2007年11月アーカイブ

B00005HW8O.jpg『デスレース2000』(1975) DEATH RACE 2000 80分 アメリカ

監督:ポール・バーテル 製作:ロジャー・コーマン 原案:イブ・メルキオー 脚本:ロバート・ソム、チャールズ・B・グリフィス 撮影:タク・フジモト 音楽:ポール・チハラ
出演:デヴィッド・キャラダイン、シルヴェスター・スタローン、シモーネ・グリフェス、ハリエット・メディン、ルイザ・モリッツ、メアリー・ウォロノフ、ドン・スティール、ジョイス・ジェームソン、フレッド・グランディ、マーティン・コーヴ、ジョン・ランディス

 1975年当時、25年先の2000年は近未来だった。幸いなことに、2000年は無事に過ぎ去り、アメリカ大陸横断殺人レースが開催されることはなかった。

 『デス・レース2000年』は“B級映画の帝王”ことロジャー・コーマン製作による、低予算B級映画。
 アイディアが振るっていて、ニューヨークからロサンゼルスまで5台の車によるレースが行われるのだが、重要なのはタイムではなく点数。では、その点数はいかにして稼ぐかというと、通行人を轢き殺すことでポイントとなるのだ。年齢別に獲得ポイントが違って、一番大きいのは70歳以上の老人を殺した場合の100点。倫理も何もあったもんじゃない。
 主人公フランケンシュタイン(デヴィッド・キャラダイン)らの乗る車がイカれていて、70年代の特撮ヒーロー物に登場したようなゴテゴテデザイン。車の先頭には槍やナイフが付いていて、それで通行人を殺すのだ。
 実はこのゲーム、アメリカ大統領の独裁による市民の不満を抑えるために開かれている。おおっ、デストピア物だったのか。SFじゃん。同じ1975年には、管理社会への不満を過剰な暴力ゲーム『ローラーボール』で紛らわせるというその名も『ローラーボール』(1975)があった。映画の規模で行くと、『ローラーボール』の圧勝だが、アイディアでは負けてはいない。

 管理社会と言うことで、当然のようにそれに反発するレジスタンスが登場するが、これがバカ。レーサーを殺すために女装して標的になったり、断崖絶壁の前にニセのトンネル(ベニヤ板に書いた絵)を作って、そこに飛び込んだレースカーが転がり落ちるなど、こいつら真面目に反抗する気があるのか? ふざけているとしか思えない。
 そして、大会主催者側は、このレジスタンスによる妨害を、フランス人による物だと決めつける。レースにサボタージュが行われているが、サボタージュはフランス語だ。だからフランス人が悪い、んだそーだ。ホント、昨日の『ブラザーズ・グリム』じゃないが、アメリカ人ってフランス人が嫌いだ。
 ちなみに「サボる」はこのサボタージュが語源。サボタージュという言葉が日本に入ってきたのは大正時代になってからだそうだが、テレビ時代劇で「おい、さぼってんじゃねーぞ」なんてセリフを耳にしたことがある。まぁ、テレビ時代劇はファンタジーのような物なので、「時代考証が間違っている」と重箱の隅をつつくようなことは言わない。ただ、笑っただけ。

 フランケンシュタイン(デヴィッド・キャラダイン)は黒い服に黒いマント、黒いマスクと、安っぽいダースベーダーのような格好をしている。パッケージ写真の中央に写っているのがフランケンシュタインだ。
 左手の手首から先が義手になっているのもダースベーダーと同じ。はっ、もしかして、ジョージ・ルーカスはフランケンシュタインをモデルにダースベーダーを作り上げたのかっ!!

 無名時代のジョン・ランディスがメカニックの役で出演しているようだが、画面では判別できなかった。
 撮影のタク・フジモトは日系人のようで、後にロジャー・コーマン門下生のジョナサン・デミが撮った『羊たちの沈黙』や『フィラデルフィア』でも撮影監督を務めており、一流撮影監督の仲間入りをした。
 音楽のポール・チハラは、フルネームがポール・セイコ・チハラなので、こちらも日系人かと思われる。
 ロジャー・コーマンは節約第一主義で、『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか』という自伝を出している。興行的に成り立ってこその映画だというのだ。ロジャー・コーマンの基本的な考え方は、100万ドルで映画を撮って、150万ドルの興行成績を上げたら50万ドルの儲けだが、10万ドルで映画を撮って100万ドルの成績を上げた方がリスクも小さいし儲かるというものだ。
 だが、監督として撮った『血まみれギャングママ』や『機関銃ケリー』はなかなかに良作。
 全ての映画が『タイタニック』や『スパイダーマン』シリーズのように1億ドルで撮るという訳にはいかなのだから、ロジャー・コーマンの精神はこれからも生き続けるであろう。

 ジェイソン・ステイサム主演でリメイクされるってのは本当か?この映画、21世紀に映像化可能なのか?通行人を轢くとポイントになるあたりが縮小されていたら、ちょっとヤダ。でも、なんか楽しみ。

B000LRZF7K.jpg『ブラザーズ・グリム』(2005) THE BROTHERS GRIMM 117分 アメリカ/チェコ

監督:テリー・ギリアム 製作:チャールズ・ローヴェン、ダニエル・ボブカー 製作総指揮:ジョン・D・スコフィールド、クリス・マクガーク、ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン、ジョナサン・ゴードン 脚本:アーレン・クルーガー 撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル プロダクションデザイン:ガイ・ディアス 衣装デザイン:ガブリエラ・ペスクッチ、カルロ・ポジオリ 編集:レスリー・ウォーカー 音楽:ダリオ・マリアネッリ
出演:マット・デイモン、ヒース・レジャー、モニカ・ベルッチ、ジョナサン・プライス、レナ・ヘディ、ピーター・ストーメア、リチャード・ライディングス、マッケンジー・クルック、ロジャー・アシュトン=グリフィス、ローラ・グリーンウッド

『ブラザーズ・グリム』じゃなくて『グリム兄弟』だろ、と思ったが、観終わった感想としては、「うん『ブラザーズ・グリム』で正解だ」だった。
 とりあえず、マット・デイモンとヒース・レジャーが兄弟ってのは無理だ。似てないにもほどがある。
 テリー・ギリアムが監督だというので、グリム兄弟を幻想的な映像で観せてくれるんだろうなと考えていたが、ドイツ各地で語られているおとぎ話を集めて本にまとめたグリム兄弟が、何故か亡霊と戦っている。ゴースト・バスターズか、こいつらは?
 そんな無理矢理な設定がさらに一ひねりしてあって、その点は面白かった。
 テリー・ギリアムのファンタジーというと、『ほらふき男爵の冒険』を映像化した『バロン』(1989)が思い出されるが、あれと比べると正直落ちる。テリー・ギリアムが自分の趣味を抑えて撮った感じがある。
『ラマンチャの男』がトラブル続きで製作中止になり、久しくメガホンを取っていなかったギリアムが、興行的成功を第一にと考えたのだろうか。

 動き回る樹木、ミイラ化した女王、カラスの群れなど、幻想的な映像もどこかで観たような物で、目新しさは感じられない。狼男の変身、というか変形のシーンはちょっと面白かった。最後は「愛の力」で勝利するが、冒頭の幼き日のグリム兄弟で語られた“魔法の豆”をラストで活かせたのではないか。
 テリー・ギリアムを期待してみると物足りないが、娯楽映画としては多少グロテスクな部分はあるが成立している。
 赤ずきんやリンゴを持った老婆など、グリム童話の断片が時折挿入されてはいるが、ストーリーはオリジナル。日本に当てはめるとしたら、柳田國男が民間伝承を集めるために立ち寄った山村で妖怪退治をするとかになるんだろうか。『蟲師』(2006)になったら困るな。

 イマイチな男性俳優陣をフランス軍将軍役のジョナサン・プライスが締めてくれる。
 それにしても、アメリカ人ってフランス人が嫌いだよね、実は。

B000MQ584U.jpg『インナースペース』(1987) INNER SPACE 121分 アメリカ

監督:ジョー・ダンテ 製作:マイケル・フィネル 製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、ピーター・グーバー、フランク・マーシャル 脚本:ジェフリー・ボーム、チップ・プローザー 撮影:アンドリュー・ラズロ 特撮:デニス・ミューレン 特殊メイク:ロブ・ボッティン  音楽: ジェリー・ゴールドスミス
出演:マーティン・ショート、 デニス・クエイド、メグ・ライアン、ケヴィン・マッカーシー、フィオナ・ルイス、ヴァーノン・ウェルズ、ロバート・ピカード、ウェンディ・スカール、ハロルド・シルヴェスター、ウィリアム・シャラート、ヘンリー・ギブソン、オーソン・ビーン、ケヴィン・フックス、キャスリーン・フリーマン、ディック・ミラー、ケン・トビー

 現在でも『トランスフォーマー』がスピルバーグ製作として話題になっていたが、当時はそれが売り文句になるほど大きなネームバリューだった。
「SFXで忠実に再現された人間の体内。製作総指揮はスピルバーグ」なのがこの『インナースペース』だ。

 ベースとなっているのはリチャード・フライシャーの『ミクロの決死圏』(1966)だろう。
 21年の時を経て、赤血球はよりフニャフニャになっている。
 本来は、デニス・クエイドをパイロットとする実験用のポッドは、ウサギに注射されるはずだった。しかし、悪漢どもの襲撃を受け、注射器を持って逃げ出した科学者は、たまたま出くわしたマーティン・ショートの尻にポッドを打ち込んでしまう。
 神経過敏でノイローゼ気味のたスーパーのレジ係であるマーティン・ショートは、こうして物質縮小用マイクロチップを巡る騒動に巻き込まれる。

