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『殺人!』 彼女の無実を信じる男がいた

B000SKJ0CG.jpg『殺人!』(1930) MURDER! 105分 イギリス

監督:アルフレッド・ヒッチコック 製作:ジョン・マクスウェル 原作:クレメンス・デイン、ヘレン・シンプソン 脚本:アルマ・レヴィル 撮影:ジャック・コックス 音楽:ジョン・レインダース
出演:ハーバート・マーシャル、ノラ・ベアリング、エドワード・チャップマン、E・パーシー

 コメディやロマンスを含めるとすでに十本以上の作品を手がけていたアルフレッド・ヒッチコックのサスペンス第3作目。そろそろ監督として貫禄もついてきた。身体の貫禄はもっと前からあるが。

 ロンドンの深夜。叫び声が街に響き渡る。
 とあるアパートの一室では女優が殴り殺されており、傍らの椅子には別の女優が茫然自失の状態で座っていた。足元には血塗られた火かき棒が転がっていた。
 逮捕された女優は裁判にかけられ、十二人の陪審員たちは審議へとはいる。投票の結果、有罪が七人、無罪が三人、そして棄権が三人だったが、議論を続ける内に主人公の劇作家以外は有罪に鞍替えしてしまう。そして、他の陪審員から圧力をかけられ、ついに主人公も有罪に投票してしまう。
 しかし、どうしても彼女が有罪だと思えなかった主人公は、独自で調査を始める。

 裁判のシーンで、被告の発言や証言毎に、顔をテニスの観客のように一声に揃って左右に振るところが面白い。公演中の舞台裏で役者相手に警官が聞き込みをするシーンも可笑しい。やはりヒッチコック作品には良質なユーモアを含んでいる。
 ストーリー自体は素人探偵物で、ミステリーとしては大したことはない。ある秘密を守るために、自分が犯人だと言い張る被疑者というシチュエーションもそう珍しくはない。
 だが、前作の『恐喝(ゆすり)』から比べると、映画としては確実に進歩している。
 他の陪審員が全員有罪とする中、一人だけ無実を信じるというストーリーは『十二人の怒れる男』(1957)を思わせる。
 結末の付け方にちょっとドッキリ。

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