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2007年08月 アーカイブ

2007年08月05日

『スペースボール』 元祖メイドロボ?

B000B84NM2.jpg『スペースボール』(1987) SPACEBALLS 96分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:メル・ブルックス 脚本:メル・ブルックス、トーマス・ミーハン、ロニー・グレアム 撮影:ニック・マクリーン 特撮:ILM 美術:テレンス・マーシュ 音楽:ジョン・モリス
出演:ビル・プルマン、ダフネ・ズニーガ、ジョン・キャンディ、メル・ブルックス、リック・モラニス、ディック・ヴァン・パタン、ジョージ・ワイナー、マイケル・ウィンスロー

『スターウォーズ エピソード4~5』のパロディ映画。
『メル・ブルックスの珍説世界史PartI』のラストにある『PartII』の嘘予告編に含まれている『宇宙のユダヤ人』が発想の原点かと思われる。
 SFXを本家スターウォーズを手がけたILMが担当しており、製作に関してジョージ・ルーカスの許可を得ていたのだろう。
 ヨーダのパロディであるヨーグルト(メル・ブルックス)が、「これからは映画の興行成績だけじゃなくて、グッズの売り上げも大事だ」と各種スペースボールグッズを用意しているシーンなど、氾濫したスターウォーズグッズを皮肉ったやばいネタだ。
 主人公はひげ剃り後も青々しいビル・プルマン。ハン・ソロにルーク・スカイウォーカーを加えたようなローン・スターという宇宙の何でも屋を演じている。口元をちょっとゆがめたニヒルっぽさが格好いい。操縦する船は、ミレニアムファルコンとは似ても似つかぬキャンピングカータイプ。
 メル・ブルックスは先ほどのヨーグルトと敵側の大統領の二役をこなしている。役としては大統領の方が面白い。
「ワシの尻はこんなにでかいのか!」

 スペースボールの戦艦スペースボール1号は、スターウォーズのスターデストロイヤーよりも延々と長い。
 そして、終盤ではなんと人型ロボに変形する。
 ジョン・キャンディが「あれはトランスフォーマーだ」と叫ぶ中、スペースボール1号はメイドロボに変形を完了し、手に持った掃除機で惑星から清らかな空気を吸い取っていく。
 その大きさたるや巨大にして巨大。『超時空要塞マクロス』の母艦であるマクロスが変形した強攻型にも引けを取らないであろう大きさだ。でかっ!
 メイドロボといえばある意味お馴染みな設定だが、コミックやアニメに登場するようになったのはいつからなのだろうか。
 ひょっとしたら、メイド型ロボットというのはこの作品が元祖かもしれない。いや、調べてないが。

「レーダーを妨害(ジャム)しろ」というので巨大な瓶詰めジャムを宇宙船にぶつけたり、ビーム転送の送り先が…だったりと細かいギャグも多い。
 オリジナルがメジャー作品なので、さほどパロディの元ネタ探しで困ることもないだろう。
 ちなみに、名古屋での劇場公開時は同時上映が『ポルターガイスト3』だった。笑いに行けばいいのやら、恐がりに行けばいいのやら。

2007年08月15日

『メル・ブルックス/逆転人生』 「…でも俺の方が金持ちだ」「フンガーッ!」

B000P0I64W.jpg『メル・ブルックス/逆転人生』(1991) LIFE STINKS 95分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:メル・ブルックス 製作総指揮:エズラ・スワードロウ 脚本:メル・ブルックス、ルディ・デルカ、スティーヴ・ヘイバーマン 撮影:スティーヴン・ポスター 音楽:ジョン・モリス
出演:メル・ブルックス、レスリー・アン・ウォーレン、ジェフリー・タンバー、スチュアート・パンキン、ハワード・モリス、ルディ・デルカ、テディ・ウィルソン、マイケル・エンサイン、マシュー・フェイゾン