 当時の最先端SFXで映像化された体内の様子は見事。細胞や血管、神経などがリアルに描かれている。
 それ以上に面白いのが、マーティン・ショートのコント的演技。『サタデーナイト・ライブ』出身の芸で笑わせてくれる。
 頼りのないちょっと強迫神経症気味で、しょっちゅう医者にかかってばかりの小心者というのは、実にマーティン・ショート向きの役柄だ。
 デニス・クエイドが体内から筋肉を操作して、他人に変身させるシーンでは、歯をむき出してみたり頬をふくらませてみたりと、マーティン・ショートの顔芸が堪能できる。
 変身が解けてしまうシーンの顔面変化はさらにすごいが、こちらはさすがに人間に出来るものではなく、ロブ・ボッティンによる特殊メイク。
 まるで冴えないスーパーの男が、ラストには本物のスーパーマンへと人間的成長を遂げる。

 タイムリミットまでにデニス・クエイドを助け出さないと、酸素が切れて窒息死してしまう。そんなハラハラのサスペンスがありながらも、作品はあくまでもコメディとして進む。
 登場人物も奇妙なヤツ揃い。特に悪役側が笑える。様々な武器に付け替え可能な義手を持つ男、常にカウボーイブーツとカウボーイハットの密売人などなど。
 だが、一番笑えたのは、デニス・クエイドが「ナンミョーホーレンゲキョー(南無妙法蓮華経)」とお題目を唱えるところ。「なんでやねん」ってんで、劇場で大笑いしてしまった。
 感動的なのは、デニス・クエイドが恋人(メグ・ライアン)の体内で自分の赤ん坊(胎児)を見つけるところ。プヨプヨッとして、本当に生きているみたいだ。

 デニス・クエイドは脇役で、主役はマーティン・ショート。気弱な男が、散々な目にあって成長を遂げるというのは良くあるネタだが、マーティン・ショートのダメ男っぷりのおかげで面白く仕上がっている。SFXはむしろ添え物かも。
 コメディ映画なんで、「科学的にはどうだ」とか「医学的にはどうだ」なんてヤボは言わずに楽しむが吉でしょうな。

B000V7SEW8.jpg『アポカリプト』(2006) APOCALYPTO 138分 アメリカ

監督:メル・ギブソン 製作:メル・ギブソン、ブルース・デイヴィ 製作総指揮:ヴィッキー・クリスチャンセン、ネッド・ダウド 脚本:メル・ギブソン、ファラド・サフィニア 撮影:ディーン・セムラー プロダクションデザイン:トム・サンダース 衣装デザイン:マイェス・C・ルベオ 編集:ジョン・ライト 音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:ルディ・ヤングブラッド、ダリア・エルナンデス、ジョナサン・ブリューワー、ラオール・トゥルヒロ、モリス・バード、ヘラルド・タラセナ、ルドルフォ・パラシオス、フェルナンド・エルナンデス

 栄光のマヤ文明も衰退の時を迎えつつあった。だが、都市部から離れた森で狩りをして暮らすインディオたちには関わりのないことだった。
 しかし、ある日、彼らの村を敵が襲い、男は太陽の神への生け贄として、女は奴隷として連れ去られてしまう。
 密かに妻と子を井戸に隠した主人公は、生け贄から逃れ一路村を目指すが、敵が後を追ってくる。最初は逃げる一方だった主人公だが、狩りのスキルを利用して、生き残るための戦いを始める。

 主人公が追われる側のマンハンント映画としては面白い。罠を仕掛けて敵を倒す様はランボーのようだ。
 だが、これがマヤ文明末期を描いた映画と考えると、メル・ギブソンの姿勢には疑問が残る。
 冒頭のクレジットで「文明は内部から崩壊する」といった文面が出てくる。
 そして、首都では堕落した人々が、異教の神に生け贄を捧げている。
 こんな糜爛振りでは、国民の支持を失って滅びても無理がないというのだ。

 だが、異教の神といっても、それはキリスト教徒から見ての異教。マヤ人にとってはれっきとした彼らの正当なる神だ。
 確かに、当時のマヤ文明が衰退していたのは事実だ。だが最終的にマヤ文明を滅ぼしたのは白人の侵略者ではないか。
 それでいて、初めてマヤを訪れた白人の船の上陸船には、これ見よがしに宣教師を乗せているのを映している。
 これは、娯楽映画の名を借りた、白人による異文明侵略の正当化である。
『パッション』などを撮っていたのだから、メル・ギブソンは自分が何をやっているか明確に理解したはずである。「娯楽映画だから、そんな細かいことを気にするな」と言われるかも知れないが、無知から作られた認識の不足ではなく、自分が撮っている物を理解しているのだから気になる。
 英語を一切使わず、全て現地語で撮るというこだわりを持つが、これは白人キリスト教徒向けの映画だから、さして意味がない。
 それどころか、「異教徒に、俺たちの言葉である英語を使わせてたまるか」という深読みすらしてしまう。

sb0949_1.jpg『江戸川乱歩の陰獣』(1977) 118分 日本

監督:加藤泰 製作:白木慶二 原作:江戸川乱歩 脚本:加藤泰、仲倉重郎 撮影:丸山恵司 美術:梅田千代夫 音楽:鏑木創 助監督:三村晴彦
出演:あおい輝彦、香山美子、若山富三郎、大友柳太朗、川津祐介、加賀まりこ、倍賞美津子、田口久美、中山仁、仲谷昇、野際陽子、尾藤イサオ、藤岡琢也、菅井きん

 なんでもバルベ・シュロデールが江戸川乱歩の『陰獣』をリメイクするそうだ。
 『陰獣』といえば、天知茂が明智小五郎を演じたTV版も有名だが、なんといっても加藤泰の『江戸川乱歩の陰獣』が頭に浮かぶ。

 加藤泰は監督が映画会社の専属に近かった時代に、東映、松竹などいくつかの映画会社で作品を手がけている。
 加藤泰と聞いてまず頭に浮かぶのは東映の任侠映画だろう。
 だが、昨日紹介した山田洋次の『馬鹿三部作』の一つ『馬鹿まるだし』(1964)では脚本を書いている。この『江戸川乱歩の陰獣』も松竹映画だ。

 主人公の寒川は探偵小説作家。その彼が、別の怪奇幻想探偵小説作家である大江春泥に付きまとわれている女性と知り合ったところから物語は始まる。
 女性は小山田という実業家の妻である。そして、そのえり首から見える背中には一筋の傷痕があった。
 正統派探偵小説を書く寒川と、怪奇幻想小説を書く大江春泥は対照的だが、これはどちらも江戸川乱歩が持っていたもので、乱歩対乱歩という構図でもある。
 背中に鞭で打たれたような傷がある女性が、実業家の妻だから物語はより深まっているのだが、バルベ・シュロデールが撮る『陰獣』では芸者に変更されるそうだ。お金持ちの奥さまが、人には言えない秘密を持っているから面白いんで、その辺りをバルベ・シュロデールは全然分かってない。
 江戸川乱歩物を得意とした石井輝男が撮ると、もっとグロテスクで怪奇趣味になって良い意味で破綻してくるのだが、加藤泰は映画をコントロールしている。
 トリック自体はどうということはないが、屋根裏に作られた赤い部屋で寒川が謎解きをしていくシーンはぞっとくる。
「それを知っていたのは、そうあなただ! それを行うことが出来たのはたった一人、あなただ!」
 白人女性が、碁石を打つ音を聞いて、鞭の音を連想するシーンの見事さ。
 うって変わって、箸休め的な、船乗り場での藤岡琢也と菅井きんのやり取りが楽しい。

 原作の中編は20年ぐらい前に読んだきりなので、細かいところは忘れてしまった。
 未だにDVD化されず、観る機会も少ない一本。
 松竹カラーが薄いので、後回しにされているのかも知れない。ともあれ、とっとと出せ。

B000O17BZC.jpg『馬鹿が戦車でやって来る』(1964) 93分 日本

監督:山田洋次 製作:脇田茂 企画:市川喜一 原案:團伊玖磨 脚本:山田洋次 撮影:高羽哲夫 美術:佐藤公信 音楽:團伊玖磨
出演:ハナ肇、犬塚弘、岩下志麻、松村達雄、花沢徳衛、谷啓、東野英治郎、飯田蝶子、戦車87号

 完璧である。
 タイトルは。

 馬鹿がやって来るんである。
 しかも、戦車でやって来るんである。

 これはもう、タイトルアカデミー賞があったら、上位入賞間違いなし。
 タイトルは。

 学生時代に、このタイトルを聞いた時は驚いた。
 『男はつらいよ』なんて駄作を撮っている山田洋次が、こんなパンクでアナーキーでバカなタイトルの映画を手がけていたとは。
 そして、ビデオでこの作品を観る機会があった。
 最高だった。タイトルは。
 後はもう、かなりどうでもいい映画だ。しょせんは、山田洋次。パンクでもアナーキーでも、そして馬鹿でもない。

 馬鹿ことハナ肇が鬱屈させた思いがついにぶち切れて、戦車で村を破壊しまくるが、爽快感がない。閉鎖的村社会に、弱者がついに牙を剥く重要なシーンなのに、その意味すら感じさせない。
 どうやら山田洋次に“馬鹿”というものが理解できていないようだ。
 香具師であるヤクザ者の車寅次郎を、お調子者のお人好しとしてしか描けなかったのも無理はない。

 社会風刺か、寝ぼけたような映画史しか撮れない馬鹿な山田洋次が、喜劇映画の重鎮となってしまったことは、実に悲劇である。
 このことで、日本の喜劇映画はゆうに20年は後れを取った。未だに『釣りバカ日誌』が続いているなんて、ひどい話もあったものだ。

 ちなみに、オレにとってバカは褒め言葉。馬鹿はけなし言葉。口頭だと区別が付かないので、“馬鹿“は“頭が悪い”と呼んでいる。東大を出ていようが、馬鹿は馬鹿だ。

B000B4NFJI.jpg『北海ハイジャック』(1980) FFOLKES 100分 アメリカ

監督:アンドリュー・V・マクラグレン 製作:エリオット・カストナー 製作総指揮:モーゼス・ロスマン 原作:ジャック・デイヴィス 脚本:ジャック・デイヴィス 撮影:トニー・イミ 音楽:マイケル・J・ルイス
出演:ロジャー・ムーア、ジェームズ・メイソン、アンソニー・パーキンス、マイケル・パークス、デヴィッド・ヘディソン、ジャック・ワトソン、リー・ブロディ、ジョージ・ベイカー

