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2008年02月 アーカイブ

2008年02月01日

『ザ・スナイパー』 ジョン・キューザックパパ奮闘す

r087987922L.jpg『ザ・スナイパー』(2006) THE CONTRACT アメリカ

監督:ブルース・ベレスフォード 製作:ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ、アヴィ・ラーナー、ダニー・ラーナー、アンドレアス・シュミット、レス・ウェルドン 製作総指揮:ボアズ・デヴィッドソン、ダニー・ディムボート、アンドレアス・グロッシュ、アヴィ・ラーナー、ロリー・マクレアリー、トレヴァー・ショート 撮影:ダンテ・スピノッティ 音楽:ノーマンド・コーベイル
出演:ジョン・キューザック、モーガン・フリーマン、ジェイミー・アンダーソン、アリス・クリーグ、ミーガン・ドッズ、コーリイ・ジョンソン

 なんというか、微妙。
 決して駄作ではないのだが、この脚本でどうやってジョン・キューザックやモーガン・フリーマンの出演を取り付けたのかが分からない。監督がブルース・ベレスフォードなので、モーガン・フリーマンは『ドライビング・Missデイジー』絡みかもしれないが、そのブルース・ベレスフォードの演出はいつものことながら冴えが足りない。狙撃シーンはちょっとだけあるが、この『ザ・スナイパー』という邦題はどうよ、とかジョン・キューザックの息子役の少年はジョン・マルコビッチに似ている。などなど、微妙だ。

 乳ガンで妻を亡くしたジョン・キューザックが、そのためか心が離れつつある息子を、自分は苦手だが息子が好きなキャンプに誘う。キャンプといってもアメリカ人のキャンプなので、大平原、密林、断崖絶壁、滝、岩だらけの場所などなどガキが学校のキャンプで行った場所なのに難易度高けー。高尾山登りぐらいにしときなさいって。
 そこで苦楽をともにすることで親子の絆を取り戻そうというのだ。だが、待っていたのは要人の暗殺計画を実行中のプロの犯罪者グループ。たまたまそのボスであるモーガン・フリーマンを捕まえたはいいが、周りに助けを求める相手とて無く、携帯電話も圏外の大自然の中を父子はどうやって生き抜くのだろうか。

 モーガン・フリーマンはまったくの善人役よりも、この作品や『アウトブレイク』などクセのある役の方がオレとしては好みだ。やっぱベストは『ドリーム・キャッチャー』の軍人かな。
 ジョン・キューザックは小市民役を好演。最初は事態の急転におろおろしていたが、次第に頼もしくなってくる。もちろんジョン・キューザックなりの頼もしさなので、悪人をバッタバッタとなぎ倒すようなことはないのがうれしい。ジョンも思春期の子供を持つ親の役をやるようになったか。主演デビュー作の『シュア・シング』(1985)の時点ではヤツも10代だったんだけどなぁ。つーか、アメリカでは出ているんだから、日本でも『シュア・シング』のDVDとっとと出せ。

 ジョン父子を脅したりすかしたりしながら脱出の機会を狙うモーガン・フリーマンは、修羅場をかいくぐってきた男だ。悪党なりの筋は通すが、最後まできっちり悪党。下手に改心するとかではなく、ここは良かった。だが面白い映画だったかといわれると、やっぱ微妙。日本劇場未公開にも納得。

2008年02月02日

『デッドロック II』 オレのツボ、ヤベェぐらいに押されまくり

B00120VG5A.jpg『デッドロック II』(2006) UNDISPUTED 2 98分 アメリカ

監督:アイザック・フロレンティーン 製作:ボアズ・デヴィッドソン、デヴィッド・ヴァロッド 製作総指揮:ボアズ・デヴィッドソン、ケヴィン・ケイシャ、アヴィ・ラーナー、トレヴァー・ショート、ジョン・トンプソン 脚本:ジェームズ・タウンゼント、デヴィッド・N・ホワイト 撮影:ロス・W・クラークソン 音楽:スティーヴン・エドワーズ
出演:マイケル・ジェイ・ホワイト、スコット・アドキンス、ベン・クロス、イーライ・ダンカー、マーク・イヴァニール、ケン・ラーナー

 ロシアの刑務所でマフィアによる囚人同士の賭試合が行われていた。不敗のチャンピオン・ボイカがあまりに強すぎて儲けが少なくなってしまったマフィアは、CM撮影のためにロシアを訪れていたアメリカ人の元ヘビー級チャンピオンに麻薬不法所持の罪を着せて刑務所へ送り込む。最初は試合を拒むチャンピオンだが、次第に追い詰められていき、ついにはリングへと登る。
 チャンピオンは連戦無敗の男だが、後に身を持ち崩して薬物依存などでアメリカの刑務所で服役もしたという設定。マイク・タイソンがモデルだろうか。傲慢で他人のことなど考えず、自分さえ良ければいいと言う男が、成長していく様を描いた映画である。

 とにかく燃えますよ。2008年になってから観た作品の中では『デッドロック2』がベストですよベスト。つってもまだ2月になったばかりですが。
 なかでも好きなのが、懲罰として雪の舞う中庭に一晩縛り付けられたままのチャンピオンの前に、翌朝になって房から出てきた囚人の中の3人が足を止めるシーン。一人は自分がまとっていた毛布でチャンプの身体を覆い、一人はポケットボトルに入ったウオッカを。その事を知った所長が「誰が懲罰の邪魔をした。これをやったヤツは前へ出ろ」と怒鳴り、3人は前へ出る。だが、顔を見合わせていた残りの囚人たちも……。
 こう描いて欲しいと思うところをちゃんとそう描いてくれて、予想は付いているんだが、だからこそ嬉しい。主人公やライバル以外の囚人について描かれるシーンはここぐらいだが、これでもう充分やってくれたとオレは納得する。
 チャンプの二人目のセコンドになるのは元特殊部隊隊員で今は下半身不随になって車椅子に乗った囚人ニコライ。そのニコライに焦点を当て、それを見守るチャンプというラストも泣けるなぁ。ニコライは刑務所の地下に籠もっているため途中まではクロット(ロシア語でモグラという意味らしい)と呼ばれていたが、チャンプと信頼関係を結んだ時点で、「オレのことはニコライと呼べ」ってのがまた燃える。一人目のセコンドのエピソードも良いぞ。

