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2008年04月 アーカイブ

2008年04月01日

『沈黙のステルス』 セガール雲にのる

B0011NIUG6.jpg『沈黙のステルス』(2007) FLIGHT OF FURY 98分 イギリス/アメリカ/ルーマニア

監督:ミヒャエル・ケウシュ 製作:スティーヴン・セガール、ピエール・スペングラー 製作総指揮:フィリップ・B・ゴールドファイン、ブルーノ・ホーフラー 脚本:スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン 撮影:ジェフリー・ホール 編集:ジョナサン・ブレイリー 音楽:バリー・テイラー
出演:スティーヴン・セガール、スティーヴ・トゥーサント、アンガス・マッキネス、シエラ・ペイトン、アルキ・デヴィッド、ティム・ウッドワード、マーク・ベイズリー

 相手から肉眼でも見えなくなるアクティブステルスという、いわゆる光学迷彩機能を搭載した新型ステルス機がテスト中に金で寝返ったパイロットによって盗まれる。ステルス機が飛んだ先はアフガニスタン。敵はイスラム系テロリストだ。
 空軍の将軍さんは言う。
「ステルス機を取り返せる男は一人しかいない!」
 その男が誰かは説明する必要もないだろう。

 2、3時間ででっち上げたかのような脚本。
 格闘や銃撃戦などのシーンでのやる気の感じられない演出。
 観客を置いてけぼりにしかねないやたらと早い展開と説明的なセリフ。
 そして、無敵のセガール。
 今回のセガールは空軍のパイロットと言うことだが、軍用機のコクピットは狭い。座ったは良いがつっかえて出てこれなくなるんじゃないかと心配したが大丈夫だった。予算の少ないセガール映画で戦闘機物を撮れるのかと思ったが、飛行機が飛んでいるシーンのほとんどが、いやひょっとしたら全部がおそらく資料映像か過去の映画からのバンクフィルム。新型ステルス機も従来の機体をベースにしていて外観は同じという便利な設定。金かかってねーなー。
 しかし、ラストではステルス機とF-16によるドックファイト(空中戦)が繰り広げられる。さて、どうする。どうするもこうするも、これも資料映像。カットを上手く組み合わせてそれっぽくドッグファイトに見せている。うん、見えなくもない。いや、編集の妙技。エイゼンシュタインのモンタージュ理論に則っている。これぞ映画。冗談抜きで感心してしまった。
 脇役たちは手を抜かずに熱い演技を繰り広げてくれる。オレだったら適当にやるが、さすがプロ。空軍の将軍や艦隊の提督は貫禄を感じさせナイスだ。
 最後はいつの間にかセガールは世界を滅亡から救っていてステルス機は無事着地。映画もまあなんとか着地。

4月3日追記
今回のサブタイトルである「セガール雲にのる」の元ネタ「ノンちゃん雲に乗る」の原作者石井桃子さんが4月2日に亡くなられたそうである。
『クマのプーさん』などの翻訳も手がけられ、いくつかの作品は私も子供の頃に読んだ。ご冥福をお祈りする。
しかし、『刑事マディガン』について書いたら主演のリチャード・ウィドマークが亡くなったりとこのところ奇妙な偶然が続く。ひょっとして映画バカ黙示録が『DEATH NOTE』化しているのだろうか?とりあえず、森繁久彌については書かないことにしておく。書く予定もないが。

2008年04月02日

『沈黙の激突』 仮面ライダーセガール

B0012GMTQE.jpg『沈黙の激突』(2006) ATTACK FORCE 94分 イギリス/アメリカ/ルーマニア

監督:ミヒャエル・ケウシュ 製作:スティーヴン・セガール 製作総指揮:ジョナサン・ブレイリー、ブルーノ・ホーフラー、ピエール・スペングラー 脚本:スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン 撮影:ソニア・ロム 編集:ジョナサン・ブレイリー 音楽:バリー・テイラー
出演:スティーヴン・セガール、リサ・ラヴブランド、デヴィッド・ケネディ、ダニー・ウェッブ、アンドリュー・ビックネル

 今回の敵はCTXという薬物で強化された超人だ。アドレナリンの異常な分泌により強大な筋力と人間離れした反射神経を持ち合わせた超人が相手だ。両腕にナイフ状の特殊兵器を装着したとはいえ生身のセガールが勝てるのか?
 ……まぁ、圧勝なんだけどね。

 敵の狙いは上水道の水源にCTXを流し込み、大量の中毒患者を作りだそうというもの。化学兵器テロというよりも、むしろ仮面ライダーに登場したショッカーなど悪の組織を思わせる。
 この計画をすんでのところでセガールが阻止するところが終盤だろうなと思っていたら、突然「大変です。上水道にCTXが混入されました。被害者数は膨大です」との報告が入る。そこはもっと引っ張るべきところだろ!いきなりやられてるなよ!定石を無視した驚くべき展開に、観ているこちらはポッカーン。
 だが、膨大な被害者が出ているはずなのに、その描写などはまったくなくまるで無かったことかのように物語は進む。さして込み入ったストーリーではないはずなのに、何が何だかよく分からない。悪役が何をしたいのかも分からないし、セガールが何をしたいのかもよく分からない。
 三人の若い部下を殺された復讐がセガールを動かしているようだ。「彼らを殺したな。最高の連中だったんだぞ」と悪役を罵るが、殺された日に会ったばかりでこれといった交流があったわけでもない。怒りすぎじゃないのか?野菜食ってるか?
 セガールアクションは本人がやっている部分も多く、最近の作品にしては長目の格闘戦もあるがスローモーションなんだよな。そもそもセガールは座っているばっかりで、セガールアクションのシーンはごくわずかだ。
 最後はほとんどの登場人物が死ぬ。ヒロインまで死ぬ。余韻を感じさせる間もなくぶつ切りで映画は終わる。たった一人無傷のセガールは敵の超人以上に生身ではなかったのだろう。きっと改造人間に違いない。

2008年04月06日

『NINE -ナイン-』 白い館での殺人ショータイム

B000Y0O97G.jpg『NINE -ナイン-』(2005) HOUSE OF 9 90分 イギリス/ルーマニア/ドイツ/フランス

監督:スティーヴン・R・モンロー 製作:フィリップ・マルチネス 製作総指揮:シェイク・モハメド・ビン・サルマン、アラステア・バーリンガム、アル・カリファ、ダグラス・W・ミラー 脚本:フィリップ・ヴァイダル 撮影:ダミアン・ブロムリー 音楽:マーク・ライダー
出演:デニス・ホッパー、ケリー・ブルック、イポリット・ジラルド、スージー・エイミー、ピーター・キャパルディ、アシュリー・ウォルターズ

