『インナースペース』(1987) INNER SPACE 121分 アメリカ
監督:ジョー・ダンテ 製作:マイケル・フィネル 製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、ピーター・グーバー、フランク・マーシャル 脚本:ジェフリー・ボーム、チップ・プローザー 撮影:アンドリュー・ラズロ 特撮:デニス・ミューレン 特殊メイク:ロブ・ボッティン 音楽: ジェリー・ゴールドスミス
出演:マーティン・ショート、 デニス・クエイド、メグ・ライアン、ケヴィン・マッカーシー、フィオナ・ルイス、ヴァーノン・ウェルズ、ロバート・ピカード、ウェンディ・スカール、ハロルド・シルヴェスター、ウィリアム・シャラート、ヘンリー・ギブソン、オーソン・ビーン、ケヴィン・フックス、キャスリーン・フリーマン、ディック・ミラー、ケン・トビー
現在でも『トランスフォーマー』がスピルバーグ製作として話題になっていたが、当時はそれが売り文句になるほど大きなネームバリューだった。
「SFXで忠実に再現された人間の体内。製作総指揮はスピルバーグ」なのがこの『インナースペース』だ。
ベースとなっているのはリチャード・フライシャーの『ミクロの決死圏』(1966)だろう。
21年の時を経て、赤血球はよりフニャフニャになっている。
本来は、デニス・クエイドをパイロットとする実験用のポッドは、ウサギに注射されるはずだった。しかし、悪漢どもの襲撃を受け、注射器を持って逃げ出した科学者は、たまたま出くわしたマーティン・ショートの尻にポッドを打ち込んでしまう。
神経過敏でノイローゼ気味のたスーパーのレジ係であるマーティン・ショートは、こうして物質縮小用マイクロチップを巡る騒動に巻き込まれる。
当時の最先端SFXで映像化された体内の様子は見事。細胞や血管、神経などがリアルに描かれている。
それ以上に面白いのが、マーティン・ショートのコント的演技。『サタデーナイト・ライブ』出身の芸で笑わせてくれる。
頼りのないちょっと強迫神経症気味で、しょっちゅう医者にかかってばかりの小心者というのは、実にマーティン・ショート向きの役柄だ。
デニス・クエイドが体内から筋肉を操作して、他人に変身させるシーンでは、歯をむき出してみたり頬をふくらませてみたりと、マーティン・ショートの顔芸が堪能できる。
変身が解けてしまうシーンの顔面変化はさらにすごいが、こちらはさすがに人間に出来るものではなく、ロブ・ボッティンによる特殊メイク。
まるで冴えないスーパーの男が、ラストには本物のスーパーマンへと人間的成長を遂げる。
タイムリミットまでにデニス・クエイドを助け出さないと、酸素が切れて窒息死してしまう。そんなハラハラのサスペンスがありながらも、作品はあくまでもコメディとして進む。
登場人物も奇妙なヤツ揃い。特に悪役側が笑える。様々な武器に付け替え可能な義手を持つ男、常にカウボーイブーツとカウボーイハットの密売人などなど。
だが、一番笑えたのは、デニス・クエイドが「ナンミョーホーレンゲキョー(南無妙法蓮華経)」とお題目を唱えるところ。「なんでやねん」ってんで、劇場で大笑いしてしまった。
感動的なのは、デニス・クエイドが恋人(メグ・ライアン)の体内で自分の赤ん坊(胎児)を見つけるところ。プヨプヨッとして、本当に生きているみたいだ。
デニス・クエイドは脇役で、主役はマーティン・ショート。気弱な男が、散々な目にあって成長を遂げるというのは良くあるネタだが、マーティン・ショートのダメ男っぷりのおかげで面白く仕上がっている。SFXはむしろ添え物かも。
コメディ映画なんで、「科学的にはどうだ」とか「医学的にはどうだ」なんてヤボは言わずに楽しむが吉でしょうな。