『オペラは踊る』(1935) A NIGHT AT THE OPERA 91分 アメリカ
監督:サム・ウッド 製作:アーヴィング・G・サルバーグ 原作:ジェームズ・ケヴィン・マッギネス 脚本:ジョージ・S・カウフマン 撮影:メリット・B・ガースタッド
出演:グルーチョ・マルクス、ハーポ・マルクス、チコ・マルクス、キティ・カーライル、アラン・ジョーンズ、ウォルター・ウォルフ・キング、マーガレット・デュモント、ジークフリード・ルーマン
『我輩はカモである』までの5作品はパラマウントで製作された。
もともと5作品の契約で始まって、『我輩はカモである』の興行成績がさんざんだったために、ニューヨークからハリウッドまで進出しておきながらパラマウントを追われたマルクス兄弟を拾ったのはMGMだった。あの、ライオンのマークで始まる映画会社だ。
そのためか、これまで1年1本のペースで製作されていたが、『我輩はカモである』(1933)、『マルクス兄弟オペラは踊る』(1935)と1年間が空いている。
これまでの作品と、カラー的にも大きく変わっている。
音楽やダンスのシーンが増えたり、ハーポによる「あんた、ジャッキー・チェンか?」と言いたくなるようなアクションが加わったこともあるが、個人的にはカット数の変化に注目したい。
日本野鳥の会が使うようなカウンターを使って数えたわけではないが、パラマウント作品と比べて、この『オペラは踊る』は明らかに時間単位でのカット数が増えているように思う。
そのうち、時間があったら数えてみないと精確なことはいえないが、その点について推察した内容はこうだ。
舞台出身のマルクス兄弟にとって、基本は1シーン1カットだ。
グルーチョがベラベラといい加減なことを喋りまくったり、ハーポが面白い動きをするのも、一つの連続した流れによって成立する。
しゃべりのギャグや、ドタバタ走り回るシーンをカットで割られてしまうことは、自分たちの芸によってそのシーンを支配していたこれまでと違い、演出側にその支配権を取られてしまうことになる。
それに妥協したのは、再起をかけていたからだろう。
アカデミー監督賞に三度ノミネートされたサム・ウッドによって、マルクス兄弟はより映画寄りになっていったのだろう。
刑務所の独房のような狭い船室に、次から次へと人が入ってきて、身動きが取れなくなるほど満員になるギャグや、刑事がグルーチョのアパートを、ハーポとチコを探して、部屋から部屋へと移動し、それから逃げるために二人も部屋から部屋へと移動するギャグなどは、以前の作品ならばそんなにカットは割られなかったはずだ。
この作品は大成功を収め、マルクス兄弟は再びスターの座に帰りつくこととなった。