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『江戸川乱歩の陰獣』 あなただっ!

sb0949_1.jpg『江戸川乱歩の陰獣』(1977) 118分 日本

監督:加藤泰 製作:白木慶二 原作:江戸川乱歩 脚本:加藤泰、仲倉重郎 撮影:丸山恵司 美術:梅田千代夫 音楽:鏑木創 助監督:三村晴彦
出演:あおい輝彦、香山美子、若山富三郎、大友柳太朗、川津祐介、加賀まりこ、倍賞美津子、田口久美、中山仁、仲谷昇、野際陽子、尾藤イサオ、藤岡琢也、菅井きん

 なんでもバルベ・シュロデールが江戸川乱歩の『陰獣』をリメイクするそうだ。
 『陰獣』といえば、天知茂が明智小五郎を演じたTV版も有名だが、なんといっても加藤泰の『江戸川乱歩の陰獣』が頭に浮かぶ。

 加藤泰は監督が映画会社の専属に近かった時代に、東映、松竹などいくつかの映画会社で作品を手がけている。
 加藤泰と聞いてまず頭に浮かぶのは東映の任侠映画だろう。
 だが、昨日紹介した山田洋次の『馬鹿三部作』の一つ『馬鹿まるだし』(1964)では脚本を書いている。この『江戸川乱歩の陰獣』も松竹映画だ。

 主人公の寒川は探偵小説作家。その彼が、別の怪奇幻想探偵小説作家である大江春泥に付きまとわれている女性と知り合ったところから物語は始まる。
 女性は小山田という実業家の妻である。そして、そのえり首から見える背中には一筋の傷痕があった。
 正統派探偵小説を書く寒川と、怪奇幻想小説を書く大江春泥は対照的だが、これはどちらも江戸川乱歩が持っていたもので、乱歩対乱歩という構図でもある。
 背中に鞭で打たれたような傷がある女性が、実業家の妻だから物語はより深まっているのだが、バルベ・シュロデールが撮る『陰獣』では芸者に変更されるそうだ。お金持ちの奥さまが、人には言えない秘密を持っているから面白いんで、その辺りをバルベ・シュロデールは全然分かってない。
 江戸川乱歩物を得意とした石井輝男が撮ると、もっとグロテスクで怪奇趣味になって良い意味で破綻してくるのだが、加藤泰は映画をコントロールしている。
 トリック自体はどうということはないが、屋根裏に作られた赤い部屋で寒川が謎解きをしていくシーンはぞっとくる。
「それを知っていたのは、そうあなただ! それを行うことが出来たのはたった一人、あなただ!」
 白人女性が、碁石を打つ音を聞いて、鞭の音を連想するシーンの見事さ。
 うって変わって、箸休め的な、船乗り場での藤岡琢也と菅井きんのやり取りが楽しい。

 原作の中編は20年ぐらい前に読んだきりなので、細かいところは忘れてしまった。
 未だにDVD化されず、観る機会も少ない一本。
 松竹カラーが薄いので、後回しにされているのかも知れない。ともあれ、とっとと出せ。

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