそうなイライラした感じで現場の緊張感を表している。この作品が初主演作とはちょっと意外。もっと前から主役を張っていたイメージがある。
 暴走気味なアウトロー刑事だが、友人を大切にする一面もある。だが、その友人に裏切られていたことを知るラストが切なくハードボイルド。

 編集に三人も名前があるのも珍しい。おそらくはカーチェイスシーンで一人。ドラマ部分で一人。それ以外で一人といった担当なのではないだろうか。それか監督と喧嘩して三人交代したかだな。カーチェイスシーン意外はごく普通の編集。

B001FYZOG0.jpg『アナコンダ2』(2004) ANACONDAS: THE HUNT FOR THE BLOOD ORCHID 96分 アメリカ

監督:ドワイト・リトル 製作:ヴァーナ・ハラー 製作総指揮:ジャコバス・ローズ 原案:ハンス・バウアー、ジム・キャッシュ、ジャック・エップス・Jr 脚本:ジョン・クラフリン、ダニエル・ゼルマン、マイケル・マイナー、エド・ニューマイヤー オリジナル脚本:ハンス・バウアー、ジム・キャッシュ、ジャック・エップス・Jr 撮影:スティーヴン・F・ウィンドン 音楽:ネリダ・タイソン=チュウ
出演:ジョニー・メスナー、ケイディー・ストリックランド、マシュー・マースデン、 モリス・チェスナット、カール・ユーン、サリー・リチャードソン=ホイットフィールド、ユージン・バード、ニコラス・ゴンザレス、アンディ・アンダーソン

 ぶちゃけなんですが、前作はアマゾン河が舞台だったのでアナコンダで良いんですが、今回の舞台は東南アジアのボルネオ。ボルネオにはアナコンダはいません。でも、そんなこたぁどうでもいい。ボルネオに行ったらどでかい蛇がいたってことで。

 ある製薬会社が風邪から癌にまで効く万能薬の研究をしています。その材料としてボルネオで7年に一度だけ咲く“不死の蘭”の真っ赤な花びらが必要。この花びらの成分を摂取した細胞は分裂限界を超えていつまでも分裂を繰り返すのです。
 そしてちょうどその時、不死の蘭が咲く季節だということで研究班はボルネオに向かいます。そこに巨大アナコンダが待ち構えているとは知らずに。

 無意味に豪華キャストだった1と比べてほとんど無名のキャストばかりになっていますが、東南アジアでの大規模ロケは行われており、3、4の低予算っぷりと比べるとずっと金がかかっています。ボロ船ですけど滝から落として壊してますし。ここんとこなかなかの迫力シーン。
 水の中を登場人物が歩いているシーンを上からの俯瞰で捉えたショットで水の中を蛇がウネッと通りすぎていくシーンが怖い。
 蛇自体の出来は1作目よりもちょっと落ちますが、3、4作目よりずっといい。3、4にも一応不死の蘭が絡んでいるので、2?4は繋がっているんですね。1はストーリー的に独立しています。
 蛇との戦いも怖いですが、それ以上に不死の蘭に固執し仲間を裏で裏切ってまで手に入れようとするリーダーの存在が怖い。そんな信じるか信じないか、誰を信じられるか、誰が信じられないかの人間関係の怖ろしさを描いた作品です。命を取るか欲望を取るか、そして内部分裂していく様が安っぽいが面白い。
 でもね、そんな悪役男の気持ちも分からないではないんですよね。次のチャンスは7年後。その時まで不死の蘭が無事に残っているか分からない。これが手に入って商品化すれば人類にとって大いなる恩恵となるのは間違いないんですよ。単なるビジネスチャンスなだけじゃない。
 他のキャラクターもやたら口やかましい黒人やマッチョな黒人、年増な学者に蛮刀で大蛇の頭を切り落とす若手の美人学者などなど種類が揃っています。おしゃべりな黒人が「友人の友人がアマゾンに撮影取材に行ったら全員大蛇に食われて全滅した」というのは1作目のこと?
 たくましい船長は元特殊部隊の隊員です。でました特殊部隊の隊員。謎な人物はこういう過去を持たせておけば物語の展開上まず間違いはありません。なにかと便利です。どんな大活躍させても無理がありません。キッチンじゃ誰にも負けません。

