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2007年07月 アーカイブ

2007年07月01日

『スパイキッズ3-D:ゲームオーバー』 飛び出すスパイキッズ

31G516MXZ3L._AA192.jpg『スパイキッズ3-D:ゲームオーバー』(2003) SPY KIDS 3-D: GAME OVER 84分 アメリカ
監督:ロバート・ロドリゲス 製作:ロバート・ロドリゲス、エリザベス・アヴェラン 製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン 脚本:ロバート・ロドリゲス 撮影:ロバート・ロドリゲス 編集:ロバート・ロドリゲス 音楽:ロバート・ロドリゲス
出演:アントニオ・バンデラス、カーラ・グギーノ、アレクサ・ヴェガ、ダリル・サバラ、リカルド・モンタルバン、ホーランド・テイラー、シルヴェスター・スタローン、マイク・ジャッジ、サルマ・ハエック、マシュー・オリアリー、エミリー・オスメント、ダニー・トレホ、アラン・カミング、トニー・シャルーブ、スティーヴ・ブシェミ、ビル・パクストン、ジョージ・クルーニー、イライジャ・ウッド、チーチ・マリン、コートニー・ジンズ、ライアン・ピンクストン、ロバート・ヴィート、ボビー・エドナー

「シリーズ第3作目だから、やっぱ3D映画にしようぜ。『ジョーズ3』や『13日の金曜日part3』みたく」とロバート・ロドリゲスが言ったのかは知らないが、監督もロドリゲスならば製作も脚本も編集もなにからなにまでロドリゲスが担当のロドリゲス映画だから、やはり立体映画にしたのはロドリゲスの意志だろう。
 『スパイキッズ1、2』が劇場で観ていたが、さすがに3はDVDでいいかな?と思っていたオレを劇場まで引っ張り出したのだから、思惑は成功だ。
 で、劇場の入り口で立体用の眼鏡をくれる。これが、偏光レンズを使った物と思っていたら、青と赤のセロファンの昔懐かしい立体眼鏡。
 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でビフの手下の一人がかけていたヤツだな。
 オレらの世代(30代後半)だと、『東映まんが祭り』での『キカイダー01』や『イナズマン』の短編を思い出す。
 なんだ、赤青式の手抜き映像か。期待するんじゃなかったと思いながら、とりあえず席に着く。
 今回は弟の単独主演。お姉さんも出てくるが、すでに敵に誘拐されていて、ほとんど出番無し。もう、お子様映画は嫌だとかごねたのかもしれない。
 その敵を演ずるのがシルヴェスター・スタローン。他にも豪華キャストが大勢出ている。ほとんどの人は、ちょっと出てくるだけの、まさにゲスト出演だが。
 映画の前半は、立体眼鏡をかけずに普通の2D映画として進む。
 そして、弟がコンピュータの世界にはいる時にようやくと眼鏡の出番となる。
 CGで作られたゲームの世界が立体映像として展開されるわけだ。
 赤青式ということで、たかをくくっていたが、これが以外にがんばっている。
『キカイダー01』などではマンガ雑誌の2色カラーのような色合いだったが、こちらではかなり色彩が再現されている。
 もちろん、天然色そのままというわけにはいかないが、技術の進歩はすごい物だ。
 3Dというギミックを除いてしまうと、全2作に明らかに劣っているのが残念だが、今時、立体映画を、しかも赤青式で作ってしまうロドリゲスの心意気に乾杯。
 ロドリゲスは確かにバカだろうが、これだけのゲスト出演を集めるからには、イケてて楽しいバカに違いない。バカに乾杯。
 偏光レンズ方式ではないので、ご家庭のテレビでも手軽に立体映像を楽しめることもポイント。DVDにはちゃんと眼鏡がいくつか付属してくる。
 でも、立体映画は『シャークボーイ&マグマガール 3-D』でやめとこうね。

2007年07月09日

『プロデューサーズ』(1968) 最低演劇を作って大もうけだ!

