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『ジャッカー』 闘う男ロイ・シャイダー、死す

51DPK55C95L.jpg『ジャッカー』(1988) COHEN AND TATE 85分 アメリカ

監督:エリック・レッド 製作:アンソニー・ルーファス・アイザック、ジェフ・ヤング 脚本:エリック・レッド 撮影:ヴィクター・J・ケンパー 音楽:ビル・コンティ
出演:ロイ・シャイダー、アダム・ボールドウィン、ハーレイ・クロス、クーパー・ハッカビー、スザンヌ・サヴォイ

 ロイ・シャイダーは闘う男であった。
 『フレンチ・コネクション』では麻薬密輸組織と闘い、『ブルーサンダー』では戦闘ヘリを駆使して陰謀と闘い、『ジョーズ』では副主人公として主人公ジョーズと闘い、『オール・ザット・ジャズ』では……まぁショウビジネスの世界も熾烈な世界だそうだから闘ったのだろう。
 そして彼自身も、晩年は病魔と闘い、闘い抜き、そして息を引き取った。
 ニュースの見出しは「ジョーズの警察署長役ロイ・シャイダーが死亡」とあった。やはり彼のイメージは闘う男なのだ。

 追悼の意味を込めて、前々から書こう書こうと思っていた『ジャッカー』について書く。
 映画の冒頭はいきなり下から上に流れる字幕で始まる。おいおい、状況設定を字幕で説明かよ。この手のはハズレが多いんだよな。なになに、マフィアの悪事を目撃した男がFBIの保護下に置かれている。その彼を奪うべくマフィアは二人の殺し屋をさしむけた。ふーん。だが、そのラストの一行でオレは姿勢を正した。
「彼はまだ9歳(だったかな)の少年である」
 たったこれだけのことなのだが、オレはこの映画にセンスを感じた。そして、85分後、それが間違っていなかったことを知る。
 FBIの護衛をいとも簡単に片付けると、殺し屋たちは少年を車に乗せてマフィアの本部へと向かう。その場で殺せではなく、生きたまま連れてこいというのが命令なのだ。殺し屋の一人がロイ・シャイダー。経験を積んだプロ中のプロで、年のために補聴器を付けてはいるが、まだ現役の犯罪者だ。もう一人が筋肉質で力は強そうな若い犯罪者アダム・ボールドウィン。世代の格差のせいか二人の関係はしっくりきておらず、不仲さが漂っている。
 アダム・ボールドウィンは少年をさっさと始末してしまおうぜと言い出すが、ロイ・シャイダーは自分たちの任務は生きたまま連れて行くことだと頑としてそれを受け入れない。ただし、ロイ・シャイダーは少年に同情して命を奪わないのではない。連れて行った先で確実に殺されるのは分かっているのだ。殺さないのはそれが自分の任務ではないからにすぎない。彼はプロなのだ。その二人のやり取りを聞いていた少年は、生き残るために策を練り、二人に話しかけてその対立をあおっていく。こうして三者三様の思惑によって、車内の緊張感は高まっていく。
 舞台のほとんどは疾走する車の中。メインの登場人物は三人と、密室劇に近い。アクション系の映画かと思って劇場を訪れたオレだったが、充分に堪能し満足した。
 ラストは地下水か何かをくみ上げるポンプがいくつも設置された場所での殺し屋同士による対決。闘いのさなか、補聴器を落としてしまったロイ・シャイダーはほとんど物音が聞こえないため、敵の位置が上手くつかめないのだ。老いを表現するためだけかと思われたロイ・シャイダーの補聴器が、サスペンスを盛り上げるために活用される。
 そしてラスト、生き残っていた者は……

 原題の『COHEN AND TATE』は二人の殺し屋の名前。COHENがロイ・シャイダーで、TATEがアダム・ボールドウィン。主人公は少年ではなく一人はベテランでもう一人は血気盛んな若者という二人の殺し屋たちだったのだ。任務第一のCOHENが次第に心に暖かみを持つようになり人間味を取り戻していくが、その先にある物は死だった。彼は後悔の中で死んだのか、満足して死んだのか。ともあれ、男として死んだのは間違いがない。

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コメント (4)

ネスカフェ:

東森さん

ロイ・シャイダーが「オールザットジャズ」で闘っていたのは、自分自身との見方もできます。妥協を許さない才能と闘い、ショウビスの名声と闘い、麻薬とアルコールに依存してしまう弱さと闘っていたような気がします。元々、拳闘家もしていたそうなので、やはり「闘い」という言葉があてはまりますね。
しかし、ブルーカラーからインテリまで自由自在にこなしているのを見ると、すごい役者さんだったと改めて思いました。

東森時音:

ロイ・シャイダーの70年代出演作の充実ぶりはすごすぎますね。私がロイ・シャイダーという役者を意識したのは『ジョーズ』だったので『オール・ザット・ジャズ』では演技の幅の広さに驚きました。
最後に観たのは『パニッシャー』2004年版になりますが、未公開の新作があるようでおそらくはゲスト的な扱いだとは思いますが期待しています。

けん:

はじめまして。ロイ・シャイダーは粋な役者ですね。俺はブルーサンダーが印象に残ってます。怒りを抑えた演技がカッコよかった。

東森時音:

けんさん
ロイ・シャイダーの訃報を聞き、ここで取り上げようと思い考えついたのが『ジョーズ』か『ジャッカー』。しかし、私にとってのベスト・オブ・ロイ・シャイダーはやはり『ジャッカー』なのでこの作品を選びました。
老いた人が亡くなっていくのは自然の理ではありますが、やはり残念ですね。これから公開される予定の映画に出演していたそうなので、そいつが楽しみです。

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