 前作の原題は『ANACONDA』ですが今作は『ANACONDAS』。複数形です。『ALIEN』が『ALIENS』になったような物量攻撃を期待するじゃないですか。そうアナコンダは一匹じゃありません、最後には群れで出てきます。
 こいつら、不死の蘭を食っていやがるので止めどもなく成長してやたら巨大です。でも蛇が蘭なんか食うんでしょうか。落語に消化のために草を食べる蛇ってのは出てきましたけどねぇ。で、それを見た男が大食い大会の時にその草を食べたら溶けちゃった。人間を消化する草だったんですねぇ。まぁそれはどうでもいいんですけど。
 多いのは嬉しいんですが、案外弱いんですよこいつら。ナイフの一投げでやられたりしますから意外と情けないもんです。
 全体的には蛇との戦いは意外と目立たなくて、ジャングルの中でワーキャー騒いでいるジャングル冒険物でしょうか。船に乗って旅をしているシーンが多いのでジャングル・クルーズですかね。

B001T9V6RM.jpg『ザ・ソルジャー』(1982) THE SOLDIER 95分(DVD版84分) アメリカ

監督:ジェームズ・グリッケンハウス 製作:ジェームズ・グリッケンハウス 脚本:ジェームズ・グリッケンハウス 撮影:ロバート・ボールドウィン 音楽:タンジェリン・ドリーム
出演:ケン・ウォール、アルバータ・ワトソン、クラウス・キンスキー、ウィリアム・プリンス、ジェレマイア・サリヴァン、ヨアキム・デ・アルメイダ

 低予算映画『エクスタミネーター』(1980)でスマッシュヒットを飛ばしたジェームズ・グリッケンハウスが次回作として撮ったスパイ映画。
 アメリカでテロリストによってプロトニウムが盗まれ、それが核兵器に加工されてアラブの油田に仕掛けられたとの脅迫が入ってきた。もしも実際に爆発すればこの後300年間に渡って石油の供給が半分になってしまう。テロリストの要求はイスラエル軍の撤退とパレスチナの解放だった。イスラエル、アメリカそしてソ連がにらみ合う中、CIAの特殊部隊を率いるコードネーム・ソルジャーは無事に事件を解決できるのだろうか。

 なにを込み入ったことをやっているわけではないのだが、どうにもややこしく筋が分かりにくい脚本。監督のジェームズ・グリッケンハウスが脚本も担当しているが、この人は監督としてはともかく脚本家としての才能はないのではないだろうか。時代が時代だから最終的にはソ連が悪役なのだが、それもどうもピンとこない。テロリストとソ連の繋がりってどうなってるの?
 ワシントン、ベルリン、モスクワ、テルアビブ、オーストリアなど低予算なれど世界各地でソルジャーの活躍が観られて、十分楽しくスピード感の溢れるアクションを成立させているので無能というわけではないだろう。ガンアクションに素手での殴り合いのどちらも下手ではない。
 特筆すべきはオーストリアでのスキーでの追いかけ合い。敵二人に追われるソルジャーの様子が盛り上がる。本家スパイ映画『007』シリーズにもスキーチェイスが登場するが、志は負けていない。スキーでジャンプしながら小型サブマシンガンを水平回転撃ちするシーンは白眉。なぜかクラウス・キンスキーがちょっとだけ出てくる。
 ソルジャーが室内で銃の訓練をしているシーンがあるが、これがフィルムで上映された映像を目がけて光線銃を撃つというガンシューのような物。『ビバリーヒルズコップ2』の射撃訓練場で使われていたのと同じようなものだと言えば分かりやすいだろうか。今ではああいうのもコンピューターグラフィックを使用しているのだろうか。専門のシステムではなく市販のガンシューだってバカにならない。『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』のマーティーはコンビニに置いてあるガンシューで射撃を覚えたのだから。
 ラストはベルリンでポルシェに乗ってのカーチェイス。壁を越えての大ジャンプもあるし結構壊れてるんだが本物か?中古?
 タンジェリン・ドリームの音楽は格好いいテーマ曲もあるが、全体的には聴いている人を不安にさせる。
 B級アクションの面白さを充分に堪能させてくれるだけに、やはり脚本が残念だ。