 デニス・ホッパー出演という理由だけで借りる。監督のスティーヴン・R・モンローにしろ脚本のフィリップ・ヴァイダルにしろ聞かん名だ。題材的にもオレとしてはあまり興味のないジャンルだ。
 拉致された9人の男女が館に閉じこめられる。スピーカーからショーの主催者を名乗る男からメッセージが流れる。
「ここから生きて出られるのは一人だけ。賞金は500万ドルだ」
 一組の夫婦を除けば見知らぬ者ばかり。最初は協力して生き抜こうとするが、閉鎖空間のストレスや人間関係から次第に憎悪が高まり、ついに一人目の死者が出る。

 デニス・ホッパーは神父役。でもデニス・ホッパーだとなにか裏がありそうだ。あるのかな、あるのかな、やっぱりありそうだよな。うーむ。どうなのか興味がある人は実際に観てもらうとして、取りあえず終盤で拳銃を振り回す辺りがやはりデニス・ホッパー。デニス・ホッパーファンならば抑えておきたい作品である。
 館のセットは白を基調とした無機質なもの。一見清潔感がありながら、登場人物を絶望に陥れる背景として機能している。映画の大半はこの館の中だけで進行するので意外に低予算なのだろう。俳優もデニス・ホッパー以外はあまり見ない顔ばかり。だからこそ、誰が生き残るかというスリルも増す。
 連想したのは『CUBE』だ。閉鎖空間に閉じこめられ、そこからの脱出と膨れあがる憎悪がテーマという点など近い物がある。『SAW』シリーズにも似てるか。ラストも似ていると思いきや、『ナイン』にはさらなるオチがある。さらなる絶望感と共に思い出したのは、『空飛ぶモンティ・パイソン』の牛乳配達人のスケッチだった。なんでや。
 冒頭近くで「だいたいこんな展開かな」と思ったのとさほど違わぬ展開が繰り広げられ、目新しさは感じられない。人物描写は類型的で、様々な職業や黒人のラッパーも一人いるがあまり上手に活用されているとは言えない。だれることなくラストまで観られたが、どうということのない出来。自棄になった9人が酒を飲んで宴会(?)を始めるシーンが好き。
 英語音声のみなので、吹替派の人は要注意。

2008年04月07日

『ソイレント・グリーン』 未来は悪夢だ

B000W74DNG.jpg『ソイレント・グリーン』(1973) SOYLENT GREEN 98分 アメリカ

監督:リチャード・フライシャー 製作:ウォルター・セルツァー、ラッセル・サッチャー 原作:ハリー・ハリソン 脚本:スタンリー・R・グリーンバーグ 撮影:リチャード・H・クライン 音楽:フレッド・マイロー
出演:チャールトン・ヘストン、エドワード・G・ロビンソン、リー・テイラー=ヤング、チャック・コナーズ、ジョセフ・コットン、ブロック・ピータース、ポーラ・ケリー

 先日、2008年4月5日に映画俳優チャールトン・ヘストンが亡くなられた。オレとしてはあまり興味のある俳優ではなかったが、大画面大作時代を代表する映画スターであった。
 晩年はマイケル・ムーアの『ボウリング・フォー・コロンバイン』などで描かれているように全米ライフル協会の活動など右翼的面が強調されているが、『狼よさらば』の回で書いたように、アメリカ人には銃に対する伝統と価値観がある。オレは一般人が銃を所有することに反対だし、アメリカ社会からも銃が無くなって欲しいとは思うが、最終的にそれを決めるのはアメリカ人の権利だ。とりあえず、マイケル・ムーアのチャールトン・ヘストンに対する敬意の無さだけでも『ボウリング・フォー・コロンバイン』は嫌悪している。

『ソイレント・グリーン』は主演のチャールトン・ヘストンよりもリチャード・フライシャー監督作として興味のある作品だ。
 人生や社会に絶望した人への安楽死、格差社会、そして食糧危機など、このところ毎日のように入ってくる硫化水素を利用した自殺のニュース、日本の食糧自給率の低さといった現在の日本社会を思うに実に先見の明がある作品だ。世界的な人口増加や農作物などの欠乏といった現在社会が抱えている問題を予言している。SF作品では明るい未来も暗い未来も描かれていたが、21世紀を迎えた今日、暗い未来だけが現実となっていると思うのは考えすぎだろうか。『1984』などで描かれた管理社会に我々は生きているように思えてならない。
 あくまでも救いようが無く、かといって安易なバッドエンドとも違う、人間も社会も突き放した視点のリチャード・フライシャーの演出が見事だ。ただし、締まりがかけ緊張感に乏しいシーンが多いのも事実。

2008年04月09日

『士魂魔道 大龍巻』 これぞ娯楽特撮時代劇

B000BN9AE8.jpg『士魂魔道 大龍巻』(1964) 108分 日本

監督:稲垣浩 製作:田中友幸 原作:南条範夫 脚本:木村武、稲垣浩 撮影:山田一夫 美術:植田寛 編集:岩下広一 音楽:石井歓 特殊技術:円谷英二
出演:市川染五郎、佐藤允、夏木陽介、三船敏郎、星由里子、久我美子、水野久美、草笛光子、平田昭彦

