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『エレファント・マン』 異形なる者

B00078RT22.jpg『エレファント・マン』(1980) THE ELEPHANT MAN 124分 アメリカ/イギリス

監督:デヴィッド・リンチ 製作:ジョナサン・サンガー 製作総指揮:スチュアート・コーンフェルド、メル・ブルックス 原作:フレデリック・トリーブス、アシュリー・モンダギュー 脚本:クリストファー・デヴォア、エリック・バーグレン、デヴィッド・リンチ 撮影:フレディ・フランシス 音楽:ジョン・モリス
出演:ジョン・ハート、アンソニー・ホプキンス、アン・バンクロフト、ジョン・ギールグッド、ウェンディ・ヒラー、フレディ・ジョーンズ、キャスリーン・バイロン、ハンナ・ゴードン、フレデリック・トレヴェス

『イレイザーヘッド』は自主制作映画なので、この『エレファント・マン』がデヴィッド・リンチの商業デビュー作となる。
 実話がベースになっているが、個人的にはそんなことはどうでもいい。実話だろうがまったくのフィクションだろうが、関係ない。
 エレファント・マンの頭蓋骨は標本にされて現存しており、マイケル・ジャクソンが大金を積んで買い取ろうとしたなどという噂も聞いたことがある。真実かは知らないが。
 メル・ブルックスプロダクションによる製作だ。つまり、デヴィッド・リンチを起用したのはメル・ブルックスということになるだろう。
 『イレイザーヘッド』を観て、基本的にはヒューマンドラマな『エレファント・マン』をデヴィッド・リンチに撮らせようと考えるのはかなりな賭けのように思うが、結果として興行的にも作品評価としても成功作となったので、メル・ブルックスの人を見る目は確かなようだ。
 この間までのメル・ブルックス特集から、なんでいきなりデヴィッド・リンチになるのかというと、こういう繋がりで思いついたのである。リンチの新作『インランド・エンパイア』が公開されたというのももちろんある。

 ヒューマンドラマとして作り上げながらも、ジョン・メリックが見る悪夢のシーンや、閉塞感のある映像など、リンチらしさはちゃんと存在している。
 フリークであるジョン・メリックを見せ物小屋の男から借り受けた医師(アンソニー・ホプキンス)は、彼を学会で特異なる奇形人間として発表する。
 医師はジョン・メリックにはほとんど知性がないと思っていたが、あることからそうではないことをしり、勤め先であるロンドン病院の病室で彼の面倒をみることになる。
 最初はジョン・メリックのことを気味悪がっていた女性看護師たちも、次第に彼の純粋さに気づいていき、社交界でも有名な女優(アン・バンクロフト)が尋ねてくるなど、ジョン・メリックは少しずつ人間らしい生活を手に入れていく。
 だが、ジョン・メリックにも、アンソニー・ホプキンス演ずる医師にも感情移入をすることが許されず、突き放した視点で物語は進む。
 いわゆる感動的なシーンはあるが、それらを描くことにリンチが深い関心を持っているかは疑問だ。
 真の心の触れ合いがあるとしたら、それは見せ物小屋で雇い主に虐待されるジョン・メリックを逃がす、小人や巨人にシャム双生児など他のフリークスたちとのそれだ。
 思いやりや好奇心、時に偽善と言った上からの接し方ではなく、同じ仲間としての手助けだ。
 ジョン・メリックを檻から出すシーンには、見せ物小屋で働く少年もいるが、フリークスたちが抜け出していく中、少年は一人留まっている。そこには、決して越えられぬ壁がある。
 印象に残るシーンはいくつもあるが、もっとも美しいのは、ジョン・メリックを連れて港へと向かうフリークスたちが、連れだって歩いていく夜の池のシーンである。
 リンチは外見にしろ内面にしろ、異形なる者に魅了されているのだろう。

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