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『スターマン/愛・宇宙はるかに』 あなたのパパはね、宇宙へ帰ったの

B000IXYYBU.jpg『スターマン/愛・宇宙はるかに』(1984) STARMAN 114分 アメリカ

監督:ジョン・カーペンター 製作:ラリー・J・フランコ 製作総指揮:マイケル・ダグラス 脚本:ブルース・A・エヴァンス、レイノルド・ギデオン 撮影:ドナルド・M・モーガン 特撮:ILM 特殊効果:ディック・スミス、スタン・ウィンストン、リック・ベイカー 音楽:ジャック・ニッチェ
出演:ジェフ・ブリッジス、カレン・アレン、チャールズ・マーティン・スミス、リチャード・ジャッケル、ロバート・フェイレン、トニー・エドワーズ、ジョン・ウォルター・デイヴィス、テッド・ホワイト

 カレン・アレンのアップで終わるラストカット。あそこでカレン・アレンからあの表情を引き出せただけでもうOKだろう。

『愛・宇宙はるかに』という日本で勝手に付けたサブタイトルがまったくカーペンターには似合わないが、作品にとっては的はずれではない。確かにこれは愛の物語だ。
 カーペンター色が薄く、職人として監督に徹したという意見もあるようだがオレはそうは思わない。あの自分の趣味でしか映画を撮らないジョン・カーペンターだ。この作品だってジョンの趣味そのものだと思う。
 なぜなら、これはもう一つの『遊星からの物体X』だからだ。

「Watch the sky.」 空からは色んな者がやって来る。
 ジョン・カーペンターがSF少年として育ったのはまず間違いなさそうだ。オレもSF少年だったので個人的記憶から書くが、宇宙人とは人類を狙い地球を侵略誌にやってくる存在である。あるいは、人類よりはるかに進んだ文明を持ち平和で優れた存在である。そして時には何だかよく分からない連中でもある。
 カーペンターが読んだり映画で見た宇宙人の多くは前者だったが、もちろん後者だって数少ないわけではない。人類は宇宙人に侵略され、時には宇宙人に守られてきたのだ。
 悪意を持った宇宙人の一つの究極を『物体X』で描いたカーペンターが、平和的な宇宙人を描くというのは一種の必然である。
『スターマン』での宇宙人は地球にやってきたときは彼(?)の一人称視点なので姿は見えない。そもそも我々が考えるような肉体があるのかも不明だ。そこで行動するために必要だったのだろう、アルバムに貼られたある人物の毛髪からDNAをスキャンしてその人物の肉体をコピーして作り上げる。人類を細胞レベルで乗っ取って本人そっくりに化けるのが物体Xに似てはいないか。
 その毛髪の持ち主が数ヶ月前に事故で死亡した男性(ジェフ・ブリッジス)の物で、その妻(カレン・アレン)を最初は強制的に連れ去り、その道中で次第にカレン・アレンがジェフ・ブリッジスが宇宙人であること、そして平和的存在であることを理解していき、ジェフ・ブリッジスは地球人を理解していく。
 数千キロの旅の間に人びとが理解し合い変化していくロードムービーがこの作品の中心だろう。

 だが、それは平和な旅ではない。宇宙人(スターマン)はそもそもボイジャー2号に積まれていたレコードに吹き込まれた異星人向けの地球への招待状を聴いて地球へとやってきた。しかし、宇宙から飛来した謎の物体を米軍は戦闘機のミサイルで撃墜し、その物体が小型宇宙艇であったことが分かった後は、スターマンを捕獲すべく宇宙学の学者(チャールズ・マーティン・スミス)などを追跡に差し向ける。
 組織の局長が官僚的かつ傲慢な男で人物設定としてはありきたりだが、そのおかげでスターマン捕獲という任務に疑問を抱き始めていくチャールズ・マーティン・スミスに感情移入しやすい。

 スターマンの母船は3日後の正午にアリゾナの隕石クレーターへと迎えにやってくる。それを過ぎれば母船は宇宙に帰り、スターマンは死んでしまう。
 そんな彼らの旅を名もなき人びとが時に助けになってくれる。ヒッチハイクで乗せてくれたり、ちょっとした爆発で検問をしている軍隊を引きつけてくれたり色々だ。
 なかでもお気に入りが食堂のおばさんウェイトレスだ。スターマンと一緒に行くべきか迷いがあるカレン・アレンの背中をポンと押してくれる。その直前にスターマンが死んだ鹿を生き返らせるシーンがあり、おばさんもそれを見ていたはずだから、単なる痴話げんかではなくもっと特別な旅だと分かっていたはずだが、送り出す声は「元気でね」と明るい。

 地球を狙う邪悪な宇宙人はいるかもしれない。でも、平和的で人類と友達になれる宇宙人だっているはずだ。『物体X』では宇宙人に対する恐怖を描いたが、だからこそカーペンターは『スターマン』で宇宙人への友愛を描いたのだろう。
 我々人類と友達になるべくやってきた宇宙人には、武器など向けずにこちらも友情でもって迎えようと。
『遊星からの物体X』で極悪極まりない宇宙人を生み出した反省と反動で『スターマン』を撮ったのではなかろうかと、そんなことを思ったりする。

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