 チャンプ、ライバルともにガチガチの筋肉質でヘビー級とデカい。格闘スタイルは足技ありの立ち技系が基本だが、マウントポジションでの顔面タコ殴りや腕・足への関節技など寝技もある。強い者が勝ち、弱い者が負けるってのが全てだ。通常速度のアクションが同カットのままスローモーションになったりする演出が気に入った。VFXの助けもあるのだろうが、蹴りを中心に難易度が高そうな技が頻出して、格闘映画としての見応えはもちろんばっちしだ。浴びせ蹴りを放つが、左足の蹴りが外れるてしまったため、そのまま空中で右足に反動を付けて蹴るコンマ数秒の技は、いくら実戦ではなく振り付けがある映画のアクションとはいえ見入ってしまう。重量級なのに動きが実に機敏だ。
 決め技が派手な打撃系ではなく膝への関節技ってのもいいねぇ。

2008年02月03日

『デッドロック』 2があるからには1もある

B000223MSI.jpg『デッドロック』(2002) UNDISPUTED 96分 アメリカ

監督:ウォルター・ヒル 製作:デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル、ブラッド・クレヴォイ、アンドリュー・シュガーマン 製作総指揮:ボアズ・デヴィッドソン、ダニー・ディムボート、アヴィ・ラーナー、サンドラ・シャルバーグ、トレヴァー・ショート、ウェズリー・スナイプス、ジョン・トンプソン、ルドルフ・G・ワイスマイヤー 脚本:デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル 撮影:ロイド・エイハーン二世 音楽:スタンリー・クラーク、TQ
出演:ウェズリー・スナイプス、ヴィング・レイムス、ピーター・フォーク、マイケル・ルーカー、ジョン・セダ、ウェス・ステューディ、フィッシャー・スティーヴンス、デイトン・キャリー、エイミー・アキノ

 レンタル屋の新作コーナーで『デッドロックII』を借りたときに、右端に一本だけあったのがこの『デッドロック』。そりゃ2があるんだから1もあるよな。なんてことをいうと、「『ファンタスティック・フォー』の1~3作目はレンタルしてますか」と使い古されたネタを言い出すヤツがいるが、オレにとっては映画界最大のミステリーと称される『トランザム7000』シリーズの『トランザム』から『トランザム6999』までの消失してしまったフィルムの方が重要だ。
 ともあれ、2の方は新作と言うことで1泊レンタルだったので先に観て、一週間レンタルの1を翌日観た。タイトルだけ使った全く関連がないパターン化と思っていたが、ストーリー的には“一応”繋がっていないこともないこともないこともないこともない。あれ、あるの?ないの?

 ヘビー級チャンピオンのボクサーであるアイスマンがレイプの罪で刑務所に送られてくる。間違いなくマイク・タイソンがモデルだろう。その刑務所では囚人同士のボクシング試合が行われていて、連戦無敗の塀の中のチャンピオン・モンロー(ウェズリー・スナイプス)がいた。熱狂的なボクシングファンで同じく囚人の老マフィア(ピーター・フォーク)が夢の対決を見たさにプロモーターとして裏で動き、所長を脅迫するなどしてついに試合が開催された。
 アイスマンとモンローが両看板のともに主役というスタイルだ。ストーリー的にはモンローの方がより主人公なのだが、その割に出番が少ない。ではアイスマンはどうかというと、チャンプを鼻にかけて他の囚人を見下す嫌なヤツなのであまり好感は持てない。それにウェズリー・スナイプスはいつものごとく「オレって格好いいだろ。クールだろ。セクシーだろ」と全身で主張している。今ひとつのめり込めなかったのはその辺りも要因となっているだろう。
 近年のウォルター・ヒル作品としては悪くない。あれこれややこしい話はあまりなく、終盤の試合に向けて物語はストレートに進んでいく。刑務所の中に檻として作られたリングの中でひたすら本気の殴り合い。ボクシングシーンに特筆すべき演出はないが、結構燃える。「「オレこそチャンピオンだ!!」」
 すっかり周りから嫌われたアイスマンが、食堂で食事中に他の囚人たちがコップでテーブルを打ち鳴らし始めるシーンでの看守長(マイケル・ルーカー)がぼやく「こいつら、刑務所映画の見過ぎだよ」には笑った。ピーター・フォークやマイケル・ルーカーなど脇役のキャスティングが嬉しい。
 でも個人的には1より圧倒的に2だな。

2008年02月06日

『スネークトレイン』 スネークトレイン、カモン

B000MR9IEU.jpg『スネークトレイン』(2006) SNAKES ON A TRAIN 91分 アメリカ

監督:マラッチ・ブラザーズ 製作:デヴィッド・マイケル・ラット、シェリー・ストレイン 製作総指揮:デヴィッド・リマゥイー 脚本:エリック・フォースバーグ 撮影:マーク・アトキンス 音楽:メル・ルイス
出演:ジュリア・ルイス、アルビン・カステロ、ジョバンニ・ビジャラノ、シャロン・ゲイル

 ヘビがのたうち回るあの列車に乗っていこう
 行く当てはロサンゼルスだ、でも着くかは分からない
 邪悪な呪いをかけられ、口からヘビを吐きまくる
 本当にもう、勘弁してよね
 スネークトレイン走って行くよ、スネークトレインどこまでも
 スネークトレイン走って行くよ、スネークトレインどこまでも