51l0w0DIIrL._AA240_.jpg『プロデューサーズ』(1968) THE PRODUCERS 88分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:シドニー・グラジエ 脚本:メル・ブルックス 撮影:ジョセフ・コフィ 音楽:ジョン・モリス
出演:ゼロ・モステル、ジーン・ワイルダー、ケネス・マース、ディック・ショーン、リー・メレディス、クリストファー・ヒュウェット、アンドレアス・ヴォウスティナス、エステル・ウィンウッド、レニー・テイラー、ビル・ヒッキー

 WOWOWでメル・ブルックス特集をやっているので、便乗企画としてうちもメル・ブルックス特集。
 まぁ、そのうちやろうとは思っていたのでちょうどいい。

 最近、リメイクされたので『プロデューサーズ』という名前を知っている人も多いと思うが、それのオリジナル版。メル・ブルックスの監督第一作だ。
 リメイク版はミュージカルとなっていたが、こちらはノーマルな映画。主人公が雇う秘書がただのお色気担当だったりと、多少異なる点はあるが、基本ストーリーは一緒。
 演劇プロデューサー(ゼロ・モステル)の帳簿を調べに来た会計士(ジーン・ワイルダー)が、資金を集めるだけ集めて安いコストで劇を作り、その劇を失敗させれば出資者に利益分配をしなくていいので、差額で大もうけというアイディアを思いつく。
 会計士は真面目な男で、何の気は無しに口にしただけなのだが、落ちぶれたプロデューサーはその案に飛びついて、最低の脚本、最低の演出家、最低の役者で最低のミュージカルを作る。
 ドイツ人の脚本家が書いたヒットラー礼賛の、その名も『ヒットラーの春』だ。
 プロデューサーは、最後のロマンスを求める年老いた未亡人達とデートを重ねて、出資を仰ぐ。
 巨漢で化け物じみたゼロ・モステルとヨボヨボのバアさんが、公園でかくれんぼをしたり、バイクで暴走したりするシーンが、笑えつつも、なんか良い感じ。
 ところが、その最低のミュージカルは初日で不人気のあまり1日で打ちきりになってしまうはずだったのだが、彼らの目論見はまったく予想外の方向へと進んでいく。

 リメイク版はミュージカルなので、観ていて楽しいが、映画のテンポとしてはこちらの方が上だろう。
 化け物じみたゼロ・モステルと、神経過敏症なジーン・ワイルダーの息も合っている。
 ユダヤ人であるメル・ブルックスが、ヒットラーとナチを徹底的にコケにした、反ナチ映画でもあったりする。

 この作品はアメリカでヒットし、アカデミー脚本賞を取ってしまった。
 脚本を書いたのはメル・ブルックスなので、つまりはメル・ブルックスの家に行くとオスカー像がどっかにあるはずだ。
 アカデミー賞を取ったことなど気にもしていない、メル・ブルックスのその後の更なるバカっぷりを見ると、やはりただ者ではない。

2007年07月18日

『ヤング・フランケンシュタイン』 フランケンシュタイン博士が帰ってくる

B000E42PXW.jpg『ヤング・フランケンシュタイン』(1974) YOUNG FRANKENSTEIN 107分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:マイケル・グラスコフ 脚本:ジーン・ワイルダー、メル・ブルックス 撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド メイクアップ:ウィリアム・タトル 音楽:ジョン・モリス
出演:ジーン・ワイルダー、ピーター・ボイル、マーティ・フェルドマン、マデリーン・カーン、クロリス・リーチマン、ジーン・ハックマン、テリー・ガー

 メル・ブルックスとジーン・ワイルダーによるボリス・カーロフ主演の『フランケンシュタイン』(1931)のパロディ・オマージュ映画。ちゃんとモノクロ映画として撮っているところがうれしい。
『プロデューサーズ』との間には『メル・ブルックスの命がけ!イス取り大合戦』(1970)という作品があるのだが、日本未公開。ビデオソフト化はされたので20年ほど前に観ているのだが、憶えていないので飛ばす。
 ボリス・カーロフ主演版と書いたのは、メアリー・シェリーによる原作とはかなりかけ離れているから。原作本は原文も翻訳も古くて読みにくいので、ロバート・デ・ニーロ主演、ケネス・ブラナー監督による『フランケンシュタイン』(1994)を観ると手っ取り早くていいかもしれない。