 舞台はイギリスは北海に建設された油田採掘基地。この基地がアンソニー・パーキンス率いる悪党どもによってハイジャックされた。
 2500万ドルを要求してきたアンソニー・パーキンスは、時間までに金が引き渡されないと、基地を爆破すると伝えてくる。そうなっては、油田の経済的損失だけではなく、原油流出による環境汚染を含め、多大な損失を免れない。
 そこで、イギリス政府はフリーの水上ハイジャック対策班のリーダーであるフォルクス(ロジャー・ムーア)を呼び寄せた。
 刻々と期限が迫る中、男たちの静かな戦いが幕を開く。

 監督はアンドリュー・V・マクラグレンだが、微妙なギャグなどイギリス色が強く出た作品となっている。
 主人公フォルクスは筋金入りの女嫌いなのだが、その理由が、父を若くして亡くした母子家庭で、母親と五人の姉に囲まれて育った。10歳まで姉のお古を着て過ごしたのだ。
 それだけではない。結婚してみたら、元妻にはこれまた五人の姉がいた。これでは、女嫌いになるのも無理がない。
 さらに、その女嫌いのフォルクスを、ジェームズ・ボンドを始めとして、女好きな役が多いロジャー・ムーアが演じているところが面白い。
 しかも、刺繍が趣味で、タバコ嫌い。猫が大好きときている。この変人ぶりを楽しめるかどうかで、評価は変わってくるだろう。

 対するアンソニー・パーキンスは極悪非道の男。『サイコ』のノーマン・ベイツがあまりにもはまり役だったために、それ以降も神経病患者的なキャラクターが多かったアンソニー・パーキンスが、今回は強面のする残虐非道な悪党だ。
 やられたと思わせて、それでいて実は……でしぶとい。

 アクションを期待すると、少々物足りないかも知れないが、ある意味元祖『ダイ・ハード』
 基本的には、アンソニー・パーキンスとロジャー・ムーアの頭脳戦がメインで、見せ場となる突入シーンはようやくとラストになってから。
 敵側には日本人が二人いるのだが、ムーアの部下であるフロッグメンとの戦いでは、空手とかを使わずにあっという間にやられてしまう。ちと、情けなし。

B000TZF99I.jpg『スティーヴン・キング 8つの悪夢:ロックンロール・ヘブン』(2006) NIGHTMARES AND DREAMSCAPES: FROM THE STORIES OF STEPHEN KING オーストラリア/アメリカ

監督:マイク・ローブ 製作:マイク・ローブ 製作総指揮:ビル・ヘイバー、ポーラ・ワグナー 原作:スティーヴン・キング 脚本:マイク・ローブ 撮影:ベン・ノット、ジョン・ストークス 音楽:ジェフ・ビール
出演:キム・デラニー、ウィリアム・マクナマラ、ダミアン・リチャードソン、トニー・リッカーズ

 原作小説の邦題は『いかしたバンドのいる街で』だ。
 ある夫婦が、オレゴンの道に迷ったあげく、『ロックンロール・ヘブン』という変わった名前の街にたどり着いた。
 奇妙なのは名前だけではない。どの家にいっても、下の方から音楽の演奏が聞こえてくるのだ。
 いったい何だろうと、縁の下を覗き込んだ夫婦は、そこに信じられない物を目撃する。
 なんと、生バンドが床下の狭いスペースに潜り込み、腹ばいになってロックを演奏していたのだ。
 これがほんとの『床下バンドのいる街で』というヤツである。

 それはさておき、夫婦が迷い込んだのは確かに奇妙な街だった。
 そこの住人は何かに怯えているようであり、元気なのは一部の人間だけだ。その元気な連中は、リッキー・ネルソンやジャニス・ジョップリンなど、すでに亡くなったロックスターにそっくりだった。
 異常に気付いた夫婦は、街から抜け出して田舎道を車で走るが、パトカーに追いつかれてしまう。
 そして、パトカーから降りてきた、ロックンロール・ヘブンの町長を名乗る男こそ、ロックの帝王と呼ばれたあの人物だった……

 オールドロックファン必笑のエピソードで『8つの悪夢』は幕を閉じる。
 ロックンロールの熱烈なファンであるキングらしいエピソードだ。
 劇中で妻が「これはトワイライトゾーンの世界よ」と叫ぶが、まさにその通り。このシリーズ自体がキングによる『トワイライトゾーン』や『ヒッチコック劇場』のオマージュである。
『ロックンロール・ヘブン』ではロックロールスターが、囚人とした人々を相手に永遠に続くコンサートを続ける。
 コメディ映画ファンのオレとしては、東西の今は亡きコメディアンによる舞台をぜひとも見てみたい。いかりや長介の「うぃーす」の挨拶で始まり、マルクス兄弟によるドタバタ、走り回るバスター・キートン、時計台からぶら下がるハロルド・ロイドに軍服姿で威張り散らすグレアム・チャップマン。黒いスーツに帽子とサングラスでバク転していくジョン・ベルーシに、植木等による歌。傘を回す海老一染之助・染太郎。ほんじゃまかほんじゃまかと言いながらナポレオンの帽子を作る早野凡平。とどめは林家三平のダジャレ
 うん、永遠に続かれると困るな。やはり何事もほどほどが肝心だ。
 締めはやっぱり、いかりや長介による「ダメだ、こりゃ」

B000TZF99I.jpg『スティーヴン・キング 8つの悪夢:解剖室#4』(2006) NIGHTMARES AND DREAMSCAPES: FROM THE STORIES OF STEPHEN KING オーストラリア/アメリカ

監督:ミカエル・サロモン 製作:マイク・ローブ 製作総指揮:ビル・ヘイバー、ポーラ・ワグナー 原作:スティーヴン・キング 脚本:エイプリル・スミス 撮影:ベン・ノット、ジョン・ストークス 音楽:ジェフ・ビール
出演:リチャード・トーマス、ロバート・マモーネ、グレタ・スカッキ、マーティン・ヴォーン

 河豚の毒にあたった人の体験談をどこかで読んだことがある。中島らもが引用していたんだったかな?
 意識はあるのだが、指の一本を動かすことも瞬きをすることも出来ない。
 しかし、意識ははっきりしている。
 そして、自分の枕元に集まった人々が、「葬式はどうしようか」と話し合っているのが聞こえたというのだ。

 この作品の主人公は、ゴルフ場で倒れ、たまたま居合わせた老人医師に心臓マヒによる死亡と判断された。
 そして、病院の解剖室に運ばれ、後は検視を待つだけなのだが、実は毒ヘビに噛まれて身動きが出来ないだけで、意識はある。そして、自分が生きていることをなんとか検視医に伝えようとするが、瞳孔すら開いたままだ。
 そして、いよいよ彼の胸に切開用のメスが迫る。

 映画はアップになったジッパーが閉められるところから始まる。
 なんだこりゃと思ったが、死体袋のジッパーだった。主人公の一人称視点だったのだ。
 もちろん、小説は一人称小説。
 自分がこの立場におかれたらかなりイヤだ。いや、目茶目茶イヤだ。死が迫ってくるのに、叫ぶことものたうち回ることも出来ない。怨霊や殺人鬼は登場しないが、立派なホラーである。
 かなり下品なオチはテレビでは無理じゃないかなと思ったが、多少の深読みが必要な感じで上手くごまかしてある。そのまま映像化したら成人指定だ。

 日本では事件性のない心臓マヒが原因とされる死体を、わざわざ解剖して死因の特定はしないだろう。
 そもそも、検察医自体の数がかなり少ないと聞く。だから、この作品のような「死んでないのに解剖される」ということはまずないと思われる。
 土葬はごく一部の地域に限られているから、エドガー・アラン・ポーの『早すぎた埋葬』の心配もない。
 だが、火葬場の職員が火葬炉から焼き終えた骨を引き出した時に、時折、中で死体が生き返って暴れた後を見つけるという。
 『早すぎた火葬』と言ったところか。もっとも、これは単なる都市伝説の一つだろう。
 『早すぎた鳥葬』だったら、いやだよなぁ。ゆっくりとした死なんてもんじゃないぞ。

B000TZF99I.jpg『スティーヴン・キング 8つの悪夢:フィフス・クォーター』(2006) NIGHTMARES AND DREAMSCAPES: FROM THE STORIES OF STEPHEN KING オーストラリア/アメリカ

監督:ロブ・ボウマン 製作:マイク・ローブ 製作総指揮:ビル・ヘイバー、ポーラ・ワグナー 原作:スティーヴン・キング 脚本:アラン・シャープ 撮影:ベン・ノット、ジョン・ストークス 音楽:ジェフ・ビール
出演:ジェレミー・シスト、サマンサ・マシス、ロバート・マモーネ、ピーター・オブライエン

 7年の刑期を経て、仮出所で妻と息子の暮らすトレーラーハウスへと戻った主人公。だが、その夜に友人が銃で撃たれ、瀕死の状態でやって来た。
 強盗事件で奪った現金をほとぼりが冷めるまでとある場所に埋め、その場所を四枚に分けて四人の男が持っている。それがすべて揃わないと、現金の在処は分からない。
 友人は自分が持っている地図を買い取ると仲間の一人に誘い出され、地図を奪おうとした相手に撃たれたのだ。
 地図を残して死んだ友人の仇を討つため、そして金のために主人公はまたもや犯罪に手を染めていく。

