2008年10月アーカイブ

B00197ONYM.jpg『カジュアリティーズ』(1989) CASUALTIES OF WAR 114分 アメリカ

監督:ブライアン・デ・パルマ 製作:アート・リンソン 原作:ダニエル・ラング 脚本:デヴィッド・レーブ 撮影:スティーヴン・H・ブラム 特殊効果:キット・ウェスト 音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:マイケル・J・フォックス、ショーン・ペン、ドン・ハーヴェイ、ジョン・C・ライリー、ジョン・レグイザモ、テュイ・テュー・リー、エリック・キング、サム・ロバーズ、デイル・ダイ、ヴィング・レイムス、ドナル・ギブソン、ジャック・グワルトニー

 ベトナム戦争で偵察に出たアメリカ軍人5名がベトナム人の村から少女を誘拐し、レイプしたあげくに殺害したという実際に起きた事件の映画化。5人の中で1人だけ誘拐・レイプに反対した兵士(マイケル・J・フォックス)が主人公。
 観たのは公開時以来だがやはり重苦しい。デ・パルマ作品としては珍しく例によって長回しはある物のテクニックに溺れていないのでまだ観られる。これでいつものようにコテコテの演出を駆使していたらかなりつらい。
 製作年度としては『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989)『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』(1990)の頃。マイケル・J・フォックスとしてはコメディ一色に収まりたくなかったため俳優としてさらに枠を広げるべく出演したと思う。当時のマイケルはアイドル的存在だったので彼目当てで詳しい内容を知らずに観に行った観客、特に女性客にはきつかっただろう。
 部隊を指揮する軍曹はショーン・ペン。やはり良い。童顔でいかにも純朴そうなマイケルと見た目だけですでに対比となっており上手いキャスティングだ。他の隊員たちも若い俳優ばかりだが、『エグゼクティブ・デシジョン』(1996)の対テロ部隊員や『ランド・オブ・ザ・デッド』(2005)で主人公と対立する調達屋を演じたジョン・レグイザモなど当時は無名だったがその後も映画で目にする人が多い。
 アメリカ軍人が犯した戦争犯罪とマイケルによる内部告発がメインなので、ベトナム戦争が題材となっているが戦闘シーンなどは少ない。デ・パルマによる本気の戦争映画も観てみたい物だ。
 戦争時の狂気を「私たちはこんな悪いことをしたんだ」「今となっては反省している」で片付けてしまうのは安易な気もするが、偽善と欺瞞の固まりである『プラトーン』などよりは単なる自虐よりさらに一歩踏み込んでいる。こうしたハリウッドの反戦・厭戦的視点は1991年の湾岸戦争以降、すっかり姿を消してしまう。
 音楽のエンニオ・モリコーネの楽曲が高ポイント。
 ただ、個人的に戦争映画に求める物は軍人同士の戦いで、民間人が巻き込まれる作品はやはり好きではない。映像にしてしまった時点でどうしても娯楽的要素が出てくるので、戦争の悲惨さを訴えるなどの題材は文章向きだろう。

B001BWTVU6.jpg『ソール・バスの世界』(1977) BASS ON TITLES 32分 アメリカ

出演:ソウル・バス

 旧タイトルは『ソール・バスの映画タイトル集』。今回は映像作品だが劇映画ではない。
 ポスターや予告編制作から映画に関わったデザイナーのソウル・バス(昔はソール・バス表記が多かったと思う)へのインタビュー映像。
 会話の中で「これこれこうだ」と説明した後に、実際の映画からタイトル・デザイン映像がほぼそのまま引用され、書籍では難しいことを実現している。
 ただし32分と短いので収録タイトルは『ウエスト・サイド物語』(61)『グラン・プリ』(66)『黄金の腕』(55)『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転進』(66)『危険な道』(65)『おかしなおかしなおかしな世界』(63)『大いなる西部』(58)『勝利者』(63)『暗殺5時12分』(63)『荒野を歩け』(61)の10本と少ない。
『おかしなおかしなおかしな世界』はやたらと長い。同じくソウル・バスが手がけた『80日間世界一周』のエンドクレジットにも似たアニメーションで出来が良く、本編はDVDになっていないので日本では観ることが難しいため貴重。まぁ本編は昔レンタルビデオだかで観たけど泥臭くてあまり面白くなかったのでオープニングクレジットだけで充分だったりする。
『北北西に進路を取れ』(1959)などのヒッチコック作品のタイトルデザインが収録されていないのが残念だが、『サイコ』(1960)のシャワーシーン演出騒動で二人は喧嘩別れしたとの説もある。それか単に版権の問題かも知れない。
 唯一の長編監督作『フェイズ IV/戦慄!昆虫パニック』(1973)が登場しないのも残念。
 レースの準備が着々と進められていく『グラン・プリ』のタイトルデザインは映画のオープニングと一体化していて、すでにタイトルデザインの枠を越えた秀逸さだ。これから映画が始まるワクワク感が伝わってきて現在では当たり前のように使われている手法である。画面分割の多様がちょっと時代を感じさせる。
 元々が1977年に16ミリフィルムで制作された作品のため画質は良くない。アメリカではVHSビデオとしてしか発売されておらず、DVDになっているのはイギリスやフランスなどヨーロッパのみ。そのためPAL→NTSC変換となっているので若干早回しにもなっている。
『ウエスト・サイド物語』や『黄金の腕』などはDVDがレンタルにもなっていて手軽に観ることが出来るが、現在の日本ではまず観ることが叶わない作品も含まれているのでその点は残念だ。
 単にキャストやスタッフの名前が並ぶだけだったタイトルデザインに映画の一部としての形と存在意義を与えた点でソウル・バスは開拓者である。今では多くの映画がタイトルデザインに趣向を凝らしそれが当たり前となっているが、ソウル・バスがいなかったらその分野の発展が遅れていたことに間違いはない。
 充実した出来だが、32分はやはり短い。少なくとも倍の1時間は欲しかったところ。
 29分のアニメーション+実写の実験短編映画『なぜ人間は創造するのか』(1968)が同時収録されている。

