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2007年10月 アーカイブ

2007年10月03日

『ワイルド・アット・ハート』 黄色いレンガの道

B000R9TM9O.jpg『ワイルド・アット・ハート』(1990) WILD AT HEART 124分 アメリカ

監督:デヴィッド・リンチ 製作:モンティ・モンゴメリー、スティーヴ・ゴリン、シガージョン・サイヴァッツォン 製作総指揮:マイケル・クーン 原作:バリー・ギフォード 脚本:デヴィッド・リンチ 撮影:フレデリック・エルムズ 音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:ニコラス・ケイジ、ローラ・ダーン、ウィレム・デフォー、イザベラ・ロッセリーニ、ダイアン・ラッド、シェリリン・フェン、シェリル・リー、ハリー・ディーン・スタントン、ジョン・ルーリー

 公開当時は学生だった。当時書いた文章を検索してみると、『ワイルド・アット・ハート』については二行だけ書いていた。

「気違いばかりの騒々しい世界。
あのラストはハッピーエンドではない。リンチは美しい愛なんか全然信じちゃいないんだからねっ!!」
だそうだ。

 こういう猥雑な作品は本来オレの好みではないのだが、好みであるないと面白い面白くないはまた別問題。文句なしに面白い。
 ヘビ革のジャケットを着たニコラス・ケイジが格好良くないのに格好良い。
 ローラ・ダーンの顔は微妙に造形がアンバランスなのにキレイ。
 ウィレム・デフォーが邪悪でアタマボーン!

 主人公二人が夜に遭遇する交通事故のシーンが何故かすごく頭に残っていて、十数年ぶりに観た今回も「これだこれだ、これなんだー。スパイスはコリアンダー」って感じ。
 思いっきりストレートなラブストーリーじゃんか。何言ってんの、20歳頃のオレと思ったが、この『ラブ・ミー・テンダー』で終わるラストではなく、破壊的なラストだったとしても何もおかしくないということが言いたかったのだろう。
 そうだった気がする。忘れたけど。

 『オズの魔法使』(映画版)の知識が前提で作られているが、向こうじゃ幼少時に観ていて当然なのだろう。というわけで、観ておくように。
 日本で『桃太郎』の知識前提の作品を作るような物なんだろう。

2007年10月08日

『ロスト・ハイウェイ』 投げっぱなし

B00005V2MG.jpg『ロスト・ハイウェイ』(1997) LOST HIGHWAY 135分 アメリカ

監督:デヴィッド・リンチ 製作:ディーパク・ギルフォード、トム・スターンバーグ、メアリー・スウィーニー 脚本:デヴィッド・リンチ、バリー・ギフォード 撮影:ピーター・デミング 音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:ビル・プルマン、パトリシア・アークエット、バルサザール・ゲティ、ロバート・ブレイク、ロバート・ロジア、ゲイリー・ビューシイ、リチャード・プライアー、ジャック・ナンス、ジョヴァンニ・リビシ、マイケル・マッシー

 詳細なストーリー?分かりませんよ、そんなものは。
 謎はいっぱいあるけれど、デヴィッド・リンチ自身が謎を描くことは好きだが、謎の答えを描くことに興味はない、投げっぱなしのジャーマンフープレックスフォールドなので、観客は投げっぱなしにされっぱなしですよ。なんか、毎回同じ事書いてますが。ヘソで投げるジャーマンフープレックスフォールド。
 あれこれ悩み考えて、無理矢理にこじつければ筋の通ったストーリーを作り出すことも可能だろうけど、そんなことにどれだけの意味があろうか?と考えると、まったくもって意味なしなわけです。
 深読み反対。深読み反対。ノーモア深読み。カルチャークラブ。
 その映画を楽しむことと理解することはイコールではないので、オレは難しいことは考えずに素直に楽しみます。まったくもってヘンテコで楽しい。そういう感想でも別に良いじゃないかというのが個人的結論。
 なにげにリチャード・プライアーやゲイリー・ビューシイが出演していて嬉しい。リチャード・プライアーはこれが最後の劇場用映画出演だったようです。らしくねぇ。
 黒髪に金髪。白塗り男。
『殺したい女』にて“世にもバカな男”役でスクリーンでビューしたビル・プルマンが格好いい。主役のクセに出番は少ないが。

2007年10月10日

『ストレイト・ストーリー』 兄貴のとこまで何マイル?緑のトラクターで行くんだよ

B0000A4HSJ.jpg『ストレイト・ストーリー』(1999) THE STRAIGHT STORY 111分 アメリカ

監督:デヴィッド・リンチ 製作:アラン・サルド、メアリー・スウィーニー、ニール・エデルスタイン 脚本:ジョン・ローチ、メアリー・スウィーニー 撮影:フレディ・フランシス 音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:リチャード・ファーンズワース、シシー・スペイセク、ハリー・ディーン・スタントン、ジェームズ・カダー、ウィリー・ハーカー、エヴェレット・マッギル

 日本のテレビドラマならば「これでもかぁ、これでもかぁ」とばかりに無理矢理盛り上げようとするのだろうが、リンチはただひたすらに淡々と、歩くのと大して変わらないスピードのトラクターによる老人の数百キロの旅を描く。

「意味分かんねぇ」
「難解すぎ」
etc.etc.
 そんなことばかりを言われて、デヴィッド・リンチは少し気にくわなかったかも知れない。
「オレが撮ってるのは、オレにとってしごくストレートで分かりやすい映画だ」とか思っていたのかも知れない。
「じゃぁ、お前らこういうのが良いんだろ。他のだってこれだってオレの映画だ」
 そう思ったのかは知らないが、リンチが初めて脚本をすべて他人に任せて作り上げた実にストレートな映画が、このストレイトジイさんのロードムービー『ストレイト・ストーリー』である。

 印象的なのがたき火だ。
 若い女性ヒッチハイカーとたき火を挟んでの会話
 そして、脳卒中の発作で病院に担ぎ込まれた兄と会ったという、牧師との会話。
 交通事故で車にはねられて死んだ鹿の肉をたき火で焼いている。
 近頃では、庭先でたき火をやるなんてのも近所から苦情が来るご時世だが、やはりたき火は良い。良いたき火を出来る人は実に格好いいと思うのだ。
 もちろんリチャード・ファーンズワースのたき火は格好いい。

 リンチ組としてはハリー・ディーン・スタントンがファーンズワースの兄役で出演。でも1920年生まれのファーンズワースに対して1926年のスタントンが兄というのは若干無理があるかも。
 他には、『ツイン・ピークス』でガソリンスタンドの店主役ビッグ・エドを演じたエヴェレット・マッギルが、トラクター販売店の店主役で顔を出している。この人は『砂の惑星』で砂の民の族長も演じている。

 彼らのような顔の知られた俳優は少なく、大半は見知らぬ顔ばかりだ。
 飲食店の店員や、近所の住民など、役名もないような彼らが実に味わいのある顔つきの人ばかりで、奥深さを感じさせる。
 ボソボソと一言ごとに語るファーンズワースはやはり良い。
 いわゆるリンチ的なシーンは女性が乗用車で鹿を轢いてしまったところぐらいだが、いやいや、やはりリンチだ。

2007年10月14日

『マルホランド・ドライブ』 光の女、闇の女

B000063UPM.jpg『マルホランド・ドライブ』(2001) MULHOLLAND DR. 146分 アメリカ

監督:デヴィッド・リンチ 製作:ニール・エデルスタイン、ジョイス・エライアソン、トニー・クランツ、マイケル・ポレール、アラン・サルド、メアリー・スウィーニー 製作総指揮:ピエール・エデルマン、デヴィッド・リンチ 脚本:デヴィッド・リンチ 撮影:ピーター・デミング 編集:メアリー・スウィーニー 音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ・ハリング、アン・ミラー、ジャスティン・セロー、ダン・ヘダヤ、マーク・ペルグリノ

 物語の前半と後半とで大きく二つに分かれており、その時間軸にも工夫がある。
 女優を夢見てカナダからハリウッドに出てきた若い金髪の女性と、何者かに狙われ事故で記憶を失った黒髪の女性。昼と夜現実と夢。色々と対比的な物が登場する。
 前半と後半がどう繋がっているのかとか、殺し屋達の正体は何者なのか、部屋の真ん中にただ一つ椅子だけ置いて腰掛けている奇妙な男は何なのか。
 そんなことどうでもいいだろう。難しいことを考えるのは嫌いだしな。

