『セント・アイブス』(1976) ST. IVES 95分 アメリカ
監督:J・リー・トンプソン 製作:パンチョ・コーナー、スタンリー・カンター 原作:オリヴァー・ブリーク 脚本:バリー・ベッカーマン 撮影:ルシアン・バラード 音楽:ラロ・シフリン
出演:チャールズ・ブロンソン、ジャクリーン・ビセット、ジョン・ハウスマン、エリシャ・クック、ハリー・ガーディノ、マクシミリアン・シェル、ハリス・ユーリン、ダナ・エルカー、マイケル・ラーナー、ダニエル・J・トラヴァンティ、ジェフ・ゴールドブラム、ロバート・イングランド
監督J・リー・トンプソンがチャールズ・ブロンソンと初めて手を組んだ作品。
セント・アイブス(チャールズ・ブロンソン)は元新聞記者で現在は売れない作家。そのセント・アイブスがある依頼を受けるために大金持ちの屋敷を訪ねるところから物語は始まる。ハワード・ホークスの『三つ数えろ』(原作はレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ物『大いなる眠り』)を感じさせるオープニングだ。
奪われた日誌を10万ドルを買い取ることになっており、その受け渡しをセント・アイブスに頼みたいというのだ。10万ドルを入れたパンナムの青いバッグを持って指定されたコインランドリーを訪れるが、相手は殺されて乾燥機の中でゴロゴロと回っていた。こうしてセント・アイブスは深みへとはまっていく。
久々に観た感想だが、チャールズ・ブロンソンにハードボイルドは似合わない。ちょっと気障ったらしい男を演じているのだが、どうもしっくりこない。ハードボイルドの主人公は自己愛の持ち主が多いが、そういったメロドラマ的雰囲気がブロンソンには合わないのだろう。DVDのパッケージはセント・アイブスが咥えたパイプに美女がお札で火を付けているし、拳銃も写っていて非常に俗物的だが、映画のセント・アイブスは意外とストイック。
謎が謎を呼び、裏切りが錯綜するストーリーは魅力的で、自宅にAVルームを持っていて映写機で古い映画を観るのが楽しみな金持ちや、謎の美女(ジャクリーン・ビセット)、セントアイブスとは古い馴染みの警部など一癖も二癖ある人物が脇を支える。食堂のオヤジやホテルのフロントマンまで味がある。ジャクリーン・ビセットは本当にキレイでしかも悪女と来ているからもうそこらの男じゃかなわない。
セント・アイブスも食えない男で、食堂で相手に「俺のおごりだ」と食事を勧めておきながら、立ち去り際に「誕生日おめでとう」と言い、相手が「俺の誕生日は今日じゃないぜ」と応えると「そうか間違えたな。じゃあおごりはなしだ」で終わらせる。情報をもらったんだし大衆食堂だから飯ぐらいおごってやれよとも思うが、このやり取りが面白い。
途中でセント・アイブスは三人組のチンピラに襲われるが、その一人がジェフ・ゴールドブラム。『狼よさらば』(1974)でもチンピラ役で出演していたが、そちらではブロンソンと同一画面には映っていなかった。ブロンソンは妻と娘の敵とばかりにジェフ・ゴールドブラムをやっつける。チンピラ仲間には『エルム街の悪夢』のフレディ役ロバート・イングランドも素顔で登場していて、今にして思えば豪華なチンピラたち。残りの一人はどこでどうしているのか知らないが。
ラストは救いが無く苦い結末。ハードボイルドはやっぱこうじゃなきゃ。ラストショットは皮肉が利いている。
セント・アイブスとジャクリーン・ビセットがベッドインすると画面は夜空に打ち上げられた色鮮やかな花火のカットに変わる。これは大金持ちが観ている映画のシーンなのだが、何の比喩かは言うまでもないだろう。笑った。