 思わずザ・ブルーハーツの『トレイントレイン』を歌ってしまうオレだった。えっ?歌詞が違う?そんなのこの作品の前では取るに足らない小さな事だ。

 メキシコからアメリカへと密入国した男女が、ロサンゼルス行きの列車に無賃乗車で乗り込む。その列車には、幼い娘を連れた家族連れや、サーフィンをしに行く三人組の若い男、コカインの運び屋にされてしまった若い助背が二人、出張に行くエンジニアなどなど個性的な人々が乗っていた。
 メキシコ人の女性はひどく苦しんでいる。病気か?と思いきやなんと口から緑のゲロとともに小さなヘビを吐き出した。やっぱ、ゲロは緑だよね。この女性、延々とヘビを吐き続ける呪いをかけられており、それを唯一解くことの出来る呪術師に会うためにロサンゼルスへ向かっているのだ。吐いたヘビはガラスビンに閉じこめておいたのだが、そのガラスビンが割れてしまい、急速に巨大化したヘビたちは乗客を襲い始めるのだった。

 まず、この“ヘビを吐く呪い”というアイディアにはやられた。それなりに美人な女優さんが口に本物の小さなヘビを咥えてのたうち回る様は「世の中、楽な仕事はないんだな」との思いを新たにする。
 うーむ、これは面白くなるかな?なるかな?なるかな?……なるかなー?……ならねー!大きくなったヘビは単なるニシキヘビだし、数も大して多くない。もっと列車中がヘビだらけになってしまうのかと思ったがしょぼい。そして、個性的な乗客たちはその設定をほとんど活用されずにただ騒ぎ立てるだけ。装置が壊され暴走し始めた列車をエンジニアが修理するシーンも、単に切れたケーブルを繋ぐだけ。ガキでも出来るわっ!ま、幼女丸呑みには笑ったけどな。
 どうも、このヘビというのはそもそも人間の中に存在する何かで、それを吐き出していくと肉体精神ともに衰弱していくようなのだ。呪いを解くというのも、ヘビを吐き出すのを止めるだけではなく、吐き出したヘビをまた身体にもどさねばならないらしい。うーむ、よく分からん。これまでに吐き出したヘビを持ち歩かせるための設定にしか思えない。
 終盤は突然な“そいつ”の登場で盛り上がるかなと思ったら、なんかそのままでぶった切られたように終わる。うーむ。やり方次第でもっと面白い映画になる可能性は持っているかもしれないのだが、結果はうーむ。

2008年02月07日

『モータル・コンバット』 解け合わないSFXと格闘アクション

B000WCEGMO.jpg『モータル・コンバット』(1995) MORTAL KOMBAT 101分 アメリカ

監督:ポール・アンダーソン 製作:ローレンス・カザノフ、ローリ・アペリアン 製作総指揮:ボブ・エンゲルマン、ダニー・サイモン 脚本:ケヴィン・ドロニー 撮影:ジョン・R・レオネッティ 音楽:ジョージ・S・クリントン
出演:ロビン・ショウ、クリストファー・ランバート、リンデン・アシュビー、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、ブリジット・ウィルソン、タリサ・ソト、トレヴァー・ゴダード

 腕がもげる、血しぶきが舞い頭が吹き飛ぶ。そんな残虐描写てんこ盛りの実写取り込み格闘ゲーム『モータル・コンバット』の映画化。ゲームの方は何度かやったことがある。演出は派手だが、操作感が大味でそれほど面白くなかったように記憶している。
『バイオハザード』シリーズのポール・アンダーソンが初期に手がけた作品で、格闘シーンにSFXをまぶして美味しく仕上げようとしているが、それぞれが混じり合わずにお互いの主張が強すぎてあまり成功しているとは思えない。SFX+格闘アクションというアイディアは面白いと思うんだが。
 主人公のアジア人青年やアクション映画俳優のスター、女性捜査官などの人間界側の戦士が、魔界の戦士たちと試合をして、負けたら人間界は魔神に支配されてしまう。魔界の戦士は冷凍光線を放つ男や、四本腕の巨人、そして親玉のケイリー=ヒロユキ・タガワ。ケイリー=ヒロユキ・タガワの邪悪ぶりは見物だ。オレはこれだけで満足した。
 格闘アクションの出来る人と出来ない人の差が大きいのは仕方ないとして、肝心の格闘シーンがちょっと戦っちゃなんかよそ事やって、またちょっと戦ってはよそ事やってと、展開がぶつ切りななために、観ているこちらのテンションがなかなか上がってこない。主人公以外の人間側の登場人物が何のために戦うのかが見えてこないのも残念だ。
「モータル・コンバット~!!」とタイトルを叫び、デンデンデンデケデケの音楽が流れるオープニングは格好いいんだけどね。第二部へ続くと言わんばかりのぶった切りなラストには大爆笑。
「これからが本当の戦いの始まりだ!」

2008年02月09日

『モータル・コンバット2』 無駄な動きこそ戦闘員のアイデンティティ

B000WCEGMY.jpg『モータル・コンバット2』(1997) MORTAL KOMBAT: ANNIHILATION 95分 アメリカ

監督:ジョン・R・レオネッティ 製作:ローレンス・カザノフ 製作総指揮:カーラ・フライ、アリソン・サヴィッチ 脚本:ブレント・V・フリードマン、ブライス・ゼイベル 撮影:マシュー・F・レオネッティ 音楽:ジョージ・S・クリントン
出演:ロビン・ショウ、タリサ・ソト、ジェームズ・レマー、ブライアン・トンプソン、サンドラ・ヘス、リン・“レッド”・ウィリアムズ、クリス・コンラッド、イリーナ・パンタエヴァ、レイ・パーク

