『沈黙の戦艦』 (1992) UNDER SIEGE 103分 アメリカ 1993/5/31鑑賞
監督:アンドリュー・デイヴィス 製作:アーノン・ミルチャン、スティーヴン・セガール、スティーヴン・ルーサー 製作総指揮:J・F・ロートン、ゲイリー・ゴールドスタイン 脚本:J・F・ロートン 撮影:フランク・タイディ 音楽:ゲイリー・チャン
出演:スティーヴン・セガール、トミー・リー・ジョーンズ、ゲイリー・ビューシイ、 エリカ・エレニアック、パトリック・オニール
-オレはいつでも燃えている その3-
確か試写会に当たって有楽町の劇場で見た。協賛の日清食品から『ごんぶと』のプレゼントがあったような記憶がある。このころはスティーヴン・セガールではなくスティーブン・シーガルとか呼ばれてなかったか?
『ダイ・ハード3』(1995)は当初船上を舞台に脚本が書かれていたが、『沈黙の戦艦』のヒットを受けて急遽変更になったとか、そのボツ原稿が『スピード2』(1997)の原案になったとかいう噂もあるが真偽は不明。
テロリストに乗っ取られた閉鎖空間で、唯一捕まらなかった男が戦いを挑んでいくというシチュエーションは『ダイ・ハード』に似ているが、細かいところまで練り込まれて登場人物にも面白みがある『ダイ・ハード』と比べるとたしかに脚本に穴はあるしセガールが強すぎ。でも、そこが魅力でもあるのだ。
スティーヴン・セガール演ずるケイシー・ライバックは戦艦ミズーリ号のコック長。テロリストに制圧された艦内で唯一拘束を逃れた男。とはいえコックじゃなぁと思ったでしょ。ところがこのライバックは強い。メチャメチャ強い。元特殊部隊のスゴ腕隊員で問題を起こして軍を追放されかかったところを、炊事兵長に降格されたが艦長の温情でなんとか軍籍に残っていたという設定だ。でもいっそのこと「コックなのに何故か強い。意味なく強い。最強に強い」方がオレ好みなんだが。
今ではハリウッド大作で主役を演ずるようになったトミー・リー・ジョーンズがテロリストの親玉を演じている。そういえば1990年代半ばまでのトミー・リー・ジョーンズはどちらかというと悪役中心だった。遅咲きだったが今では味もあり演技も上手い主役を張れる名優だ。
軍を裏切ったミズーリの将校がゲイリー・ビューシイ。昔はゲイリー・ビジーという表記だったんだが。腹に一物持つ悪漢が似合う。女装は似合わない。
脇役の魅力が乏しいのが残念。ライバックの部下であるコックたちが活躍するシーンもあるが、キャラクターが立っていない。第二次大戦中からミズーリで砲兵として働いていたオヤジはなかなか良い。もう長いこと使われていなかった大口径砲を発射するシーンはもうちょっと活かしてほしかった。
トミー・リー・ジョーンズのいかれっぷりとヒラヒラとしたナイフの使い方が格好いいが(『ハンテッド』(2003)でもナイフ戦闘の専門家を演じていたな)、相手がセガールでは分が悪い。悪いというか瞬殺。セガールのアクションは急所を一撃で粉砕するというスタイルだから、格闘アクションが得意な相手を連れてきても同じような結果になるんだろう。座頭市がどんな相手でもほぼ一瞬の居合いで斬り捨ててしまうが、それと同じような形式美なのだ、きっと。
ヒロインを出さねばならないという理由だけで登場させたミス7月が邪魔。お色気担当としてもさほど役に立っていないし、いらないだろうこのキャラクターは。
実在する戦艦ミズーリでロケができたのは大きなポイント。ミズーリといえばその船上で日本がポツダム宣言を調印し正式に降伏した歴史的戦艦だ。
戦艦内部の広さや人員の数に関する知識はないが、空母だと5000人ぐらい乗っているという。戦艦と空母では規模が違うだろうが、戦艦にもそれなりの人数が乗っているはず。それをいくら艦長の誕生パーティーに乗じてとはいえ、10~20人のテロリストが制圧してしまうのはちょっと無理がある感じだ。