 デザイン関係のお仕事をなさっている方のご厚意で観ることが出来た。美術畑はさっぱりな私でも興味深い内容で感謝。レンタルはなくセル版オンリーなのでそうでなければ観ることはなかっただろう。映画のタイトルデザインに関心がある方は必見。

 ミノルタの青い丸のロゴやジャパン・エナジーの丸と四角の組み合わせのロゴなどもソウル・バスの手による物だそうだ。街中で意外とソウル・バスにすれ違っているのである。

B000F4MPCW.jpg『北京の55日』(1963) 55 DAYS AT PEKING 160分 アメリカ

監督:ニコラス・レイ 製作:サミュエル・ブロンストン 脚本:フィリップ・ヨーダン、バーナード・ゴードン 撮影:ジャック・ヒルデヤード 音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演:チャールトン・ヘストン、エヴァ・ガードナー、デヴィッド・ニーヴン、伊丹一三(伊丹十三)、ジョン・アイアランド、フローラ・ロブソン、ハリー・アンドリュース、ウォルター・ゴテル

 繊細な作風のニコラス・レイにチャールトン・ヘストン主演の歴史大作は向いてないにもはだはだしい。この手の作品はデヴィッド・リーンやセシル・B・デミルみたいな大雑把というかある意味鈍感な人の方が良い。北京オリンピックではBeijingが使われていたけど、この作品の原題ではPekingである。なんでかと思ったらこんな理由なんだそうだ。作中舞台に合わせたタイトルなわけだ。
 アメリカ海兵隊員と中国人女性の間に生まれたハーフの孤児少女と、ロシアの男爵夫人のエピソードがかろうじてニコラス・レイを感じさせる。
 1900年に起こった義和団事件(義和団の乱)を題材にした作品で、ああ世界史でこんなの習ったなぁと思い出させてくれる。アメリカ製作作品なので視点はアメリカを始めとした欧米からの物なので史実とは違っている部分も多いそうだが、NHKの歴史ドキュメンタリーじゃないしな。
 1963年製作なので北京の外国人居留区は中国ロケではなくスペインに作られた大規模なセット。もっともこの題材では現在の中国でもロケは無理だろうけど。そもそも当時の街並みが残ってないだろう。建物はほとんど張りぼて状態だろうが、居留区を丸々再現しているのでさすがに金はかかっていそう。ニコラス・レイはセットの巨大さに気圧されずにちゃんと活用しているし一見の価値あり。
 チャールトン・ヘストンと実在の日本人武官“柴 五郎”役の伊丹十三(当時は伊丹一三)が二人並んで会話しながら歩くシーンがあったりする。その他はほとんど伊丹の出番はないが、時代的には1904年から始まった日露戦争の前で日本に対する評価は小さかったし、映画が製作された1963年という時代を考慮するとこんな物であろう。実際には義和団を相手にした籠城戦で武官として戦闘を指揮してかなり大きな功績を挙げたそうだ。海兵隊員といっても西部劇に登場する騎兵隊のようなチャールトン・ヘストンたちがいかにもアメリカン。
 北京にはアメリカ(チャールトン・ヘストン)、イギリス(デヴィッド・ニーヴン)を始めとしてドイツ、ロシア、フランス、イタリアといった欧米列強や日本が虎視眈々と利権を狙っていて現代の視点から観ると確かにこりゃひどい。キリスト教の布教などにも反対して西太后に黙認された義和団が「外国人は中国から出て行け」と外国人排斥運動を起こしたのが義和団事件なわけだが、それを外国軍に武力制圧されて更なる侵略を受け中国は激動の時代へと突入していく。
 歴史は詳しくないが、日本が同じような状況にならず不評等条約を結ばされたとはいえペリーによる黒船来航なんかをどういう理由なのかね。戊辰戦争などはあったが明治維新を成し遂げたというのが大きいんだろうか。幕末関係は首を突っ込むと抜けなくなりそうだからここまで。
 義和団は白蓮教の流れをくむものだそうだ。白蓮教といえば『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』が思い出される。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズは清代末期に海外列強が中国に進出していく中での中国人をカンフーアクション物で描いている。
「外国人は出て行け」と力ずくで解決しようとする白蓮教を相手に、「それじゃ駄目なんだよ」と止めに入って“力ずくで解決”するウォン・フェイフォン(ジェット・リー)がメチャメチャ格好いい。『北京の55日』でもパーティーで義和団のカンフー使いが素手対刀二人組での演武を披露するシーンがある。その後で、チャールトン・ヘストンがカンフー使いにに刀を突きつけられて負かすシーンがあるが、相手がウォン・フェイフォンだったらチャールトン・ヘストンはコテンパンになってるぞ。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲』を観れば分かるがウォン・フェイフォンはガンマンよりも強いからな。って、今時コテンパンって……

ironman1.jpg『アイアンマン』(2008) IRON MAN 125分 アメリカ

監督:ジョン・ファヴロー 製作:アヴィ・アラッド、ケヴィン・フェイグ 製作総指揮:ジョン・ファヴロー、ルイス・デスポジート、ピーター・ビリングスリー、アリ・アラッド、スタン・リー、デヴィッド・メイゼル キャラクター創造:スタン・リー、ドン・ヘック、ラリー・リーバー、ジャック・カービー 脚本:マーク・ファーガス、ホーク・オストビー、アート・マーカム、マット・ハロウェイ 撮影:マシュー・リバティーク 視覚効果監修:ジョン・ネルソン 編集:ダン・レーベンタール 音楽:ラミン・ジャヴァディ
出演: ロバート・ダウニー・Jr、ジェフ・ブリッジス、テレンス・ハワード、グウィネス・パルトロー、ショーン・トーブ、レスリー・ビブ、ファラン・タヒール、スタン・リー、サミュエル・L・ジャクソン、ポール・ベタニー