 不勉強にしてこの作品のことは知らなかったが、NHKのBS2で観てその面白さに驚いた。
 大阪城夏の陣から物語が始まり、豊臣側残党が豊臣の隠し財産を狙うという娯楽時代劇。殺陣は大立ち回りのチャンバラ系で、当時の東映時代劇に劣る面もあるが、それをカバーするのが東宝自慢の特撮陣。なんたって特技監督が特撮の神様円谷英二だ。ファーストショットからして大阪城のミニチュアセット。これが良くできている。そこへ徳川軍勢が大砲を撃ち込む。ドッカンドッカン爆発する大阪城。こんなオープニングの時代劇は観たことがない。
 主人公は豊臣軍勢の侍深見重兵衛(市川染五郎)。大阪城落城を前に潔く切腹して果てようとするが、豊臣秀吉の孫である男の子を連れて逃げようとする小里という女性と出会ったことから運命の歯車が動き出す。そこへ襲いかかる二人組の伊賀忍者。いきなり忍者かよ!身は軽いし煙玉を投げまくると、さすが忍者。重兵衛は一人を切り捨てるが残りの一人には逃げられる。この生き残った忍者はくのいちで、殺された忍者は彼女の父親だった。こうして、重兵衛は父の敵として狙われることにもなる。
 守るべき人、仇討ち、そして宝物と、娯楽作品の王道とも言えるストーリー。だが、一本道のストーリーではなく、同じく豊臣方で生き残ってしまった侍(佐藤允)や、侍から町人になって商人として成功した重兵衛の友人、豊臣を裏切ってのし上がろうとする悪党どもなど、様々な視点を用いて描かれている。重兵衛の友人が商人として成功する方法が、ひさしを貸して母屋を取られるを地で行っていて笑った。
 主人公を演ずる市川染五郎が松本幸四郎に似てるなぁ。歌舞伎界はいろんなところで血が繋がっているから、親戚なんだろうかと思って調べてみたら、後に九代目松本幸四郎を襲名していた。似てて当たり前、つか本人じゃん。でも、本人と言われると目元とか違ってないかと思うがまあ知らん。パッケージ写真の一番左端にいるのがその市川染五郎。
 オープニングクレジットで他の出演者が連名で表示されるのに、一番最後にただ一人一枚看板で書かれているのが三船敏郎。でも、出演シーンは少なく、しかも元豊臣側の大名で賞金首として逃亡中なため虚無僧に変装しているので、前半では素顔が写るシーンは少ない。ゲスト出演だな。そのくせ、終盤では美味しいところをあらかた持っていってしまう。最後は「善も悪も、この大自然の前では無に等しい」とテーマを一言で語る。でも、三船敏郎ならば許してしまう不思議。
 えっ、タイトルの大龍巻はどうしたんだって?それはちょっと待ちねぇ。とにかく、登場する女優さんのキレイなこと。星由里子、久我美子、水野久美と東宝のスター女優が勢揃いだ。星由里子は加山雄三の『若大将』シリーズの印象が強いが、時代劇姿も似合う。可憐でいて心が強いといった感じ。出番は少ないが草笛光子の尼さんも凛々しくてさすが。
 監督の稲垣浩は『血煙高田馬場』(1937)をマキノ正博と共同監督したり、板東妻三郎版、三船敏郎版両方の『無法松の一生』を監督した名監督。時代劇を中心に活躍した人だ。
 そして映画のラスト。小判を輸送中の徳川の一行を豊臣側残党が襲い、小判を奪い取る。そして、アジトである山中の小屋に戻るが、内輪もめを始め醜い争いとなる。そこへ襲いかかるのが大龍巻。最初は強風とその風音が鳴る中で物語は進行し、徐々に緊張感が強まっていく。そして、大地の彼方から全てを吹き飛ばし舞い上げてしまう大龍巻が画面に登場する。人や馬はもちろん、小屋も樹木もあらかた舞い上げていく様子はさすが円谷特撮の見せ所。『空の大怪獣 ラドン』(1956)のラドン襲来のシーンではその巨大な翼が巻き起こす強風で民家の瓦が一枚一枚はがれて飛んでいくミニチュアシーンなどが有名だが、この大龍巻も負けてはいない。シーンとしては短いが、ただ単に風で吹き飛ばされるのではなく、ちゃんと宙に巻き上げられているように見えるのだが、一体どうやって撮影したのだろうか。見事。当時の特撮技術を考えれば、観客に与えたインパクトは『ツイスター』(1996)にだって負けていない。
 三船敏郎にセリフで言われてしまったが、「善も悪も、人も金も大自然の前では無に等しい」。生き残った三人は荒野を前に歩き始める。そして徳川三百年の新たなる時代が始まったのだ。

2008年04月11日

『キングダム/見えざる敵』 悪いのは全部アラブ人だぜ

B0012OR5KG.jpg『キングダム/見えざる敵』(2007) THE KINGDOM 110分 アメリカ

監督:ピーター・バーグ 製作:マイケル・マン、スコット・ステューバー 製作総指揮:サラ・オーブリー、ジョン・キャメロン、メアリー・ペアレント、スティーヴン・シータ 脚本:マシュー・マイケル・カーナハン 撮影:マウロ・フィオーレ プロダクションデザイン:トム・ダフィールド 編集:コルビー・パーカー・Jr.、ケヴィン・スティット 音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン、アシュラフ・バルフム、アリ・スリマン、ジェレミー・ピヴェン、ダニー・ヒューストン、リチャード・ジェンキンス、カイル・チャンドラー

 まずは過去のニュース映像などを利用して1932年から9.11テロまでのサウジアラビアとアメリカの関係が紹介される。4分ほどの映像を要約すると「悪いのは全部アラブ人だ」
 そして本編が始まる。残りの106分で語られていることを要約すると「悪いのは全部アラブ人だっつーの」
 そんだけの映画。

 サウジアラビアのアメリカ人居住区で爆破テロが発生し多数の死傷者が出る。ジェレミー・フォックスをボスとする4人のFBI捜査官が現地に乗り込み捜査を始めるが、滞在を許された期間はたったの5日。様々な方向から調べていく内に、伝説的爆破テロリストの姿が浮かび上がってくる。

 サウジアラビアの人々はごく一部を除いて無能か世間知らずかテロリストだけ。そりゃテロはいけないことだが、それが行われる背景とかはほとんど無視。世界社会の歪みとか宗教問題、原油の資源問題など数々の問題があろうに、「テロリストは皆殺しだ」の単純な思想で片を付けてしまう。
 FBI捜査官の一人がテロリストに拉致され、危険地域に入り込んでの救出活動における銃撃戦はリアルだが、別に社会問題を抱えた題材の映画ではなく、普通のアクション映画でやってればいいんじゃないの?絶対やるだろうなと思っていた子供のテロリストはやはり終盤で登場。分かり易すぎ。それで棒付きキャンディーとか取り出して。あのね、舐めてんの?友人になるサウジアラビア人警官も、つまるところアメリカ人の手下扱いだしな。
 黒人のジェレミー・フォックスを主人公に据えたのも、白人だと対アラブ人の構図が露骨になりすぎるのを避けたからでは。ともかく、ジェレミー・フォックスって芝居がくどいんで好きじゃないんだよね。
 ラストはそれっぽい台詞で締められるが、よく考えると大したことは言っていない。
 スポーツに政治を持ち込むなと最近さかんに言っている国があるが、オレに言わせりゃ映画に政治を持ち込むなだ。もっとも、政治的に利用されている映画も多いが。
 とにかく、問題意識を映画に持ち込むのならばきっちりやれ。それをやらずに中途半端なアクション映画で終わっているところが許せない。どっちがやりたいんだ、お前らは。

2008年04月12日

『ゲット・マネー』 俺たちの金を取り返せ

B00008Z6LF.jpg『ゲット・マネー』(2002) ALL ABOUT THE BENJAMINS 98分 アメリカ

監督:ケヴィン・ブレイ 製作:マット・アルヴァレス、アイス・キューブ 製作総指揮:ラモント・ケイン、トビー・エメリッヒ、ロナルド・ラング、マット・ムーア、クレア・ラドニック・ポルスタイン 脚本:ロナルド・ラング、アイス・キューブ 撮影:グレン・マクファーソン 編集:スザンヌ・ハインズ 音楽:ジョン・マーフィ
出演:アイス・キューブ、マイク・エップス、トミー・フラナガン、カルメン・チャップリン、エヴァ・メンデス、ヴァレリー・レイ・ミラー、ジェフ・チェイス、リル・バウ・ワウ、アンソニー・マイケル・ホール

