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『エスケープ・フロム・L.A.』 ファシスト対アナーキスト

B000E1KMFI.jpg『エスケープ・フロム・L.A.』(1996) ESCAPE FROM L.A. 101分 アメリカ

監督:ジョン・カーペンター 製作:デブラ・ヒル、カート・ラッセル 脚本:ジョン・カーペンター、デブラ・ヒル、カート・ラッセル 撮影:ゲイリー・B・キッブ 音楽:シャーリー・ウォーカー、ジョン・カーペンター
出演:カート・ラッセル、ステイシー・キーチ、スティーヴ・ブシェミ、ピーター・フォンダ、ジョージ・コラフェイス、ブルース・キャンベル、ヴァレリア・ゴリノ、パム・グリア、A・J・ランガー、クリフ・ロバートソン、ミシェル・フォーブス、アル・レオン、ロバート・キャラダイン

 近未来、大地震によってロサンゼルスは大陸から孤立し、一つの島となっていた。そして、大統領が退廃の都と呼んだロサンゼルスは刑務所として使われることとなった。
 ルールは一つ。「入ったら出られない」

『ニューヨーク1997』(原題『エスケープ・フロム・ニューヨーク』)から15年、アメリカ犯罪史上最悪の凶悪犯スネーク・プリスケンが帰ってきた。
「ここ2、3年は落ち目だな」だ?ふざけんなよ。しかし、いったいクリーブランドで何があったのやら。
 島一つが丸々刑務所になっているというのはサンフランシスコにあったアルカトラズ島刑務所からの発想だろう。作風的には前作以上にメッセージが強くなっていて、ロス刑務所に入れられるのはいわゆる強盗だとか誘拐などの一般的な犯罪者だけではなく、キリスト教信者以外の異教徒や有色人種、政治思想が現政権と異なる者など、大統領の言うところの清く正しいアメリカに必要ない人間が押し込められている。
 大統領(クリフ・ロバートソン)にとってアメリカのあるべき姿とは白人のキリスト教徒によって運営される国。スネークは白人だが、そんな大統領と合うはずがない。

 優秀な軍人として勲章をもらった過去もあるスネークは戦場で地獄を見てきた男だろう。元は英雄だが、その後何があったのか最悪の犯罪者になった。アメリカも他国もなにもかにもが気に入らないスネークは現代文明をためらわずに破壊する。ダークヒーローといった分かりやすい存在に治まりきらないスネークは極めつけのアナーキストだ。

 電子機器や内燃機関も使えなくなり、数世紀前の状態に戻ってしまった人類。
 政治もマスコミも機能せず、食物などの流通もストップする。
 鍬で畑を耕す自給自足、警察も解体し自分の身は自分で守る。
 その世界の人びとがそれを望むのかは知らないが、もはや世界の理そのものが気にくわないスネークにとっては、一度破壊して再び始めるのを選んだのだ。
「Welcome to the human race.」

 海底に沈んだユニバーサルスタジオ。悪党どもの騒ぎの場となっているディズニーランド。整形美容の繰り返しで異形の者となった連中が暮らしているビバリーヒルズ。
 ビジネス街だったマンハッタンと比べ、娯楽の都だったロサンゼルスの変わりぶりは大きく、映画の見せ場でもある。前作は再開発地区でのロケ中心だったが、今作では大規模なセットも作っている様子。それでも低予算で納めていそうなのがカーペンターだ。

 カート・ラッセルのタフガイ振りに、スティーヴ・ブシェミやパム・グリアなどクセ者揃いの脇役も嬉しい。ピーター・フォンダに至っては津波でサーフィンとクレージー。

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