『ゴースト・オブ・マーズ』(2001) GHOSTS OF MARS 115分 アメリカ
監督:ジョン・カーペンター 製作:サンディ・キング 脚本:ラリー・サルキス、ジョン・カーペンター 撮影:ゲイリー・B・キッブ 音楽:ジョン・カーペンター、アンスラックス
出演:ナターシャ・ヘンストリッジ、アイス・キューブ、ジェイソン・ステイサム、クレア・デュヴァル、パム・グリア、ジョアンナ・キャシディ、デュアン・デイヴィス、ローズマリー・フォーサイス、リチャード・セトロン、リーアム・ウェイト、ロボ・セバスチャン、ロドニー・A・グラント、ピーター・ジェイソン、ワンダ・デ・ジーザス、アル・レオン
未来、人類は火星を植民地とし地球改造計画(テラフォーミング)も進んで、資源を掘り出すための鉱山基地も各地に出来上がっていた。
主人公のメラニーは火星警察の警官。上司のブラドッグ隊長(パム・グリア)を始めとするチームで、シャイニング渓谷という鉱山街で逮捕された凶悪犯を護送のため迎えに行くところだ。
凶悪犯ウイリアムズ(アイス・キューブ)は火星では伝説的な犯罪者で、過去にも重犯罪をいくつも犯しながらも裁判で無実を勝ち取って自在に火星を飛び回っていたのだが、今回は数名を殺し金券を奪ったところを現行犯逮捕されている。これで首都に連れ戻され裁判となれば今度こそ重罪間違いないである。
列車からシャイニング渓谷に降り立った警官たちは違和感を憶えた。
今日は金曜日の週末、ドラッグや女目当てでみんな街へ出て派手に騒いでいるはずではないか。
慎重に牢獄を目指す彼らを、丘の上から睨む人間とは思えないような眼差しがあった。
これから彼らは、列車が迎えに戻ってくるまで、地獄の戦いを繰り広げることになる。
一言で言ってしまえば、カーペンターの劇場デビュー作である『要塞警察』の拡大解釈的リメイクにあたる。
建物に閉じこめられた主人公たち、そしてその回りを取り囲むのは言葉も通じぬ謎の集団。牢に閉じこめられていた囚人の力を借りて脱出を試みる。いやもうパターンはほぼ同じ。
というよりも、西部劇の砦物の延長線上にある作品だ。カーペンターは熱狂的な西部劇ファンだそうで、それはいくつかの作品でも強烈なオマージュとして現れていたが、今回はその集大成だろう。
守護隊が守る○○砦をインディアン(ネイティブ・アメリカン)が取り囲む。言葉もまともに通じず、ついには銃対弓矢の戦いになる。たまたま砦に立ち寄っていた犯罪者護送馬車に収容されていた人殺しのアウトローも味方に加わり、強い戦力になってくれる。もちろん、そのアウトローが人を殺したのは同情的なやむにやまれぬ訳があるのはいうまでもない。
だが、倒しても倒しても次から次へと湧いてくるインディアンの大群についにくじけそうになったときに、遠くから音が聞こえてくる。
「パッパッパッパッパッパッ、パッパッ、パッパッラ~」
応援の騎兵隊だ。そして騎兵隊の活躍でインディアンは退治され、砦に平和が訪れる。
囚人護送官はアウトローに、「あいにくと足を挫いちまってな、治るまで二日ばかりかかる。歩けるようになったらすぐにでもお前を追い始めるからな」。(『ヴァンパイア/最期の聖戦』のラストでもやってたな)
アウトローはニカッと笑うと馬に乗って地平線の向こうに去っていく。
これを火星を舞台に、インディアンの代わりに地中に封じ込められていた火星人の意志、あるいは防衛装置に乗り移られた人間が変身した火星ゾンビでやっているのがこの作品。火星ゾンビはヘビメタ風な衣装を好むようで、こいつらがカーペンター・ロックに乗って襲ってくるのは怖いのやらちとおかしいのやら。
こいつらはまともな知性は失っているようで、工具で作った刀や槍に弓矢などを使ってくるのだが、中でも威力があるのが丸ノコの刃。これをフリスビー状に投げてくるのだが、腕や首などスパスパと切り落とす。火薬を使わない武器ベスト投票があったら、オレは迷わずに丸ノコの刃に一票を投じるね。
細かいことは気にしないで、立てこもっていた官舎から駅へと向かい、そこから始まる一大アクションを楽しめればそれで良し。楽しめない人には駄作だろうね、きっと。
今時、CGも使わず射撃シーンにも大して工夫のない撃ちっぱなしの銃撃戦。ベンベン響くカーペンター・ロック。意味のない爆発と、その爆発で吹っ飛ぶ連中。わはは。
キャニオン渓谷のオープンセットも作ってそれなりに制作費はかかってそう。列車はCGと模型を使い分けていて、節約主義は相変わらずなようだが。
屋外ロケでは火星という設定なので土や岩が赤い。しかしロケ先は地球なので土も岩も当然土の色だ。そこで、撮影後のフィルムをCG加工して、赤い色に置き換えたのである。
というのは大嘘で、地面に赤い食用染料をスプレーで噴射して赤い大地を作り出したんだそうだ。撮影後に洗い流せば元の土色に戻るし、環境への害も比較的少ないし費用も安い。なるほど。
でも、スピルバーグやロバート・ゼメキスならばマジでCG加工を用いて火星の大地を作り出しそうだ。
悪党側はアイス・キューブを始めとしてそれなりにキャラクターが確立しているのに、警官側が主人公とジェイソン・ステイサム以外はあまり役立っていないのが残念だ。せっかくのパム・グリアが演ずる隊長も中盤には消えてしまうし。特別出演だったのだろうか。消え去り方は笑わせてくれるが。
おっさん、もう21世紀やでと言ってみても仕方ない。カーペンター作品のほとんどは流行とは無縁で来た。ジョン・カーペンターにはジョン・カーペンターの映画しか撮れない。逆に言えばカーペンター映画はカーペンターにしか撮れない。
この作品からすでに5年が過ぎたが、未だに劇場映画最新作だ。『遊星からの物体X』のリメイクないし続編の話や、『エスケープ・フロム・ニューヨーク』シリーズの続編の噂も聞く。個人的には全くの新作が良いがとやかくは言ってられない。
そろそろ新作撮ってよ、ジョン。「結局、1980年代だけの人だったね」なんて言わせておかないでよ。待ってるよ、ジョン。