B001Q79UO8.jpg『ゾンビ・ストリッパーズ』(2008) ZOMBIE STRIPPERS! 94分 アメリカ

監督:ジェイ・リー 製作:ラリー・シャピロ、アンドリュー・ゴロヴ、アンジェラ・リー 製作総指揮:マイケル・J・ザンピーノ 脚本:ジェイ・リー 撮影:ジェイ・リー 音楽:ビリー・ホワイト・エイカー
出演:ジェナ・ジェイムソン、ロバート・イングランド、シャムロン・ムーア、ジョーイ・メディナ、ティト・オーティズ

 タイトルと聞いた時は、ゾンビに襲われた世界でたまたまストリップバーに人間が立て籠もる話しだと思った。まさかストリッパーたちが本当にゾンビになっていく話しだとは思わなかった。これはロメロにだって思い津きゃしねぇぞ。
 すべてはジョージ・ブッシュが悪いのである。アメリカ大統領に4期当選したブッシュは世界中で戦争を繰り広げ、兵士の損耗が激しいので死体を生き返らせて兵士として再利用しようと考えたのだ。そこで研究所ではゾンビの研究が行われた。このゾンビ、女性ゾンビだけだと割と安定して秩序が守られているのだが、男性ゾンビが入り込むと事態は混乱してしまう。
 ゾンビ研究所で例によってウイルスが漏れ、軍の特殊部隊が制圧に臨むが隊員の一人が噛まれてしまう。その隊員は逃げ回ったあげく一軒の秘密クラブにたどり着く。そこはブッシュが禁止したストリップバーだった。

 隊員に一人のストリッパーが噛まれるのだが、このストリッパーは当然女性なので比較的安定している。時々人間を食わせてやれば通常の暮らしが出来るのだ。そしてそのストリップダンスがすごい。観客を魅了してあっと言う間にナンバー1になってしまう。
 店のオーナー(『エルム街の悪夢』のフレディーことロバート・イングランド)は金の亡者で、彼女がゾンビだろうが客が興奮して金をばらまいてくれればそれで良い。彼女が食べてゾンビ化した男は地下室に押し込んで札束を数えてウハウハである。
 そのゾンビの彼女に嫉妬したり心酔した他のストリッパーたちは彼女にかまれてどんどんゾンビ・ストリッパーズ化していく。
 こうして秘密のストリップバーはゾンビ・ストリップバーとなったのだ。
 もちろん、ゾンビものであるからしてそのまま平和なわけがない。地下室に閉じこめた男ゾンビたちが逃げ出してストリップバーで暴れ始める。オーナー室に逃げ込む従業員やまだ人間のストリッパーたち。オーナーは小型ショットガンを構えている。他に銃はないのかの問いにオーナーは“全米ライフル協会会員”の会員証を見せる。もちろん戸棚の中は銃器で一杯。

 ゴアシーンもなかなかしっかり作られていて、意外と真面目なゾンビ映画。バカだけど。そう、今年一番のバカ映画。ゾンビ・ストリッパー対ゾンビ・ストリッパーの戦いでは女性のあそこにゴルフボールやビリヤードの玉を押し込んでは押し出すいわゆる“花電車”の芸による戦いが繰り広げられる。なんやなんそれ。
 ゾンビ・ストリッパーに人間のストリッパーが嫉妬するシーンなどもよく考えられていて、人間は成功のためならばその人間を捨てるという矛盾が描かれている。
 軍の特殊部隊も有能だが基本アホで、スクリーンを爆笑で包んでくれる。
 タランティーノやロバート・ロドリゲスが好きそうな一本。