 主人公はフランケンシュタイン博士の孫(ジーン・ワイルダー)だ。アメリカで外科の教授として教鞭を執っていた彼の元を、ご先祖様からの文書を持った弁護士が訪れる。
 そして、トランシルバニアに渡った彼は、やぶにらみの召使いアイゴール(マーティ・フェルドマン)が操る馬車によってフランケンシュタイン城に到着した彼は、隠された実験室と、死体再生の研究書を見つけ、禁断の実験に手をつける。

 おなじみのセリフ「Alive!It's Alive」も登場し、基本的なストーリーは『フランケンシュタイン』(1931)に則りながら、細かいギャグを交えつつ展開していく。表で待っていた警官の帽子にダーツの矢が刺さっているギャグとかがお気に入り。
 コメディ映画として作られいるので死人も出ず、ホラー映画が苦手な人でも大丈夫。あー、でも『フランケンシュタイン』(1931)を観ていないと面白さは半減なので、出来ればそちらと続編の『フランケンシュタインの花嫁』は先に観ておいた方がいいだろう。厳密にはホラー映画ではなく怪奇映画だろうし。

 途中で、ジーン・ワイルダーが歌と踊り、そしてタップを披露するシーンがあるが、これがばっちり決まっている。
 コメディアンとしての側面が語られることが多いジーン・ワイルダーだが、ブロードウェイ出身だけあって、このぐらいはお手の物だと思われる。
 俳優の能力として求められる物が、日本と比べて格段に高いのだろう。ここら辺にアメリカショービジネスの奥深さを感じる。

 メル・ブルックス作品の中でも評価は高めなようだ。
「メル・ブルックス本人が出演している作品は、くだらないし、つまらないから嫌い」という声もあるようなので、本人未出演というのもポイントになっているのかもしれない。
 だが、オレはメル・ブルックス出演で、タイトルが『メル・ブルックスのなんとか』となっている作品の方が好きだ。くだらないって?そこがいいんじゃないかと強く主張する。

2007年07月20日

『ブレージングサドル』 悪と戦え、黒人保安官

B000IU4OHW.jpg『ブレージングサドル』(1974) BLAZING SADDLES 93分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:マイケル・ハーツバーグ 原作:アンドリュー・バーグマン 脚本:メル・ブルックス、ノーマン・スタインバーグ、アンドリュー・バーグマン、リチャード・プライアー、アラン・ユーガー 撮影:ジョセフ・バイロック 作詞:メル・ブルックス 音楽:ジョン・モリス
出演:クリーヴォン・リトル、ジーン・ワイルダー、メル・ブルックス、ハーヴェイ・コーマン、マデリーン・カーン、スリム・ピケンズ、デヴィッド・ハドルストン、キャロル・アーサー、ドム・デルイーズ

黒人が主人公の西部劇というのも珍しい。そんなに数を観ているわけではないが、他にはマリオ・ヴァン・ピープルズの『黒豹のバラード』(1993)ぐらいしか思いつかなかった。
 主人公のバートは黒人で、鉄道線路建設現場で働いている。
 黒人労働者の命など一文の価値もないと考えている現場主任の頭を叩きのめしたばかりに、あわれ絞首台行きへ。
 ところが、鉄道路線地に決まったある小さな街を安く買いたたくため、鉄道会社の重役が好色な知事(メル・ブルックス)を言葉巧みに騙して、バートを保安官としてその街に送り込んだ。
 黒人の保安官で住民たちが困惑しているところに、手下に街を襲わせて、住民を追い払おうというのだ。
 ところがバートは意外な活躍を見せ、次第に住民たちの信頼を得ていく。
 留置所にいた酔っぱらいも実は早抜き早撃ちで有名なフリスコ・キッド(ジーン・ワイルダー)で、バートの片腕として働いてくれる。
 業を煮やした悪党は、腕自慢の悪党どもを募集して集める。その中に、第二次大戦中のドイツ兵がなぜかいたりするが、気にするな。
 そして、悪の一団が街へと押し入ってくるが、バートの巧妙な罠が仕掛けられていた。