「なんだ、メル・ブルックスも普通の映画が撮れるんじゃんか」というのが真っ先の感想。

 メル・ブルックスは親の遺産を引き継ぎ、それをさらに大きくして、今ではアメリカ一の大富豪となった拝金主義者。生活面では苦労知らずのボンボンだ。
 そんな彼がロサンゼルスの貧困地区をぶっつぶして、巨大な近代都市を造ろうとしている。
『ロボコップ3』で、オムニ社が貧民街から住民を追い出して、デルタシティというのを作ろうとしているが、それと同じような物だ。
 ところが、建設予定地の半分はすでに所有していた物の、もう半分を貧民街から成り上がった別の実業家に買い占められてしまった。どちらも相手の持ち分が欲しいが、譲歩する姿勢を見せない。
 そこで、ある賭をして決着をつけることとする。
 それは、金も物も身分を証明する物も持たないホームレスとして、メル・ブルックスが争点となっている貧民街で30日間生き残ることが出来るか。
 メル・ブルックスの足首にはセンサーが巻き付けられていて、街から30秒以上離れると、そこで負けになってしまう。
 最初は自信満々だったメル・ブルックスだが、悲惨な現実を前に、次第に打ちのめされていく。

 寝る場所を確保するのも一苦労ならば、食べ物を手に入れるのも一苦労。
 ついに、ファーストフード店先に放置された食べ残しに手が伸びるが、店員に追い出されてしまう。
 もちろんお金を稼ぐのも一苦労。黒人の少年が、空き缶を前に「ハットゥハッ、ハットゥハッ」とダンスを披露していると、通行人が次々と小銭を入れていってくれる。
 それに目をつけたメル・ブルックスは、少年が立ち去った後、その場所で「ハットゥハッ、ハットゥハッ」とドタバタダンスを踊るが、通行人からはことごとく無視されてしまう。好きなシーンだ。

 そして、彼にも、昔は水兵になりたかったが病気でテストを撥ねられた愛称セーラーや、悪漢に襲われているところを助けてくれたバッグ・レディなどのホームレス仲間が少しずつ出来ていく。
 もうちょっとメル・ブルックスを追い込んで、価値観の大いなる逆転があり、人間としての深みが出てから事態が好転していく方が面白いかなと思うが、仲間が出来てからの方が話が広がるのでOKだろう。
 恋に落ちたメル・ブルックスとバッグ・レディが廃縫製工場に放置された布きれの中で踊るシーンはファンタスティック。いざ、ラブシーンだというときに、バッグ・レディの服を脱がしても脱がしても下に着込んでいるギャグは笑った。防寒や盗難防止のために、持っている衣装は片っ端から着込んでいるんだよな。
 泣けるシーンもあるし、それを泣きのままではなく最後にはギャグで落としたりと、メル・ブルックス節は満載だが、どぎついギャグや下ネタは少ないので、最初にも言ったがメル・ブルックスにしては普通のコメディ映画。

 メル・ブルックスと、元億万長者だという妄想を持った男が、「俺の方が金持ちだ」「いや、俺の方だ」と叩き合い、ついには妄想男が「それでも俺の方が金持ちだ」と捨て台詞を吐く度に怒りに狂ったメル・ブルックスが襲いかかる。
 この繰り返しのギャグが、ラストにもきっちり活かされて映画は無事着地。

2007年08月19日

『ロビン・フッド/キング・オブ・タイツ』 タイツ姿で戦う男たち

Robin_hood_men_in_tights.gif『ロビン・フッド/キング・オブ・タイツ』(1993) ROBIN HOOD: MEN IN TIGHTS 104分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:メル・ブルックス 原案:エヴァン・チャンドラー 脚本:メル・ブルックス、エヴァン・チャンドラー 撮影:マイケル・J・オーシェイ 音楽:ハミー・マン
出演:ケイリー・エルウィズ、リチャード・ルイス、ロジャー・リース、エイミー・ヤスベック、マーク・ブランクフィールド、デイヴ・チャペル、ミーガン・カヴァナグ、エリック・アラン・クレイマー、トレイシー・ウルマン、メル・ブルックス、キャロル・アーサー、ドム・デルイーズ、パトリック・スチュワート、チェイス・マスターソン、ロバート・リッジリー

 ケヴィン・コスナー主演の『ロビン・フッド』(1991)を観たメル・ブルックスは、ある点が不満でしょうがなかったのだろう。
「何で、ロビンがタイツ姿じゃないんだ!!」

