« 『御冗談でショ』 アメフト試合でドタバタだ | メイン | 『オペラは踊る』 オペラハウスでドタバタだ »

『我輩はカモである』 独裁者が戦場でドタバタだ

51%2BOG%2B8hBJL._AA240_.jpg『我輩はカモである』(1933) DUCK SOUP 69分 アメリカ

監督:レオ・マッケリー 脚本:バート・カルマー、ハリー・ルビー 撮影:H・シャープ
出演:グルーチョ・マルクス、チコ・マルクス、ハーポ・マルクス、ゼッポ・マルクス、マーガレット・デュモント、ルイス・カルハーン

『我輩はカモである』、通称『我カモ』。原題の『DUCK SOUP』はもちろんカモのスープでスープの中でも上等なスープなんだだそうだ。
 マルクス兄弟の最高傑作と現代では言われているが、当時の観客には受け入れられず、パラマウントを追われる結果となった作品でもある。
 この映画バカ黙示録の2000年02月29日に書いた第一エントリで、この『我輩はカモである』に関係のある文章を書いている。
 映画について直接書くまで7年ちょっとかかったのだ。とっとと書いとけって感じだが。

 作品の在り方については2000年のエントリで書いているので、今回はまた別の側面から。
 これまでは、マルクス兄弟のキャラクターに頼ったギャグが多かったが、今回はそれに加えて映画の視覚的ギャグが比重を増している。
 例えば、何でも出てくるハーポのコートは、『けだもの組合』では、チコに「懐中電灯(フラッシュ)を出せ」と言われて、代わりに「魚(フィッシュ)」が出てきて、チコに怒られていた。
 この作品では、雇い主から「記録(レコード)を出せ」と言われて、音楽のレコードを出すまではこれまでと同じだが、怒った雇い主がそのレコードを奪って放り投げると、ハーポが拳銃を取り出して撃ち、レコードに命中して割れるといった、より発展した映画的なギャグになっている。
 他に、マルクス兄弟作品の中で、オレが一番好きなギャグも登場する。
 フリードニアという国の首相となったグルーチョの公用車は、ハーポの運転するサイドカー。「車を用意しろ」との指示で玄関前に待っていたサイドカーにグルーチョが乗ると、そのサイドカーを残してハーポが運転するバイクだけが走り去る。
 そして、もう一度同じギャグが登場し、三回目には「もうその手は食わんぞ」と、ハーポをサイドカーに座らせグルーチョは自分がバイクにまたがるが、こんどはバイクを残してサイドカーだけが走り去ってしまう。
 繰り返しはギャグの基本だが、それに一捻り加えた上質かつ個人的に大笑いなギャグだ。

 ハーポは初期の作品からゴムまりでならすクラクションを持ち歩いて活用していたが、この作品ではさらにハサミが加わる。これで相手のスーツの背中の布地から引っ張り出したポケット、腰布などなんでもかんでも切ってしまう。アイテム増加でレベルアップと言ったところだろうか。

 大金持ちの未亡人の後押しでフリードニアの首相に任命されたグルーチョは、閣僚たちの意見など無視して暴走し、ついには隣国との戦争に突入してしまう。
 これがファシズムを皮肉った作品だとして、ムッソリーニが激怒し、イタリアでは上映禁止になったそうだ。
 同じ傾向の作品としては、チャールズ・チャップリンの『独裁者』があるが、オレとしては真面目な人間が真面目に作た退屈な『独裁者』よりも、不真面目な連中が真面目に作った、この『我輩はカモである』を断固支持し、そして大笑いする。

 首相秘書役のゼッポは可哀想なぐらい見せ場がなく、この作品を持ってマルクス兄弟を脱退。アイドルグループ風に言えば卒業か。
 もちろん、実の兄弟同士なので、脱退しても兄弟ではあるのだが。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.jion-net.com/mt/mt-tb.cgi/4729

コメントを投稿