もっとも、戦艦の乗組員というのは艦の操縦や機関部の整備、艦載兵器の操作が仕事で、銃を持って戦うことに関しては基本的な訓練しか受けていないだろう。迷彩服を着た戦闘要員はそれなりに抵抗してるし。しかし、船の中で緑の迷彩服は意味があるのだろうか?単に制服なんだろうが。スティーヴン・キング原案のTVムービー『アイス・ステーション』は南極の基地が部隊なのに主人公の軍人は緑系の迷彩服着てたしな。南極に植物生えてないっつーの。迷彩どころか白の中では逆に目立つわ。
この作品のヒットで一気にスターダムに躍り出て、熱心なアクション映画ファン以外の人にもセガールの名前が知れ渡った。これ以降を個人的にはセガール映画第二期と分類している。
その後は一部を除いて作品にあまり恵まれずに結局のところB級アクションスターに定住してしまった。本人がどう思っているのかは知らないが、オレはそれがセガールの良さだと思う。
コメント (4)
あの迷彩はおそらくほかの乗組員を威圧する
ために着てるのではないかと思います。警備担当は射撃などの特殊訓練を受けているので
逆にそれをアピールすることでクーデターや
艦内の治安を抑止しているでしょうね。この映画の監督、アンドリュー・デイビスはキャラクターの特徴をいかして、質の高いアクションを作れる職人監督だと思います。日本映画で必要なのはこういう監督なんじゃないでしょうか。
Posted by: ネスカフェ | 2005年10月26日 00:26
日時: : 2005年10月26日 00:26
ネスカフェさんへ
やはり警備担当の迷彩服は機関兵などと明確に区別するための制服なのでしょうね。
軍隊では規律が重要と言いますが、閉鎖空間で同じ顔ぶれが長期間過ごす戦艦はだからこそ一体感もあるのでしょうが、反面気がつまるでしょうから上官や警備担当は権威を保たないとまずそうです。
アンドリュ・デイビス監督作の『野獣捜査線』は大好きな映画ですが、あれを観たときは後にこの監督が一流監督の仲間入りをするとは思っていませんでした。
『コラテラル・ダメージ』が興行的にちょっと失敗したようですが、あれは9.11テロとぶつかってしまったのが一番の敗因ですからね。
日本には作家性を重視する監督は多いですが、きっちりした娯楽作を作って観客を楽しませ、収益を上げて映画会社を儲けさせるという商品としての映画を作れる監督が少ない感じですからね。日本映画が産業として成り立たなければ作家性どころじゃないとも思うんですが。
Posted by: 東森時音 | 2005年10月26日 00:51
日時: : 2005年10月26日 00:51
>「コックなのに何故か強い。意味なく強い。最強に強い」
これ、まったく同感です。最近の観客(というか、むしろ制作者のほうかな)は映画に意味を求めすぎのような気がします。
Posted by: とみさわ | 2007年10月22日 17:16
日時: : 2007年10月22日 17:16
とみさわさん
ネット上での映画の感想などを読んでいると、話の辻褄や理屈を気にしている人は多いように感じます。
映画では、いや映画だけではなく小説やコミック、ゲームなどでは面白さは話しの辻褄や理屈に優先されると思うんですけどね。
『ドラゴンへの道』でのブルース・リーもローマの中華料理店に働きに来た若者なのに、何故か強い。意味なく強い。最強に強い。です。
長年カンフーの修行をしてきたと簡単な説明はありますが、「何であんなに強いの?」と言われても「ブルース・リーだから」としか答えようがありません。
セガールも、セガールだから強いんです。
「何でこうなるんだ」とか「こうなるはずがない」と言われても、そうした方が面白いのならば制作者はそちらを選ぶでしょう。
そもそもが良い意味で“嘘”なんですから、その“嘘”に対して、理屈をやたらと求めるってのは、作品を楽しむことをを自ら放棄していることに他なりません。
Posted by: 東森時音 | 2007年10月23日 16:58
日時: : 2007年10月23日 16:58