 エロール・フリンが『ロビンフッドの冒険』(1938)で演じたロビン・フッドは男性バレリーナばりのタイツ姿だったはず。(だよな)
 ロビン・フッドといえばタイツ姿じゃないとダメだ。ダメなのだ。
 そしてメル・ブルックスは一本の映画に取りかかった。
 それがこの作品『ロビン・フッド/キング・オブ・タイツ』なのである。あくまで憶測だが。

 川に架かった橋を渡ろうとしたロビン・フッド一行が、その橋の主を名乗る大男から通行料を求められる。
 だが、その森はロビンの領地。通行料の支払いを拒否したロビンは、大男を相手にそれぞれに一本の長い棒を持って、戦うことになる。
 カッコンカッコンと打ち合う内に、棒は何度も真っ二つに折れていき、ついには10センチほどの長さになってしまうが、その短い棒で戦い続ける二人。
 そもそも、川といっても一またぎで越えることが出来るような、小川とも言えない単なるせせらぎなのだ。

 ロビン役のケイリー・エルウィズは、イギリス生まれのイギリス人。
「私は、他のロビンと違って英国式発音が出来る」とアメリカ生まれのケヴィン・コスナーやオーストラリア生まれのエロール・フリンにちくりと一言。
『プリンセス・ブライド・ストーリー』(1987)で見せた華麗な剣さばきを再び披露してくれる。

 ラストになってようやくと十字軍戦争から帰還してくる王様。ケヴィン・コスナー版ではショーン・コネリーだった。
『ロビンとマリアン』(1976)で、ロビン・フッドを演じたロビンつながりだろう。
 この作品ではピカード艦長ことパトリック・スチュワートだ。
 ・・・・・・ハゲつながり?

 メル・ブルックス本人はユダヤ教の飲んだくれなラビ(司祭)として登場。出演シーンは少なく、あまり活躍していないのが残念だ。

 劇場公開時のテレビCMはダウンタウンが担当していた。
 映画を観ながら、「しょーもなー」「なんじゃこりゃ」と文句をつけている二人。
 リンゴだかのかぶり物を着けていて、その後頭部に矢が刺さるというオチだったか?
 でも、矢でリンゴを射るのはロビン・フッドじゃなくてウィリアム・テルだし、記憶違いかも。

2007年08月20日

『レスリー・ニールセンのドラキュラ』 メル・ブルックスのドラキュラ

dracula-dead-and-loving-it.jpg『レスリー・ニールセンのドラキュラ』(1995) DRACULA: DEAD AND LOVING IT 91分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:メル・ブルックス 製作総指揮:ピーター・シンドラー 脚本:メル・ブルックス、ルディ・デルカ、スティーヴ・ヘイバーマン 撮影:マイケル・D・オシア 音楽:ハミー・マン
出演:レスリー・ニールセン、メル・ブルックス、ピーター・マクニコル、スティーヴン・ウェバー、エイミー・ヤスベック、リセット・アンソニー、ハーヴェイ・コーマン、ジェニファー・クリスタル、グレッグ・ビンクレイ

 DVDは日本未発売のため、レンタルビデオでしか観ることが出来ない。
 セルビデオも出たかもしれないが、買った人はさすがにごく少数だろう。
 ちなみに『ロビン・フッド/キング・オブ・タイツ』のDVD化は希望するが、これはしなくてもいいや。
 ビデオの冒頭に、この作品が上映された日本のファンタスティック映画祭の観客向けに撮影された、メル・ブルックスからのビデオレターが付いている。
「レスリー・ニールセンは愉快な男でね、オーディションの時に女優が椅子に座る度に、口真似で屁の音を立てるんだ。人間ブーブークッションだね。それから、高層ホテルのエレベーターに乗ったときは、他に老婦人二人が乗っていたのに、口真似で「ブッ、ブッ」とやりながら「あれ?豆は食ったっけな」とやるんだよ。さすがに居づらかったのかご婦人たちは途中の階で降りてしまったね」
 これを観て、非常に嫌な予感がした。
 それって、本人だけ面白人間気取りの、ただの寒いオヤジじゃね?
 メル・ブルックスも下ネタやくだらないギャグが大好きな親父だが、屁の口真似ってのは意外とメル・ブルックスの趣味ではないと思うのだが。