 まさか1のラストからそのまま始まるとは思わなんだ。人間界に魔界の軍勢が退去して押し寄せ、ついに侵略は始まった。前作のボスキャラなどすでにザコ扱い。そして主人公は「お前には力が足りない。修行が必要だ」と言われて、新たなる師匠ナイトウルフの元へと旅立つ。うーむ、……ドラゴンボール?
 よく見ると、主人公は同じ人物だが、脇役のうち何人かは顔が違う。稲妻の神ライデンはクリストファー・ランバートだったはずがいつの間にかジェームズ・レマーになっている。スケジュールとかギャラ問題とか、諸般の事情があったのだろう。
 ひたすら戦いに次ぐ戦いで、ストーリーはあるんだかないんだか。前作で倒したはずの冷凍光線男が出てくるが、「おれはその弟だ」だそうだ。意味ありげに登場しておいて、それっきり。他にも実は意味がなかった設定とか、唐突な裏切り者とか、「思いつきで書いてんじゃねーの」と尋ねたくなる脚本だが、格闘シーンをふんだんに盛り込んでくれているので、これで良し。アクションは前作よりも切れ味が増している。キャストの交代でアクションが出来る人になった様子でもあるし、スタントマンの使い方も上手い。女性同士の戦いは泥の中。そうまるで“泥レス”状態だ。主人公側の美人捜査官の白いタンクトップが泥にまみれていく様はマニアも納得?
 SFXは予算が少なくなったのかあまり良いものではなく、合成はビデオのクロマキー合成かと思うようなちゃちっぷり。だが格闘との組み合わせは前作よりも上手いのではないだろうか。
 敵は下半身が獣のケンタウロスタイプや、四本腕のお姉ちゃん、タキシードのオバさんや黒い覆面で顔を隠した手下などなど。なんかこう、特撮ヒーロー物を観ているような気分になってくる。敵の忍者風あるいはアラビア風の手下が、意味もなく背景でバク転や側転などをしているのは笑える。主人公たちを追ってくるときもくるくる回転している。普通に走った方が速いはずだが、それが彼ら戦闘員のアイデンティティなのだ。
 個性的な(マヌケともいう)敵に対して、主人公たちが地味に見えてくるが、そこは腕をサイボーグにした仲間が参戦することでカバー。昔、『片腕サイボーグ』という作品があったが、この作品では両腕とも機械になっている。と思ったら、人体改造したのではなく、腕にパワーユニットを付けてただけなのか。しかし、そのパワーユニットに頼ることを止めて自ら引きはがしたときから本当の戦いは始まるのだ。気がつきゃ主人公はドラゴンに変身しているし、もう油断も隙もない。
 もちろん主題歌は健在。
「モータル・コンバット~!!」

2008年02月11日

『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』 アメコミヒーロー同士の結婚生活ってどうなるんだろう?

B000ZINY1E.jpg『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』(2007) 4: RISE OF THE SILVER SURFER 92分 アメリカ

監督:ティム・ストーリー 製作:アヴィ・アラッド、ベルント・アイヒンガー、ラルフ・ウィンター 製作総指揮:マイケル・バーナサン、クリス・コロンバス、ケヴィン・フェイグ、スタン・リー、マーク・ラドクリフ キャラクター創造:スタン・リー、ジャック・カービー 原案:ジョン・ターマン、マーク・フロスト 脚本:マーク・フロスト、ドン・ペイン 撮影:ラリー・ブランフォード 衣装デザイン:メアリー・E・ヴォクト 編集:ピーター・S・エリオット、ウィリアム・ホイ、マイケル・マカスカー 音楽:ジョン・オットマン
出演:ヨアン・グリフィズ、ジェシカ・アルバ、クリス・エヴァンス、マイケル・チクリス、ダグ・ジョーンズ、ジュリアン・マクマホン、ケリー・ワシントン、アンドレ・ブラウアー、スタン・リー、ローレンス・フィッシュバーン

 1は観ていて退屈でしたが、2はバカ度が増していて面白い。ファンタスティック・フォーの活躍シーンも増えて、SFXもパワーアップ。そして何より、シルバーサーファーが渋格好いい。声はローレンス・フィッシュバーンだったんだね。そら渋いわ。ファンタスティック・フォーは脇役で、シルバーサーファーが実質的な主役だなこりゃ。最大の敵との戦いでは、ファンタスティック・フォーは何の役にも立ってないし。
 最終的な敵は、惑星のエネルギーとそこで活動する生命体のエネルギーを根こそぎ奪って完全に死滅させてしまう、その名もギャラクタス。ギャラクな上にタスですよ、なんかナムコ系ですな。相手のスケールデカすぎ。見た目は地球よりも大きいんだから、宇宙規模ですよ宇宙規模。手下のシルバーサーファーですら、ファンタスティック・フォーを軽く手玉に取る強さ。シルバーってだけに全身銀ピカのシルバーサーファーは、鏡のように周りの様子を反射している。要は『ターミネーター2』のT-1000なんだが、アメコミにシルバーサーファーが登場したのは1966年とこちらが先。予告編のCGではT-1000からあまり進化してないんじゃないかと不安だった。で、本編を観てみると、「うーん、やはりあんまり進化してないのかも」。実際には写り込みなどがより高度な物になっているのだろうが、オレとしてはあまり差は感じられなかった。
 前作以上にアクションシーンが増え、ファンタスティック・フォーはロンドンの大型観覧車崩壊の危機などでそれぞれの能力を活かして大活躍。シルバーサーファー捕獲という任務には失敗するが、多くの人命を救う。前作ではゴムのように伸び縮みするMr.ファンタスティックの能力が有効に使われていなかったが、今回はロープ代わりになったり、遠くにある本をひょいっと取ったり、ついには美人のお姉ちゃん二人の身体に伸ばした腕を何重にも巻き付けてLet'sダンス!
 ダンスのシーンは独身お別れパーティーでの出来事。いわゆるバチェラーパーティーってヤツだ。Mr.ファンタスティックとインビジブル・ウーマンもついに明日が結婚式。その前夜にヒューマン・トーチとザ・シングが企画したバカ騒ぎパーティーだ。美人を前にビッグバンの説明を始めるなど野暮なMr.ファンタスティックも次第に乗ってきて、ついにはステージでダンスを披露して両手に花なところを、軍からの要請で駆けつけてきたインビジブル・ウーマンに目撃されるってのはお約束。
 どうもこの二人、何度も結婚式を執り行おうとしては事件が起きて中止を繰り返してきた様子。インビジブル・ウーマンは今度こそ結婚するわよ!と燃えているのだが、ニューヨークのビル屋上で行われた結婚式はシルバーサーファーの襲来でまたもや中止。そして、こんな調子でまともな結婚生活や子育てが出来るのかしらとマリッジブルーに突入してしまう。
 それもそうだ。アメコミのヒーローは、これは日本のヒーローもそうだが、ほとんどの場合は正体を隠して変身したり衣装を身にまとって活躍している。それに対して、ファンタスティック・フォーは正体から住む場所まで知れ渡っていて、外出すればパパラッチに狙われテレビや新聞に毎日のように取り上げられる存在なのだ。芸能人ならば、自ら望んでその地位に登り詰めたわけだが、ファンタスティック・フォーの場合はあくまでも宇宙での実験中に発生した事故が原因で日常を奪われてしまったのだ。
 だが、そこら辺の悩みのシーンで映画の流れが中断されることもなく、話はテンポ良く進んでいく。この辺りを「人間が描かれていない」と指摘する人もいるが、それがメインで撮られた映画じゃないのだから何故気にするのかとも思う。そりゃ描いていないより描いていた方が良いのかもしれないが、娯楽映画として重要なのはまず面白いかどうかだろう。オレはこの作品を観終わった時点で、心に別段残った物はなかったが、92分間楽しませてくれただけで満足だ。
 映画の盛り上がりは秘密兵器ファンタスティックカーの登場辺りで頂点を迎える。ファンタスティックカーは三つに分離合体する機能付き。ただ、分離合体のギミックは少々物足りなくて、単に前・中・後ろの分かれるだけ。ここら辺は日本のアニメや特撮の方が凝った物を作りそうだ。
 全員の手を重ねて「おう!」と気合いを入れるシーンはよく見るが、それに全員の力を集中させるという具体的な意味合いを持たせたところが良いね。

