『クリスティーン』(1983) CHRISTINE 110分 アメリカ
監督:ジョン・カーペンター 製作:リチャード・コブリッツ、ラリー・フランコ 製作総指揮:カービー・マッコレー、マーク・ターロフ 原作:スティーヴン・キング 脚本:ビル・フィリップス 撮影:ドナルド・M・モーガン 音楽:ジョン・カーペンター、アラン・ハワース
出演:キース・ゴードン、アレクサンドラ・ポール、ジョン・ストックウェル、ロバート・プロスキー、ハリー・ディーン・スタントン、クリスティーン・ベルフォード、ロバーツ・ブロッサム、ケリー・プレストン、デヴィッド・スピルバーグ、ウィリアム・オストランダー、マルコム・ダネア
なんだジョン、普通の映画も撮れるんじゃん。
地味なメガネ高校生アーニーがボロ屋の庭先で野ざらしになっている赤い58年型プリマスにぞっこんになる。それはまさに一目惚れと呼ぶにふさわしく、アーニーは親友デニスの制止も聞かずにそのプリマスを買い取る。他人からは廃車も同然にしか見えないポンコツが彼にはとびっきりのべっぴんだったのだ。
プリマスは持ち主の弟が乗っていた車で、数ヶ月前に死んだその弟は車にクリスティーンと名前を付けていた。
クリスティーンを修理していくにしたがって、アーニーが次第に自分に自信を持つようになり他人に対してもはっきりと意志を伝えられるようになる。そして多くの男子生徒がアタックしては玉砕してきた美少女転校生リーとつきあい始める。ここまでならば、ある出来事で自立していく少年の話だが、もちろんそれでは終わらない。
アーニーはクリスティーンにのめり込んでいき、ついには新車同様にまでリストアしてしまう。その頃になるとアーニーはやたらと激昂しやすくなり、他人を見下したり敵愾心を持つようになる。まるで別人になってしまったかのようだ。
そしてクリスティーンはドライブインシアターでアーニーと愛撫していたリーを殺そうとするなど明らかに意志を持った行動をし始める。女性、それもとびっきりの悪女の人格だ。自分の美しさをひけらかし、男の目を集めて独占しようとする。リーを殺そうとしたのも、アーニーに愛情を向けられた彼女に嫉妬したからだ。
アーニーの持つ愛情や感情などの全てを独占するクリスティーン。悪女の惚れた少年の悲しい物語だ。
冴えないアーニーがクールに変貌していく様子や、その後本来の自分を取り戻そうとするが、不良たちによって徹底的に破壊されてしまったクリスティーンを見て暴力的感情を爆発させるところなど、アーニー役のキース・ゴードンが光っている。最近では監督や脚本などの制作側の仕事をしているようだ。
後半に入ってクリスティーンが不良たちに復讐をし始めるまでは、思春期に揺れる少年の青春映画だ。アーニーの幼なじみであるデニスはアメフトチームで活躍している二枚目だ。イジメに合いそうなアーニーがそれなりの学校生活を送れているのは後ろにデニスの存在があるからだろう。
二人の中は良好だが、アーニーの心の奥にはデニスに対する根強いコンプレックスもあったに違いない。そして自分への干渉が強く枠に押し込めようとしてきた両親に対する怒りと反抗心もあった。
そんな小さな黒い芽をクリスティーンが育て、ついには刈り取りにかかる。
最初はただの廃車だったクリスティーンは走る毎に走行距離計が逆に回っていって、まるで運転しているアーニーの生命力を奪っているかのよう。ぶつけたり壊されても、モコモコと再生して元通りになるのは便利だよなと左サイドをブロック塀でこすって傷つけたりした自分の車を見てちょと思う。生命力と引き替えでは困るが。
若者中心の物語を刑事役のハリー・ディーン・スタントンや、整備ガレージの店主など一癖ある役者が締めてくれる。ハリー・ディーン・スタントンなんてストーリー的には何の役にも立っていないのに、ああも渋くて格好いいのは何故?