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『下宿人』 アルフレッド・ヒッチコック、初のサスペンス・スリラー

B000SKJ0AS.jpg『下宿人』(1926) THE LODGER 80分 イギリス

監督:アルフレッド・ヒッチコック 製作:マイケル・バルコン、カーライル・ブラックウェル 原作:マリー・ベロック=ローンズ 脚本:エリオット・スタナード、アルフレッド・ヒッチコック 撮影:バロン・ヴェンティミリア
出演:アイヴァー・ノヴェロ、マリー・オールト、マルコム・キーン、アーサー・チェスニー、ヘレナ・ピック

 ヒッチコックはすでに他の作品で監督デビューしていたが、そちらはロマンスでサスペンスはこの『下宿人』が初めて。ヒッチコックの伝説はここから始まると言っていいだろう。

 ところはロンドン。木曜日の度に金髪の美女が殺されるという連続殺人事件が起きていた。人々は恐れおののき、それと同時に好奇心を沸き立たせていた。
 事件発生現場の近くに下宿屋があり、そこに一人の男が部屋を借りた。この男は、目撃証言にあった犯人の姿に似ていた。そして、木曜の夜。男は、隠れるように部屋を出て行き、しばらくして戻ってきた。
 翌日、世間は新たなる事件発生に騒いでいた。果たして、男は連続殺人犯なのだろうか。

 「TO-NIGHT GOLDEN CURLS」(今夜、金髪の女性が)の文字が何度も繰り返し表示されて、効果的だ。
 小さな電球を並べたタイプの電光掲示板でも、殺人事件のニュースが報じられ、人々はそれに見入っている。電光掲示板ってこの頃からあったんだ。
 ただ怖れるだけではなく、大衆はどこか興奮して面白がっている。
 ラストでは犯人と思われた男が、大衆に追いかけられてリンチにかけられそうになる。自分たちが正義だと思いこみ、暴走した大衆。ヒッチコックの皮肉な視線がうかがえる。

 サイレント映画だが、天井で揺れるシャンデリアによって上の階で歩き回る男の足音を描写している。
 現在に再映画化したら、殺人鬼と疑われた主人公が、ラストで真犯人と対決でもするのだろうが、映画では真犯人が捕まったというニュースだけで、その姿は現れない。
 男が殺人犯か? が重要であって、誰が殺人犯か? は重要ではないのだ。

 80年前の映画なので、さすがにフィルムの状態は良くない。当時はヒッチコックも一新人監督に過ぎなかったので、ちゃんと保存もされていなかっただろう。それでも、観ることが出来るだけで幸せ。
 古い映画、しかもサイレント映画なので、その点は頭に入れておいて欲しい。現在の映画を観るのと同じようにはいかないので、ちょっとした切替が必要。

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