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2007年05月 アーカイブ

2007年05月02日

『キャリー』(2002) バケツいっぱいの豚の血

affiche_Carrie_2002_1.jpg『キャリー』(2002) CARRIE 135分 アメリカ

監督:デヴィッド・カーソン 製作:デヴィッド・リヴィングストン 製作総指揮:デヴィッド・カーソン、ペン・デンシャム、ブライアン・フラー、マーク・スターン、ジョン・ワトソン 原作:スティーヴン・キング 脚本:ブライアン・フラー 撮影:ヴィクター・ゴス 音楽:ローラ・カープマン
出演:アンジェラ・ベティス、パトリシア・クラークソン、レナ・ソファー、キャンディス・マクルーア、エミリー・デ・レイヴィン、トビアス・メーラー、デヴィッド・キース

 オレが持っている新潮文庫版の『キャリー』原作は1988年8月5刷のもの。つまり読んだのはおよそ20年前と言うことで、ただでさえ記憶力に問題があるため詳しいところは憶えちゃいない。それでも今回1976年版『キャリー』と見比べてみると、こちらの方が原作に近いようである。テレビ用映画と言うことで多少上映時間が長いおかげもあるだろう。
 1976年版では省略されていた終盤での町の崩壊や、少女期の隕石落下などが今作では再現されている。SFXの発達で昔では映像化が難しかった物が比較的低コストで実現できるようになったからだ。

 オープニングの科学の授業の内容がダーウィンの進化論で、そこで教師がキャリーに対して「君は図書館で自習していなさい。お母さんにそう頼まれているから」というところでキャリーの母親が進化論を否定する狂信的キリスト教徒で、しかも娘に対して過剰に干渉していることを感じさせて上手い。
 パソコンや携帯電話、ビデオカメラが登場するなど時代は現在に変更されている。キャリーが自分の力についてインターネットで奇蹟やサイコキネシスについて検索して調べているシーンがあったりする。
 キャリーをプロムナイトに連れ出そうとする女の子が黒人になっているのもこれまた時代の流れだろう。
 母親はプロムへの参加は渋々認める物の、キャリーが作ったドレスを見て「赤は駄目」と強く主張する。実際はピンクなのでキャリーもそう反論してそのドレスで出席するが、そのドレスが血で赤く染まり、そして・・・

 オレは衛星放送でやっているのを観た。出来は悪くないと思うのだが、何故かまだDVD化はされていないようだ。レンタルビデオでは出ていたはずなので興味がある方はビデオでどうぞ。

2007年05月03日

『炎の少女チャーリー:REBORN』 恋すると燃え上がる女

31YZ5EB6TYL._AA192_.jpg『炎の少女チャーリー:REBORN』(2002) FIRESTARTER 2: REKINDLED 169分 アメリカ

監督:ロバート・イスコヴ 製作:ジェフリー・モートン 製作総指揮:トム・セイヤー 原作:スティーヴン・キング 脚本:フィリップ・アイズナー 撮影:デヴィッド・ボイド 音楽:ランディ・ミラー
出演:マーガリート・モロー、マルコム・マクダウェル、デニス・ホッパー、ダニー・ヌッチ、スカイ・マッコール・バートシアク、ジョン・デニス・ジョンストン、ダーネル・ウィリアムズ、ロン・パーキンス、デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ、ダン・バード

『炎の少女チャーリー』から、10年ほど後の後日談。 原作スティーヴン・キングとなっているが、小説は存在せず、フィリップ・アイズナーによるオリジナル脚本で製作された。
 少女だったチャーリーは成長して20歳ぐらいの大学生になっている。だから炎の女というタイトルは厳密には『炎の女チャーリー』が相応しいだろう。なんかB級アクション映画みたいだが。

 TV用映画だが悪役がマルコム・マクダウェルだったりデニス・ホッパーも出演していたりとなかなか出演陣も豪華。ただ、全二話のテレビ用映画で、デニス・ホッパーが出演しているのは後編だけだが。
 向精神薬LOT6の投薬実験で父と母が超能力を得て、その娘であるチャーリーはパイロキネシス(発火能力)を持って生まれたが、その力ゆえに政府組織から追われていたのがオリジナル版。今作では名前を変えて大学生としてLOT6事件を調べている。だが彼女の正体が組織に見つかってしまい、LOT21で生み出された超能力を持つ子供たちと町のメインストリートで対決することになる。子供たちの能力もそれぞれ豊富でちょっと『X-MEN』シリーズっぽい。
 この戦いでは町が破壊され炎を上げて燃え上がりなかなかな迫力。日本だったら劇場用映画でしか出来ないようなスケールだ。これをTV用映画でやるんだからすごい。

 チャーリーと男性とのロマンスが中途半端だったり、敵の組織があまり迫力がないのが少々残念。少女時代のチャーリーによって全身に火傷を負ったマルコム・マクダウェルはさすがに凄みがある、いっそのこと後編だけ見る手もありか?
『バーチャル・ウォーズ』(1992)にもCGで全身が火だるまになるシーンがあったが、かなり出来は悪かった。今作でもCG合成による火だるまがあった。さすがに10年で進歩している。CG関連で10年という月日は長いのだ。

2007年05月04日

『スティーヴン・キングのローズレッド』 この邪悪な屋敷は生きている

2195WD9W5PL._AA192_.jpg『スティーヴン・キングのローズレッド』(2002) ROSE RED 254分 アメリカ

監督:クレイグ・R・バクスリー 製作:トーマス・H・ブロデック、ロバート・F・フィリップス 製作総指揮:スティーヴン・キング、マーク・カーライナー 脚本:スティーヴン・キング 撮影:デヴィッド・コンネル 音楽:ゲイリー・チャン
出演:ナンシー・トラヴィス、マット・キースラー、ジュリアン・サンズ、マット・ロス、エミリー・デシャネル、キンバリー・J・ブラウン、デヴィッド・デュークス、ジュディス・アイヴィ、ケヴィン・タイ、ジュリア・キャンベル、スティーヴン・キング

 原作は存在せず、キングがテレビ用映画向けにオリジナルで書き下ろした脚本で作られた作品。
 アメリカにはライフルで有名なウィンチェスター一族の女性が霊媒師の「家を増築し続ける限りあなたは死なない」という言葉にのせられひたすら増築を続けていったウィンチェスター・ハウスという邸宅がある。これは最終的には部屋や階段の位置も滅茶苦茶で、ドアを開けると壁しかなかったり、隠し扉があったりとドッキリハウス以上の作りになっているらしい。
 そこへ名誉欲に燃える大学の女性教授が予知能力やサイコキネシスとなどの超能力者を連れ込んでローズレッドという巨大な屋敷を調査しようとしたことから惨劇が始まる。

 監督は80年代にアクション映画でならしたクレイグ・R・バクスリー。1シーンが短めでテンポよく物語は進むが、さすがに254分は長い。どうやら全3話の構成になっているようだが、オレは一気に観たのでちょっとだれた。ストーリー的にも『ヘルハウス』(1973)の焼き直しな感じで新鮮味に欠けるところがある。
 最終的に屋敷は崩壊することになるが、テレビ用映画ということを考えるとなかなかなスペクタクル。その他のSFXシーンも決して悪くはない。巨大なセットも見応えがある。
 面白味に欠けるのは超能力者の面々が凡庸で新しさを感じさせないことだろう。サイコキネシストの少女は明らかにキャリーの少女時代そのままだ。
 出演者のうちで名前を聞いたことがあるのはジュリアン・サンズぐらいだが、あまり良い扱いではない。他の登場人物ではマザコン超能力者の母親が印象に残る。こんな母親だったらヤだな。