 と、ここまでだと割と普通なコメディ。ハチャメチャな展開になるのはこれからだ。
 バートたちと悪党どもは乱闘を繰り広げ、それを捉えたカメラはずずずずーっとズームアウトしていく。
 すると、そこはワーナースタジオの中に作られたオープンセットの中だった。
 自分たちのセットを飛び出した彼らは、ミュージカルを撮影中の室内セットに乱入して男性ダンサーたちと一騒動あったり、食堂でヒットラー役の俳優とパイ投げをしたりと大騒ぎ。
 悪の親玉はチャイニーズシアターへと逃げ込むが、そこで上映されていたのは佳境に入ったこの映画『ブレージングサドル』そのもの。映し出されているのは、親玉を追ってチャイニーズシアターにたどり着いたバートだ。

 どこまでが現実で、どこからが映画の中なのか。これも一種のメタ映画?
 撮る人によっては難解な芸術作品にもなる題材も、メル・ブルックスにとってはギャグのネタだ。

 メインキャストに大バカ者がいないので中盤に多少物足りなさを感じる。
 知事(上着の背中にガバナーの“GOV”と書かれている。なんでや)が出てくると、なにかにつけては女性に抱きついてばかりで楽しいのだが、出演シーンは少ない。
 バートが知恵者という設定だから、昔は名うてのガンマンとはいえ、今では酒で実を崩していたフリスコ・キッドにもうちょっとギャグ要員として活躍してもらっても良かったかもしれない。

2007年07月21日

『サイレント・ムービー』 声なきメル・ブルックス

B000E42PZU.jpg『サイレント・ムービー』(1976) SILENT MOVIE 88分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:マイケル・ハーツバーグ 脚本:メル・ブルックス、 ロン・クラーク、ルディ・デルカ、バリー・レヴィンソン 撮影:ポール・ローマン 音楽:ジョン・モリス
出演:メル・ブルックス、マーティ・フェルドマン、バーナデット・ピータース、ドム・デルイーズ、シド・シーザー、ハロルド・グールド、アン・バンクロフト

 ずいぶんと昔のことだ。オレとサークルの先輩2人で片方の先輩の下宿で飲み会をやることになった。ついては、それぞれお勧めの映画のビデオを持ち寄って酒を飲みながら観ようではないかという提案がなされ、即刻可決された。
 揃ったのはイギリスの特殊部隊SASの活躍を描いた『ファイナル・オプション』、フランスの中年男が執念の復讐を遂げる『チャオ・パンタン』、そしてオレが持参した『サイレント・ムービー』だった。

 ビデオの再生が終わった瞬間の空気は実に微妙だった。というか、上映中から微妙だった。先輩たちは時折笑ったが、腹を立てながら笑っている様な異様な笑い声だった。
 まぁしょうがないなぁ、メル・ブルックスだもん。しかも『サイレント・ムービー』だもん。

『サイレント・ムービー』はタイトルの通りに無声映画仕立てで作られている。それ自身は悪いアイディアではないと思うのだが、他がちょっと・・・オープニングの妊婦を乗せたため車がウィリー走行になるところからどうにも笑えそうで笑えない。
 まずテンポが悪い間が悪い、画面の構図が決まってない。笑えるかな?とはなるが映画の方から観客の足をすくってしまう。
 メル・ブルックスなので例によって野暮ったい。その野暮ったさがメル・ブルックスの魅力でオレが大好きな点なのだが、さすがにこの作品はちとつらい。メル・ブルックスにはやはりしゃべりのギャグが欠かせない。言葉を封じられたメル・ブルックスの動きはもどかしく笑えない。
 思い出して欲しい、優れたサイレント映画のコメディアンたちを。バスター・キートンやチャールズ・チャップリン(とはいえチャップリンは好きじゃないが)のスポーティーでスピーディーでそして華麗なる動きを。ただ歩いているだけのシーンが軽やかで、ドタバタのシーンも実は計算され尽くした緻密な動きになっている。その動きの軽やかさが、動きの緻密さが悲しいかなメル・ブルックスにはないのだ。