B001R0WCNK.jpg『ザ・セル2』(2008) THE CELL 2 94分 アメリカ

監督:ティム・イアコファーノ 製作:アレックス・バーダー、ローレンス・シルヴァースタイン 製作総指揮:ケヴィン・ケイシャ 脚本:アレックス・バーダー、ロブ・リノウ、ローレンス・シルヴァースタイン 撮影:ジーノ・サルヴァトーリ 音楽:ジョン・マッサリ
出演:テッシー・サンティアゴ、フランク・ホエーリー、クリス・ブルーノ、バート・ジョンソン、エリザベス・バロンデス、エイミー・ウォルデン

 前作の『ザ・セル』(2000)は事件を解決するために猟奇異常殺人犯の精神にサイコダイバーが潜入するいう話しで、CGの力を借りて異常者の精神を映像化するという野心的な作品だった。
 その続編がこれ。その意欲が欠片も感じられない駄作に成り下がっていた。

 女性を対象にした連続監禁猟奇殺人が繰り返されていた。その捜査に一人のサイコメトラーの女性が加わっていた。彼女は被害者の持ち物に触れると今どんな場所にいてどんな目に合わされているのか分かってしまうのだ。実は彼女自身事件の被害者で、何度も殺されては蘇生させるを繰り返され、その中で脳のエンドルフィンが過剰に分泌されてその能力を得たのだ。
 そして新たなる事件が発生する。被害者は地元警察の保安官の姪だった。FBIから派遣された彼女は保安官と協力して犯人を追うのだった。

 どうやら劇場用映画ではなくビデオ用映画らしい。
前作ではダリを思わせるような悪夢的精神世界だったが、今回はそのような美術的見せ場はなく精神世界もごく普通のビジュアルで安易に想像できてしまうような出来で観ていて面白みがない。
 女性を毒で殺しては解毒薬を打ったり、窒息死させてはまた蘇生させたりを繰り返す犯人像は猟奇である程度面白いが、正体が分かってしまうと実に魅力がない人物で、陳腐さが臭ってくる。しかも、推理するまでもなく実に安易な犯人だ。あれこれと生と死について語るがこれまた薄っぺらで狂気を感じさせてくれない。
 なにより主人公であるヒロインの顔が下品でこれまた魅力が乏しい。唯一の生き残りという設定も活用されていない。もしこれで可憐な女性が精神力を武器に殺人鬼に立ち向かうんだったらもう少し評価出来たのだが。
 ビデオ用映画ということもあって予算が少ないのかCGのレベルも低く、全体的に繊細さに欠ける。音楽もごく当たり前。
 エンドクレジットにオープニングで使われた犯人捜査の空撮が意味ありげなヘリコプターからの空撮が延々インサートされているがどうやらまったく意味はない。せっかくヘリをチャーターして撮ったのに使わないのはもったいないからだと思われる。おまけにこれまた無意味に車のスタントなどの撮影シーンがインサートされる。なんだそりゃ。自主映画か。

B0026R9HRC.jpg『モーテル』(2007) VACANCY 85分 アメリカ

監督:ニムロッド・アーントル 製作:ハル・リーバーマン 製作総指揮:グレン・S・ゲイナー、ステイシー・コルカー・クレイマー、ブライアン・パスカル 脚本:マーク・L・スミス 撮影:アンジェイ・セクラ 編集:アルメン・ミナジャン 音楽:ポール・ハスリンジャー
出演:ケイト・ベッキンセイル、ルーク・ウィルソン、フランク・ホエーリー、イーサン・エンブリー

 主人公は離婚を控えた夫婦。田舎道で飛び出してきたアライグマを避けて車を不調にしてしまう。そこで古びたモーテルに泊まるが汚れた部屋にゴキブリ、無言電話に隣の部屋から奇妙な扉を叩く音がするなど奇妙なことが続く。もちろん携帯電話は圏外。
 テレビはアンテナが故障しているのか映らない。そこでテレビの上にあったビデオテープを観るとそこには殺人シーンが録画されていた。てっきりサスペンスかホラー映画の1シーンだと思っていたら、なんとその舞台は自分達が泊まっているその部屋そのものだった。