 スティーヴン・キングはピザの配達人として登場。下層労働者役が妙に似合う人だ。だが今回の脚本には若干の疑問が残る。

2007年05月09日

『スティーヴン・キングのキングダム・ホスピタル』 大病院の怪奇

51MRVC2TWFL._AA240_.jpg『スティーヴン・キングのキングダム・ホスピタル』(2004) KINGDOM HOSPITAL アメリカ

監督:クレイグ・R・バクスリー 製作:リチャード・ドーリング、ロバート・F・フィリップス 製作総指揮:マーク・カーライナー、スティーヴン・キング、ラース・フォン・トリアー 原案:ラース・フォン・トリアー 脚本:スティーヴン・キング 撮影:デヴィッド・コンネル 音楽:ゲイリー・チャン
出演:アンドリュー・マッカーシー、ブルース・デイヴィソン、ダイアン・ラッド、ブランドン・バウアー、ジャック・コールマン、ジェニファー・カニンガム、ミーガン・フェイ、エド・ベグリー・Jr、シュキ・カイザー

 ラース・フォン・トリアーが作った『キングダム』のアメリカリメイク。正直、キングがリメイクする理由がよく分からない。
 全13話構成はストーリーから見ると長すぎ。5~6時間ぐらいにまとめられなかったものだろうか。監督のクレイグ・R・バクスリーも短めの作品の方が実力を発揮する人だし。
 過去に工場で事故が起こり、多くの少年少女労働者が死んだ跡地に建てられた大病院。そこで起こる怪奇な現象という幽霊屋敷の病院版。
 面白いという意味ではラース・フォン・トリアー版の方が上だ。意味が分からないシーンも多いけどな、トリアーだし。

 病院の雑用係として男女二人のダウン症患者が登場する。演じているのは実際のダウン症患者。独特な顔つきなので症状は軽度だろうが本物だろう。外国映画にはたまにダウン症の役者が登場する。障害を逆に特技としているのだ。
 日本映画でダウン症の役者を見たことはない。ダウン症の人自体の登場がそもそも難しそうだ。これは逆の意味で差別ではないだろうか。
 明白な障害者俳優としては軽い脳性マヒの神戸浩が活躍しているぐらいか。

2007年05月10日

『ドリームキャッチャー』 SSDD

31AWNQ6SNGL._AA192_.jpg『ドリームキャッチャー』(2003) DREAMCATCHER 135分 アメリカ

監督:ローレンス・カスダン 製作:ローレンス・カスダン、チャールズ・オークン 製作総指揮:ブルース・バーマン 原作:スティーヴン・キング 脚本:ウィリアム・ゴールドマン、ローレンス・カスダン 撮影:ジョン・シール 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:モーガン・フリーマン、トーマス・ジェーン、トム・サイズモア、ジェイソン・リー、ダミアン・ルイス、ティモシー・オリファント、ドニー・ウォールバーグ、イングリッド・カヴェラルス

 親友同士の少年四人組が不思議な力を持つ子供の障害者(原作では確かダウン症だったはずが、映画でははっきりしない)と知り合う。そして数十年後、大人になった彼らは冬山に鹿撃ちをするために集まる。そこで彼らは凶暴なモンスターに襲われる。
 蛇の頭を鋭い歯を持った蝿取り草にしたようなモンスターは実に怖ろしいが、それは序幕に過ぎなかったのである。

 少年時代と大人時代という組み合わせは『スタンド・バイ・ミー』や『IT』などでスティーヴン・キングが得意とするところ。しかも超能力者にモンスター。ありったけの要素を詰め込んだ原作で巻数も全4巻と長い。それを135分にまとめたものだから展開が早い早い。少年時代をもう少し深く描き込んで欲しかったが尺として無理か。
 モンスターで終わっておけばいつものキング映画なのだが、宇宙船やらグレイ系のエイリアンまで出てくる辺りから話が広がる広がる。宇宙人を倒すためにアメリカ軍の大佐(モーガン・フリーマン)が暴走し話も暴走する。気楽に楽しめるかどうかが分かれ目だろう。トイレのシーンなんか最高だと思うが。
 エイリアンに乗り移られてしまった主人公が、頭の中の一部に図書館を作ってそこに閉じこもることでを作りかろうじて自我を保つ。小説のそれをそのまんま映像にしているのなんか笑ってしまう。
 SF映画としてはあまり期待しない方が良い。前にも書いたと思うが、キングはSF好きなんだろうがSF小説は書けない。原作も面白いんだけどね。
 DVDパッケージの写真を掲載してあるけど、イメージは全然違うんで騙されちゃ駄目だ。というかむしろ騙されろ。

2007年05月11日

『死霊伝説 セーラムズ・ロット』 奴らを家に招き入れるな

21F31AK594L._AA192_.jpg『死霊伝説 セーラムズ・ロット』(2004) SALEM'S LOT 181分 アメリカ

監督:ミカエル・サロモン 製作:ブレット・ポップルウェル 製作総指揮:ジェフリー・M・ヘイズ、マーク・ウォルパー 原作:スティーヴン・キング 脚本:ピーター・フィラルディ 撮影:ベン・ノット 音楽:パトリック・キャシディ、リサ・ジェラード、クリストファー・ゴードン
出演:ロブ・ロウ、ドナルド・サザーランド、アンドレ・ブラウアー、サマンサ・マシス、ロバート・マモーネ、ダン・バード、ルトガー・ハウアー、ジェームズ・クロムウェル、アンディ・アンダーソン、ロバート・グラブ、スティーヴ・ヴィドラー

 スティーヴン・キング初期の正当派吸血鬼小説『呪われた町』のテレビ用映画化。1979年にはトビー・フパー監督によって『死霊伝説』としてすでに映像化されているのでこれで二度目だ。
 今回の映像化にはキング自身はあまり深く関わってはいないようで、脚本も他人だし特別出演もじっくり観てみたがみつからなかった。監督のミカエル・サロモンは撮影監督あがりで主にTV界で活躍している人のようだ。これだけの作品がつくれるのならば、劇場用映画にも挑戦して欲しい。
 主人公の作家(ロブ・ロウ)が少年時代に怖ろしい体験をした邸宅を題材に小説を書こうと故郷の小さな町に帰ってくるが、その館は古美術商を名乗る二人組の男によって買われてしまっていた。そのうちの一人(ドナルド・サザーランド)は人々の前に姿を現すが、もう一人は誰一人として会ったことがない。
 そしてある意味ではその時点で町はもう死んでいた。残っているのは血の惨劇だけだ。

 吸血鬼の弱点は太陽の光と十字架、木の杭に聖水というのはよく知られているが、他には流れている水を渡れないとか、招き入れてもらわないとその家に入れないなどもある。意外に弱点が多い奴だ。この「招き入れてもらわないとその家や土地に入れない」という設定が上手く使われている。夜になるとコウモリに化けた吸血鬼が窓から入り込んで美女の血を吸うというのは細かいことを言うと嘘になるのだろう。ティーンエイジ吸血鬼映画の『ロストボーイ』でもこの設定は使われていた。吸血鬼と比べると格下の扱いになりがちな狼男だが、弱点は銀の銃弾だけ。口さけ女は「ポマード」
 ま、あれだな。誰も部屋に入れようとしないひきこもりは吸血鬼の餌食にならないと。食生活や運動・健康面から見てもちと血が不味そうだし。

 エンディングのカットが印象的で、ある部屋を真上から写したカメラがどんどん上へ上へとあがっていく。スタジオに吹き抜けのセットを作ったのをCG加工したのだろう。そこにザ・ローリングストーンズの楽曲『Paint It Black』がかかる。音楽はあまり詳しくないがアレンジも違うようだし他のバンドによるカバーだろう。これが偉く格好いい。今度のカラオケで歌おうと英語の歌詞を練習中だが、いざとなったら忌野清志郎によるカヴァー曲『黒く塗れ』を歌うか。