 しかし、あえて言おう、オレはそこが好きだ。
 1976年にもなって今さらサイレント映画に挑戦し、あえなく失敗しているところが好きだ。
 劇中で映画を作ることになり、実在する映画スターに出演を依頼しに行くが、そのスターの中に実力派女優アン・バンクロフトを出演させているのも好きだ。「彼女は名女優だからな」って、あんたそれ実生活での奥さんじゃん。
 主観においては好きな作品なのだが、客観においてはおそらく駄作であろう。そんな内なる葛藤も、映画を観たり、それについて書いたりする上での楽しみの一つだ。

 脚本には後に『レインマン』などで監督としても活躍するバリー・レヴィンソンの名がある。ちなみに同じくメル・ブルックスの『新サイコ』(1977)では脚本だけではなくホテルのボーイ役としてちょこっと出演している。

2007年07月25日

『メル・ブルックス/新サイコ』 新聞だー!新聞だー!

B000P0I606.jpg『メル・ブルックス/新サイコ』(1977) HIGH ANXIETY 98分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:メル・ブルックス 脚本:メル・ブルックス、ロン・クラーク、ルディ・デルカ、バリー・レヴィンソン 撮影:ポール・ローマン 特殊効果:アルバート・ホイットロック 音楽:ジョン・モリス
出演:メル・ブルックス、マデリーン・カーン、クロリス・リーチマン、ディック・ヴァン・パタン、ハーヴェイ・コーマン、ロン・ケアリー、ハワード・モリス、マーフィ・ダン、ジャック・ライリー、チャーリー・カラス、バリー・レヴィンソン

 冒頭に「サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックに捧げる」と表示される。
 この映画が製作されたのは1977年。ヒッチコックが亡くなられたのが1980年。さて、ヒッチコックは『新サイコ』を観たのであろうか?

『サイコ』でのシャワーシーンや、『鳥』でのジャングルジムに群がって、そして人に襲いかかってくるなどおなじみのシーンがパロディに!
 とあるが、今の若い人には元ネタがなかなか通じないかもしれない。
 オレがガキの頃は、時折テレビの洋画劇場でヒッチコックのカラー作品は放送されていたので、ある程度は観ていた。だが、もはや地上波でやることはまずなく、放映されるとしたらスカパー!のクラッシック映画専門チャンネルぐらいだろう。
 そして、それらを観ている人の多くからは、「プッ、メル・ブルックス?」といった感じで相手にされていない感じがする。
 各作品の特徴あるシーンをパロったところはまだ分かりやすそうだが、屋外から晩餐中の室内にカメラが入ってこようとしてガラスをパリーンと割っちゃったり、ベッドに横たわる新婚の二人を捉えたカメラがぐいぐい遠ざかっていって、ついには壁をぶち破って天へと舞い上がり空撮になる、ヒッチコック独特のカメラワークをパロったギャグもあって侮れない。
 悪事に荷担した精神科医が良心の呵責に耐えられなくなり、悪の親玉に「この仕事を降りる。まるでクモの巣にかかったかのようだ」と言うシーンでは、アーチ状をした窓の上部の影がまさしくクモの巣のように精神科医を捕らえている。これもヒッチコック的でナイス。

 車の中で運転手からショッキングな出来事を聞かされ、劇的な音楽がジャーン!と鳴る。
 ところがこの音楽、いつまでたっても止まらない。ふと外を見ると、隣の車線にはバスが走っており、その中でオーケストラが演奏中だった。なんだ、そりゃ。

