『007 ネバーセイ・ネバーアゲイン』(1983) NEVER SAY NEVER AGAIN 133分 アメリカ
監督:アーヴィン・カーシュナー 製作:ジャック・シュワルツマン 原作:イアン・フレミング 原案:ケヴィン・マクローリー、ジャック・ホイッティンガム 脚本:ロレンツォ・センプル・Jr、イアン・ラ・フレネ、ディック・クレメント 撮影:ダグラス・スローカム 音楽:ミシェル・ルグラン 主題歌:ラニ・ホール
出演:ショーン・コネリー、キム・ベイシンガー、クラウス・マリア・ブランダウアー、バーバラ・カレラ、マックス・フォン・シドー、バーニー・ケイシー、アレック・マッコーエン、エドワード・フォックス、パメラ・セイラム、ローワン・アトキンソン、ヴァレリー・レオン
『007 サンダーボール作戦』(1965)の再映画化である。ジェームズ・ボンドが主演だが007シリーズではないというちょっとややこしい映画だ。007シリーズはブロッコリ父娘がイアン・フレミング側から映画化権を買い、そして作り上げたシリーズ。
そしてこの『007 ネバーセイ・ネバーアゲイン』はジャック・シュワルマンが原作『サンダーボール』の再映画化権を手に入れ、独自に映画化した物。
強いて言うならば、横溝正史原作の金田一耕助物。あれは石坂浩二などが金田一を演ずる角川映画製作シリーズが有名だが、『八つ墓村』は角川ではなく松竹が渥美清を金田一役にして制作した。角川映画版が『007シリーズ』だとすれば、『ネバーセイ・ネバーアゲイン』は松竹の『八つ墓村』だと思ってもらうと分かりやすいだろうか。分かりにくいか・・・
そのためタイトルには007の文字はなく、単に『ネバーセイ・ネバーアゲイン』だが タイトル検索の便宜上、当サイトでは007を入れている。
冒頭は今は亡き「ORION」のマーク。制作にはワーナーも関わっているようで、『007シリーズ』がユナイテッド・アーティストやMGMであることを考えても、全くの別資本であることが分かる。
新任で官僚主義のMとは気が合わないようで、ボンドは現場仕事を外されスパイ養成所で講義を行うなど官職に回されていたようだ。そうか、それで最近コネリーボンドは見なかったのか。
更には生活態度まで指摘され、ステーキ、白パン、マティーニなどが毒だと指摘し、毒素を抜くべく体質改善を行っている療養所行きを命ぜられる。まぁ確かにボンドの生活習慣はいかにも不健康だ。肝臓をやられるか、性感染症を移されるか。スパイ本来の危険とは別な意味でリスクの高い生活だ。
貸し金庫室の一角がスライドすると地下への階段があり、そこはスペクターの基地になっていた。
首領のブロフェルドは「アラーの涙」という計画を始動し、No.1を責任者とした。
No.1アメリカ空軍のジャック・ペタチ大尉をヘロインで手なずけ、角膜移植で右目の眼紋を合衆国大統領のそれと同じにしたようだが、これで何をやろうというのだろうか。
ボンドは療養所でジャック・ペタチを目撃。なにやら怪しげな物を感じる。同時にスペクターにも居場所がばれ、ボンドの元に殺し屋が送り込まれる。ジョーズほどではないが大柄怪力でブルワーカーを引きちぎるほどの迫力。ああっ、貧弱な肉体をモテモテボディにする予定だったのに。久々の実戦でボンドはなかなか勘を取り戻せなかったが、苦労したあげくようやくしとめる。
アメリカ空軍は疑似核弾頭を装着した巡航ミサイルをテスト発射する予定だった。しかし、ペタチが偽眼紋で大統領権限でアクセスし、本物の核弾頭に積み替えてしまった。標的位置も変更されていて海上に落下。待ちかまえていたスペクターが海底に沈んだミサイルを回収して行方をくらました。
しばらくして政府に脅迫ビデオが届けられる。金額にしておよそ250億ドル。7日間の猶予があるので、それを利用して捜査する事となる。
ペタチが療養所に残した遺留品から、ボンドはマックス・ラルゴという事業家に当たりを付ける。彼がいるキューバに向かうことにする。
そこへQが登場。万年筆型小型ミサイルや制作中のオートバイ、そしてレーザー付き腕時計が登場する。
物語は一路キューバへ。現地でボンドを迎えた間抜けな現地駐在員が若き日のローワン・アトキンソンだ。すでに挙動不審で笑えるぞ、。
美女(正体はスペクターのNo.12)と知り合って、一緒に沈没船にダイビングをして、鮫に襲われたりするが無事に脱出。
掴んだ情報によると、ラルゴのヨットは南フランスに向かったとのこと。
物語は一路南フランスへ。
ボンドはキューバで知り合った女性を助手にして連れてくる。
空港でフィリックス・ライターが登場。シリーズの方では白人だったが(カジノ・ロワイヤルで黒人になった)、こちらは黒人。
ラルゴがカジノで慈善パーティーを開き、ボンドは強引な手段で潜り込む。
ラルゴの恋人でジャック・ペタチの妹であるドミノ・ペタチに接近するボンドに、ラルゴがゲームで挑む。
3D映像を空中に投影するヴィデオゲーム「ドミネーション・ゲーム(世界征服ゲーム)」。陣地が細かく別れていて、そのマスの一つに明かりが付くので先に狙い撃って当てた方がポイントを取るという、陣取り合戦のようなゲームであまり面白そうではない。
特徴としてはダメージを受けるとジョイスティックから電気ショックがくること。ジョイパッドの振動機能の過激版みたいな物か。