 主演のロブ・ロウは悪くない。過去のトラウマと向かい合おうとして更なる恐怖に出会い途惑いながらも戦う役を上手く演じている。
 吸血鬼役のルトガー・ハウアーは色素の薄い目などの見た目からしてはまり役。ちょっと太ってるかなという感じはあるが許容範囲だ。トビー・フーパー版では『吸血鬼ノストラフェ』風メイクだったが、今度は牙が生えていたりする以外は素顔のまま。さすがに怖い。
 吸血鬼のパートナーというか手下のドナルド・サザーランドはフサフサとした白いヒゲを生やして存在感はあるが、出番的にはあまり美味しいシーンがない。ちともったいなし。

2007年05月12日

『ライディング・ザ・ブレット』 ブレットに乗るか乗らないか。お前が選べ

315DWZNEYFL._AA192_.jpg『ライディング・ザ・ブレット』(2004) RIDING THE BULLET 99分 アメリカ

監督:ミック・ギャリス 製作:ミック・ギャリス、デヴィッド・ランカスター、グレッグ・マルコム、ジョエル・T・スミス、ヴィッキー・ソーサラン 製作総指揮:スティーヴン・キング、ジャン・ファントル、フランク・ヒュブナー、ブラッド・クレヴォイ、イエルク・ヴェスターカンプ 原作:スティーヴン・キング 脚本:ミック・ギャリス 撮影:ロバート・C・ニュー 編集:マーシャル・ハーヴェイ 音楽:ニコラス・パイク
出演:ジョナサン・ジャクソン、デヴィッド・アークエット、クリフ・ロバートソン、バーバラ・ハーシー、エリカ・クリステンセン

 時はニクソン政権下、ベトナム戦争のさなかの1969年。メイン州立大学で美術を専攻している青年が故郷に住む母親が脳卒中で倒れたことを知り、ヒッチハイクをしながら病院を目指す。
 幼い頃に父親を亡くし、それ以来死に取り付かれた青年が幻想を見たり少年時代の回想シーンが挿入されながら物語は進む。原作は1999年発表でアメリカではインターネットにてダウンロード販売されそういった試みとしては販売数も多くヒットした。キングとしては珍しい作風で、映画もそれに則ってホラーでもサスペンスでもなく幻想的な作品となっている。大作ではないが出来はかなり良く、知名度は低いようだがお勧めだ。
 タイトルの『ライディング・ザ・ブレット(ブレットに乗る)』のブレットは遊園地にあるジェットコースターのことで、子供の頃に母親と乗りに行ったのだが、乗る直前で事故に遭う幻覚を見て逃げ出してしまった。どうやら青年の幻覚はその時から始まったようだ。そして恐怖に立ち向かってブレットに乗った人に証明としてもらえるバッジが映画におけるテーマとなっている。
 原作は1990年代後半の設定だが映画では1969年というヒッピー全盛の時代に変更されている。青年もマリファナなどを吸うがそれも幻覚の要因かもしれない。
 青年を乗せる老人クリフ・ロバートソンが実に味がある。出番は少ないがオレが好きなマット・フルーワー(『ミクロキッズ』の隣人)が出ているのも嬉しい。

 スティーヴン・キングの映像化作品をいくつも手がけ相性の良いミック・ギャレスが手堅い演出でじっくりと魅せてくれる。

2007年05月13日

『シークレット ウインドウ』 謎の南部男と作家

51EBQ3YVMEL._AA240_.jpg『シークレット ウインドウ』(2004) SECRET WINDOW 96分 アメリカ

監督:デヴィッド・コープ 製作:ギャヴィン・ポローン 製作総指揮:エズラ・スワードロウ 原作:スティーヴン・キング 脚本:デヴィッド・コープ 撮影:フレッド・マーフィ 音楽:フィリップ・グラス、ジェフ・ザネリ
出演:ジョニー・デップ、ジョン・タートゥーロ、マリア・ベロ、ティモシー・ハットン、チャールズ・ダットン、レン・キャリオー

「犯人の正体は実は・・・」など「シックス・センス」的ストーリー展開だが、原作は1990年に発行された中編集『ランゴリアーズ』に収録された物なので発表自体はこちらが先だ。本のタイトルとなっている『ランゴリアーズ』も面白いのでお勧めの一冊だ。
 主人公の作家モート・レイニー(ジョニー・ディップ)は様々なトラブルから妻と離婚寸前で、田舎町の山荘に篭もって小説を書いている。そんな彼の元をある日一人の男が尋ねてくる。南部の農夫の格好をしたその男は、モートが書いた『秘密の部屋 秘密の庭』は自分の小説の盗作だと言い張り、様々な嫌がらせを行う。飼っている犬を殺し、モートの持ち物で妻が暮らしている家に放火をし全焼させる。そしてさらにエスカレートしていくが・・・

 超自然現象やモンスターは登場せず、あくまでも心理サスペンスとして映画は進む。現実と非現実の間で途惑い悩むジョニー・ディップはさすがに上手い。
 謎の農夫役ジョン・タートゥーロはニヤニヤと貼り付けたような笑い顔でモートにプレッシャーをかけてくる。
 特にモートが農夫に狙われていると混乱し始める前半が凝ったカメラワークで語られていく辺り、地味だが良い出来だ。
 終盤の一暴れがもっと派手な方がキング映画らしいが、作風としてはこれでよいのだろう。
 ゆでトウモロコシにかぶりつくラストカットも決して悪くはないが、個人的には「さらに実は・・・」な原作のラストの方が好みだ。興味のある方はぜひ読んで欲しい。

 なにかというとマウンテンデューが登場するがスポンサーか?

2007年05月14日

『スティーヴン・キングのデスペレーション』 絶望の町

desperation_dvd.jpg『スティーブン・キングのデスペレーション』(2004) DESPERATION 132分 アメリカ

監督:ミック・ギャリス 製作:ケリー・ヴァン・ホーン 製作総指揮:ミック・ギャリス、スティーヴン・キング、マーク・セネット 原作:スティーヴン・キング 脚本:スティーヴン・キング 撮影:クリスチャン・セバルト 音楽:ニコラス・パイク
出演:トム・スケリット、スティーヴン・ウェバー、アナベス・ギッシュ、ロン・パールマン、シェーン・ハボーチャ、ケリー・オーヴァートン、マット・フルーワー、チャールズ・ダーニング

 現段階ではこれが一番新しいキング原作の映像化作品。
 メイン州などアメリカ北部を舞台にすることが多いキングだが、これは砂漠ばかりの西部のネバダで物語は進む。ざらついた乾いた砂埃混じりの風が陰惨でおぞましさを引き立てる。
 デスペレーション(DESPERATION)とは荒れ果てた田舎町の名前で絶望という意味だ。町に動く人影はなく、凶暴で異様な保安官(ロン・パールマン)に殺された死体がいくつも転がるばかり。中盤には姿を消すロン・パールマンが不気味で良い。特殊メイク無しでそれ以上の効果を見せる稀なる俳優だ。
 警察署の留置所に入れられた数人の人々が如何に脱出するかというサスペンスから、物語は次第に神と悪魔との戦いへとつながっていく。町にはチャイナピットと呼ばれる古い鉱山があり、掘り尽くされたとして捨てられていた。しかし近年になって再開され坑道の奥である物が発見されたことが発端だった。それは地獄に通じる穴と言ってもよい。

 キングお得意の善と悪との戦いである。過去にトラウマを持つ男や不可思議な力を持った少年などはキングらしい登場人物だ。他にはアル中気味の老獣医としてチャールズ・ダーニングが出演している。最近姿を見なかったのでどうしたかと思っていたが80過ぎにしてはまだまだ元気そう。
 導入部に比べると終盤がイマイチなのはいつものことだが、キング御用達監督ミック・ギャリスは心理描写はそれなりに得意なようだが、アクションは不得手な人のようなので今回に関しては致し方ないのかもしれない。どちらかというとクレイグ・R・バクスリー向きの題材ではないだろうか。
 少年が過去に起きた坑道事故の詳細を潰れた映画館のフィルムビューアーで無声映画の映像で観るシーンは秀逸。