2007年10月15日

『ツイン・ピークス』 徹頭徹尾バカなのだ

B000TXR2M2.jpg『ツイン・ピークス』(1990~1991) TWIN PEAKS アメリカ

監督:デヴィッド・リンチ、マーク・フロスト、ダイアン・キートン、ジェームズ・フォーリー、スティーヴン・ギレンホール 製作総指揮:デヴィッド・リンチ、マーク・フロスト 企画:デヴィッド・リンチ、マーク・フロスト 音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:カイル・マクラクラン、マイケル・オントキーン、ジョアン・チェン、パイパー・ローリー、シェリル・リー、シェリリン・フェン、 オードリー・ホーン、ジェームズ・マーシャル、ララ・フリン・ボイル

 さて、サイトの傾向としてはちょっと外れるデヴィッド・リンチ作品を取り上げてきたのは、この『ツイン・ピークス』のシーズン2がDVD化され、レンタルしてきて観たからなのだ。
 初めて『ツイン・ピークス』を観たのは大学5年生の時。(何だよ、5年生って!)すでに卒業した先輩の実家に遊びに行って、wowowの放送で途中の一話を観た。放送は日本語吹き替えで、ある男がインディアンの扮装をしてウーワァオとか叫んでいた。
 その時は、「なんだこりゃ」と思ったが、後にレンタルビデオで観てすっかりはまってしまって、ついにはレンタル中古落ちの全巻を購入することになる。後に金欠で売ってしまったけどな。

 女子高生の死体が発見され、その捜査のためにFBI捜査官デイル・クーパー(カイル・マクラクレン)が製材と刊行から成り立っている小さな田舎町ツイン・ピークスを訪れるところから物語は始まる。
 前半はそれっぽいミステリーとして話は進むが、クーパーの夢に巨人(『メン・イン・ブラック』でウエイターに化けたバグに殺される人なんだな、多分。『アダムス・ファミリー』の執事役なのは確実なんだが)が現れる辺りから方向性が怪しくなって、宇宙からの通信を調べている空軍の軍人やら、すっかりイカれちまった元FBIの殺人鬼が現れて物語はすっかりシッチャカメッチャカ。
 ところが、そのシッチャカメッチャカぶりが楽しいんだな、これが。
 犯人が誰だったとか、ラストにはどういう意味があるんだとか、どうでもいいじゃん。楽しいんだから。
 夢の中で小人が登場するシーンなどはリンチ節炸裂で、あの小人の歩き方は無意味に真似したもんだ。フィルムの逆回しなんだよな、あれ。
 意味なくデヴィッド・リンチ自身もクーパーの上司役として登場して、耳の悪い男という役柄なのでやたら大声でわめきたてる。思うに、演技力の無さをごまかすためなんじゃないだろうか。
『X-FILES』のフォックス・モルダーことデヴィッド・ドゥカヴニーの女装も楽しい。
 登場人物の大半がイカれていて、ほんとバカばっか。

 やっぱね、意味なんか分からなくても良いんだよ。
 観ている間に楽しければそれでOK。ノープロブレムなんだよ。
 リンチは様々な謎を投げっぱなしで収拾していないが、それはそれでいいんじゃない?
 広げた風呂敷を畳まなくても、最初っからそういう意図なら問題なし。
 これは、広げた風呂敷を畳めなかったのとはまったく違う。観客を混乱させるのも、納得させないのも、そもそもそれがリンチの思惑なんだろう。
 つまりは、バカだ。リンチってバカだよね、全作を通してさ。

 ともあれ、チェリーパイ食いたいなぁ。食いたい、食いたい。

2007年10月17日

『刑事ニコ/法の死角』 スティーヴン・セガール無敵伝説始まる

B000OIOJUK.jpg『刑事ニコ/法の死角』(1988) ABOVE THE LAW  100分 アメリカ

監督:アンドリュー・デイヴィス 製作:スティーヴン・セガール、アンドリュー・デイヴィス、ロバート・H・ソロ 原案:アンドリュー・デイヴィス、スティーヴン・セガール 脚本:スティーヴン・プレスフィールド、ロナルド・シャセット、アンドリュー・デイヴィス 撮影:ロバート・ステッドマン 音楽:デヴィッド・フランク
出演:スティーヴン・セガール、ヘンリー・シルヴァ、シャロン・ストーン、パム・グリア、ダニエル・ファラルド、ロニー・バロン、ロン・ディーン、ミゲル・ニーニョ、ニコラス・クセンコ、ジョー・グレコ、チェルシー・ロス、タルマス・ラスラーラ、グレゴリー・アラン・ウィリアムズ、ジャック・ウォレス

 チャック・ノリスの『野獣捜査線』が好きなので、同じアンドリュー・デイヴィス監督によるこの作品ももちろん観に行った。
 セガールの子供時代から始まる(と言っても写真のみ)は、野球を観に行ったときにデモンストレーションとして行われた合気道に魅せられ、単身日本へ渡って武術を習得するといった具合。セガール本人の体験を元にしたものだ。
 だが、そこからが現実とは違って、CIA職員から勧誘されたニコはCIAに入局し、ベトナム戦争などで活躍。その後、シカゴ警察の刑事として悪と戦っている。
 オープニングの道場での稽古で、セガールの得意技である「手首を逆に決めて投げる」や「ノドへのラリアット(入り身投げというらしい)」が登場する。
 空手やカンフーと違い、セガール自身は大きな動きはしないので、多少地味なのは否めないが、とにかくどの技も痛そうだ。
 最近ではすっかり太ってしまったセガールだが、この頃はかなり痩せている。
 手足が妙に長いので、走り方が独特だ。ストロークが長い。やはり刑事物は走るシーンがないとな。
 セガールは17歳で日本に渡って、十年以上日本にいたから、銃器の扱いはやったことがないはず。しかし、その後も多くの作品で愛銃として使うコルト45オートの構え方が実に決まっている。
 NECの渡辺さんに面会に訪れたシーンでは、達者な日本語も披露する。

 『野獣捜査線』と同じく悪役はヘンリー・シルヴァ。相変わらず怖い顔だ。
 ニコの妻役がブレイク前のシャロン・ストーンだったり、不敵な相棒パム・グリアが出演しているのも見所の一つ。

2007年10月18日

『ハード・トゥ・キル』 地獄から帰ってきた男

B000IU4OVI.jpg『ハード・トゥ・キル』(1990) HARD TO KILL 96分 アメリカ

監督:ブルース・マルムース 製作:ゲイリー・アデルソン、ジョエル・サイモン、ビル・トッドマン・Jr 製作総指揮:リー・リッチ、マイケル・ラックミル 脚本:スティーヴン・マッケイ 撮影:マシュー・F・レオネッティ 音楽:デヴィッド・マイケル・フランク
出演:スティーヴン・セガール、ケリー・ルブロック、ビル・サドラー、フレデリック・コフィン、ボニー・バーローズ、ロバート・ラサード

 今作の舞台はロサンゼルス。ロス市警の刑事セガールは、要人暗殺計画を嗅ぎつけたために自宅が襲撃され、妻と息子は射殺され、本人も重傷を負って意識不明のまま7年もの間、病院で過ごしている。
 セガールの友人である刑事の計らいで、セガールは死んだことになっているのだが、その生存が悪人どもに知れ、殺し屋が病院へと送り込まれる。
 その頃、セガールは奇跡的に意識を取り戻しており、萎えた身体を駆使して、殺し屋を倒す。
 しかし、これで事件が解決したわけではない。敵はさらに数多くの殺し屋を送り込んでくる。セガール危うし!