『グッド・ボーイズ』のタイトルでテレビ放映されたこともあるようだ。原題の『ALL ABOUT THE BENJAMINS』のベンジャミンは100ドル札に肖像画が描かれているベンジャミン・フランクリンのことだから、ビデオタイトルの『ゲット・マネー』ほうがピッタリくる。
 保釈中に逃亡した犯罪者を捕まえるのが仕事の賞金稼ぎがアイス・キューブ。役柄としては渋く決めているんだが、あまり格好良くないと思う。ヒゲダルマだし。そして、コンビニでロトくじを買ったばかりの黒人詐欺師が今回の獲物。追跡中に悪党による2000万ドルのダイヤモンド強奪事件と鉢合わせ。詐欺師を取り逃がしてしまって残念なアイス・キューブ。無事に逃げおおして一安心の詐欺師は、恋人とロトくじの当選番号発表をテレビ番組で見て、なんと先ほど自分が買ったクジが6000万ドルの大当たりである事を知り大喜び。しかし、その当たりくじが入った財布は悪人の手に渡っていた。アイス・キューブは2000万ドルのダイヤを狙い、詐欺師は6000万ドルの当たりくじを取り戻すべく、一時的に手を組む。目的はただ一つ、金。そして一騒動が始まった。
 ストレートで分かり易いストーリー。アクションも多少あるが大した規模ではなく、アイス・キューブと詐欺師の相棒物コメディである。ムスッとしたアイス・キューブとエディ・マーフィー並におしゃべりな詐欺師のコンビが笑わせてくれる。それぞれに彼女がいて、黙って男から守られているだけの女性ではなく後半では上手く話に絡んできて盛り上げる。主人公側も悪党も目的はあくまでも金で、金を中心にひたすら突き進んでいくところが良い。
 悪党のボスは左頬に傷があり見た目は悪くないのだが、今一つ魅力がない。悪党側にもっと個性があるとさらに面白くなっただろう。
 怪我をした悪人の手下へのアイス・キューブによる拷問や、ドッグレース場での射殺シーンなど作品のカラーからすると残虐に感じる部分があるのが少しマイナス。
 コンビニで白人老女が二人、詐欺師と組んで万引きをやっている。「年金の支払いが遅れているのよ」とブツブツ言っているこの二人が、最後の最後に再登場したところで大爆笑。バーちゃんたち、何してんの。
 お気楽に楽しめる軽めの一本。『キングダム』の退屈さを吹き飛ばしてくれた。

2008年04月14日

『ドラゴン ~竜と騎士の伝説~』 卵を守るお姫様

B000M06I22.jpg『ドラゴン ~竜と騎士の伝説~』(2004) GEORGE AND THE DRAGON 94分 アメリカ/ドイツ/イギリス

監督:トム・リーヴ 製作:ロメイン・シュローダー、マイケル・コーワン、ジェイソン・ピエット 製作総指揮:デヴィッド・ロジャース、アレックス・マーシャル 脚本:マイケル・バークス、トム・リーヴ 撮影:ユースト・ファン・スターレンバーグ
出演:ジェームズ・ピュアフォイ、パイパー・ペラーボ、パトリック・スウェイジ、マイケル・クラーク・ダンカン、ジャン=ピエール・カスタルディ、ポール・フリーマン、ヴァル・キルマー

 十字軍の一員としてイスラム教徒と戦い、故郷のイングランドへ帰ってきた騎士が主人公。どこかに土地を手に入れて牛でも飼って平和に暮らそうとする主人公に、父親は自分の両足を食いちぎった竜の話をする。その竜は最後の生き残りで胴体には父が刺した槍が刺さっているという。
 それを単なる昔話だと聞き流した主人公は、王都へと向かう。その頃、政略結婚から逃れるために城を抜け出したお姫様は湖の畔で伝説の竜と出くわしそのまま行方不明になる。姫を取り戻すために政略結婚の相手である騎士(パトリック・スウェイジ)と手を組んだ主人公は、探索の旅に出ることになる。

 とまあ、粗筋を話すと王道的騎士物語だ。ところが実際の映画はかなりハチャメチャなストーリーでナイス。姫様は竜にさらわれたわけでなく、最後の竜が産んだ卵を守るために洞窟に立てこもっていたのだ。中世において希少な野生動物の保護に命を張るとは、ずいぶんと環境保護意識の高いお姫様である。
 普通ならばライバル的に扱われるパトリック・スウェイジも終盤までは主人公と仲が良く、一緒に戦うシーンでは息もピッタリ。お姫様強奪を企む武装集団との戦いなど剣や弓を使った戦闘シーンもあるが、人が斬り殺されるところなどはあまり映し出されず、娯楽映画の雰囲気を壊していない。
 頑として洞窟から出ようとしない姫様のために荷馬車に巨大な卵を積んで街道を進むが、「ありゃ何だ?」とばかりに振り返る通行人がいるなどギャグも多く、全体的にコメディタッチ。酒好きの神父や主人公の手下気取りの弓が得意な少年、修道女などの脇役も上手く使われている。
 DVDのパッケージは本格派ファンタジーっぽく仕上げてあるので騙されたと感じる人もいるかもしれない。竜を退治する話ではないし、そもそも竜の出番はほとんどない。でも、このハチャメチャは面白いぞ。傑作の類ではないが、映画の隅々まで作り手の愛情が感じられ、観ているこちらも嬉しい。
『グリーンマイル』などで有名な黒人俳優マイケル・クラーク・ダンカンも主人公の友人役で出演しているし(ただし、冒頭と終盤以外は出てこないが)、なかなか良い老け方をしているパトリック・スウェイジも良かった。未公開が残念だが、主人公の騎士とお姫様があまり聞かない名前だし微妙に低予算っぽいから仕方なしか。
 エンディング・クレジットにはジャッキー映画のようなNGシーン付き。台詞のとちり系が多いが、映画のラストで主人公がお姫様に心を打ち明けているところで吹き出してしまうところがある。お姫様役のパイパー・ペラーボは「何で笑うのよ!」と怒っているが、実は彼女の背後にいる馬が馬糞をボタボタと……場の空気を読めよ。って、馬に言っても無駄か。
 オレの好きなヴァル・キルマーが出ているが、出演シーンがあまりにも短いし、その扱いのひどさ。とはいえ、それがまたヴァル・キルマーらしさでもある。

2008年04月15日

『カブキマン』 カブキマン、サ~ンジョウ!

