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『レスリー・ニールセンのドラキュラ』 メル・ブルックスのドラキュラ

dracula-dead-and-loving-it.jpg『レスリー・ニールセンのドラキュラ』(1995) DRACULA: DEAD AND LOVING IT 91分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:メル・ブルックス 製作総指揮:ピーター・シンドラー 脚本:メル・ブルックス、ルディ・デルカ、スティーヴ・ヘイバーマン 撮影:マイケル・D・オシア 音楽:ハミー・マン
出演:レスリー・ニールセン、メル・ブルックス、ピーター・マクニコル、スティーヴン・ウェバー、エイミー・ヤスベック、リセット・アンソニー、ハーヴェイ・コーマン、ジェニファー・クリスタル、グレッグ・ビンクレイ

 DVDは日本未発売のため、レンタルビデオでしか観ることが出来ない。
 セルビデオも出たかもしれないが、買った人はさすがにごく少数だろう。
 ちなみに『ロビン・フッド/キング・オブ・タイツ』のDVD化は希望するが、これはしなくてもいいや。
 ビデオの冒頭に、この作品が上映された日本のファンタスティック映画祭の観客向けに撮影された、メル・ブルックスからのビデオレターが付いている。
「レスリー・ニールセンは愉快な男でね、オーディションの時に女優が椅子に座る度に、口真似で屁の音を立てるんだ。人間ブーブークッションだね。それから、高層ホテルのエレベーターに乗ったときは、他に老婦人二人が乗っていたのに、口真似で「ブッ、ブッ」とやりながら「あれ?豆は食ったっけな」とやるんだよ。さすがに居づらかったのかご婦人たちは途中の階で降りてしまったね」
 これを観て、非常に嫌な予感がした。
 それって、本人だけ面白人間気取りの、ただの寒いオヤジじゃね?
 メル・ブルックスも下ネタやくだらないギャグが大好きな親父だが、屁の口真似ってのは意外とメル・ブルックスの趣味ではないと思うのだが。

 映画自体は、メル・ブルックス作品というよりは、いつものレスリー・ニールセンもの。
 レスリー・ニールセンがほぼ野放し状態になって、自分だけ面白いと思っているギャグで大暴れ。
 しかし、レスリー・ニールセンはあくまでも役者であって、理解ある演出側に使われることで笑いを生み出す存在。コメディアンじゃないのだ。
『フライング・ハイ』シリーズや、『裸の銃を持つ男』のプロトタイプであるTVミニシリーズの『フライング・コップ』は確かに面白かったが、それ以降は特に語るべき作品がない。
 あるとしたら、唯一『Mr.マグー』ぐらいか。
 メル・ブルックスにはレスリー・ニールセンの暴走を抑えて、あくまでも自分の映画に仕上げて欲しかった。

 ストーリー自体は本家ブラム・ストーカーの原作本『ドラキュラ』に意外と忠実。
 原作本はちょっと荷が重そうだと思う方は、コッポラ版『ドラキュラ』(1992)を観ておくと元ネタの予習になるだろう。
 トランシルバニアの田舎から、ある弁護士の仲介でロンドンに出てきたドラキュラが、美女を狙っての大活躍。笑えないギャグがてんこ盛りだ。
 メル・ブルックスはドラキュラの宿敵ヴァン・ヘルシング教授役。メル・ブルックスが要所要所を繋いでくれるおかげで、観ているこちらとしてはかなり助かる。
 好きなギャグは、ドラキュラに血を吸われて死んでしまった美女に木の杭を打ち込むところ。
 このままでは彼女も吸血鬼になってしまうと、若い男が彼女の胸に杭を当てると、ヴァン・ヘルシングはとっとと画面の外に避難して、「あー、ちょっとばかり血が出るかもしれないから」と一言。
 そして、若者が木槌を振り下ろすと、バケツ10杯分ぐらいの血がドバーッと吹き出して、全身血まみれ。
 なんでも、このシーンは若者役の俳優に大量の血とは教えてなかったそうで、本気でビックリしている。
 しかも、ヴァン・ヘルシングは「とどめを刺すにはもう一度打ち込まないと」
 若者「まだですか・・・?」
 心底うんざりした顔で美女の死体へと向かう若者。当然、またもや血のシャワーを浴びることとなる。

 ドラキュラってのは、招かれないとその家や土地に入れない。だから、弁護士を通してロンドンに招待されたという形でやってきた。さらにはお馴染みのごとく、にんにくは苦手。太陽の光は厳禁。十字架は嫌い。意外と弱点だらけなヤツだ。
 しかも、鏡に映らないので、お化粧するのも一苦労。
 この作品では、ダンスパーティーのシーンで、この「鏡に映らない」のを利用して、ドラキュラの正体を暴く。
 ダンスのパートナーと周りの人間だけ映って、ドラキュラの姿はなし。しかも、踊ってるのはアクロバティックなダンスときたもんだ。一人中を舞う女性は見せ場の一つ。
 ロマン・ポランスキーの『吸血鬼』では、これを逆手に取ったギャグがあった。人間のヴァンパイヤハンターが吸血鬼のパーティーに潜り込むが、鏡に映っているのは、彼と助手の二人の姿だけ・・・

 レンタルビデオには吹き替え版と字幕版がある。
 吹き替え版はドラキュラの手下となる弁護士を広川太一郎が演じている。
 乗合馬車に乗った途端に、他の乗客に「ここで会ったのもなにかの丸、じゃなくて縁」だとか、相変わらず原作にないないセリフをしゃべりまくり。
青野武が吹き替え担当の精神科医との会話は、『モンティ・パイソン』など往年ほどの勢いはないが、やはり楽しい。
「バッタが飛んで、バッタバッタ」って、なんだよ、それ。

 現時点では、これが最も新しいメル・ブルックス監督作品。
 愛妻アン・バンクロフトを亡くして、心の支えを失ったであろうメル・ブルックス。
 もう80歳になったメル・ブルックスだが、ここはもう一本だけで良いから、とんでもない「これぞブルックス」というバカ映画を撮ってもらいたい。

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