 スナッフフィルム(殺人フィルム)集団に目を付けられた夫婦は何とかして生き残るためにドアから逃げだそうとしたり、公衆電話から警察に連絡したりするがすべて奴らの思いのまま。そんな中、秘密の地下通路を見つけ必死に生き残る道を探す。
 登場人物が少ないのですぐに犯人が分かってしまうが、『サイコ』のような犯人捜しが目的ではないので問題なし。それどころか犯人側の視点が加わってからより面白くなる。『悪魔のいけにえ』のような怪人的存在ではなくスナッフフィルムを作るのが目的内外は普通の人間。見た目もしょぼい田舎者。
 殺される人も少なくどんでん返しもないホラーやサスペンスと言うより生き残りをかけたサバイバルムービーで、苦難の末に危機を迎えていた夫婦が愛を取り戻すのは定番。
 昨今は戦う女性ということで終盤は妻がスナッフフィルム集団を相手に大活躍。轢く、潰す、玉を蹴る、撃ち殺す。うむ、一番強いのは妻だったか。
 殺し方、殺され方に独特のアイディアがあればもっと面白くなっただろう。

 オープニングとエンディングクレジットが活字がスライド・回転する形で凝っている。

B001RVA8YE.jpg『アナコンダ4』(2009) ANACONDA 4: TRAIL OF BLOOD 91分 アメリカ

監督:ドン・E・ファンルロイ 製作:アリソン・セメンザ 脚本:デヴィッド・C・オルソン 撮影:ドン・E・ファンルロイ 音楽:ピーター・マイスナー
出演:クリスタル・アレン、カリン・スタンチュー、リンデン・アシュビー、ダニー・ミッドウィンター、ジョン・リス=デイヴィス

 前作のラストで生まれたばかりの一匹の子蛇が持ち去られる。それを元に東欧の森の中で不死の蘭の研究をしていた研究者が一人。研究所と言っても普通の家に大道具を持ち込んだだけです。そもそも何故に東欧なんでしょうか。
 ところがこの研究者、開始早々に檻から逃げ出した蛇に丸呑みにされてしまいます。研究者から連絡がないことに怒った製薬会社の会長は、てっきり研究者が実験を完成させて他の企業に売りに行ったとばかりに思い込み殺し屋軍団を雇い入れます。本当はそんなことないのに、自分が悪いことをしてきているとそれを基準で考えてしまうんですね。
 一方その頃、前作のラストで生き残った女性研究者(クリスタル・アレン)は森に入った生き物や人が帰ってこないという噂を聞きつけその東欧の森にやって来ます。もちろん蛇の研究が行われていた森です。彼女の目的は不死の蘭と蛇を滅ぼすこと。これだけいれば映画は撮れそうですが、さらに発掘調査を行っていた学者の一団も含め、不死の蘭のエキスの奪い合いと蛇との戦い、そして人間同士の醜い戦いが始まります。

 登場人物の整理がついていないんで、誰が何をしたいのかさっぱり見えてこない。不死の蘭のエキスが欲しいのか、裏切り者を殺したいのか、この騒ぎから逃げたいのか、蘭と蛇を滅ぼしたいのか、なにがなにやら緊迫感の無いまま物語は進みます。人の位置関係もいい加減で、誰がどこにいるのか考えて撮ってるとは思えません。あと、肝心な物は必ず落とします。車の鍵とか通信機とか。まぁこの監督にそこら辺は期待しないとして、肝心の蛇の襲ってくるシーンがどうなっているか。
 アップ気味だった前作と比べてかなり引きの絵で撮っていて安っぽいCGでもそれほど気にならなくなっています。監督も撮影も同じというか両方兼務していますから急激に成長した感じはあります。成長してもこれですが。そこらの裏山で撮影したかのような映像にはある意味ほっとしますね。
 笑えるシーンとしては殺し屋軍団の一人が、蛇に襲われそうになって両手の手榴弾のピンを抜きどうせ食われるならば道連れだと気張るんですが、蛇は横を避けてきます。スルーです。で、男ドカーンと吹き飛びます。無駄死にです。哀れです。笑えます。
 今回のアナコンダは不死の蘭の力によって頭を切り落とされたぐらいでは再生してしまう力を持っています。それがスリルに繋がるかというと特にそういう事はない。なんか「ああそうなんだ」で終わり。せっかくの設定なんだからもっと活かしてくれよ。
 そしてアナコンダを爆破して「ふうやれやれ」。でも驚異的再生能力があるんだよね、安心していいの?あっ、道路をニョロニョロと横切っていくのは……というわけで『アナコンダ5』もあるのかもしれません。っていい加減にしなさい。