 麻薬中毒でいわゆるヤク中となったため一度映画界から干され、復帰したなと思ったらまた麻薬に手を出して干され。そして二度目の復活を遂げたロバート・ダウニー・Jr。
 配役がそのまんまなヤク中アニメ『スキャナー・ダークリー』(2006)や、ダークで重苦しい『ゾディアック』(2006)などへの出演は納得なんだが、まさかアメコミ原作のヒーロー物大作で主演をやるとは驚き。『ゾディアック』ならばロバート・ダウニー・Jrがまた麻薬問題を起こしても公開可能だろうが、『アイアンマン』じゃそうはいかないだろう。もう問題を起こさないと判断できるレベルまで麻薬から抜け出せたのかな。一度薬物中毒になると断ち切るのは非常に苦しいというが、依存から抜け出そうと努力している人には励ましになる作品なのかも知れない。
 異星人だとか遺伝子操作をしたクモに噛まれたとかで生身のままで超人的力を持っているアメコミヒーローには珍しく、アイアンマンは肉体は常人でパワードスーツを着込むことで強くなる。爆発に巻き込まれて怪我をし、人工心臓だか心臓ブースターみたいのを胸に埋め込んでいるが、それで力が強くなるとか足が速くなるとかではなく、重要なのはパワードスーツ。
 このパワードスーツ“アイアンマン”のデザインが実に素晴らしい。『ロボコップ』よりもさらに洗練されていて、色は燃えるような赤。ピカピカと光沢があってワックスを塗ったばかりの新車のボディのよう。ただ顔面がちょっと残念。画像を見てもらえば分かるが『ロケッティア』風。あちらは第二次大戦頃が舞台であえてレトロデザインだから格好いいのだが、アイアンマンの場合は顔だけ妙にのっぺりしてるし、ちと悪役が入っている。

 主人公のトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)は軍事企業の経営者にして天才的兵器開発者。しかし、テロに巻き込まれてテロリストの人質になり、脱出のためにプロトタイプのパワードスーツを作り上げる。
 自分の作ってきた兵器が世界中で悲劇を引き起こしていることの気づいたスタークは、会社の上層部であるステイン(ジェフ・ブリッジス)らの反対を押し切り、軍事産業からの脱却を宣言し、研究室に一人閉じこもると平和を守るために改良を加えたパワードスーツ“アイアンマン”の製作に打ち込む。ところが……

 見せ場はなんといっても終盤の敵が復元したプロトタイプとアイアンマンのパワードスーツ同士による戦い。『マトリックス レボリューションズ』では「パワードスーツならガッツンガッツン格闘戦をやらせなきゃウソだろ」と怒ったものだが、今作では空中戦を含めてガッツンガッツンぶつかり合う。嬉しいねぇ。
 アイアンマンは両足の裏からロケット噴射をして空を飛ぶ。これ自体はよくあるが、両手の平にも噴射口があって、それでバランスを取ったり方向転換をしている。これは初めて見た。考えてみれば、翼や羽があるわけじゃないから足からの噴射だけじゃ安定した飛行は難しいよなってんでなるほどな設定。そもそも足からのロケット噴射で空を飛べるはず無いだろなんて野暮なつっこみはなしね。
 スタークの研究室は色々な道具や小物が転がっていたり、ディスプレイがいくつもあるコンピューターシステムや作業工具など実に魅力的。『WANTED/ウォンテッド』でルトガー・ハウアーが暮らしているビルの倉庫もそうだったが、あれこれガジェットがある男の隠れ家ってのは羨ましい。オレもスタークのような研究室が欲しいものだ。まぁなにを研究開発できるわけじゃないが。
 「人工衛星に使われている金属の配合を調べろ」など音声で受け答えが出来るコンピューターも便利そう。工場で使われているようなアーム型ロボットは開発中にスタークから「役に立たん。マヌケ」と言われているが、スタークの大ピンチでは指示もされていないのに自分で判断して彼を助ける。スタークの美人秘書も彼を支える重要で魅力的な役だが、あの瞬間オレにはアーム型ロボットが彼女を上回ったね。ヤツは心を、魂を持ってるよ。

 日本の作品でパワードスーツといえば『宇宙刑事ギャバン』の系列か。『仮面ライダー』はサイボーグだよな。『キカイダー』はアンドロイドと。
syaphoto05.jpg『アイアンマン』の燃えるような赤となると『宇宙刑事シャリバン』(1983?84)か。リアルタイムで観てたけど、イメージ検索してみると今見てもなかなか格好いいわ。
 20年以上前にこのデザインのヒーローが実写でアクションしていたわけで、やはり日本の特撮ヒーロー物はあなどれない。でもテレビまでで映画となるとさっぱりなのは何故だ?出てきたなと思ったら『CASSHERN』(2004)や『キューティーハニー』(2003)に、あげくの果てには『デビルマン』(2004)ときたもんだ。