 日本の駿河湾で始まった映画は、日本のどこかで行われた強引な結婚式で終結する。いや、終盤は中国での戦いだったので結婚式も中国という可能性は大きい。女性は和服を着てるし、桜が咲き乱れる風景には何故だか鳥居もあるが、ハリウッド映画なので例によって単にアジアということでごっちゃなのかも。まぁ、気にするな。
 ニューヨークの結婚式で招待状を持っていない白髪の客が係員に追い返されるが、「名簿に名前があるはずだ、確認してくれ。オレはスタン・リーだ」と叫んでいる。エンドクレジットによるとやはり原作者・製作のスタン・リー本人。1922年生まれだそうだから85歳のはずだが、アップはないのではっきりと顔が分かるわけではないが60代ぐらいにしか見えなかった。ひょっとするとこの人自身もアメコミヒーローと同じで、いつまで経っても年を取らない特殊能力の持ち主なのかも。

2008年02月12日

『ジャッカー』 闘う男ロイ・シャイダー、死す

51DPK55C95L.jpg『ジャッカー』(1988) COHEN AND TATE 85分 アメリカ

監督:エリック・レッド 製作:アンソニー・ルーファス・アイザック、ジェフ・ヤング 脚本:エリック・レッド 撮影:ヴィクター・J・ケンパー 音楽:ビル・コンティ
出演:ロイ・シャイダー、アダム・ボールドウィン、ハーレイ・クロス、クーパー・ハッカビー、スザンヌ・サヴォイ

 ロイ・シャイダーは闘う男であった。
 『フレンチ・コネクション』では麻薬密輸組織と闘い、『ブルーサンダー』では戦闘ヘリを駆使して陰謀と闘い、『ジョーズ』では副主人公として主人公ジョーズと闘い、『オール・ザット・ジャズ』では……まぁショウビジネスの世界も熾烈な世界だそうだから闘ったのだろう。
 そして彼自身も、晩年は病魔と闘い、闘い抜き、そして息を引き取った。
 ニュースの見出しは「ジョーズの警察署長役ロイ・シャイダーが死亡」とあった。やはり彼のイメージは闘う男なのだ。

 追悼の意味を込めて、前々から書こう書こうと思っていた『ジャッカー』について書く。
 映画の冒頭はいきなり下から上に流れる字幕で始まる。おいおい、状況設定を字幕で説明かよ。この手のはハズレが多いんだよな。なになに、マフィアの悪事を目撃した男がFBIの保護下に置かれている。その彼を奪うべくマフィアは二人の殺し屋をさしむけた。ふーん。だが、そのラストの一行でオレは姿勢を正した。
「彼はまだ9歳(だったかな)の少年である」
 たったこれだけのことなのだが、オレはこの映画にセンスを感じた。そして、85分後、それが間違っていなかったことを知る。
 FBIの護衛をいとも簡単に片付けると、殺し屋たちは少年を車に乗せてマフィアの本部へと向かう。その場で殺せではなく、生きたまま連れてこいというのが命令なのだ。殺し屋の一人がロイ・シャイダー。経験を積んだプロ中のプロで、年のために補聴器を付けてはいるが、まだ現役の犯罪者だ。もう一人が筋肉質で力は強そうな若い犯罪者アダム・ボールドウィン。世代の格差のせいか二人の関係はしっくりきておらず、不仲さが漂っている。
 アダム・ボールドウィンは少年をさっさと始末してしまおうぜと言い出すが、ロイ・シャイダーは自分たちの任務は生きたまま連れて行くことだと頑としてそれを受け入れない。ただし、ロイ・シャイダーは少年に同情して命を奪わないのではない。連れて行った先で確実に殺されるのは分かっているのだ。殺さないのはそれが自分の任務ではないからにすぎない。彼はプロなのだ。その二人のやり取りを聞いていた少年は、生き残るために策を練り、二人に話しかけてその対立をあおっていく。こうして三者三様の思惑によって、車内の緊張感は高まっていく。
 舞台のほとんどは疾走する車の中。メインの登場人物は三人と、密室劇に近い。アクション系の映画かと思って劇場を訪れたオレだったが、充分に堪能し満足した。
 ラストは地下水か何かをくみ上げるポンプがいくつも設置された場所での殺し屋同士による対決。闘いのさなか、補聴器を落としてしまったロイ・シャイダーはほとんど物音が聞こえないため、敵の位置が上手くつかめないのだ。老いを表現するためだけかと思われたロイ・シャイダーの補聴器が、サスペンスを盛り上げるために活用される。
 そしてラスト、生き残っていた者は……