 7年も寝たきりですっかり萎えた身体のクセに、針治療などのちょっとしたリハビリで、あっという間に全盛期の肉体を取り戻す。さすがセガール筋肉である。常人じゃこうはいかない。
『マトリックス』でも生まれてからずっとカプセルの中に寝たきりだったネオことキアヌ・リーヴスが針治療で身体に刺激を与えたいたが、あれと似てるな。

 例によってセガールが強い強い。死んだはずの息子も実は…だったりで、それなりにハッピーエンド。
 前作『刑事ニコ/法の死角』と比べるとガクッと落ちた印象の作品で、特にお勧めはしない。セガール自宅襲撃の銃撃戦はなかなかかな。

2007年10月19日

『死の標的』 ジャマイカン・コネクションを叩き潰せ!

B000TXR2Q8.jpg『死の標的』(1990) MARKED FOR DEATH 94分 アメリカ

監督:ドワイト・H・リトル 製作:マイケル・グレイス、マーク・ヴィクター、スティーヴン・セガール 脚本:マイケル・グレイス、マーク・ヴィクター 撮影:リック・ウェイト 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード、スティーヴン・セガール
出演:スティーヴン・セガール、ベイジル・ウォレス、キース・デヴィッド、トム・ライト、ジョアンナ・パクラ、エリザベス・グレイセン、ダニー・トレホ

 オープニングでダニー・トレホが登場したと思ったら、何の活躍もしないまま即退場。まだ名前が売れてなかったころだからなぁ。
 今回の敵はコカインを売りさばくジャマイカンマフィア。シカゴを舞台に、セガール対ジャマイカンマフィアの死闘が繰り広げられる。
 いつもならば、真っ先に悪へと襲いかかるセガールだが、今回は心に傷を負った男なため、最初は子供たちにまでヤクを売る連中を見て見ぬ振りをして関わろうとしない。そのくせ、自分の身内に危害が及ぶと堪忍袋の緒があっという間に切れて、ぶち殺しまくりだ。うーむ、自己中心的なヤツ。

 基本的に一人で戦うことの多いセガールだが、この作品では古くからの友人である黒人と、ジャマイカから来た麻薬捜査官の三人でチームを作って戦う。
 黒人を演ずるキース・デヴィッドは『ゼイリブ』でロディ・パイパー相手に路地裏で延々と長い殴り合いを演じた男。今回もタフだ。
 敵のジャマイカンマフィアのボスは小さな骨をいくつも投げて占いをしたり、刀が武器だったりと、『プレデター2』(1990)に出てきた人物と似ている。製作年度も同じなので、この頃はジャマイカからの麻薬密輸が問題になっていたのかもしれない。
 セガールの格闘アクションが冴え渡るのはもちろんだが、カーアクションや銃撃戦もなかなか見応えがある。
 特に銃撃戦は、オープニングの売春宿での撃ち合いは、ちょっとサム・ペキンパーを思わせる乾いた仕上がりとなっている。ま、ちょっとだけどな。
 殺したはずなのに生き返るボスの謎は丸分かりだが、その後の「○○じゃないだろうな」というセガールのセリフがイカす。It's a セガール・ジョーク.
 演出自体はダラダラとまとまりがないが、セガールの強さが観られればそれで良い。それがセガール映画の本質なのだ。

『「空飛ぶモンティ・パイソン」“日本語吹替復活”DVD BOX』 まさかまさかの大登場

B000X431A4.jpg『「空飛ぶモンティ・パイソン」“日本語吹替復活”DVD BOX』

出演:グレアム・チャップマン、ジョン・クリーズ、エリック・アイドル、テリー・ジョーンズ、マイケル・パリン、テリー・ギリアム

 テレビ東京で放映された時の日本語吹替音源は失われたと言われていたが、どっからか出てきたらしい。
 ついに『空飛ぶモンティ・パイソン』日本語吹替版登場である。
 これまでにも『空飛ぶモンティ・パイソン』のビデオは一巻だけ日本語吹き替え版があった。義賊デニス・ムーアが登場する巻だ。いわゆる「ルピナスの花を出せ」である。「持って池辺良」「残念だが、そのシーンは尾張名古屋」なのだ。
 それが今回のソフト化はずらずらっと3シーズン分のディスク7枚組。映像も新リマスターで、画質が少々残念だった既発売商品から買い換えようと思っている人も多いだろう。もちろんオレもその一人だ。
 もっとも、屋外シーンは16ミリフィルム、屋内はビデオ撮影なので、それほど高画質を求めるべきではないとも思うが。
 発売日は2008年2月20日。気になるお値段は定価で31,290円。ちと高いが、これでも以前の字幕オンリー版はすでに廃盤でプレミア付き価格になっていることを考えると、ずいぶん安くなっているのだ。くそっ、でも財布の中身がなぁ…。今から節約していけば、2月までにはなんとか貯まるか…

2007年10月20日

『アウト・フォー・ジャスティス』 友よ、お前は俺の手で殺す

B000OIOJV4.jpg『アウト・フォー・ジャスティス』(1991) OUT FOR JUSTICE 92分 アメリカ

監督:ジョン・フリン 製作:スティーヴン・セガール、アーノルド・コペルソン 製作総指揮:ジュリアス・R・ナッソー 脚本:デヴィッド・リー・ヘンリー 撮影:リック・ウェイト 音楽:デヴィッド・マイケル・フランク
出演:スティーヴン・セガール、ウィリアム・フォーサイス、ジェリー・オーバック、ジョー・チャンパ、シャリーン・ミッチェル、サル・リチャーズ、ジュリアナ・マーグリーズ、ジーナ・ガーション、ジェイ・アコヴォーン、ニック・コレロ、レイモンド・クルツ、ダン・イノサント、ロバート・ラサード

 セガールは刑事。その相棒をある男に殺される。そして、この三人は幼なじみだった。
 復讐と友情の板挟みになりながら、セガールは犯人を追う。そして、犯人の背後にいた組織も犯人の命を狙っている。
 セガールの死闘が始まる。

 男としてどうするかという苦悩を『組織』(1973)や『ローリング・サンダー』(1977)などの男気監督ジョン・フリンが地味ながらもじっくりと描く。
 セガールに演技力はあまり期待できないが、始終むっつりした表情が逆に苦悩を感じさせて悪くない。
 格闘シーンよりも銃撃戦の方がむしろ目立っていて、ザラついたリアルさが、これまたジョン・フリンの力量を感じさせる。
 セガール映画には一期、二期、三期の三つに大きく分かれるが、一期の作品はなかなか面白い。そして次作の『沈黙の戦艦』から充実の二期へと入る。

2007年10月21日

『沈黙の戦艦』 このコック、最強

B00005HKXD.jpg『沈黙の戦艦』 (1992) UNDER SIEGE 103分 アメリカ 1993/5/31鑑賞

監督:アンドリュー・デイヴィス 製作:アーノン・ミルチャン、スティーヴン・セガール、スティーヴン・ルーサー 製作総指揮:J・F・ロートン、ゲイリー・ゴールドスタイン 脚本:J・F・ロートン 撮影:フランク・タイディ 音楽:ゲイリー・チャン
出演:スティーヴン・セガール、トミー・リー・ジョーンズ、ゲイリー・ビューシイ、 エリカ・エレニアック、パトリック・オニール