 ホラーでもSFでもない。犯罪物、復讐物である。銃撃戦もあり、悪党は何人も死ぬ。
 ラストの謎解きは映画独自の物だ。そもそも原作には妻や息子は登場せず、ひたすら主人公が復讐と金のために人殺しをするストーリーだ。謎の答えは、なかなかに考えられた面白いものだ。だが、あの謎は地図を持った悪党が4人頭を捻って考えても、絶対に解けなかったに違いない。
 シリーズ中では異色作だが、キングにはスーパーナチュラルが関わらない作品も多い。『スタンド・バイ・ミー』や『刑務所のリタ・ヘイワース』(映画化名『ショーシャンクの空に』)などが有名だ。
 ちなみに、原作によると、主人公が収監されていたのも同じくショーシャンク刑務所だったりする。

B000TZF99I.jpg『スティーヴン・キング 8つの悪夢:ロードウイルスは北に向かう』(2006) NIGHTMARES AND DREAMSCAPES: FROM THE STORIES OF STEPHEN KING オーストラリア/アメリカ

監督:セルジオ・ミミカ=ゲッザン 製作:マイク・ローブ 製作総指揮:ビル・ヘイバー、ポーラ・ワグナー 原作:スティーヴン・キング 脚本:ピーター・フィラルディ 撮影:ベン・ノット、ジョン・ストークス 音楽:ジェフ・ビール
出演:トム・ベレンジャー、マーシャ・メイソン

 原題は『THE ROAD VIRUS HEADS NORTH』。
 映画の邦題は『ロードウイルスは北に向かう』だが、新潮文庫の『幸運の25セント硬貨』に収録された小説版の邦題は『道路ウイルスは北にむかう』となっている。
 『ロード』と『道路』。意味は同じだし、語感も似ている。良くできたダジャレだ。だが、少々出来すぎで、今一つ面白味に欠ける。やはり、ダジャレには「そりゃ無理だろ」という強引さが重要だとオレは思うのである。
 翻訳者の白石朗氏は「そもそもダジャレじゃない」とおっしゃるかも知らないが。

 主人公キンネルはメイン州はデリーに住む50歳の売れっ子ホラー作家。両親とも若くしてガンで失っており、自分もいずれはガンで死ぬのではないかと、ガン恐怖症に取り付かれている。
 ボストンでのサイン会の折に、結腸の検査を受けた結果、異常が見つかり、来週にはその精密検査を行うこととなった。
 不安に揺れる帰り道、ボロ屋で開かれているガレージセールに立ち寄ったキンネルは、そこで若くして自殺した無名作家の絵を見つける。獲物を狙う獣のような笑みを浮かべて、何かに向かって車を走らせる男を描いたその絵のタイトルは『ロードウイルスは北に向かう』。
 惹き付けられるような物を感じて、キンネルはその絵を購入した。そして、その絵は、時間の経過と共に少しずつ変化していくのだった。

 『8つの悪夢』も折り返しを過ぎた5話めとなる。主人公のキンネルを演ずるのはトム・ベレンジャーだ。
 テレビ用映画ということもあり、あまり残酷な描写のなかったこのシリーズだが、『ロードウイルスは北に向かう』では、惨殺シーンや生首などが登場し、ショッキングな映像がある。
 ぶった切られたようなラストは、原作とほぼ同じ。だが、原作が読書の想像力を刺激して余韻を残すのに対し、映画版は「それでどうなったの?」と感じる部分もある。やはり、小説と映画はメディアとして違うのだ。

B000TZF99I.jpg『スティーヴン・キング 8つの悪夢:ハワードに何が起こったか』(2006) NIGHTMARES AND DREAMSCAPES: FROM THE STORIES OF STEPHEN KING オーストラリア/アメリカ

監督:ミカエル・サロモン 製作:マイク・ローブ 製作総指揮:ビル・ヘイバー、ポーラ・ワグナー 原作:スティーヴン・キング 脚本:ローレンス・D・コーエン 撮影:ベン・ノット、ジョン・ストークス 音楽:ジェフ・ビール
出演:ロン・リヴィングストン、ヘンリー・トーマス

 原作の『争いが終わるとき』では語り手である主人公ハワードはフリーのライターだが、映画ではドキュメンタリー映画の監督となっている。活字媒体から映像媒体になったことを考えると、妥当な変更ではあるが、『アルジャーノンに花束を』を思わせる原作のラストから少々遠ざかってしまったのは残念。

 世界が終わりつつある日。ハワードは一人ビデオカメラに向かって事の顛末を話し始める。
 自分にはボビーというがいたこと。ボビーは天才児だったこと。そのボビーが戦争や争いを続ける人類を何とかしようと研究を始めたこと。そして、すべての問題は、水にあるという結論に達したこと。

「水がいけないんですよ。そこでこの浄水器を通した水に試薬を垂らすと、ほら」
 ってんでは、浄水器のインチキ訪問販売員だが、ボビーの発見はそんな物ではない。テキサスのある街では凶悪犯罪がまったく発生していないことに気付き、そこの井戸水を分析した結果、ある物質を発見したのだ。それは生物から闘争心を奪う。
 ボビーとはワードは大規模なプロジェクトを実行し、濃縮した水を世界中に振りまく。

 ビデオカメラのモニターには録画時間や録画日などのデータが表示されている。この録画日は2011年と未来の日付だ。
 物語には超常現象は登場せず、SFとして書かれている。星新一のショートショートにも同じような話があった記憶がある。オチの皮肉さも星新一的だ。

B000TZF99I.jpg『スティーヴン・キング 8つの悪夢:アムニーのラストケース』(2006) NIGHTMARES AND DREAMSCAPES: FROM THE STORIES OF STEPHEN KING オーストラリア/アメリカ

監督:ロブ・ボウマン 製作:マイク・ローブ 製作総指揮:ビル・ヘイバー、ポーラ・ワグナー 原作:スティーヴン・キング 脚本:エイプリル・スミス 撮影:ベン・ノット、ジョン・ストークス 音楽:ジェフ・ビール
出演:ウィリアム・H・メイシー、ジャクリーン・マッケンジー、トーリー・マセット、シグリッド・ソーントン

 主人公アムニー・クラウドは1938年のロサンゼルスに事務所を構える私立探偵。
 美人秘書と美人な依頼人、街を歩けば銃撃戦に巻き込まれる、まるでハードボイルド小説に登場するか絵に描いたかのような私立探偵だ。
 いや、彼は事実……

 普通ならばオチになるような話の展開が、中盤で明らかになる。そして、そこからがこの作品の真の始まりである。
 ある朝から、まったく変わってしまったアムニーの世界。そして彼の事務所に一人の男が訪れる。男はアタッシュケースから、一風変わったブリーフケースを取り出した。SONY、VAIOと書かれたそれはコンピューターというものらしい。そして、アムニー最後の事件が開始された。
 原作の短編小説の邦題は『アムニー最後の事件』となっている。『8つの悪夢』では『アムニーのラストケース』となっている。これはケースが入れ物のケースと事件のケースをかけたダブルミーニングとなっているからだ。
 どうでもいいことだが、原作ではSONYではなくて東芝のパソコンを使っている。ダイナブックか。型番はT-1000というから、液体金属で出来ているのかも知れない。
 ここからどのように話が進んでいくかは、観てからの、あるいは原作を読んでからのお楽しみ。微妙に違っているので、両方とも読んで観てがお勧め。
 アメリカ人も飛び降り自殺をする時は、靴を揃えて脱ぐのか。あれは日本の風習(風習って言うのか?)かと思っていた。
 そして、すべてを奪われたアムニーが、一風変わった復讐に取りかかる。

 1930年代後半のロサンゼルスの街並みが再現されている。劇場用映画ではなくテレビ用映画であることを考えると、充分すぎる出来だ。
 この作品でディクス3枚組の『8つの悪夢』のDISC1が終了。SFXにイギリスロケ、1938年の再現と実に充実した一枚だ。しかも、まだ二枚、エピソードにして五話が残っている。
 WOWOWで『バトルグラウンド』が放送されたのを観て、残りのエピソードの放送が待ちきれずに、レンタルで借りてきてしまったが、オレ正解。セル版も10月に出たばかりだが、定価で8,000円近くと高いんだよね。そのうち廉価版が出るかな?三枚組だから難しいか。

B000TZF99I.jpg『スティーヴン・キング 8つの悪夢:クラウチ・エンド』(2006) NIGHTMARES AND DREAMSCAPES: FROM THE STORIES OF STEPHEN KING オーストラリア/アメリカ

監督:マーク・ハーバー 製作:マイク・ローブ 製作総指揮:ビル・ヘイバー、ポーラ・ワグナー 原作:スティーヴン・キング 脚本:キム・レマスターズ 撮影:ベン・ノット、ジョン・ストークス 音楽:ジェフ・ビール
出演:アイオン・ベイリー、クレア・フォーラニ

 スティーヴン・キング原作の短編を映像化したシリーズ。8つの悪夢というからには当然、全8話。
 原作の『ナイトメアズ&ドリームスケープ I、II』にはそれ以上の数が収録されていて、すでに長編映画か済みの『ナイトフライヤー』などもある。『クラウチ・エンド』はIIに収録されている。
 文庫本だと文春文庫から出ている『ドランのキャデラック』、『いかしたバンドのいる街で』、『メイプル・ストリートの家』、『ブルックリンの八月』がそれだ。
 2006年製作と最近の作品なのだが、DVDは英語音声のみ。吹替派の人は注意。

『クラウチ・エンド』と言えば、クトゥルフ神話で有名なホラー作家のピーター・ストラウブが住んでいた実在の街。作品自体がストラウブとクトゥルフ神話に捧げられたオマージュとなっている。
 アメリカ人夫婦がクラウチ・エンドに住む知人から夕食に招待されたところから物語は始まる。タクシー運転手には「クラウチ・エンドは外国人が行くところじゃない」と反対される。だが、ホラー作品でそういった警告を受けて素直に従ったためしがない。この夫婦もその警告を無視する。
 クラウチ・エンドは一見普通の田舎町だが、時に別の次元へと繋がることがある。その狭間に落ちてしまった夫婦が直面する恐怖とは。
 もちろん、触手状のモンスターも登場するが、それ以上に二人の子供が怖い。
 ふと一歩道を外れたばかりに、この世から別の世界に行ってしまいそのまま戻れない。日本で言うところの『神隠し』か。
 まだカーナビを付けていなかった頃に山道で車が迷ってしまい、ひょっとしたらこのまま戻れないんじゃないかなとふと思った記憶がある。あのまま神隠しになっていたのかも知れない。まぁ、神隠しに遭うのは普通は子供で、神様もこんなオッサンは連れて行かないだろうが。

