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『ミクロの決死圏』 人体は未知なる宇宙だ

B000VRXIBA.jpg『ミクロの決死圏』(1966) FANTASTIC VOYAGE 100分 アメリカ

監督:リチャード・フライシャー 製作:ソウル・デヴィッド 脚本:ハリー・クライナー 撮影:アーネスト・ラズロ 特殊効果:L・B・アボット 音楽:レナード・ローゼンマン
出演:スティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ、アーサー・ケネディ、エドモンド・オブライエン、ドナルド・プレザンス、アーサー・オコンネル、ウィリアム・レッドフィールド、ジェームズ・ブローリン

 脳腫瘍によって意識を失ったままの科学者を治療すべく、超小型に縮小されたプロメテウス号が体内に注入される。そして五人のクルーは原題の『FANTASTIC VOYAGE』が示す通り、実にファンタスティックな光景を眼にすることになる。

 当時のSFXの粋を集めたSF大作。SFと言えば宇宙のイメージが強いが、今回は人体の中にある小宇宙だ。
『インナースペース』(1987)と比べるとSFXが見劣りするのは間違いがないし、もしも現在の技術で体内を表現したら、その『インナースペース』を上回るだろう。だが、それはそれ、これはこれ。1966年当時の人々は、これまでになかった映像を体験したのは事実なのだ。

 治療のために、ミクロサイズに小型化された潜水艇を人体に注入するというSF的アイディア。それを実現させるためにいくつも嘘をついている。縮小は二段階で、二段目は巨大な注射器ごと縮小され、そこに入っていた水(おそらくは生理食塩水)も一緒に縮小される。しかし、縮小は60分で解けて、元の大きさに戻ってしまう。だとしたら、患者の体内に注射された水も巨大化して、人体が破裂してしまうだろうが、そんな事は気にするな。
 あのね、SFってのは嘘だから。つか、映画って嘘だから。ドキュメンタリーじゃないんだからさ。それに、ドキュメンタリーだって嘘はあるぞ、多分。

 クルーの一人としてドナルド・プレザンスが登場した時点で、「あっ、こいつは悪党だ」という予感がしてしまうのは何故だろう。
 プロメテウス号のデザインが60年代していて、曲線が美しい。レーザー砲もレトロで嬉しい。船外活動用スーツのラクエル・ウェルチが美しい。抗体に取り付かれて、ギリギリとその身を締められるラクエル・ウェルチに倒錯美を感じてしまうのは罪だろうか。
 肺胞で青い赤血球が酸素交換で赤に変わるシーンが美しい。単なるビニールホースにしか見えない組織もあるが。
 プロメテウス号を襲い、ついには飲み込んでしまう白血球は怖ろしいが、オレの体内で重要な免疫として働いてくれているのだ。白血球その他に感謝。
『インナースペース』では体内のあちこちを移動していたが、『ミクロの決死圏』では数センチを移動するにも大騒動だ。ミクロ単位に縮小されているのだから当たり前とも言える。内耳にいる時には、オペルームで鉗子を落とした音だけで、艦は嵐にあったように振り回される。ここら辺はSFとコメディの差だ。

 監督は『海底二万哩』(1954)のリチャード・フライシャー。SF専門というわけじゃなくて、戦争映画から西部劇まで手広く手がける人だ。

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