『狼よさらば』(1974) DEATH WISH 94分 アメリカ
監督:マイケル・ウィナー 製作:ハル・ランダース、ボビー・ロバーツ 製作総指揮:ディノ・デ・ラウレンティス 原作:ブライアン・ガーフィールド 脚本:ウェンデル・メイズ 撮影:アーサー・J・オーニッツ 音楽:ハービー・ハンコック
出演:チャールズ・ブロンソン、ホープ・ラング、ヴィンセント・ガーディニア、スティーヴン・キーツ、ウィリアム・レッドフィールド、キャサリン・トーラン、スチュアート・マーゴリン、ジェフ・ゴールドブラム
仕事でアリゾナ州ツーソンを訪れたポール・カージー(チャールズ・ブロンソン)を現地の人が出迎える。「何故すぐに私だと分かったんだ」と尋ねるカージーに、「そりゃ、あんたが典型的ニューヨーカーだから」と答えが返ってくる。
……典型的ニューヨーカー?チャールズ・ブロンソンが?そりゃ無理がないか、見えんぞ。
ポール・カージーはニューヨークで妻と平和に暮らす建築家。ところがマンションのカージー宅に押し入った三人組のチンピラによって妻は殺され娘は心を患ってしまう。物語の前半四分の一では思い悩むカージー。トレードマークである口ひげを生やし、いつものように無骨なブロンソンが苦しむ様は若干の違和感はある。
しかし、ツーソンの街で悪党が倒される西部劇ショーを観て、その後射撃クラブで拳銃を手渡されたカージーは見事に標的のど真ん中を撃ち抜く。実は子供の頃に狩猟好きの父親から銃の手ほどきを受けていたのだ。
ツーソンでの仕事を終えたカージーに仕事相手はリボルバーをプレゼントする。ニューヨークに戻ったカージーは単なるビジネスマンだけではなく、街のダニを退治する狩人・ヴィジランテとなっていた。
アメリカで銃規制がなかなか進まないのは、自分の身は自分で守る、そのためには銃が必要という価値観があるからだ。その価値観が生まれたのは開拓時代。西部劇の時代である。まだ未開の地へと進んでいく開拓者には、自分と家族を守るための銃が必要だった。米国ライフル協会に所属するアメリカ人などにとっては、銃を奪われることは自由を奪われることでもある。
『狼よさらば』も警察が自分たちを守ってくれないのならば、自分で守るしかないという結論に達している。カージーの目的は自分の妻を殺したチンピラを見つけ出し復讐を遂げることではない。アメリカ人であること、西部の開拓魂を持ち続けることを選択したのだ。アメリカ・西部の心が根底にあることが分からないと、ただ単にイカれたオヤジがチンピラを殺していく暴力映画にしか見えない。
謎の処刑人ヴィジランテ・VIGILANTE(自警団)と呼ばれるようになったカージーを、法の番人である刑事が追いかける。犯行現場、動機を持つ者などから次第にカージーに近づいていく刑事を演ずるヴィンセント・ガーディニアは肥満気味のムスッとした顔で、外見は切れ者には見えない。このヴィンセント・ガーディニアが良い。チャールズ・ブロンソンと腹の探り合いをしながら、もう処刑を止めれば見逃すとほのめかすシーンは見応えがある。
ニューヨークを離れシカゴへと移ったカージーだが、もはや単に平和な男ではないことを示すラストショットが見事。