『痩せゆく男』 呪いでダイエット
『痩せゆく男』(1996) THINNER 92分 アメリカ
監督:トム・ホランド 製作:リチャード・P・ルビンスタイン、ミッチェル・ゲイリン 原作:リチャード・バックマン(スティーヴン・キング) 脚本:マイケル・マクダウェル、トム・ホランド 撮影:キース・ヴァン・オーストラム 特殊メイク:グレッグ・キャノン、ボブ・レイデン 美術:ローレンス・ベネット 衣裳:ハ・ニュイエン 編集:マーク・ローブ 音楽:ダニエル・リット
出演:ロバート・ジョン・バーク、ジョー・マンテーニャ、カリ・ウーラー、ルシンダ・ジェニー、マイケル・コンスタンティン、ジョー・レンツ、スティーヴン・キング
スティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で出版した『痩せゆく男』(文春文庫刊)の映画化。
リチャード・バックマンという仮の名を使っていた理由は、当時のアメリカでは「作家たる者、1年に1冊以上本を出すと軽く見られる」という不文律があり、書いたはいいが出版できない原稿を埋もれさせるのが残念だったから。キングにとって小説を書くのは呼吸をするのと同じようなものだろうからな。
逆に言えば流行作家ならば1年1冊で充分な収入があったということでもある。ひたすら書いて書いて書き続けないと出版界から消え去ってしまう日本とは対照的だ。『羊たちの沈黙』のトマス・ハリスなんて昔からいるのに4作しか出していない。
130kgを超える肥満体の弁護士ビリーは、ある日誤ってジプシーの老婆を自動車で轢き殺してしまう。しかし、狭い田舎町でツーカーの仲だった判事や警察署長はうまくごまかしてビリーを無罪にしてしまう。
ご機嫌のビリーをその老婆の父で100歳を越えるジプシーの長老が指で腹を触りながらこうささやく。
「痩せていく」と。
次の日から、いくらダイエットを試みても一向に減らなかった体重と贅肉がみるみる減り始めた。やったダイエットの効果が出たと喜んだのはつかの間、体重は異様に減り続ける一方で、ダイエットを止めて1日1万2000キロカロリーの過食をしても減っていく。
判事と警察署長は悲惨な死を遂げ、これはジプシーの呪いだと気づいたビリーは長老の元へ謝罪に訪れるが、あえなく拒絶される。
傲慢な白人と迫害されるジプシーという構図ではあるが、ジプシー側もそうそうお人好しの憐れむべき者ではない。一度かけた呪いは解くことは出来ず、別の者に移すしか手がない。結局のところ双方は別の世界に生きている存在で、分かり合えることも交わることもないのだ。
ラストの残酷さと主人公の狂気は見物で、ハッピーエンドを期待していた観客は大きく裏切られることとなる。
最初は特殊メイクで巨体を揺らしていたビリーを演ずるのはロバート・ジョン・バーク。最初は分からなかったが、痩せていくとどこかで見た顔だった。そうだ、『ロボコップ3』(1992)の2代目ロボコップではないか。終盤ではイカれた目つきで迫力のある演技を見せてくれる。ちなみに、DVDの日本語吹き替はDVD版『ダイ・ハード』のジョン・マクレーンと同じ樋浦努氏である。ジプシーの長老に許してもらえなかったら愛銃M-92Fを抜いてジプシー軍団と対決しそうな印象でしばし戸惑う。
スティーヴン・キング自身は薬局の店員役で登場。度の強そうな眼鏡をかけてうろうろしている。
監督のトム・ホランドは『フライトナイト』や『チャイルド・プレイ』などなかなか面白い映画を撮っている人で、キング作品では『ランゴリアーズ』を手がけている。ウーピー・ゴールドバーグとサム・エリオットのラブシーンという通好み(?)な物が観られるアクション映画の佳作『危険な天使』もこの人だ。
この呪い、1週間限定でオレにもかけてくれんかな~・・・っていかんな、それではダイエットダイエットと騒ぎ立てる人々を面白いなと題材にしたキングに笑われてしまう。よーし、納豆食おう、っておい。
『クイックシルバー』(1997) QUICKSILVER HIGHWAY 90分 アメリカ
『スティーヴン・キング/ナイトフライヤー』(1997) THE NIGHT FLIER 97分 アメリカ
『アイス・ステーション』(1998) SOMETIMES THEY COME BACK... FOR MORE 90分 アメリカ
『トラックス』(1998) TRUCKS 99分 アメリカ



