『暴走特急』 (1995) UNDER SIEGE 2: DARK TERRITORY 99分
監督:ジョフ・マーフィ 製作:スティーヴン・セガール、スティーヴ・ペリー、アーノン・ミルチャン 共同製作:ジュリアス・R・ナッソー 脚本:リチャード・ヘイテム、マット・リーヴス 撮影:ロビー・グリーンバーグ 音楽:ベイジル・ポールドゥリス
出演:スティーヴン・セガール、エリック・ボゴシアン、エヴェレット・マッギル、キャサリン・ハイグル、モリス・チェスナット
-オレはいつでも燃えている その6-
ハイジャックという言葉はそもそも1920年代の禁酒法の時代、犯罪組織(カポネファミリーとかですな)が取り扱っている密造酒や密輸酒を狙って、運搬中の車や船を襲って暴力的に乗っ取ったことを指す。
語源はいくつか説があるが、犯人がヒッチハイクなどの振りをして「Hi,jack(よう、あんた)」と運転手に呼びかけたからというのが有力だとか。Jackというのは男の人名だが、名前の分からない男性に呼びかける時にも使われる。トランプにはキング、クイーン、ジャックの絵札があるが、あのジャックも人名ではなく男性といった意味だったはず。
ちなみに無免許天才外科医のブラックジャックは本名を黒男といい、黒=ブラック、男=ジャックでブラックジャックと名乗っているとか。
そんなわけで、暴力的に乗り物を乗っ取る行為をハイジャックと呼ぶ。日本では1970年に発生した日本航空よど号乗っ取り事件でハイジャックという言葉が浸透したのと、HIがHIGHと混同されたことから飛行機専用に使われているが、バスや列車、船の場合もハイジャックでいいのだ。
『ダイ・ハード』の場合はビルだから、ハイジャックと呼んでいいのか分からないが。それと『ジャガーノート』のブリタニック号も爆弾を仕掛けられただけで乗っ取られてはいないからハイジャックではないが、かといって『スピード2』ではなぁ。えっ?『凶弾-瀬戸内シージャック事件』?
飛行機のハイジャックと強調したい場合は「スカイジャック」を呼ぶとか。そういえばトニー・ケンリックの小説に『スカイジャック』というのがあった。
前作『沈黙の戦艦』では軍艦ミズーリが舞台だったが、今度は長距離旅客列車がハイジャックされる。アメリカは広いので時間がかかる長距離列車はあまり人気がなく、気軽に飛行機を利用するそうだが、飛行機ではなく列車に乗ることになったことにはちゃんと説明されている。
米軍が地震を発生させる強力な人工衛星兵器を開発する。開発を担当したデインが軍を裏切り、テロリストを率いて列車グランド・コンチネンタル号を乗っ取る。乗客の元同僚から衛星の制御コードを聞き出し、顧客から注文を受けて様々な場所を破壊しようというのだ。位置を悟られないためには移動する列車から衛星を操作するのが最適というわけで、数百人の乗員・乗客を人質にしたままグランド・コンチネンタルは走り続ける。
計画は順調に進むと思われたが、テロリストたちにとって唯一の誤算はかのケイシー・ライバックが姪のセーラと一緒に偶然列車に乗っていたことだった。
姪の父親はライバックの兄で飛行機事故で亡くなったばかり。もはや身内と呼べる人間はそれぞれ相手しかいない。ライバックは例によって偶然敵の手を逃れるが、姪は他の乗客共々人質になってしまう。この「なんとしてでも姪を助ける」という動機の強さが、なぜライバックは徹底して無茶をすることの説得力となっている。『沈黙の戦艦』のミス7月は単なるお色気要員だったが、この作品での姪はストーリー上重要なポイントとなっていて上手く活かされている。キャーキャー騒ぐだけではなく、意志も強くて魅力的なティーンエイジャーだ。
『沈黙の戦艦』ではセガールの一人舞台だったが、今回は黒人のポーターが味方に付く。コメディリリーフも担当して頼りないながらも映画を盛り上げる。
悪役側の面々も悪くない。頭は切れるがイカれているデインは口先担当で戦闘能力は低いが、代わりに元特殊部隊の強面な部下や冷酷な美人狙撃手などが活躍する。活躍するがライバック相手ではほとんど歯が立っていないが、セガール映画とはそういうもんだから気にするな。
1995年なりのハイテクがいくつか登場している。衛星兵器を制御するプログラムが記録されたCD-ROMはレーベル面が金色で記録面が緑色っぽいからおそらくCD-Rだろう。このCD-ROMをセガールたちが奪い取ることで一騒動あるわけだが、そんな重要なCD-ROMだったらバックアップぐらい取っとけよ、デイン。なにはなくともバックアップは基本だろう。ひょっとしたらSafeDiscあたりのコピーガードがかかってるのか?って、1995年にはまだその技術は登場してないか。
そして、ライバックがハイジャックを軍に知らせるために公衆電話からFAXで情報を送るが、その時に使う情報端末がかのNewton。あったなぁ、APPLEのNewton。PDA黎明期に登場した多機能マシンだが、多機能ゆえに高額であったのと図体がデカいセガールが手に持ってすら大きいそのサイズからかあまり普及せずに、開発が中止され消えた。その後、PDAジャンルではシンプルさと価格の安さでPalmが普及したが、こちらも次第に終息に向かっているとの噂も聞く。これからは携帯電話+PDAのスマートフォンだろうか。ウィルコムがなんか新しいのを発表したな。住んでるのが田舎なので電波に不安があるPHSを持つ気はないが、携帯電話版も出ないだろうか?
予算は前作よりも増えたようで、衛星やステルス爆撃機の爆破、そして終盤の列車が破壊されるシーンなど迫力があるSFXシーンが盛り込まれている。
ライバックが走る列車から落とされてはまた何とかして乗り込んでくるところが、『大陸横断超特急』(1976)のジーン・ワイルダーを思い出させる。あちらは3回ぐらい落とされてなかったか?
ラストで列車が対向する貨物列車と衝突するが、先頭車両から潰れていく中をライバックは走って逃げ切る。あまり足が速そうには見えず無茶だが格好いい。
スティーヴン・セガールといえば『沈黙シリーズ』だが、『沈黙の戦艦』の続編は『暴走特急』だけで、あとの『沈黙~』は公開会社が勝手な邦題を付けただけだ。
といったことを鬼の首を取ったように言う人がいる。細かいことを気にするなぁというか、重箱の隅をつつくというか。
榎本健一(エノケン)主演作が『エノケンの近藤勇』とか『エノケンの孫悟空』となっていたり、マルクス兄弟主演作が『マルクス兄弟オペラは踊る』や『マルクスの二挺拳銃』となっているのと同じで、『沈黙の』は『スティーヴン・セガールの』という意味なのだ。だから問題なし。
すると、セガールがお花見などで春を楽しむ映画は『沈黙の春』になるのだろうか。なんか、環境汚染で生き物全滅って感じのタイトルだ。
個人的にはシナリオ、アクション、演出それぞれがかなり上質で、セガール映画の現時点における最高傑作だと思う。
そして、最近のセガール映画の状況を考えると、このままこれが最高傑作で終わってしまうのかなと不安でもある。
セガールのアクションもキレが落ちてきたし、映画の製作規模も小さくなっている。
だが、セガールは戦い続ける男。『暴走特急』を越える映画を作ってくれることを期待する。