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『What's Up, Tiger Lily?』 はては日本のスパイも帰って、って観たことないんだけどね

wutl.jpg『What's Up, Tiger Lily?』(1966) 81分 アメリカ(それと日本)

監督:ウディ・アレン
出演:三橋達也、佐藤允、他

 えーっ、ウディ・アレンが60年代に三橋達也主演作なんて撮ってたの。しかもスパイ映画?何それ~?
 てなもんだろう。オレも話に聞いただけで実際にお目にかかったことはないので、いまだに何それ~?である。

 007シリーズのヒットで、柳の下の二匹目の泥鰌を狙った作品が乱作されたことはすでに書いた。
 アメリカでも模倣作は作られたが、日本でも当然作られた。その一つに三橋達也主演の『国際秘密警察』というのがある。シリーズで全五作あるそうだ。
 監督が坪島孝などで製作が田中友幸という点からわかるように東宝作品だ。この組み合わせだと『クレイジーキャッツ』の主演作みたいだな。こちらはコメディではなくシリアス作品である。縁がなく、この『国際秘密警察』シリーズも観たことはない

 『007 ドクター・ノオ』(1962)が1963年6月に日本で公開され、大ヒットしたとみるや即効短期間低予算で取りかかり、一作目の『国際秘密警察 指令第8号』が制作された。公開されたのが1963年8月31日だというから驚きである。
 もっとも、1960年代前半はまだプログラムピクチャーの時代で、テレビのドラマに近いペースで新作が公開され、そして消え去っていった頃の話。撮影は数日で、脚本から完成まで2週間で作り上げるなんてのが当たり前だったそうだから、そんなに無茶な話ではないのかもしれない。

 内容は007風のスパイアクションで、ショーン・コネリーの役を三橋達也が演じたような作品だそうだが、これが白人社会ではかなり珍妙な感じに受け取られたらしい。
 白人の視点に立つと、東洋人がスーツにコート、そしてソフト帽姿で拳銃を扱い、すっかりジェームズ・ボンド気取りなのかかなり可笑しかったようだ。
 何となく分かる気もする。日本人が着物を着て刀を持って登場しても違和感は感じないだろう。しかし、東洋人が西洋人風振る舞いをしているところに違和感とそして笑いを感じたのだろう。その理由の一つにはもちろん人種差別もあるのだろう。アメリカのTVシリーズでチンパンジーが主役のスパイや悪党を演ずる『チンパン探偵ムッシュバラバラ』というコメディドラマがあったそうだが、それどこか通じる物があるのだろう。
 つまりは、白人から見れば、東洋人がジェームズ・ボンドの真似をすることと、チンパンジーがジェームズ・ボンドの真似をすることに大差はないんじゃなかろうかということだ。
 これは1960年代の価値観で、2007年現在の価値観とは違うし、情報量も増えた現在ではさらに変わっていくことだろう。違っていない部分も変わっていない部分もあるだろう。
 それに日本人だって他の有色人種に偏見を持っている人は多そうだ。これは個人的体験だが、アメリカで多数のインド人がプログラマとして活躍しているというニュースを読んだ知り合いが、「えっー、インドなんか1、2、3、たくさん、だからプログラムなんか無理じゃないの」という発言をリアルで聞いたことがある。多分、知能指数はBBCのプロデューサー並だ。

 話を『What's Up, Tiger Lily?』に戻すと、シリーズ3作目の『国際秘密警察 火薬の樽』(1964)と4作目の『国際秘密警察 鍵の鍵』(1965)をウディ・アレンが無理矢理編集で1本の映画に繋げてしまい、しかもシリアスな話を、ハチャメチャなストーリーとして英語で吹き替えたのが『What's Up, Tiger Lily?』なんである。
 最近のウディ・アレンしか知らない人は、「都会的でおっしゃれー」とか思っているかもしれないが、初期のウディ・アレンは泥臭いユダヤジョークを連発するジョーク作家だったのだ。基本的にはメル・ブルックスを大して変わらん。
 被差別と被迫害に関してはおよそ三千年の歴史を持つユダヤ人であるウディ・アレンが日本人をネタにしたわけだな。中島らもが「笑いとは差別だ」といったような発言をしている。最近やたらと妙な外見や発言で笑いを取るキャラクター芸人が増えた。あれを見て笑ってるのだってつまるところ差別によって生まれた笑いなのだ。

 観たいなー、観たいなーと思っているのだが、未だに巡り会う機会がない。DVDで出してくれんかなー、しかも日本語吹き替え付きで。一度観たらそれでもう満足して一生観なさそうだが。

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