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『パルス』 ヤツらは生きる意志を奪う

B00148S76Q.jpg『パルス』(2006) PULSE 86分 アメリカ

監督:ジム・ソンゼロ 製作:ブライアン・コックス、マイケル・リーヒイ、アナント・シン、ジョエル・ソワソン 製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン 脚本:ウェス・クレイヴン、レイ・ライト オリジナル脚本:黒沢清 撮影:マーク・プラマー 音楽:エリア・クミラル
出演:クリステン・ベル、イアン・サマーハルダー、クリスティナ・ミリアン、リック・ゴンザレス、ジョナサン・タッカー、サム・レヴァイン、オクタヴィア・スペンサー、ロン・リフキン、ブラッド・ドゥーリフ、ケル・オニール

 黒沢清の『回路』(2000)がハリウッドリメイクされると聞いた時は、どうせ企画だけで実際に製作はされないんだろうと思った。ストーリーや意味が分からないという意見が多かったのに、それをハリウッド映画化は無理だろうと。黒沢清は必要最低限名事しか描かない、いや時に必要なことすら省略することが多い。『回路』もその一つなんだが、それが何事に付け過剰なハリウッド映画になり得るのだろうか?
 ところがウェス・クレイヴンがそれを上手くアレンジ・変更して娯楽作として観られるホラーに作り上げてしまった。

『回路』と『パルス』の粗筋は似通っているが、幽霊の扱いがまったく異なる。その代表的な例が赤いテープで作る開かずの間の意味だ。
『回路』での開かずの間は死の世界に通じる扉だ。だから“開けてはいけない”。建物の解体現場で作業員の哀川翔(特別出演)が、ある部屋に立ち入れないようにするため、たまたま側にあった赤いテープで扉を封印する。その結果、偶然にも開かずの間が作られてしまった。だが、ほどなくその扉も壊され、開かずの間は開いてしまう。そして、死が現実の世界に出てきて浸食を始める。
『パルス』の開かずの間は、幽霊が入って来られないようにする一種の結界だ。赤いテープを扉や窓に張り巡らし、そこに立て籠もることで死から逃れようとする。

 幽霊は自分たちが持っていない“生”を羨んで、人間たちから生きる意志を奪ってしまう。生きる意味を失った人間は苦しんだあげくに絶望して死を選び自殺する。血を吸うとか身体を引き裂くなど物理的攻撃ではなく、生きる意志を奪ってしまうというのははるかに残酷だ。しかも吸血鬼や殺人鬼に出くわす可能性は低いが、日本では年間3万人の人が自殺している。オレだって、いつどこで幽霊に出くわすか分からない。
 若者で溢れる大学のキャンパス。しかし、映画が進む内に少しずつ数が減ってくる。最後は無人となり、街も廃墟となる。そのジワリジワリと進行していく様子がゾクリと来る。
 ラスト近くで火を噴いた旅客機が墜落して爆発する。『回路』にもあったシーンだ。9.11テロをイメージさせるのでてっきり省かれているだろうと思ったが意外だった。もちろん衝撃的な投身自殺のシーンもある。
 序盤でヒロインの恋人が自殺する。ヒロインとその友達を含む4人で彼女を慰めるためにチャットをやっていたら起こる出来事でもゾクリ。
 ここなどを含めてストーリー上でのパソコンやネットの扱いは『パルス』の方が上手い。これは2000年と2006年という製作年度の差か、それとも日本映画とハリウッド映画の差か。考えてみれば、『回路』は途中からパソコンは全然関係ないからな。ネットはさらに上手くホラーの題材に出来る気がする。じゃあお前がアイディアを出せといわれると困るが。winnyなどを使っている人がウイルスに感染して情報を流出させてしまう事件があるが、あれなんかイジりようがないかな?
 携帯電話を題材にしたホラー『着信アリ』は面白そうだと思ったのだが、『リング』のビデオを携帯にしただけだと聞いたので興味を失ってなんとなく観ていない。
 幽霊は一種の電気信号。だからネットや電話回線、無線LANはもちろん携帯電話の電波としてもやって来る。解析しようとする度に周波数を変えたりするので調査が不可能。量子暗号みたいのがかけられているのかもしれない。
 電話が無く携帯の圏外に行けば幽霊はやって来れない。でも幽霊が短波や通信衛星に目を付けたらどうするんだろうか。なんてヤボなツッコミはなし。ラストはちょっと『生物都市』を思い出してしまった。

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