 映画自体は、メル・ブルックス作品というよりは、いつものレスリー・ニールセンもの。
 レスリー・ニールセンがほぼ野放し状態になって、自分だけ面白いと思っているギャグで大暴れ。
 しかし、レスリー・ニールセンはあくまでも役者であって、理解ある演出側に使われることで笑いを生み出す存在。コメディアンじゃないのだ。
『フライング・ハイ』シリーズや、『裸の銃を持つ男』のプロトタイプであるTVミニシリーズの『フライング・コップ』は確かに面白かったが、それ以降は特に語るべき作品がない。
 あるとしたら、唯一『Mr.マグー』ぐらいか。
 メル・ブルックスにはレスリー・ニールセンの暴走を抑えて、あくまでも自分の映画に仕上げて欲しかった。

 ストーリー自体は本家ブラム・ストーカーの原作本『ドラキュラ』に意外と忠実。
 原作本はちょっと荷が重そうだと思う方は、コッポラ版『ドラキュラ』(1992)を観ておくと元ネタの予習になるだろう。
 トランシルバニアの田舎から、ある弁護士の仲介でロンドンに出てきたドラキュラが、美女を狙っての大活躍。笑えないギャグがてんこ盛りだ。
 メル・ブルックスはドラキュラの宿敵ヴァン・ヘルシング教授役。メル・ブルックスが要所要所を繋いでくれるおかげで、観ているこちらとしてはかなり助かる。
 好きなギャグは、ドラキュラに血を吸われて死んでしまった美女に木の杭を打ち込むところ。
 このままでは彼女も吸血鬼になってしまうと、若い男が彼女の胸に杭を当てると、ヴァン・ヘルシングはとっとと画面の外に避難して、「あー、ちょっとばかり血が出るかもしれないから」と一言。
 そして、若者が木槌を振り下ろすと、バケツ10杯分ぐらいの血がドバーッと吹き出して、全身血まみれ。
 なんでも、このシーンは若者役の俳優に大量の血とは教えてなかったそうで、本気でビックリしている。
 しかも、ヴァン・ヘルシングは「とどめを刺すにはもう一度打ち込まないと」
 若者「まだですか・・・?」
 心底うんざりした顔で美女の死体へと向かう若者。当然、またもや血のシャワーを浴びることとなる。

 ドラキュラってのは、招かれないとその家や土地に入れない。だから、弁護士を通してロンドンに招待されたという形でやってきた。さらにはお馴染みのごとく、にんにくは苦手。太陽の光は厳禁。十字架は嫌い。意外と弱点だらけなヤツだ。
 しかも、鏡に映らないので、お化粧するのも一苦労。
 この作品では、ダンスパーティーのシーンで、この「鏡に映らない」のを利用して、ドラキュラの正体を暴く。
 ダンスのパートナーと周りの人間だけ映って、ドラキュラの姿はなし。しかも、踊ってるのはアクロバティックなダンスときたもんだ。一人中を舞う女性は見せ場の一つ。
 ロマン・ポランスキーの『吸血鬼』では、これを逆手に取ったギャグがあった。人間のヴァンパイヤハンターが吸血鬼のパーティーに潜り込むが、鏡に映っているのは、彼と助手の二人の姿だけ・・・

 レンタルビデオには吹き替え版と字幕版がある。
 吹き替え版はドラキュラの手下となる弁護士を広川太一郎が演じている。
 乗合馬車に乗った途端に、他の乗客に「ここで会ったのもなにかの丸、じゃなくて縁」だとか、相変わらず原作にないないセリフをしゃべりまくり。
青野武が吹き替え担当の精神科医との会話は、『モンティ・パイソン』など往年ほどの勢いはないが、やはり楽しい。
「バッタが飛んで、バッタバッタ」って、なんだよ、それ。

 現時点では、これが最も新しいメル・ブルックス監督作品。
 愛妻アン・バンクロフトを亡くして、心の支えを失ったであろうメル・ブルックス。
 もう80歳になったメル・ブルックスだが、ここはもう一本だけで良いから、とんでもない「これぞブルックス」というバカ映画を撮ってもらいたい。