-オレはいつでも燃えている その3-
 確か試写会に当たって有楽町の劇場で見た。協賛の日清食品から『ごんぶと』のプレゼントがあったような記憶がある。このころはスティーヴン・セガールではなくスティーブン・シーガルとか呼ばれてなかったか?
『ダイ・ハード3』(1995)は当初船上を舞台に脚本が書かれていたが、『沈黙の戦艦』のヒットを受けて急遽変更になったとか、そのボツ原稿が『スピード2』(1997)の原案になったとかいう噂もあるが真偽は不明。
 テロリストに乗っ取られた閉鎖空間で、唯一捕まらなかった男が戦いを挑んでいくというシチュエーションは『ダイ・ハード』に似ているが、細かいところまで練り込まれて登場人物にも面白みがある『ダイ・ハード』と比べるとたしかに脚本に穴はあるしセガールが強すぎ。でも、そこが魅力でもあるのだ。
 スティーヴン・セガール演ずるケイシー・ライバックは戦艦ミズーリ号のコック長。テロリストに制圧された艦内で唯一拘束を逃れた男。とはいえコックじゃなぁと思ったでしょ。ところがこのライバックは強い。メチャメチャ強い。元特殊部隊のスゴ腕隊員で問題を起こして軍を追放されかかったところを、炊事兵長に降格されたが艦長の温情でなんとか軍籍に残っていたという設定だ。でもいっそのこと「コックなのに何故か強い。意味なく強い。最強に強い」方がオレ好みなんだが。
 今ではハリウッド大作で主役を演ずるようになったトミー・リー・ジョーンズがテロリストの親玉を演じている。そういえば1990年代半ばまでのトミー・リー・ジョーンズはどちらかというと悪役中心だった。遅咲きだったが今では味もあり演技も上手い主役を張れる名優だ。
 軍を裏切ったミズーリの将校がゲイリー・ビューシイ。昔はゲイリー・ビジーという表記だったんだが。腹に一物持つ悪漢が似合う。女装は似合わない。
 脇役の魅力が乏しいのが残念。ライバックの部下であるコックたちが活躍するシーンもあるが、キャラクターが立っていない。第二次大戦中からミズーリで砲兵として働いていたオヤジはなかなか良い。もう長いこと使われていなかった大口径砲を発射するシーンはもうちょっと活かしてほしかった。
 トミー・リー・ジョーンズのいかれっぷりとヒラヒラとしたナイフの使い方が格好いいが(『ハンテッド』(2003)でもナイフ戦闘の専門家を演じていたな)、相手がセガールでは分が悪い。悪いというか瞬殺。セガールのアクションは急所を一撃で粉砕するというスタイルだから、格闘アクションが得意な相手を連れてきても同じような結果になるんだろう。座頭市がどんな相手でもほぼ一瞬の居合いで斬り捨ててしまうが、それと同じような形式美なのだ、きっと。
 ヒロインを出さねばならないという理由だけで登場させたミス7月が邪魔。お色気担当としてもさほど役に立っていないし、いらないだろうこのキャラクターは。

 実在する戦艦ミズーリでロケができたのは大きなポイント。ミズーリといえばその船上で日本がポツダム宣言を調印し正式に降伏した歴史的戦艦だ。
 戦艦内部の広さや人員の数に関する知識はないが、空母だと5000人ぐらい乗っているという。戦艦と空母では規模が違うだろうが、戦艦にもそれなりの人数が乗っているはず。それをいくら艦長の誕生パーティーに乗じてとはいえ、10~20人のテロリストが制圧してしまうのはちょっと無理がある感じだ。
 もっとも、戦艦の乗組員というのは艦の操縦や機関部の整備、艦載兵器の操作が仕事で、銃を持って戦うことに関しては基本的な訓練しか受けていないだろう。迷彩服を着た戦闘要員はそれなりに抵抗してるし。しかし、船の中で緑の迷彩服は意味があるのだろうか?単に制服なんだろうが。スティーヴン・キング原案のTVムービー『アイス・ステーション』は南極の基地が部隊なのに主人公の軍人は緑系の迷彩服着てたしな。南極に植物生えてないっつーの。迷彩どころか白の中では逆に目立つわ。
 この作品のヒットで一気にスターダムに躍り出て、熱心なアクション映画ファン以外の人にもセガールの名前が知れ渡った。これ以降を個人的にはセガール映画第二期と分類している。
 その後は一部を除いて作品にあまり恵まれずに結局のところB級アクションスターに定住してしまった。本人がどう思っているのかは知らないが、オレはそれがセガールの良さだと思う。

2007年10月22日

『沈黙の要塞』 アラスカの地を悪徳企業から守る男

B000XG9P70.jpg『沈黙の要塞』(1994) ON DEADLY GROUND 102分 アメリカ

監督:スティーヴン・セガール 製作:スティーヴン・セガール、ジュリアス・R・ナッソー、A・キットマン・ホー 脚本:エド・ホロウィッツ、ロビン・U・ルシン 撮影:リック・ウェイト 音楽:ベイジル・ポールドゥリス
出演:スティーヴン・セガール、マイケル・ケイン、ジョアン・チェン、ジョン・C・マッギンレー、R・リー・アーメイ、シャリ・シャタック、アーヴィン・ブリンク、ビリー・ボブ・ソーントン、リチャード・ハミルトン

 “沈黙”の要塞とあるが、主人公はケイシー・ライバックではなく、『沈黙の戦艦』とはまったく繋がりがない。前作のヒットにあやかっただけの邦題である。
 これ以降、セガール主演作にはやたらと“沈黙の”が付くようになる。どれがどれだったかとっさに思い出せなくなるので、個人的にはちと迷惑。

 今作でセガールは監督としてデビューしている。監督俺、制作俺、主演俺と、三拍子揃った俺映画だ。
 ただ戦っているだけでは観客に飽きられると思ったのか、テーマがないと単なるアクション映画として軽んじられると思ったのか、それはともかく環境問題や少数民族などを積極的に取り上げるようになった。
『沈黙の要塞』では油田開発による環境汚染と、イヌイット(エスキモー)が題材として取り上げられている。
 過去に安い金額でイヌイットから採掘権を奪ったエイジス石油だが、あと数日で採掘を開始しないとその採掘権をイヌイットに戻さなければならない。そこで、採掘装置が壊れて油田が爆発し、一帯の環境が汚染されることを承知で強引な作業を続ける。
 最初はそのエイジス石油で働いていたセガールだが、事実を知ることにより、社長(マイケル・ケイン)を敵に回し、戦いに挑むことになる。

 悪役にマイケル・ケインを持ってきたのは大正解。肉体的に強いばかりが悪役ではない。憎々しげで、利益優先の血も涙もない経済人に、マイケル・ケインの演技が説得力を与えてくれる。
 セガールは爆発物の専門家で、例によって元特殊部隊。冒頭から、油田火災を火薬で吹き飛ばして消火する荒技を見せてくれる。
 ジュースのペットボトルを利用して、即席のサイレンサーをあっという間に作り上げるシーンがなるほどと思わせる。だが、その場に敵は一人しかいないし、その後にすぐ銃声が飛び交う銃撃戦が始まるので、あまり意味はないだろそれと、つっこみたくなる。
 セガールの友人で、同じくエイジス石油の採掘現場で働いている老人がなかなか味がある。
 気になるのはイヌイットのとある部族の長老の娘を演じているジョアン・チェン。演技がどうこうではなくて、中国系のジョアン・チェンがイヌイットを演じているのは、同じくアジア系のオレとしては若干の違和感がある。
 イヌイットで有名な女優がいないからだろうか?白人にとっては、イヌイットも中国系も同じ黄色人種だろ、ってことかもしれない。

 ラストにはセガールが地球環境に関する大演説を繰り広げる。
 しかし、その前のシーンでセガールが行った行為を考えると、まるで説得力がない。
 それもまた、セガールらしい。

2007年10月23日

『暴走特急』 キッチンじゃ誰にも負けないぜ

B000BTCMD8.jpg『暴走特急』 (1995) UNDER SIEGE 2: DARK TERRITORY 99分 

監督:ジョフ・マーフィ 製作:スティーヴン・セガール、スティーヴ・ペリー、アーノン・ミルチャン 共同製作:ジュリアス・R・ナッソー 脚本:リチャード・ヘイテム、マット・リーヴス 撮影:ロビー・グリーンバーグ 音楽:ベイジル・ポールドゥリス
出演:スティーヴン・セガール、エリック・ボゴシアン、エヴェレット・マッギル、キャサリン・ハイグル、モリス・チェスナット

-オレはいつでも燃えている その6-
 ハイジャックという言葉はそもそも1920年代の禁酒法の時代、犯罪組織(カポネファミリーとかですな)が取り扱っている密造酒や密輸酒を狙って、運搬中の車や船を襲って暴力的に乗っ取ったことを指す。
 語源はいくつか説があるが、犯人がヒッチハイクなどの振りをして「Hi,jack(よう、あんた)」と運転手に呼びかけたからというのが有力だとか。Jackというのは男の人名だが、名前の分からない男性に呼びかける時にも使われる。トランプにはキング、クイーン、ジャックの絵札があるが、あのジャックも人名ではなく男性といった意味だったはず。
 ちなみに無免許天才外科医のブラックジャックは本名を黒男といい、黒=ブラック、男=ジャックでブラックジャックと名乗っているとか。
 そんなわけで、暴力的に乗り物を乗っ取る行為をハイジャックと呼ぶ。日本では1970年に発生した日本航空よど号乗っ取り事件でハイジャックという言葉が浸透したのと、HIがHIGHと混同されたことから飛行機専用に使われているが、バスや列車、船の場合もハイジャックでいいのだ。
『ダイ・ハード』の場合はビルだから、ハイジャックと呼んでいいのか分からないが。それと『ジャガーノート』のブリタニック号も爆弾を仕掛けられただけで乗っ取られてはいないからハイジャックではないが、かといって『スピード2』ではなぁ。えっ?『凶弾-瀬戸内シージャック事件』?
 飛行機のハイジャックと強調したい場合は「スカイジャック」を呼ぶとか。そういえばトニー・ケンリックの小説に『スカイジャック』というのがあった。