 原題の『COHEN AND TATE』は二人の殺し屋の名前。COHENがロイ・シャイダーで、TATEがアダム・ボールドウィン。主人公は少年ではなく一人はベテランでもう一人は血気盛んな若者という二人の殺し屋たちだったのだ。任務第一のCOHENが次第に心に暖かみを持つようになり人間味を取り戻していくが、その先にある物は死だった。彼は後悔の中で死んだのか、満足して死んだのか。ともあれ、男として死んだのは間違いがない。

2008年02月19日

『ロケットマン!』 トム・ヤム・クン・ウエスタン

B0010E8LO2.jpg『ロケットマン!』(2006) DYNAMITE WARRIOR 103分 タイ

監督:チャルーム・ウォンピム 製作総指揮:ソムサック・デーチャラタナプラスート 原作:チャルーム・ウォンピム 脚本:チャルーム・ウォンピム、ユッタポン・ピーラユッタポン 撮影監督:タナチャット・ブンラー
出演:ダン・チューポン、パンナー・リットグライ、プティポン・シーワット、カンヤパック・スワンクート、サマート・ティップタマイ

 時代は過去のタイ。映画の冒頭で農作業用の牛を運ぶ牛飼い(カウボーイ)を襲い、その胸元を調べては牛を奪っていくロケットマン。おおっ、これは西部劇ではないか。イタリアの西部劇がマカロニ・ウエスタンで三池の撮った日本の西部劇がスキヤキ・ウエスタンだそうだから、これはトム・ヤム・クン・ウエスタンといったところだろうか。とりあえず意味なく「パクチー!」と叫んでおく。
 ロケットマンは胸元にある特徴のある牛飼いを捜し求めている。そう、それは北斗七星の形に並んだ傷跡……いや、それ違うから。とにかく、胸元に刻印のある男を捜している。なぜならば、そいつがロケットマンの両親の敵だからだ。
 ロケットマンはムエタイの達人でもあるが、その名の由来通り得意な武器はロケットだ。ロケット花火のでかいヤツを撃ちまくる。ロケット(花火)乱射乱射乱射乱射乱射ーっ!うわっ、特大のロケット花火の上に乗って飛んでるっ!飛びますかキミはーっ!
 ラストにはもちろん敵の親玉との一騎打ちもある。吹き荒れる砂嵐がやはり西部劇を感じさせる。登場人物の多くがカウボーイハットを思わせる帽子(麦わら)を被っているのもやはり西部劇。
 映画の洗練度としては同じタイ映画でトニー・ジャー主演の『トム・ヤム・クン』と比べても明らかに劣るが、面白い映画を作りたいという作り手の意志がズンズン伝わってきて、そのエネルギーが嬉しい。1970~80年代の香港映画が持っていた勢いに近いだろう。発展途上だからこそ持ちうる力というのもあるのだ。
 主人公たちのムエタイが見事で、肉体能力だけではなく、格闘技としての技を存分に味合わせてくれるアクションはやはり見応えがある。向かい合って立っている敵の後頭部に膝蹴りを決めるってスゴッ!
 登場人物に妖術使いやオカマさん、そして日本語吹き替えでは「ミーはなになにザンス」とトニー谷のトニングリッシュの敵役のバカさかげんなどがタイを感じさせる。というか、どんなタイの印象だそれは。腹が減ると敵を殺して人肉を喰ってしまう悪役や、刃物でぶった切られる腕や足もなるほどタイ映画かなって感じ。
 ヒロインが平成ガメラシリーズの藤谷文子にちょっと似てる気がするのはオレだけ?

2008年02月20日

『プリズン』(2006) 呪われた地、呪われた刑務所

B000YHUQO4.jpg『プリズン』(2006) FURNACE 86分 アメリカ

監督:ウィリアム・バトラー 製作:スコット・アロンソン 脚本:ウィリアム・バトラー、アーロン・ストロンゴーニ 音楽:ヴィオレル・セルゴヴィチ
出演:マイケル・パレ、ケリー・ステイブルズ、ヴィクトリア・ヘスター、ジェニー・マクシェーン、ジャ・ルール、トム・サイズモア、ダニー・トレホ、リチャード・カウル、フランク・ナップ・Jr

 ずいぶんご無沙汰なマイケル・パレなんで借りてきた。出演者にはトム・サイズモアやダニー・トレホの名前もあり、ある意味豪華。
 DVDをプレーヤーにセットして再生を始めると、まずは新作案内から始まる。むむ、このラインナップは……くわっ、あのアルバトロスが販売した作品だったか。若干のピンチを感じつつ本編が始まった。警官っぽい制服を着た男が車を運転している。ハンドルを握った手の内、左手はダッシュボードに隠れて見えない。そして男がハンドルを切ったとき、左手が観客の目にさらされる。小指と薬指が欠落していて、ろくに手当もしてないようで血まみれの包帯が巻かれているだけ。ここで、「おおっ」と感じた。平凡と思えたところから一気に不気味さを感じさせ観客の視線を掴んでいる。意外といけるんじゃねぇ?
 数百年の昔から、行方不明者や謎の事故が多発した土地。現在ではそこにブラックゲート刑務所が建てられているが、そこでも不可思議な事件は起こり、所内で刑務所長が死亡しその娘が行方不明になったこともあるという。オープニングの男はそこの看守で、家に帰って来るなり妻に声もかけずにバスルームに閉じこもると、ピストルで頭を吹き飛ばして自殺した。よその刑務所から多数の囚人が護送されるため、火災によって長い間閉鎖されていた棟の改修に着手したばかりなのだが、看守はそこで何かを見てしまったらしい。そして、呪われた刑務所でまた殺戮が始まった。

