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『キングダム/見えざる敵』 悪いのは全部アラブ人だぜ

B0012OR5KG.jpg『キングダム/見えざる敵』(2007) THE KINGDOM 110分 アメリカ

監督:ピーター・バーグ 製作:マイケル・マン、スコット・ステューバー 製作総指揮:サラ・オーブリー、ジョン・キャメロン、メアリー・ペアレント、スティーヴン・シータ 脚本:マシュー・マイケル・カーナハン 撮影:マウロ・フィオーレ プロダクションデザイン:トム・ダフィールド 編集:コルビー・パーカー・Jr.、ケヴィン・スティット 音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン、アシュラフ・バルフム、アリ・スリマン、ジェレミー・ピヴェン、ダニー・ヒューストン、リチャード・ジェンキンス、カイル・チャンドラー

 まずは過去のニュース映像などを利用して1932年から9.11テロまでのサウジアラビアとアメリカの関係が紹介される。4分ほどの映像を要約すると「悪いのは全部アラブ人だ」
 そして本編が始まる。残りの106分で語られていることを要約すると「悪いのは全部アラブ人だっつーの」
 そんだけの映画。

 サウジアラビアのアメリカ人居住区で爆破テロが発生し多数の死傷者が出る。ジェレミー・フォックスをボスとする4人のFBI捜査官が現地に乗り込み捜査を始めるが、滞在を許された期間はたったの5日。様々な方向から調べていく内に、伝説的爆破テロリストの姿が浮かび上がってくる。

 サウジアラビアの人々はごく一部を除いて無能か世間知らずかテロリストだけ。そりゃテロはいけないことだが、それが行われる背景とかはほとんど無視。世界社会の歪みとか宗教問題、原油の資源問題など数々の問題があろうに、「テロリストは皆殺しだ」の単純な思想で片を付けてしまう。
 FBI捜査官の一人がテロリストに拉致され、危険地域に入り込んでの救出活動における銃撃戦はリアルだが、別に社会問題を抱えた題材の映画ではなく、普通のアクション映画でやってればいいんじゃないの?絶対やるだろうなと思っていた子供のテロリストはやはり終盤で登場。分かり易すぎ。それで棒付きキャンディーとか取り出して。あのね、舐めてんの?友人になるサウジアラビア人警官も、つまるところアメリカ人の手下扱いだしな。
 黒人のジェレミー・フォックスを主人公に据えたのも、白人だと対アラブ人の構図が露骨になりすぎるのを避けたからでは。ともかく、ジェレミー・フォックスって芝居がくどいんで好きじゃないんだよね。
 ラストはそれっぽい台詞で締められるが、よく考えると大したことは言っていない。
 スポーツに政治を持ち込むなと最近さかんに言っている国があるが、オレに言わせりゃ映画に政治を持ち込むなだ。もっとも、政治的に利用されている映画も多いが。
 とにかく、問題意識を映画に持ち込むのならばきっちりやれ。それをやらずに中途半端なアクション映画で終わっているところが許せない。どっちがやりたいんだ、お前らは。

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コメント (2)

ネスカフェ:

東森さん

映画に政治を持ち込むなというのは、同意です。私も音楽に政治を盛り込むのは嫌ですし、俳優やミュージシャンが政治的表明については一部は立派だと思う反面、いい加減にしてくれという気持ちにもなります。
「映画と音楽は楽しくなくちゃいかん」と中島らもがいってましたが、テーマが深くて、作り手がやるき満々でも面白くなかったらつまらないですよね。ミュージシャンのしろ、映画作家にしろ、問題意識よりも内容の面白さを優先してほしいと思います。

東森時音:

ネスカフェさん

映画は良くも悪くも見せ物的要素が強いので、思想やメッセーを語るには向いてないメディアだと思います。リアルな戦闘シーンだと言われる『プライベート・ライアン』のノルマンディ上陸作戦の戦闘シーンも「うわっ悲惨。やっぱ戦争はいけない」と感じるどころか「うわっ迫力満点。かっこえー」でしたし。問題意識は小説などの活字媒体向きでしょう。

>「映画と音楽は楽しくなくちゃいかん」と中島らもがいってましたが

さすが中島らも。個人的に音楽のことはあまり分かりませんが、映画はやっぱ楽しくなきゃダメですよ。

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