 ホテルのラウンジでは、メル・ブルックスが、得意のだみ声を聴かせる。なんでも、映画界に入る前は、弾き語りで生計を立てていたこともあるそうだ。
『高所恐怖症』という歌を歌いながら、スタンダップコメディアン風に客いじりをする。
 この歌声が様になっている。劇中登場歌の作詞作曲を手がけることも多く、やはり音楽は得意と見える。

主人公が高所恐怖症という設定や、ラストの高い塔での活劇を合わせても、『新サイコ』よりもむしろ『新めまい』が相応しい内容だが、インパクトはやはり『新サイコ』の方が強い。
 ハチャメチャなギャグがもうちょっと欲しかった気がするが、ストーリーや個性的な出演者(特に看護師と副院長のSMコンビ)など、全体的にバランスが取れていて、メル・ブルックス作品の中で完成度の高い作品に仕上がっている。

2007年07月26日

『メル・ブルックス 珍説世界史PARTⅠ』 なんでパンフまで買ってるかなぁ

B000E42PY6.jpg『メル・ブルックス 珍説世界史PARTⅠ』(1981) MEL BROOKS' HISTORY OF THE WORLD PART I 92分 アメリカ

監督:メル・ブルックス 製作:メル・ブルックス 脚本:メル・ブルックス 撮影:ウディ・オーメンズ 音楽:ジョン・モリス、メル・ブルックス
出演:メル・ブルックス、ドム・デルイーズ、マデリーン・カーン、グレゴリー・ハインズ、ロン・ケアリー

 本棚のどこを探してもこの映画のパンフレットが出てこない。
「あれ~、確かにあったんだけどな」とあちこちを探すが見あたらない。別にパンフレットマニアではないのでせいぜい100冊ぐらいしか持っていないし、サイズからいってパンフ置き場以外には入らないだろう。引っ越しのどさくさで捨ててしまったかな。
データに関してはネットで調べればいいじゃないかとも思うのだが、一度パンフに頭が行ってしまうとあれには貴重な情報が記されていたのではないかと気になってしょうがない。どうせメル・ブルックス作品のパンフだから、製作会社もそう力を入れて作ってはいないとは思うが。
そのパンフが連休中の整理整頓でようやく出てきた。保険の証券などにこれ一冊だけ紛れ込んでいた。何故に?

 人類が二本の足で立った、ついでに余計な物も立った瞬間からフランス革命までの歴史を、メル・ブルックスが一気に描ききる。そこで語られる世界史は「嘘、おおげさ、紛らわしい」などJAROお墨付きのインチキ振りだ。
監督にして主演のメル・ブルックスはローマの哲学者や十戒のモーゼを始め一人五役を演じている。相変わらずの目立ちたがり屋だ。ちなみに最初は石版が三つで十五戒だったのだが、モーゼがうっかり一枚落として割ってしまったので十戒になったんだと。
グレゴリー・ハインズはローマ時代に登場する奴隷役。もちろんローマサンダルで得意のタップを披露する。ラストの意外な(でもないか)再登場も笑える。

 まあ、例によって泥臭くてオヤジ臭くていかにもユダヤジョークだが、都会的で洗練されてオシャレなのをメル・ブルックスに求めるのが間違いだろう。なんといってもエルンスト・ルビッチの『生きるべきか死ぬべきか』を『メル・ブルックスの大脱走』にしてしまう男だ。基本ストーリーは同じながらあれだけオリジナルと違う作品も珍しい。でも、ルビッチもユダヤ人なんだけどね。
歴史を駆けめぐるので大型セットや衣装などがメル・ブルックス作品としてはかなり金がかかっていそうだ。映画がヒットしたかとか資金が回収できたかとかに関係なく、うーむ無駄金だなぁという気がする。
でもね、でも好きなんだよなぁ。このしょうもなさは他になかなかないよね。