 前作『沈黙の戦艦』では軍艦ミズーリが舞台だったが、今度は長距離旅客列車がハイジャックされる。アメリカは広いので時間がかかる長距離列車はあまり人気がなく、気軽に飛行機を利用するそうだが、飛行機ではなく列車に乗ることになったことにはちゃんと説明されている。
 米軍が地震を発生させる強力な人工衛星兵器を開発する。開発を担当したデインが軍を裏切り、テロリストを率いて列車グランド・コンチネンタル号を乗っ取る。乗客の元同僚から衛星の制御コードを聞き出し、顧客から注文を受けて様々な場所を破壊しようというのだ。位置を悟られないためには移動する列車から衛星を操作するのが最適というわけで、数百人の乗員・乗客を人質にしたままグランド・コンチネンタルは走り続ける。
 計画は順調に進むと思われたが、テロリストたちにとって唯一の誤算はかのケイシー・ライバックが姪のセーラと一緒に偶然列車に乗っていたことだった。

 姪の父親はライバックの兄で飛行機事故で亡くなったばかり。もはや身内と呼べる人間はそれぞれ相手しかいない。ライバックは例によって偶然敵の手を逃れるが、姪は他の乗客共々人質になってしまう。この「なんとしてでも姪を助ける」という動機の強さが、なぜライバックは徹底して無茶をすることの説得力となっている。『沈黙の戦艦』のミス7月は単なるお色気要員だったが、この作品での姪はストーリー上重要なポイントとなっていて上手く活かされている。キャーキャー騒ぐだけではなく、意志も強くて魅力的なティーンエイジャーだ。
『沈黙の戦艦』ではセガールの一人舞台だったが、今回は黒人のポーターが味方に付く。コメディリリーフも担当して頼りないながらも映画を盛り上げる。
 悪役側の面々も悪くない。頭は切れるがイカれているデインは口先担当で戦闘能力は低いが、代わりに元特殊部隊の強面な部下や冷酷な美人狙撃手などが活躍する。活躍するがライバック相手ではほとんど歯が立っていないが、セガール映画とはそういうもんだから気にするな。

 1995年なりのハイテクがいくつか登場している。衛星兵器を制御するプログラムが記録されたCD-ROMはレーベル面が金色で記録面が緑色っぽいからおそらくCD-Rだろう。このCD-ROMをセガールたちが奪い取ることで一騒動あるわけだが、そんな重要なCD-ROMだったらバックアップぐらい取っとけよ、デイン。なにはなくともバックアップは基本だろう。ひょっとしたらSafeDiscあたりのコピーガードがかかってるのか?って、1995年にはまだその技術は登場してないか。
 そして、ライバックがハイジャックを軍に知らせるために公衆電話からFAXで情報を送るが、その時に使う情報端末がかのNewton。あったなぁ、APPLEのNewton。PDA黎明期に登場した多機能マシンだが、多機能ゆえに高額であったのと図体がデカいセガールが手に持ってすら大きいそのサイズからかあまり普及せずに、開発が中止され消えた。その後、PDAジャンルではシンプルさと価格の安さでPalmが普及したが、こちらも次第に終息に向かっているとの噂も聞く。これからは携帯電話+PDAのスマートフォンだろうか。ウィルコムがなんか新しいのを発表したな。住んでるのが田舎なので電波に不安があるPHSを持つ気はないが、携帯電話版も出ないだろうか?

 予算は前作よりも増えたようで、衛星やステルス爆撃機の爆破、そして終盤の列車が破壊されるシーンなど迫力があるSFXシーンが盛り込まれている。
 ライバックが走る列車から落とされてはまた何とかして乗り込んでくるところが、『大陸横断超特急』(1976)のジーン・ワイルダーを思い出させる。あちらは3回ぐらい落とされてなかったか?
 ラストで列車が対向する貨物列車と衝突するが、先頭車両から潰れていく中をライバックは走って逃げ切る。あまり足が速そうには見えず無茶だが格好いい。

 スティーヴン・セガールといえば『沈黙シリーズ』だが、『沈黙の戦艦』の続編は『暴走特急』だけで、あとの『沈黙~』は公開会社が勝手な邦題を付けただけだ。
 といったことを鬼の首を取ったように言う人がいる。細かいことを気にするなぁというか、重箱の隅をつつくというか。
 榎本健一(エノケン)主演作が『エノケンの近藤勇』とか『エノケンの孫悟空』となっていたり、マルクス兄弟主演作が『マルクス兄弟オペラは踊る』や『マルクスの二挺拳銃』となっているのと同じで、『沈黙の』は『スティーヴン・セガールの』という意味なのだ。だから問題なし。
 すると、セガールがお花見などで春を楽しむ映画は『沈黙の春』になるのだろうか。なんか、環境汚染で生き物全滅って感じのタイトルだ。

 個人的にはシナリオ、アクション、演出それぞれがかなり上質で、セガール映画の現時点における最高傑作だと思う。
 そして、最近のセガール映画の状況を考えると、このままこれが最高傑作で終わってしまうのかなと不安でもある。
 セガールのアクションもキレが落ちてきたし、映画の製作規模も小さくなっている。
 だが、セガールは戦い続ける男。『暴走特急』を越える映画を作ってくれることを期待する。

2007年10月24日

『グリマーマン』 セガール対連猟奇続殺人鬼?

B000SADJV4.jpg『グリマーマン』(1996) THE GLIMMER MAN 91分 アメリカ

監督:ジョン・グレイ 製作:スティーヴン・セガール、ジュリアス・R・ナッソー 脚本:ケヴィン・ブロドビン 撮影:リック・ボータ 音楽:トレヴァー・ラビン
出演:スティーヴン・セガール、キーネン・アイヴォリー・ウェイアンズ、ボブ・ガントン、ブライアン・コックス、ジョン・M・ジャクソン、ミシェル・ジョンソン、スティーヴン・トボロウスキー、ロバート・メイルハウス、リチャード・ガント、ウェンディ・ロビー

 これまでにも何回か観ているのだが、どうも印象が薄い。
 セガールがクレジットカードに仕込んだ刃物を使って悪党たちの首を斬るシーンしか思い出せなかった。

 舞台はロス。このところ、カトリック教徒を惨殺して十字架に架けられたポーズにする連続殺人鬼“ファミリー・マン”が犯行を続けていた。
 その捜査本部である殺人課に中国風の服を着て、首からチベットの数珠をぶら下げた刑事セガールが配属されてくる。
「なるほど、今回は連続殺人鬼対セガールか。チャック・ノリスも連続殺人鬼の大男と戦った『ザ・ファントム/地獄のヒーロー4』があるし、それも面白いかもな」と思ったのだが、ファミリー・マンの犯行に見せかけてロシア人を殺されていた辺りから、ストーリーはサイコサスペンスからどんどんずれていく。
 ついにはロシアから密輸された化学兵器まで出てくる始末で、いろんな意味でセガール映画としての安定振りを感じさせる。どれだけ“陰謀”好きなんだよ。

 単独行動が多いセガールだが、今作では刑事物と言うこともあって、珍しく相棒と一緒に活動するシーンが多い。
 相棒はスキンヘッドの黒人刑事で、妙な服を着たセガールとの対比が面白い。二人がハンフリー・ボガードの『カサブランカ』についてやり取りをするシーンは笑える。
 この作品当たりからセガールが蹴りを本格的に使うようになり、カンフー風味が加わって、より派手になっていく。

