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『ダーク・ハーフ』 俺を勝手に殺すんじゃねぇよ、ねぇちゃん

B00005HSE2.jpg『ダーク・ハーフ』(1993) THE DARK HALF 121分 アメリカ

監督:ジョージ・A・ロメロ 製作:デクラン・ボールドウィン 製作総指揮:ジョージ・A・ロメロ 原作:スティーヴン・キング 脚本:ジョージ・A・ロメロ 撮影:トニー・ピアース=ロバーツ 音楽:クリストファー・ヤング
出演:ティモシー・ハットン、エイミー・マディガン、マイケル・ルーカー、ジュリー・ハリス、ロバート・ジョイ、ケント・ブロードハースト、ベス・グラント、ルターニャ・アルダ、トム・マーデロシアン、グレン・コレリダー、チェルシー・フィールド、ローヤル・ダーノ、クリスティーン・フォレスト

『スリープウォーカーズ』のミック・ギャリスや『ニードフル・シングス』のフレイザー・C・ヘストン(ちなみにチャールトン・ヘストンの息子だそうな)も決して悪くなかったが、ジョージ・A・ロメロはやはり格が違う。日本未公開ビデオスルーだったのが不思議なぐらい良くできてるし趣きもある作品だ。

 純文学作家のポーモントは大学で講師をやりながら生計を立てている。しかし、それだけでは生活できないので『マシーンシリーズ』という暴力に溢れた大衆小説を書くことにした。対面も考えてジョージ・スタークという別のペンネームを使い、本の裏表紙にある作家の写真もタフガイっぽい別人の物を使った。
 するとジョージ・スタークの作品はバカ売れし、ポーモントは一躍金持ちになった。出す本出す本、飛ぶように売れるのだ。
 だが、ある男がポーモント=ジョージ・スタークであることをつきとめ、ポーモントを脅迫してきた。そこで、ポーモントはジョージ・スターク名義の本は一切書くのを止め、自分がジョージ・スタークだったと公表し、いわばジョージ・スタークを殺すことにした。
 ジョージ・スタークの仮面を外すことについて雑誌記事になりインタビュアーがやって来ると同時に、現地のカメラマンが彼の写真を撮った。そしてカメラマンのアイディアで、ジョージ・スタークの偽物の墓を作り、スタークを埋葬したという写真を撮った。
 そしてある日、地元のキャッスルロック警察に墓の管理人から電話がかかってくる。墓の一角に穴が掘られており、それも外から掘ったのではなく中から外へ出るために掘った穴だというのだ。
 そしてジョージ・スタークは帰ってきた。彼を殺した人間を始末し、現世に留まるために。

 ポーモントは生まれながらの二重胎児だった。もともとは双子だったのが、母親の胎内で片方がもう一方を吸収して一体となって生まれてくるというやつだ。『ブラックジャック』のピノコやホラー映画『バスケットケース』の兄弟などがそうである。
 ただし、ポーモントの場合は前二例と比べるとより吸収度が進んでいて、脳に小さな腫瘍として存在しているだけだった。そして少年時代のポーモントは腫瘍摘出の手術を受けた。手術は特に問題なく終わったが、その間際に突然何万羽ものスズメが病院の回りを飛び交った。
 ポーモントの名も無き兄弟は体から無くなったが、その魂のスペースだけは残った。そこへポーモントが自分の中にある「もっとタフになりたい。ワイルドになりたい」という欲求がジョージ・スタークという存在を生み出したのだ。つまりジョージ・スタークは彼の影の半身(ダーク・ハーフ)なのである。

 そしてついにラスト、ポーモントが残るかスタークが残るか、生き延びられるのはどちらか一人だけ。
 そして対決が始まる。拳も銃も使わぬこの決闘は、どちらがより小説を書けるかで決まる。二人が机越しににらみ合って原稿に鉛筆で文章を書き込んでいく。負ければ死。息詰まる瞬間である。

 スズメが象徴的に使われているが、これは登場する民俗学教授によると魂の水先案内人らしい。ただその連れて行く先がどこなのか、天国なのか地獄なのかは分からない。

 スタークによる殺害シーンも必要最小限に抑えて、地味だが堅実なホラーを構築している。主人公の途惑いや混乱、そして周囲の人間が時に彼を信じ時に彼を疑う心理ドラマも良い。ポーモントの妻があまりにも夫を信じすぎな面もあるが。
 スタークが凶器として使うのは、床屋で使う剃刀なのだが、よく研ぎ澄まされてきていかにも斬れそう。床屋で首元を剃ってもらうときについつい緊張してしまうのはオレだけではないはず。
 主演のティモシー・ハットンは上手いとは思うがあまり好みではない。だがキャッスルロック警察の保安官マイケル・ルーカーが相変わらずの凄みのある目つきを見せてくれる。

 スティーヴン・キング自身もリチャード・バックマンという別ペンネームを使っていたことがあった。『バトルランナー』や後日登場する『痩せゆく男』などがバックマン名義の作品だ。
 現在ではバックマンは1985年に偽名癌で死亡した事になっており、最新作の『レギュレイターズ』はその遺稿がのちに発見されたということとして発表された。

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