 ピーター・ジャクソンという名の登場人物に「ロード・オブ・ザ・リング」は大好きだというのは分かりやすいネタだが、「一匹狼マッケードって古い映画であっただろう」というのはチャック・ノリスの『テキサスSWAT』のこと。そうか、キングもチャック・ノリス好きか?
 原作は読んでいるが、132分ではちょっと細かい設定や人物描写が描き斬れていない感じ。ベトナム戦争で従軍記者の経験がある作家の過去や少年が如何に神から力を託されるなどラストに繋がる重要な伏線なのだがちらっと触られるだけ。倍とは言わないがせめて3時間は欲しかったところ。

2007年05月15日

『X-ファイル シーズン5 エピソード10 ドール』 モルダー出番無し

41F9P8H8SKL._AA240_.jpg『X-ファイル シーズン5 エピソード10 ドール』 CHINGA アメリカ

監督:キム・マナーズ 脚本:スティーブン・キング、クリス・カーター
出演:デイビッド・ドゥカブニー、ジリアン・アンダーソン

 人気番組『X-ファイル』の1エピソードをスティーヴン・キングが書き下ろし脚本で作られた物。
 もっとも、最初の脚本段階では主人公であるモルダーもスカリーも登場していなかったらしい。『ウルトラセブン』には予算などの関係もあってセブンがほとんど登場しないエピソードがあったが、出ていないってのはさすがに無茶だろう。クリス・カーターの手直しを経て映像化された。
 それでも現場にいるのはスカリーだけ。モルダーはFBIから電話経由でまるっきり役に立たない助言をしてくるだけ。どんな主役だ。
 スカリーも仕事として捜査に乗り出したわけではなく、休暇で訪れていたメイン州(やっぱキングだから)で超能力少女と呪いの人形事件に巻き込まれただけ。
 ちなみにスカリーはジャケットの下に「メイン州」と書かれたTシャツを着込んでいる。土産物屋で買ったのだろうか?いつもはきりっとキャリアっぽい服装を着ているスカリーだが、プライベートのファッションセンスに疑惑が浮き上がる。日本に当てはめれば、休暇で大阪を訪れていた警視庁の刑事が事件に巻き込まれ、土産物屋で買った「大阪」とプリントされたTシャツを着て捜査に関わるといったところか?

 これだけのクオリティの作品がTV番組、しかもスペシャルではなくレギュラー番組として作られているところにアメリカのTV局の力を感じる。日本のTV局のスポンサーは広告代理店だが、アメリカのTV局は映画会社だということを聞いたことがあるがそれも納得。

 ラストまでこれっぱかしも役に立たないモルダーがバカで良い。
 これを機会にファーストシーズンしか観ていない『X-ファイル』を全話観てやろうかと思ったが、トータルで200話以上。DVDは4話収録なので1日1枚観れば2ヶ月かからないが・・・ちょっときついなぁ・・・いや別に一気に観る必要はないんだけどさ。

2007年05月16日

『ザ・インターネット』 わたしがわたしである証明

41ONrMDcY1L._AA240_.jpg『ザ・インターネット』(1995) THE NET 114分 アメリカ

監督:アーウィン・ウィンクラー 製作:アーウィン・ウィンクラー、ロブ・コーワン 脚本:ジョン・ブランカトー、マイケル・フェリス 撮影:ジャック・N・グリーン 音楽:マーク・アイシャム
出演:サンドラ・ブロック、ジェレミー・ノーサム、デニス・ミラー、ダイアン・ベイカー、ウェンディ・ガゼル、ケン・ハワード、レイ・マッキノン

 wowowで放映していたので久々に観る。劇場公開以来のはず。1996年1月か、あの頃はオレもmacを使ってたんだよなぁ。niftyでパソコン通信はやっていたがインターネットにはまだ手を出していなかった。というか市内局番にアクセスポイントがあるプロバイダーが確かまだなくて手を出せなかった。アナログ電話でTCP/IPをダイアルアップ接続していたんだよなぁ、なんてことを懐かしく思い出してしまった。ついこの間だと思っていたがもう10年以上前の話か。サンドラ・ブロックも女学生に見えなくもない頃だ。

 家に引きこもってメールや電話のみでコンピュータソフト開発の仕事をしている主人公が、あるプログラムと関わったためにパスポートから免許証まですべて他人名義にされて別人の犯罪者として追われることになる。父は死亡、母親はアルツハイマーで娘の顔すら忘れている。近所づきあいもないので自分のことを証明してくれる人がいない。
 ストーリーとしては巻き込まれ型のサスペンスで、異国で犯罪に巻き込まれて自分を知っている人が誰もいないタイプの変形だ。そこに当時一般にも普及しつつあったインターネットを絡めたのが斬新である。
 ラストもコンピュータの特技を活かして見事に敵をやっつける。見かけなくなって久しいフロッピーディスクが鍵を握っているが懐かしい。1995年作品なので制作中はまだWindows95は発売されておらず、もっぱら活躍するのはmac。自宅で使っているのがパワーmacならば、バカンス地のビーチで使っているのもパワーブック。
 アナログ回線のダイアルアップ接続にしてはやたら早いスピードでデータのアップロードやダウンロードが出来るが、そこら辺はまぁ映画の嘘。当時は1MBのデータを落とすにも時間がかかっていた。テレホーダイとかあったなぁ。

2007年05月17日

『ザ・インターネット2』 イスタンブールを走れ

51YJ1OyhlkL._AA240_.jpg『ザ・インターネット2』(2006) THE NET 2.0 92分 アメリカ

監督:チャールズ・ウィンクラー 製作:ロブ・コーワン、アーウィン・ウィンクラー 脚本:ロブ・コーワン 撮影:S・ダグラス・スミス 音楽:スティーヴン・エンデルマン
出演:ニッキー・デローチ、デメット・アクバッグ、グヴェン・キラック、キーガン・コナー・トレイシー、ニール・ホプキンス

『ザ・インターネット2』とはなっているが、ストーリーやキャラクターに繋がりはなく独立した作品。同じなのはヒロインのIDが他人の、しかも犯罪者の身分に書き換えられてしまうぐらいか。前作はアメリカが舞台だったが、今回はトルコのイスタンブールになっており、自分の身分を証明してくれる人がいないという怖ろしさはより強くなってはいる。
 ただし、ヒロインが腕利きのコンピュータプログラマーという設定は前作と比べると活かされているとはいえず、敵から逃れるにも最後に敵を倒すのにもコンピュータは関係ない。

 キーボードを叩く代わりにヒロインはイスタンブールの街中を警官に追われて逃げる逃げる。道路や市場、建物の屋上まで銃で武装した何人もの警官を相手にひたすら走る。2階建てか3階建ての建物から飛び降りたりと運動神経抜群。プログラマーへの認識が変わったよ。デスクの前に座ってばかりで運動不足の人が多いのかと思った。(偏見偏見)
『アクシデンタル・スパイ』でジャッキー・チェンが時に全裸になって同じイスタンブールの街を逃げ回るが、そのジャッキーに負けず劣らず。DVDのパッケージからしてヒロインが走ってるしな。
 サスペンス色は薄くなり代わりにアクション色が強くなった。TV用映画かビデオオリジナル作品のようで規模としてはそれほど大きくない。
 ラストは『スティング』か『チンピラ』風でまたかと思いつつかえって斬新・・・ではないな。このエンディングを今さら平気でやるかなぁ。全体的に目新しいところがなく演出も面白くない。