 前半と後半のカラーが大きく違い、作品としてはチクハグさを否めない。そのせいで記憶に残っていなかったのであろう。
 ファミリー・マンに関しては途中でけりが付いてしまうが、そちらも最後まで持っていって、猟奇殺人鬼と、それを利用する犯罪組織という形にしても緊張感が持続して面白かったのではないだろうか。

2007年10月25日

『沈黙の断崖』 有毒廃棄物を不法投棄するんじゃねぇ

B000XG9P84.jpg『沈黙の断崖』(1997) FIRE DOWN BELOW 104分 アメリカ

監督:フェリックス・エンリケス・アルカラ 製作:スティーヴン・セガール、ジュリアス・R・ナッソー 共同製作:ロナルド・G・スミス 製作総指揮:ウィリアム・S・ギルモア、ジェブ・スチュアート 脚本:ジェブ・スチュアート、フィリップ・モートン 撮影:トム・ホートン 音楽:ニック・グレニー=スミス
出演:スティーヴン・セガール、マージ・ヘルゲンバーガー、クリス・クリストファーソン、ハリー・ディーン・スタントン、スティーヴン・ラング、レヴォン・ヘルム、ランディ・トラヴィス、クレイ・ジーター、ジョン・ディール

『沈黙の要塞』で原油流出事故について大演説を繰り広げながら、自ら油田採掘基地を吹き飛ばしたセガール。
 今回は、化学廃棄物不法投棄をテーマにしながら、ラストには廃棄物が山と積まれた廃坑を吹き飛ばして、容器は破壊される。どう見たって地下水に有毒廃棄物がだだ漏れだ。その調査に来たのに、さらに汚染を拡大してどうするよセガール。
 でも映画なんだからそんな細かいこと気にするな。現実なら気にしろ。つか、相変わらず後のことを考えずにやりすぎ。

 悪役のクリス・クルストファーソンがさすが魅せてくれる。最近ならば『ブレイド』シリーズで主人公ウェズリー・スナイプスの相棒で、武器を開発している人と言えば分かりやすいだろうか。カントリーミュージックの大御所としても有名である。
 サム・ペキンパーの『ビリー・ザ・キッド21才の生涯』(1973)ではビリー・ザ・キッドを演じて映画デビュー。目茶目茶良い映画なので、観てない人は観るべし、観るべし。
 さらに、セガールに情報を提供する現地の人として名優ハリー・ディーン・スタントンが登場する。老けたなー、ってのが最初の印象だが、主人公側の登場人物として色々と無茶な映画に多少なりとも重みを与えてくれる。
 彼ら名俳優を脇に、環境保護官役のセガールが強い。例によって強い。先のその地の調査にあたった環境保護官の友人が殺されたことの復讐もあって、やたらに強い。
 セガールは音楽が好きでギターのコレクションもしているそうで、劇中ではギターの腕前も披露してくれる。そう言えば、『死の標的』では音楽も共同担当していたな。
 捜査の途中で知り合った女性が、その兄の精神的支配下におかれていて、どうやら近親相姦的臭いがする辺りなど、人間関係はセガール映画としては比較的複雑だ。あくまでも“比較的”だけれども。
 肉体的アクションだけではなく、トレーラーによるカースタントも面白い。

 アメリカ南部らしい、家のポーチとそこに置かれた揺り椅子が印象に残る。
 西部劇的記憶でもあるのだ。
 不法投棄でどれだけ罰金を負わされても、それ以上に儲かるからどうでもいいと言い放つクリス・クルストファーソン。
 最近の“伊勢の名物”など日本企業の不祥事を見るに付け、社会の裏行為をしている企業や保健所とか経済産業省とか厚生労働省その他もろもろにもセガールが現れないかと、ちょっと思ったりもする。そうなったら、日本中血まみれになるだろうけどな。下手したら、オレも合気道で一撃だ。

2007年10月26日

『沈黙の陰謀』 ネイティブ・アメリカンの教え

B0000DJWID.jpg『沈黙の陰謀』(1998) THE PATRIOT 91分 アメリカ

監督:ディーン・セムラー 製作:パトリック・チョイ、ナイル・ニアミ、ハワード・ボールドウィン、スティーヴン・セガール、ジュリアス・R・ナッソー 原作:ウィリアム・ヘイン 脚本:M・サスマン、ジョン・キングスウェル 撮影:スティーヴン・F・ウィンドン 音楽:スティーヴン・エドワーズ
出演:スティーヴン・セガール、ゲイラード・サーテイン、L・Q・ジョーンズ、カミーラ・ベル、ホイットニー・イエロー・ローブ、サイラス・ウェイア・ミッチェル、ダン・ビーン、アヤコ・セガール(藤谷文子)

 毎日毎日セガール映画をただひたすらに観続ける生活を続けている。
 この『沈黙の陰謀』が峠だった。
「うーセガールわよぉ。毎度毎度無敵でよぉ、タイトルも沈黙ばっかで区別付かないしよぉ。ポニーテールだしよぉ」といった具合に、なんか疑問を憶えてくるのであった。
 しかし、この峠を越えてしまうと、「だってセガールだもん。一大傑作を求めて観てるわけでもないし、何でもイーじゃん」と、一気に精神的ストレスが消え去って、セガール作品が楽しくて楽しくて仕方なくなる。逆に毎日セガール作品を観ないと調子が悪い。ランナーズ・ハイならぬセガール・ハイだ。

『沈黙の陰謀』はセガール作品の中でも異色作。なんといっても、セガールのアクションがラストにちょっとあるだけ。殺すのはたった一人、しかも一瞬だ。
 アメリカはモンタナ州。愛国右翼思考にかぶれた者たちが、広い敷地にある一軒家に武装して立てこもっている。その精神的指導者であるフロイドは、自らに政府が開発した殺人ウイルスを注射して、FBIに投降してくる。ウイルスをばらまいて、社会を混乱に陥れ、自分たちに有利に働かせようというのだ。
 フロイドの思惑通り、ウイルスは街を覆い尽くし、街は閉鎖されパニックになる。
 だが、ウイルスが突然変化したため、フロイド側が用意していたワクチンが役に立たないことに。当然、政府がウイルス開発中に作り出したワクチンも同じく作用しない。
 この事態に、この街で医院を開いていた医者セガールが解決に乗り出す。何故ならば、セガールはこの街に来る前はCIAの秘密研究所で各種研究を行っていたのだ。
 すっげー、ご都合主義にも程がある。
 そして、ウイルスに感染した中から、一人だけ自らの免疫力で回復した人物がいる。それがセガールの娘だったことから、その子を抗体を作る材料にしようとするフロイト一味からの逃走劇が始まる。

 今回はネイティブ・アメリカンに注目していて、セガールの今は亡き妻はネイティブ・アメリカンという設定。妻の父であるネイティブ・アメリカンが、野原に生えている花を煎じたお茶を愛飲していて、それが実は・・・

 元CIAとはいえ、研究者として働いていたので、特に銃器や格闘技に精通しているわけではないだろう。役柄を広げようと思ったのだろうか。
 だから、最初に言ったように今回はアクションシーンはほんの一瞬。素手ではなく、とっさに手元にあった物を武器として使う。最低限の訓練は受けていたのだろう。

 カリスマを気取りながら、単なる俗物で太ったオヤジのフロイドが憎たらしくて良い。
 セガール医院で助手として働いている女性がほんの少し登場するが、これがセガールの実の娘アヤコ・セガールこと藤谷文子。留学か何かでアメリカを訪れていたらしい。

 セガール映画としては異色作で、ダスティン・ホフマンの『アウトブレイク』を思いっきり小規模にしたような作品に仕上がっている。
 ラストに、ヘリコプターから撒かれ、風に舞う花びらが美しい。

2007年10月27日

『沈黙のテロリスト』(ティッカー) セガール、脇役る

B00005U5HW.jpg『沈黙のテロリスト』(ティッカー)(2001) TICKER 93分 アメリカ

監督:アルバート・ピュン 製作:ケン・アグアド、ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ、アルバート・ピュン、ポール・ローゼンブラム 製作総指揮:ボアズ・デヴィッドソン、ダニー・ディムボート、アヴィ・ラーナー、トレヴァー・ショート 脚本:ポール・B・マーゴリス 撮影:フィリップ・アラン・ウォーターズ 音楽:サージ・コルバート
出演:スティーヴン・セガール、トム・サイズモア、デニス・ホッパー、ジョー・スパーノ、ケヴィン・ゲイジ

