『007 カジノ・ロワイヤル』(1967) 007が多すぎる

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B000IU39DC.jpg『007 カジノ・ロワイヤル』(1967) 007 CASINO ROYALE 130分 イギリス
監督:ジョン・ヒューストン、ケン・ヒューズ、ロバート・パリッシュ、ジョセフ・マクグラス、ヴァル・ゲスト 製作: チャールズ・K・フェルドマン 原作:イアン・フレミング 脚本:ウォルフ・マンキウィッツ、ジョン・ロウ、マイケル・セイヤーズ 撮影:ジャック・ヒルデヤード 作詞:ハル・デヴィッド 音楽:バート・バカラック
出演:ピーター・セラーズ、デヴィッド・ニーヴン、デボラ・カー、ウィリアム・ホールデン、ウディ・アレン、ウルスラ・アンドレス、ダリア・ラヴィ、テレンス・クーパー、ジョン・ヒューストン、シャルル・ボワイエ、オーソン・ウェルズ、ジャン=ポール・ベルモンド、ジョージ・ラフト、ジャクリーン・ビセット、バーバラ・ブーシェ、キャロライン・マンロー、ジョアンナ・ペティット、アンナ・クエイル、トレイシー・リード

 現在絶賛公開中の『007 カジノ・ロワイヤル』(2006)と同タイトルの1967年作品だ。2006年版と関係あるかと言えば関係あるし、関係ないかと言われると関係ない。そんな微妙なポジションの映画だ。
『カジノ・ロワイヤル』はイアン・フレミングが書いたジェームズ・ボンド小説の第一作。これはイケるとチャールズ・K・フェルドマンというプロデューサーが先見の明で映画化権を買い取った。後にシリーズとして書き進められた原作の映画化権はアルバート・R・ブロッコリが買い、映画化して大きな成功を収めていった。そこで、ブロッコリはフェルドマンの持つ『カジノ・ロワイヤル』の映画化権を買い取ろうとするが、フェルドマンは断固として首を縦に振らなかった。
 そしてついに1967年、映画化に取りかかったのである。
 では先日の『サンダーボール作戦』と『ネバーセイ・ネバーアゲイン』の様な関係かと言われるとこれまた違う。
 1967年版と同時期に公開された007シリーズは『007は二度死ぬ』と絶好調で脂ののりきった時期だった。制作費もイギリス映画としては大予算で、派手なアクションが盛り込まれている。これにまともに勝負をしてもかなうはずがない。
 そこでフェルドマンは、原作第一作目の『カジノ・ロワイヤル』を映画007シリーズのパロディにしてしまった。さすがイギリス人、考えることがひねくれているというかなんというか。
 かくして、ハチャメチャドタバタギャグムービーが展開されることとなった。当時の観客の評価はどうだったのだろうか?笑っている人と怒っている人、ついていけずにぽかーんとしている人などくっきりと分かれていたことだろう。

 郊外の大邸宅に引退した007を訪ねるMたち。彼こそ本家本元の「ジェームズ・ボンド」だ
 ジェームズ・ボンド曰く、「スパイは純粋な気持ちで任務に当たる。次々に女を取っ替えるような奴とは違う。私の名と番号を勝手に使ったあの成り上がりさ」
 どう考えてもショーン・コネリーボンドのことを言っているのであろう。 さらにMたちが隠し持っている秘密兵器を古くさいとこき下ろす。初っぱなから皮肉前回だ。
 M曰く各国のスパイたちが次々に殺されている。どうやら世界征服を企む悪の秘密結社があるようだ。そこでボンドに解決を依頼したい。しかしボンドはとりつく島もなく断る。
 ボンドが引退した理由は恋人である女スパイマタ・ハリをフランスに引き渡し銃殺になったから。
 ボンドが断固として引き受けないのでMは迫撃砲でボンドの邸宅を破壊する。
 こうして本家本元の007ジェームズ・ボンドが帰ってきたのである。