B000TZF99I.jpg『スティーヴン・キング 8つの悪夢:バトルグラウンド』(2006) NIGHTMARES AND DREAMSCAPES: FROM THE STORIES OF STEPHEN KING オーストラリア/アメリカ

監督:ブライアン・ヘンソン 製作:マイク・ローブ 製作総指揮:ビル・ヘイバー、ポーラ・ワグナー 原作:スティーヴン・キング 脚本:リチャード・クリスチャン・マシスン 撮影:ベン・ノット、ジョン・ストークス 音楽:ジェフ・ビール
出演:ウィリアム・ハート

 ウィリアム・ハートは殺し屋。今晩も、依頼を受けておもちゃメーカーの社長を殺して来たところだ。
 そして、高級マンションの上層階にある自宅に戻った殺し屋の元に、おもちゃの兵隊とヘリコプター、ジープの玩具セットが届けられる。そして、そのケースの裏には、特典付きのシールが……

 おもちゃ会社の社長はおもちゃ造りの名人で、彼の作った人形にはまるで魂が乗り移っているかのようだった。おもちゃの兵隊たちには比喩ではなくまさに魂が乗り移っていた。
 社長の仇を討つべく、M-16やバズーカ砲で殺し屋を攻撃してくる兵隊たち。殺し屋は、全長5センチほどの敵を相手に、マンションの一室で死闘を繰り広げるのだ。
 ウィリアム・ハートの悪役というのも珍しい。全編を通してセリフらしいセリフはしゃべらず、せいぜい痛みに耐えかねて「うっ!」とか「ぐわっ!」と言うぐらい。しゃべってしまうと善人声なのがバレバレだからだろうか。
 これはひょっとして爆発オチかと期待したのだが、兵隊たちは全滅してしまう。そして、大きな風呂に入ったウィリアム・ハートだが、安心するのはまだ早かった。

 最初はCGで作られているかと思った兵隊たちだが、どうもよく見ると人間が顔に緑色を塗りたくるか特殊メイクをするかして演じているシーンが多いようだ。
 ホラーかと言われると、ホラーじゃない気がするが、トワイライトゾーン的で個人的には面白かった。
 ラストには思わず大笑い。
 原作はキングの短編集『深夜勤務』に収録されている。

B0009H9ZUK.jpg『フランケンシュタイン』(1994) MARY SHELLEY'S FRANKENSTEIN 123分 アメリカ

監督:ケネス・ブラナー 製作:フランシス・フォード・コッポラ、ジェームズ・V・ハート、ジョン・ヴェイチ 原作:メアリー・シェリー 脚本:スティーヴン・レディ、フランク・ダラボン 撮影:ロジャー・プラット 音楽:パトリック・ドイル
出演:ロバート・デ・ニーロ、ケネス・ブラナー、トム・ハルス、ヘレナ・ボナム=カーター、エイダン・クイン、イアン・ホルム、ジョン・クリーズ、シェリー・ルンギ、リチャード・ブライアーズ、アレックス・ロー

 なぜか観逃していた一本。
 メアリー・シェリーの原作にかなり忠実に映画化されているというが、原作を読んでいないので詳しいとことは分からない。ともあれ、1930?1940年代に映画化された『フランケンシュタインの怪物』系の映画とは大きく異なるのはたしか。
 もちろん、メル・ブルックスの『ヤングフランケンシュタイン』とも異なる。

 若き医学生フランケンシュタインによって新たなる生命として生み出された怪物は、過去の映画化作品と違って、犯罪者や異常者の脳を使われているのではなく、フランケンシュタインの恩師の脳を使われている。そして、その記憶はほんの少しだけ受け継がれているが、基本的にまったく新しい命である。そして、自己の存在について悩む。普通の人間とは違う自分は何故生まれたのか悩むのだ。哲学的である。この怪物役にロバート・デ・ニーロが配役されたのも納得だ。
 むやみに暴れ回る怪物ではないが、しかし人々から怖れられ嫌われていくうちに残忍さも身につけていく。最初から怪物だったわけではない。人間が彼を怪物にしたのだ。

 フランケンシュタインの恩師を演ずるのはジョン・クリーズ。無精ひげを生やしているので、最初は気づかなかった。
 シリアスな役のジョン・クリーズというのも珍しい。そしてこれが渋いんだ。

 123分にこれでもかとストーリーが詰め込まれているため、展開が早すぎる感じはある。もう20分ぐらい長ければ、また別の感想を生む作品となっただろう。

B000M9CDD6.jpg『鳥』(2006) DIE KRÄHE(THE CROWS) 94分 ドイツ

監督:エッツァルト・オネッケン 製作:マーティン・ガンツ、ロベルト・スタイマーリング 脚本:スヴェン・ボッチャー 撮影:ヨッヘン・スタブレイン 音楽:マウルス・ロナー
出演:スザンナ・シモン、ステファン・ユルゲンス、ナイキ・ファーマン、ドリス・クンストマン、マチアス・フレイホフ、ジュリアン・ギビンス、トーマス・メインハード、ルッツ・プロッシュバーガー、イボンヌ・ションヘル

 ツタヤで見つけた時は表紙だけ見て、「おっ、ヒッチコックの『鳥』のリメイクか」と思って借りてきた。そうしたら、オープニングクレジットがドイツ語ばかり。
 出演者やスタッフには、オネッケンやガンツ、ユルゲンスなどのいかにもドイツ人の名前が並ぶ。
「ドイツ映画なのか」と観ていたらタイトルが出た。
『DIE KRÄHE』
 KRÄHE? 鳥だったらVogelだよな。学生時代に使った独和辞典を十数年ぶりに開いて調べてみるとKRÄHEとはカラスのこと。英語にするとCROWだ。
 これは『鳥』ではなくて、横棒が一本少ない『烏』だったかとDVDを取り出してみるが、レーベルに大きく書かれた文字はやはり『鳥』(とり)。
 ふーむ、と観進めていくが、やはりヒッチコックの『鳥』は関係ない! 鳥が襲ってくること自体はオマージュだが、それ以外に繋がりはない。

 DVDは発売元:プライムウェーブの販売元:アルバトロス。
 アルバトロスか……やはりな。ツタヤが旧作100円レンタルだったので手を出したが、騙されたぜ。しかし、100円とはいえもったいないので観る。
 序盤はつまらない。庭でやっているバーベキューにカラスが襲来して、肉を奪っていくが、大して面白くない。
 ところが、妊娠七ヶ月の獣医である女性主人公が、カラスの異常に気付いて動き始めた辺りからぐいぐいと面白くなっていった。
 どうやらカラスは人為的に知能を高められたらしい。主人公は警告を発するが、妊娠で精神的に不安定なだけだと、夫ですらその警告を無視する。だが、カラスの数はどんどん増えていき、ついには平然と人間を襲い始める。
 委員会はカラスを毒餌で殺す決定を下すが、カラスは毒餌を見破り人間に対する攻撃性を増すだけだ。委員会に乗り込み、中止を訴える主人公だが……

 凡庸なストーリーだが、主人公を妊婦にすることによってサスペンスを増している。
 パニック映画でありがちな、主人公の警告を誰もが無視することについての説得力ともなっているし、大きなお腹を抱えた女性がカラスに立ち向かっていくのは絵になる。
 主人公が他人に笑われたり変人扱いされても問題に立ち向かっていくのは、なによりもお腹の中にいる赤ん坊が安全で暮らせる世界を守るため。自分の娘のためなのだ。
 カラスの大群を描写するCGは若干粗いが、それを忘れさせてくれる。
 主人公が乗っている車はフォルクスワーゲンのポロ。弁護士である夫が乗っているのがアウディ。どちらもドイツ車だ。
 それに対して、主人公の警告を無視する委員会の議員が乗っているのは日産。
 毒餌を撒く作業員が乗っているのが三菱。
 どちらも日本車。イメージが悪い人物が乗っているのは日本車か。すっげー分かりやすい。

B000V97JO0.jpg『アドレナリン』(2006) CRANK 94分

監督:ネヴェルダイン、テイラー 製作:マイケル・デイヴィス、トム・ローゼンバーグ、スキップ・ウィリアムソン、リチャード・ライト、ゲイリー・ルチェッシ 製作総指揮:ピーター・ブロック、マイケル・パセオネック、エリック・リード、デヴィッド・スコット・ルービン 脚本:ネヴェルダイン、テイラー 撮影:アダム・ビドル 編集:ブライアン・バーダン 音楽:ポール・ハスリンジャー
出演:ジェイソン・ステイサム、エイミー・スマート、ホセ・パブロ・カンティージョ、エフレン・ラミレッツ、ドワイト・ヨーカム、レノ・ウィルソン、キーオニー・ヤング、カルロス・サンス、グレン・ハワートン、ヴァレリー・レイ・ミラー、チェスター・ベニネトン

 組織の殺し屋が、敵対する悪党から毒薬を注射されてしまう。
 あと一時間の命だと知った殺し屋は怒り狂い、悪党を殺すべくロサンゼルスの街へと飛び出す。ひたすらに駆け回る殺し屋。あれ? 一時間が過ぎても死んでない。
 知人の医者に連絡が付き、毒薬はペキンカクテルという中国製の物で、副腎を破壊するのだが、アドレナリンを出し続けていればその作用を抑制できるというのだ。
 そのため、コカインを吸ったり、他人とケンカをする。時には恋人と中華街の人通りの多い大通りで公開エッチをしたりしながら、ひたすらアドレナリンを出して命を繋ぎ、悪党を追い求める。