 マイケル・パレは刑事役。単なる自殺事件とは思えず、刑務所へ出向いて捜査を始める。顔に余分な贅肉が付いてしまって、顔つきが『ロッキー・ザ・ファイナル』のスタローンの様な感じ。苦労が顔に出ているのかなぁ。苦労してるだろうなぁ、この人は。だが、あのニヒルかつセクシーな目つきだけは変わっていない。芝居は相変わらずの一本調子だが、これが持ち味とも言える。
 黒人の囚人としてジャ・ルールが出ている。セガールの『奪還 DAKKAN アルカトラズ』(2002)で「アーイだぜ」とか言ってセガールの親友である囚人を演じていた人だな。囚人役似合うなー。
 そして同じく囚人役のダニー・トレホ。この人もほんと犯罪者役が似合う、というか俳優になる前は実際に刑務所に収容されていたこともある本物の犯罪者なんだよな。だが、この作品ではあまり活躍しないのが残念。あの風貌がスクリーンにいるだけで映画の雰囲気が締まるのは確か。
 ホラーとしては怨霊が祟って殺人を起こしていくタイプ。チラッチラッと画面の端や背後を通り過ぎるだけで、なかなかはっきりと姿を現さない。『リング』の貞子や『呪怨』シリーズなど、和製ホラーの影響があるのではないだろうか。火事によってすっかり荒れ果ててしまった棟や怨霊の映像など雰囲気作りは悪くない。
 エンドクレジットが始まってもすぐに停止ボタンを押さないこと。しばらくしたところでちょっとしたオマケがある。

2008年02月25日

『穴』(1960) ジャック・ベッケルの“穴”

B000091LFO.jpg『穴』(1960) LE TROU 124分 フランス

監督:ジャック・ベッケル 製作:セルジュ・シルベルマン 原作:ジョゼ・ジョヴァンニ 脚本:ジャック・ベッケル、ジョゼ・ジョヴァンニ、ジャン・オーレル 撮影:ギスラン・クロケ
出演:ジャン=ケロディ、フィリップ・ルロワ、ミシェル・コンスタンタン、マルク・ミシェル、レイモン・ムーニエ、カトリーヌ・スパーク

『デッドロック』シリーズや『プリズン』(2006)と最近は刑務所映画を観る機会が多かったので、その締めとしてこの作品を選んだ。いわゆる『ジャック・ベッケルの“穴”』である。刑務所映画にして脱獄映画。モノクロの画面が刑務所を映し出す。
 本編の中でカメラが刑務所から出るのはたった1シーンでしかも短時間。少女が一人面会に来るが、それ以外の出演者は男ばかり。基本的には監房の床に穴掘って、地下室や通路を通り抜け、下水道を彷徨うってな話。脱獄物としてはスタンダードなまでにスタンダードで余分な物はほとんどないが、これが面白くてたまらないからやっぱ映画は止められない。
 歯ブラシの柄に鏡の破片をくくりつけた看守の動きを探るための道具。金属製ベッドの足。薬瓶と灰皿にあったタバコ消し用の砂、金ノコなどが脱獄の道具となる。特に金ノコは金格子だろうとなんだろうと切ってしまう万能ぶり。オレも刑務所にはいるときには忘れずに持って行こう。
 床のコンクリを叩き削る音、金格子を切る音、看守の足音、トイレの水を流す音、そして息づかい。音楽のない映画の中で、一つ一つの音が意味を持ち緊張感を高めていく。
 そうして5人の男たちが脱獄計画を進めていく。トンネルが落盤を起こして一人が生き埋めになったりする、がそれらを乗り越えて自由はもはや目の前にある。
 ここで他の棟から移されてきた新顔を中心とした囚人同士や、刑務所長・看守との心理的駆け引きの意味が分かってくる。物わかりの良さそうに見えた所長は老獪なやり手で、囚人たちはその手のひらで踊っていたのか。新顔をその監房に送り込んだことすら、全てを見通してのことだったかに思えてくる。だが、ヤツらがこれで諦めたとは思えない。必ずまたやるはずだ。

 冒頭のシーンでシトロエンCV2のボンネットを開けて工具で整備していた男が顔を上げてカメラに向き合う。
「やあ、俺が実際に体験した事実を元に友人のジャック・ベッケルが映画を作ってくれたぜ。まぁ観てくれ」
 てなことを言うのが、原作者にして脚本にも名を連ねているジョゼ・ジョヴァンニ。この人は、元々本物の犯罪者で、刑務所収容歴があり脱獄計画にも関わったことがあるとか。それらの体験を元に小説を書き始め有名になった人。学生時代にジョヴァンニが原作・監督を務めた『掘った奪った逃げた』(1979)という犯罪者が金庫に向けてトンネルを掘って、お宝を奪って、そして逃げたというまんまなタイトルの映画を観せてもらったときに、「フランスの安部譲二ってとこですか」って言ったら、「うーん……」って微妙な返事をされた。
『冒険者たち』(1967)の原作者というのが最も有名な肩書きだろうが、後には監督業にも乗り出して、割と面白い映画を撮っている。特殊部隊物の『狼たちの報酬』(1986)なんか、もう一度観てみたいんだが、レンタル屋でも見かけなくなって久しい。DVDにはならんだろうなぁ。

2008年02月26日

『ローグ アサシン』 アクション映画ではないことが

B0011JPELY.jpg『ローグ アサシン』(2007) WAR 103分 アメリカ

監督:フィリップ・G・アトウェル 製作:スティーヴ・チャスマン、クリストファー・ペツェル、ジム・トンプソン 脚本:リー・アンソニー・スミス、グレゴリー・J・ブラッドリー 撮影:ピエール・モレル 衣装デザイン:シンシア・アン・サマーズ 編集:スコット・リクター 音楽:ブライアン・タイラー
出演:ジェット・リー、ジェイソン・ステイサム、ジョン・ローン、デヴォン青木、ルイス・ガスマン、石橋凌、マシュー・セント・パトリック、ケイン・コスギ