『ファンタスティック・フォー 銀河の危機』では結婚式の受付で追い返されていた原作者にして製作総指揮のスタン・リーは、今回は両手に美女でモテモテ。
 最後の最後まで観るとS.H.I.E.L.D.のニック・フューリーとしてサミュエル・L・ジャクソンが登場し、“アベンジャーズ”という単語まで出てくる。マーベルコミックのヒーローが顔を揃えるヒーロー連合の『アベンジャーズ』を実写映画化するのは俳優のギャラだけを考えても不可能に近いだろうから今後への伏線と言うよりはファンへのサービスなんだろう。それともそろそろ年齢的に限界が来そうなスタン・リーは集大成としてマジでやる気なんだろうか。

B001DJ902Q.jpg『シューテム・アップ』(2007) SHOOT 'EM UP 86分 アメリカ

監督:マイケル・デイヴィス 製作:スーザン・モントフォード、ドン・マーフィ、リック・ベナーター 製作総指揮:ダグラス・カーティス、トビー・エメリッヒ、ケイル・ボイター 脚本:マイケル・デイヴィス 撮影:ピーター・パウ 編集:ピーター・アムンドソン 音楽:ポール・ハスリンジャー
出演:クライヴ・オーウェン、ポール・ジアマッティ、モニカ・ベルッチ、スティーヴン・マクハティ、グレッグ・ブリック、ダニエル・パイロン、ジュリアン・リッチングス、トニー・マンチ、ラモーナ・プリングル

 まず、オレは銃撃戦大好き野郎であることを強く主張しておく。
 この作品のコピーは「銃弾2万5千発のエクスタシー!」というもので、さすがに2万5千発は撃ってないと思うが最初から最後まで銃を撃ちまくりで銃撃戦のシーンが多い。
 それはうれしい。うれしいんだけど、そろそろ新しい銃撃戦が観たいなというのも正直な気持ちである。
 現在主流の銃撃戦は80年代後半から90年代前半にかけてジョン・ウーを始めとする香港映画が作り上げた「二挺拳銃でひたすら乱射」の延長線上にあると考えている。起源をたどれば『男たちの挽歌2』(1987)になるだろう。『男たちの挽歌』(1986)はまだ控えめだが、『男たちの挽歌2』で一気に弾けた。『リーサル・ウェポン』(1987)や『ダイハード』(1988)なんかの銃撃戦は今観ると意外と地味だったりする。
 後はそれがハリウッドにも輸入され改良していった形で、『マトリックス』(1999)終盤の銃撃戦もCGIやブレットタイムといった新技術は取り入れている物のやはりジョン・ウーの延長線。まぁウォシャオスキー兄弟の場合はジョン・ウーを意識したオマージュでもあるんだろうけど。
 ジョン・ウー自身は『フェイス/オフ』(1997)でやりつくしてしまってもう銃撃戦には興味がないようなのでその面では期待できないが、代わりに誰か若い監督が新しい銃撃戦のアイディアを作り出してくれないものだろうか。
『誘拐犯』(2000)の終盤の銃撃戦なんかはよりリアル指向ながら迫力もあって面白かった。ここら辺りにヒントがあるかも。比べてしまうとやはりちょっと地味で通好みだけど。最後にジェームズ・カーンが自分のポケットを探っても何も出てこないってのは彼自身も相手を倒した時点で弾切れになっていて寸での差で勝ったと言うことなんだが、分からない人には分からないよな。
『シューテム・アップ』で目新しかったのは飛行機から飛び降りて自由落下状態での銃撃戦。『007ムーンレイカー』や『イレイザー』で空中での肉弾戦は観たことがあるが銃撃戦を観たのはおそらく初めて。パラシュート降下が登場する映画だと『ターミナル・ベロシティ』や『ドロップ・ゾーン』を思いつくけど、銃撃戦までは無かったよな?
 主人公のクライヴ・オーウェンは生のニンジンを丸々一本のまま囓っているが、これが単なるキャラ付けかと思ったら、相手の頭をぶち抜く武器にしたり、サブマシンガンの用心鉄に突っ込んでトリガーを引きっぱなしにして銃を放り投げ敵を撃ち殺したりと道具として活用する。しかもビタミンAを含んでいるので目に良く、視力が大事なガンマンにはもってこい。もっとも、生のニンジンにはビタミンの吸収を阻害する物質が含まれているし(加熱すると分解して消える)、ビタミンAは脂溶性なんで生で食べるより油炒めにしたほうが何倍も摂取できるんだけど。とまぁ、今日のどうでもいい知識。
『交渉人』(1998)でサミュエル・L・ジャクソンの人質になった詐欺師や『ペイチェック』(2003)でのベン・アフレックの相棒役などどちらかというと情けない役が多かったぷっくり顔のポール・ジアマッティが犯罪組織のボスとして悪役で登場。実社会でも情けないヤツが一転してすごく嫌なヤツになったりするが、ポール・ジアマッティもそれに成功して実に憎たらしい。『マン・オン・ザ・ムーン』(1999)なんか出番は少ないけど良くて好きな俳優の一人。
 悪人に襲われている陣痛を迎えた女性を助け、その場で赤ん坊が出産。母親は射殺されてしまい、赤ん坊を抱えたまま謎の犯罪組織から追われる羽目に。授乳プレイをしている顔なじみの売春婦を強引に仲間に引き入れ、戦いながら逃げる内に赤ん坊の意外な正体が判明。そしてうんたらかんたら。ストーリーの筋道を気にするような映画じゃないので行き当たりばったりでも気にしない気にしない。銃撃戦ファンにはお勧め。銃撃戦が嫌いと言う人が観る作品じゃない。
 取りあえず最後に、「そろそろ新しい銃撃戦が観たいなぁ」ともう一度言っておく。