2007年05月18日

『ファイヤーウォール』 DELLの製品がいっぱい出るデル

514TCER09CL._AA240_.jpg『ファイヤーウォール』(2006) FIREWALL 106分 アメリカ

監督:リチャード・ロンクレイン 製作:アーミアン・バーンスタイン、ベイジル・イヴァニク、ジョナサン・シェスタック 製作総指揮:ブルース・バーマン、グレアム・バーク、ジェフ・クリフォード、デイナ・ゴールドバーグ、チャーリー・ライオンズ、ブレント・オコナー 脚本:ジョー・フォート 撮影:マルコ・ポンテコルヴォ プロダクションデザイン:ブライアン・モリス 編集:ジム・ペイジ 音楽:アレクサンドル・デプラ
出演:ハリソン・フォード、ポール・ベタニー、ヴァージニア・マドセン、メアリー・リン・ライスカブ、ロバート・パトリック、ロバート・フォスター、アラン・アーキン、カーリー・シュローダー、ジミー・ベネット、マシュー・カリー・ホームズ

 主人公(ハリソン・フォード)はとある大手銀行のシステム開発者にして重役。個人用の広めのオフィスも持っている。
 そのハリソンが家族を人質に取られて、犯罪者集団に脅されて高額預金者1万人の口座から電子送金でそれぞれ1万ドルずつケイマン諸島にある口座に送らされることになる。合計1億ドルだから大金だ。ケイマン諸島はサスペンス映画などでは取引口座としてしばしば登場すが、その理由は所得税などが無税など利点があってマネーロンダリングに便利だからとか。
 ところが銀行合併作業の最中なのでサーバールームには端末が無く、送金手続きが出来ない。そこでハリソンはあるアイディアを思いつく。

 最近ではWindowsや各種セキュリティソフトにも標準で付くようになったファイヤーウォール(炎の壁)とはゲームセンターあらしの必殺技で操作レバーを高速で動かすことで摩擦熱により炎を起こす・・・それは炎のコマか。要するにコンピュータネットワークと外部との出入り口で変な物が出入りしないように見張って遮断するもの。でも、映画内ではほとんど関係ない。おそらくはインパクト狙いのタイトルだ。
 システム開発者でコンピュータの専門家にもかかわらず、ハリソンがコンピュータを操作するシーンはさして多くはない。それよりも妻と娘息子の三人を愛し心配するマイホームパパぶりと、銃を扱い馴れた犯罪者集団相手に素手で渡り合い、時に走り時に落ちながらも何人も殺すタフっぷりが見所だ。さすがに老体に鞭打ってという感は否めないが、それが逆にサスペンスとアクションを盛り上げる。がんばれ60代。うーむ、ハン・ソロもインディ・ジョーンズももう60過ぎか。
 ハリソンの秘書や銀行の支店で働く女性職員などがハリソンをサポートして活躍するのに対し、男性陣はほとんど役に立っていない。合併先の銀行重役であるロバート・パトリックはなんかありそうでなんにもない。
 犯罪者集団も周到な計画を立てたようでいて肝心なところが抜けているし敵としての魅力にも乏しい。全体的に制作側が何をやりたいのかが明確に見えてこない。
 とりあえず、ディスプレイの画面にファックスの読み取り部をくっつけてそれをiPodに繋げても画像データは読み取れないと思う。

 オレもさしてコンピュータに詳しいわけではないが、この映画はちょっといい加減すぎ。ウインドウズマシンにCD一枚ぶち込んでビル全体のシステムがダウンってのはどんな脆弱なシステムよ。つか銀行の機関部までウインドウズ?Windows serverなのか?UNIXか何かじゃないのかなぁ。1995年作の『ザ・インターネット』の方がよっぽどハイテクっぽい。

 登場するコンピュータはパソコンからサーバまで含めてDELL一色。ちゃーんとロゴが映ってるあたりがタイアップ。NOKIAの携帯電話もロゴがしっかり映る。パソコン画面の壁紙はWindowsXPprofessionalのロゴいりだ。iPodは名前は出るがアップにはならない。ま、今さらタイアップの必要もないだろうし。

2007年05月19日

『エレクトリック・ビーナス ときめきサイエンス』 コンピュータバッカー二人組

51vO8ORYtuL._AA240_.jpg『エレクトリック・ビーナス ときめきサイエンス』(1985) WEIRD SCIENCE 94分 アメリカ

監督:ジョン・ヒューズ 製作:ジョエル・シルヴァー 脚本:ジョン・ヒューズ 撮影:マシュー・F・レオネッティ 音楽:アイラ・ニューボーン
出演:アンソニー・マイケル・ホール、ケリー・ルブロック、イラン・ミッチェル=スミス、ビル・パクストン、スザンヌ・シュナイダー、ジュディ・アロンソン、ロバート・ダウニー・Jr、ロバート・ラスラー、マイケル・ベリーマン

 1986年の公開時に観たっきりでほとんど憶えていない。DVDも出ているらしいが別に今さら観たくない。つか、今にして思えば監督がオレの大嫌いなジョン・ヒューズなのな。オレがジョン・ヒューズを明確に嫌いになったのは1987年の『大災難P.T.A.』からだが、この時点ですでに不快だったようだ。その後は『ホーム・アローン』とか『カーリー・スー』とか観に行っては怒ってた。なら観なきゃいいじゃんと言われるかも知れないが、観ていないのに文句を言うのは卑怯だというのが当時の考え方。ま、今でも大雑把にはそうだけど。
 ちなみにオレが付けたコピーのコンピュータバッカーはコンピュータハッカーとかけてるんですよ奥さん。昨日に続いてまたダジャレですよ。

 おバカオタク少年二人組がパソコン上で理想の女性像を作ったところに“偶然”雷が落ちるそしてその女性がモニターから現実世界に現れ本物の美女に。雷ってところは『フランケンシュタイン』のパロディかな。でもって、オタク少年たちを一人前で女の子にもてるように教育するって話だったようだ。憶えてないが。『マイ・フェア・レディ』の性別逆転版でもあるのかもしれない。
 とりあえず少年の兄で軍服っぽい服を着たビル・パクストンがスライムだか巨大な牛の糞だかに変身させられいたことだけは確かだ。あとはどうでもいいや。

2007年05月20日

『エレクトリック・ドリーム』 恋するコンピューター

Electric_dreams.gif『エレクトリック・ドリーム』(1984) ELECTRIC DREAMS 96分 イギリス

監督:スティーヴ・バロン 製作:ラスティ・レモランデ、ラリー・ドヴェイ 製作総指揮:リチャード・ブランソン 脚本:ラスティ・レモランデ 撮影:アレックス・トムソン 音楽:ジョルジオ・モロダー
出演:レニー・フォン・ドーレン、ヴァージニア・マドセン、マックスウェル・コールフィールド、バッド・コート、メアリー・ドーラン、ミリアム・マーゴリーズ、クー・スターク

 劇場公開時に観たっきりで、このエントリーを書くために観直そうかとレンタルビデオ屋に行ったがさすがに古すぎたのか置いていなかった。そこで一週間前の晩飯のおかずも憶えていないオレの記憶力だけで書くが、面白かったことだけははっきり憶えている。

 主人公の青年がパソコン、というかこの時代だとまだマイコンと呼んでいた気がするがを買うが扱うのに四苦八苦している。そしてある日、シャンパンをパソコンにこぼしてしまう。すると何がどうしたのかパソコンが意志を持って自分で考え行動するようになる。そして、アパートの隣の部屋に住んでいるチェロ奏者の女性に恋をする。だが、その女性には主人公も思いを寄せていた。こうして人間とパソコンによる恋の争奪戦が始まった。