 セガールの出番は全体の半分かそれ以下で、しかも戦わない。主演はあくまでもトム・サイズモア。セガール、脇役。
 監督がオレの嫌いなアルバート・ピュンなので期待せずに観たが、裏切られない出来だった。つまんねー。
 これまでに取り上げたセガール作品は、文章を書く前に観直しているのだけれども、こいつだけはもう一度観る気にはなれなかった。だから、書くことも大してない。
 デニス・ホッパーが『スピード』を思わせる爆弾系テロリストを演じているが、どうしたって比較されてしまうのにこのやる気の無さは何だ。
 爆発シーンは多かった気がするが、それだけ。

 この作品がオレ的分類ではセガール映画第二期の最後となる。
 ひょっとしたら、セガールはこのまま消えていくかもと思ってしまったが…

2007年10月28日

『DENGEKI 電撃』 本部長「貴様は首だっ!」

B000OIOJXM.jpg『DENGEKI 電撃』(2001) EXIT WOUNDS 101分

監督:アンジェイ・バートコウィアク 製作:ダン・クラッチオロ/ジョエル・シルヴァー 製作総指揮:ブルース・バーマン 原作:ジョン・ウェスターマン 脚本:エド・ホロウィッツ/リチャード・ドヴィディオ 撮影:グレン・マクファーソン 音楽:トレヴァー・ラビン/ジェフ・ローナ
出演:スティーヴン・セガール/DMX/イザイア・ワシントン/マイケル・ジェイ・ホワイト/ビル・デューク/ジル・ヘネシー/トム・アーノルド/ブルース・マッギル/デヴィッド・ヴァディム/エヴァ・メンデス

『沈黙の戦艦』(1992)が大ヒットしたスティーヴン・セガールだが、その後のタイトルに“沈黙”が含まれる作品群は正直今一つな出来だった。
『沈黙の陰謀』(1998)のネイティブ・アメリカン(インディアン)や『沈黙の要塞』(1994)のイヌイット(エスキモー)など少数民族を登場させたり、『沈黙の要塞』『沈黙の断崖』では環境破壊を行っている企業を相手に戦ったりする。制作も兼ねているセガール自身が問題意識として持っている事柄を織り込んだと思われるが、アクション映画としては面白い方向性を模索する努力は買う。しかし、環境保護について延々壇上で説教しておきながら、実はその前のシーンでアラスカの油田施設をセガール自身が木っ端みじんに吹き飛ばしていた。おいこら、お前が一番環境破壊してるんだろ!
そんな感じで、1994年以降のスティーヴン・セガールは行き詰まっていた感があるが、そこから復活したのがこの刑事映画『DENGEKI 電撃』だ。

セガールがデトロイト警察の警官を演ずる今作は『沈黙の戦艦』のような大規模な作品ではない。相変わらずセガールは強いが、そのため警察においてはみ出し者となっており、あまりに暴力に走りすぎるというので署長の命令で「暴力的衝動を抑えきれない人」向けのセラピー集会に参加させられてしまう事になる。
10人ほどのセラピー集会で自分の暴力行為を告白してついには泣き出した男や、それに対して拍手を送る連中を見てうんざりした顔のセガールがなかなか良い。どの映画でも“強すぎる”セガールだが、その強すぎることを上手く笑いにつなげひいては常にムスッとしたセガールキャラに人間味を持たせている。
そのセラピーで知り合ったテレビ番組のホストが『トゥルーライズ』(1994)でシュワルツェネッガーの相棒を演じていたトム・アーノルド。図々しいけど実は小心者という味が出ている。
新しくセガールと組む事になった黒人警官が『トゥルー・クライム』(1999)のイザイア・ワシントン。なんか、『トゥルーなんとか』という映画に出てた俳優ばっかり使ってない?次は『トゥルー・ロマンス』か『トゥルー・ナイト』か。えっ、『トゥルーラブストーリー』?
ラッパーでもあるDMXは個人的にどうでもいいんだが、その仲間の太った黒人アンソニー・アンダーソンが面白い。芸風はどの映画でも変わらない人だが。
そして最初は嫌な奴っぽかったが最後には大活躍の本部長が格好いい。『プレデター』(1987)でシュワルツェネッガーの部下の一人だったビル・デューク。悪徳警官をショットガンで撃ち倒して「貴様は首だ!」の一言。
こういった具合にセガールを中心にして周りに魅力的な人物を配置し、ワンマン映画になりがちなところを上手く回避している。
これ以降のセガール作品は大作路線は止めてきっちりB級映画に徹するようになった。『奪還』(2002)や『撃鉄』(2003)などなかなか面白い。特に『撃鉄』は妙なカット割りが胡散臭くて良い。
もっとも個人的には『沈黙の要塞』なんかも実は好きだ。

ちなみにジェット・リーの『ブラック・ダイヤモンド』(2003)は監督のアンジェイ・バートコウィアク、トム・アーノルド、DMX、アンソニー・アンダーソンなどなどほとんど同じ顔ぶれ。
エンドクレジットが流れる中、トム・アーノルドとアンソニー・アンダーソンがダラダラとバカ話をくっちゃべってるところまで同じ。これがほんとーにどうでもいい話。『DENGEKI 電撃』を観てると10倍笑える。

ジョエル・シルヴァーが製作にあたって「そのポニーテールは止めてくれ」と条件を出したらしい。
そのため、この作品では微妙に襟足は長いものの、トレードマークであったポニーテールはない。
セガール曰く、あれは武士の髷をイメージした物だそうで、かなり思い入れがあったそうだが、それを切ってまでして出演しただけあってか、映画もヒット。消えてしまう可能性もあったセガールは見事に返り咲いた。
これから、現在に至るまでのセガール第三期が始まる。

2007年10月29日

『奪還 DAKKAN アルカトラズ』 戦場、アルカトラズ刑務所

B000FF6VNU.jpg『奪還 DAKKAN アルカトラズ』(2002) HALF PAST DEAD 99分 アメリカ

監督:ドン・マイケル・ポール 製作:エリー・サマハ、スティーヴン・セガール 共同製作:フィル・ゴールドファイン、ジェームズ・ホルト 製作総指揮:クリストファー・エバーツ、ウーヴェ・ショット 共同製作総指揮:ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ 脚本:ドン・マイケル・ポール 撮影:マイケル・スロヴィス 音楽:タイラー・ベイツ
出演:スティーヴン・セガール、モリス・チェスナット、ジャ・ルール ニック、ニア・ピープルズ、トニー・プラナ、クルプト トゥイッチ、ブルース・ウェイツ

 セガールが演じるのは高級車ばかりを盗む自動車泥棒のサーシャ。なんかイスカンダルにいる美女みたいな名前だ。盗難車倉庫に手入れが入り、逃走中に撃たれて一度死ぬが、蘇生された後、新生アルカトラズ刑務所に収容される。しかして、その正体は・・・
 アルカトラズ刑務所には、2億ドルもの金塊を盗み、その在処を白状しないまま死刑執行を迎えようとする老囚人がいた。
 その老囚人から金塊の情報を聞き出すべく、悪党どもがヘリコプターを使って、孤島アルカトラズ刑務所を襲撃する。
 そして、刑務所は戦場となった。

 刑務所のセットはなかなか出来が良く、予算もかかっている感じだ。
 セガールの格闘アクションが少々動きが鈍くなっている気もするが、それを補うべくひたすら派手な銃撃戦が繰り広げられる。
 襲撃犯の一人に女戦士がいて、この人が美人かつ残酷で、時としてセガールも食われ気味だ。
 老囚人は死刑執行を控えて、オレンジ色の囚人服から、パリッとしたスーツとピカピカに磨かれた黒い革靴に履き替える。渋くて格好いい。日本語吹替だと小林清志が演じているので、さらに渋さが増す。
 死刑執行を見届けに来た女性判事や、なにかというとスペイン語を話す看守長はクセがあって面白いが、肝心の悪党のボスが迫力に欠け、見せ場も大してない。こいつ次第で、もっと引き締まった映画になったことだろう。