68f18560.jpg『ウォンテッド』(2008) WANTED 110分 アメリカ

監督:ティムール・ベクマンベトフ 製作:マーク・プラット、ジム・レムリー、ジェイソン・ネッター 製作総指揮:ゲイリー・バーバー、ロジャー・バーンバウム、ガイヤー・コジンスキー、アダム・シーゲル、マーク・シルヴェストリ 原作:マーク・ミラー、J・G・ジョーンズ 原案:マイケル・ブラント、デレク・ハース 脚本:マイケル・ブラント、デレク・ハース、クリス・モーガン 撮影:ミッチェル・アムンドセン 編集:デヴィッド・ブレナー 音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジェームズ・マカヴォイ、アンジェリーナ・ジョリー、モーガン・フリーマン、テレンス・スタンプ、トーマス・クレッチマン、コモン、クリステン・ヘイガー、マーク・ウォーレン、デヴィッド・オハラ、コンスタンチン・ハベンスキー、クリス・プラット、ローナ・スコット

 『マトリックス』系のCGIやワイヤーアクションを多用した斬新な映像が売りの作品。でも画面がどこか安っぽい。と思ったら監督はロシア映画『ナイトウイッチ』シリーズのティムール・ベクマンベトフ。なるほど似てるわ。意外と予算を抑えているのか作り込みが甘いのか。そこら辺がちょっと気になる。

 とにかく人がたくさん死ぬ。悪人だけじゃなくて列車が鉄橋から脱線して落下するシーンでは無関係な一般市民が大勢巻き込まれて犠牲になる。娯楽アクション映画の中での出来事だから気にすることはないと思うが、そこら辺に嫌悪感を抱く人もいるだろう。個人的にはフィクションの中だから気楽に楽しめばいいと思う。これを観て人命軽視の考えを持つ人がいたりするんだろうか。登場人物を死なせて感動させる安易な作品の方がよっぽど人命軽視だと思うんだが。

 主人公は平凡なサラリーマン。太った上に嫌みな女上司の下でこき使われネチネチといたぶられる毎日。そんな彼に人生を変えてしまう知らせが届く。実は伝説的殺し屋の息子で彼も超人的な反射神経という能力を引き継いでいたのだ。
 悪人を殺す正義の殺し屋組織にスカウトされた彼は追い込まれた時しか使えない能力を普段から発揮できるように特訓を始める。この特訓シーンが往年の香港カンフー映画風でなかなか楽しい。刃物を扱う訓練などで怪我をする度に治癒力を高める謎の風呂に入れられる。身体を白い蝋のような物で固められて見た目はカーボン冷凍されたハン・ソロの白色版といった感じ。ただ風呂と言っても水温は低そうなので、オレから見ると温泉の方が効果があるんじゃないかと思わなくもない。
 訓練の結果、放った銃弾をカーブさせることも出来るようになる。『大リーグボール』など魔球のような何らかの理屈があるとかテレキネシスのような超能力が発動するとかなのかと思っていたが、どうやら基本的に“根性”で曲げているようだ。特訓のシーンといい、“殺し屋スポコン物”というジャンルなのかもしれない。
 まだ能力に目覚めていない主人公が路上に立っているところにアンジェリーナ・ジョリーが運転するスポーツカーがスピンしながら突っ込んできて気がつくと助手席に放り込まれているシーンや、防弾ガラスで銃弾を受け付けない車に乗ったターゲットを、自分が運転する車を側転させて飛び越えることでサンルーフから撃ち抜くシーンなどがお気に入り。
 銃弾を避ける映画マニアとしては相手が撃ってきた銃弾に自分が撃った銃弾で撃ち落とすシーンも好きだ。でも同じアイディアはチョウ・ユンファ主演、リンゴ・ラム監督の『フル・コンタクト』(1992)(だったと思う)ですでに観たことがある。もちろんこちらはCGIは使われておらずかなり強引な映像表現だったが、コロンブスの卵で先にやった方がすごい。
 以上のようにリアルなアクションではなく、『少年ジャンプ』にでも出てきそうなコミック的なアクションがてんこ盛り。昔ならば物理的・予算的に不可能な映像を撮ることが可能になった。しかしインパクトだけを打ち出していくと観客も慣れてくるので、さらにすごいアクションを求めてインフレが進んでいく。どこまで行くか楽しみでもあるが、そんな中、派手なアクションでアクション映画を牽引し一時は荒唐無稽な映画の代表だった007シリーズが『カジノ・ロワイヤル』で無茶なアクションを控えスパイ秘密兵器を封印するなどリアルなシリアス指向に転換し興行成績・作品評価ともに成功したのは興味深い。
 終盤は少し失速気味。超人的殺し屋になった主人公に再び孤独と絶望を味あわせるということなのだろうが、素直に悪の殺し屋集団でも登場させて対決するなどで良かったかと。敵陣に乗り込んで突っ走りながらの銃撃戦でのスローモーションの使い方にも今一つセンスがない。最後に残った精鋭の殺し屋たちとの死闘を期待したがあっけなく片づいてしまうし。
 とりあえずテレンス・スタンプが相変わらずの目つきで渋かった。

B0002TT0QE.jpg『WANTED/ウォンテッド』(1986) WANTED: DEAD OR ALIVE 107分 アメリカ

監督:ゲイリー・シャーマン 製作:ロバート・C・ピータース 製作総指揮:アーサー・M・サルキシアン 脚本:ゲイリー・シャーマン、マイケル・パトリック・グッドマン、ブライアン・タガート 撮影:アレックス・ネポンニアシー 音楽:ジョセフ・レンゼッティ
出演:ルトガー・ハウアー、ジーン・シモンズ、ロバート・ジェローム、メル・ハリス、ウィリアム・ラス、スーザン・マクドナルド、イーライ・ダンカー