 ヒロインが所属するオーケストラの演奏会で演奏中の音楽に合わせてパソコンが主人公の持つポケベルだかを利用して合奏するシーンがあった。後は正直憶えていない。なんといっても三日前の晩飯のおかずも憶えていないオレの記憶力だ。って、悪化してるだろ、それ。
 パソコンが人格を持つ、しかもシャンパンをこぼしたのがその原因というのは実際にはありえないことだが、この映画はファンタジーよりもSFと呼ぶ方がふさわしいだろう。舞台はアメリカだが製作はイギリス映画だけあって、ハリウッド映画ほど派手ではなくじっくりと三角関係を描いていたように思う。
 製作には当時人気絶頂だったMTVが関わっており、音楽担当のジョルジオ・モロダーがカルチャークラブ(懐かしーね)などの楽曲を使っていたようだ。
 もう一度観てみたい作品だが音楽の版権問題などがあるのかまだDVD化はされていない。ぜひともソフト化を希望する一本。買うから出して。

2007年05月21日

『ウォー・ゲーム』 核戦争勃発の危機!それは少年のイタズラから始まった。

51AX2Y97HRL._AA240_.jpg『ウォー・ゲーム』(1983) WARGAMES 113分 アメリカ

監督:ジョン・バダム 製作:ハロルド・シュナイダー 製作総指揮:レナード・ゴールドバーグ 脚本:ローレンス・ラスカー、ウォルター・F・パークス 撮影:ウィリアム・A・フレイカー 音楽:アーサー・B・ルビンスタイン
出演:マシュー・ブロデリック、ダブニー・コールマン、ジョン・ウッド、アリー・シーディ、バリー・コービン、ジュアニン・クレイ、ケント・ウィリアムズ、デニス・リップスコーム、ジョー・ドーシー

 ウォーゲームとは戦争系のシミュレーションゲームのこと。昔はそんな呼び方してたよなー。ちなみにオレはシミュレーションゲームが大の苦手。『ファイヤー・エンブレム』さえ途中で投げ出した男だ。
 主人公の少年マシュー・ブロデリックが若い。というかガキ。この少年がコンピュータマニアで音響カプラと電話回線を使って国防総省のコンピュータに侵入してしまったことから核戦争の危機が起きる。
 公開された1983年というとオレはまだMZ-80KやFM-7で簡単なBASICを書いて遊んでいた頃。いわゆるマイコン少年でマイコン雑誌も購読していて普通の人よりは知識があるつもりだったが、パソコン通信とかネットワークなんてのは遠い未来のSFにしか感じられず、さすがアメリカのガキはすげぇななんて思ってた。
 ここら辺までは当時の技術として存在していたのだが、少年とゲームをやっているうちに国防省のコンピュータが本当の戦争を起こしてゲームを楽しもうとする人格を持っているのはまだ未来の話。
 その核戦争の危機を乗り切る手段がハイテクでコンピュータに立ち向かうのではなく、ごくオーソドックスなゲームというのが実に良く考えられたオチだった。
 日本の防衛省のメインコンピュータに不法アクセスなんてされてないよなとちょっと心配になったが、考えてみれば自衛隊内部からしょっちゅう情報流出してるからな。セキュリティをしっかりしても結局はそれを扱う人間次第。

 監督のジョン・バダムがいつも通りにテンポの良い展開で最後まで一気に観せてくれる。この人はSFからアクション、青春物まで幅広いジャンルをそつなくこなし、ちゃんと観客を楽しませてくれる一流の職人監督だ。

2007年05月22日

『スニーカーズ』 奴らに侵入不可能は存在しない

21JGVA1B0SL._AA192_.jpg『スニーカーズ』(1992) SNEAKERS 126分 アメリカ

監督:フィル・アルデン・ロビンソン 製作:ウォルター・F・パークス、ローレンス・ラスカー 製作総指揮:リンズレイ・パーソンズ・Jr 脚本:フィル・アルデン・ロビンソン、ローレンス・ラスカー、ウォルター・F・パークス 撮影:ジョン・リンドレー 音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:ロバート・レッドフォード、シドニー・ポワチエ、ダン・エイクロイド、リヴァー・フェニックス、デヴィッド・ストラザーン、メアリー・マクドネル、ベン・キングズレー、ジェームズ・アール・ジョーンズ、ゲイリー・ハーシュバーガー、ジョジョ・マール、ティモシー・バスフィールド、ドナル・ローグ

 レッドフォードにシドニー・ポワチエ、そしてベン・キングスレーと名優揃いだがいかにも暑苦しそうな映画を想像していたが、実際には軽快な娯楽作品に仕上がっていた。翌年には亡くなってしまうリヴァー・エニックスの元気な姿も見ることが出来る。
 銀行などの警備システムを破ってその弱点を経営陣に報告するハイテク集団が主人公。ハッカーやコンピュータ技術者、元CIAと凄腕揃いの中で、ケネディは生きているだの、アポロは月に言っていないなど陰謀論者のダン・エイクロイドがお笑い担当で楽しませてくれる。
 登城するのは電話の声とラストだけだが、スターウォーズでダースベーダーの声を担当したジェームズ・アール・ジョーンズも笑わせキャラ。ラストのスニーカーズとのやりとりはかなり大笑い。

 政府機関の人物がある黒い箱を奪うように依頼が来る。高額な報酬とレッドフォードが逃亡中のコンピュータ犯罪者であることを脅され、仕方なく仕事を引き受けることになる。あれこれと調査して割と簡単に箱を手に入れることが出来たが、取引相手が政府機関というのは真っ赤な偽り。箱はアメリカ側暗号をすべて解読してしまう究極の暗号解読器だった。そして彼らスニーカーズは陰謀と策略に巻き込まれていくことになる。コンピュータや暗号がストーリー展開に関わってくるが、むしろレッドフォード主演の『ホット・ロック』など盗賊物に近い。

 スニーカーズには盲目のメンバーが一人いるが、読んでいる点字の本を閉じると実は『プレイボーイ』だったり、ラストでは車を疾走させたりと大活躍。ささいな電子音の差も聞き分ける超人的能力が格好いい。

CRAY-1001.jpg 写真は作中でレッドフォードとベン・キングスレーがソファ代わりにするクレイ・スーパーコンピュータのほぼ同型モデル。下にある出っ張り部分が革張りになっていてソファとして座ることが出来るのだ。なんでも、「こんなにすごい処理能力なのにちっとも熱くないんですよ」とPRするためだったとか。クレイといえば昔はスーパーコンピュータの代名詞だった。オレも雑誌で写真を見ては「一度でいいから座りてぇ~」と垂涎物だった。ここで「一度でいいから操作してみて~」でないところがやはりダメダメだ。

2007年05月23日

『ココナッツ』 マルクス兄弟、スクリーンに登場でドタバタだ

51QBbFLTqXL._AA240_.jpg『ココナッツ』(1929) THE COCOANUTS 93分 アメリカ

監督:ジョセフ・サントリー、ロバート・フローリー
出演:グルーチョ・マルクス、チコ・マルクス、ハーポ・マルクス、ゼッポ・マルクス、ケイ・フランシス、マーガレット・デュモント

 舞台で活躍していたコメディ集団“マルクス兄弟”の映画デビュー作。
 マルクス兄弟はもともと5人でやっていたが、ガモ・マルクスは映画進出時に抜けて、グルーチョ、チコ、ハーポ、そしてゼッポの4人兄弟として出演している。

 舞台はフロリダのココナッツ・ビーチ。ココナッツホテルの支配人がグルーチョで、そこに二人でシングルの部屋一つに宿泊する怪しげな二人組がチコとハーポ。ゼッポはホテルで働く従業員だ。
 そしてリゾート開発と、大金持ちの未亡人が身につけている高価なダイヤのネックレスの盗難事件についてドタバタな事件が始まる。