kabukiman.jpg『カブキマン』(1990) SERGEANT KABUKIMAN N.Y.P.D. 105分 アメリカ/日本

監督:ロイド・カウフマン 製作:ロイド・カウフマン、マイケル・ハーツ 製作総指揮:中村雅哉、藤村哲哉 脚本:ロイド・カウフマン、アンドリュー・オズボーン、ジェフリー・W・サス 撮影:ボブ・ウィリアムズ 音楽:ボブ・ミソフ
出演:リック・ジャナシ、スーザン・ビュン、ビル・ウィーデン、フミオ・フルヤ

 今週末の4月19日から『劇場版カブキングZ』という映画が上映されるそうだ。何でも売れないホストが歌舞伎姿の正義の味方カブキングに変身して悪と戦うのだとか。カブキングを演ずるのはカブキ・ロックスの氏神一番。そのまんまのキャスティングなどにちょっと笑った。
 なぜちょっとしか笑わなかったかというと、1991年に刑事が正義の味方カブキマンに変身する映画をすでに観ているからだ。タイトルはそのまんま『カブキマン』。
 ここまでならばまぁよくある話だが(ねぇよ)、なんとこの映画の舞台はアメリカでれっきとしたアメリカ映画。白人刑事が日本人の老師から修行を受けカブキパワーを身につけたのだ。派手な衣装に隈取りのメイクで「カブキマン、サ~ンジョウ!」のかけ声と共に現れ、使用する武器は箸や扇子に寿司など日本色豊かな物ばかり。これらで悪党どもをザックザックと惨殺に次ぐ惨殺。確か、修行で生きてるミミズかゴカイをムシャムシャ食ってた気がする。ゴカイだけに日本への誤解もたっぷりというか日本への誤解のみで成り立っているようなものだが、制作には日本企業も深く関わっている。パックマンなどのビデオゲームで有名なナムコだ。ナムコは『未来忍者』(1988)のような冒険的秀作も作っているのだが、何で『カブキマン』に関わったのかは不明だ。金が余ってたのかな~、まだバブルだったし。
 監督・制作のロイド・カウフマンは最低映画『悪魔の毒々モンスター』などである意味有名な人物。これまたある意味有名なトロマ映画の主催者だ。
 細かいところはまったく覚えていなので上記のストーリー説明もかなりいい加減だが、大笑いさせてもらったのは確か。この笑いには「こんなひでぇ映画を入場料払って映画館で観ているオレってバカだ」という理由もあったろう。映画館ではなくビデオで観たら腹を立てていた可能性はある。もしも、今『カブキマン』を劇場で観たら腹を立てるんだろうなぁ。やはり年と共に頭の柔軟性は落ちてくる。でもやっぱ笑うかも。
 愛国心の強い人は「日本を馬鹿にするにも程がある。国辱映画だ」と本気で怒るんだろうが、ここまでメチャメチャだといっそ嬉しい。それにトロマ映画は日本もアメリカも他の国も、金持ちも貧乏人も不細工もハンサムも障害者も聖職者もどんな物でもコケにしてネタにしてしまう無差別連中だ。大バカ野郎相手に怒るだけ無駄、腹が減るだけ損だ。
 うーむ、あれこれ書いているウチに十数年ぶりにもう一度観たくなってしまった。考えてみりゃ『悪魔の毒々モンスター』も映画館で観てるんだよなぁ。

2008年04月19日

『メッセンジャー・オブ・デス』 復讐の天使

B000XIEH6C.jpg『メッセンジャー・オブ・デス』(1988) MESSENGER OF DEATH 90分 アメリカ

監督:J・リー・トンプソン 製作:パンチョ・コーナー 製作総指揮:メナハム・ゴーラン、ヨーラン・グローバス 原作:レックス・バーンズ 脚本:ポール・ジャリコ 撮影:ギデオン・ポラス 音楽:ロバート・O・ラグランド
出演:チャールズ・ブロンソン、トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー、ダニエル・ベンザリ、マリリン・ハセット、ジョン・アイランド、ローレンス・ラッキンビル、ジェフ・コーリイ

 チャールズ・ブロンソン&J・リー・トンプソンペアによる作品。しかも 製作総指揮がメナハム・ゴーランとヨーラン・グローバスのキャノンフィルムズときているから、ある意味無敵だ。
 有名新聞記者のブロンソンがなぜか途中で銃を手にするが、撃ちまくって悪党を殺しまくることもないし、ラストの殺し屋との戦いも素手でタコ殴りにするだけで殺さない。てか、ジジイ新聞記者が若い殺し屋に素手で勝つってのがどーよと思うが、それがブロンソンだ。
 コロラド州はデンバーで、モルモン教の一家が住む家にショットガンを持った謎の二人組が押し入り、ご婦人や子供たちの計8人を射殺するシーンから物語は始まる。現場に残されたのは剣を持った天使、“復讐の天使”の絵が一枚。
 ブロンソンが事件の取材を続ける内に、殺された一家の血縁でモルモン教の牧師をやっている男とその兄弟の大農園の地主に行き当たる。対立した兄弟はお互いに相手が犯人だと主張する。モルモン教が多数暮らす血で、異教徒として扱われブロンソンはなかなか真相に近づくことが出来ない。
 おおっ、モルモン教といえばキリスト教系のカルト宗教(反論もあろうが)。それを背景に猟奇殺人を追うサイコサスペンスかとワクワクしている内に、対立した兄弟はそれぞれ部下を率いて西部劇のような撃ち合いを始めるし、ブロンソンが乗った車はタンクローリー車に襲われる。ああっ、前半の緊張感が音を立てて崩壊していくっ!
 いや、悪口じゃないよ。そりゃ同じコンビの『セント・アイブス』(1976)の方が作品としての完成度は格段に高いが、これはこれで楽しい。いつの間にか大企業の陰謀へと展開したストーリーは唐突に終わる。どうでもいいけど、ものすごく遠回りな上に、成功率も低そうな計画だ。

2008年04月21日

『セント・アイブス』 チャールズ・ブロンソン、ハードボイルドる。

B000M2DM7Y.jpg『セント・アイブス』(1976) ST. IVES 95分 アメリカ

監督:J・リー・トンプソン 製作:パンチョ・コーナー、スタンリー・カンター 原作:オリヴァー・ブリーク 脚本:バリー・ベッカーマン 撮影:ルシアン・バラード 音楽:ラロ・シフリン
出演:チャールズ・ブロンソン、ジャクリーン・ビセット、ジョン・ハウスマン、エリシャ・クック、ハリー・ガーディノ、マクシミリアン・シェル、ハリス・ユーリン、ダナ・エルカー、マイケル・ラーナー、ダニエル・J・トラヴァンティ、ジェフ・ゴールドブラム、ロバート・イングランド

