『ザ・トレンチ 塹壕』(1999) THE TRENCH 95分 イギリス
監督:ウィリアム・ボイド 製作:スティーヴ・クラーク=ホール 脚本:ウィリアム・ボイド 撮影:トニー・ピアース=ロバーツ 音楽:イヴリン・グレニー、グレッグ・マルカンジ
出演:ポール・ニコルズ、ダニエル・クレイグ、ジュリアン・リンド=タット、ダニー・ダイア、ジェームズ・ダーシー、タム・ウィリアムズ、キアラン・マクメナミン
B級戦争映画かと思って借りたらまた地味な佳作だった。それも珍しい第一次大戦物で衣装や武器、小道具など資料的な価値も高いと思われる。
監督の『ラジオタウンで恋をして』(1990)や『チャーリー』(1992)の脚本家でこれが初監督作品。もちろん脚本も担当している。
舞台は第一次大戦のフランス線線。タイトルからわかるとおり映画のほとんどが3メートルほどの深さの塹壕の中で繰り広げられるのでやはり地味だ。この舞台設定のおかげで戦争物なのに比較的低予算で作ることが出来たのだろう。
1916年7月1日から同11月19日までフランス北部・ピカルディ地方を流れるソンム河畔の戦線において展開されたソンムの戦いという事件があり、それを題材としている。史上最大の地上戦で100万人以上の犠牲者が出たそうだ。この映画の戦線では2時間で6万人が死んだことになっている。
そのソンヌの戦いまでの、前線の塹壕で待機している英陸軍の小隊の48時間の様子を描いている。新兵ばかりの若き兵士たちがヌード写真を見たりバカ話や恋愛話をしたりという青春物の側面もある。一人一人が個性的で、感情移入をして観てしまう。すると最後の戦いでショックを受けることになる。誰一人英雄でもなく戦場では単なる一人の兵士に過ぎない。生きても死んでも誰も気にしない。
見慣れないキャストがほとんどだが、若い兵士の兄貴分の軍曹としてまだ売れていなかった頃のダニエル・クレイグが出演している。この時はまさか後に007になるとは思わなかったろう。この頃のダニエル・クレイグ相変わらず渋いが正直華はない。
派手な戦闘を期待すると肩すかしを食ってしまうだろう。狭く泥だらけの塹壕の中でいつ攻めてくるか分からない敵に対して神経をすり減らす。塹壕に守られているといっても頭を出したところを狙撃されたり爆撃されたりして少しずつ疲弊していき精神的にも追い詰められてくる。重圧の中で酒に溺れる隊長の中尉。一人みんなを引っ張る軍曹のダニエル・クレイグは頼りになり時に英雄的だが妻から送られてきた苺ジャムを突撃を明朝に控えた夜に食べている人間味もある。
塹壕の息苦しさや不潔さがもう一つ描ききれていないのが残念だが、敵であるドイツ兵をほとんど出さずに戦争ドラマを構築した上手さは認められていいだろう。
ラストはイギリス映画だけあってハリウッド的なハッピーエンドではない。残酷な最後が待ち構えている。塹壕から飛び出して敵の塹壕へと突撃をするのだが、走るでもなく散開して歩いての突撃。第一次大戦はまだそんな前近代的なナポレオン時代から続く正統的戦法だったのだ。響く銃声。バタバタと倒れていく仲間たち。それでも進軍していく行進。ソンムの戦いが始まった。






