B001PNMYZ0.jpg『アナコンダ3』(2008) ANACONDA 3 91分 アメリカ

監督:ドン・E・ファンルロイ 製作:アリソン・セメンザ 脚本:ニコラス・デヴィッドフ、デヴィッド・C・オルソン 撮影:ドン・E・ファンルロイ 音楽:ピーター・マイスナー
出演:デヴィッド・ハッセルホフ、クリスタル・アレン、ジョン・リス=デイヴィス、アンソニー・グリーン、パトリック・レジス

 スネークハンターのボスがどこかで見た顔だなと思ったら『ナイトライダー』のマイケル・ナイトだった。ずいぶん昔のテレビシリーズだったはずだが意外と老けていない。いやそれはいいんだが。

『アナコンダ2』で登場した不死の薬となる蘭が登場する。この手の物は、一見続編っぽいタイトルだけ付けて実は関係ないってのが多いが、これは正式なシリーズの続編。
 製薬会社ウェクセル・ホールが蘭を手に入れ、人間を不老不死にする研究を続けているが、これがどうしてもアナコンダにしか効かない。そこでアナコンダの遺伝子を改良して雄雌二匹のスーパーアナコンダのつがいを作って日夜研究に励んでいる。
 ところが、出資者がガンで余命幾ばくもないため、研究を無理に急がせた結果強度不足となった飼育ルームからアナコンダが脱走し、近くの森に逃げ込んでしまう。
 問題としたくない会社は警察にも軍隊にも知らせずに猛獣狩りの専門家たちを集めて、アナコンダ捕獲に向かわせる。ヒロインの研究者はその専門家たちに同行する。

 どうやらテレビ用映画らしい。お金かかってませーん。お金がかかってないならないで工夫で見せてくれればいいのだがその工夫も少ないときたもんだ。
 これまでの大蛇物と比べて違うのは、遺伝子操作の過程で蛇の尾が異様に尖り得物を突き刺すことができるようになっていること。油断していると、グサッと胸を刺されて絶命する。
 アナコンダは得物に巻き付いて締め上げ逃げ出せないようにしてから飲み込むと思っていたのだが、この作品では巻き付くことなく倒れたところをそのまま頭から一気飲み。こちらの方がCGが楽なんだろうか。CGの動きの出来は並みだがアナコンダのデザインがダサかっこ悪い上に皮膚の質感がゴムっぽくてマイナス。やはり敵が凶悪でないと話しが締まらない。これでは単に大きな蛇だ。ちなみに山羊を食ったが不味かったようで吐きだしている。人間の味がお好みらしい。そうか蛇は味わって食っていたのか。噛まずに丸呑みだから味なんか関係ないと思っていたよ。海原雄山みたいなアナコンダもいるのかね。「店主を呼べ」
 味方はどんどんやられていく中で、ヒロインの研究者が「雌のアナコンダは妊娠しているの」と衝撃発言。そういうことは最初に言えよ。「この蛇の成長速度は速くしてあるから12時間でこの国は蛇で一杯になるわ」。『遊星からの物体X』よりも増加速度速いよ、この蛇。
 無駄に人間の頭が蛇に食われるや胴体真っ二つなどのスラッシャー描写でお茶を濁している感じ。ダラダラしているのをダラダラと観る。猛獣狩りの専門家という割には弱いなこいつら。
 この映画で一番怖ろしいことは「アナコンダ4」に続くという点だろうか。

