『女王陛下の007』(1969) ON HER MAJESTY'S SECRET SERVICE 142分 イギリス
監督:ピーター・ハント 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:ウォルフ・マンキウィッツ、リチャード・メイボーム、サイモン・レイヴン 撮影:マイケル・リード、エグリ・ウォックスホルト 音楽:ジョン・バリー 主題歌:ルイ・アームストロング
出演:ジョージ・レーゼンビー、ダイアナ・リグ、テリー・サヴァラス、ガブリエル・フェルゼッティ、ベッシー・ラヴ、ジョアンナ・ラムレイ、カトリーヌ・シェル、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、デスモンド・リュウェリン
ショーン・コネリーが降板し、二代目ジェームズ・ボンドとしてジョージ・レーゼンビーが起用されたシリーズ第6作。1930年生まれのショーン・コネリーに対してジョージ・レーゼンビーは1939年生まれと10歳近く若返った。その差は格闘など肉体を使ったアクションの切れのとして現れている。ただしレーサーそしてモデル出身のジョージ・レーゼンビーはお世辞にも演技力があるとは言えず、過去の作品と比べて今作はドラマ性が強調されているため見劣りがするのは確か。
車を運転するボンドは、その後ろ姿、あるいは煙草を咥えた口元のアップ、逆光のシルエットとしてまずは登場する。顔がはっきり映るのは1、2分してからで、主演男優交代の違和感をなるべく取り除こうとしている。
過去の007シリーズの映像を使ったオープニングでは楽曲だけで歌は無し。ルイ・アームストロングによる主題歌は、ボンドと恋人のトレーシーがいちゃつく中盤のシーンで使われている。
Qの作った秘密兵器はインクジェットプリンターぐらいの大きさをした携帯コピー機。今では数万で手に入りそうな機械だが、Qにしては珍しく実用的な装備品だ。もっとも、Qから支給されたシーンはないので他の人が作ったのかも知れない。だから実用的なのか?
第1作の『007 ドクター・ノオ』からして007シリーズは海が舞台の作品が多かった。ジェームズ・ボンドは英国海軍中佐なので海が似合うのは確かだが、今回の舞台となるのはスイスはアルプス山脈。山、それも雪山だ。
前作『007は二度死ぬ』のラストで取り逃がしたスペクターの首領ブロフェルドを追って、致死性ウイルスを開発している山頂の研究所に紋章学者として潜り込む。
正体がばれてロープウェイの機械室に監禁されてしまうが、ロープを送り出す窓が開いているのでそこからあっという間に脱出。ブロフェルドももう少し考えろよ。ちなみに今作のブロフェルド役はテリー・サヴァラス。もちろんハゲだ。憎たらしくて前作のドナルド・プレザンスよりも悪役度が高い。
そしてスキーにて麓の村を目指すが、ブロフェルドの手下に発見されスキーチェイスが始まる。確実なことは言えないが、スキーによるアクションシーンの原形として後々の作品の手本になっていると思われる。敵の1人が除雪車に巻き込まれて血染めの雪となるが、嫌な死に方だ。
国連はブロフェルドのウィルスによる脅迫を受け入れることに決定し、Mはボンドに何もするなと命令するが、ボンドはそれに逆らってトレーシーの父親がボスを務める犯罪組織の力を借りて研究所をヘリコプターで強襲する。Mの指示に従わないという点でもシリーズ異色作である。他にボンドが暴走するのは『007 消されたライセンス』ぐらいか。
ラストはボンドとトレーシーが結婚し、ボンドはスパイ稼業を引退することになる。だが、ハネムーンに向かう車をブロフェルドが銃撃し、トレーシーは死んでしまう。
007シリーズはボンドとヒロインが抱き合って終わるのが多く、今回も形はそうだが悲劇として終わる。
ジェームズ・ボンドは1人の女性と結婚してごく幸せな自分の生活を送ることは許されず、お国のため、女王陛下のためにスパイとして生き続けなければならない宿命なのだろう。タイトルの『女王陛下の007』はそういった意味だと解釈している。
スパイは孤独だ。
ジョージ・レーゼンビーは今作限りでジェームズ・ボンド役を降ろされた。観客から不評だったせいもあるが、かなり傲慢な性格でスタッフに嫌われたのが一番大きかったそうだ。
その後、B級映画などに多少出演しているようだが、オレが観たのは『ケンタッキー・フライド・ムービー』で「先生」「看護婦」「先生」「看護婦」ってやってるのと、その後のナポレオン・ソロとして作られたTV用映画『ナポレオン・ソロ』に「JB」のナンバープレートが付いた白いアストン・マーチンに乗った英国スパイ役としてのゲスト出演ぐらいだ。イリヤ・クリヤキン(デビット・マッカラム)がナポレオン・ソロ(ロバート・ボーン)に「ひょっとして彼か?(ジェームズ・ボンドか?という意味だろう)」「ああ、彼だ」とか言ってて笑った。
「JAMES BOND WILL RETURN IN "DIAMONDS ARE FOREVER"」