『三十九夜』(1935) THE 39 STEPS 88分 イギリス
監督:アルフレッド・ヒッチコック 原作:ジョン・バカン 脚本:チャールズ・ベネット、アルマ・レヴィル、イアン・ヘイ 撮影:バーナード・ノールズ 音楽:ルイス・レヴィ
出演:ロバート・ドーナット、マデリーン・キャロル、R・マンハイム、ペギー・アシュクロフト、マイルズ・メイルソン
ヒッチコックお得意の巻き込まれ型サスペンスで、ロマンスとサスペンスが見事な融合された、一言で言って傑作だ。
軽音楽や芸人が芸などを披露するロンドンの小劇場。
舞台には驚異的な記憶力を誇る暗記男が、その雑学を披露していた。すると、ピストルの音が数発。慌てた観客たちが表へと飛び出していく中、主人公は難儀していた女性を助け、自分のアパートへと連れて行く。
ところが、その女性は国家機密の漏洩について調査中の情報部の情報員だった。そして、その女性が刺殺されてしまい、主人公は殺人犯と疑われ、自らの無実をはらすべくスコットランドへと逃亡の旅に出ることとなった。
女性が刺殺された後、犯人たちがアパートを見張る中、主人公は牛乳配達人の服を借りて抜け出す。その口実が、「ある家に浮気に来ていたのだが、夫やその友人が表から見張っている」というものだった。すると、牛乳配達人は「ならばお互い様だな」と気楽に衣装と車まで貸してくれる。お互い様とはどういうことだろうか? 『モンティ・パイソン フライング・サーカス』でも人妻が牛乳配達人と浮気? をしているというスケッチがあったが、向こうの間男というと牛乳配達人が頭に浮かぶのだろうか?
鉄道や荒野を走るなどして逃げ続ける主人公。逃げる逃げる、ひたすら逃げる。
途中、知り合った女性と警察を名乗る物によって手錠で繋がれ、共に逃亡を余儀なくされる。強気な女性で最初は反発していたのに、次第に打ち解けていく二人。いいねぇ。ヒロインが濡れたストッキングを脱ぐところなど別に必要のないカットだが、色っぽくて良い。で、いい雰囲気になったと思ったらまたケンカ。
主人公たちをかくまう田舎の家の妻やホテルの女将さんなど、いい味出してるな~。他にも印象的な脇役が多く、列車で同席になった女性用下着のセールスマン同士の会話まで面白い。
講演会で講演者と間違われて、適当な講演をでっち上げたら妙にウケてしまったり、車内で話しているカットがそのまま1カットで車外に出て車を見送るカットなど実にヒッチコック的だ。今作では車だったが、後には列車でそれをやることになる。
悪役について分かっているのは手の小指の先が欠損しているということだけ。下手を打ったヤクザ?
機密漏洩について別の人間が調べていたが、書類の一枚もなくなっていない。やはり主人公たちは嘘を言っているのではないか?
ここで冒頭の複線が活きてくる。ネタとしてはキアヌ・リーブスが主演した『JM』(1995)の元祖みたいなものか。