 2008年10月10現在、『ウォンテッド』が劇場で絶賛公開中だが、1980年代が青春だったオレにとってこのウォンテッドと言えばまずこの『WANTED/ウォンテッド』である。
 1958年よりテレビ放映された西部劇TVシリーズ『拳銃無宿』(原題は『WANTED, DEAD OR ALIVE』)という作品がある。主人公のジョッシュ・ランドルを演じたスティーヴ・マックイーンはこれで人気に火がついたそうだが、そのジョッシュの曾孫にあたるニック・ランドルが今回の主人公。演ずるルトガー・ハウアーは『ブレードランナー』よりもさらに渋みを増していて『ヒッチャー』(1985)などオレとしては一番好きな時期。これより数年後の『ウェドロック』(1991)などになるとちょっと余分な肉が目立つようになってしまう。
 『拳銃無宿』との関係は、ニックが子供の頃に祖父から曾爺さんのジョッシュの事を聞いたというエピソードが出てくるぐらいで『拳銃無宿』を観ている必要はない。オレも観たことないし。ファンにはその設定が嬉しいぐらいのことで、おそらく関連性はモーリス・ルブランの『アルセーヌ・ルパン』シリーズとモンキー・パンチの『ルパン三世』程度の物だろう。

 ニックは元CIA工作員の賞金稼ぎ。冒頭で警官殺しの犯人を捕まえるが、殺して捕まえた場合(DEAD)が2万5000ドルで、生きたまま捕まえた場合(ALIVE)が4万ドル。西部劇に登場する“WANTED”の張り紙だと「DEAD:$25,000 ALIVE:$40,000」となっているはず。生きたまま捕まえる方が難しいし、裁きにかけるという意味からも生きたまま捕まえる方が賞金が高い。ただし、一刻も早く捕まえなければならない凶悪犯の場合は生きたの死んだのと言ってられないので「生死を問わず(DEAD OR ALIVE)」でどちらでも同額の賞金が出る。どうも『DEAD OR ALIVE』が「生か死か」と勘違いされているケースが時折あるが、その点は要注意。
 いつもながら色素の薄い青というよりもむしろ水色の瞳が実に格好良い。ビルの上にある倉庫と港に停泊したボートの二ヶ所を根城にしていて、いかにも社会からはみ出した一匹狼の雰囲気を醸し出している。特に倉庫の方はだだっ広くて業務用エレベーターで車ごと乗り込み、バイクも駐めてある。射撃練習のスペースや銃器の保管庫があり、その隅にちんまりとソファやテレビが置かれていて、男の隠れ家といった感じ。実際に住んだら不便だろうが、あんなところに暮らしてみたい。
 今回の悪役はイスラム系テロリストのマラク・アル・ラヒム。ロサンゼルスの化学工場を爆破して毒ガスを発生させ、数万人単位でロス市民を殺害するテロを企んでいる。演ずるのは大御所ヘヴィメタバンド“KISS”のジーン・シモンズ。KISSとして活動中はヘヴィメタメイク、最近で例えるならば『デトロイト・メタル・シティ』のクラウザーさん風なメイクをしている。ただ、クラウザーさんはメイクを落とすと人畜無害な顔立ちとなるが、ジーン・シモンズの場合は素顔の方がさらに凶暴そうで怖い。ほんとーに悪党面。
 ルトガー・ハウアー自身も整った顔立ちだが正義の味方の面構えではなくニヒル。個性派対個性派の戦いだ。
 銃撃戦やカーチェイスはちょっと地味。製作はB級映画の帝王ロジャー・コーマンが設立したニューワールド・ピクチャーズ。パラマウントやワーナーのようなメジャースタジオではないので予算もさほど多かったのだろう。もう長いこと名前を見ないがさすがに潰れたのかな。
 ニックとラヒムの決闘もあっけなく決着が付く。だが、そこからがこの作品最大の見せ場。ラヒムの口に手榴弾を咥えさせてCIAに引き渡し、報酬の25万ドルは事件の最中にニックの身代わりに死んだ刑事の未亡人に支払うよう告げると、生きて捕まえた場合のボーナス5万ドルは「これが俺のボーナスだ」と手榴弾のピンを引き抜く。周りの人間が慌てて逃げ出し、ただ一人取り残され狼狽えるばかりのラヒムの頭部が数秒後にBooooooom!!
 いやー実に爽快。当時の劇場で大笑いしたもんだ。
 だが友人と恋人を失ったニックが一人寂しく水辺に佇む悲しげなカットで映画は終わる。やっぱこの頃のルトガー・ハウアーが一番渋い。