 悪の組織スメルシュ。原作に登場した敵役だ。
 スメルシュは主に女性工作員を使って色仕掛けも使ってスパイたちを始末しているようだ。
 そこでボンドはAFSD・対女スパイ装置計画を立案する。女性に対して強い免疫力を持ち、それどころか逆に女性を色仕掛けでやっつけてしまうスパイだ。
 こうして数人のスパイが集められるが、敵を混乱させるために全員とも名前とコードネームを007とすることとなった。だからこれから先、やたらとジェームズ・ボンドだらけ。分かりにくいので便宜上、デヴィッド・ニーヴンのジェームズ・ボンドはデヴィッド・ボンドと呼ぶことにする。他のボンドも同じ方式で。
 数多くのスパイの中から選ばれたテレンス・ボンドは女性を相手に訓練中。
 理由は後に明らかになるが、バカラ理論の専門家イヴリン・トレンブル(ピーター・セラーズ)もボンドに選ばれる。
 ボンド訓練所では珍妙な訓練ばかり。もちろんQも登場。今作のQは妙にゲイっぽい。
 実はボンドとマタ・ハリの間にはマタ・ボンドという娘がいた。彼女を007としてスメルシュのスパイ養成所である国際家政婦協会にスパイとして送り込む。
 ボンド訓練場並みに珍妙なスパイ養成学校で、マタ・ボンドはルシッフルの名を聞き出す。なんでもルシッフルが所有する品物を競売するという。美術品というふれこみの出品品は脅迫用の写真。それをマタ・ボンドが盗み出し大騒動。
 ついにルシッフルの姿が現れるが、なんと名監督にして名優のオーソン・ウェルズ。競売で得るはずだった利益を失ってしまったため、それを穴埋めしないとスメルシュに消されてしまう。
 ルシッフル稼ぎ場にしているカジノ・ロワイヤルにピーター・ボンドと監視役のヴェスパーが乗り込む。
 それまでは大勝ちしていて手品などをやる余裕もあったルシッフルだが、ピーター・ボンドを相手にしたバカラで大敗する。
 ホテルからヴェスパーが誘拐され、ボンドは何故だかフォーミュラー3のレーシングカーで追う。だが、ピーター・ボンドもルシッフルに捕まり心の拷問を受ける。座っている椅子に穴が開いているが、2006年版の拷問椅子にも穴が開いていた。原作からそうだっけか。なにしろ、読んだのが20年は前なので覚えていない。
 そして精神世界にバグパイプの集団が現れる。ヴェスパーがバグパイプ型マシンガンで撃ちまくる。『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999)にもバグパイプ型マシンガンが登場したが、これのパロディだろうか。
 金を用意できなかったルシッフルは、モニター画面を割って飛び出た銃で射殺。すごいセンスだ。イカすぜ。
 だが、ルシッフルは所詮一幹部。スメルシュはまだ健在。そしてスメルシュの巨大なUFOにマタ・ボンドが誘拐される。
 スメルシュの本部はなんとカジノ・ロワイヤルの地下。首領のゴクター・ノアが現れるが、声は渋い声に変換し、光源をバックに影の姿しか見えない。だがその正体はデヴィッド・ボンドの甥であるジミー・ボンド(ウディ・アレン)であった。素の姿になると一気に情けなくなるドクター・ノア。まぁウディ・アレンだしなぁ。
 計画しているのは、美女以外の女性と背の高い男を殺してしまうウイルス兵器や、アスピリンに見せかけた400連発の小型核爆弾。世界中の要人を偽物ロボットと入れ替えて操るなどなど。
 ボンドの仲間の黒髪の女がドクター・ノアに小型核爆弾を飲ませ、閉じこめられたデヴィッド・ボンドたちはLSDを爆発させて牢獄から脱出する。ドクター・ノアがしゃっくりをする度に核爆発が起こる。おいおい・・・
 地下から抜け出して救援を呼ぼうとするが、ヴェスパーに裏切られる。これまで情報を流していたのも彼女だったのだ。
 そしてここからさらなるドタバタが突っ走り始める。
 アメリカの援軍登場。なんと西部の荒野を走るカウボーイたしで、馬に乗ったままカジノに乗り込んできて銃を撃ちまくる。007の首輪がついたアシカや犬はいるし、もう007だらけでなにがなにやら。
 さらにパラシュート降下したインディアンが乱入してくる、もちろん額には007の文字だ。ギャング映画で有名な俳優ジョージ・ラフトがお得意のコインをもてあそぶが意味はない。
 警察を呼ぶと駆けつけてくるのはキーストン・コップ。キーストン・コップというのはマーク・セネットが設立したモノクロサイレント時代のキーストン映画社で作られた警官が笑わせ役をやるコメディのことで、出動となると一台のパトカーに10人以上乗り込んだり、何の役にも立たずにひたすらドタバタしてる警官たちのことだ。

 そしてついにはドクター・ノアが飲み込んだ核兵器の最後の一発が爆発し、カジノロワイヤルは登場人物ごと大爆発・・・って爆発オチかよっ。

 やはり「イギリス人はバカだ」と強く感じさせる作品だ。
 結局、何に近いのかというと『モンティ・パイソン』シリーズを野暮ったくした感じなのだと思う。
 監督が5人いるが、それぞれにパートを分けて撮影したと聞いたことがある。ジョン・ヒューストンが担当したのが、最初のデヴィッド・ボンド宅をMらが訪問するシーンだったかな。
 とにかく登場人物が多すぎで、一度ではなかなか把握できない。ドクター・ノアに小型核爆弾を飲ませた黒髪の女性はなんて名前だっけ?
 バーと・バカラックの軽快な音楽がまた素晴らしい。メインテーマ曲には後に大槻ケンヂが歌詞を付けた。筋肉少女帯のアルバム『猫のテブクロ』に収録されている『Go! Go! Go! Hiking Bus』がそれだ。「Go! Hiking Bus、○○?、遠足には猫はつれてけない?」なのだ。
 もうひたすらにバカバカしくて意味がなくて混乱しきっていて、下らないことにいかに全力を注ぎ込むことが大事かと改めて感じさせてくれる。これを観てしまうと『オースティン・パワーズ』なんて正直観てられない。
 原作の第一作目の映画化という本家本元と言えるようなシリアスな映画にすることも出来ただろうに、それどころか007シリーズのパロディ映画にしてしまった。しかも007シリーズにはパロディ作や模倣作、インスパイア作が幾つもあるのだが、その中で最もハチャメチャなパロディ映画になっているとは侮れない。
『007』シリーズの大ファンは観ない方が良いかもしれないが(怒るから)、バカ映画好きなら必ず観ろよ!

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このページは、東森時音が2007年1月 2日 12:22に書いたブログ記事です。

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