 監督J・リー・トンプソンがチャールズ・ブロンソンと初めて手を組んだ作品。
 セント・アイブス(チャールズ・ブロンソン)は元新聞記者で現在は売れない作家。そのセント・アイブスがある依頼を受けるために大金持ちの屋敷を訪ねるところから物語は始まる。ハワード・ホークスの『三つ数えろ』(原作はレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ物『大いなる眠り』)を感じさせるオープニングだ。
 奪われた日誌を10万ドルを買い取ることになっており、その受け渡しをセント・アイブスに頼みたいというのだ。10万ドルを入れたパンナムの青いバッグを持って指定されたコインランドリーを訪れるが、相手は殺されて乾燥機の中でゴロゴロと回っていた。こうしてセント・アイブスは深みへとはまっていく。

 久々に観た感想だが、チャールズ・ブロンソンにハードボイルドは似合わない。ちょっと気障ったらしい男を演じているのだが、どうもしっくりこない。ハードボイルドの主人公は自己愛の持ち主が多いが、そういったメロドラマ的雰囲気がブロンソンには合わないのだろう。DVDのパッケージはセント・アイブスが咥えたパイプに美女がお札で火を付けているし、拳銃も写っていて非常に俗物的だが、映画のセント・アイブスは意外とストイック。
 謎が謎を呼び、裏切りが錯綜するストーリーは魅力的で、自宅にAVルームを持っていて映写機で古い映画を観るのが楽しみな金持ちや、謎の美女(ジャクリーン・ビセット)、セントアイブスとは古い馴染みの警部など一癖も二癖ある人物が脇を支える。食堂のオヤジやホテルのフロントマンまで味がある。ジャクリーン・ビセットは本当にキレイでしかも悪女と来ているからもうそこらの男じゃかなわない。
 セント・アイブスも食えない男で、食堂で相手に「俺のおごりだ」と食事を勧めておきながら、立ち去り際に「誕生日おめでとう」と言い、相手が「俺の誕生日は今日じゃないぜ」と応えると「そうか間違えたな。じゃあおごりはなしだ」で終わらせる。情報をもらったんだし大衆食堂だから飯ぐらいおごってやれよとも思うが、このやり取りが面白い。

 途中でセント・アイブスは三人組のチンピラに襲われるが、その一人がジェフ・ゴールドブラム。『狼よさらば』(1974)でもチンピラ役で出演していたが、そちらではブロンソンと同一画面には映っていなかった。ブロンソンは妻と娘の敵とばかりにジェフ・ゴールドブラムをやっつける。チンピラ仲間には『エルム街の悪夢』のフレディ役ロバート・イングランドも素顔で登場していて、今にして思えば豪華なチンピラたち。残りの一人はどこでどうしているのか知らないが。

 ラストは救いが無く苦い結末。ハードボイルドはやっぱこうじゃなきゃ。ラストショットは皮肉が利いている。
 セント・アイブスとジャクリーン・ビセットがベッドインすると画面は夜空に打ち上げられた色鮮やかな花火のカットに変わる。これは大金持ちが観ている映画のシーンなのだが、何の比喩かは言うまでもないだろう。笑った。

2008年04月22日

『バイオハザードIII』 スーパーサイヤ人、アリス

B0012KL5B0.jpg『バイオハザードIII』(2007) RESIDENT EVIL: EXTINCTION 94分 アメリカ

監督:ラッセル・マルケイ 製作:ポール・W・S・アンダーソン、ジェレミー・ボルト、ロバート・クルツァー、サミュエル・ハディダ、ベルント・アイヒンガー 製作総指揮:マーティン・モスコウィック、ヴィクター・ハディダ、ケリー・ヴァン・ホーン 脚本:ポール・W・S・アンダーソン 撮影:デヴィッド・ジョンソン 視覚効果スーパーバイザー:デニス・ベラルディ、エヴァン・ジェイコブズ 編集:ニーヴン・ハウィー 音楽:チャーリー・クロウザー
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、オデッド・フェール、アリ・ラーター、イアン・グレン、アシャンティ、クリストファー・イーガン、スペンサー・ロック、ジェイソン・オマラ、マイク・エップス

 予告編を観た時は、砂漠化した地球で細々と生き残った人類対圧倒的多数のゾンビによる絶望的な戦いを予感して楽しみにしていたのだが、アンブレラ社絡みのシーンが多くて、思うような戦いのシーンが少なかったのが残念。もういっそのことアンブレラ社は無視して良いんじゃないか。
 前作のラストで超能力っぽい力を使ったアリスが今作ではどうなるかと思っていたが、すでにスーパーサイヤ人。あのね、強すぎ。パワーバランスが成り立ってないよ。ミラ・ジョヴォヴィッチは魅力的だけどね。
 すでに無人と化したラスベガスでアンブレラ社が作り上げた凶暴ゾンビとの戦いはちょっと燃えたが、時間が短すぎ。あのシーンが目当てで観たので非常に残念。それにしてもゾンビは揃いの衣装を着ていたが、あれは誰が着せたんだろうか?
 ラッセル・マルケイと砂漠というシチュエーションは似合いそうだが、あまり活かされていない。レンタル代分は楽しめたが、劇場で観たら後悔したかな。カラスゾンビの襲来シーンなどは良いんだけどね。
 ラスボスもあっけないし、続編をまったく考えていないラスト。さすがにあの終わり方では『バイオハザード3』で終わりだろう。そのまま設定を引きずって『バイオハザード4』をやったらギャグにしかならんぞ。
 1の回想シーンから始まると思わせて……では期待したんだけどね。

2008年04月23日

『ゾンビ3D』 今度のゾンビは立体だ

B0012P6C04.jpg『ゾンビ3D』(2006) NIGHT OF THE LIVING DEAD 3D 80分 アメリカ

監督:ジェフ・ブロードストリート 製作:ジェフ・ブロードストリート 製作総指揮:インゴ・ユヒト 脚本:ロバート・ヴァルディング オリジナル脚本:ジョージ・A・ロメロ、ジョン・A・ルッソ 撮影:アンドリュー・パーク 編集:ロバート・ヴァルディング 音楽:ジェイソン・ブラント
出演:ブリーアナ・ブラウン、ジョシュア・デローシュ、シド・ヘイグ、グレッグ・トラヴィス、ジョアンナ・ブラック