B001GMZXFS.jpg『ニンジャ VS カンフー』(2008) 93分 アメリカ

監督:メーティン・ガンゴール
出演:エルバート・トライスター、シソ・カンブロフ、パット・トゥーイ、メーティン・ガンゴール

 詳細は検索しても不明な謎映画。
 Z級映画ファンにはお勧め。そうでない人は観ちゃダメです。私はなんでも観る方なので『ニンジャ VS カンフー』というタイトルに惹かれて借りましたが、レンタル料金と1時間30分の時間を返せといいたくなりました。しかも新作料金だし。
 とはいえ、『ニンジャVSカンフー』というのは日本で勝手に付けた邦題で、原題は『FIST なんとかかんとか』。主人公たちはニンジャっぽい格好をしたフィストという集団だが、それ以外はクナイっぽいのを手裏剣として投げるぐらいで、忍者刀ではなく青竜刀風の刀を使っていますし、そもそも「ニンジャ」とは名乗っていません。ニンジャ映画じゃないんです。ショー・コスギも出てませんし。
 彼らの由来も200年以上前のイスタンブールの僧侶で、中国で悪政を行っているダーク・モンクの討伐に向かい、以来ずっと戦い続け今ではその場をアメリカに移しているというもの。
 奥義を授かるために会いに行く師匠もタイのお坊さんですし、日本は欠片も出てきません。『VSカンフー』というほど敵もカンフーの達人というわけでもなく、正直なんだかなぁ。ストーリーは単純なはずなのに何故か理解できない。これも一種の才能でしょう。
 今時、ビスタサイズですらない4:3画面。しかもどうみてもビデオ撮影。テレビ用映画なんでしょう。主人公たちはなかなか動作もキビキビしていて技も決まってるんですが、それを台無しにする自主映画レベルの演出。つか、これ自主映画じゃねーの?
 辛うじて面白かったのは、彼らは正体を隠した正義の味方で悪党を退治しても収入にはならないボランティア的存在。そこで頭脳担当のコードネーム・サイコは支出が何千ドル。収入が何千ドル。差し引きで700ドルのマイナスだと悩んでいる。彼は予知能力者でロトくじを当てるぐらいは簡単なんだが、超能力を私利私欲に使っては行けないというので、フィストのメンバーは鍼灸師や太極拳の講師などでバイトをして日銭を稼いでやりくりしている。テレビのインタビューで「金が無くて困ってるんだ」と答える始末。
 考えてみれば正義の味方ってのはどうやって生活しているんだか。バットマンのブルース・ウェインの様な大金持ちやスーパーマンのクラーク・ケントの新聞記者みたいに収入源や定職を持っているものは良いが、スパイダーマンのピーター・パーカーは貧乏学生で自分の写真を撮って新聞社に売り込みなんとか学費を稼いでいる。
 ウルトラマンシリーズの主人公は科学特捜隊やウルトラセブンの地球防衛軍などおそらく公務員。退職金も出るだろうし年金もしっかりしてて老後も安心だ。『ウルトラマン80』の主人公なんか初期は中学校の先生だ。日教組には加入していたのか。
 それに対して昭和仮面ライダーシリーズの主人公は仕事をしているシーンを見たことがないし基本的に無職っぽい。奴らはどうやって生活していたのだろうか。生活費はおやっさん(立花藤兵衛)に工面してもらっていたのかもしれない。

B001CEIK64.jpg『NEXT -ネクスト-』(2007) NEXT 95分 アメリカ

監督:リー・タマホリ 製作:ニコラス・ケイジ、トッド・ガーナー、ノーム・ゴライトリー、アーン・L・シュミット、グレアム・キング 製作総指揮:ゲイリー・ゴールドマン、ベン・ウェイスブレン、ジェイソン・クーアニック 原作:フィリップ・K・ディック『ゴールデン・マン』 原案:ゲイリー・ゴールドマン 脚本:ゲイリー・ゴールドマン、ジョナサン・ヘンズリー、ポール・バーンバウム 撮影:デヴィッド・タッターサル 編集:クリスチャン・ワグナー 音楽:マーク・アイシャム
出演:ニコラス・ケイジ、ジュリアン・ムーア、ジェシカ・ビール、トーマス・クレッチマン、トリー・キトルズ、ピーター・フォーク、ホセ・ズニーガ、ジム・ビーヴァー、マイケル・トルッコ

 フィリップ・K・ディックの『ゴールデン・マン』が原作だという。読んではいないが、他のフィリップ・K・ディック原作映画から考えるとどれだけ原作の要素が盛り込まれているかは疑問。比較的原作の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』に近い『ブレードランナー』ですらかなり違う。『トータルリコール』なんか原作は導入部でしか使われてないしな。

 自分に関係のあることだけ2分先まで予知できる超能力者(ニコラス・ケイジ)という設定は面白い。『ゴーストライダー』(2007)ではかなり微妙な髪型だったが今回はまぁ普通。薄くなったのはしょうがないじゃんか。しかしニコラス・ケイジは年に数本は出演する忙しさ。あまり出演作を選んでないんじゃないかと感じさせるところや、監督のフランシス・フォード・コッポラの甥で本名はニコラス・コッポラなのに叔父の七光りだと思われるのが嫌でごく初期の作品以外は芸名のケイジ姓を名乗っているところもオレ好み。従姉妹に当たるソフィア・コッポラが父親のフランシス・フォード・コッポラの七光りでしかないのと対照的だ。
 2分先までしか予知できないというのがミソで、その制約が活かされたシーンは確かに面白い。冒頭のカジノからの脱出劇や、終盤の埠頭でのテロリストとの戦いは、予知を活かして危機を乗り越えていく。ラストは予知に次ぐ予知で分身の術状態。FBI捜査官のジュリアン・ムーアから説明を受けて突入部隊に捕まるシーンが実は予知したビジョンで、実際にはジュリアン・ムーアが入ってくる前に逃げ出していたというシーンなどちょっと混乱したが上手い。
 だが、途中からその設定があいまいになって、数時間先のことまで予知できるようになっているのはどんなもんだろうか。それが面白さに繋がっているのならば別に問題はないのだが、むしろ逆にスリリングさを削る結果になっている。
 拘る人は「設定と違うじゃないか」と怒るのだろうが、オレは気にならない。あえて理由を付けるのならば、夢の中では2分以上先のことも予知できるということか?ヒロインのことだけは前々から予知していたから、彼女に関することだけは先まで予知できるのか。うーん、でも制約がキツい方がもっと面白くなったんじゃないかなとは思う。脚本家は大変だろうが。
 ジュリアン・ムーアはキャスト順ではニコラス・ケイジに次いで二番目だがヒロインではない。というかヒロインは無理。『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997)の頃は魅力的だったが、それ以降は一作ごとに老けていく。もちろん人間だから老けるのが当たり前で一作ごとに若返っていくのは一時のエリザベス・テイラーぐらいだろうが、ジュリアン・ムーアの老け具合はもはやヤバイ。整形とかしてないってことなんだろうが、このまま劣化が続くと女優生命が危ういのでは。
 格闘技では肉体だけではなく相手がどんな攻撃をしてくるのかを読むという頭脳も必要。ニコラス・ケイジは特に格闘訓練を受けていないだろうが、予知の力を駆使してそこら辺のチンピラ相手なら簡単に勝つ。それどころか、この方向に動くと拳銃で撃たれる自分の姿を予知して逆の方向に避ける。それを続けて弾丸を連続でかわして敵の真ん前に立ちはだかる。お前は『レモ/第1の挑戦』のレモ・ウイリアムスかっ!と言うわけで、『銃弾を避ける、または受け止める』映画リストに追加。あまり本数が集まらないリストだが。
 しかし、ロスのど真ん中で核爆弾を爆発させようというテロリストが敵だがその目的が不明。イスラム系ではなくて白人だがそれで何の得があるというのだろう。
 それと、ニコラス・ケイジの相棒として登場したピーター・フォークの存在も謎。日本語吹き替えがちゃんと小池朝雄風に喋る石田太郎なのは嬉しいが、登場シーンは少ないしストーリーにはまったく関係ない。劇場用映画で姿を観たのは『デッドロック』(2002)以来だが、この5年で老けた。1927年生まれだそうだから、それも当然か。