 舞台で好評を得た『THE COCOANUTS』の映画化で、そのためか歌や群舞などのレビュー的要素も多く、興味がある人には面白いのだろうが、オレにはそこら辺のパートは退屈だった。
 やはりグルーチョがいい加減なことをベラベラ喋りまくり、ハーポは一言も口をきかずにハチャメチャなトラブルを巻き起こす。チコはダジャレネタ連発で、ゼッポは目立たない。これがマルクス兄弟の魅力ではないだろうか。ゼッポ可哀想と思わないでもないが。

 80年近く前の作品だがフィルムの状態はおおむね良好。ときどき画質が荒れたシーンもあるのが残念だが仕方なし。観られるだけでもありがたやありがたや。
 例によってハーポによるハープの演奏や、チコによるピアノの演奏もある。グルーチョの靴墨による口ひげとメガネや、ハーポの浮浪者スタイル、チコのとんがり帽、目立たないゼッポなどマルクス兄弟映画のスタイルはすでにほぼ完成している。って、だからゼッポ可哀想だろ。
 ハーポがチコと話をしている相手が身につけているスカーフや腕時計などをどんどん盗んでいくシーンはまさに抱腹絶倒。
 映画として消化不良な部分もあるが、やはりファンなら観ておくべき。っていうか今では『ココナッツ』のDVDは1000円を切っているんだよねぇ。倍近い金額でBOXを買ったオレって・・・

2007年05月24日

『けだもの組合』 消えた絵画でドタバタだ

518m7qYQuaL._AA240_.jpg『けだもの組合』(1930) ANIMAL CRACKERS 97分 アメリカ

監督:ヴィクター・ヒアマン 原作:ジョージ・S・カウフマン、モリー・リスキンド、バート・カルマー 脚本:ピエール・コリングス 脚色:モリー・リスキンド 撮影:ピエール・コリングス
出演:グルーチョ・マルクス、チコ・マルクス、ハーポ・マルクス、ゼッポ・マルクス、マーガレット・デュモント、リリアン・ロス、ルイス・ソーリン、ハル・トンプソン、ロバート・グレイグ

 マルクス兄弟主演第二作目。こちらも舞台劇の映画化である。
 危機に陥った恋する若い男女を、マルクス兄弟がドタバタしている内に結果的に救うことになるのは前作『ココナッツ』と同じで、マルクス兄弟映画の基本スタイルになっている。
 大富豪の未亡人がパーティを開き、そこで展示される10万ドルの絵画が偽物とすり替えられ、しかも偽物が二枚登場してついにはどれがどれやらの大騒ぎになる。
 未亡人を演ずるマーガレット・デュモントはマルクス兄弟映画の常連で、財産狙いのグルーチョに毎度毎度口説かれている。

 『ココナッツ』にあった群舞はなくなったが、コーラスは健在。チコによるピアノの演奏と、ハーポによるハープの演奏があるが、少々長すぎるように感じる。スター映画なので主演者の見せ場を大きく取ったのだろうが、やはりここら辺は第二次大戦前の映画という感じだ。
 意味がありそうでまったくないことを延々と喋り続けるグルーチョと、ダジャレ好きなチコ。そして前作以上に暴走してヨレヨレのコートから生魚から懐中電灯までとあらゆる物を取りだし、美女と見るや追いかけ回すハーポの芸人振りが楽しい。あっ、そういえばゼッポも出てたな。
 グルーチョはアフリカ帰りの探検家という設定で、腰ミノだけの黒人男性に担がれた駕籠に乗って登場する。今となってはやばいネタだ。

 ただし、暴走するマルクス兄弟を演出側が抑えきれず、映画としてまとまりに欠ける部分がある。ストーリー的なまとまりは元より求めてはいないが、これではただの出し物だ。マルクス兄弟と対等に立ち向かう監督が登場するのはもう少し先のこととなる。
 DVDはユニバーサルから発売されていて、ユニバーサルの旧作映画ではありがちなのだが日本語字幕の出来が悪い。気づいただけでも誤植は何カ所かあり、男性のセリフの語尾が女性の物になっていたりと、Mr.だれだれ Mrs.だれかれというのも違和感がある。だれだれさんやだれだれさまでいいじゃないか。
 個人的には日本語を習得したアメリカ人が翻訳したか、日本の翻訳家見習いにバイトで頼んだんじゃなかろうか?と考えている。

2007年05月25日

『いんちき商売』 令嬢誘拐事件でドタバタだ

51V5QIbvpSL._AA240_.jpg『いんちき商売』(1931) MONKEY BUSINESS 78分 アメリカ

監督:ノーマン・Z・マクロード 原作:サム・J・ペレルマン、ウィル・B・ジョンストン 撮影:アーサー・トッド
出演:グルーチョ・マルクス、チコ・マルクス、ハーポ・マルクス、ゼッポ・マルクス、セルマ・トッド、トム・ケネディ、ルース・ホール、ロックリーフ・フェローズ

 前2作はニューヨークで舞台出演として平行して撮影された。
 そして3作目の『いんちき商売』から拠点をハリウッドに移し、本格的に映画の世界に乗り出した。
 なるほど、確かに前2作が舞台劇を引きずっているのに対し、この『いんちき商売』ではぐっと映画らしくなっている。

 三人の兄に対して自分があまりに目立っていないのが嫌になったのか、末の弟のゼッポはマルクス兄弟を抜けたがるようになっていたそうだ。
 そのためか、ヒロインと恋に落ちる青年役を演じ、ラストでは悪漢との一対一での殴り合いとこれまでに比べるとセリフと出番が増えた。
 しかし、兄三人が他の俳優とは置き換えることが出来ないのに対し、ゼッポの役は美男子俳優なら誰でもよいとも言えるもので、わだかまりは残ったままだった。

 前半は四人が密航した豪華客船の中で、彼らを捕まえようとする船員たちとのドタバタな追いかけっこがメインで、ギャグも豊富で楽しい。身を隠すために人形劇に紛れ込むハーポは絶品だ。
 後半は船がアメリカはニューヨークに到着し、豪邸で開かれる仮装パーティーと、対立する犯罪組織同士の争いに片方の娘(ヒロイン)が巻き込まれて誘拐され、彼女を救出してハッピーエンドとなる。
 前半と後半でテンポも食い違い、ちぐはぐな印象はぬくめない。あえていうならば、後半は舞台時代のマルクス兄弟を引きずっているのではないだろうか。
 この作品でマルクス兄弟は全米映画興行成績を塗り替えて歴代トップとなり、名実共にスターとなったそうである。

2007年05月26日

『御冗談でショ』 アメフト試合でドタバタだ

51TrjKf1PaL._AA240_.jpg『御冗談でショ』(1932) HORSE FEATHERS 67分 アメリカ

監督:ノーマン・Z・マクロード 原作:バート・カルマー、ハリー・ルビー、S・J・ペレルマン 脚本:バート・カルマー、ハリー・ルビー、S・J・ペレルマン 撮影:レイ・ジューン 音楽:バート・カルマー、ハリー・ルビー
出演:グルーチョ・マルクス、チコ・マルクス、ハーポ・マルクス、ゼッポ・マルクス、セルマ・トッド、デヴィッド・ランドー

 マルクス兄弟映画は困難に陥った若い男女を助けるというのが基本だというのはすでに書いた。ヒロインは純真無垢な女性の場合が多いのだが、今回は裏で敵方と通じている悪女の未亡人という珍しい作品だ。

 大学が舞台で、グルーチョはそこの学長。ゼッポは学長の息子で大学に12年も通っている落第生。アメフトのチームに所属していて、未亡人に恋している。
 大学の名誉のために、次のアメフトの試合にはなんとしても勝たなければならないのだが、助っ人として呼ぶはずだったプロのアメフト選手は敵側のチームに取られてしまい、その二人と勘違いしてグルーチョが連れてきたのがチコとハーポの二人組。
 こうして、学内と終盤はアメフトフィールドでのドタバタが始まった。