 ジェット・リーとジェイソン・ステイサムが対決するというので観てみた。
 アクション少なっ!!
 ジェイソン・ステイサムはあくまでも俺は俳優だと言うことでアクション俳優という肩書きが定着してしまうのを嫌ったのかなぁ。でも、ジェット・リーはアクション俳優以外の何者でもないよな。どうにも消化不良。
 なんてことを思っていたら、実はこの作品がアクション映画でないということが製作陣が観客に対して仕掛けた最大のトリックだったのだ。どんでん返しの手法はいくつもあるが、映画のジャンルを勘違いさせるという手は思いつかなかった。やられたぜ。

 基本的なストーリーは、サンフランシスコを舞台に、対立する日本人ヤクザと中国マフィア、謎の殺し屋ローグ(ジェット・リー)とそのローグに相棒を殺され復讐に生きるFBI捜査官(ジェイソン・ステイサム)。ヤクザのボスは石橋凌、中国マフィアのボスはジョン・ローンだ。オープニングクレジットでの石橋凌の名前は一人表記。オープニングクレジットで名前が出るだけでも出演者としての扱いは大きいのに、石橋の名前だけってのがすごい。演技は優作の『ア・ホーマンス』の頃とあんまり変わってないけど。ちなみにケイン・コスギは他の人と一緒の二人表記。
 ローグが中国マフィアに寝返ったり、実は裏でヤクザと通じていたりしていて、両者を上手く対立させて双方共倒れにさせていく様子は『用心棒』を思わせる。ヤクザがローグを追って放した番犬がトテトテと闇の中から戻ってくるシーンでは、思わずその口に人間の腕をくわえているのではないかと思ってしまった。ちなみに腕はないが代わりに……

 例によって間違った日本で溢れているが、ジェイソン・ステイサムもがんばって日本語で尋問してくれるし、「柳に雪折れ無し」とか「治において乱を忘れず」などやたらと格言が書かれた(さすがに日本料理屋の中に「掃き溜めに鶴」ってのは笑った)セットや女体盛りが登場したところでオレとしては問題なし。昔、サミュエル・フラーの『東京暗黒街 竹の家』(1955)をリバイバルで観てしまった者としては、「間違った日本だろうが、面白けりゃそれでいい」なのだ。「正しい日本でも、つまらなければダメ」だしな。だからって、『ローグ アサシン』がすごく面白かったと言ってるわけではないが。そこそこ面白いぐらい。
 ケイン・コスギ対ジェット・リーの対決もすぐ終わる。ケイン弱っ!演技も意気込みは感じるが、肩に力が入りすぎかな。どうでもいいけど、デヴォン青木の顔はキューピーちゃんにしか見えない。

2008年02月27日

『ホステル2』 このホステルには泊まっちゃ駄目だ

B000ZIZO80.jpg『ホステル2』(2007) HOSTEL: PART II 94分 アメリカ

監督:イーライ・ロス 製作:イーライ・ロス、マイク・フレイス、クリストファー・ブリッグス 製作総指揮:スコット・スピーゲル、ボアズ・イェーキン、クエンティン・タランティーノ 脚本:イーライ・ロス 撮影:ミラン・チャディマ 特殊メイク:グレゴリー・ニコテロ、ハワード・バーガー 編集:ジョージ・フォルシー・Jr、ブラッド・E・ウィルハイト 音楽: ネイサン・バー
出演:ローレン・ジャーマン、ビジュー・フィリップス、ロジャー・バート、リチャード・バージ、ヴェラ・ヨルダノーヴァ、ヘザー・マタラッツォ

 下品なのとか悪趣味とか血とか痛いのが嫌いな人は観ちゃいけません。全編通してそれの固まりですから。
 実はオレも下品なのは好きではないんです実は。一作目の『ホステル』も下品でしたが、二作目はさらに下品。製作にクエンティン・タランティーノである時点で下品なのは分かってたんですが。新作の『デス・プルーフ』も下品でしたからなぁ。もっともタランティーノから下品を奪ってしまったらすでにタランティーノではないですし、観始める前は抵抗があった『ホステル』シリーズも、なんだかんだで楽しんでしまいましたから結局下品が好きなのか?

 東欧に旅行に行ったチャラチャラしたアメリカ人のお姉ちゃん四人が何者かに拉致され、残酷な方法で殺されていきます。相手は殺人鬼ではなく、インターネットオークションで殺す権利を買い取ったそれなりに裕福な人たち。ジョン・ウーの『ハード・ターゲット』は金持ちによる街中での人間狩りでしたが、その類ですな。殺され方がいちいち痛そうで、しかも一気に殺してくれるのならまだしも、散々いたぶられるんで被害者にはなりたくありません。殺す側にもなりたくないですけど。
 謎が解けてしまった分、前作の「なんで俺たちがこんな目にあわなきゃいけないんだ」という理不尽さがなくなってしまったのは残念ですが、続編物の宿命ですかね。前作で唯一生き残った青年が冒頭でいきなり…・・・されてしまうのは可哀相ですが、これも続編物ではよくあること。『マニアック・コップ』とか『アイアン・イーグル』なんかがそうですね。
 つまるところ、人間はいくらでも残虐になれるし、最後はお金を持っている者の勝ちという身も蓋もなさ。警備員がテレビとか雑誌に夢中になっていて、監視カメラの映像に異常が生じたことに気づかないのは定番ですな。
 しかし考えてみれば、拉致されて最後には惨殺されてしまうという事件は日本でも起こっていますよね。行方不明者も多いですが、明るみに出ていないだけで中にはそんな被害者もいるのかも。うー、怖い。
 映画としての出来はどうってことないです。一作目の焼き直しですから、インパクトではどうしたって負けてますな。生首サッカーには笑いましたが。