B001544MAE.jpg『U.M.A レイク・プラシッド2』(2007) LAKE PLACID 2 88分 アメリカ

監督:デヴィッド・フローレス 製作:ジェフリー・ビーチ、フィリップ・J・ロス 製作総指揮:T・J・サカセガワ 脚本:トッド・ハーヴィッツ、ハウイー・ミラー 撮影:ロレンツォ・セナトーレ 音楽:ネイサン・ファースト
出演:ジョン・シュナイダー、サム・マクマレー、ジャスティン・ユーリック、クロリス・リーチマン、テリー・ウィンクレス、サラ・ラフルール、アリーシャ・ジーグラー、イアン・リード・ケスラー、ジョー・ホルト

 前作『U.M.A』(1999)の時にも言われていたのだが、UMAと言いつつ襲ってくるのは巨大なワニ・クロコダイル。UMAじゃないじゃん。
 ところはメイン州の湖。水質調査にやってきた二人組の調査員の内、一人がボードから水中に引きずり込まれて何者かに食われるという事件が発生する。
 食いちぎられた腕と足という物証があるにも関わらず、やけに呑気な保安官。動物保護局の女性担当員と湖の調査を始め、生首まで発見するが、それでも呑気。田舎の湖なので携帯電話は通じないが保安官の無線は通じるのに応援も呼ばなければ湖の閉鎖も命じない。おかげでキャンプにやって来た若者などが食われ始める。
 ハンティングを道楽にしているお金持ちも加わってワニの捕獲作戦を開始する。そんな折り、保安官の息子は知り合ったばかりのガールフレンドと湖の畔でキャンプパーティーに参加していた。例によっていちゃついていたカップルから襲われ始め、被害は拡大していく。
 アメリカ北部のメイン州ではクロコダイルは冬を越せず生きていけないはず。それが何故生息しているのか。その謎は湖の畔に住む一人の老女が答えだった。

『UMA』とタイトルを付けたのは日本側。『UMA』物として売るよりも素直に巨大ワニ物として売った方が良かったんじゃないだろうか。UMAファンは観たら正体に怒るぞ。そもそもUMAファンと巨大ワニファンはどちらが多いのか。案外、巨大ワニ物ファンの方が多いかも知れない。
 TV用映画なのでクロコダイルのCGがちょっとちゃちいのはしかたない。登場人物が少ないのも低予算だからだろう。そう考えると、応援を呼ばないなどの行動も納得がいく。
 この手の人喰い映画だとモンスターが突然現れるシーンでは普通ビックリするのだが、この作品ではさっぱりビックリさせてくれない。予告なしで出てくるシーンもそうだし、出てくるかな出てくるかなと予想させて出てくるシーンでも別に「ああ、出てきたね」って感じ。もっとドキドキさせてよ。
 登場人物に魅力が乏しいのも大きな欠点。人喰い映画では喰う側の怪物も重要だが、それと同じぐらいに喰われる側の人間の魅力も大切。嫌な奴が喰われるシーンでは「ざまぁみろ」と溜飲を下げるし、善良な人間が喰われるシーンでは「この人まで喰われるなんて」という衝撃がある。
 ところがこの作品では、大金持ちとその部下の黒人、ワニを飼っていた老女が少し面白いぐらいで、主役の保安官と動物保護局の女性、保安官の息子とそのガールフレンドを始めとしてどうでもいいと感じる人間が大半。特に動物保護局の女性は我が儘で、動物愛護は良いがそのために消極的な捕獲作戦を主張した結果犠牲者が出てしまう。すでに何人も殺されてるんだから最初から抹殺計画でいいじゃん。どうでもいい人間が喰われても、別に観てるこっちも「どうでもいい」。
 一匹だと思っていたワニをなんとか倒して、ワニステーキなどを食っていたら、実は何匹もいて(合計4匹だったかな)、やっつけてもやっつけても次々と出てくるのはちょっと笑ったが、ワニの卵をいくつも手に入れ、保護局に運ぶというラストはパニック物やホラー映画でお約束の「解決したようで実は……」ネタぐらい仕込んでいてくれるかと思ったがそれもなし。だったら、道を去っていく車を延々と捉えるラストカットの意味が分からん。

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