ボンドがアジトにした別荘にNo.12が侵入し、助手を殺害した。結局、この娘は殺されるために出てきたような物だ。物語上はボンドを怒らせる以外に必要ない。ならばいっそいらない。スパイ同士が殺し合うのは良いが、一般人が巻き込まれるのはあまり好きではない。
車で逃走するNo.12をQ特製のボンドカーならぬボンドバイクで追跡する。あれ、絶対に普通のバイクにガワを貼り付けただけだぞ。戦隊ヒーロー物の乗り物かっての。
バイク対車のカーチェイスは多少見応えがあるが、オレはすでに『マッドマックス2』(1981)を観てしまっているので、こんなのでは全然満足できない。ハリウッド映画がオーストラリア映画にアクションで負けてどうする。
一度は追い込まれるボンドだが、万年筆ミサイルでNo.12は爆死。
ラルゴのヨットに忍び込んだボンドだが、最初から見透かされていて捕まる。
ドミノに兄のジャックがラルゴたちに殺されたと伝え仲間に引き込んだ彼女は、ドミノに火災警報機を作動させ、その隙を突いてコントロールルームにあった通信機を使ってMI6に連絡を取る。ヨットの行く先は北アフリカのパルミラだ。
物語は一路パルミラへ。
鎖でつながれたボンドがラルゴに核弾頭の在処を尋ねる。
「あきれたね、まだ逃げ出せるつもりか。一つはワシントン。もう一つは秘密だ」
アラブ人相手に奴隷市にかけられるドミノ。ボンドは腕時計のレーザーで鎖を切断し牢屋から脱出。ドミノを連れて馬で逃走する。逃げ回るが追い詰められて、高い塀の上から海へと馬ごとジャンプ。馬災難。
アラブ人たちが城壁の上から射撃してくるが、フィリックスの乗った潜水艦からの艦砲射撃で砦を破壊してボンドを助ける。見るからに古いのでおそらく貴重な文化遺産だろうに、まったくアメリカ人は。
ラルゴは油田近くの海底に核弾頭を仕掛け爆発させるつもりだ。そして連鎖的に地下地層を崩壊させ、大きな範囲にわたって油田を壊滅させるのだ。
ドミノが持っていたペンダントで該当する地点が判明し、ボンドとフィリックスたちはダイビンスーツをアクアラングで計画阻止に乗り出す。ボンドたちと敵との水中戦があるが、あまり盛り上がらない。『サンダーボール作戦』の方が面白かった気がする。結局、ラルゴはドミノの水中銃で射殺され、核弾頭はボンドがタイマーを止めた。こうして世界は救われたのである、。
物語は一路キューバへ。
ドミノといちゃついているボンド。その屋敷の敷地内に不審な人物が侵入してくる。
後ろに回り込んだボンドが、そいつとプールに放り込むと、なんとそいつはMの使いで来たローワン・アトキンソン。「自由世界を守るためにMI6に戻ってくれ」との要請にボンドは「NEVER AGAIN」と応える。
ショーン・コネリーが老けてジジイボンドになっている。この時期、007シリーズでボンドを演じていたのはロジャー・ムーアでムーアの方が実は年上なのだが、スクリーン上ではショーン・コネリーの方が老けて見える。
ジェームズ・ボンド役イメージが強すぎて、ボンド役から降板した後もなかなか良い仕事に恵まれず、このまま二流俳優で終わるかなと思われたショーン・コネリーだが、開き直ってもう一度ジェームズ・ボンドを演じたこの作品以降、流れががらっと変わり、『薔薇の名前』(1986)、『アンタッチャブル』(1987)、『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989)などのヒット作に立て続けに出演することになり、『アンタッチャブル』ではアカデミー助演男優賞を受賞した。
明らかに『ネバーセイ・ネバーアゲイン』以降で流れが変わっており、本人が長年悩みコンプレックスでもあったかもしれない物に、逃避せずにあえて立ち向かうことで良い結果が出たのだろう。
悪役のクラウス・マリア・ブランダウアーはどこか異常ぶりを感じさせる。美しい物を苦労して手に入れ、その大切な物を壊して快感を得る変態だ。
この作品、「物語は一路?」といった具合で、場面展開が多い多い。移動しすぎだろ。どこが物語の中心かはっきりせず、ちょっといらつく。強いて言うならばラルゴの大型ヨットなのだろうが、そう効果的に使われているわけでもない。
水上スキーの水で服が濡れてしまい「なに、服は濡れたがこのマティーニはドライさ」といったボンドジョークは相変わらずだが、映像的なギャグも多い。テンポが悪く作中でも浮いていてどうにも泥臭いギャグがオレには笑える。
監督のアーヴィン・カーシュナーはよく言えば手堅い、悪く言えば凡庸な映画を撮る人だ。手堅い2:凡庸8ぐらいの割合か。作品数も少なく『特攻サンダーボルト作戦』(1976)、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(1980)、『ロボコップ2』(1990)しか観ていないが、まあ並の下な監督だ。
そんな人が何故大ヒット作二段目の『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』の監督を任されたかというと、この人は監督では食えないのでUCLAかどこかで映画の専攻を教えていたそうだ。でもって、ジョージ・ルーカスはその生徒だったと。ルーカスがその講義に感銘を受けて逆コネだったのかもしれない。ま、何だかんだいってオレがシリーズ中一番好きな作品だけどな。
音楽がやたらジャンジャカパッパーと鳴りまくってうるさい。これもこの作品の二流さを醸し出す要因の一つだ。