 近所のGEOでは立体用青赤セロハン眼鏡付きでレンタルされていた。眼鏡は紙とセロハン製の安っぽいもので衛生面もあってか返却する必要が無くもらえるが、かといって持っていて日常生活に役に立つかは大いに疑問だ。とりあえず、眼鏡の数には限りがあるから、借りるならば今の内。問題は、あえて借りる必要があるのかなぁ……ってことだ。
 原題は『NIGHT OF THE LIVING DEAD 3D』でジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の立体版リメイクということらしい。とはいえ、オリジナルの著作権が切れているので好き勝手に作っていいそうな。なんだかなぁ。墓地から始まる、ゾンビが出てくる、家に立てこもるといった大筋しかオリジナルとの関わり合いはない。作品の出来としてオリジナルを求めると手痛い目にあう。というか、オレがあった。ひでぇな、これは。
 3D映画、つまり立体映画で、青赤眼鏡をかけることで映像が浮き出てくるのだが、ゾンビとあまり関係のないところでの立体が目立つ。オレは襲ってくるゾンビの手足とか、むさぼり食う内臓が立体で楽しめると思ったのだが、物語の大半は立てこもった家の中での人間同士のやり取り。しかも大根演技だし登場人物は馬鹿ばかりでストーリーは遅々として進まないずストレスは溜まるそんなのよりゾンビを出せよ、ゾンビを。そんな中で相手に向けた腕とか柱とかが意味なく立体。吐きだしたマリファナの煙とか銃口から飛び出した銃弾が意味なく立体。いちゃいちゃしている男女の裸が意味なく立体。意味なく立体のオッパイ。あっ、これはちょっと意味があるかもないかも。
 重要なシーンで眼鏡をかけるのではなく、全編80分ずーっとかけっぱなし。目が疲れるし観終わってから一時間が経つ今になっても頭が痛い。肩も凝った。それからオレはやっぱ立体映画があまり立体に見えない性質のようだ。出版物のステレオグラムはちゃんと浮き出て見えるんだがなぁ。やはりゾンビ映画は当たり外れが大きい。当たり>>>>>>>>>>外れ、ぐらいの格差がある上に外れの方が数が多い。
 DVDには2D版も収録されているからそちらを観た方が楽だったかも。でも立体ですらあまり価値を感じないこの映画を2Dで観たらおそらく価値はないだろう。ゾンビの出番が少なすぎだし、ゾンビが生まれた理由もふざけんなだ。結局、ゾンビよりも人間が怖い。次は濃いお茶が怖い。

2008年04月26日

『沈黙の報復』 復活のセガール拳

B0013K6DKC.jpg『沈黙の報復』(2007) RENEGADE JUSTICE 92分 アメリカ

監督:ドン・E・ファンルロイ 製作:スティーヴン・セガール 製作総指揮:フィリップ・B・ゴールドファイン、トレイシー・スタンリー=ニューウェル 脚本:ギルマー・フォーティス二世 撮影:ドン・E・ファンルロイ 編集:スコット・コンラッド 音楽:ピーター・マイスナー 音楽:マイケル・ロイド
出演:スティーヴン・セガール、エディ・グリフィン、カーク・B・R・ウォーラー、リーズル・カーステンス、カルメン・セラーノ、ジェイド・ヨーカー、ダニー・トレホ

 よっしゃー、久々にセガール拳が復活だ。セガールが手足を振り回し悪党が消し飛ぶ。これだよこれ、これが観たかったんだオレは。スタントダブルもあまり使っていないようではっきりと確認できるシーンはなかった。やれば出来るじゃん、セガール。
 でも、自分でアクションをやって「すげぇ!」と思われちゃうアクションスターってどうよ。

 相変わらずタイトルは『沈黙の何とか』だが、今回は一人息子の警官を殺された謎の男セガールがムスッとして言葉少なに犯人を追って報復を遂げる内容だから間違ってはいない。このセガール、警官ではないが軍人でもない、例によって謎の男。格闘技の腕も立つし銃の使いこなしもピカイチ。終盤前にはどこかに電話をして大量の武器を送ってもらうなど色んなコネもありそうだ。元特殊部隊か情報部員か、そんなところだろう。
 とにかく“強いヤツ”以外ははっきりとしないが、セガールの設定はたいがいそんなもんだ。
 格闘アクションで倒された相手が流す鼻血や銃撃戦での弾着で飛びまくる血しぶきが多すぎて少々下品なのが個人的には残念。しかしまぁ、ちょっと聞き込みしたいだけで相手を平気で殺す殺す。そのくせある悪の組織の幹部ダニー・トレホとは「俺たちはお互いに良い悪党だ」とかいって意気投合してるし。原題は『RENEGADE JUSTICE』でRENEGADEは裏切り者などと言った意味とか。RENEGADEはあるがJUSTICEはセガールの中にない。ラストで息子の仇である悪党を倒すセガール。で、もう一人の悪は?悪は?えっ、それでいーのかっ!
 なんて細かいことは気にせずセガールチョップ、セガールキックの連打に打ちのめされろ。でもあまり期待されても実は困る。最近のセガール映画の中ではかなり面白いが全盛期には遠く及ばない。『沈黙の激突』『沈黙のステルス』とひでぇのが続いたので、「今回は止めておくか」と借りずにすまそうとしているあなた。そんなあなたにはぜひ観て欲しい。
 もっともセガールファンなら言われなくとも観るだろ。どれだけ駄作が続こうが、セガールが老いていこうが観続けるのがファン。
 セガールは1951年生まれだから3年後には『沈黙の還暦』が製作公開される予定だとオレの妄想が言っている。『沈黙の敬老』とか『沈黙の年金』なんかがそれに続く。『沈黙の年金』では破綻した年金制度に怒りまくったセガールが日本年金機構(旧社会保険庁)に殴り込んで悪徳幹部や悪徳職員をセガール拳で一撃爆殺、ついでにマッサージチェアも粉砕だ。
 えっ、そりゃふざけすぎだって?かつては『沈黙の要塞』や『沈黙の断崖』などで環境問題をテーマにセガール拳で決着を付けたセガールだ。怒らせると何をやるか分からないぞ。日本の年金制度に口出ししてくることはなくてもアメリカの医療保険制度問題にセガール拳で挑む可能性はある。名付けて『沈黙の医療』だ。ついでにマイケル・ムーアと『シッコ』もタコ殴り。

2008年04月28日

『グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版』 母なる海へ帰る

B00009NKF4.jpg『グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版』(1988) LE GRAND BLEU: VERSION LONGUE 169分 フランス/イタリア

監督:リュック・ベッソン 製作:パトリス・ルドゥー 原案:リュック・ベッソン 脚本:リュック・ベッソン、ロバート・ガーラント 撮影:カルロ・ヴァリーニ 音楽:エリック・セラ 製作顧問:ジャック・マイヨール
出演:ジャン=マルク・バール、ロザンナ・アークエット、ジャン・レノ、ポール・シェナー、グリフィン・ダン、セルジオ・カステリット、マルク・デュレ

