『トランザム7000 VS 激突パトカー軍団』(1980) SMOKEY AND THE BANDIT II 101分 アメリカ
監督:ハル・ニーダム 製作:モート・エンゲルバーグ 製作総指揮:ロバート・L・レヴィ 原案:ハル・ニーダム、ロバート・L・レヴィ 脚本:ジェームズ・リー・バレット、チャールズ・シャイア、アラン・マンデル 撮影:マイケル・C・バトラー 音楽:スナッフ・ギャレット
出演:バート・レイノルズ、サリー・フィールド、ジャッキー・グリーソン、ジェリー・リード、ドム・デルイーズ、ポール・ウィリアムズ、パット・マコーミック、ジョン・アンダーソン、ナンシー・レネハン
主人公バンディット(バート・レイノルズ)は前作『トランザム7000』での活躍で人気者になったが図に乗りすぎて失敗し、恋人のキャリー(サリー・フィールド)には逃げられ今では安モーテルで酒浸りの毎日を送っている。
そこへ相棒のトラック運転手スノーマンが大仕事を持ち込んでくる。マイアミの港からテキサスのダラスまである荷物を運べば40万ドルになるというのだ。スノーマンはジャスティス保安官(ジャッキー・グリーソン)の息子と結婚式の最中だったキャリーを呼び出し、一緒になってアル中寸前だったバンディットを鍛え直し、荷物の到着にあわせてマイアミへと向かう。
港の保管倉庫で目的の1444番の荷物を探し出すとこれがなんとも大きな箱。開けてみると中にいたのは一頭の象。シャルロットと名付けたその象をトラックへと積み込みバンディットが運転するポンティアック・ファイヤーバード・トランザムがガードする形で出発するが、アホ息子の結婚式を台無しにされたジャスティス保安官が執拗に追跡してくる。
一行は無事にダラスにたどり着けるのだろうか?
トレーニングのために美容クラブのお腹の贅肉をベルトでブルブルさせるマシンにかけられるバンディット。スノーマンの愛犬フレッドとジョギングをするバンディット。運転の勘を取り戻すためゴーカートで子供たちと競争するバンディット。ここらへんはまぁ分かる。
だが、競馬場でゲートが開くと同時に馬と競走するバンディットはさすがにワケが分からん。何故に競馬場。何故に馬。しかも馬に走り勝つバンディット。すげぇよあんた。
だが身体は元に戻っても心はそう簡単に戻らない。一度有頂天になったことで肥大しすぎて崩壊した自尊心を抱え他人を思いやる心を失ってしまったバンディットはすっかり嫌な人物になってしまっている。そんなバンディットはこの仕事を成功させることで自信を取り戻そうとしており、シャルロットが妊娠していることが判明したり、子象を産んでも強引に運ぼうとする。そんなバンディットに再び失望したキャリーは再びバンディットの元を去る。
仕事を成功させて自尊心を取り戻すか。それとも別の道を進んで人間らしい心を取り戻し自分を好きになるか。バンディットが選んだのがどちらかはラストで判明する。困難な仕事を成功させることだけがヒーローの役目ではない。
バンディットが『トムとジェリー』のジェリーないし『ロードランナー』のロードランナーだとしたら、ジャスティス保安官はトムないしワイリー・コヨーテ。両カトゥーンでも分かるように時に主人公側以上に魅力的なのが悪役。バンディットをつけ狙うのは保安官としての正義心よりも単に憎くて嫌いだから。コテンパンにしてやろうと企んでいて、あの手この手でバンディットを捕らえようとするがいつも失敗ばかり。しかもパトカーに同乗している保安官助手である息子はボンクラだから、そりゃ血圧も高くなる。
ジャッキー・グリーソンは『ジャッキー・グリーソン・ショー』というTV番組も持っていたぐらいにアメリカでは人気のあったコメディアン。