 マグロはエラが硬く、自力でエラを動かして水を取り入れることが出来ないため、泳ぎ続けて口から水を取り込んでいないと呼吸が出来ずに死んでしまう。それを思い出した。
 ついでに、間寛平が演ずるジジイも動き続けないと死んでしまうのを思い出した。
「わしゃぁ、止まると死ぬんじゃぁぁ」
 この殺し屋も止まると死んでしまうのである。

 殺し屋を演ずるのは『トランスポーター』シリーズのジェイソン・ステイサム。
 『トランスポーター』でもカリチュアライズされたマッチョマンを演じていたが、この作品ではさらにそれを突き進めて、始終険しい顔の殺し屋が端から見ているとバカなことをやり続ける。
 白バイ警官から白バイを奪った時は、意味もなく何周もするマックスターンの連続。マックスターンとは『マッドマックス』で暴走族がやっていた、バイクの前輪をブレーキで固定したまま、それを中心としてフルスロットルで後輪を円形に回転させ、黒いタイヤ跡を路面に描く技のことだ。
 そして、素っ裸に患者衣という格好のため、ケツ丸出しでバイクを疾走させるステイサム。患者衣になったのは変装のためだが、パンツまで脱ぐ必要はなかったんじゃ・・・・・・

 建物の中でケンカを始めると、外から見たその建物の壁がブワッと膨れたり、重要なキーワードが字幕として表示されたりと、独特な演出が使われている。
 カメラワークも独特で、目新しいと言えば目新しいが、うっとうしいと言えばうっとうしい。
 これはプロモかCM出身の監督だろうなと思ったら、案の定CM畑の人のデビュー作だった。
 こういうのは一発芸みたいなものなので、二作目以降がどうなるかが勝負だ。

 公開エッチや、ステイサムのケツ。切断された腕など、少々下品なシーンもあるので注意のこと。
 最初っから最後まで笑いっぱなしのバカ映画だった。

 この2007年の10月から11月。
『沈黙のステルス』、『沈黙の激突』、『沈黙の報復』の三作が連続で、ごく一部の劇場で公開されている。
 東京か大阪まで行けば観られるが、さすがにそこまでする気はないので、素直にレンタルになるのを待つ。数ヶ月先には出るのだろう。

 ともあれ、こうして23本のセガール主演作をひたすら観続けた。
『沈黙の陰謀』辺りが一番精神的にきつかった。
「なんで、どれもこれも同じような映画を毎日観なきゃいけないんだ……」
 だが、その谷を抜けてしまうと、逆に観ないと落ち着かないようになってしまった。
 体内のセガール分が減ってくると、意欲が落ちてくるのだ。これはもう、セガール依存症である。

 セガール出演作を一言で言うならば、これらはセガール映画という映画の一ジャンルだということだ。
 アクション映画やコメディ映画、ラブロマンスと言った映画には様々なジャンルがあるが、その一つとしてセガール映画というのが存在するのだ。
 セガール映画はアクション映画に近いものだが、しかし別物だ。だから、セガールが圧倒的に強くて、いつも一撃で敵を倒したとしても、それはセガール映画の文法なのだ。
 圧勝してこそのセガール。観客は誰も苦戦するセガールなんて求めてはいない。敵に打ちのめされて、そこから苦労を乗り越えて腕を上げ、ついにラストで勝利するなんてのは、もはやセガールではない。セガールは最初から最強でなくてはならないのだ。
 その対照的なアクションスターとしてジャッキー・チェンがいる。ジャッキーもジャッキー映画という一ジャンルなのかも知れないと思うわけだが、ジャッキーは決して圧勝しない。常にギリギリの戦いを強いられ、苦戦に苦戦を重ねてようやく勝利する。
『蛇拳』や『酔拳』などの初期作品では、最初は弱かったジャッキーが、猛修行の結果として技を取得し、それでもなおラスボスと時に劣勢な死闘を繰り広げて、最後にボロボロになりながらも勝つ。それがジャッキーだ。
みんな、苦戦したり逃げ回ったりするジャッキーが観たくて映画館に行っているわけで、一撃圧勝のジャッキーなんか観たくないのだ。

 セガール映画が一ジャンルとなると、当然観客への窓口は狭くなってくる。
 観る人は毎作観るが、観ない人は一切観ない。じつにキッパリしている。
 だから、人によっては、というか多くの人にとってセガール映画は面白くないだろう。
 ムスッとしたオヤジが、毎回勝っているだけ。だが、ファンにはそれがたまらない。
 ホラー映画がどうしてもダメな人がいる。コメディ映画を観ても、笑いどころがつかめない人もいる。それと同じく、セガール映画がダメな人もいる。
 だから、セガール映画を観てつまらなくても、それはイコール駄作とは言い切れない。その人がセガール映画を理解できなかっただけの可能性もあるのだ。
 って、なんでここまでセガールを擁護してるんだよ、オレ。

 ともあれ、セガールの戦いは続く。まだまだ続くだろう。
 そしてセガール映画のファンの戦いもまだまだ続くのだ。

B000XG9PLG.jpg『沈黙の傭兵』(2006) MERCENARY FOR JUSTICE 96分 アメリカ

監督:ドン・E・ファンルロイ 製作:ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ、ダニー・ラーナー、レス・ウェルドン 製作総指揮:アヴィ・ラーナー、スティーヴン・セガール、トレヴァー・ショート 脚本:スティーヴ・コリンズ 撮影:ドン・E・ファンルロイ 音楽:スティーヴン・エドワーズ
出演:スティーヴン・セガール、ジャクリーン・ロード、ロジャー・グーンヴァー・スミス、ルーク・ゴス、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、エイドリアン・ギャレイ、ラングレー・カークウッド、レスリー=アン・ダウン

 戦死した戦友の妻と息子が誘拐され、その解放と引き替えに傭兵のセガールはある任務をやることになる。南アフリカの刑務所から武器商人の息子を奪い出せというのだ。
 集められた他の傭兵たちと共に、南アフリカに飛ぶセガール。そして、彼らを追うCIA。
 シンプルかと思われたストーリーは、しかし、何やら意味不明になっていくのであった。

 セガールが何をやりたいのか良く分からん。戦友の妻と息子を誘拐した黒幕を倒したいのは分かるが、なぜ他の傭兵たちまで殺さねばならないのか。
 観客の裏をかこうとして、迷走してしまったとしか思えない。素直なストーリーにしておけば良かったと思う。
 冒頭の、政府軍+フランス軍対傭兵部隊の戦闘シーンはなかなか迫力がある。
 銃撃戦も派手だし、爆発シーンも派手だ。『プライベートライアン』のノルマンディ上陸作戦などと比べてしまうともちろん大きく見劣りがするが、作品の規模や予算が全然違う。これはこれでいいのだ。ただし、前置きに過ぎず本編とはほとんど関係なかったりする。
 一撃で相手を倒してしまうセガール拳も健在。戦うシーンは少ないが、トイレでの暗殺者との戦いは、見事圧勝。

 セガールが戦友の敵を取るためとはいえ、その作戦中に銀行の警備員や刑務所の看守など、直接関わりのない人がバンバン殺されるのには違和感を覚える。
 傭兵というのは正義の味方ではないのは確かだが、これではせっかくのアクションから爽快さが消え去ってしまう。もうちょっとなんとかならなかったものか。
 娯楽アクション映画であるのならば、分かりやすさや痛快さは欠かせないものだと思うが、その点で疑問を感じずにはいられなかった。

B000P5FFB4.jpg『沈黙の奪還』(2006) SHADOW MAN 95分 アメリカ

監督:ミヒャエル・ケウシュ 製作:スティーヴン・セガール、ピエール・スペングラー、ウィリアム・B・スティークリー 脚本:スティーヴン・コリンズ、ジョー・ハルピン、スティーヴン・セガール 撮影:ジェフリー・ホール
出演:スティーヴン・セガール、エヴァ・ポープ、イメルダ・スタウントン、ヴィンセント・リオッタ、スカイ・ベネット、マイケル・エルウィン

 密室に閉じこめられたセガールが、乗り込んで来るであろう敵と戦うべく、室内にある物、例えばガスの配管とか電気ケーブルなどを利用してショットガンなどの即席武器を短時間で作り上げるシーンが面白い。
『沈黙の要塞』でペットボトルを利用して即席のサイレンサーを作ったことがあるが、あれをさらに拡大したようなものだ。
 いかにも実戦を汲んできたプロといった様子で、格好いい。

 今回の舞台は、またもやルーマニア。おそらく、ルーマニアが映画撮影を誘致していて、安い金額でカーチェイスや爆発シーンが撮れるのだろう。人件費も安いだろうし。
『マトリックス』はオーストラリアで、『ロード・オブ・ザ・リング』や『ラスト・サムライ』はニュージーランドで撮影されたりと、ハリウッド映画がハリウッド以外の場所で撮影されることは当たり前になっている。『エイリアン』や『スター・ウォーズ』のスタジオ撮影は、ロンドンで撮られたという記憶がある。やはり、物価や人件費の面で有利なのだろう。特に、人件費については、アメリカではユニオンが強くて、労働条件や最低賃金などがきっちりと決まっているので、出費も大きいのだろう。

 娘と、今は亡き妻の父親と共にルーマニアを訪れたセガールは、誰も彼もが敵という四面楚歌状態に陥る。
 しかも、娘は誘拐、義父は爆殺されてしまう。身に覚えのない殺人ウイルスのデータを持っていると思われたセガールは、CIA、ルーマニア警察、犯罪組織に追われながらも、娘を取り返すべくルーマニアの街を疾走することとなる。

 格闘シーンは少ないが、やはりセガールの動きにキレが戻ってきている。敵へのラリアットもなにやら久しぶりだ。
 ラストはあっけなく銃撃戦で終わるかと思いきや、どんでん返しが待っている。
 そして、セガール必殺の気功術が、その威力を発揮する。これがもう、北斗神拳的破壊力。内気功ってやつか?