B001P7CMQM.jpg『弾突 DANTOTSU』(2008) PISTOL WHIPPED 100分 アメリカ

監督:ロエル・レイネ 製作:アルウィン・ハイト・カシュナー、スティーヴン・セガール 製作総指揮:ドナルド・カシュナー、フィリップ・B・ゴールドファイン 脚本:J・D・ザイク 撮影:リチャード・クルード 編集:トッド・ラムゼイ 音楽:ジェラルド・ブランスキル
出演:スティーヴン・セガール、ランス・ヘンリクセン、レネー・エリス・ゴールズベリー、ブランチャード・ライアン、ポール・カルデロン、アーサー・J・ナスカレッラ、リディア・ジョーダン、マーク・エリオット・ウィルソン、アントニー・コローネ、マット・サリンジャー

 本国アメリカではビデオダイレクトとなっていて曲がりなりにも劇場公開されるのは我が日本のみというセガール映画。日本人はセガールが好きなのであろう。それはセガールが日本で合気道を学んで日本語も達者というナショナリズムからではなく、あの圧倒的なまでに強い、無茶苦茶強い、時に不条理なまでに強いあの強さが「なんだかな?」と思いながらも大好きだからにちがいない。ちなみに今作は芸能生活20周年記念作品だそうだ。

 今回の原題は『PISTOL WHIPPED』。ピストルである。格闘アクションスターの主演作のタイトルにピストルとはどんなもんであろうか。そして、オープニングは時々逆回しを使いながらの墓場での銃撃戦。セガールは例によってコルトガバメントを使っている。このシーンは終盤になって意味が分かり観客を引き込むのに成功している。
 全体的に銃撃戦のシーンが多くて、割と出来はよい。

 ではファンが期待する格闘アクションはどうであろうか。きっと日本で合気道を学んだセガールは武田信玄の風林火山も学んだにちがいない。「その速きこと風の如く。その静かなること林の如く。侵略すること火の如く。動かざること山の如し」というやつである。昔のセガールはそれら全てを持っていた。『沈黙の戦艦』や『暴走特急』の頃の話しだ。最近のセガールは「動かざること山のごとし」だけになってしまった。
 格闘アクションは主演スターが動いて成立するものだと思っていたのだが、それをコペルニクス的逆転させて、スターは動かず敵が勝手にぶつかってきてセガール拳で吹き飛ばされてしまうのだ。如何にスターを動かさずにアクションを成立させるかという点で、最近のセガール映画は知恵を振り絞っている。
 と言っては見たが、今作でのセガールは最近の他作品と比べるとまだ動く。スタントダブルの使用も少ないようだ。どっしりと太った肉体は逆に安定感さえ感じさせてくれる。でもあと20kg落としてくれたらかなりの動きが期待できると思うのだが、ダイエットをする気はないか。

 今回の役柄はあれこれ仕事を重ねてきた後になんとか警官になったが、麻薬の売上金を盗んだ疑いで警察を首になってしまった元刑事。友人の刑事がアリバイを偽証してくれたおかげで刑務所行きは免れたが、妻とは離婚し妻はその友人の刑事と再婚してしまった。妻との間には娘がいて、時々遊びに来てくれる。もちろんその娘が巻き込まれてしまい、セガールとの絆を強めるというのはお約束だ。
 ギャンブルと酒に溺れる毎日で、ポーカーで借金を作ってしまう。それ以外にも借金まみれの生活だ。そんな彼に謎の組織が声をかけてくる。借金を肩代わりする代わりに法で裁けぬ街の犯罪者を始末しろというのだ。そんな現代版仕事人として活躍し始めたセガール。暗殺任務なのに白昼堂々と無防備に仕事をこなすのはどんなもんだろうとおもうがそれがセガールだ。そしてある日報酬と一緒に渡された次のターゲットは意外な物だった。
 仕事人組織が本当に自分達の言っているような正義の組織なのか、単に邪魔な人物を依頼を受けて殺しているだけなのかギリギリまで謎な点もいい。組織のボスは痩せすぎなランス・ヘンリクセン。少しセガールのお肉もらってやれよ。

