『メル・ブルックス/新サイコ』(1977) HIGH ANXIETY 98分 アメリカ
監督:メル・ブルックス 製作:メル・ブルックス 脚本:メル・ブルックス、ロン・クラーク、ルディ・デルカ、バリー・レヴィンソン 撮影:ポール・ローマン 特殊効果:アルバート・ホイットロック 音楽:ジョン・モリス
出演:メル・ブルックス、マデリーン・カーン、クロリス・リーチマン、ディック・ヴァン・パタン、ハーヴェイ・コーマン、ロン・ケアリー、ハワード・モリス、マーフィ・ダン、ジャック・ライリー、チャーリー・カラス、バリー・レヴィンソン
冒頭に「サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックに捧げる」と表示される。
この映画が製作されたのは1977年。ヒッチコックが亡くなられたのが1980年。さて、ヒッチコックは『新サイコ』を観たのであろうか?
『サイコ』でのシャワーシーンや、『鳥』でのジャングルジムに群がって、そして人に襲いかかってくるなどおなじみのシーンがパロディに!
とあるが、今の若い人には元ネタがなかなか通じないかもしれない。
オレがガキの頃は、時折テレビの洋画劇場でヒッチコックのカラー作品は放送されていたので、ある程度は観ていた。だが、もはや地上波でやることはまずなく、放映されるとしたらスカパー!のクラッシック映画専門チャンネルぐらいだろう。
そして、それらを観ている人の多くからは、「プッ、メル・ブルックス?」といった感じで相手にされていない感じがする。
各作品の特徴あるシーンをパロったところはまだ分かりやすそうだが、屋外から晩餐中の室内にカメラが入ってこようとしてガラスをパリーンと割っちゃったり、ベッドに横たわる新婚の二人を捉えたカメラがぐいぐい遠ざかっていって、ついには壁をぶち破って天へと舞い上がり空撮になる、ヒッチコック独特のカメラワークをパロったギャグもあって侮れない。
悪事に荷担した精神科医が良心の呵責に耐えられなくなり、悪の親玉に「この仕事を降りる。まるでクモの巣にかかったかのようだ」と言うシーンでは、アーチ状をした窓の上部の影がまさしくクモの巣のように精神科医を捕らえている。これもヒッチコック的でナイス。
車の中で運転手からショッキングな出来事を聞かされ、劇的な音楽がジャーン!と鳴る。
ところがこの音楽、いつまでたっても止まらない。ふと外を見ると、隣の車線にはバスが走っており、その中でオーケストラが演奏中だった。なんだ、そりゃ。
ホテルのラウンジでは、メル・ブルックスが、得意のだみ声を聴かせる。なんでも、映画界に入る前は、弾き語りで生計を立てていたこともあるそうだ。
『高所恐怖症』という歌を歌いながら、スタンダップコメディアン風に客いじりをする。
この歌声が様になっている。劇中登場歌の作詞作曲を手がけることも多く、やはり音楽は得意と見える。
主人公が高所恐怖症という設定や、ラストの高い塔での活劇を合わせても、『新サイコ』よりもむしろ『新めまい』が相応しい内容だが、インパクトはやはり『新サイコ』の方が強い。
ハチャメチャなギャグがもうちょっと欲しかった気がするが、ストーリーや個性的な出演者(特に看護師と副院長のSMコンビ)など、全体的にバランスが取れていて、メル・ブルックス作品の中で完成度の高い作品に仕上がっている。