 それほどだれることなく95分を観ることが出来た。
 殺人ウイルスのことなどどうでもよくて、ひたすら「娘を返せ」という思いだけで戦い続けるセガールが良い。やはり、主人公の目的がはっきりしていると分かりやすいのだ。

B000OPOBGU.jpg『イントゥ・ザ・サン』(2005) INTO THE SUN 94分 アメリカ

監督:ミンク 製作:フランク・ヒルデブランド 製作総指揮:スティーヴン・セガール 原案:スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン 脚本:トレヴァー・ミラー、スティーヴン・セガール、ジョー・ハルピン 撮影:ドン・E・ファン・ル・ロイ 音楽:スタンリー・クラーク
出演:スティーヴン・セガール、マシュー・デイヴィス、大沢たかお、エディー・ジョージ、ウィリアム・アザートン、ジュリエット・マーキス、ケン・ロウ、豊原功補、寺尾聰、伊武雅刀、ペース・ウー、栗山千明、山口佳奈子、大村波彦、本田大輔、コロッケ

 セガールが日本に帰ってきた。血と火薬の匂いを振りまきながら…

 セガールの動きにキレが戻ってきた。もちろん、全盛期とは比べものにならないが、アクションシーンをすべてスタントマンがやっていた頃と比べると数段マシだ。
 カメラはセガールに寄り気味のアップが多く、引いたショットが少ないので全体が映らずごまかしている部分もあるが、連続手技は健在だった。
 体重も少し絞ったようで、アゴの肉などが減ってすっきりしている。
 オープニングにまったく意味がないが、気にするな。
 東京都知事立候補者が暗殺されることに意味がないが、気にするな。
 セガールの相棒としてFBIの若い白人捜査官が同行するがほとんど活用されないまま消えてしまうが、気にするな。

 日本の東京を舞台に、急速に力を付けつつある若手ヤクザ組織と旧来からのヤクザ組織の戦い、その渦中に飛び込んでいくCIAエージェントであるセガールの姿を描く。
 昔気質のヤクザに伊武雅刀、財界の大物に寺尾聰、そしてクラブのコメディアンにコロッケと、なかなかの大物を揃えている。えっ?コロッケ?
 もの足りないのが、若手ヤクザのトップを務める大沢たかおだ。本人は『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』のジョン・ローンや『ブラック・レイン』の松田優作を気取っているつもりかも知れないが、とてもじゃないが及ばない。どう見ても、いきがっているだけのチンピラがいいところだ。
 じゃあ誰ならばいいかと言われると、日本の芸能界には詳しくないオレは困ってしまうわけだが、もういっそのことセガール剣太郎にしてしまって、夢の親子対決にしてしまってはどうだろうか。劇中で藤谷文子のアップもあることだし。といっても、テレビに『ガメラ 大怪獣空中決戦』が映っているだけだが。てか、ヤクザが『ガメラ』観てんなよ。

 任侠映画とくれば、ラストは敵本拠地への殴り込み。
 セガールとその仲間は、正々堂々と正面の門から殴り込む。
 そして、日本刀と長ドスによるチャンバラが始まる。
 テレビの時代劇を観れば分かるが、チャンバラは格闘アクションと比べると肉体的能力が必要とされない。おかげでセガールは大活躍。ヤクザどもをバッタバッタと斬り捨てる。
 そして、愛した女を殺したヤクザを見つけ、「叩き殺してやる!」と叫ぶ。そして、峰打ちで頭をめった打ちにして、本当に叩き殺す。日本刀の使い方としては微妙に間違っている気がするが、セガールの怒りを感じさせる。
 ついには、ラスボスの大沢たかおと対決するのだが……三船敏郎や勝新太郎が生きていたらなぁ。

 えっ?間違った日本の描写が多すぎて頭に来るって?
 ……あのねぇ、そんなことを気にしていたらセガール映画は観られませんよ。というか、正しいことを伝えるために作った映画じゃなければ、そんなのどうでもいいんです。
「こいつはヘロインだ。日本ではシャブと呼ばれている」なんて、ダウナー系ドラッグとアッパー系ドラッグを同じ物だと言ってしまうのはちょっとどうかと思いますが、アメリカの観客にはシャブ(覚醒剤)は馴染みがないでしょうから、これでいいのでしょう。
 ならば、コカインにすればという意見もあるでしょうが、ミャンマーから密輸してくるというアジアっぽさを重視するとヘロインになってしまうのでしょう。

B000XG9PKW.jpg『沈黙の追撃』(2005) SUBMERGED 96分 アメリカ

監督:アンソニー・ヒコックス 製作:マイケル・P・フラニガン、ダフネ・ラーナー、デヴィッド・ヴァロッド、パウル・デ・ソウサ 製作総指揮:ボアズ・デヴィッドソン、ダニー・ディムボート、アヴィ・ラーナー、スティーヴン・セガール、トレヴァー・ショート 脚本:アンソニー・ヒコックス、パウル・デ・ソウサ 撮影:デヴィッド・ブリッジス プロダクションデザイン:カルロス・ダ・シルバ 衣装デザイン:エルヴィス・デイヴィス 音楽:ガイ・ファーレイ
出演:スティーヴン・セガール、ヴィニー・ジョーンズ、ゲイリー・ダニエルズ、ウィリアム・ホープ、クリスティーン・アダムス、ニック・ブリンブル、アリソン・キング、P・H・モリアーティ、ロス・マッコール、スティーヴン・ダコスタ、ピーター・ヤングブラッド・ヒルズ、アダム・フォガティ、ウィリアム・タプリー

 格闘アクションは少ないが、それを感じさせない脚本だ。次から次へと展開が変わり、飽きている暇がない。
 脚本と担当したのは監督も務めたアンソニー・ヒコックス。『ワックス・ワーク』(1988)でデビューして、『サンダウン』(1991)や『ヘルレイザー3』(1992)などを手がけている。

 今回の敵は麻薬でもなければ武器売買でもない。マインドコントロールを操るマッドサイエンティストとの戦いだ。
 被験者を台にくくり付け、器具で無理矢理に目を開かせて暴力と恐怖に満ちた映像を見させるという、スタンリー・キューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』方式で、心を思うままに支配する。そして、何かのきっかけを元に暗示が発動して、人を殺すなどの行為を自在に取らせることができる。事後催眠というヤツで、チャールズ・ブロンソン主演ドン・シーゲル監督の『テレフォン』で扱っていたのと同じようなやつだ。

 悪の基地へと乗り組むために、刑務所に収容されていた元特殊部隊チームが恩赦を受けて出所し再び再結成する。
 爆発物のプロ。狙撃のプロ。情報収集のプロなどがいて、それぞれの紹介シーンでモノクロの静止画になるのがむやみにかっこいいい。
 このほかにも、ドンドンドンと三拍子でアップになっていくなど独特なカット割りが多い。ちょっと多すぎて、多少は鼻につく感じではある。

 最初から最後までチームで動き、チームで戦う。そのおかげでセガールの負担が減り、格闘シーンが少ないのが気にならないというのもあるだろう。
 特に『ミーン・マシーン』や『スナッチ』などに出演していたタフガイのヴィニー・ジョーンズの投入は大きい。ヴィニー・ジョーンズは元プロのサッカー選手だけに肉体能力が高い。派手な格闘はそちらにまかせて、セガールはリーダー役に徹している。
 セガール映画にファンが求めているのは、もちろんセガール本人によるアクションだろうが、様々な理由でそれが難しくなってきたのならば、アクションの出来る人を脇に置いて、アクションパートを部分的に任せるという手はありだろう。
 今回のセガールは、多少身体の動きにキレが戻ってきた感じでもある。

 原題の『SUBMERGED』は潜水中といった意味だ。作中に潜水艦内のシーンはあるが、そちらよりもどこの誰がマインドコントロールされているか分からず、そいつが人々の中に潜水するかのように隠れているという意味だろう。

B000XG9PL6.jpg『沈黙の脱獄』(2005) TODAY YOU DIE 91分 アメリカ

監督:ドン・E・ファンルロイ 製作:ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ、フィリップ・B・ゴールドファイン、ダニー・ラーナー、スティーヴン・セガール、レス・ウェルドン 製作総指揮:マンフレット・ハイト、グレッド・コーチリン、ジョセフ・ローテンシュレイガー、アヴィ・ラーナー、ダニー・ラーナー、アンドレアス・ティースマイヤー、レス・ウェルドン 脚本:ケヴィン・ムーア、ダニー・ラーナー、レス・ウェルドン 撮影:ドン・E・ファンルロイ 編集:ロバート・A・フェレッティ 音楽:スティーヴン・エドワーズ
出演:スティーヴン・セガール、アンソニー・“トレッチ”・クリス、サラ・バクストン、マリ・モロウ、ニック・マンキューゾ、ロバート・ミアノ、ケヴィン・タイ

 格闘シーンがなぁ…セガールは後ろ姿や首から上が見切れているカットがほとんどなんだよなぁ…スタントマンによるダブルなんだろうなぁ…
 1951年生まれのセガールは、この映画が製作された2005年は54歳になる。確かに年だが、60過ぎのチャック・ノリスがまだ全力で戦っているのを見ると、やはり複雑な気分だ。腰を痛めたかなにかで、身体を壊してるんだろうか。
 アクションシーンで一番面白かったのは、ラスベガスのカジノ街における現金輸送車とパトカーのカーチェイス。『撃鉄2 -クリティカル・リミット-』のカーチェイスよりは落ちるが、ネオンきらめく街中で撮ったのは評価できる。
 カーチェイスのラストは大爆発で締める。だが、これがミニチュア撮影。予算の都合なんだろう。
 映画ラストのビル大爆発もミニチュア撮影によるもの。だが、出来は決して悪くない。低予算映画だろうが、それを工夫で補っているのだ。