 どうもこいつが記録的な不入りだったそうで、次作以降のセガール作品はアメリカでは劇場公開されず、直接ビデオ化が多くなったそうだ。昔はそれをビデオスルーと呼んでいたが、最近だとビデオダイレクトと表記しているところもある。英語で二つとも検索してみたが、その結果だとビデオダイレクトが正解な様子。。
 個人的には結構好きで、決して失敗作ではないと思っている。とはいえ、人が入らなければ意味がないのが娯楽映画の世界。厳しいのだ。

2007年10月30日

『沈黙の聖戦』 悪の呪術師vs.僧侶軍団

B000XG9PKC.jpg『沈黙の聖戦』(2003) BELLY OF THE BEAST 91分 アメリカ

監督:チン・シウトン 製作:ジェイミー・ブラウン、ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ、ゲイリー・ホーサム、スティーヴン・セガール、ジョン・トンプソン、チャールズ・ワン 製作総指揮:ダニー・ディムボート、アヴィ・ラーナー、トレヴァー・ショート 脚本:ジェームズ・タウンゼント 撮影:ダニー・ノワク

出演: スティーヴン・セガール、バイロン・マン、モニカ・ロー、トム・ウー、ヴィンセント・リオッタ、サラ・マルクル・レイン、パトリック・ロビンソン、ポンパット・ワチラバンジョン

 タイを舞台に、元CIAエージェントのホッパー(セガール)が、テロ組織に誘拐された娘を取り戻すために大活躍。
 監督のチン・シウトンは『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』シリーズなどを手がけた香港出身の監督。『少林サッカー』のアクション監督などもやっているだけあって、この作品もアクションが派手。セガールの戦い方もカンフー風に動きの大きく見栄えのする物になっているし、撃ちまくりの銃撃戦も燃える。
 セガールが繰り出す回し蹴りなど蹴り技ではスタントマンを使っているシーンもあるが、セガールが得意とするのは手業なので、映画として“魅せる”だけの蹴りは難しいのだろう。アクションでスタントマンを使うことを否定する人もいるが、本人が演じずともスタントマンがやることでより映画が面白くなるのならば何ら問題ない。いや、本人がやることで中途半端なアクションになるよりも、スタントマンが本格的なアクションをやってくれる方が嬉しい。スタントマンはアクションのプロ。プロの技を観るのは楽しいことだ。
 スタントマン否定と同じような理由で、CGやワイヤーアクションが否定される場合もあるが、これも間違いではないだろうか。CGやワイヤーアクションを使うことで、より充実したアクションがより安全に行えるならば、観客にとっても制作側にとってもメリットは大きい。もちろん、ただ使えばいいわけではなく、効果的に使われているのが大前提だ。
「命がけのスタント」と言ったって、スタントマンも人間なのだ。命なんかかけない方が良い。

 微妙に体型がゴツめのお姉さんが出てきてハイヒールキックと鋭い爪を使ってセガールと戦うが、この人の正体は『アタック・ナンバーハーフ』などのタイならでは。顔つきがどことなく、サミュエル・ホイに似ているのが気になってしょうがなかった。
 敵側には、セガールのワラ人形を持って呪いをかけてくる老呪術師がいる。人形に針を刺す度にセガールが苦しむ。遠くにいるこの相手には、セガールの合気道も届かない。危うし、セガール。
 その窮地を救うのが、寺院の坊さん軍団。集団でお経を読んで祈祷し、呪術師に対抗する。
 この両者の精神攻撃合戦がカットバックされるシーンの迫力は、さすがチン・シントウだけのことはある。
 呪術師の介入で、ラスボスとの戦いはいつものようなセガールの圧勝ではなく、熱い戦いになっている。
 同じような呪いの人形は『インディ・ジョーンズ魔宮の伝説』にも登場していたし、日本人には丑の刻参りでお馴染みだ。これらは源流は一緒なのか、それともたまたま似たような物がシンクロニシティで生まれたのだろうか?
 丑の刻参りといえば、『愛の陽炎』(1986)という日本映画で、伊藤麻衣子という当時のアイドル?が丑の刻参りをするのだが、制作者へのインタビューで「丑の刻参りも現代風にアレンジしました。頭にくくり付けているのがロウソクではなく電灯なのです」と得々して語っているのを読んで、「ああ、今の日本映画を作っている連中って馬鹿なんだ」と少年時代のオレは確信したものだ。
 今さっき調べてみたら、脚本を書いたのは『七人の侍』の橋本忍だった。まぁ、『幻の湖』の橋本忍でもあるからな。

 これまでのセガール作品ではあまり使われなかったスローモーションも効果的で、やはり格闘系アクションを分かってるんだなと感じさせてくれる。
 登場人物の大半がアジア系なので、ただでさえ体格の良い身長190センチというセガールは、周りの人間よりも頭一つ大きい。うさんくさい中国風の服も合わせて、威圧感がスクリーン(といっても、観たのはDVDなのでブラウン管だが)を通して伝わってきて、いかにも強そう。

2007年10月31日

『沈黙の標的』 無敵の考古学者

B0002YD90W.jpg『沈黙の標的』(2003) OUT FOR A KILL 90分 アメリカ

監督:マイケル・オブロウィッツ 製作:ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ、ダニー・ラーナー、スティーヴン・セガール 製作総指揮:ダニー・ディムボート、アヴィ・ラーナー、トレヴァー・ショート 脚本:デニス・ディムスター、ダニー・ラーナー、スティーヴン・セガール 撮影:マーク・ヴァーゴ 編集:ロバート・A・フェレッティ 音楽:ロイ・ヘイ
出演:スティーヴン・セガール、ミシェル・ゴー、コーリイ・ジョンソン、チョーイ・ケン・ベー、トム・ウー、マイケル・ジュニア・ハーヴェイ、マイケル・J・レイノルズ、レイ・チャールソン

 今回の敵は世界の麻薬密売を独占しようとしているチャイニーズ・マフィア。
 ボスと6人の幹部の7人が、なにかある毎にパリに集まって会議をやっているのが笑える。今時、古い体質の中小企業だってそんなにこまめに会議をしないぞ。特撮物の悪の幹部もしょっちゅう幹部が顔を揃えて会議をやっているが、どうやらこのチャイニーズ・マフィアも含めて、悪の組織の方がマメなのかも知れない。

 セガールは考古学の教授。だが、その前身は古美術専門の怪盗だった。怪盗引退後、その知識を活かすべく考古学の道を選んだのだ。これで、考古学者なのにやたらと強いことにちゃんと説明が付く。というか、問答無用の強引さ。
 助手や妻を殺されたセガールは、組織を壊滅すべく戦いを始める。敵がチャイニーズ・マフィアだけに、カンフーを使う殺し屋がセガールの元に次々と送られてくる。少林寺風の僧侶や、猿拳使いの理髪師など、個性的な敵がセガールを襲う。
 その殺し屋たちには腕に文字が入れ墨されていて、それが手がかりになって物語は進む。この入れ墨が、そこらにあったマジックで殴り書きをした様ないい加減な物。これはもうちょっとなんとかならなかったものか。
 ちなみに、謎は大して謎になっていない。
 銃撃戦は少なく、セガールが銃を使うシーンはほとんどない。DVDのパッケージは拳銃を構えたセガールの姿だが、作品のイメージとは違う。「無敵」ってのは確かだが。

 セガールの登場シーンが凝っていて、発掘中の遺跡を上空から捉えた空撮から、カメラが自在に動いて最後には岸壁に掘られた一室へと1カットで入っていく。途中まではミニチュアで、砂吹雪を利用してカットを上手く切り替え、セット撮影へと繋げたもので、アルフレッド・ヒッチコックの『バルカン超特急』のオープニングを少々思い出させる。
 このシーンを始めとして、個性的なカット割りが多用されている。スローモーションで飛んでいくアサルトライフルの銃弾とか、宙を舞う麻雀パイ、路上などを疾走するカメラ。これらは好き嫌いが分かれるだろう。オレ的には問題なし。