 『珍説世界史PARTⅠ』となっているが、『PART Ⅱ』は存在しない。厳密には予告編のみが存在する。この作品のラストにおまけとして付いているのがそれで、アイススケートでフィギアをするアドルフ・ヒットラーとか、ついに人類が宇宙に飛び出し、ユダヤの衣装と帽子を着てヒゲを生やしたユダヤ人が未来の宇宙へ進出していく『スターウォーズ』のパロディなどである。
これで『スターウォーズ』のパロディというネタが気に入ったのか、メル・ブルックスは後に『スペースボール』を撮ってしまう。懲りないオヤジだ。
最近見ないなと思っていたが、CGアニメ映画『ロボッツ』でユアン・マクレガーやハリー・ベリーと一緒に声優をやっていた。とりあえず元気そうでなにより。

2007年07月31日

『メル・ブルックスの大脱走』 俳優-メル・ブルックス

B000P0I61U.jpg『メル・ブルックスの大脱走』(1983) TO BE OR NOT TO BE 108分 アメリカ

監督:アラン・ジョンソン 製作:メル・ブルックス 脚本:トーマス・ミーハン、ロニー・グレアム 撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド 美術:テレンス・マーシュ 音楽:ジョン・モリス
出演:メル・ブルックス、(アン・バンクロフト)、ティム・マシスン、チャールズ・ダーニング、ジョージ・ゲインズ、クリストファー・ロイド、ホセ・ファーラー、ジェームズ・ハーク、ジョージ・ワイナー、ジャック・ライリー、ルイス・J・スタッドレン、ヘンリー・ブランドン

 エルンスト・ルビッチの『生きるべきか死ぬべきか』(1942)のリメイク。
 メル・ブルックスなのに、パロディではなくリメイク。オリジナルにはなかったメル・ブルックス的ギャグも含まれているので、リメイク8に対してパロディ2ぐらいの割合だろうか。
 ストーリーはオリジナルにかなり忠実。そして出来も割と良い。この2点が『メル・ブルックスの大脱走』の最大の弱点とも言える。
 今作ではメル・ブルックスは製作と主演のみで、監督や脚本には携わっておらず、しょーもないギャグは抑えてオリジナルに勝負を挑んでいるのだが、正攻法でいって勝てる相手ではない。
 結果、『メル・ブルックスの大脱走』はメル・ブルックス嫌いな人でも意外と楽しめると思うが、『生きるべきか死ぬべきか』と比較するのはやはり酷というものだ。
 いっそのことパロディ8:オリジナル2ぐらいにハチャメチャにしてくれた方が、個人的には嬉しかった。

 ドイツに占領されたポーランドの首都ワルシャワ。舞台を開いていた劇団が、地下組織メンバーの名前が記載された密書や、仲間の救出などでナチスを相手に大活躍。
 といっても、銃や爆弾が使えるわけでもない。彼らの武器はお芝居だ。
 お得意の演技でドイツ兵やゲシュタポを煙に巻いて、徹底的にコケにする様は痛快である。
 国立大学で演劇を専攻したもののずっと端役に甘んじてきた役者が、ドイツ兵を前に「ユダヤ人だって人間なんだ」と大芝居を打つシーンでは、バックで思わずドイツ兵が涙をこぼしていたりする。

 唄ったり踊ったり、重要人物に変装したりで役者に専念したメル・ブルックスはやはり芸達者。主題歌や劇中歌の作詞や作曲を手がけている場合も多い。
 空軍の若い将校さんが恋に落ちるにはちょっと年増じゃないかなのアン・バンクロフトもさすがの大女優ぶりを魅せる。役柄は実生活と同じくメル・ブルックスの妻の大女優。
 その恋の相手のティム・マシスンは『アニマルハウス』でデルタのリーダー格をやっていた人。
 対するドイツチームは(チームかよ)、ゲシュタポの大佐チャールズ・ダーニングとその部下クリストファー・ロイドの怪演が目立つ。

 ラストは連続オチが見事に決まり、飛行機は着地し映画も着地する。
 メル・ブルックス未体験者はこの作品か『逆転人生』からだと入りやすいだろう。