 今でこそ『グラン・ブルー』と呼ばれているが、オレが学生時代に劇場で観た時は『グレート・ブルー』というタイトルで上映時間は50分ほど短い120分だった。
 つまりはオレもオッサンということだが、オッサンになってから観直すと青年時代とはかなり感想が変わっていた。
 学生の時は「海とは死後の世界で、ダイバーたちにとっては天国は上ではなく海底にある。イルカは天使のメタファーだ」と思っていたが、今回観た感想は「なるほどマザコン男の話か」である。
『レオン』を観れば分かるがリック・ベッソンはロリコンだ。でもって、ロリコンとマザコンは両立する。むしろ両方を兼ね備えた人の方が多いのかもしれない。
 全ての生命の母である海なんてことを言われる。まさにその通りで主人公のジャックやライバルのエンゾにとって海は母である。映画は少年時代の回想シーンから始まるが、ジャックは父親のみで母親はいない。彼にとって海は母そのものだ。彼はその母に強い思いを抱くマザコン男なのである。エンゾも「ママのゆでたパスタは最高だ」と主張するマザコン男。彼らが海に潜る理由は母親に近づこう、いや母親の元に返ろうとする母胎回帰に他ならない。
 息を引き取ったエンゾはジャックの手によって海の中、母の胎内に返される。そしてジャックは惚れた女よりも母親を選び最後は海の深く深くへと帰って行く。そこで出会ったイルカはジャック自身か兄弟なのだろう。
 妊娠した上に母親に恋人を取られてしまうヒロインのジョアンナにはたまったものじゃないが、マザコン男に惚れたのが不幸。

2008年04月30日

『レッドロック/裏切りの銃弾』 殺し屋急募。応募者は酒場まで

B000V2ZT76.jpg『レッドロック/裏切りの銃弾』(1992) RED ROCK WEST 99分 アメリカ

監督:ジョン・ダール 製作:スティーヴ・ゴリン、シガージョン・サイヴァッツォン 製作総指揮:マイケル・クーン、ジェーン・マッギャン 脚本:ジョン・ダール、リック・ダール 撮影:マーク・レショフスキー 音楽:ウィリアム・オルヴィス
出演:ニコラス・ケイジ、デニス・ホッパー、ララ・フリン・ボイル、J・T・ウォルシュ、クレイグ・リーエイ、ヴァンス・ジョンソン、ドワイト・ヨーカム、ティモシー・カーハート

 当時、就職で上京していたオレは新宿の映画館で観た。
 その後しばらくして、同じく上京組の先輩と会った。「この間、面白い映画観たんですよ」「おう、俺も面白いの観たよ」という会話になったが、実はお互いが言っていたのはこの『レッドロック』のことだった。
 話し合った結論としては「脚本は最高だが、演出が追いついてないよな」だった。15年振りに観直してみた結論も同じ。演出が明らかに弱いんだよなぁ。脚本を書いたジョン・ダールが監督も務めているが、脚本家としての才能と比べると監督の才能は平凡。というか平凡よりちょっと下かな。
 当時は「完璧な脚本だ」と思ったが、今回は「かなり良くできた脚本」と感じ方が変わっていた。先回から、昔はこう感じたが今はこうだってな話ばかりだが、人間は年が経てば価値観が変わるのだ。同じ本人ですら時と共に感想が変わるのだから、映画について全ての人に当てはまる絶対の尺度は無いと言うことだ。
 同じ映画を観ても人によって感想が違うのは当然。だからこそ映画にしろ小説にしろ面白い。

 それはともあれ、『レッドロック』は面白い。主人公のニコラス・ケイジは元海兵隊だが、任務中の事故で足を怪我して、除隊した今でも足の調子が悪い。失業中でワイオミングの友人を頼ってテキサスから肉体労働の作業現場に職を求めてやってくるが、足が不自由なことを理由に面接を落ちてしまう。
 手持ちの金もないので、取りあえずどんな仕事でも良いからと近くのレッドロックという小さな田舎町を訪れる。レッドロック・バーという酒場に立ち寄ったところ、カウンターの中にいたオーナーがニコラス・ケイジの車がテキサスナンバーなのを見て、仕事を依頼するためにテキサスはダラスから呼び寄せた男と勘違い。てっきりバーテンかなにかの仕事だろうと思ったニコラス・ケイジはこれ幸いと仕事を受けるが、実はオーナーの妻を殺してくれという内容だった。
 半金として5000ドルをもらったニコラス・ケイジはその金を持って街からトンズラする前に、夫があんたを殺そうと企んでいると警告するために女性に会いに行く。ところが、自分を狙う殺し屋が取引を持ちかけてきたと思い込んだ女性は、倍額払うから逆に夫を殺してくれと言い出す。
 すっかり泥沼にはまってしまったニコラス・ケイジだが、本物の殺し屋のデニス・ホッパーが予定より遅れて街に到着しさらに事態は悪化。こうして右を見ても左を見ても悪党ばかりの裏切りと欲望の物語が展開される。

 あれこれ粗筋を書くのはいかんなーと思っているのだが、またもや書いてしまった。でも、巻き込まれ型サスペンスの変種であるストーリーがこの作品最大の魅力であるし、話の展開が上手いので実際に観ると実に魅力的。こうくるか、そうきたかの連続でなかなか先が読めず良い意味での緊張感がある。
 始終困った顔のニコラス・ケイジが若い。オーナー役の故J・T・ウォルシュが痩せてて顔の幅が細い。妻役のララ・フリン・ボイルはまだちょっと若すぎて悪女の貫禄が足りない。『メン・イン・ブラック2』まで行ってしまうと貫禄付きすぎだが。デニス・ホッパーは相変わらずの怪演だが『ブルー・ベルベット』の悪人役と同じようなキャラクターで使い方がちょっと安易。製作がデヴィッド・リンチのプロパガンダ・フィルムだから問題はないか。ああっ、それでララ・フリン・ボイル(『ツイン・ピークス』で小悪魔的美少女役で出演)が出てるのか?

 DVDの発売元はユニバーサル・ピクチャーズ。ユニバーサル・ピクチャーズの旧作はとにかく字幕の翻訳がひどい、ひどすぎる場合が多いので心配だったがまともで安心。おそらくは劇場公開時と同じ翻訳かと。日本語吹替版も収録されていて、デニス・ホッパーの吹替が故・富山敬(1995年死去)だから新緑ではなくてビデオ発売時の日本語吹替版かテレビ放映版の音声だろう。さすが富山敬だけあって上手いのだが、実生活からしてイカれているデニス・ホッパーのイメージとは合わない。主人公声だからなぁ。

 ラストで、ニコラス・ケイジは50万ドルという大金を貨物列車からばらまくが、隅に落ちていた一束の札束はポケットへ。悪事で大金を手に入れようという悪党ではないが、最初に約束していた金額はきっちりもらっておく。根っからの善人ではない、つまりは普通の男ってこと。