 ドタバタギャグはもちろん多いのだが、主題歌として『EVERYONE SAYS I LOVE YOU』が繰り返し歌われ、効果的に使われている点でも異色作と言える。
 ゼッポはベッドで朝食を取る未亡人に向かって歌い、チコはピアノを弾きながら隣に座った未亡人に向かって歌う。ハーポはしゃべらない設定なので、二階の窓に向けてハープでこの曲を弾き、グルーチョは公園の手こぎボートの上でギターを奏でながら歌う。
 それぞれに少しずつ歌詞が違い、その意味合いも微妙に違う。特に、グルーチョのはかなり皮肉を込めた内容になっている。
 この歌はウディ・アレンの『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(1996)の中でも使われており、映画の原題はそのまんま『EVERYONE SAYS I LOVE YOU』だったりする。『世界中がアイ・ラブ・ユー』の中では全員がグルーチョ・マルクスの扮装をしたパーティが開かれていたりと、ウディ・アレンのマルクス兄弟への敬愛がうかがえる。
 考えてみれば、マルクス兄弟もウディ・アレンも同じユダヤ人だ。よく「ユダヤ陰謀説」とかいって、世界を裏から支配しているのはユダヤ人だなどという意見があるが、彼らや同じくユダヤ人のコメディアン・映画監督のメル・ブルックスなどのバカッぷりを見ると、そういう説は眉唾に思えてくるのはオレだけだろうか。

 前作にもましてゼッポのポジションが上がっているが、これは『いんちき商売』でも書いたとおり、あまりに兄たちと比べて目立たない役柄になってしまうゼッポがマルクス兄弟を抜けたがっていたからだそうだ。憶測だが、ギャラの配分などでも差があったのかも知れない。

 例によって字幕の出来が悪い。だれだれとの仲がが、中がになっているのは誤植として許すとしても、1932年製作なのに「1988年からは」となっているのには驚いた。SFだったのかよ。これはもちろん「1888年から」が正解。
 あまりコストをかけられないから仕方ない面もあるのだろうが、バイトによるチェック程度で防げるように思う。原盤が海外生産なのだろう。

2007年05月27日

『我輩はカモである』 独裁者が戦場でドタバタだ

51%2BOG%2B8hBJL._AA240_.jpg『我輩はカモである』(1933) DUCK SOUP 69分 アメリカ

監督:レオ・マッケリー 脚本:バート・カルマー、ハリー・ルビー 撮影:H・シャープ
出演:グルーチョ・マルクス、チコ・マルクス、ハーポ・マルクス、ゼッポ・マルクス、マーガレット・デュモント、ルイス・カルハーン

『我輩はカモである』、通称『我カモ』。原題の『DUCK SOUP』はもちろんカモのスープでスープの中でも上等なスープなんだだそうだ。
 マルクス兄弟の最高傑作と現代では言われているが、当時の観客には受け入れられず、パラマウントを追われる結果となった作品でもある。
 この映画バカ黙示録の2000年02月29日に書いた第一エントリで、この『我輩はカモである』に関係のある文章を書いている。
 映画について直接書くまで7年ちょっとかかったのだ。とっとと書いとけって感じだが。

 作品の在り方については2000年のエントリで書いているので、今回はまた別の側面から。
 これまでは、マルクス兄弟のキャラクターに頼ったギャグが多かったが、今回はそれに加えて映画の視覚的ギャグが比重を増している。
 例えば、何でも出てくるハーポのコートは、『けだもの組合』では、チコに「懐中電灯(フラッシュ)を出せ」と言われて、代わりに「魚(フィッシュ)」が出てきて、チコに怒られていた。
 この作品では、雇い主から「記録(レコード)を出せ」と言われて、音楽のレコードを出すまではこれまでと同じだが、怒った雇い主がそのレコードを奪って放り投げると、ハーポが拳銃を取り出して撃ち、レコードに命中して割れるといった、より発展した映画的なギャグになっている。
 他に、マルクス兄弟作品の中で、オレが一番好きなギャグも登場する。
 フリードニアという国の首相となったグルーチョの公用車は、ハーポの運転するサイドカー。「車を用意しろ」との指示で玄関前に待っていたサイドカーにグルーチョが乗ると、そのサイドカーを残してハーポが運転するバイクだけが走り去る。
 そして、もう一度同じギャグが登場し、三回目には「もうその手は食わんぞ」と、ハーポをサイドカーに座らせグルーチョは自分がバイクにまたがるが、こんどはバイクを残してサイドカーだけが走り去ってしまう。
 繰り返しはギャグの基本だが、それに一捻り加えた上質かつ個人的に大笑いなギャグだ。

 ハーポは初期の作品からゴムまりでならすクラクションを持ち歩いて活用していたが、この作品ではさらにハサミが加わる。これで相手のスーツの背中の布地から引っ張り出したポケット、腰布などなんでもかんでも切ってしまう。アイテム増加でレベルアップと言ったところだろうか。

 大金持ちの未亡人の後押しでフリードニアの首相に任命されたグルーチョは、閣僚たちの意見など無視して暴走し、ついには隣国との戦争に突入してしまう。
 これがファシズムを皮肉った作品だとして、ムッソリーニが激怒し、イタリアでは上映禁止になったそうだ。
 同じ傾向の作品としては、チャールズ・チャップリンの『独裁者』があるが、オレとしては真面目な人間が真面目に作た退屈な『独裁者』よりも、不真面目な連中が真面目に作った、この『我輩はカモである』を断固支持し、そして大笑いする。

 首相秘書役のゼッポは可哀想なぐらい見せ場がなく、この作品を持ってマルクス兄弟を脱退。アイドルグループ風に言えば卒業か。
 もちろん、実の兄弟同士なので、脱退しても兄弟ではあるのだが。

2007年05月29日

『オペラは踊る』 オペラハウスでドタバタだ

31F3MXBQA4L._AA192_.jpg『オペラは踊る』(1935) A NIGHT AT THE OPERA 91分 アメリカ

監督:サム・ウッド 製作:アーヴィング・G・サルバーグ 原作:ジェームズ・ケヴィン・マッギネス 脚本:ジョージ・S・カウフマン 撮影:メリット・B・ガースタッド
出演:グルーチョ・マルクス、ハーポ・マルクス、チコ・マルクス、キティ・カーライル、アラン・ジョーンズ、ウォルター・ウォルフ・キング、マーガレット・デュモント、ジークフリード・ルーマン

『我輩はカモである』までの5作品はパラマウントで製作された。
 もともと5作品の契約で始まって、『我輩はカモである』の興行成績がさんざんだったために、ニューヨークからハリウッドまで進出しておきながらパラマウントを追われたマルクス兄弟を拾ったのはMGMだった。あの、ライオンのマークで始まる映画会社だ。
 そのためか、これまで1年1本のペースで製作されていたが、『我輩はカモである』(1933)、『マルクス兄弟オペラは踊る』(1935)と1年間が空いている。

 これまでの作品と、カラー的にも大きく変わっている。
 音楽やダンスのシーンが増えたり、ハーポによる「あんた、ジャッキー・チェンか?」と言いたくなるようなアクションが加わったこともあるが、個人的にはカット数の変化に注目したい。
 日本野鳥の会が使うようなカウンターを使って数えたわけではないが、パラマウント作品と比べて、この『オペラは踊る』は明らかに時間単位でのカット数が増えているように思う。
 そのうち、時間があったら数えてみないと精確なことはいえないが、その点について推察した内容はこうだ。
 舞台出身のマルクス兄弟にとって、基本は1シーン1カットだ。
 グルーチョがベラベラといい加減なことを喋りまくったり、ハーポが面白い動きをするのも、一つの連続した流れによって成立する。
 しゃべりのギャグや、ドタバタ走り回