終盤では助っ人として兄弟を呼んで一人三役をこなす。一人はゲイロードという名前でオカマさん。名前のまんまの設定だ。では三兄弟ならではの大活躍をするかというと、そうでもなく単なる一発ギャグに近い。
カースタントが多い作品で、一つ目の目玉がバンディットとジャスティス保安官のカーチェイスに巻き込まれての木製ジェットコースター大崩壊。さすがに最初から取り壊しが決まっていたジェットコースターなのだろうが、ドドドドッと崩れていく様子は圧巻。
そして終盤での数十台ものパトカー軍団との戦い。さすがのバンディットもトランザム一台だけでは分が悪い。そこへスノーマンがトラックで応援に駆けつける。しかし、トラックが一台来たところで……ところがスノーマンのトラックの後に隠れていた他のトラックが一台また一台と姿を現す。そしてトラック軍団とパトカー軍団の戦いが始まった。
数では若干勝っているとはいえ、大きさがあまりにも違いすぎパトカーがトラックに敵うはずがない。左右真っ二つにされたり、前後に千切れてしまったり、屋根がすっ飛んでオープンカーになってしまったりとパトカーは散々な目に遭い、ついにはスクラップと化したパトカーの山が出来る。それでもパトカーの警官たちは大した怪我もしていない様子で、ゴソゴソとひっくり返ったりしたパトカーからゴソゴソと這い出してくる。これのおかげで悲惨さを感じずにすっきりと大笑いできる。
監督のハル・ニーダムは1931年のテネシー州生まれ。西部野郎ということで前に撮影風景を写した写真を見たことがあるがちゃんとカウボーイハットをかぶっていた。
朝鮮戦争ではパラシュート降下兵として戦ったそうで、その経験を生かして帰国後は映画界に入り第一線のスタントマンとして活躍した。
スタントマンという職業は肉体を酷使するという仕事柄、長年続けるというのは難しい。ハル・ニーダムはスタントマンを引退するとスタント・コーディネーターになり、こちらでも実力を発揮。『ロンゲスト・ヤード』(1974)や『ニッケル・オデオン』(1976)などバート・レイノルズ主演・出演作でスタント・コーディネーターを務めた縁からかバート・レイノルズ監督・主演作の『ゲイター』(1976)ではB班監督を任される。B班監督とは監督が参加しないシーンで演出を担当する仕事で、『ゲイター』は縁がなくてまだ観たことがないのだが、かなりアクションが多い映画なのでスタントシーンを任されたのだろう。
そして翌1977年にはバート・レイノルズ主演の『トランザム7000』で監督デビュー。映画はヒットし、その後も『グレートスタントマン』などバート・レイノルズ主演作を中心に活躍することとなる。
あるスタントマンへのインタビューで「尊敬し目標とする人物はハル・ニーダムです」と答えているのを読んだことがある。スタント・コーディネーターになるだけでも大変なのに、監督となってヒット作を何作も作っているハル・ニーダムは大成功した人物なのだ。
ハル・ニーダム監督作にはエンド・クレジットの最中にNGシーンが流れるというお約束がある。ハル・ニーダム監督作『キャノンボール』(1980)に出演したジャッキー・チェンの映画もNGシーンがお約束だが、ジャッキーが始めたのは『プロジェクトA』(1984)からだと思うので、ハル・ニーダムから学んだのではないだろうか。
タイトルは『トランザム7000』だがファイヤーバード・トランザムの排気量は6600cc。だから厳密には『トランザム6600 VS 激突パトカー軍団』とすべきだが、あまりにも語呂が悪い。それにしても6600ccとは燃費とか省エネとかまったく考えていない設計だ。ハイオク仕様だろうし。途中でトランザムに給油するシーンがあり料金が24ドルだった。どれだけ給油したのかは分からないが、当時のアメリカはガソリンが安かったのだろう。
パート2だから『トランザム70002』でもよさそうだが、『トランザム七万二』にしか見えんな。