 セガールのムスッとした表情が借金に落ちぶれた男によく似合っていて哀愁を感じさせる。銃で胸を撃たれても平気でその後でシャツを開いて観客に防弾ベストを見せるシーンがあるが、そんなものがなくてもセガールなら無敵だろう。それにしても、防弾ベストを着ていた人間は撃たれた後に何故必ず観客にベストの存在を示してみせるのだろうか。工夫がないなと毎回観る度に思う。「お前、なんで大丈夫なんだ」「防弾ベストを着ているからさ」とセリフで説明されても困るんだけどさ。

B0000UN2X2.jpg『東部戦線1944』(2002) ZVEZDA(THE STAR) 94分 ロシア

監督:ニコライ・レベデフ 製作:カレン・シャフナザーロフ 脚本:ニコライ・レベデフ、アレクサンドル・ボロジャンスキー、エフゲニー・グレゴーリェフ 撮影:ユーリー・ネフスキー
出演:イゴール・ペトレンコ、アレクセイ・パーニン、アレクセイ・クラチェンコ

 ロシアの戦争映画。戦闘ではなく偵察が任務の偵察部隊を題材にしているので戦闘シーンは地味ですが、これがまたなかなかな佳作。ロシアの映画というと堅苦しそうとかプロパガンダを目的にしていそうだとかいった印象がありますが、娯楽戦争映画に仕上がってます。日本未公開ですがロシア国内では大ヒットしたそうです。それも納得。

 タイトルは東部線線となっていますが、これはドイツ線線から見ての東部線線で主人公のソ連軍偵察部隊にとってはむしろ西部戦線でしょう。
 時期は第二次大戦下の1944年。敗色濃くなっているドイツ軍は、ソ連軍と敵対する東部前線で、決死の抗戦を続け、ソ連軍はなかなか攻め落とせないでいました。ソ連軍は、7名の兵士を偵察隊として選び、敵陣深く潜入し情報取得の命令を出します。部隊名は『スター』でこれが原題となっています。(ZVEZDAはロシア語で多分星)
 偵察隊は、迷彩のポンチョを被ったその姿からドイツ軍より「グリーンゴースト」と呼ばれ恐れられていました。戦闘も捕虜も取ることも禁止されあくまでも偵察だけが任務。順調に偵察任務が進んでいると思われていましたが偵察隊からの通信は途切れてしまいます。敵の攻撃で無線機が故障してしまったのです。しかしその後、ドイツ軍の極秘計画を入手し至急本部に連絡を取らなければならなくなります。どうにかして無線機を手に入れなければならない、さてどうする。

 史実から言うとこの頃の東部線線のドイツ軍はすでに疲弊しきっていて、映画のように規律正しく戦力も持った存在ではなかったようだがそこはそれ映画の嘘。相手がよろよろのボロボロでは話にならない。映画のドイツ軍は秘密の戦車基地を作り、グリーンゴーストの存在に気付くと徹底して追い詰めてくる。
 戦闘シーンが地味と言っても他の陸戦部隊物と比べての話しであって、爆撃シーンの火薬の量や兵器の種類は合格点。ロシア人はロシア語で話し、ドイツ人はドイツ語で話すというところもちゃんとしています。
 偵察隊長に憧れている女性通信士のエピソードも上手く機能していて、ラストで返答のなくなった隊長に呼びかけ続けるシーンは感動的。
 全体的に丁寧に作られている印象で、どのシーンにも手抜きが感じられない。なかなか凝ったカットも登場する。戦闘シーンで白い鳩が飛んだ時はジョン・ウー作品かと思ってしまった。

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.261

このアーカイブについて

このページには、2009年5月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2009年4月です。

次のアーカイブは2009年6月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。