 セガールは元泥棒。悪党から盗んでは貧しき者に分け与える義賊だ。
 しかし、愛する妻のために引退し、堅気の仕事に就く。それが現金輸送車の運転手だった。しかし、悪党の罠にはめられ、2000万ドル強奪と警官殺しの罪で刑務所に入れられる。
 そして、そこで知り合った黒人ギャングと一緒に刑務所から逃げ出す。だからタイトルは『沈黙の脱獄』。しかし、脱獄方法が安易で、チャールズ・ブロンソンの『ブレイクアウト』で初めて観た時はコロンブスの卵で面白かったが、それ以降に使うのは強引すぎるし手抜きだろう。
 アジア系ギャングが登場するシーンがあるが、その中の一人が格闘家の角田信朗にそっくり。顔つきもそうだが、ヒゲの形も同じだ。
 ラストはセガールがすごくいい人的なハートフル風味で終わるが、悪人相手とは言えセガールはバンバン殺しまくりで、ひょっとしたらこいつが一番悪い奴なんじゃねーのという気がする。

B000FBFRUW.jpg『撃鉄2 -クリティカル・リミット-』(2005) BLACK DAWN 96分 アメリカ

監督:アレクサンダー・グラジンスキー 製作:カマル・アブクハタール、スティーヴン・セガール、アンドリュー・スティーヴンス 脚本:マーティン・ホイーラー 音楽:デヴィッド・ワースト、エリック・ワースト
出演:スティーヴン・セガール、タマラ・デイヴィス、ジュリアン・ストーン、ジョン・パイパー=ファーガソン、ティモシー・カーハート

 昔、アクション映画に核兵器が登場した時は、『007ゴールドフィンガー』でジェームズ・ボンドが“007”秒前に止めたように、その爆発を阻止するのがヒーローの役目だった。
 それがいつからだろう、平気で核兵器が爆発するようになったのは。
 いつごろかというか、多分『トゥルーライズ』(1994)から。それ以来、『トータル・フィアーズ』(2002)などでスクリーンにキノコ雲が立ちこめた。

 セガールが演じるのはフリーのエージェントであるジョナサン・コールド。『撃鉄 GEKITETZ ワルシャワの標的』の続編にあたる。シリーズ物ばかりに思えるセガール映画だが、実際にシリーズになっているのは『沈黙の艦隊』『暴走特急』のケイシー・ライバック物二作と、この『撃鉄』シリーズ二作だけ。まぁ、実質的にはどれもあまり変わらない気もするが。
 今回はチェチェン人マフィアがロサンゼルスで起こそうとしている核テロを防ぐべく、セガールが奮闘する。
 しかし、格闘シーンがほとんどない。しかも、どうみてもスタントマンによるダブル。戦わないセガール。それじゃあ、あんたの意味ないじゃん。戦ってこそのセガールだろうに。
 代わりと言っては何だが、途中でのセガールが運転するゴミ運送ダンプと悪人たちのセダンとのカーチェイスがなかなか迫力がある。ダンプの運ちゃんかわいそ?。

 CIAエージェントが張り込んでいるのはマネキン倉庫。全裸のマネキン人形がずらりと並んでいる。舞台としては面白いので、ここで派手なアクションをやって欲しかったが、先ほども言ったとおり格闘シーンは少ない。まったくもってもったいない。

 そして、ラストはロサンゼルス沖せいぜい2、3キロメートルでの水中核爆発。
 5キロトンと言っていたから、15キロトンの広島原爆リトルボーイの三分の一の威力だが、直接の人的被害はないにしろ、環境汚染とかで大問題だろうに。ロスの魚介類は食えなくなるな。漁師も失業だ。
 もちろん、本来の爆発位置である高層ビルの屋上でドカーンといくよりかはいいのだが、安易に爆発させすぎじゃないのとも言いたくなる。
 あっ!『俺がハマーだ!』の1stシーズン最終回はいいんだよ、ハマーは。あっちはむしろ爆発してくれないと困る。「こんなものケチャップのフタと同じ」!

B0009G3FKM.jpg『ICHIGEKI 一撃』(2004) OUT OF REACH 85分 アメリカ

監督:レオン・ポーチ 製作:フランク・ヒルデブランド、ジェームズ・A・ホルト、ジーナ・ポーリー 製作総指揮:スティーヴン・セガール、アダム・グリーンマン、カイェタン・コワルスキ、ヤツェク・サモイロヴィッツ 脚本:トレヴァー・ミラー 撮影:リチャード・クルード 音楽:アレックス・ヘッフェス
出演: スティーヴン・セガール、アイダ・ノヴァクスカ、アグニェシュカ・ヴァグネル、マット・シュルツ、ロビー・ギー、クシシュトフ・ピチェンスキ、ニック・ブリンブル、ミュラー・イルマズ

 主人公ウィリアム(セガール)は森林に建てられた一軒家に住み、傷ついた動物の手当てをするなど自然保護活動をして暮らしている。
 もちろんセガールのこと。隠遁生活に入る前は情報部か特殊部隊か、そんな仕事をしていたようだ。
 悪人側がセガールのことを調べるが、「ヤツには過去がありません。まるで存在していないかのように真っ白です」と言っている。スパイ物などではありがちなセリフだが、そこまで徹底して過去を改竄できる力があるのならば、怪しまれない程度に偽造工作をすれば良いと思うんだが。ニセの職歴とか。、駐車違反の一件ぐらいはやってるとかさあ。

 孤独なセガールにとって、唯一の他人との繋がりは、ポーランドの孤児院で暮らす少女との文通だ。「もうすぐ14歳になるので孤児院から出て行くことになる」との文面があるので13歳の少女だ。文通はもう何年も続いているらしい。
 少女の才能を見て取ったセガールは、手紙を使って彼女に暗号の解読を教える。モールス信号風のもあれば、「これはゾディアック暗号だ」と言って『ゾディアック』事件で犯人が使った暗号もある。
 その孤児院から何人かの少女が悪党どもに連れ去られる。院長も一味に含む児童人身売買組織の犯行だ。
 少女からの手紙が途絶えたことを不審に思ったセガールはポーランドに行き、そして人身売買組織と戦うことになる。

 少女が所々に残していった暗号を解いて、彼女の行方を追うという展開は、活かしきれていないが面白い。
 悪党のボスがチェス好きで、大使館のパーティーを利用して、セガールの行動を読みながら罠を仕掛けているところも悪くない。
 ただ、全体的に観るとストーリーが単調で盛り上がりに欠け、セガールの格闘アクションや銃撃戦が燃えてこないのが寂しい。
 ラストの、素手でも銃でもなく、剣を使った戦いはセガール映画にあまりなかったもので、すれ違いざまの一太刀で決着が付くところを横から捉えたカットは日本の時代劇風である。

 監督のレオン・ポーチは香港映画で活躍してきた人だが、ドラマ性の強い作品中心で、あまりアクションは得意ではない様子。
 どんよりと曇って快晴とはほど遠い風景や街並み。歴史が深そうな建物など、ポーランドの重みがある映像は魅力的だ。
 佳作『DENGEKI 電撃』をもじったタイトルだが、出来としてはかなり差がある。

B000M4RERG.jpg『撃鉄 GEKITETZ ワルシャワの標的』(2003) THE FOREIGNER 95分 アメリカ

監督:マイケル・オブロウィッツ 製作:カマル・アブクハタール、アンドリュー・スティーヴンス、スティーヴン・セガール、エリー・サマハ 共同製作:フィル・ゴールドファイン 脚本:ダーレン・キャンベル 撮影:マイケル・スロヴィス 編集:マイケル・クージ 音楽:デヴィッド・ワースト、エリック・ワースト 音楽スーパーヴァイザー:マイケル・ロイド
出演:スティーヴン・セガール、マックス・ライアン、アンナ=ルイーズ・プロウマン、ジェフリー・ピアース、シャーマン・オーガスタス、ハリー・ヴァン・ゴーカム、ゲイリー・レイモンド

 2003年のセガール映画は『沈黙の聖戦』『沈黙の標的』そしてこの『撃鉄 GEKITETZ ワルシャワの標的』となんと合計三本。
 2004年から2007年の主演作も多い年だと四本と、プログラム・ピクチャー並の本数だ。
 こうなると、もう季刊セガール通信である。あのね、さすがに作りすぎ。

 今回のセガールは現役のフリーなエージェント。野球などのFA制のフリーエージェントじゃなくて、特定の雇い主に縛られずにその都度仕事を請け負う諜報員。過去にCIA職員として活躍していたのはいつものことだ。

 カメラが疾走する移動撮影や、クローズアップ。スローモーションの使い方などカメラワークが“微妙”で面白い。監督は前作『沈黙の標的』を手がけたマイケル・オブロウィッツ。この凝り方は音楽ビデオやCM出身なんだろうか。

 ある小包を巡って、CIAや闇の組織などが入り交じって争奪戦を繰り広げる。その小包を手に入れたセガールは、その謎と背後にある陰謀を暴くべく戦いを始める。周りは全て敵、裏切りに満ちあふれた戦いだ。
 そして、ある母娘と関わることになる。ようやく信じられる物を見つけたセガールだが、ラストシーンの小型船の甲板で一人たたずむ姿が渋い。
 格闘アクションはほとんどなく、銃や爆発が中心のアクションだ。
 銃撃戦と言っても、やたらとバンバン撃ちまくるタイプではなく、飛び交う弾丸数の少ないリアルな(地味とも言う)銃撃戦だ。
 悪投や、情報組織などの人間が死ぬのはかまわないが、単なる通行人やホテルのフロントなど、一般人も多く殺されるのが、スパイ稼業は非情なものとはいえ少々気になる。
 パリやワルシャワなど舞台の入れ替わりが多く、登場人物が多い上に整理されていない脚本と合わせて、まとまりのなさを感じさせる。上手くやれば、かなり良質な作品になった可能性は大きいだろう。
 どうでもいいが、セガールと車を交換した黒いコートの男の異様に尖った頬骨が気になってしょうがない。

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